説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンターは,中間転写ベルト101の回転による移動方向について,2次転写装置115より下流で作像部104より上流の箇所に,中間転写ベルト101をクリーニングするためのクリーナー組1〜4が配置されており,各クリーナー組1〜4はそれぞれ,中間転写ベルト101に圧接される発泡ローラー12を有しており,発泡ローラー12にバイアスを印加する電源15を有しており,中間転写ベルト101の回転による移動方向について上流側のものでは,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差がより小さく,中間転写ベルト101の回転による移動方向について下流側のものでは,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差がより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,中間転写ベルトとその中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材とを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,中間転写ベルトを有する画像形成装置がある。画像形成時には,感光体上に形成されたトナー像が中間転写ベルトへ1次転写され,その後,そのトナー像が2次転写部によって中間転写ベルトから用紙へ転写される。このような画像形成装置は,通常,2次転写後も中間転写ベルト上に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニング部材を有している。
【0003】
例えば,特許文献1には,中間転写ベルトに接触しながら回転する2つのファーブラシを備えた画像形成装置が開示されている。さらにこの文献の装置では,2つのファーブラシがいずれも導電性であり,各ファーブラシに接触させてそれぞれ,金属ローラーが設けられている。さらにこの金属ローラーには,それぞれ極性の異なる電圧が印加されている。これにより,各ファーブラシと中間転写ベルトとの間に,それぞれ異なる極性の電界が形成されるので,いずれの極性に帯電している転写残トナーも確実に回収されるとされている。
【0004】
また,特許文献2に開示されている画像形成装置には,中間転写ベルトをクリーニングするための部材として,ポリウレタンフォーム層を有する発泡ローラーが設けられている。ポリウレタンフォーム層のセル数や開口率を適切に設定しておくことにより,このクリーニング部材は,長期にわたって効率的にクリーニングできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−229344号公報
【特許文献2】特開2009−300741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の画像形成装置では,ファーブラシを用いているため,クリーニング部材と中間転写ベルトとの間の空隙が比較的大きい。そのため,トナーのすり抜けを完全には防止できない。さらに,ブラシに電圧を印加しているので,この電界エネルギーによりトナー後処理剤がトナーから離脱する場合がある。特に,装置の高速化に伴い,電界エネルギーをより大きくした場合には,後処理剤の離脱の発生頻度が上昇する。
【0007】
このように発生した後処理剤やトナー粉などが残ったまま中間転写ベルトの周回を重ねると,これらの異物が次第に中間転写ベルトに固着され,フィルミングが発生する。特に,同じ画像を多数枚連続して形成した場合に,画像を形成した部分にはフィルミングが生じ,画像を形成しなかった部分には生じないため,中間転写ベルトの表面の平滑性や導電性が損なわれ,転写性能が劣化する。
【0008】
一方,前記した特許文献2に記載の画像形成装置のように,発泡ローラーを用いた場合,トナーのすり抜けは起こりにくく,フィルミングは回避できる。しかし,発泡ローラーと中間転写ベルトとの圧接力が小さすぎるとクリーニング不良が発生する。また,発泡ローラと中間転写ベルトとの圧接力が大きすぎると,クリーニング時に,発泡ローラが残留トナーに対し過剰のストレスを掛けてしまうおそれがある。その場合には,トナーに含有される油分,あるいは,トナー粒子が砕けることによって発生した微粉等が,中間転写ベルトに付着するという問題点があった。そのため,特にハーフトーン画像等の画像濃度の薄い画像において,濃度ムラ等の画質の劣化が発生するおそれがあった。
【0009】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,2以上のベルトローラーに巻き掛けられて回転される中間転写ベルトと,中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成部と,中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材に転写する転写部とを有する画像形成装置であって,中間転写ベルトの回転による移動方向について,転写部より下流でトナー像形成部より上流の箇所に,中間転写ベルトをクリーニングするための複数のクリーニング部材が配置されており,各クリーニング部材はそれぞれ,中間転写ベルトに圧接される発泡ローラーを有しており,発泡ローラーにバイアスを印加する電源を有しており,クリーニング部材のうち中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものでは,発泡ローラーと中間転写ベルトとの周速差がより小さく,クリーニング部材のうち中間転写ベルトの回転による移動方向について下流側のものでは,発泡ローラーと中間転写ベルトとの周速差がより大きいものである。
【0011】
本発明の画像形成装置によれば,転写部を通り抜けた転写残トナー等がクリーニング部材でクリーニングされる。複数のクリーニング部材はそれぞれ,電源によってバイアスが印加された発泡ローラーを有している。そして,複数のクリーニング部材のうち,中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものは周速差が小さいので,残留トナーに大きなストレスを掛けない。上流側のものをすり抜けた残留トナーは,より周速差の大きい下流側のもので確実に回収される。従って,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる。
【0012】
さらに本発明では,発泡ローラーには,電源により正極性のバイアスが印加されるものと負極性のバイアスが印加されるものとがあり,上流側に属する発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものと中間転写ベルトとの周速差は,下流側に属する発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものと中間転写ベルトとの周速差より小さく,上流側に属する発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものと中間転写ベルトとの周速差は,下流側に属する発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものと中間転写ベルトとの周速差より小さいことが望ましい。
このようになっていれば,負に帯電している異物も正に帯電している異物もそれぞれ,周速差の小さい発泡ローラーによってまず回収される。
【0013】
さらに本発明では,上流側に属する発泡ローラーの回転方向は,中間転写ベルトの回転による移動方向に対してウィズ回転方向であり,下流側に属する発泡ローラーの回転方向は,中間転写ベルトの回転による移動方向に対してカウンター回転方向であることが望ましい。
ウィズ回転方向とすれば,周速差をごく小さくできる。また,カウンター回転方向であれば,良好なクリーニング性能を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置によれば,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本形態のカラープリンターの概略構成図である。
【図2】発泡ローラーの回転方向の例を示す概略構成図である。
【図3】ベルトクリーニング装置の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,中間転写ベルトを有し,カラー画像を形成することのできるカラープリンターに本発明を適用したものである。
【0017】
本形態に係るカラープリンターは,図1に示すように,中間転写ベルト101を有する,いわゆるタンデム方式のものである。中間転写ベルト101は,無端状ベルト部材であり,ローラー102,103に張り架けられている。中間転写ベルト101の図中下部に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の作像部104Y,104M,104C,104Kが配置されている。
【0018】
図1中では作像部104Yのみに符号を付して示しているが,各色の作像部104Y,104M,104C,104Kはいずれも同様の構成である。それぞれ,感光体ドラム106とその周囲に配置された帯電装置107,露光装置108,現像装置109,クリーナー装置110を有している。また,中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム106に対向する位置に,1次転写装置111が配置されている。これらは,既知のいかなる構成のものでも良い。
【0019】
図1中で下方に示すのは,用紙Pを収容する給紙装置112である。給紙装置112の上部には,用紙Pを送り出す給紙ローラー113が設けられている。用紙Pは,給紙装置112から搬送経路114に沿って図中で上方へ送られるようになっている。搬送経路114を挟んで,中間転写ベルト101のローラー103と対向する位置に,2次転写装置115が配置されている。さらに,用紙搬送方向についてその下流側(図中で上方)には,定着装置120が配置されている。本形態の定着装置120は,加熱ローラー121と加圧ローラー122とを有している。
【0020】
画像形成時には,中間転写ベルト101は図1中に矢印Aで示すように回転される。各色の画像データは,対応する作像部104Y,104M,104C,104Kにそれぞれ送出される。そして,各色の作像部では,それぞれの感光体ドラム106を帯電装置107によって帯電する。次に,その色の画像データに基づいて,露光装置108によって露光することによって静電潜像を形成する。さらに,形成された静電潜像を現像装置109によって現像して,感光体ドラム106にトナー像を形成する。形成されたトナー像は,順次,1次転写装置111によって中間転写ベルト101に転写され,重ね合わせられる。
【0021】
中間転写ベルト101に重ね合わせられたトナー像は,給紙装置112から送り出された用紙Pに,2次転写装置115によって転写される。トナー像を担持した用紙Pは,さらに搬送されて定着装置120に至り,定着装置120によって加熱されるとともに加圧される。これによりトナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着された用紙Pは,機外に排出される。あるいは,両面印刷の場合は第2面の印刷のために再び機内に引き込まれ,同様に印刷が行われる。
【0022】
そして,本形態のカラープリンターは,図1に示すように,中間転写ベルト101の移動方向について,2次転写装置115より下流側で,各色の作像部104より上流側の位置に,ベルトクリーニング装置10を有している。ベルトクリーニング装置10は,2次転写装置115を通過した後も中間転写ベルト101上に残るトナー等の残留物を回収するためのものである。本形態のベルトクリーニング装置10は,4組の同種のクリーナー組(クリーナー組1〜クリーナー組4)を備えたものである。そして各組ごとにそれぞれ,発泡ローラー12と対向ローラー13と回収ローラー14と電源15とが1つずつ設けられている。
【0023】
本形態のクリーナー組1〜4が有する発泡ローラー12は,図1に示すように,中間転写ベルト101の表面(おもてめん;トナー像を担持する面)に接触して配置された回転可能なローラーである。本形態の発泡ローラー12は,芯金12aとその外周を覆うポリウレタンフォーム層12bとを有するものである。本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,多数のセルを有する発泡材である。
【0024】
本形態のポリウレタンフォーム層12bに使用されている発泡材は,隣り合うセル同士が開口を介して連なっているものである。セルの壁面全体の面積Sに対する開口の面積S1の割合で表される開口率(S1/S)は,3%以上50%以下である。なお,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームの開口率は1%程度であり,一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率は60%程度である。つまり,本形態のポリウレタンフォーム層12bの開口率は,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームの開口率より大きく,一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率より小さい。
【0025】
従って,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームより柔らかい。従って,この発泡ローラー12は,中間転写ベルト101の表面に広く密着し,掻き取り性に優れたものである。また,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,一般的な連続気泡のポリウレタンフォーム層ほど開口が大きくない。そのため,回収した異物がポリウレタンフォーム層12bの内部まで入り込むことはない。そのため,ポリウレタンフォーム層12bが異物で詰まるおそれはなく,長期にわたって発泡ローラー12の性能が維持できる。
【0026】
なお本形態の発泡ローラー12のセル径は,回収しようとする異物の大きさに合わせて決定すればよい。本形態の発泡ローラー12は,例えば,トナー粒やその破片もしくは塊,紙粉などを回収するので,セル径が50μm以上1000μm以下のものであることが好ましい。異物粒子に対してセル径が小さすぎると,異物粒子をセルに取り込めないので,異物の除去性能が小さいものとなり,好ましくない。また,異物粒子に対してセル径が大きすぎると,中間転写ベルト101に実際に接触する面の面積あるいは頻度が小さくなるため,異物を回収しにくいものとなるので好ましくない。
【0027】
また,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,導電性が付与されたものである。ポリウレタンフォーム層12bの体積抵抗値は,103Ω・cm以上107Ω・cm以下であることが望ましい。ポリウレタンフォーム層12bの体積抵抗値が小さすぎると,中間転写ベルト101との間に小さい隙間ができた箇所においてリークが発生するおそれがある。また,体積抵抗値が大きすぎると,電源の電圧を大きいものとする必要があり,電源装置の大型化やコストアップの原因となるので好ましくない。
【0028】
本形態の対向ローラー13は,図1に示すように,中間転写ベルト101を挟んで発泡ローラー12に対向して配置される導電性のローラーである。本形態の対向ローラー13はいずれも接地されている。また,回収ローラー14は,発泡ローラー12に付着した異物を回収するものである。回収ローラー14には,ブレード状の掻き取り部材14aが接触して設けられている。
【0029】
また,発泡ローラー12と対向ローラー13と回収ローラー14とはいずれも,回転可能にされている。これらの駆動源は,それぞれ別のものとしても良いし,共通の駆動源からギアを介してそれぞれの適切な速度で駆動するようにしても良い。また,本形態の回収ローラー14の回転方向は,発泡ローラー12の回転方向と逆の方向である。すなわち,発泡ローラー12と回収ローラー14とは,接触箇所においては,互いに同じ向きに移動する。また,回収ローラー14の発泡ローラー12への食い込み量は,0.6mm程度である。
【0030】
さらに本形態では,各クリーナー組1〜4の発泡ローラー12の中間転写ベルト101への食い込み量は,線圧が5〜20N/m程度となるようにしている。圧接力が小さすぎると適切なクリーニング性が確保できない。また,圧接力が大きすぎるとポリウレタンフォームに過剰な負荷がかかり,耐久性の面で好ましくない。
【0031】
なお,本形態の対向ローラー13,回収ローラー14および掻き取り部材14aは,いずれも金属製のものである。そして,回収ローラー14には,図1に示すように,電源15が接続されている。従って,電源15によって電圧を印加することにより,回収ローラー14から発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bと中間転写ベルト101とを介して対向ローラー13までの間に,所定の電界を形成することができる。電源15としては,正の高電圧を印加するもの(+HV)と負の高電圧を印加するもの(−HV)とがある。なお本形態では,電源15は,正極性・負極性ともに,40μAの定電流となるように定電流制御されている。この制御は定電圧制御としても良い。
【0032】
本形態のベルトクリーニング装置10では,クリーナー組1は,接地されている対向ローラー13から,中間転写ベルト101,発泡ローラー12,回収ローラー14の順に正側の極性となるように,電源15の電圧が正の高電圧に設定されている。つまり,中間転写ベルト101の移動方向について最も上流側に配置されているクリーナー組1の電源15は,発泡ローラー12に正極性のバイアスを印加するものである。さらに,クリーナー組2の電源15は,発泡ローラー12に負極性のバイアスを印加するものである。そして,クリーナー組3,4に接続されている電源15は,それぞれの発泡ローラー12に互いに異なる極性のバイアスを印加するものである。
【0033】
なお,本形態のカラープリンターは,負帯電性のトナーを使用するものである。そのため,残留トナー等の異物としても,負に帯電しているものが多い。そして,残留トナーが最初に通る箇所であるクリーナー組1の発泡ローラー12には,トナーの帯電極性と逆の極性のバイアスが印加されている。そのため,中間転写ベルト101上に残留している異物のうちトナーの帯電極性に帯電しているものは,この電界により発泡ローラー12に引き寄せられる。さらに,その次のクリーナー組2の発泡ローラー12は,クリーナー組1とは逆の極性のバイアスが印加されている。従って,残りの異物のうち,正に帯電しているものは,クリーナー組2の発泡ローラー12に引き寄せられる。
【0034】
本形態では,4つのクリーナー組1〜4の発泡ローラー12の回転方向や周速Vbは,どれも同じというわけではない。本形態の発泡ローラー12の周速Vbは,中間転写ベルト101の周速Vaとの周速差ΔVに基づいて決定される。周速Va,Vbは,それぞれの部材の接触箇所における表面の移動速度のことである。そして,周速差ΔVは,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との接触箇所における相対的な速度差のことである。つまり,接触箇所における移動方向が同じであれば,周速差ΔVは周速Vaと周速Vbとの差の絶対値であり,接触箇所における移動方向が異なる場合には,周速差ΔVは周速Vaと周速Vbとの和に相当する。
【0035】
以下では,中間転写ベルト101の移動方向についての上流側または下流側を,単に上流側または下流側という。そして,本形態の周速差ΔVは,上流側のクリーナー組ではより小さく,下流側のクリーナー組ではより大きくなるように決定されている。特に最も上流側のクリーナー組1では,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差ΔVは,中間転写ベルト101の周速Vaの1.5倍以下である。この程度であれば,トナー粒を粉砕するおそれはない。
【0036】
つまり,上流側のものでは,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差ΔVが,下流側のものにおける発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差ΔVより小さい。ここで,「上流側のもの」や「下流側のもの」という語は,個々のクリーナー組を比較する際にも,正負のバイアスが印加されているクリーナー組のペアごとにまとめて比較する際にも使用する。
【0037】
本発明者らは,本発明の効果を確認するための実験を行った。本実験は,コニカミノルタ製bizhub Pro C5501の中間転写ベルトのクリーニング部を改造したものを使用して行った。中間転写ベルトのクリーニング部以外の箇所は,bizhub Pro C5501の装置をそのまま使用した。なおプロセス速度,すなわち,中間転写ベルト101の表面の移動速度は,300mm/sとした。
【0038】
本実験では,発泡ローラー12としてはいずれも,その物性が以下の通りのものを使用した。
セル開口率:30%
平均セル径:200μm
体積抵抗値:106Ωm
外径:φ16mm
【0039】
本実験では,クリーニング性能の評価と,フィルミング性の評価とを行った。クリーニング性能の評価においては,1層ベタ(100%ベタ)の帯チャートを作成し,耐刷を行った。形成された帯チャートを目視で以下のように評価した。
耐刷の終了までクリーニング不良の発生しなかったものを○
クリーニング不良の発生したものを×
【0040】
フィルミング性の評価においては,1層ベタ(100%ベタ)の帯チャートを作成して耐刷を行い,途中のチェックポイントごとに全面ハーフ画像を形成した。形成されたハーフ画像の画質を目視で以下のように評価した。なお,チェックポイントは,A3用紙で,50k枚,100k枚,150k枚,200k枚印刷後とした。なお,kは1000枚を表す。
【0041】
画像部(帯を印刷した箇所)と非画像部(帯と帯との間の箇所)とで濃度差がない:○
画像部と非画像部とでかすかに濃度差が認識できる:△
画像部と非画像部とではっきりと濃度差が認識できる:×
としたとき,各チェックポイントの枚数ごとの濃度差に基づき,フィルミング評価を以下の表1のように設定した。なお,○1〜○4は許容できる性能であり,×1〜×2は許容できない性能である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
本実験の結果は,上記の表2に示したようなものであった。すなわち,上流側のクリーナー組1のみ,または,上流側のクリーナー組1と2の両方の発泡ローラー12において,その周速と中間転写ベルト101の周速との周速差を下流側のものより小さくすることにより,クリーニング性能とフィルミング性とをともに良好なものとすることができた。なかでも,上流側に極性+のものと極性−のものとを配置し,それらの周速差をプロセス速度の1.5倍以下としたもの(実施例1〜3)では,特に良好な結果であった。
【0045】
また,上流側から,+極性で周速差小,+極性で周速差大,−極性で周速差小,−極性で周速差大の順に配置したもの(実施例4)でも,結果は良好であった。つまり,同極性同士で上流側の方が下流側より周速差がより小さいことが重要であり,逆極性のものであればこの関係を満たさないものが含まれていても良い。あるいは,最上流のもの(クリーナー組1)の発泡ローラー12の周速差のみを小さくし,それ以外を全て同じ周速差とした実施例5,6も,良好な結果であった。ただしこの場合は,最上流のものとして,トナーの帯電極性と逆極性のものを配置することが好ましい。
【0046】
なお,この表2で斜体で示した周速差150の箇所は,発泡ローラー12を中間転写ベルト101に対してウィズ回転方向で回転したものである。それ以外のものは,カウンター回転方向で回転したものである。ウィズ回転方向とは,接触箇所において同じ向きに移動する回転方向であり,カウンター回転方向は,接触箇所において互いに逆向きに移動する回転方向である。なお,周速差150は,発泡ローラー12の回転速度を「プロセス速度+150」と「プロセス速度−150」とのいずれとしても得られるが,本実験ではこれらの間に特に差はなかった。
【0047】
すなわち,各発泡ローラー12の回転方向は,その周速差を得やすい方向とすれば良い。ただし,プロセス速度(300mm/s)より小さい周速差を得られるのは,ウィズ回転方向に限られる。この実験での発泡ローラー12の回転方向は,プロセス速度より周速差が小さいものはウィズ回転方向,プロセス速度より周速差が大きいものはカウンター回転方向とした。例えば,図2に示すように,上流側のクリーナー組では,ウィズ回転方向を選択することが好ましい。また,下流側のクリーナー組では,クリーニング性が良好となるカウンター回転方向の回転とすることが好ましい。
【0048】
一方,4つのクリーナー組の周速差をいずれも同じとした場合には,周速差が大きい比較例1ではフィルミング性に難があり,周速差が小さい比較例3,4ではクリーニング性能に難があった。また,上流側に周速差のより大きいものを,下流側に周速差のより小さいものを配置した比較例2は,フィルミング性に難があった。従って,上流側と下流側とで周速差を変えるのみでなく,上流側に周速差の小さいものを配置することが必要であることが確認できた。
【0049】
なお,本発明者らは,上記の実験と条件をやや変更して,さらに上記と同様の実験を行った。例えば,下流側の周速差として600mm/sの代わりに750mm/sとした実験を行った。あるいは,プロセス速度を400mm/sとした実験も行った。また,発泡ローラー12として,本形態の範囲内であり,上記のものとはやや物性の異なるものを使用した実験も行った。いずれも,結果は上記のものと同様であり,本発明の効果を確認することができた。
【0050】
さらに本発明者らは,図3に示すように,クリーナー組を3組のみ備えるカラープリンターを用いた実験をも行った。この場合にも,上流側のクリーナー組1,2の周速差を下流側のクリーナー組3の周速差より小さいものとすることにより,クリーニング性能とフィルミング性とをともに良好なものとすることができた。なお,クリーナー組を3組とした場合には,ベルトクリーニング装置10より上流側で,2次転写装置115より下流側の位置に,帯電チャージャー21を設けるとさらに良い。
【0051】
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンターによれば,それぞれに発泡ローラー12を有する複数のクリーナー組1〜4が設けられている。そして,中間転写ベルト101の移動方向について上流側のものでは,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との周速差が,下流側のものより小さくなっている。従って,良好にクリーニングできるとともに,フィルミングの発生は抑制されている。これにより,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる画像形成装置となっている。
【0052】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,クリーナー組の数は,3または4に限らず,さらに多数備えていても良い。また,回収ローラーの回転方向は,ウィズ回転方向に限るものではない。また上記の形態中の各種の数値はいずれも一例であり,これに限るものではない。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3,4 クリーナー組(クリーニング部材)
12 発泡ローラー
13 対向ローラー
15 電源
101 中間転写ベルト
102,103 ローラー(ベルトローラー)
104Y,104M,104C,104K 作像部(トナー像形成部)
115 2次転写装置(転写部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のベルトローラーに巻き掛けられて回転される中間転写ベルトと,前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成部と,前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材に転写する転写部とを有する画像形成装置において,
前記中間転写ベルトの回転による移動方向について,前記転写部より下流で前記トナー像形成部より上流の箇所に,前記中間転写ベルトをクリーニングするための複数のクリーニング部材が配置されており,
前記各クリーニング部材はそれぞれ,前記中間転写ベルトに圧接される発泡ローラーを有しており,
前記発泡ローラーにバイアスを印加する電源を有しており,
前記クリーニング部材のうち前記中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものでは,前記発泡ローラーと前記中間転写ベルトとの周速差がより小さく,
前記クリーニング部材のうち前記中間転写ベルトの回転による移動方向について下流側のものでは,前記発泡ローラーと前記中間転写ベルトとの周速差がより大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記発泡ローラーには,前記電源により正極性のバイアスが印加されるものと負極性のバイアスが印加されるものとがあり,
前記上流側に属する前記発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものと前記中間転写ベルトとの周速差は,前記下流側に属する前記発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものと前記中間転写ベルトとの周速差より小さく,
前記上流側に属する前記発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものと前記中間転写ベルトとの周速差は,前記下流側に属する前記発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものと前記中間転写ベルトとの周速差より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記上流側に属する前記発泡ローラーの回転方向は,前記中間転写ベルトの回転による移動方向に対してウィズ回転方向であり,前記下流側に属する前記発泡ローラーの回転方向は,前記中間転写ベルトの回転による移動方向に対してカウンター回転方向であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57723(P2013−57723A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194786(P2011−194786)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】