説明

画像形成装置

【課題】ジョブの動作速度を制御することで、消費電力の低減を図りながら所望のジョブに対する生産性を好適に維持させて効率良く装置を稼働できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は印刷部6と、画像読取部4と、印刷ジョブ、画像読取ジョブを実行させる指令を受け付ける操作パネル5と、許容消費電力及び印刷ジョブと画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位を記憶する記憶部21、画像形成装置1全体の総消費電力を測定するための電力測定部22と、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに総消費電力を測定させて許容消費電力を超過したとき、優先順位に基づいて印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうち一方の動作速度を通常速度に設定し、他方の動作速度を通常速度より低い所定速度に設定して印刷ジョブ及び画像読取ジョブを実行させる主制御部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷や画像読取などの複数の機能を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は印刷や画像読取を実行するとき多くの電力を消費するので、その低消費電力化に関する様々な技術が提案されている。画像形成装置の低消費電力化に関する従来技術の例を特許文献1及び2に見ることができる。
【0003】
特許文献1に記載された画像形成装置の制御装置は、電源設備の画像形成装置を含む特定の系の総電流値を検出して電流オーバーが予測される場合、ブレーカ遮断に至らせないように画像形成装置に特定の処理を行わせている。画像形成装置に行わせる特定の処理とは、定着ヒーターに対する通電電流を節電制御したり、画像形成処理速度を低下させたりする処理である。これにより、画像形成装置と他の電気機器との並行使用時のブレーカ遮断の多発を軽減している。
【0004】
特許文献2に記載された画像形成装置は、指示された速度に基づいて、シートの搬送速度及び画像形成のプロセス条件を変更するようにしている。画像形成のプロセス条件には、像担持体への潜像形成速度の条件や、シート上に未定着画像を定着させるための加熱温度の条件が含まれる。これにより、画像形成装置の最大消費電力を低減させて安定して電力供給を受けられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−38050号公報
【特許文献2】特開2000−296940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般的に複合機と呼ばれる画像形成装置は印刷や画像読取など、画像形成に係る複数のジョブ機能を備えている。そして近年、画像形成装置は装置の能力を最大限に活用するために、例えば印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる所謂並行処理が可能なものがある。
【0007】
これに関して、特許文献1及び2に記載された画像形成装置は複数のジョブを並行して実行する場合について配慮されておらず、例えば印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行する場合、印刷及び画像読取において最大の能力で結果が得られるように運転する虞がある。これにより、印刷及び画像読取を実行するために消費電力が増大する可能性がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させるときに装置の総消費電力に対応してそれらジョブに係る動作速度を制御することで、消費電力の低減を図りながら所望のジョブに対する生産性を好適に維持させて効率良く装置を稼働させることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、トナー像として形成した画像を用紙に転写、定着させる印刷を実行する印刷部と、原稿に向かって光を照射することにより前記原稿に描画された画像を読み取る画像読取を実行する画像読取部と、前記印刷部を用いて印刷を実行する印刷ジョブ、または前記画像読取部を用いて画像読取を実行する画像読取ジョブを実行させる指令を受け付ける操作部と、画像形成装置全体としての許容消費電力、及び前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位を記憶する記憶部と、画像形成装置全体の総消費電力を測定するための電力測定部と、前記操作部が前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに前記電力測定部に前記総消費電力を測定させ、前記総消費電力が前記許容消費電力を超過したとき、前記記憶部が記憶した前記優先順位に基づいて前記印刷ジョブ或いは前記画像読取ジョブのうち優先された一方の動作速度を通常速度に設定し、他方の動作速度を通常速度より低い所定速度に設定して前記印刷ジョブ及び前記画像読取ジョブを実行させる制御部と、を備えることとした。
【0010】
この構成によれば、画像形成装置では、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに総消費電力が許容消費電力を超過したとき、印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうちいずれか一方の動作速度を低下させる。したがって、例えば印刷ジョブの動作速度を低下させると、定着用の熱ローラや用紙搬送及び画像形成に係る各種モーター等の駆動に必要な消費電力が抑制される。また、例えば画像読取ジョブの動作速度を低下させると、光源の発光や光源を移動させるためのモーターの駆動、撮像素子の制御に必要な消費電力が抑制される。そして、動作速度が通常速度に設定されたジョブは生産性が好適に維持される。印刷部や画像読取部における消費電力を抑制することができるので、画像形成装置の電源に与える負担も小さくて済む。
【0011】
なお、ここで記述した「所定速度」は印刷ジョブ及び画像読取ジョブの動作速度に関する予め設定した任意の値である。この「所定速度」は印刷ジョブ及び画像読取ジョブの動作速度に関して、消費電力の低減に対して効果が高いと判断することができる程度の値である。「所定速度」は、例えば通常運転時の動作速度、すなわち通常速度と比較して30%〜70%程度の値とすることが可能であるが、必要に応じて適切に設定できる。したがって、後述する実施形態では「所定速度」を「通常速度の50%の速度」と設定しているが、このような値に限定されるわけではない。また、熱ローラや各種モーターの出力、光源の光量など各々を具体的な数値で設定しても良い。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記操作部は、前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの前記優先順位の入力を受け付け、受け付けた前記優先順位が前記記憶部に記憶されることとした。
【0013】
この構成によれば、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに総消費電力が許容消費電力を超過したとき、印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうちいずれの動作速度を低下させるかを適宜設定可能になる。したがって、印刷ジョブと画像読取ジョブとに対する消費電力の低減を重視した設定と生産性を重視した設定との選択が容易になる。
【0014】
また、上記構成の画像形成装置において、前記原稿を前記画像読取部に向かって搬送するための原稿搬送部を備え、前記画像読取ジョブが、前記画像読取部と前記原稿搬送部とを用いて画像読取を実行することとした。
【0015】
この構成によれば、画像読取ジョブの動作速度を低下させるとき、画像読取部の消費電力抑制に加えて、原稿搬送に係るモーターの駆動等に必要な消費電力が抑制される。したがって、原稿搬送部における消費電力も抑制することができる。
【0016】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記所定速度を前記印刷ジョブ、前記画像読取ジョブ各々に対して異ならせることとした。
【0017】
この構成によれば、印刷ジョブ、画像読取ジョブ各々に対して動作速度をどの程度まで低下させるか個別に適宜設定可能になる。例えば、消費電力が比較的高いと推定される印刷ジョブの動作速度を画像読取ジョブの動作速度よりさらに低下させるといった設定が適宜なされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させるときに装置の総消費電力に対応してそれらジョブに係る動作速度を制御することで、消費電力の低減を図りながら所望のジョブに対する生産性を好適に維持させて効率良く装置を稼働させることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2の画像形成装置の一部詳細を示すブロック図である。
【図4】印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作を示すフローチャートである。
【図5】画像読取ジョブ実行中に印刷ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づき説明する。
【0021】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1〜図3を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置の概略構成を示すブロック図、図3は図2の画像形成装置の一部詳細を示すブロック図である。図1中の、実線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を、一点鎖線矢印はレーザ光Lを示す。なお、ここで説明する画像形成装置は印刷ジョブ、画像読取ジョブ等が実行可能な所謂複合機であるものとする。
【0022】
図1に示すように、画像形成装置1は本体2の上面に原稿搬送部3を、その下方の本体2内部に画像読取部4を備えている。ユーザーが画像形成装置1に画像読取ジョブを実行させる場合、文字や図形、模様などの画像が描かれた原稿を原稿搬送部3に積載したり、画像読取部4上面のコンタクトガラス(図示せず)上に載置したりする。画像読取ジョブは、原稿が原稿搬送部3に積載されたとき画像読取部4と原稿搬送部3とを用いて画像読取を実行し、原稿がコンタクトガラス上に載置されたとき画像読取部4単独で画像読取を実行する。
【0023】
原稿搬送部3は、図3に示すように搬送ローラー3a、搬送ローラー3aを回転させるための原稿搬送用モーター3b及び原稿搬送用モーター3bを駆動させるためのモーター駆動回路3cを備えている。原稿搬送部3ではモーター駆動回路3cを制御して原稿搬送用モーター3bを駆動し、搬送ローラー3aを回転させることにより原稿が1枚ずつ画像読取部4に向かって送り出され、画像読取部4によって原稿の画像が読み取られる。
【0024】
画像読取部4は、図3に示すように原稿に向かって光を照射するための光源4a、光源4aの光量を調整できる光源発光回路4b、光源4aを移動させるための走査用モーター4c、走査用モーター4cを駆動させるためのモーター駆動回路4d及び原稿からの反射光を受光するための撮像素子4eを備えている。コンタクトガラス上の原稿に対しては画像読取部4で光源発光回路4bによって光源4aの光量を調整して原稿に向かって光を照射し、モーター駆動回路4dを制御して走査用モーター4cを駆動することにより光源4aを移動させ、撮像素子4eで原稿の画像を画像データとして読み取ることができる。なお、原稿搬送部3から送り出される原稿に対しては光源4aを所定箇所に留めることにより原稿の画像を画像データとして読み取ることができる。
【0025】
ユーザーが画像形成装置1に印刷ジョブ、画像読取ジョブを実行させる指令は、図1に示すように本体2の上部であって画像読取部4の正面側に備えられた操作部である操作パネル5を用いて受け付けられる。さらに、操作パネル5は、例えばユーザーによる印刷に使用する用紙Pの種類やサイズ、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などの設定を受け付けたり、エラー状態やその表示の解除を受け付けたりする。また、操作パネル5は、例えば装置の状態や注意事項、エラーメッセージなどを表示することによりそれらをユーザーに対して報知するための報知部としての役割も果たす。
【0026】
一方、画像形成装置1は、図1に示すように本体2の画像読取部4より下方の箇所に印刷ジョブを実行するための印刷部6を備えている。印刷部6は給紙部7、用紙搬送部8、転写部9、露光部10、画像形成部11、トナーコンテナー12及び定着部13を備えている。
【0027】
給紙部7は、図1に示すように給紙カセット7aを備えて本体2の内部下方に配置されている。給紙カセット7aはその内部に記録媒体である印刷前のカットペーパーなどの用紙Pを積載して収容している。また、給紙部7は、図3に示すように給紙ローラー7b、給紙ローラー7bを回転させるための給紙用モーター7c及び給紙用モーター7cを駆動させるためのモーター駆動回路7dを備えている。給紙部7ではモーター駆動回路7dを制御して給紙用モーター7cを駆動し、給紙ローラー7bを回転させることにより、給紙カセット7a内の用紙Pが図1において給紙カセット7aの左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット7aは本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。
【0028】
用紙搬送部8は、図1に示すように本体2内部の給紙部7の左方に備えられ、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。また、用紙搬送部8は、図3に示すように搬送ローラー8a、搬送ローラー8aを回転させるための用紙搬送用モーター8b及び用紙搬送用モーター8bを駆動させるためのモーター駆動回路8cを備えている。用紙搬送部8ではモーター駆動回路8cを制御して用紙搬送用モーター8bを駆動し、搬送ローラー8aを回転させることにより、給紙部7から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って略垂直上方に転写部9まで搬送する。
【0029】
露光部10は、図1に示すように給紙部7の上方であって、本体2の略中央部に配置されている。原稿の画像データの印刷を行う場合、画像データの情報は後述する主制御部や画像処理部を経由して画像処理が施された後、この露光部10に送られる。また、露光部10は、図3に示すようにポリゴンミラー10cに向かってレーザ光Lを照射するための光源10a、光源10aの光量を調整できる光源発光回路10b、光源10aからのレーザ光Lを偏向するためのポリゴンミラー10c、ポリゴンミラー10cを回転させるためのポリゴンモーター10d及びポリゴンモーター10dを駆動させるためのモーター駆動回路10eを備えている。露光部10では光源発光回路10bによって光源10aの光量を調整してポリゴンミラー10cに向かってレーザ光Lを照射し、モーター駆動回路10eでポリゴンモーター10dを駆動してポリゴンミラー10cを回転させてレーザ光Lを偏向することにより、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが画像形成部11の感光体ドラム11aに向かって照射される。
【0030】
図1に示すように、用紙搬送部8の上方であって露光部10の左方には画像形成部11及び転写部9が備えられている。画像形成部11は、図3に示すように感光体ドラム11a、感光体ドラム11aを回転させるためのドラムモーター11b、ドラムモーター11bを駆動させるためのモーター駆動回路11c、さらに図示しない帯電部、現像部、クリーニング部を備えている。画像形成部11ではモーター駆動回路11cでドラムモーター11bを駆動して感光体ドラム11aを回転させ、さらに帯電部、現像部を駆動することで感光体ドラム11a表面に露光部10から照射されたレーザ光Lによって原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。なお、トナーは露光部10の上方に備えられたトナーコンテナー12から画像形成部11の現像部に補給される。
【0031】
転写部9は、図3に示すように転写ローラー9a、転写ローラー9aを回転させるための転写用モーター9b、転写用モーター9bを駆動させるためのモーター駆動回路9c及び転写ローラー9aに転写バイアスを印加するためのバイアス印加回路9dを備えている。転写部9ではモーター駆動回路9cを制御して転写用モーター9bを駆動し、転写ローラー9aを回転させながら転写ローラー9aに転写バイアスを印加することにより、画像形成部11で形成されたトナー像が用紙搬送部8によって同期をとって送られてきた印刷前の用紙Pに転写される。
【0032】
定着部13は、図1に示すように転写部9の上方に備えられている。また、定着部13は、図3に示すように熱ローラー13a、加圧ローラー13b、これらローラーを回転させるための定着用モーター13c、定着用モーター13cを駆動させるためのモーター駆動回路13d、熱ローラー13aを加熱するための加熱ヒーター13e及び加熱ヒーター13eの出力調整をするためのヒーター調節回路13fを備えている。定着部13ではヒーター調節回路13fを制御して加熱ヒーター13eの出力調整を行い、モーター駆動回路13dを制御して定着用モーター13cを駆動し、熱ローラー13a及び加圧ローラー13bを回転させることにより、転写部9にて用紙Pが担持した未定着トナー像が熱ローラー13aと加圧ローラー13bとにより加熱、加圧されて、定着される。
【0033】
定着部13の上方には分岐部14が備えられている。定着部13から排出された用紙Pは両面印刷を行わない場合、分岐部14から画像形成装置1の上部胴内に設けられた胴内用紙排出部15に排出される。
【0034】
分岐部14から胴内用紙排出部15に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分はスイッチバック部16としての機能を果たす。両面印刷を行う場合にはこのスイッチバック部16において定着部13から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは分岐部14を通過し、定着部13の左方及び転写部9の左方に設けられた両面印刷用用紙搬送路17を通して下方に送られ、再度用紙搬送部8を経て転写部9へと送られる。
【0035】
また、画像形成装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにCPU19やその他の図示しない電子部品で構成された主制御部18を備えている。主制御部18は中央演算処理装置であるCPU19と画像処理部20とを利用し、記憶部21に記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部4や印刷部6などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作を実現する。なお、画像処理部20は画像読取部4に設けられた画像処理部4gと分担して、画像読取部4で読み取られた原稿の画像データに対して画像処理を施す。また、記憶部21は画像読取部4で読み取られた原稿の画像データを保存することもできる。
【0036】
そして、画像読取部4や印刷部6はそれぞれ、主制御部18からの制御指令を受けて画像読取や印刷を実行するための制御部を個別に備えている。
【0037】
印刷部6は印刷制御部6aを備えている。印刷制御部6aは図示しないICなどの電子部品で構成され、主制御部18からの指令に基づき印刷部6を制御する制御装置である。印刷制御部6aは主制御部18からの制御指令により給紙部7、用紙搬送部8、転写部9、露光部10、画像形成部11及び定着部13において各モーター駆動回路や光源発光回路10b、バイアス印加回路9d、ヒーター調節回路13fなどを駆動制御することで印刷動作を実現する。
【0038】
画像読取部4は読取制御部4fを備えている。読取制御部4fは図示しないICなどの電子部品で構成され、主制御部18からの指令に基づき画像読取部4を制御する制御装置である。また、画像読取部4は画像処理部4gと、記憶部4hとを備えている。読取制御部4fは主制御部18からの制御指令により光源発光回路4bやモーター駆動回路4dを制御するとともに、画像処理部4gを利用して撮像素子4eからの出力に基づき画像処理を実行して画像データを出力することで画像読取動作を実現する。なお、画像処理は本体2の画像処理部20で実行することとしても構わない。また、このようにして画像読取部4で読み取られた画像データは記憶部4h或いは本体2の記憶部21に保存することが可能である。
【0039】
また、画像形成装置1は、図2に示すように電力測定部22を備えている。電力測定部22は所望のタイミングで画像形成装置1の動作状態を考慮して画像形成装置1全体の総消費電力を測定するものである。これに関して、記憶部21は画像形成装置1全体としての許容消費電力、及び画像形成装置1の各構成要素の消費電力を予め記憶している。各構成要素の消費電力は、例えば画像読取部4や画像形成部11、定着部13などの消費電力であって、ジョブの条件ごとなどに区別されて記憶部21に記憶される。電力測定部22は必要に応じて記憶部21を参照し、動作中の構成要素やこれから動作させようとする構成要素の消費電力を合算することにより画像形成装置1全体の総消費電力を測定する。
【0040】
また、画像形成装置1全体の総消費電力の測定するために電力測定用の専用ICを各所に設けることにして良い。電力測定用の専用ICは、例えば印刷ジョブ実行時の消費電力を測定するために印刷部6に設けたり、画像形成ジョブ実行時の消費電力を測定するための画像読取部4に設けたりされる。電力測定部22は必要に応じて各電力測定用の専用ICを参照し、動作中の構成要素の消費電力を合算することにより画像形成装置1全体の総消費電力を測定する。そして、電力測定用の専用ICで測定された消費電力は構成要素ごとや、ジョブの条件ごとなどに区別されて適宜記憶部21に記憶される。それにより、記憶部21を参照することで、これからジョブを実行しようとするときに必要な消費電力を記憶部21から得ることができる。
【0041】
そして、画像形成装置1の主制御部18は、操作パネル5が印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに電力測定部22に総消費電力を測定させ、その総消費電力が許容消費電力を超過したとき、記憶部22に予め記憶させた優先順位に基づいて印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうち優先された一方の動作速度を通常速度に設定し、他方の動作速度を通常速度より低い所定速度に設定して印刷ジョブ及び画像読取ジョブを実行させることがある。これに関して、記憶部21は印刷ジョブと画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位を予め記憶している。
【0042】
なお、上記所定速度は印刷ジョブ及び画像読取ジョブの動作速度に関する予め設定した任意の値であって、消費電力の低減に対して効果が高いと判断することができる程度の値である。そこで、この所定速度として例えば通常速度の50%の速度という値が予め設定されて記憶部21に記憶されているが、必要に応じて適切に設定することができる。
【0043】
例えば、印刷ジョブの動作速度が通常速度の50%の速度である場合、主制御部18からの制御指令に基づき印刷制御部6aが給紙部7、用紙搬送部8、転写部9、露光部10、画像形成部11及び定着部13の各モーター駆動回路を制御して各モーターの回転速度を通常速度の50%の速度にする。これに伴って、印刷制御部6aは露光部10で光源発光回路10bを制御して光源10aの光量を調整したり、転写部9でバイアス印加回路9dを制御して転写バイアスの電圧値や印加タイミングを調整したり、定着部13でヒーター調節回路13fを制御して加熱ヒーター13eの出力調整を行ったりすることがある。
【0044】
また例えば、画像読取ジョブの動作速度が通常速度の50%の速度である場合、主制御部18からの制御指令に基づき読取制御部4fが画像読取部4のモーター駆動回路4dや原稿搬送部3のモーター駆動回路3cを制御して走査用モーター4c、原稿搬送用モーター3bの回転速度を通常速度の50%の速度にする。これに伴って、読取制御部4fは画像読取部4で光源発光回路4bを制御して光源4aの光量を調整することがある。
【0045】
そして、主制御部18は、上記所定速度を印刷ジョブ、画像読取ジョブ各々に対して異ならせることも可能である。例えば、印刷ジョブを実行するときの動作速度を通常速度の50%の速度とし、画像読取ジョブを実行するときの動作速度を通常速度の70%の速度としても良い。これらの動作速度に関する設定値は予め記憶部21に記憶されている。
【0046】
また、操作パネル5はユーザーからの、印刷ジョブと画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位の入力を受け付けることができる。操作パネル5で受け付けたこの優先順位は記憶部21に記憶される。
【0047】
続いて、操作パネル5から印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作について、図4及び図5に示すフローに沿って説明する。図4は印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作を示すフローチャート、図5は画像読取ジョブ実行中に印刷ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作を示すフローチャートである。
【0048】
図4に関して、画像形成装置1が操作パネル5から印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けると(図4のスタート)、主制御部18は電力測定部22を用いて画像形成装置1全体の総消費電力、すなわち印刷ジョブ実行中である現在の画像形成装置1の消費電力に画像読取ジョブを実行するために必要な消費電力を加えた総消費電力を測定させ、その総消費電力が許容消費電力を超過するか否かを判定する(図4のステップ#101)。
【0049】
総消費電力が許容消費電力を超過しない場合(ステップ#101のNo)、主制御部18は印刷制御部6aに指令を送り、印刷ジョブの動作速度を通常速度と同じ(通常速度の100%の速度)に設定させ、さらに読取制御部4fに指令を送り、画像読取ジョブの動作速度を通常速度と同じ(通常速度の100%の速度)に設定させる(ステップ#102)。
【0050】
そして、主制御部18は印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作フローを終了する(図4のエンド)。この後、印刷部6及び画像読取部4はステップ#102でなされた設定に基づき主制御部18からの指令に従って印刷ジョブまたは画像読取ジョブを並行して実行する。
【0051】
一方、総消費電力が許容消費電力を超過する場合(ステップ#101のYes)、主制御部18は記憶部21に記憶された優先順位に基づいて印刷ジョブが優先されているか否かを判定する(ステップ#103)。
【0052】
印刷ジョブが優先されているとき(ステップ#103のYes)、主制御部18は印刷制御部6aに指令を送り、印刷ジョブの動作速度を通常速度と同じ(通常速度の100%の速度)に設定させる(ステップ#104)。さらに、主制御部18は読取制御部4fに指令を送り、画像読取ジョブの動作速度を通常速度の50%の速度に設定させる(ステップ#105)。そして、主制御部18は印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作フローを終了する(図4のエンド)。この後、印刷部6はステップ#104でなされた設定に基づき、画像読取部4はステップ#105でなされた設定に基づき、各々主制御部18からの指令に従って印刷ジョブまたは画像読取ジョブを並行して実行する。
【0053】
印刷ジョブが優先されていない、すなわち画像読取ジョブが優先されているとき(ステップ#103のNo)、主制御部18は印刷制御部6aに指令を送り、印刷ジョブの動作速度を通常速度の50%の速度に設定させる(ステップ#106)。さらに、主制御部18は読取制御部4fに指令を送り、画像読取ジョブの動作速度を通常速度と同じ(通常速度の100%の速度)に設定させる(ステップ#107)。そして、主制御部18は印刷ジョブ実行中に画像読取ジョブを並行して実行させる指令を受け付けたときの総消費電力に対応したそれらジョブに係る動作速度の制御に係る動作フローを終了する(図4のエンド)。この後、印刷部6はステップ#106でなされた設定に基づき、画像読取部4はステップ#107でなされた設定に基づき、各々主制御部18からの指令に従って印刷ジョブまたは画像読取ジョブを並行して実行する。
【0054】
次に図5に関して、画像形成装置1が操作パネル5から画像読取ジョブ実行中に印刷ジョブを並行して実行させる指令を受け付けると(図5のスタート)、主制御部18は電力測定部22を用いて画像形成装置1全体の総消費電力、すなわち画像読取ジョブ実行中である現在の画像形成装置1の消費電力に印刷ジョブを実行するために必要な消費電力を加えた総消費電力を測定させ、その総消費電力が許容消費電力を超過するか否かを判定する(図5のステップ#201)。
【0055】
以下、図5のステップ#202〜#207に係る動作フローは、図4のステップ#102〜#107に係る動作フローと同じであるので説明を省略する。
【0056】
上記のように、画像形成装置1の主制御部18は、操作パネル5が印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに電力測定部22に総消費電力を測定させ、その総消費電力が許容消費電力を超過したとき、記憶部21が記憶した優先順位に基づいて印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうち優先された一方の動作速度を通常速度に設定し、他方の動作速度を通常速度より低い所定速度、すなわち通常速度の50%の速度に設定して印刷ジョブ及び画像読取ジョブを実行させる。これにより、例えば印刷ジョブの動作速度を低下させると、給紙用モーター7c、用紙搬送用モーター8b、ドラムモーター11b等の各モーターの駆動や加熱ヒーター13eの出力、光源10aの発光などに必要な消費電力が抑制される。また、例えば画像読取ジョブの動作速度を低下させると、走査用モーター4c、原稿搬送用モーター3bの駆動や光源4aの発光、撮像素子4eの制御などに必要な消費電力が抑制される。そして、動作速度が通常速度に設定されたジョブは生産性が好適に維持される。印刷部6や画像読取部4における消費電力を抑制することができるので、画像形成装置1の電源に与える負担も小さくて済む。
【0057】
また、操作パネル5は印刷ジョブと画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位の入力をユーザーから受け付け、操作パネル5が受け付けたその優先順位が記憶部21に記憶される。これにより、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに総消費電力が許容消費電力を超過したとき、印刷ジョブ或いは画像読取ジョブのうちいずれの動作速度を低下させるかを適宜設定可能になる。したがって、印刷ジョブと画像読取ジョブとに対する消費電力の低減を重視した設定と生産性を重視した設定との選択を容易にすることが可能である。
【0058】
そして、画像形成装置1は、原稿を画像読取部4に向かって搬送するための原稿搬送部3を備え、画像読取ジョブが画像読取部4と原稿搬送部3とを用いて画像読取を実行する。これにより、画像読取ジョブの動作速度を低下させるとき、画像読取部4の消費電力抑制に加えて、原稿搬送用モーター3bの駆動等に必要な消費電力が抑制される。したがって、原稿搬送部3における消費電力も抑制することができる。
【0059】
さらに、主制御部18は、通常速度より低い印刷ジョブ或いは画像読取ジョブの動作速度である所定速度を印刷ジョブ、画像読取ジョブ各々に対して異ならせることができるので、印刷ジョブ、画像読取ジョブ各々に対して動作速度をどの程度まで低下させるか個別に適宜設定可能になる。例えば、消費電力が比較的高いと推定される印刷ジョブの動作速度を画像読取ジョブの動作速度(例えば通常速度の70%の速度)よりさらに低下させる(例えば通常速度の50%の速度)といった設定を自由に行うことが可能である。
【0060】
そして、上記実施形態の構成によれば、印刷ジョブと画像読取ジョブとを並行して実行させるときに画像形成装置1の総消費電力に対応してそれらジョブに係る動作速度を制御することで、消費電力の低減を図りながら所望のジョブに対する生産性を好適に維持させて効率良く装置を稼働させることが可能な画像形成装置1を提供することが可能である。
【0061】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、画像形成装置1としてブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置を例に掲げて説明したが、発明の適用対象となる画像形成装置はこのような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備え、複数色を重ね合わせて画像形成することが可能なタンデム方式、或いはロータリー方式のカラー印刷用画像形成装置などであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、印刷や画像読取などの複数の機能を備える画像形成装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置
2 本体
3 原稿搬送部
4 画像読取部
5 操作パネル(操作部)
6 印刷部
18 主制御部(制御部)
21 記憶部
22 電力測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像として形成した画像を用紙に転写、定着させる印刷を実行する印刷部と、
原稿に向かって光を照射することにより前記原稿に描画された画像を読み取る画像読取を実行する画像読取部と、
前記印刷部を用いて印刷を実行する印刷ジョブ、または前記画像読取部を用いて画像読取を実行する画像読取ジョブを実行させる指令を受け付ける操作部と、
画像形成装置全体としての許容消費電力、及び前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの優先順位を記憶する記憶部と、
画像形成装置全体の総消費電力を測定するための電力測定部と、
前記操作部が前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとを並行して実行させる指令を受け付けたときに前記電力測定部に前記総消費電力を測定させ、前記総消費電力が前記許容消費電力を超過したとき、前記記憶部が記憶した前記優先順位に基づいて前記印刷ジョブ或いは前記画像読取ジョブのうち優先された一方の動作速度を通常速度に設定し、他方の動作速度を通常速度より低い所定速度に設定して前記印刷ジョブ及び前記画像読取ジョブを実行させる制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記印刷ジョブと前記画像読取ジョブとのいずれを優先的に実行するかの前記優先順位の入力を受け付け、受け付けた前記優先順位が前記記憶部に記憶されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記原稿を前記画像読取部に向かって搬送するための原稿搬送部を備え、
前記画像読取ジョブが、前記画像読取部と前記原稿搬送部とを用いて画像読取を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定速度を前記印刷ジョブ、前記画像読取ジョブ各々に対して異ならせることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−3407(P2013−3407A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135576(P2011−135576)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】