説明

画像形成装置

【課題】記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラーの回転タイミングを補正する。
【解決手段】記録紙Pを収容する給紙カセット45と、所定時間間隔で回転することにより給紙カセット45に収容される記録紙Pを1枚ずつ取り出して送り出すピックアップローラー46と、ピックアップローラー46により給紙カセット45から搬送された記録紙Pを検出する給紙センサー49と、所定時間間隔でピックアップローラー46を回転させる演算制御部6とを具備する画像形成装置あって、演算制御部6は、記録紙Pの1枚毎にピックアップローラー46を回転させてから給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間を計測すると共に計測値とセンター値とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、給紙カセットから記録紙を連続して給紙する場合には、時間間隔を空けて記録紙を給紙することにより先行する記録紙との間隔を確保する。しかしながら、給紙における記録紙の間隔は、湿度等の影響により一定に維持することが大変難しい。例えば、湿度が低下した場合には、記録紙に含まれる水分量が低下するために記録紙とピックアップローラーとが滑り易くなるので、記録紙間隔が広がってしまう。記録紙間隔が広がると、時間あたりの記録紙の搬送量が低下するので、画像形成効率の低下を引き起こしてしまう。このような問題を解決するために、下記特許文献1には、湿度センサーの検出結果に基づいて記録紙を給紙するタイミングを補正する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−262822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、湿度センサーの検出結果に基づいて記録紙を給紙するタイミングを補正することにより記録紙間隔の広がりに対応しているが、湿度以外の記録紙の種類やピックアップローラーの経年変化等が要因となる記録紙間隔の広りには対応できない。つまり、上記従来技術は、記録紙の種類や、経年によるピックアップローラー表面の磨耗によって記録紙とピックアップローラーとが滑り易くなることにより発生する記録紙間隔の広がりに対応できない。このため、上記従来技術は、湿度以外の要因によって記録紙間隔が広がってしまった場合に、その記録紙間隔の広がりを抑えて画像形成効率の低下を防ぐことができないという問題を抱えていた。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、記録紙間隔が広がる要因の種類に関係なく記録紙間隔を一定に保つことにより画像形成効率の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、記録紙を収容する記録紙収容手段と、所定時間間隔で回転することにより記録紙収容手段に収容される記録紙を1枚ずつ取り出して送り出すピックアップローラーと、ピックアップローラーにより搬送された記録紙を検出する給紙センサーと、記録紙間隔が一定になるように所定時間間隔でピックアップローラーを回転させる制御手段とを具備する画像形成装置あって、制御手段は、記録紙1枚毎にピックアップローラーを回転させてから給紙センサーにより記録紙が検出されるまでの時間を計測すると共に計測値と基準値とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラーの回転タイミングを補正する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、制御手段は、計測値と基準値との差がマイナスとなるズレ値を除外して平均値を算出する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、制御手段は、所定の上限値を超えるズレ値を除外して平均値を算出する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、制御手段は、相加平均、相乗平均または調和平均を平均値として算出する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録紙1枚毎にピックアップローラーを回転させてから給紙センサーにより記録紙が検出されるまでの時間を計測すると共に計測値と基準値とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラーの回転タイミングを補正する。すなわち、本発明によれば、ピックアップローラーの回転から給紙センサーにより記録紙が検出されるまでの時間と基準値とのズレ値、つまり、記録紙の搬送の遅れ時間に基づいてピックアップローラーの回転タイミングを補正する。
【0011】
このように、本発明によれば、湿度以外の記録紙の種類やピックアップローラーの経年変化等の要因により生じた記録紙の搬送の遅れ時間に基づいてピックアップローラーの回転タイミングを補正するので、要因の種類に関係なく記録紙間隔を一定に保つことができる。よって、本発明によれば、記録紙間隔を一定に保つことができるので、画像形成効率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機Aの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る複合機Aの特徴的な動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態におけるズレ値の分布を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるピックアップローラー46の回転を補正するタイミングと補正の基になるデータの集計範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る複合機Aは、電子写真方式に基づいて画像形成を行う画像形成装置であり、図1に示すように、操作表示部1、画像読取部2、画像データ記憶部3、画像形成部4、通信部5及び演算制御部6を備える。
【0014】
操作表示部1は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザーと複合機Aとを関係付けるマンマシンインターフェイスとして機能する。操作表示部1は、操作キーまたはタッチパネルに表示された操作ボタンに対するユーザーの操作指示を操作信号として演算制御部6に出力するとともに、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてタッチパネルに種々の情報を表示する。
【0015】
画像読取部2は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてADF(Automatic document feeder:自動原稿送り装置)により自動給紙される原稿またはプラテンガラス上に載置された原稿の表面画像(原稿画像)をラインセンサーで読み取って原稿画像データに変換し、この原稿画像データを画像データ記憶部3に出力する。
【0016】
画像データ記憶部3は、半導体メモリーまたはハードディスク装置等であり、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、原稿画像データ、通信部5が外部のクライアントコンピューターから受信するプリント画像データ及び通信部5が外部のファクシミリ装置から受信するファクシミリ画像データを記憶すると共に、これら画像データを演算制御部6から入力される制御信号に基づいて読み出して画像形成部4に出力する。
【0017】
画像形成部4は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、記録紙Pに画像データ記憶部3から読み出した画像データに基づくトナー画像を画像形成するものである。このような画像形成部4は、図1に示すように、ベルトローラー41、中間転写ベルト42、トナーの各色(Y,M,C,K)に対応する4つの画像形成ユニット43Y,43M,43C,43K、1次転写ローラー44Y,44M,44C,44K、給紙カセット45、ピックアップローラー46、搬送ローラー47、リタードローラー48、給紙センサー49、レジストローラー50、2次転写ローラー51、定着ローラー52、排紙ローラー53及び排紙トレイ54を備えている。なお、給紙カセット45は、本実施形態における記録紙収容手段である。
【0018】
ベルトローラー41は、図示するように、離間して配設された3つのローラー、つまり駆動ローラー41a、従動ローラー41b及びテンションローラー41cからなる。すなわち、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとは水平方向に一定距離を空けて配置され、テンションローラー41cは、このような駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間かつ若干上方に変位した位置に配置されている。中間転写ベルト42は、このようなベルトローラー41(駆動ローラー41a、従動ローラー41b、テンションローラー41c)に架け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー41aによって矢印で示す方向に走行する。
【0019】
すなわち、中間転写ベルト42は、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間においては水平方向に走行する。また、上述した駆動ローラー41aは、駆動力を発生するモーターが軸結合されたローラーであり、モーターの動力によって中間転写ベルト42を矢印方向に走行させる。上記従動ローラー41bは、自由回転するように設けられたフリーローラーであり、中間転写ベルト42を駆動ローラー41aの動力に従って案内する。また、上記テンションローラー41cは、回転軸が可動可能に設けられ、所定の付整力で中間転写ベルト42を押圧することにより一定のテンション(張力)を中間転写ベルト42に付与するローラーである。
【0020】
画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、図示するように、上述した中間転写ベルト42の水平走行部位に所定間隔を空けて設けられている。これら画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kのうち、画像形成ユニット43Yは、イエロー(Y)のトナー画像を形成するユニットであり、従動ローラー41bに最も近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Mは、マゼンダ(M)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Yの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Cは、シアン(C)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Mの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Kは、ブラック(K)のトナー画像を形成するユニットであり、駆動ローラー41aに最も近い位置に設けられている。
【0021】
このような画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、図示するように、感光体ドラム43a、帯電部43b、レーザースキャニングユニット43c、現像ユニット43d及びクリーナー43eを構成要素としている。なお、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、トナー画像の色のみが異なっているだけであり、構成要素は同一である。
【0022】
感光体ドラム43aは、周面が所定の感光体材料(例えばアモルファスシリコン)で形成された円筒部材である。帯電部43bは、感光体ドラム43aの周面(感光面)を均一に帯電させるものである。レーザースキャニングユニット43cは、帯電状態の上記感光面にレーザー光を照射することにより、感光面に静電潜像を形成するものである。現像ユニット43dは、感光面にトナーを供給することにより当該感光面に形成された静電潜像をトナー画像として現像するものである。クリーナー43eは、トナー画像の転写後の感光面に残留するトナー(残留トナー)を掻き落として除去するものである。
【0023】
1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kは、図示するように画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kに対応して4つ設けられており、各々に中間転写ベルト42を挟んだ状態で各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kの感光体ドラム43aに対向配置されている。また、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kには1次転写バイアス(高電圧)が印加されており、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kは、この1次転写バイアスの作用によって各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kの感光体ドラム43aにそれぞれ形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト42に転写(1次転写)させる。
【0024】
給紙カセット45は、A4サイズやB5サイズ等、所定形状の記録紙Pを複数枚重ねた状態で収容する容器である。ピックアップローラー46は、給紙カセット45の上部において記録紙Pに圧接するように設けられ、演算制御部6から入力される回転制御信号に基づいて、所定の時間間隔で回転することにより給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出すローラーである。搬送ローラー47は、ピックアップローラー46から給紙された記録紙Pをレジストローラー50に向けて搬送するローラーである。リタードローラー48は、搬送ローラー47の下方に対向するように配置され、記録紙Pの搬送方向とは反対方向に回転することにより、ピックアップローラー46により重なり合って搬送された複数枚の記録紙Pを分離するローラーである。
【0025】
例えば、重なり合う2枚の記録紙Pがピックアップローラー46により搬送ローラー47まで搬送された場合には、搬送ローラー47に接する一方の記録紙Pは、レジストローラー50に向けて搬送され、リタードローラー48に接する他方の記録紙Pは、リタードローラー48により搬送ローラー47から離れるように押し戻される。そして、一方の記録紙Pが搬送ローラー47から離れた後、給紙カセット45から先端が飛び出した状態である他方の記録紙Pがピックアップローラー46によって搬送されることにより一方の記録紙Pに続いて他方の記録紙Pが搬送ローラー47に接し、搬送ローラー47によりレジストローラー50に向けて搬送される。
【0026】
給紙センサー49は、給紙カセット45からピックアップローラー46により搬送ローラー47まで搬送された記録紙Pを検出する光センサーであり、搬送ローラー47とレジストローラー50との間に設けられ、搬送ローラー47を通過した記録紙Pの先端を検出すると紙検出信号を演算制御部6に出力する。レジストローラー50は、搬送ローラー47から供給された記録紙Pを所定のタイミングで2次転写ローラー51に供給するローラーである。2次転写ローラー51は、中間転写ベルト42を挟んで駆動ローラー41aに対向配置されたローラーであり、中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させるものである。この2次転写ローラー51には、2次転写バイアス(高電圧)が印加されており、2次転写ローラー51は、この2次転写バイアスの作用によって中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させる。
【0027】
定着ローラー52は、内部にヒータを備えた加熱ローラー52aと、当該加熱ローラー52aに圧接する加圧ローラー52bとから構成されている。この定着ローラー52は、加熱ローラー52aと加圧ローラー52bとで各色のトナー画像が転写された記録紙Pを挟み込むことにより記録紙Pを加熱及び加圧して、各色のトナー画像を記録紙P上に定着させる。排紙ローラー53は、定着ローラー52から供給された記録紙Pを排紙トレイ54に向けて搬送するローラーである。排紙トレイ54は、排紙ローラー53から供給された記録紙Pを収容・保持する収容部である。
【0028】
通信部5は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、電話回線を介して外部の複合機あるいはファクシミリ装置と通信を行うと共に、LAN(Local Area Network)を介してクライアントコンピューター等と通信を行うものである。すなわち、この通信部5は、G3等のファクシミリ規格に準拠した通信機能とイーサネット(登録商標)等のLAN規格に準拠した通信機能とを兼ね備えたものである。
【0029】
演算制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電気的に相互接続された各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されている。この演算制御部6は、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行うと共に各部と通信を行うことにより複合機Aの全体動作を制御する。
【0030】
詳細については後述するが、演算制御部6は、上記各種の演算処理の一環として画像形成における記録紙間隔の補正処理を行う。すなわち、演算制御部6は、ピックアップローラー46に回転させてから給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間を計測すると共に該計測値とセンター値(基準値)とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。なお、このような演算制御部6は、本実施形態における制御手段である。
【0031】
次に、このように構成された複合機Aの動作について説明する。
最初に本複合機Aの全体動作を説明する。例えばユーザーがADFに原稿をセットし、また操作表示部1を操作することによって原稿の複写(コピー)を指示すると、当該指示に関する指示信号は操作表示部1から演算制御部6に入力される。この結果、演算制御部6は、画像読取部2に原稿の頁毎に原稿画像を順次読み取らせると共に、当該原稿画像の原稿画像データを画像データ記憶部3に記憶させる。そして、演算制御部6は、上記原稿画像データに基づいて各トナー色に対応するビットマップ画像データをそれぞれ生成し、これらビットマップ画像データに基づいて原稿画像の画像形成処理を画像形成部4に実行させる。
【0032】
すなわち、演算制御部6は、ピックアップローラー46を駆動させて給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出させると共に当該搬送ローラー47を駆動させて記録紙Pをレジストローラー50に向けて搬送させる。また、演算制御部6は、駆動ローラー41aを駆動させて中間転写ベルト42を走行状態とすると共に、各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kを駆動させ、上述した各ビットマップ画像データに基づいて各色のトナー画像を各感光体ドラム43aの感光面(周面)に形成させる。そして、演算制御部6は、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kに1次転写バイアスを印加させることによって、各感光体ドラム43aのトナー画像を中間転写ベルト42上に1次転写させる。
【0033】
そして、演算制御部6は、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kにおける各色の画像形成の処理タイミングに合わせてレジストローラー50を駆動させると共に2次転写ローラー51に2次転写バイアスを印加させることによって、記録紙Pの所望位置に中間転写ベルト42上のトナー画像(原稿画像)を2次転写させる。そして、演算制御部6は、定着ローラー52及び排紙ローラー53を駆動させて、記録紙P上のトナー画像を定着させると共に排紙トレイ54に排出させる。
【0034】
ここで、演算制御部6は、画像形成部4に上記画像形成処理を行わせるに際して、以下の特徴的な処理を行う。つまり、演算制御部6は、給紙時において、記録紙P間隔が一定になるように所定時間間隔でピックアップローラー46に回転制御信号を出力する。そして、演算制御部6は、図2のフローチャートに示すように、記録紙Pの1枚毎にピックアップローラー46を回転させてから給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間を計測する(ステップS1)。つまり、演算制御部6は、回転を指示する回転制御信号をピックアップローラー46に出力してから給紙センサー49によって紙検出信号が入力されるまでの時間を計測する。
【0035】
そして、演算制御部6は、ステップS1における計測値とセンター値とのズレ値(差)を算出すると共に該ズレ値を内部のRAMに記憶し(ステップS2)、ステップS1,2の処理を所定枚数の記録紙Pに対して実行したか否かを判定する(ステップS3)。なお、上記センター値とは、ピックアップローラー46の回転から給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間に関する標準値であり、複合機Aの製造時に演算制御部6に記憶される。
【0036】
そして、演算制御部6は、ステップS1,2の処理を所定枚数に亘って実行できていないと判定した場合(NOの場合)には、ステップS1,2の処理を繰り返す。すなわち、演算制御部6は、ステップS1における処理と、ステップS2における処理とを、所定枚数の記録紙P、例えば、1枚目から200枚目までの記録紙Pに対して実行する。
【0037】
一方、演算制御部6は、ステップS1,2の処理を所定枚数に亘って実行したと判定した場合(YESの場合)には、ステップS2において算出したズレ値の中から計測値とセンター値との差がマイナスとなるズレ値と所定の上限値を超えるズレ値とを除外し(ステップS4)、所定枚数の記録紙Pに対するズレ値の平均値を算出する(ステップS5)。
【0038】
例えば、ズレ値の分布が図3(a),(b)に示す結果である場合、図3(b)の点線によって囲まれた範囲は、計測値とセンター値との差がマイナスとなるズレ値を示している。つまり、ピックアップローラー46の回転から給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間がセンター値よりも短くなったズレ値である。
【0039】
これは、重なり合う複数枚の記録紙Pがピックアップローラー46によって搬送されること等により発生する。つまり、重なり合う2枚の記録紙Pがピックアップローラー46により搬送ローラー47まで搬送された場合には、搬送ローラー47に接する一方の記録紙Pは、レジストローラー50に向けて搬送され、リタードローラー48に接する他方の記録紙Pは、リタードローラー48により搬送ローラー47から離れるように押し戻される。そして、一方の記録紙Pが搬送ローラー47から離れた後、給紙カセット45から先端が飛び出した状態である他方の記録紙Pが次の給紙工程においてピックアップローラー46によって搬送されることにより一方の記録紙Pに続いて他方の記録紙Pが搬送ローラー47に接し、搬送ローラー47によりレジストローラー50に向けて搬送される。このように場合には、他方の記録紙Pを搬送するためにピックアップローラー46が回転してから給紙センサー49により他方の記録紙Pが検出されるまでの時間が通常よりも短くなるので、計測値とセンター値とのズレ値はマイナスになる。
【0040】
また、図3(b)の一点鎖線により囲まれた範囲は、ステップS5において平均値の算出に用いられるズレ値、つまり湿度や、記録紙Pの種類やピックアップローラー46の経年変化等の要因により記録紙間隔が広がった場合のズレ値を示している。この範囲を超えるズレ値、つまり図3(b)の一点鎖線の範囲より右側のズレ値(例えば二点鎖線の範囲のズレ値)は、ステップS4において所定の上限値を超えるズレ値として平均値の算出からは除外される。例えば、JAM(記録紙詰まり)等により記録紙Pの搬送が大幅に遅れる場合には、上限値を超えるズレ値が発生する。このようにマイナスとなるズレ値や上限値を超えるズレ値をステップS4において除外するのは、重なり合って複数枚の記録紙Pが搬送された場合やJAM等により記録紙Pの搬送が遅れた場合を除外して、湿度や、記録紙Pの種類やピックアップローラー46の経年変化等の要因により記録紙Pが遅れた場合のみを対象として上記平均値を算出するためである。
【0041】
続いて、演算制御部6は、ステップS5の処理の後に、ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラー46の回転タイミングを示す設定値を補正する(ステップS6)。そして、演算制御部6は、当該設定値に基づいてピックアップローラー46を回転させる。例えば、演算制御部6は、平均値がセンター値を超える場合、つまり記録紙Pの搬送が遅れている場合には、平均値とセンター値との差だけピックアップローラー46の回転タイミングが早くなるように設定値を補正する。これにより、ピックアップローラー46の回転タイミングが早くなるので、記録紙Pの搬送の遅れ、つまり記録紙間隔の広がりを補正することができる。ただし、ステップS6における補正量には一定の上限を設ける。これは、重なり合う複数枚の記録紙Pがピックアップローラー46により搬送された場合でも、記録紙P同士が接近し過ぎないようにするためである。
【0042】
このように、所定枚数の記録紙Pに対するズレ値の平均値を算出し、当該平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正することで、例えば図4に示すタイミングで記録紙間隔は補正される。すなわち、200枚、1200枚、2200枚の記録紙Pを搬送した後に、ピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。例えば、200枚目の記録紙Pを搬送した後に補正する場合には、1枚目から200枚目までのズレ値の平均値を算出し、当該平均値に基づいて補正を行う。また、1200枚目の記録紙Pを搬送した後に補正する場合には、201枚目から1200枚目までのズレ値の平均値を算出し、当該平均値に基づいて補正を行う。また、2200枚目の記録紙Pを搬送した後に補正する場合には、1201枚目から2200枚目の記録紙Pに対するズレ値の平均値を算出し、当該平均値に基づいて補正を行う。つまり、演算制御部6は、直近の所定枚数分の記録紙Pに対する上記ズレ値から算出された平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。
【0043】
このような本実施形態によれば、記録紙Pの1枚毎にピックアップローラー46を回転させてから給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間を計測すると共に該計測値とセンター値とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるようにピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。すなわち、本実施形態によれば、ピックアップローラー46の回転から給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間とセンター値とのズレ値、つまり、記録紙Pの搬送の遅れ時間に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正する。
【0044】
このように、本実施形態によれば、湿度以外の記録紙Pの種類やピックアップローラー46の経年変化等の要因により生じた記録紙Pの搬送の遅れ時間に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するので、要因の種類に関係なく記録紙間隔を一定に保つことができる。よって、本実施形態によれば、記録紙間隔を一定に保つことができるので、画像形成効率の低下を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、直近の所定枚数分の記録紙Pに対する上記ズレ値から算出された平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するので、直近の急激な湿度変化に対応することができる。例えば、1枚目から2200枚目までのズレ値の平均値は、1201枚目から2200枚目までのズレ値の平均値に比べて直近の湿度変化の影響は小さくなる。つまり、長期に渡って集計されたズレ値の平均値は、直近の湿度変化の影響が小さくなるので、該平均値を用いて補正では直近湿度の変化に適切に対応することが難しい。しかし、本実施形態によれば、直近の所定枚数分のズレ値の平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するので、急激に湿度が変化するような場合でも、その変化に対応して、記録紙間隔を補正することができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、計測値とセンター値との差がマイナスとなるズレ値と上限値を超えるズレ値を除外して平均値を算出し、該平均体に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するので、重なり合って複数枚の記録紙Pが搬送された場合やJAMにより記録紙Pの搬送が遅れた場合を除外して、湿度や、記録紙の種類やピックアップローラー46の経年変化等が要因である記録紙Pの搬送遅れ、つまり記録紙間隔の広がりに対して記録紙間隔を補正することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態において、200枚、1200枚、2200枚の記録紙Pが搬送されたタイミングで補正、つまり、一定間隔で補正したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、急激な環境変化が発生した場合、つまり、ズレ値が急激に変化した場合にピックアップローラー46の回転タイミングを補正するようにしてもよい。つまり、演算制御部6は、ズレ値の変化率を監視し、ズレ値の変化率が所定のしきい値を超えた場合に、直近の所定枚数分のズレ値の平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するようにしてもよい。
【0048】
(2)上記実施形態は、給紙カセット45に収容されている記録紙Pをピックアップローラー46により搬送した際の記録紙間隔を一定にするものであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、手差しの給紙トレイを備える場合には、該給紙トレイ上に収容された記録紙Pを搬送する際の記録紙間隔を一定にするようにしてもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、記録紙Pの1枚毎にピックアップローラー46を回転させてから給紙センサー49により記録紙Pが検出されるまでの時間を計測すると共に該計測値のズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正したが、本発明はこれに限定されない。例えば、演算制御部6は、記録紙Pの1枚毎ではなく、数枚毎(例えば10枚毎)に上記時間を計測すると共に該計測値のズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいてピックアップローラー46の回転タイミングを補正するようにしてもよい。
【0050】
(4)上記実施形態は、平均値としてズレ値の相加平均を算出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ズレ値の相乗平均または調和平均を上記平均値として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
A…複合機、1…操作表示部、2…画像読取部、3…画像データ記憶部、4…画像形成部、5…通信部、6…演算制御部(制御手段)、41…ベルトローラー、42…中間転写ベルト、43Y,43M,43C,43K…画像形成ユニット、44Y,44M,44C,44K…1次転写ローラー、45…給紙カセット、46…ピックアップローラー、47…搬送ローラー、48…リタードローラー、49…給紙センサー、50…レジストローラー、51…2次転写ローラー、52…定着ローラー、53…排紙ローラー、54…排紙トレイ、41a…駆動ローラー、41b…従動ローラー、41c…テンションローラー、43a…感光体ドラム、43b…帯電部、43c…レーザースキャニングユニット、43d…現像ユニット、43e…クリーナー、52a…加熱ローラー、52b…加圧ローラー、P…記録紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を収容する記録紙収容手段と、所定時間間隔で回転することにより前記記録紙収容手段に収容される記録紙を1枚ずつ取り出して送り出すピックアップローラーと、前記ピックアップローラーにより前記記録紙収容手段から搬送された前記記録紙を検出する給紙センサーと、所定時間間隔で前記ピックアップローラーを回転させる制御手段とを具備する画像形成装置あって、
前記制御手段は、ピックアップローラーを回転させてから前記給紙センサーにより前記記録紙が検出されるまでの時間を計測すると共に計測値と基準値とのズレ値を算出し、該ズレ値の平均値に基づいて記録紙間隔が一定になるように前記ピックアップローラーの回転タイミングを補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記計測値と前記基準値との差がマイナスとなる前記ズレ値を除外して前記平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定の上限値を超える前記ズレ値を除外して前記平均値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、相加平均、相乗平均または調和平均を前記平均値として算出することを特徴とすることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49532(P2013−49532A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189012(P2011−189012)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】