画像形成装置
【課題】画像形成装置の電源投入時に、必要最小限の範囲で加熱回転体の温度を上昇させる制御を行うことにより、低い消費電力で像加熱装置を速やかに温度上昇させて画像形成を開始できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱装置70は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20の長手方向に配列して、励磁コイル71が発生する磁束をそれぞれの領域で定着ローラ20に案内する。規制部材73は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20に対して接離する方向へ移動させて、定着ローラ20の長手方向における画像形成可能温度である範囲を可変に設定する。制御部100は、規制部材73を制御して、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材のうちで搬送幅方向長さが最大のものの当該搬送幅方向長さが小さいほど、誘導加熱装置70の温度上昇制御の時における定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【解決手段】誘導加熱装置70は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20の長手方向に配列して、励磁コイル71が発生する磁束をそれぞれの領域で定着ローラ20に案内する。規制部材73は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20に対して接離する方向へ移動させて、定着ローラ20の長手方向における画像形成可能温度である範囲を可変に設定する。制御部100は、規制部材73を制御して、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材のうちで搬送幅方向長さが最大のものの当該搬送幅方向長さが小さいほど、誘導加熱装置70の温度上昇制御の時における定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱回転体の画像形成可能温度である範囲を記録材に合わせて変更可能な像加熱装置を備えた画像形成装置、詳しくは電源投入時やスリープモード復帰時において画像形成を少ない消費電力と短い待ち時間で開始させるための制御に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体(感光体又は中間転写体)にトナー像を形成して記録材に転写した後に、トナー像が転写された記録材を定着装置の加熱ニップで挟持搬送して画像を記録材に定着させる画像形成装置が広く用いられている。定着装置以外にも、半定着又は定着済み画像を担持した記録材を加熱処理して画像の表面性状を調整する各種の像加熱装置も実用化されている。
【0003】
記録材の画像面に接して記録材を加熱する加熱回転体(ローラ部材又はベルト部材)の加熱源として誘導加熱装置を採用した像加熱装置が実用化されている(特許文献1)。誘導加熱装置を装備した定着装置は、比較的に小さな体積の加熱回転体の限られた領域に磁束を集中させて効率的な加熱を行うことができるため、電源投入後、短時間で加熱回転体の温度を画像形成可能温度まで上昇させて画像形成を開始できる。
【0004】
しかし、誘導加熱装置を用いて加熱回転体を加熱した場合、記録材に接して除熱される領域の外側に、記録材による除熱を受けないために高温になってしまう領域が形成される可能性がある。いわゆる非通紙部昇温の問題である。
【0005】
特許文献1では、加熱回転体の長手方向に複数の磁性体コアを配置し、両端部の磁性体コアについて、加熱回転体に対する対向間隔を変化させることにより、非通紙部昇温を回避している。
【0006】
特許文献2では、加熱回転体の長手方向に配置された磁性体コアを、長さの異なるものに変更することで、加熱回転体に入射する磁束の長手方向における磁束密度分布を記録材の搬送幅方向長さに応じて設定して、非通紙部昇温を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−194940号公報
【特許文献2】特開2005−321633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、電源投入時には、画像形成可能な最大サイズの記録材に合せて加熱回転体の画像形成可能温度まで上昇させる範囲が設定されて、加熱回転体の温度を上昇させる制御が実行されていた。そして、画像形成の開始後、加熱回転体に発生した非通紙部昇温を解消するために、加熱回転体に沿った磁束密度分布を記録材の搬送幅方向長さに応じて設定していた。
【0009】
このため、画像形成装置の記録材供給部にはがきサイズの記録材しか保持されていない場合であっても、常に通紙可能な最大サイズの記録材に画像を定着可能な状態にまで像加熱装置が温度上昇制御されていた。その結果、画像形成装置の電源投入時における合計消費電力の70%〜80%を占める定着装置を温度上昇制御するために相当に無駄な電力が消費されていた。
【0010】
特に、消費電力の定格の小さい画像形成装置の場合、電源投入時の消費電力を定格値に抑えるために、誘導加熱装置の加熱が抑制されていた。その結果、像加熱装置を画像形成可能温度まで温度上昇させるまでの待ち時間の短縮を図ることが難しかった。
【0011】
本発明は、画像形成装置の電源投入時に、必要最小限の範囲で加熱回転体の画像形成可能温度まで上昇させる範囲を設定することにより、低い消費電力で像加熱装置を速やかに温度上昇制御させて画像形成を開始できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、トナー像を形成して記録材に転写するトナー像形成部と、記録材を収容してトナー像形成部へ供給可能な記録材供給部と、トナー像が転写された記録材を加熱する加熱回転体と、磁束を発生して前記加熱回転体を加熱する誘導加熱装置と、を備えるものである。そして、前記誘導加熱装置は、前記加熱回転体の回転軸線方向における温度分布を変更可能な変更手段を有し、前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さが通紙可能な最大サイズの記録材の前記回転軸線方向の長さよりも小さい場合には、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させる際に、前記最大サイズの記録材が収容されている場合に比べて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さくするように前記変更手段を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、記録材供給部に現実に保持されて利用可能な記録材に必要なだけの画像形成可能温度である範囲を設定して加熱回転体の温度を上昇させる制御を実行する。複数種類の記録材を収容している場合でも、記録材供給部に現実に保持されている複数種類の記録材のうちで最大のものを想定しておくことで、加熱回転体の温度が立ち上がった後は、どの記録材が選択されても直ちにその記録材に画像形成を開始できる。
【0014】
このため、記録材供給部に現実に保持されていない最大サイズの記録材に合せて加熱回転体の温度を上昇させる制御を実行する場合よりも消費電力が削減される。誘導加熱装置は、合計の消費電力を抑えつつ、加熱する範囲を絞り込むことで、加熱回転体に対して加熱密度の高い温度を上昇させる制御を行うことができる。
【0015】
したがって、画像形成装置の電源投入時に、必要最小限の範囲で加熱回転体の温度を上昇させる制御を行うことが可能になり、低い消費電力で像加熱装置を速やかに立ち上げて画像形成を開始することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】定着装置の斜視図である。
【図3】定着装置の構成の説明図である。
【図4】定着ローラと励磁コイルと磁性体コアの配置の説明図である。
【図5】誘導加熱装置の回路図である。
【図6】磁性体コア移動機構の斜視図である。
【図7】磁性体コア移動機構の動作の説明図である。
【図8】最大加熱幅状態の説明図である。
【図9】加熱幅の調整動作の説明図である。
【図10】実施例1における画像形成装置の制御ブロック図である。
【図11】実施例1の定着装置の起動制御のフローチャートである。
【図12】実施例1における消費電力削減効果の説明図である。
【図13】実施例2の定着装置の起動制御のフローチャートである。
【図14】実施例3の定着装置の起動制御における加熱幅調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、収容した最大サイズの記録材に合わせて起動時(スリープモード復帰時を含む)の誘導加熱範囲が設定される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0018】
従って、像加熱装置は、トナー像を転写された記録材を加熱処理して記録材にトナー像を定着させる定着装置のみならず、半定着又は定着済みトナー像を加熱処理して画像に所望の表面性を付与する表面処理装置を含む。誘導加熱される回転体及び圧接させる回転体は、ローラのみならずベルト、フィルムを含む。
【0019】
像加熱装置を搭載する画像形成装置は、モノクロ/フルカラー、枚葉型/記録材搬送型/中間転写型、トナー像形成方式、転写方式の区別無く本発明を実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0020】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、トナー像形成部の一例である画像形成部1a、1b、1c、1dは、トナー像を形成して記録材に転写する。記録材供給部の一例である記録材カセット103、104、105は、記録材を収容して二次転写部T2へ供給可能である。記録材カセット103、104、105は、複数種類の記録材を収容する。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置30は、中間転写ベルト2の下向き面に沿って画像形成部1a、1b、1c、1dを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。画像形成部1a、1b、1c、1dは、それぞれ単独に着脱可能な交換ユニット(プロセスカートリッジ)に組み立てられている。
【0022】
画像形成部1aでは、感光ドラムaにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。画像形成部1bでは、感光ドラムbにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。画像形成部1c、1dでは、それぞれ感光ドラムc、dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。
【0023】
中間転写ベルト2に転写された四色のトナー像は、二次転写部3へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置5で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、排出ローラ11を通じて上部トレイ7へ排出される。
【0024】
分離ローラ8は、記録材カセット103から引き出した記録材Pを1枚ずつに分離して、レジストローラ9へ送り出す。レジストローラ9は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト2のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。
【0025】
画像形成部1a、1b、1c、1dは、それぞれの現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部1aについて説明し、他の画像形成部1b、1c、1dについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0026】
画像形成部1aは、感光ドラムaの周囲を囲むように、不図示の帯電ローラ、現像装置、ドラムクリーニング装置を内蔵している。感光ドラムaは、アルミニウム製シリンダの外周面に感光層を形成しており、所定のプロセススピードで回転する。感光ドラムaは、帯電ローラを用いて、一様な負極性の電位に帯電される。
【0027】
露光装置6は、各色の分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラムaの表面に画像の静電像を書き込む。感光ドラムaに書き込まれた静電像は、現像装置によってトナーを付着させて、トナー像に反転現像される。
【0028】
転写ローラ2aは、中間転写ベルト2を押圧して、感光ドラムaと中間転写ベルト2との間に転写部を形成する。転写ローラ2aに正極性の直流電圧が印加されることにより、感光ドラムaに担持された負極性のトナー像が、転写部Taを通過する中間転写ベルト2へ一次転写される。
【0029】
<像加熱装置>
図2は定着装置の斜視図である。図3は定着装置の構成の説明図である。図4は定着ローラと励磁コイルと磁性体コアの配置の説明図である。図5は誘導加熱装置の回路図である。
【0030】
図2に示すように、加熱回転体の一例である定着ローラ20は、トナー像が転写された記録材を加熱する。定着装置5は、定着ローラ20に対して加圧ローラ22を水平方向に圧接して記録材Pの加熱ニップNを形成している。
【0031】
図3に示すように、定着ローラ20は、磁性体の芯金パイプ20aの外周にシリコンゴムの弾性層20bを配置し、弾性層20bの外周面をフッ素樹脂の離型層20cで被覆している。加圧ローラ22は、定着ローラ20の対向に配置されて、両側の軸端に配置された不図示の励磁コイルばねによって定着ローラ20へ向かって付勢されている。
【0032】
加圧ローラ22は、磁性体の芯金パイプ22aの外周にシリコンゴムの弾性層22bを配置し、弾性層22bの外周面をフッ素樹脂の離型層22cで被覆している。定着ローラ20と加圧ローラ22は、長手方向の一端部に配置された不図示のギア列で連結され、ギア列に接続された不図示の駆動モータに駆動されて一体に回転する。
【0033】
定着ローラ20は、定着ローラ20の外周に配設された励磁コイル71、磁性体コア72、磁気回路部材82を主体とした誘導加熱装置70によって外側から加熱される。誘導加熱装置の一例である誘導加熱装置70は、磁束を発生して定着ローラ20を加熱する。誘導発熱体としての定着ローラ20は、鉄等の強磁性の金属(透磁率の高い金属)を使うことで、誘導加熱装置70から発生する磁束を金属内部により多く拘束させる。磁束密度を高くすることにより、金属表面に渦電流を発生し、効率的に定着ローラ20を発熱させることができる。
【0034】
定着装置5のハウジング76の内部に、紙面と垂直方向に長円状に形成された励磁コイル71が配置されている。励磁コイル71の中心に一部分を侵入させて、紙面と垂直方向に分割された複数の磁性体コア72が配置されている。磁気回路部材82は、磁性体コア72と定着ローラ20の芯金パイプ20aとを周回するように、励磁コイル71が発生する磁束の磁気回路を形成する。磁性体コア72及び磁気回路部材82は、励磁コイル71より発生した交流磁束の磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。磁性体コア72は、交流磁束を効率よく定着ローラ20を構成している誘導発熱体に導く役目をするため、材質として、フェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いている。
【0035】
図4に示すように、励磁コイル71は、長手方向に略楕円形状(横長舟形)をしており、定着ローラ20の外周面に沿うように配置されている。励磁コイル71は、φ0.1〜0.3mmの絶縁被覆電線の細線を略80〜160本程度束ねたリッツ線を芯線として用いている。芯線は、磁性体コア72を周回するように8〜12回巻回して励磁コイル71を構成している。
【0036】
磁性体コア72は、記録材搬送方向と直交する記録材搬送幅方向に複数個が配列状態で配置されている。磁性体コア72は、定着ローラ20の軸垂直断面において、励磁コイル71の巻き中心部と外周面を円弧状に連絡するように構成されている。
【0037】
磁性体コア72のうち、長手方向両端の通紙端部の磁性体コア72bと、領域Eに配置されて破線60を境として、励磁コイル71の楕円内部に入り込む中間の磁性体コア72bは、後述する磁性体コア移動機構によって、移動可能となっている。
【0038】
磁性体コア72のうち、通紙中心部の領域Dに配置された磁性体コアは、図3に示すハウジング76に固定されている。通紙中心部の領域Dは、搬送幅方向の長さが最小である「はがきサイズ紙」の幅に対応した領域幅となっている。
【0039】
定着装置5は、定着ローラ20を加熱するため、励磁コイル71による磁束で定着ローラ20に設けた誘導発熱体に渦電流を発生させてジュール熱により発熱させる誘導加熱方式を採用している。誘導加熱方式は、熱発生位置を加熱ニップNのごく近くに置くことができるので、ハロゲンランプヒータを用いた熱ローラ方式に比して、電源投入時に、定着ローラ20表面の温度が定着に適当な温度になるまでに要する時間が短くて済む。また、熱発生位置から加熱ニップNへの熱伝達経路が短く単純であるため、加熱の熱効率が高い。
【0040】
励磁コイル71に高周波電流が印加されると、定着ローラ20が発熱する。励磁コイル71は、供給される交流電流によって交番磁束を発生し、交番磁束は磁性体コア72に導かれて、誘導発熱体である定着ローラ20に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、励磁コイル71に交流電流を供給することで定着ローラ20が電磁誘導発熱状態になる。
【0041】
図5に示すように、励磁回路310は、定着装置5の励磁コイル71へ高周波電流の交番電流を供給する。励磁コイル71は、電源装置300の励磁回路310におけるスイッチ素子303、304の接続点とコンデンサ305、306の接続点との間に接続されている。励磁コイル71は、磁束を発生して定着ローラ20を誘導加熱する。
【0042】
電源装置300は、ダイオードブリッジ301と、フィルタコンデンサ302とで整流平滑回路を構成して直流電圧を発生させる。電力制御部313は、駆動部312を介して、スイッチ素子303、304を交互に作動させて、励磁コイル71に交流電圧を印加する。コンデンサ305、306は、励磁コイル71とともに共振回路を形成する共振コンデンサである。駆動部312は、2つのスイッチ素子303、304をそれぞれ駆動する。
【0043】
電力検知部311は、電源装置300の入力電力を検出する。
【0044】
温度検出素子314は、導電性発熱体である定着ローラ20表面に対向する位置に非接触で配置され、定着ローラ20の温度を検出する。
【0045】
電力制御部313は、画像形成装置30の制御部30からの動作命令と、温度検知部314の検出結果などの定着装置5の状態から、駆動部312が出力する電力条件を決定する。駆動部312は、電力制御部313で決定された電力条件に従って、2つのスイッチ素子303、304を駆動する。
【0046】
<磁性体コア移動機構>
図6は磁性体コア移動機構の斜視図である。図7は磁性体コア移動機構の動作の説明図である。図8は最大加熱幅状態の説明図である。図9は加熱幅の調整動作の説明図である。
【0047】
図2に示すように、定着装置5においては、小サイズの記録材Pを連続して通紙して多量に定着処理した時、定着ローラ20表面の記録材Pの接触する通紙領域では、記録材Pに熱が伝わり搬送されて行く。これに対し、接触しない非通紙領域では熱を付与するものがないので熱が蓄積され、通紙領域と非通紙領域とで温度差が生じることがある。
【0048】
通紙領域は、所定の定着温度に維持されるので、非通紙領域が過度に昇温して非通紙部昇温が発生する。非通紙部昇温が生じると、励磁コイル71の表皮効果等による発熱や、磁性体コア72のヒステリシス損による自己発熱とあいまって、励磁コイル71の巻線被覆に高い耐熱性を有した樹脂が必要になって装置構成が制約される。また、磁性体コア72が固有のキュリー温度を超えて磁性を失う問題も考えられる。
【0049】
そこで、図4に示すように、定着装置5では、磁性体コア72が記録材Pの搬送方向に直交する記録材幅方向で分割されている。種々の紙サイズ、例えばハガキ、A5、B4、A4、A3ノビサイズの各サイズにおける非通紙部昇温を回避できるように、通紙端部の領域Eにおいて、磁性体コア72は定着ローラ20の長手方向で複数に分割されている。
【0050】
図3に示すように、磁性体コア72は、リンク部材75によって移動可能として、記録材のサイズの外側では、励磁コイル71と磁性体コア72の距離を大きく設定している。励磁コイル71から磁性体コア72が離れると、励磁コイル71の周りにできる、磁性体コア72及び定着ローラ20の誘導発熱体の磁気回路の効率が落ちて、発熱量が低下する。これにより、非通紙部昇温が回避されて、磁性体コア72や励磁コイル71の過剰な昇温も回避される。
【0051】
それぞれの磁性体コア72は、磁性体コアホルダ77に熱溶着されて保持されており、ハウジング76内に収まっている。磁性体コアホルダ77は、ハウジング76の案内溝761の案内によって、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙を変化させる矢印P方向に移動可能になっている。
【0052】
リンク部材75は、回転軸78周りに回転可動に組み立てられ、端部の長穴部が磁性体コアホルダ77の連結部771と連結されている。リンク部材75が回転軸78周りにQ1方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72がP1方向へ移動し、リンク部材75がQ2方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72がP2方向へ移動する。このように、リンク部材75を設けることによって、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72の移動距離を長くすることが可能となる。リンク部材75は、励磁コイルばね74によってQ1方向へ回転する方向へ付勢されているが、規制部材73によって、リンク部材75のQ1方向への回転が規制されている。
【0053】
図6に示すように、規制部材73はピニオンギア80と連結され、ピニオンギア80の回転運動により、記録材搬送方向に直交する搬送幅方向(Y方向)へ移動可能となっている。ホームポジションセンサ81は、フォトインタラプタであり、規制部材73のフラグ部73aによって遮光される。図6は、B4サイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0054】
図8に示すように、規制部材73がホームポジションに移動すると、ホームポジションセンサ81がフラグ部73によって遮光されて、ON状態となる。図8は、A4ノビサイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0055】
図7の(a)に示すように、規制部材73によってリンク部材75が押し込まれている状態では、リンク部材75は、励磁コイルばね74に逆らってQ2方向へ回動している。このとき、磁性体コアホルダ77が矢印P2方向へ移動して磁性体コア72が励磁コイル71に近付いている。
【0056】
図8に示すように、ピニオンギア80はモータMと駆動連結されており、モータMの駆動力によって動作する。規制部材73がY1方向へ移動を開始すると、端部側のリンク部材75から順番に規制部材73による押し込みが解除される。規制部材73が端部側から中央側へ移動するとき、端部側の磁性体コア72から規制が解除される。規制部材73がホームポジションよりも外側へ移動することが無いため、定着装置5を省スペースで構成できる。
【0057】
図7の(b)に示すように、規制部材73による押し込みが解除されると、リンク部材75は、励磁コイルばね74に付勢されてQ1方向へ回動する。これにより、磁性体コアホルダ77が矢印P1方向へ移動して磁性体コア72が励磁コイル71から遠ざかる。規制部材73の規制から外れたリンク部材75は、フレーム79の突き当て部Aに当接して、リンク部材75の移動限界位置を規制される。これに伴って、磁性体コアホルダ77および磁性体コア72は、ハウジング76の案内溝761の案内によって、P1方向へ移動し、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙が広がる。
【0058】
図9に示すように、磁性体コアホルダ77a、77b、77c、77d、77eについて規制部材73による押し込みが解除されて、図7の(b)に示すように、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙が広がっている。図9は、B4サイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0059】
したがって、A4ノビサイズとB4サイズの間に位置する励磁コイル71と磁性体コア72の距離が離れて、励磁コイル71の周りにできる磁性体コア72及び誘導発熱体からなる磁気回路の効率が落ちて、発熱量が低下する。B4サイズにおける非通紙部昇温が回避され、その結果磁性体コア72や励磁コイル71の過剰な温度上昇も回避される。
【0060】
また、逆に、図9の状態から規制部材73をY2方向へ動かして図8に示すホームポジションへ戻すと、図7の(a)に示すように、規制部材73の先端部739がリンク部材75の斜面759と接触し、リンク部材75を矢印Q2方向へ回転させる。このとき、磁性体コアホルダ77および磁性体コア72は、矢印P2方向へ動作する。
【0061】
なお、ここでは、記録材の搬送が中央基準であって、ピニオンギア80が両端部の2つの規制部材73と連結している。しかし、記録材の搬送が片側基準の場合は、ピニオンギア80が片側1つの規制部材73と連結し、片側のみ磁性体コアを移動させる機構であってもよい。
【0062】
また、ここでは、リンク部材75にコイルばね74を取り付けているが、結果として磁性体コア72が矢印P1方向へ移動可能であればよく、磁性体コア72や磁性体コアホルダ77へコイルばね以外の付勢部材を取り付けてもよい。リンク部材75の自重によって矢印Q1方向へモーメントを作用させてもよい。
【0063】
定着装置5は、磁性体コアホルダ77a〜77mのうちで記録材の搬送幅方向に応じて定めた個数のものについて規制部材73による押し込みが解除される。これにより、記録材の搬送方向幅の外側に位置する磁性体コア72と励磁コイル71との間隙を拡大させて、非通紙部昇温を防止している。各種の記録材サイズに対応するため、その移動距離を記録材のサイズによって異ならせて、各記録材のサイズによっても非通紙部昇温を防止している。
【0064】
ところで、従来の画像形成装置では、画像形成装置に設置されている記録材カセットに搭載された記録材のサイズに関わらず、常に最大通紙可能幅であるA4ノビサイズ全域を加熱していた。その結果、A4ノビサイズの記録材がセットされていない場合、不必要な部分を加熱することとなっていた。
【0065】
図5に示すように、電源装置300では、電力検知部311によって消費電力を常時検出して、電力制御部313が定着装置5の起動時における電源装置300に投入可能な電力の最大値を制限している。このため、定着装置5では、定着ローラ20の定着可能な温度に温度調整される領域が増加すると、単位面積当りの発熱量が低下して、定着装置5の温度上昇制御の時間が長くなってしまう。その際、画像形成信号が入力されてから、磁束密度分布の調整を開始する構成では、その時間だけロスしてしまう。
【0066】
そこで、以下の実施例では、磁性体コアの移動により磁束密度分布の調整を行う構成において、画像形成装置に設けられている記録材に画像を形成する際により一層の温度上昇制御の時間の短縮を実現している。
【0067】
<実施例1>
図10は実施例1における画像形成装置の制御ブロック図である。図11は実施例1の定着装置の起動制御のフローチャートである。図12は実施例1における消費電力削減効果の説明図である。
【0068】
図3に示すように、誘導加熱装置70は、定着ローラ20の回転軸線方向における画像形成可能温度である範囲を可変に設定可能である。励磁コイル部材の一例である励磁コイル71は、定着ローラ20へ入射する磁束を発生する。変更手段の一例である磁性体コア72は、励磁コイル71が発生する磁束に対する定着ローラ20の長手方向に沿った磁気抵抗分布を変更可能である。複数個の磁性体コア72は、定着ローラ20の長手方向に配列して励磁コイル71が発生する磁束をそれぞれの領域で定着ローラ20に案内する。移動機構の一例である規制部材73は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20に対して接離する方向へ移動させる。
【0069】
制御手段の一例である制御部100は、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材の搬送方向に直角な搬送幅方向長さが小さいほど、定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。制御部100は、磁性体コア72の位置を制御して誘導加熱装置70の温度上昇制御の時における定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を設定する。制御部100は、記録材の搬送幅方向長さに応じた個数の磁性体コア72を他の磁性体コア72よりも定着ローラ20に近付けた状態で誘導加熱装置70による温度上昇制御を行う。制御部100は、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材のうちで搬送幅方向長さが最大のものの当該搬送幅方向長さが小さいほど定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【0070】
図10に示すように、制御部100は、画像形成装置30の動作を制御する中央制御装置(コンピュータ)である。
【0071】
記録材サイズ入力部101は、操作パネルを通じたオペレータの操作内容又は外部コンピュータから送信された記録材サイズ情報に基づいて記録材のサイズを判別する。記録材サイズ検知部103〜105は、図1に示すように、三段の記録材カセット103〜105に付設されたセンサ103s〜105sの出力に基づいて記録材カセット103〜105に搭載された記録材の搬送幅方向サイズを検出する。センサ103s〜105sは、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pの幅方向の端部規制部材の位置情報から、記録材サイズ検知を行う。
【0072】
制御部100は、記録材サイズ入力部101の出力情報と記録材サイズ検知部103〜105の出力情報を読み取って、次に画像形成される記録材のサイズに対応した定着ローラ20の加熱幅を決定する。制御部100は、記録材サイズ入力部101又は記録材サイズ検知部103〜105の出力データを読み取って、次に定着される記録材Pの搬送幅方向のサイズに対応した定着ローラ20の発熱幅を決定する。
【0073】
制御部100は、モータMに、ステッピングモータ等を用い、規制部材73のホームポジション位置からステッピングモータに送るパルス数と発熱幅の関係をメモリ上に有するため、定着ローラ20に詳細な発熱幅を設定して制御することが可能である。
【0074】
図11に示すように、画像形成動作は、制御部100に記録材サイズ、画像データ、枚数等のユーザー設定情報が転送された後に開始される。ユーザー設定情報は、画像形成装置30に設置されている操作パネル(101:図1)や、通信回線によって接続された外部のコンピュータなどから設定される。
【0075】
電源ON、紙サイズ変更時、スタンバイからの起動時等、もしくは電源OFFまでの制御が実行される。
【0076】
制御部100は、電源ON、紙サイズ変更時、スタンバイからの起動時等の初期動作時、規制部材73の位置が不明の場合(S1000のNo)、規制部材73の位置を確認するホームポジションサーチを行う(S1001)。定着装置5の交換時、異常動作終了時などで規制部材73位置が不明となる。制御部100は、ホームポジションセンサ81の入力信号を読み取り、OFF状態すなわち規制部材73がホームポジションにいない場合、ホームポジションサーチ動作を行う(S1001)。
【0077】
図2に示すように、ホームポジションセンサ81として用いているフォトインタラプタのON−OFF信号により、規制部材73の位置のホームポジションを検知する。規制部材73をY2方向へ移動させるようにモータMを回転させ、ホームポジションセンサ81がOFFからON状態に切り替わるところで停止する。また、初期状態でホームポジションセンサ81が、ON状態である場合、規制部材73を先ほどと逆方向のY1方向へ動くようにモータMを回転させ、ホームポジションセンサ81がOFFへ切換わったところで停止する。その後、メモリ上に規制部材73位置がホームポジションにあることを記録する。
【0078】
初期動作時に規制部材73がホームポジションから遠い場所に位置してホームポジションセンサ81がOFF状態である場合はもちろん、近い場合でもホームポジションサーチには、1.0秒以上の動作時間が必要である。従来の定着装置では、この程度の動作時間は大きな弊害ではない。しかし、ウォームアップタイムが10秒以下の定着装置5の場合、ホームポジションサーチの動作時間の占める割合が大きくなり、重要になってくる。そこで、実施例1では、なるべくホームポジションサーチを行わないように、規制部材73の位置情報が不明の場合のみ最小限実施するようにとどめた(S1002)。
【0079】
制御部100は、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pのサイズ情報を、記録材サイズ入力部101および記録材検知部103〜105により検出する(S1003)。例えばA4サイズ、A4縦サイズ、A5サイズ、はがきサイズなどの記録材のサイズがある。
【0080】
制御部100は、検知した記録材サイズのうちの最大幅サイズをLmaxと設定する(S1004)。そして、加熱ローラ20の加熱幅がLmaxになるように規制部材73を移動させる(S1005)。制御部100は、規制部材73のホームポジション位置情報と、モータMの駆動制御により、所望の発熱幅が得られるような構成になっている。制御部100は、モータMを制御して規制部材73の位置を定着装置5の長手方向に移動させて、規制部材73の位置を変える。
【0081】
制御部100は、電源装置300を起動して励磁回路310により定着ローラ20の加熱を開始する(S1006)。図3に示すように、温度検知部314によって検出される定着ローラ20の中央部の表面温度が定着可能温度に達すると、画像形成を開始可能になる(S1007のYes)。
【0082】
制御部100は、プリント信号があると(S1008のYes)画像形成を開始するために、最大幅サイズLmaxに設定された加熱ローラ20の加熱幅を、画像形成に用いる記録材の搬送幅方向サイズに応じた加熱幅へ変更する(S1009)。通紙される記録材の搬送幅方向サイズに対応した加熱幅になるように、メモリ上の規制部材73位置情報とモータMのパルス数との関係から、規制部材73の位置を制御する。この際、通紙される記録材の搬送幅方向サイズに対応した加熱幅が現在の幅よりも狭い場合は、モータMにより規制部材73を所望の位置に移動しながら通紙する。このようにすることで、規制部材73が移動するまでのダウンタイムを少なくすることが可能である。
【0083】
制御部100は、定着装置5を制御して、画像形成がされて定着装置5へ搬送されてきた記録材を加熱処理する(S1010)。プリント動作中に、A4Rサイズ等の紙幅が狭いものの後に、A4などの紙幅が広いものを通紙する場合、紙幅の広いものに対応した加熱幅が均一な温度になるまでの所定時間通紙を行わずに回転させる。そして、その後、規制部材73をA4幅に対応する位置に移動させ加熱させる。このようにすることで、定着ローラ20の端部での過昇温や端部温度ダレによるホットオフセットやコールドオフセット等の異常画像が発生するのを防止することができる。手差しトレイ等により、現在通紙されている紙サイズよりも幅の広い紙があらたに設定された場合も同様に対応する。
【0084】
制御部100は、指定された画像形成が終了すると(S1011のYes)、スタンバイ状態へ移行、または画像形成装置30の電源をOFFする。
【0085】
ここで、電源装置300に1000Wの電力を供給し、記録材カセット103、104、105にA4サイズ、A4縦サイズ、A5サイズをそれぞれセットして、実施例1の制御を実験した。定着装置5が搬送可能な最大サイズは、A4ノビサイズ(幅330mm×長さ483mm)である。
【0086】
図12の(a)に示すように、実施例1の制御では、定着ローラ20長手中央部が定着可能温度(180℃)に達したときの発熱分布は、最大幅サイズLmaxであるA4サイズ幅(297mm)に限られる。供給可能な記録材サイズの最大幅Lmax=297mm(A4サイズ幅)の範囲で定着可能温度に達している。A4サイズ幅(297mm)で定着装置5を温度上昇制御させた後に、画像形成される記録材に応じて、A4縦サイズ、A5サイズの加熱ローラ20の加熱幅へ移行させる。
【0087】
このときの電源装置300に電力を投入してから、定着可能温度に達する時間は、10秒であった。これにより、ユーザーが、複数の記録材カセット103、104、105に準備されている記録材のサイズのうち、どのサイズを選択した場合においても、温度ムラによる光沢ムラや定着不良等の画像不良を発生することなく、即座にプリント動作可能である。
【0088】
図12の(b)に示すように、比較例1の制御は、記録材カセット103、104、105に収容された記録材の搬送幅方向サイズとは無関係に、A4ノビサイズを定着可能に定着装置5を温度上昇制御させる従来の制御である。比較例1の制御では、搬送可能な最大サイズ330mmで加熱した場合の温度分布を示している。そのほかの条件は実施例1と同条件である。
【0089】
供給可能な記録材サイズの最大幅Lmax=297mmにおける温度ムラは発生していないことから、比較例1の制御においても温度ムラによる画像不良は発生しない。しかし、電源装置300に電力を投入してから定着ローラ20が定着可能温度に達するまでの時間が18秒程度と実施例1よりも長くなってしまう。これは、図5に示す電源装置300が電力検知部311で検出される供給電力を一定に保った状態で、記録材カセットに無いA4ノビサイズ領域まで加熱するため、余分なエネルギーが消費されるためである。
【0090】
以上のように、実施例1の制御によれば、必要最小限の領域を効率よく加熱することで、定着装置5の温度上昇制御の時間を短縮し、消費電力を抑えつつ、効率よく定着ローラ20を加熱することができる。
【0091】
実施例1の制御によれば、記録材カセット103、104、105において現実にセットされている記録材のうちで最大搬送幅サイズのものに対応した範囲だけを加熱するように構成するので、定着装置5の温度上昇制御の(復帰)時間の極少化ができる。予備加熱時に、定着ローラ20の必要最小限の領域のみを加熱することで、温度ムラによる画像面の光沢ムラの発生を防ぎつつ、省エネ、低エネルギー化が可能である。記録材カセット103、104、105にセットされている記録材の最大幅に対応した範囲だけを加熱するので、温度ムラによる光沢ムラの発生を防ぎつつ、定着ローラ20を画像形成可能温度まで温度上昇させる時間の極小化が可能である。
【0092】
<実施例2>
図13は実施例2の定着装置の起動制御のフローチャートである。実施例1では、定着装置5の昇温開始前に定着ローラ20の加熱幅を設定した。これに対して、実施例2では、プリント動作後に定着ローラ20の加熱幅を設定して定着装置をOFF又はスリープモードへ移行する。このため、画像形成装置30の起動時又はスリープモードからの復帰時において、定着装置5の昇温開始前に定着ローラ20の加熱幅を設定することなく、直ちに定着装置5の昇温を開始している。実施例2の制御は、図11のフローチャートが図13のものに置き換わる以外は装置構成及び画像形成等制御は実施例1と同一である。
【0093】
図13に示すように、制御部100は、画像形成の終了後、次回の誘導加熱装置70の温度上昇制御の際に用いる画像形成可能温度である範囲を設定した後に、誘導加熱装置70を停止させる。
【0094】
制御部100は、電源ON又はスリープモードからの初期動作時、規制部材73位置が不明の場合(S1100のNo)、ホームポジションサーチを行って規制部材73をホームポジションに位置決める(S1101)。
【0095】
制御部100は、前回の定着動作終了時にメモリに格納された規制部材73の位置情報がある場合は、ホームポジションサーチを行わないで、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pのサイズ情報を取得する(S1102)。
【0096】
制御部100は、検知した記録材サイズのうちの最大幅サイズを前回の定着動作終了時に検出して規制部材73に設定したLmaxと比較する(S1103)。
【0097】
制御部100は、検知した記録材サイズが規制部材73に既に設定されているLmax以下であれば(S1103のNo)、直ちに電源装置300を起動して、励磁回路310により定着ローラ20の加熱を開始する(S1106)。これにより、規制部材73の位置の再設定を挟まない分、実施例1よりも早期に定着装置5の温度上昇制御を完了させることができる。
【0098】
制御部100は、検知した記録材サイズが規制部材73に既に設定されているLmaxを超えていれば(S1103のYes)、Lmaxを検出した新たな値に置き換えて(S1104)、規制部材73の位置の再設定を行う(S1105)。その後、電源装置300により定着ローラ20の加熱を開始して(S1106)、昇温時の定着ローラ20の必要な加熱幅を確保する。
【0099】
温度検知部314によって検出される定着ローラ20の中央部の表面温度が定着可能温度に達すると、画像形成を開始可能になる(S1107のYes)。
【0100】
制御部100は、プリント信号があると(S1108のYes)、最大幅サイズLmaxに設定された加熱ローラ20の加熱幅を、画像形成に用いる記録材の搬送幅方向サイズに応じた加熱幅へ変更する(S1109)。
【0101】
制御部100は、画像形成がされて定着装置5へ搬送されてきた記録材を定着装置5により加熱処理する(S1109)。
【0102】
制御部100は、画像形成中、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pの最大幅サイズLmaxを求める。そして、新たに取得した最大幅サイズLmaxのほうが当初の最大幅サイズLmaxよりも小さい場合、新たに検知した最大幅サイズLmaxの値に更新する。そして、定着ローラ20の加熱幅がLmaxになるように、モータMにより規制部材73を制御し、移動した規制部材73の位置情報を、次回の起動時に利用するために、メモリ上に残しておく。移動した規制部材73の位置情報を、移動するごとにメモリ上に上書きして残しておく(S1109)。これにより、画像形成中に最大幅サイズの記録材が無くなった場合や、新たに最大幅サイズの記録材が追加された場合に対処している。
【0103】
制御部100は、指定された画像形成が正常に終了すると(S1110のNo)、定着ローラ20の加熱幅がLmaxになるようにモータMにより規制部材73を制御し、移動した規制部材73の位置情報をメモリ上に残しておく(S1112)。この状態のまま、OFF状態もしくは、スリープモードに移行して、次のプリント信号やON信号を待つ待機状態になる。
【0104】
制御部100は、定着温度の異常や記録材のジャム等でプリント動作中に異常終了した場合は、次回の起動時にホームポジションサーチを行うために、メモリ上の規制部材位置情報をリセットしておく(S1111)。
【0105】
実施例2では、プリント動作後に再びLmax位置に規制部材73が移動しているので、次回プリント動作時に規制部材73の予備動作等が必要ない。このため、常に即時プリントに必要最小限の領域(=Lmax)が効率よく加熱されるようになっている。
【0106】
<実施例3>
図14は実施例3の定着装置の起動制御における加熱幅調整の説明図である。実施例3では、温度検知部102で検出した定着装置の温度状態に基づいて、定着ローラ20の加熱幅をLmaxから前後に微調整する。
【0107】
図14の(a)に示すように、定着装置5の初期温度が20℃のときと、定着装置5の初期温度が低温環境である5℃のときとで、定着ローラ20の長手中央部が定着動作可能になったときの長手温度分布を測定して比較した。初期温度が20℃のときと5℃のときとでは、同じ規制部材73の位置で加熱を開始しても、定着装置5が立ち上がった時の定着可能範囲が異なってくる。
【0108】
5℃環境から電力投入した場合は、必要加熱幅であるA4幅において、端部での温度ダレが発生してしまい、A4幅端部で画像不良が発生してしまう。これは、低温環境における定着ローラ20の長手方向端部からの放熱量の増加と、発熱幅を極小化したこととによって、必要加熱幅を満足できなくなったためである。
【0109】
そこで、実施例3では、温度検出手段の一例である温度検知部102は、定着ローラ20の周囲温度を検出可能である。制御部100は、温度検知部102の検出結果に基づいて、定着ローラ20の周囲温度が高いほど定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【0110】
すなわち、定着装置5の温度が15℃を下回った場合、通常環境時に想定している加熱幅よりも20mm広い加熱幅を設定して加熱を開始させるように制御した。その他の動作、構成等は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0111】
図14の(b)に示すように、実施例3の制御を適用することで、初期温度が5℃から定着装置5に電力供給した場合でも長手中央部に定着動作可能な長手温度分布を確保できる。低温環境においても、通常環境と同様に、ユーザーが複数の記録材カセットに準備されている記録材のサイズのうち、どのサイズを選択した場合においても、温度ムラによる光沢ムラや定着不良等の画像不良を発生することがなかった。余分なエネルギーを消費することなく、即座にプリント動作可能である。実施例3の制御によれば、低温環境においても、画像不良を発生することなく、不必要なエネルギーを低減することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1a、1b、1c、1d 画像形成部
2 中間転写ベルト、5 定着装置、6 露光装置
20 定着ローラ、22 加圧ローラ、30 画像形成装置
70 定着装置、71 励磁コイル、72 磁性体コア、73 規制部材
75 リンク部材、77 磁性体コアホルダ、82 磁気回路部材
100 制御部、102、314 温度検知部
103、104、105 記録材カセット、300 電源装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱回転体の画像形成可能温度である範囲を記録材に合わせて変更可能な像加熱装置を備えた画像形成装置、詳しくは電源投入時やスリープモード復帰時において画像形成を少ない消費電力と短い待ち時間で開始させるための制御に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体(感光体又は中間転写体)にトナー像を形成して記録材に転写した後に、トナー像が転写された記録材を定着装置の加熱ニップで挟持搬送して画像を記録材に定着させる画像形成装置が広く用いられている。定着装置以外にも、半定着又は定着済み画像を担持した記録材を加熱処理して画像の表面性状を調整する各種の像加熱装置も実用化されている。
【0003】
記録材の画像面に接して記録材を加熱する加熱回転体(ローラ部材又はベルト部材)の加熱源として誘導加熱装置を採用した像加熱装置が実用化されている(特許文献1)。誘導加熱装置を装備した定着装置は、比較的に小さな体積の加熱回転体の限られた領域に磁束を集中させて効率的な加熱を行うことができるため、電源投入後、短時間で加熱回転体の温度を画像形成可能温度まで上昇させて画像形成を開始できる。
【0004】
しかし、誘導加熱装置を用いて加熱回転体を加熱した場合、記録材に接して除熱される領域の外側に、記録材による除熱を受けないために高温になってしまう領域が形成される可能性がある。いわゆる非通紙部昇温の問題である。
【0005】
特許文献1では、加熱回転体の長手方向に複数の磁性体コアを配置し、両端部の磁性体コアについて、加熱回転体に対する対向間隔を変化させることにより、非通紙部昇温を回避している。
【0006】
特許文献2では、加熱回転体の長手方向に配置された磁性体コアを、長さの異なるものに変更することで、加熱回転体に入射する磁束の長手方向における磁束密度分布を記録材の搬送幅方向長さに応じて設定して、非通紙部昇温を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−194940号公報
【特許文献2】特開2005−321633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、電源投入時には、画像形成可能な最大サイズの記録材に合せて加熱回転体の画像形成可能温度まで上昇させる範囲が設定されて、加熱回転体の温度を上昇させる制御が実行されていた。そして、画像形成の開始後、加熱回転体に発生した非通紙部昇温を解消するために、加熱回転体に沿った磁束密度分布を記録材の搬送幅方向長さに応じて設定していた。
【0009】
このため、画像形成装置の記録材供給部にはがきサイズの記録材しか保持されていない場合であっても、常に通紙可能な最大サイズの記録材に画像を定着可能な状態にまで像加熱装置が温度上昇制御されていた。その結果、画像形成装置の電源投入時における合計消費電力の70%〜80%を占める定着装置を温度上昇制御するために相当に無駄な電力が消費されていた。
【0010】
特に、消費電力の定格の小さい画像形成装置の場合、電源投入時の消費電力を定格値に抑えるために、誘導加熱装置の加熱が抑制されていた。その結果、像加熱装置を画像形成可能温度まで温度上昇させるまでの待ち時間の短縮を図ることが難しかった。
【0011】
本発明は、画像形成装置の電源投入時に、必要最小限の範囲で加熱回転体の画像形成可能温度まで上昇させる範囲を設定することにより、低い消費電力で像加熱装置を速やかに温度上昇制御させて画像形成を開始できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、トナー像を形成して記録材に転写するトナー像形成部と、記録材を収容してトナー像形成部へ供給可能な記録材供給部と、トナー像が転写された記録材を加熱する加熱回転体と、磁束を発生して前記加熱回転体を加熱する誘導加熱装置と、を備えるものである。そして、前記誘導加熱装置は、前記加熱回転体の回転軸線方向における温度分布を変更可能な変更手段を有し、前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さが通紙可能な最大サイズの記録材の前記回転軸線方向の長さよりも小さい場合には、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させる際に、前記最大サイズの記録材が収容されている場合に比べて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さくするように前記変更手段を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、記録材供給部に現実に保持されて利用可能な記録材に必要なだけの画像形成可能温度である範囲を設定して加熱回転体の温度を上昇させる制御を実行する。複数種類の記録材を収容している場合でも、記録材供給部に現実に保持されている複数種類の記録材のうちで最大のものを想定しておくことで、加熱回転体の温度が立ち上がった後は、どの記録材が選択されても直ちにその記録材に画像形成を開始できる。
【0014】
このため、記録材供給部に現実に保持されていない最大サイズの記録材に合せて加熱回転体の温度を上昇させる制御を実行する場合よりも消費電力が削減される。誘導加熱装置は、合計の消費電力を抑えつつ、加熱する範囲を絞り込むことで、加熱回転体に対して加熱密度の高い温度を上昇させる制御を行うことができる。
【0015】
したがって、画像形成装置の電源投入時に、必要最小限の範囲で加熱回転体の温度を上昇させる制御を行うことが可能になり、低い消費電力で像加熱装置を速やかに立ち上げて画像形成を開始することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】定着装置の斜視図である。
【図3】定着装置の構成の説明図である。
【図4】定着ローラと励磁コイルと磁性体コアの配置の説明図である。
【図5】誘導加熱装置の回路図である。
【図6】磁性体コア移動機構の斜視図である。
【図7】磁性体コア移動機構の動作の説明図である。
【図8】最大加熱幅状態の説明図である。
【図9】加熱幅の調整動作の説明図である。
【図10】実施例1における画像形成装置の制御ブロック図である。
【図11】実施例1の定着装置の起動制御のフローチャートである。
【図12】実施例1における消費電力削減効果の説明図である。
【図13】実施例2の定着装置の起動制御のフローチャートである。
【図14】実施例3の定着装置の起動制御における加熱幅調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、収容した最大サイズの記録材に合わせて起動時(スリープモード復帰時を含む)の誘導加熱範囲が設定される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0018】
従って、像加熱装置は、トナー像を転写された記録材を加熱処理して記録材にトナー像を定着させる定着装置のみならず、半定着又は定着済みトナー像を加熱処理して画像に所望の表面性を付与する表面処理装置を含む。誘導加熱される回転体及び圧接させる回転体は、ローラのみならずベルト、フィルムを含む。
【0019】
像加熱装置を搭載する画像形成装置は、モノクロ/フルカラー、枚葉型/記録材搬送型/中間転写型、トナー像形成方式、転写方式の区別無く本発明を実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0020】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、トナー像形成部の一例である画像形成部1a、1b、1c、1dは、トナー像を形成して記録材に転写する。記録材供給部の一例である記録材カセット103、104、105は、記録材を収容して二次転写部T2へ供給可能である。記録材カセット103、104、105は、複数種類の記録材を収容する。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置30は、中間転写ベルト2の下向き面に沿って画像形成部1a、1b、1c、1dを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。画像形成部1a、1b、1c、1dは、それぞれ単独に着脱可能な交換ユニット(プロセスカートリッジ)に組み立てられている。
【0022】
画像形成部1aでは、感光ドラムaにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。画像形成部1bでは、感光ドラムbにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。画像形成部1c、1dでは、それぞれ感光ドラムc、dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト2に転写される。
【0023】
中間転写ベルト2に転写された四色のトナー像は、二次転写部3へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置5で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、排出ローラ11を通じて上部トレイ7へ排出される。
【0024】
分離ローラ8は、記録材カセット103から引き出した記録材Pを1枚ずつに分離して、レジストローラ9へ送り出す。レジストローラ9は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト2のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。
【0025】
画像形成部1a、1b、1c、1dは、それぞれの現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部1aについて説明し、他の画像形成部1b、1c、1dについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0026】
画像形成部1aは、感光ドラムaの周囲を囲むように、不図示の帯電ローラ、現像装置、ドラムクリーニング装置を内蔵している。感光ドラムaは、アルミニウム製シリンダの外周面に感光層を形成しており、所定のプロセススピードで回転する。感光ドラムaは、帯電ローラを用いて、一様な負極性の電位に帯電される。
【0027】
露光装置6は、各色の分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラムaの表面に画像の静電像を書き込む。感光ドラムaに書き込まれた静電像は、現像装置によってトナーを付着させて、トナー像に反転現像される。
【0028】
転写ローラ2aは、中間転写ベルト2を押圧して、感光ドラムaと中間転写ベルト2との間に転写部を形成する。転写ローラ2aに正極性の直流電圧が印加されることにより、感光ドラムaに担持された負極性のトナー像が、転写部Taを通過する中間転写ベルト2へ一次転写される。
【0029】
<像加熱装置>
図2は定着装置の斜視図である。図3は定着装置の構成の説明図である。図4は定着ローラと励磁コイルと磁性体コアの配置の説明図である。図5は誘導加熱装置の回路図である。
【0030】
図2に示すように、加熱回転体の一例である定着ローラ20は、トナー像が転写された記録材を加熱する。定着装置5は、定着ローラ20に対して加圧ローラ22を水平方向に圧接して記録材Pの加熱ニップNを形成している。
【0031】
図3に示すように、定着ローラ20は、磁性体の芯金パイプ20aの外周にシリコンゴムの弾性層20bを配置し、弾性層20bの外周面をフッ素樹脂の離型層20cで被覆している。加圧ローラ22は、定着ローラ20の対向に配置されて、両側の軸端に配置された不図示の励磁コイルばねによって定着ローラ20へ向かって付勢されている。
【0032】
加圧ローラ22は、磁性体の芯金パイプ22aの外周にシリコンゴムの弾性層22bを配置し、弾性層22bの外周面をフッ素樹脂の離型層22cで被覆している。定着ローラ20と加圧ローラ22は、長手方向の一端部に配置された不図示のギア列で連結され、ギア列に接続された不図示の駆動モータに駆動されて一体に回転する。
【0033】
定着ローラ20は、定着ローラ20の外周に配設された励磁コイル71、磁性体コア72、磁気回路部材82を主体とした誘導加熱装置70によって外側から加熱される。誘導加熱装置の一例である誘導加熱装置70は、磁束を発生して定着ローラ20を加熱する。誘導発熱体としての定着ローラ20は、鉄等の強磁性の金属(透磁率の高い金属)を使うことで、誘導加熱装置70から発生する磁束を金属内部により多く拘束させる。磁束密度を高くすることにより、金属表面に渦電流を発生し、効率的に定着ローラ20を発熱させることができる。
【0034】
定着装置5のハウジング76の内部に、紙面と垂直方向に長円状に形成された励磁コイル71が配置されている。励磁コイル71の中心に一部分を侵入させて、紙面と垂直方向に分割された複数の磁性体コア72が配置されている。磁気回路部材82は、磁性体コア72と定着ローラ20の芯金パイプ20aとを周回するように、励磁コイル71が発生する磁束の磁気回路を形成する。磁性体コア72及び磁気回路部材82は、励磁コイル71より発生した交流磁束の磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。磁性体コア72は、交流磁束を効率よく定着ローラ20を構成している誘導発熱体に導く役目をするため、材質として、フェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いている。
【0035】
図4に示すように、励磁コイル71は、長手方向に略楕円形状(横長舟形)をしており、定着ローラ20の外周面に沿うように配置されている。励磁コイル71は、φ0.1〜0.3mmの絶縁被覆電線の細線を略80〜160本程度束ねたリッツ線を芯線として用いている。芯線は、磁性体コア72を周回するように8〜12回巻回して励磁コイル71を構成している。
【0036】
磁性体コア72は、記録材搬送方向と直交する記録材搬送幅方向に複数個が配列状態で配置されている。磁性体コア72は、定着ローラ20の軸垂直断面において、励磁コイル71の巻き中心部と外周面を円弧状に連絡するように構成されている。
【0037】
磁性体コア72のうち、長手方向両端の通紙端部の磁性体コア72bと、領域Eに配置されて破線60を境として、励磁コイル71の楕円内部に入り込む中間の磁性体コア72bは、後述する磁性体コア移動機構によって、移動可能となっている。
【0038】
磁性体コア72のうち、通紙中心部の領域Dに配置された磁性体コアは、図3に示すハウジング76に固定されている。通紙中心部の領域Dは、搬送幅方向の長さが最小である「はがきサイズ紙」の幅に対応した領域幅となっている。
【0039】
定着装置5は、定着ローラ20を加熱するため、励磁コイル71による磁束で定着ローラ20に設けた誘導発熱体に渦電流を発生させてジュール熱により発熱させる誘導加熱方式を採用している。誘導加熱方式は、熱発生位置を加熱ニップNのごく近くに置くことができるので、ハロゲンランプヒータを用いた熱ローラ方式に比して、電源投入時に、定着ローラ20表面の温度が定着に適当な温度になるまでに要する時間が短くて済む。また、熱発生位置から加熱ニップNへの熱伝達経路が短く単純であるため、加熱の熱効率が高い。
【0040】
励磁コイル71に高周波電流が印加されると、定着ローラ20が発熱する。励磁コイル71は、供給される交流電流によって交番磁束を発生し、交番磁束は磁性体コア72に導かれて、誘導発熱体である定着ローラ20に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、励磁コイル71に交流電流を供給することで定着ローラ20が電磁誘導発熱状態になる。
【0041】
図5に示すように、励磁回路310は、定着装置5の励磁コイル71へ高周波電流の交番電流を供給する。励磁コイル71は、電源装置300の励磁回路310におけるスイッチ素子303、304の接続点とコンデンサ305、306の接続点との間に接続されている。励磁コイル71は、磁束を発生して定着ローラ20を誘導加熱する。
【0042】
電源装置300は、ダイオードブリッジ301と、フィルタコンデンサ302とで整流平滑回路を構成して直流電圧を発生させる。電力制御部313は、駆動部312を介して、スイッチ素子303、304を交互に作動させて、励磁コイル71に交流電圧を印加する。コンデンサ305、306は、励磁コイル71とともに共振回路を形成する共振コンデンサである。駆動部312は、2つのスイッチ素子303、304をそれぞれ駆動する。
【0043】
電力検知部311は、電源装置300の入力電力を検出する。
【0044】
温度検出素子314は、導電性発熱体である定着ローラ20表面に対向する位置に非接触で配置され、定着ローラ20の温度を検出する。
【0045】
電力制御部313は、画像形成装置30の制御部30からの動作命令と、温度検知部314の検出結果などの定着装置5の状態から、駆動部312が出力する電力条件を決定する。駆動部312は、電力制御部313で決定された電力条件に従って、2つのスイッチ素子303、304を駆動する。
【0046】
<磁性体コア移動機構>
図6は磁性体コア移動機構の斜視図である。図7は磁性体コア移動機構の動作の説明図である。図8は最大加熱幅状態の説明図である。図9は加熱幅の調整動作の説明図である。
【0047】
図2に示すように、定着装置5においては、小サイズの記録材Pを連続して通紙して多量に定着処理した時、定着ローラ20表面の記録材Pの接触する通紙領域では、記録材Pに熱が伝わり搬送されて行く。これに対し、接触しない非通紙領域では熱を付与するものがないので熱が蓄積され、通紙領域と非通紙領域とで温度差が生じることがある。
【0048】
通紙領域は、所定の定着温度に維持されるので、非通紙領域が過度に昇温して非通紙部昇温が発生する。非通紙部昇温が生じると、励磁コイル71の表皮効果等による発熱や、磁性体コア72のヒステリシス損による自己発熱とあいまって、励磁コイル71の巻線被覆に高い耐熱性を有した樹脂が必要になって装置構成が制約される。また、磁性体コア72が固有のキュリー温度を超えて磁性を失う問題も考えられる。
【0049】
そこで、図4に示すように、定着装置5では、磁性体コア72が記録材Pの搬送方向に直交する記録材幅方向で分割されている。種々の紙サイズ、例えばハガキ、A5、B4、A4、A3ノビサイズの各サイズにおける非通紙部昇温を回避できるように、通紙端部の領域Eにおいて、磁性体コア72は定着ローラ20の長手方向で複数に分割されている。
【0050】
図3に示すように、磁性体コア72は、リンク部材75によって移動可能として、記録材のサイズの外側では、励磁コイル71と磁性体コア72の距離を大きく設定している。励磁コイル71から磁性体コア72が離れると、励磁コイル71の周りにできる、磁性体コア72及び定着ローラ20の誘導発熱体の磁気回路の効率が落ちて、発熱量が低下する。これにより、非通紙部昇温が回避されて、磁性体コア72や励磁コイル71の過剰な昇温も回避される。
【0051】
それぞれの磁性体コア72は、磁性体コアホルダ77に熱溶着されて保持されており、ハウジング76内に収まっている。磁性体コアホルダ77は、ハウジング76の案内溝761の案内によって、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙を変化させる矢印P方向に移動可能になっている。
【0052】
リンク部材75は、回転軸78周りに回転可動に組み立てられ、端部の長穴部が磁性体コアホルダ77の連結部771と連結されている。リンク部材75が回転軸78周りにQ1方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72がP1方向へ移動し、リンク部材75がQ2方向へ回転すると、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72がP2方向へ移動する。このように、リンク部材75を設けることによって、磁性体コアホルダ77と磁性体コア72の移動距離を長くすることが可能となる。リンク部材75は、励磁コイルばね74によってQ1方向へ回転する方向へ付勢されているが、規制部材73によって、リンク部材75のQ1方向への回転が規制されている。
【0053】
図6に示すように、規制部材73はピニオンギア80と連結され、ピニオンギア80の回転運動により、記録材搬送方向に直交する搬送幅方向(Y方向)へ移動可能となっている。ホームポジションセンサ81は、フォトインタラプタであり、規制部材73のフラグ部73aによって遮光される。図6は、B4サイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0054】
図8に示すように、規制部材73がホームポジションに移動すると、ホームポジションセンサ81がフラグ部73によって遮光されて、ON状態となる。図8は、A4ノビサイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0055】
図7の(a)に示すように、規制部材73によってリンク部材75が押し込まれている状態では、リンク部材75は、励磁コイルばね74に逆らってQ2方向へ回動している。このとき、磁性体コアホルダ77が矢印P2方向へ移動して磁性体コア72が励磁コイル71に近付いている。
【0056】
図8に示すように、ピニオンギア80はモータMと駆動連結されており、モータMの駆動力によって動作する。規制部材73がY1方向へ移動を開始すると、端部側のリンク部材75から順番に規制部材73による押し込みが解除される。規制部材73が端部側から中央側へ移動するとき、端部側の磁性体コア72から規制が解除される。規制部材73がホームポジションよりも外側へ移動することが無いため、定着装置5を省スペースで構成できる。
【0057】
図7の(b)に示すように、規制部材73による押し込みが解除されると、リンク部材75は、励磁コイルばね74に付勢されてQ1方向へ回動する。これにより、磁性体コアホルダ77が矢印P1方向へ移動して磁性体コア72が励磁コイル71から遠ざかる。規制部材73の規制から外れたリンク部材75は、フレーム79の突き当て部Aに当接して、リンク部材75の移動限界位置を規制される。これに伴って、磁性体コアホルダ77および磁性体コア72は、ハウジング76の案内溝761の案内によって、P1方向へ移動し、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙が広がる。
【0058】
図9に示すように、磁性体コアホルダ77a、77b、77c、77d、77eについて規制部材73による押し込みが解除されて、図7の(b)に示すように、磁性体コア72と励磁コイル71との間隙が広がっている。図9は、B4サイズの記録材の画像形成時に設定される規制部材73の位置を示している。
【0059】
したがって、A4ノビサイズとB4サイズの間に位置する励磁コイル71と磁性体コア72の距離が離れて、励磁コイル71の周りにできる磁性体コア72及び誘導発熱体からなる磁気回路の効率が落ちて、発熱量が低下する。B4サイズにおける非通紙部昇温が回避され、その結果磁性体コア72や励磁コイル71の過剰な温度上昇も回避される。
【0060】
また、逆に、図9の状態から規制部材73をY2方向へ動かして図8に示すホームポジションへ戻すと、図7の(a)に示すように、規制部材73の先端部739がリンク部材75の斜面759と接触し、リンク部材75を矢印Q2方向へ回転させる。このとき、磁性体コアホルダ77および磁性体コア72は、矢印P2方向へ動作する。
【0061】
なお、ここでは、記録材の搬送が中央基準であって、ピニオンギア80が両端部の2つの規制部材73と連結している。しかし、記録材の搬送が片側基準の場合は、ピニオンギア80が片側1つの規制部材73と連結し、片側のみ磁性体コアを移動させる機構であってもよい。
【0062】
また、ここでは、リンク部材75にコイルばね74を取り付けているが、結果として磁性体コア72が矢印P1方向へ移動可能であればよく、磁性体コア72や磁性体コアホルダ77へコイルばね以外の付勢部材を取り付けてもよい。リンク部材75の自重によって矢印Q1方向へモーメントを作用させてもよい。
【0063】
定着装置5は、磁性体コアホルダ77a〜77mのうちで記録材の搬送幅方向に応じて定めた個数のものについて規制部材73による押し込みが解除される。これにより、記録材の搬送方向幅の外側に位置する磁性体コア72と励磁コイル71との間隙を拡大させて、非通紙部昇温を防止している。各種の記録材サイズに対応するため、その移動距離を記録材のサイズによって異ならせて、各記録材のサイズによっても非通紙部昇温を防止している。
【0064】
ところで、従来の画像形成装置では、画像形成装置に設置されている記録材カセットに搭載された記録材のサイズに関わらず、常に最大通紙可能幅であるA4ノビサイズ全域を加熱していた。その結果、A4ノビサイズの記録材がセットされていない場合、不必要な部分を加熱することとなっていた。
【0065】
図5に示すように、電源装置300では、電力検知部311によって消費電力を常時検出して、電力制御部313が定着装置5の起動時における電源装置300に投入可能な電力の最大値を制限している。このため、定着装置5では、定着ローラ20の定着可能な温度に温度調整される領域が増加すると、単位面積当りの発熱量が低下して、定着装置5の温度上昇制御の時間が長くなってしまう。その際、画像形成信号が入力されてから、磁束密度分布の調整を開始する構成では、その時間だけロスしてしまう。
【0066】
そこで、以下の実施例では、磁性体コアの移動により磁束密度分布の調整を行う構成において、画像形成装置に設けられている記録材に画像を形成する際により一層の温度上昇制御の時間の短縮を実現している。
【0067】
<実施例1>
図10は実施例1における画像形成装置の制御ブロック図である。図11は実施例1の定着装置の起動制御のフローチャートである。図12は実施例1における消費電力削減効果の説明図である。
【0068】
図3に示すように、誘導加熱装置70は、定着ローラ20の回転軸線方向における画像形成可能温度である範囲を可変に設定可能である。励磁コイル部材の一例である励磁コイル71は、定着ローラ20へ入射する磁束を発生する。変更手段の一例である磁性体コア72は、励磁コイル71が発生する磁束に対する定着ローラ20の長手方向に沿った磁気抵抗分布を変更可能である。複数個の磁性体コア72は、定着ローラ20の長手方向に配列して励磁コイル71が発生する磁束をそれぞれの領域で定着ローラ20に案内する。移動機構の一例である規制部材73は、複数個の磁性体コア72を定着ローラ20に対して接離する方向へ移動させる。
【0069】
制御手段の一例である制御部100は、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材の搬送方向に直角な搬送幅方向長さが小さいほど、定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。制御部100は、磁性体コア72の位置を制御して誘導加熱装置70の温度上昇制御の時における定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を設定する。制御部100は、記録材の搬送幅方向長さに応じた個数の磁性体コア72を他の磁性体コア72よりも定着ローラ20に近付けた状態で誘導加熱装置70による温度上昇制御を行う。制御部100は、記録材カセット103、104、105に収容されている記録材のうちで搬送幅方向長さが最大のものの当該搬送幅方向長さが小さいほど定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【0070】
図10に示すように、制御部100は、画像形成装置30の動作を制御する中央制御装置(コンピュータ)である。
【0071】
記録材サイズ入力部101は、操作パネルを通じたオペレータの操作内容又は外部コンピュータから送信された記録材サイズ情報に基づいて記録材のサイズを判別する。記録材サイズ検知部103〜105は、図1に示すように、三段の記録材カセット103〜105に付設されたセンサ103s〜105sの出力に基づいて記録材カセット103〜105に搭載された記録材の搬送幅方向サイズを検出する。センサ103s〜105sは、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pの幅方向の端部規制部材の位置情報から、記録材サイズ検知を行う。
【0072】
制御部100は、記録材サイズ入力部101の出力情報と記録材サイズ検知部103〜105の出力情報を読み取って、次に画像形成される記録材のサイズに対応した定着ローラ20の加熱幅を決定する。制御部100は、記録材サイズ入力部101又は記録材サイズ検知部103〜105の出力データを読み取って、次に定着される記録材Pの搬送幅方向のサイズに対応した定着ローラ20の発熱幅を決定する。
【0073】
制御部100は、モータMに、ステッピングモータ等を用い、規制部材73のホームポジション位置からステッピングモータに送るパルス数と発熱幅の関係をメモリ上に有するため、定着ローラ20に詳細な発熱幅を設定して制御することが可能である。
【0074】
図11に示すように、画像形成動作は、制御部100に記録材サイズ、画像データ、枚数等のユーザー設定情報が転送された後に開始される。ユーザー設定情報は、画像形成装置30に設置されている操作パネル(101:図1)や、通信回線によって接続された外部のコンピュータなどから設定される。
【0075】
電源ON、紙サイズ変更時、スタンバイからの起動時等、もしくは電源OFFまでの制御が実行される。
【0076】
制御部100は、電源ON、紙サイズ変更時、スタンバイからの起動時等の初期動作時、規制部材73の位置が不明の場合(S1000のNo)、規制部材73の位置を確認するホームポジションサーチを行う(S1001)。定着装置5の交換時、異常動作終了時などで規制部材73位置が不明となる。制御部100は、ホームポジションセンサ81の入力信号を読み取り、OFF状態すなわち規制部材73がホームポジションにいない場合、ホームポジションサーチ動作を行う(S1001)。
【0077】
図2に示すように、ホームポジションセンサ81として用いているフォトインタラプタのON−OFF信号により、規制部材73の位置のホームポジションを検知する。規制部材73をY2方向へ移動させるようにモータMを回転させ、ホームポジションセンサ81がOFFからON状態に切り替わるところで停止する。また、初期状態でホームポジションセンサ81が、ON状態である場合、規制部材73を先ほどと逆方向のY1方向へ動くようにモータMを回転させ、ホームポジションセンサ81がOFFへ切換わったところで停止する。その後、メモリ上に規制部材73位置がホームポジションにあることを記録する。
【0078】
初期動作時に規制部材73がホームポジションから遠い場所に位置してホームポジションセンサ81がOFF状態である場合はもちろん、近い場合でもホームポジションサーチには、1.0秒以上の動作時間が必要である。従来の定着装置では、この程度の動作時間は大きな弊害ではない。しかし、ウォームアップタイムが10秒以下の定着装置5の場合、ホームポジションサーチの動作時間の占める割合が大きくなり、重要になってくる。そこで、実施例1では、なるべくホームポジションサーチを行わないように、規制部材73の位置情報が不明の場合のみ最小限実施するようにとどめた(S1002)。
【0079】
制御部100は、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pのサイズ情報を、記録材サイズ入力部101および記録材検知部103〜105により検出する(S1003)。例えばA4サイズ、A4縦サイズ、A5サイズ、はがきサイズなどの記録材のサイズがある。
【0080】
制御部100は、検知した記録材サイズのうちの最大幅サイズをLmaxと設定する(S1004)。そして、加熱ローラ20の加熱幅がLmaxになるように規制部材73を移動させる(S1005)。制御部100は、規制部材73のホームポジション位置情報と、モータMの駆動制御により、所望の発熱幅が得られるような構成になっている。制御部100は、モータMを制御して規制部材73の位置を定着装置5の長手方向に移動させて、規制部材73の位置を変える。
【0081】
制御部100は、電源装置300を起動して励磁回路310により定着ローラ20の加熱を開始する(S1006)。図3に示すように、温度検知部314によって検出される定着ローラ20の中央部の表面温度が定着可能温度に達すると、画像形成を開始可能になる(S1007のYes)。
【0082】
制御部100は、プリント信号があると(S1008のYes)画像形成を開始するために、最大幅サイズLmaxに設定された加熱ローラ20の加熱幅を、画像形成に用いる記録材の搬送幅方向サイズに応じた加熱幅へ変更する(S1009)。通紙される記録材の搬送幅方向サイズに対応した加熱幅になるように、メモリ上の規制部材73位置情報とモータMのパルス数との関係から、規制部材73の位置を制御する。この際、通紙される記録材の搬送幅方向サイズに対応した加熱幅が現在の幅よりも狭い場合は、モータMにより規制部材73を所望の位置に移動しながら通紙する。このようにすることで、規制部材73が移動するまでのダウンタイムを少なくすることが可能である。
【0083】
制御部100は、定着装置5を制御して、画像形成がされて定着装置5へ搬送されてきた記録材を加熱処理する(S1010)。プリント動作中に、A4Rサイズ等の紙幅が狭いものの後に、A4などの紙幅が広いものを通紙する場合、紙幅の広いものに対応した加熱幅が均一な温度になるまでの所定時間通紙を行わずに回転させる。そして、その後、規制部材73をA4幅に対応する位置に移動させ加熱させる。このようにすることで、定着ローラ20の端部での過昇温や端部温度ダレによるホットオフセットやコールドオフセット等の異常画像が発生するのを防止することができる。手差しトレイ等により、現在通紙されている紙サイズよりも幅の広い紙があらたに設定された場合も同様に対応する。
【0084】
制御部100は、指定された画像形成が終了すると(S1011のYes)、スタンバイ状態へ移行、または画像形成装置30の電源をOFFする。
【0085】
ここで、電源装置300に1000Wの電力を供給し、記録材カセット103、104、105にA4サイズ、A4縦サイズ、A5サイズをそれぞれセットして、実施例1の制御を実験した。定着装置5が搬送可能な最大サイズは、A4ノビサイズ(幅330mm×長さ483mm)である。
【0086】
図12の(a)に示すように、実施例1の制御では、定着ローラ20長手中央部が定着可能温度(180℃)に達したときの発熱分布は、最大幅サイズLmaxであるA4サイズ幅(297mm)に限られる。供給可能な記録材サイズの最大幅Lmax=297mm(A4サイズ幅)の範囲で定着可能温度に達している。A4サイズ幅(297mm)で定着装置5を温度上昇制御させた後に、画像形成される記録材に応じて、A4縦サイズ、A5サイズの加熱ローラ20の加熱幅へ移行させる。
【0087】
このときの電源装置300に電力を投入してから、定着可能温度に達する時間は、10秒であった。これにより、ユーザーが、複数の記録材カセット103、104、105に準備されている記録材のサイズのうち、どのサイズを選択した場合においても、温度ムラによる光沢ムラや定着不良等の画像不良を発生することなく、即座にプリント動作可能である。
【0088】
図12の(b)に示すように、比較例1の制御は、記録材カセット103、104、105に収容された記録材の搬送幅方向サイズとは無関係に、A4ノビサイズを定着可能に定着装置5を温度上昇制御させる従来の制御である。比較例1の制御では、搬送可能な最大サイズ330mmで加熱した場合の温度分布を示している。そのほかの条件は実施例1と同条件である。
【0089】
供給可能な記録材サイズの最大幅Lmax=297mmにおける温度ムラは発生していないことから、比較例1の制御においても温度ムラによる画像不良は発生しない。しかし、電源装置300に電力を投入してから定着ローラ20が定着可能温度に達するまでの時間が18秒程度と実施例1よりも長くなってしまう。これは、図5に示す電源装置300が電力検知部311で検出される供給電力を一定に保った状態で、記録材カセットに無いA4ノビサイズ領域まで加熱するため、余分なエネルギーが消費されるためである。
【0090】
以上のように、実施例1の制御によれば、必要最小限の領域を効率よく加熱することで、定着装置5の温度上昇制御の時間を短縮し、消費電力を抑えつつ、効率よく定着ローラ20を加熱することができる。
【0091】
実施例1の制御によれば、記録材カセット103、104、105において現実にセットされている記録材のうちで最大搬送幅サイズのものに対応した範囲だけを加熱するように構成するので、定着装置5の温度上昇制御の(復帰)時間の極少化ができる。予備加熱時に、定着ローラ20の必要最小限の領域のみを加熱することで、温度ムラによる画像面の光沢ムラの発生を防ぎつつ、省エネ、低エネルギー化が可能である。記録材カセット103、104、105にセットされている記録材の最大幅に対応した範囲だけを加熱するので、温度ムラによる光沢ムラの発生を防ぎつつ、定着ローラ20を画像形成可能温度まで温度上昇させる時間の極小化が可能である。
【0092】
<実施例2>
図13は実施例2の定着装置の起動制御のフローチャートである。実施例1では、定着装置5の昇温開始前に定着ローラ20の加熱幅を設定した。これに対して、実施例2では、プリント動作後に定着ローラ20の加熱幅を設定して定着装置をOFF又はスリープモードへ移行する。このため、画像形成装置30の起動時又はスリープモードからの復帰時において、定着装置5の昇温開始前に定着ローラ20の加熱幅を設定することなく、直ちに定着装置5の昇温を開始している。実施例2の制御は、図11のフローチャートが図13のものに置き換わる以外は装置構成及び画像形成等制御は実施例1と同一である。
【0093】
図13に示すように、制御部100は、画像形成の終了後、次回の誘導加熱装置70の温度上昇制御の際に用いる画像形成可能温度である範囲を設定した後に、誘導加熱装置70を停止させる。
【0094】
制御部100は、電源ON又はスリープモードからの初期動作時、規制部材73位置が不明の場合(S1100のNo)、ホームポジションサーチを行って規制部材73をホームポジションに位置決める(S1101)。
【0095】
制御部100は、前回の定着動作終了時にメモリに格納された規制部材73の位置情報がある場合は、ホームポジションサーチを行わないで、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pのサイズ情報を取得する(S1102)。
【0096】
制御部100は、検知した記録材サイズのうちの最大幅サイズを前回の定着動作終了時に検出して規制部材73に設定したLmaxと比較する(S1103)。
【0097】
制御部100は、検知した記録材サイズが規制部材73に既に設定されているLmax以下であれば(S1103のNo)、直ちに電源装置300を起動して、励磁回路310により定着ローラ20の加熱を開始する(S1106)。これにより、規制部材73の位置の再設定を挟まない分、実施例1よりも早期に定着装置5の温度上昇制御を完了させることができる。
【0098】
制御部100は、検知した記録材サイズが規制部材73に既に設定されているLmaxを超えていれば(S1103のYes)、Lmaxを検出した新たな値に置き換えて(S1104)、規制部材73の位置の再設定を行う(S1105)。その後、電源装置300により定着ローラ20の加熱を開始して(S1106)、昇温時の定着ローラ20の必要な加熱幅を確保する。
【0099】
温度検知部314によって検出される定着ローラ20の中央部の表面温度が定着可能温度に達すると、画像形成を開始可能になる(S1107のYes)。
【0100】
制御部100は、プリント信号があると(S1108のYes)、最大幅サイズLmaxに設定された加熱ローラ20の加熱幅を、画像形成に用いる記録材の搬送幅方向サイズに応じた加熱幅へ変更する(S1109)。
【0101】
制御部100は、画像形成がされて定着装置5へ搬送されてきた記録材を定着装置5により加熱処理する(S1109)。
【0102】
制御部100は、画像形成中、記録材カセット103〜105にセットされた記録材Pの最大幅サイズLmaxを求める。そして、新たに取得した最大幅サイズLmaxのほうが当初の最大幅サイズLmaxよりも小さい場合、新たに検知した最大幅サイズLmaxの値に更新する。そして、定着ローラ20の加熱幅がLmaxになるように、モータMにより規制部材73を制御し、移動した規制部材73の位置情報を、次回の起動時に利用するために、メモリ上に残しておく。移動した規制部材73の位置情報を、移動するごとにメモリ上に上書きして残しておく(S1109)。これにより、画像形成中に最大幅サイズの記録材が無くなった場合や、新たに最大幅サイズの記録材が追加された場合に対処している。
【0103】
制御部100は、指定された画像形成が正常に終了すると(S1110のNo)、定着ローラ20の加熱幅がLmaxになるようにモータMにより規制部材73を制御し、移動した規制部材73の位置情報をメモリ上に残しておく(S1112)。この状態のまま、OFF状態もしくは、スリープモードに移行して、次のプリント信号やON信号を待つ待機状態になる。
【0104】
制御部100は、定着温度の異常や記録材のジャム等でプリント動作中に異常終了した場合は、次回の起動時にホームポジションサーチを行うために、メモリ上の規制部材位置情報をリセットしておく(S1111)。
【0105】
実施例2では、プリント動作後に再びLmax位置に規制部材73が移動しているので、次回プリント動作時に規制部材73の予備動作等が必要ない。このため、常に即時プリントに必要最小限の領域(=Lmax)が効率よく加熱されるようになっている。
【0106】
<実施例3>
図14は実施例3の定着装置の起動制御における加熱幅調整の説明図である。実施例3では、温度検知部102で検出した定着装置の温度状態に基づいて、定着ローラ20の加熱幅をLmaxから前後に微調整する。
【0107】
図14の(a)に示すように、定着装置5の初期温度が20℃のときと、定着装置5の初期温度が低温環境である5℃のときとで、定着ローラ20の長手中央部が定着動作可能になったときの長手温度分布を測定して比較した。初期温度が20℃のときと5℃のときとでは、同じ規制部材73の位置で加熱を開始しても、定着装置5が立ち上がった時の定着可能範囲が異なってくる。
【0108】
5℃環境から電力投入した場合は、必要加熱幅であるA4幅において、端部での温度ダレが発生してしまい、A4幅端部で画像不良が発生してしまう。これは、低温環境における定着ローラ20の長手方向端部からの放熱量の増加と、発熱幅を極小化したこととによって、必要加熱幅を満足できなくなったためである。
【0109】
そこで、実施例3では、温度検出手段の一例である温度検知部102は、定着ローラ20の周囲温度を検出可能である。制御部100は、温度検知部102の検出結果に基づいて、定着ローラ20の周囲温度が高いほど定着ローラ20の画像形成可能温度である範囲を狭く設定する。
【0110】
すなわち、定着装置5の温度が15℃を下回った場合、通常環境時に想定している加熱幅よりも20mm広い加熱幅を設定して加熱を開始させるように制御した。その他の動作、構成等は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0111】
図14の(b)に示すように、実施例3の制御を適用することで、初期温度が5℃から定着装置5に電力供給した場合でも長手中央部に定着動作可能な長手温度分布を確保できる。低温環境においても、通常環境と同様に、ユーザーが複数の記録材カセットに準備されている記録材のサイズのうち、どのサイズを選択した場合においても、温度ムラによる光沢ムラや定着不良等の画像不良を発生することがなかった。余分なエネルギーを消費することなく、即座にプリント動作可能である。実施例3の制御によれば、低温環境においても、画像不良を発生することなく、不必要なエネルギーを低減することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1a、1b、1c、1d 画像形成部
2 中間転写ベルト、5 定着装置、6 露光装置
20 定着ローラ、22 加圧ローラ、30 画像形成装置
70 定着装置、71 励磁コイル、72 磁性体コア、73 規制部材
75 リンク部材、77 磁性体コアホルダ、82 磁気回路部材
100 制御部、102、314 温度検知部
103、104、105 記録材カセット、300 電源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成して記録材に転写するトナー像形成部と、記録材を収容してトナー像形成部へ供給可能な記録材供給部と、トナー像が転写された記録材を加熱する加熱回転体と、磁束を発生して前記加熱回転体を加熱する誘導加熱装置と、を備える画像形成装置において、
前記誘導加熱装置は、前記加熱回転体の回転軸線方向における温度分布を変更可能な変更手段を有し、
前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さが通紙可能な最大サイズの記録材の前記回転軸線方向の長さよりも小さい場合には、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させる際に、前記最大サイズの記録材が収容されている場合に比べて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さくするように前記変更手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記誘導加熱装置が発生する磁束に対する前記加熱回転体の磁気回路を、前記回転軸線方向に沿って変更する手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記回転軸線方向に配列して前記誘導加熱装置が発生する磁束をそれぞれの領域で前記加熱回転体に案内する複数個の磁性体コアと、前記複数個の磁性体コアを前記加熱回転体に対して接離する方向へ移動させる移動機構と、を有し、
前記制御手段は、記録材の前記回転軸線方向の長さに応じた個数の前記磁性体コアを他の前記磁性体コアよりも前記加熱回転体に近付けた状態で、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録材供給部は、複数種類の記録材を収容し、
前記制御手段は、前記記録材供給部に収容されている記録材のうちで前記回転軸線方向の長さが最大のものの前記回転軸線方向の長さが小さいほど前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さく設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、画像形成の終了後、前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さに対応させて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱回転体の周囲温度を検出可能な温度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記加熱回転体の周囲温度が高いほど、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さく設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナー像を形成して記録材に転写するトナー像形成部と、記録材を収容してトナー像形成部へ供給可能な記録材供給部と、トナー像が転写された記録材を加熱する加熱回転体と、磁束を発生して前記加熱回転体を加熱する誘導加熱装置と、を備える画像形成装置において、
前記誘導加熱装置は、前記加熱回転体の回転軸線方向における温度分布を変更可能な変更手段を有し、
前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さが通紙可能な最大サイズの記録材の前記回転軸線方向の長さよりも小さい場合には、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させる際に、前記最大サイズの記録材が収容されている場合に比べて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さくするように前記変更手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記誘導加熱装置が発生する磁束に対する前記加熱回転体の磁気回路を、前記回転軸線方向に沿って変更する手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記回転軸線方向に配列して前記誘導加熱装置が発生する磁束をそれぞれの領域で前記加熱回転体に案内する複数個の磁性体コアと、前記複数個の磁性体コアを前記加熱回転体に対して接離する方向へ移動させる移動機構と、を有し、
前記制御手段は、記録材の前記回転軸線方向の長さに応じた個数の前記磁性体コアを他の前記磁性体コアよりも前記加熱回転体に近付けた状態で、前記加熱回転体の温度を画像形成可能温度にまで上昇させることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録材供給部は、複数種類の記録材を収容し、
前記制御手段は、前記記録材供給部に収容されている記録材のうちで前記回転軸線方向の長さが最大のものの前記回転軸線方向の長さが小さいほど前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さく設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、画像形成の終了後、前記記録材供給部に収容されている記録材の前記回転軸線方向の長さに対応させて、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱回転体の周囲温度を検出可能な温度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記加熱回転体の周囲温度が高いほど、前記加熱回転体が画像形成可能温度である範囲の前記回転軸線方向の長さを小さく設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−37054(P2013−37054A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170801(P2011−170801)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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