説明

画像形成装置

【課題】連続した被記録媒体に対する空吐出動作で消費される無駄な液体消費量が増加する。
【解決手段】第2微駆動(駆動パルスP6)を与えたときのノズルのメニスカスの振動の振幅は、第1微駆動パルス(駆動パルスP1)を与えたときのノズルのメニスカスの振動の振幅よりも相対的に大きくなり、空吐出動作として第1空吐出動作(ラインフラッシング動作)を行う場合には第1微駆動パルス(駆動パルスP1)によって微駆動を行わせ、第2空吐出動作(スターフラッシング動作)を行う場合には、第2微駆動パルス(駆動パルスP6)によって微駆動を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッドを記録ヘッドに用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドの非吐出状態が続くノズルに対して、液滴を吐出させないでノズルメニスカスを振動させる所謂微駆動パルス(非吐出パルス)を与えることでノズル状態を維持することが行われている。
【0004】
この記録ヘッドの微駆動に関しては、例えば、液体の吐出率に応じて異なる種類の微駆動波形を印加することが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、記録ヘッドのノズルの状態を維持するために、印刷動作中に、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を吐出する、いわゆる空吐出動作(フラッシング動作とも称される。)を行うようにしている。
【0006】
この場合、連続した被記録媒体(ロール紙、連続紙、帳票、ウエブ媒体などとも称される。)に対して印刷を行うライン型画像形成装置にあっては、カット紙を使用する場合のように被記録媒体の間で空吐出動作を行うことができないことから、一定の長さ毎に空吐出を行う空吐出動作(ラインフラッシング動作という。)と、画像形成領域上に視認し難い大きさの液滴で空吐出を行う空吐出動作(スターフラッシング動作)と、のいずれかを行うようにしている。なお、ラインフラッシング動作については例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−179531号公報
【特許文献2】特開2008−213471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した連続紙を使用するライン型画像形成装置におけるラインフラッシング動作は、空吐出した領域を後で切断する必要があり、損紙(切断される部分)が発生というデメリットがあるものの、強力な捨て打ちができるというメリットがある。
【0009】
一方、スターフラッシング動作は、損紙が発生しないというメリットがあるが、画像形成領域の紙面上に視認されにくい程度に小さな滴を捨て打ちするという特性上、低湿環境や印字デューティの小さい画像では捨て打ち効果が十分に得られにくいというデメリットがある。
【0010】
一方、空吐出動作そのものは、印字に用いられないノズル内の増粘液体を排出して、いつでも正常な吐出できるようにノズルの状態を維持するものであるが、必ず、空吐出された液体は無駄な消費になることから、できる限り、無駄な消費を低減し、コストパーパフォーマンス(CPP)を高める必要がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、空吐出動作に伴う無駄な液体消費を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルが通じる個別液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段と、を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの液滴を吐出させるノズルの前記圧力発生手段に対して前記液滴を吐出させる吐出パルスを与え、前記液滴を吐出させないノズルの前記圧力発生手段に対して液滴を吐出させないで前記ノズルのメニスカスを振動させる非吐出パルスを与えるヘッド駆動制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を制御する空吐出制御手段と、を備え、
前記空吐出制御手段は、連続した被記録媒体に対して一定の長さごとに1回前記空吐出滴を吐出させる第1空吐出動作と、前記被記録媒体の画像形成領域に対して前記空吐出滴を吐出させる第2空吐出動作とを制御可能であり、
前記ヘッド駆動制御手段は、
前記空吐出制御手段が前記第1空吐出動作の制御を行うときには第1非吐出パルスを与え、
前記空吐出制御手段が前記第2空吐出動作の制御を行うときには第2非吐出パルスを与え、
前記第2非吐出パルスを与えたときの前記ノズルのメニスカスの振動の振幅又は振動回数は、前記第1非吐出パルスを与えたときの前記ノズルのメニスカスの振動の振幅又は振動回数よりも相対的に大きい
構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空吐出動作に伴う無駄な液体消費を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】同装置の記録ヘッドの一例を示す平面説明図である。
【図3】同じく記録ヘッドの他の例を示す平面説明図である。
【図4】同画像形成装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向の断面説明図である。
【図5】同じく滴吐出動作の説明に供する断面説明図である。
【図6】同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図7】同制御部の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示すブロック説明図である。
【図8】ラインフラッシング動作(第1空吐出動作)及びスターフラッシング動作(第2空吐出動作)の例を説明する説明図である。
【図9】ラインフラッシング動作(第1空吐出動作)を行った場合の微駆動パルスの電圧値(波高値)と空吐出動作によるノズルの回復状態との関係の説明に供する説明図である。
【図10】スターフラッシング動作(第2空吐出動作)を行った場合の微駆動パルスの電圧値(波高値)と空吐出動作によるノズルの回復状態との関係の説明に供する説明図である。
【図11】ラインフラッシング動作のノズル部分の状態を説明する説明図である。
【図12】スターフラッシング動作後のノズル部分の状態を説明する説明図である。
【図13】本発明の第1実施形態における駆動波形を示す説明図である。
【図14】同駆動波形を構成する駆動パルスの選択期間を説明する説明図である。
【図15】同駆動波形の駆動パルスを選択して生成した吐出パルス及び非吐出パルスの説明図である。
【図16】本発明の第2実施形態における駆動波形を示す説明図である。
【図17】同駆動波形を構成する駆動パルスの選択期間を説明する説明図である。
【図18】同駆動波形の駆動パルスを選択して生成した吐出パルス及び非吐出パルスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。図1は同画像形成装置の概略説明図である。
【0016】
この画像形成装置は、フルライン型インクジェット記録装置であり、装置本体1と乾燥時間を稼ぐ出口ユニット2とを並置している。
【0017】
この画像形成装置においては、連続紙である被記録媒体10は、元巻きローラ11から巻き出され、搬送ローラ12〜18によって搬送されて、巻取りローラ21にて巻き取られる。
【0018】
この被記録媒体10に対し、搬送ローラ13と搬送ローラ14との間で、プラテン19上を画像形成部5に対向して搬送され、画像形成部5から吐出される液滴によって画像が形成される。
【0019】
ここで、画像形成部5には、例えば、媒体搬送方向上流側から、搬送される被記録媒体10に対して4色分のインク(ブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローY)の液滴を吐出する4色分のフルライン型記録ヘッド51K、51C、51M、51Y(以下、色の区別しないときは「記録ヘッド51」という。)が配置されている。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0020】
記録ヘッド51は、例えば、図2に示すように、1つのフルライン型記録ヘッドであっても良いし、図3に示すように、複数の短尺ヘッド100をベース部材52上に千鳥状に並べてヘッドアレイとすることで媒体幅分のフルライン型記録ヘッドとして構成したものでも良い。また、記録ヘッド51は、液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体供給するヘッドタンクを有する液体吐出ヘッドユニットで構成しているが、これに限るものではなく、液体吐出ヘッド単独の構成でもよい。
【0021】
次に、記録ヘッドを構成している液体吐出ヘッドの一例について図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は同ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。なお、ここでは、図3の構成で用いる液体吐出ヘッドで説明する。
【0022】
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合して、液滴を吐出するノズル104が貫通孔105を介して通じる個別液室(加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路、圧力発生室などと称されるものを含む意味である。以下、単に「液室」という。)106、液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成され、フレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ109を介して液体(インク)が液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して液室106にインクが供給される。
【0023】
流路板101は、SUSなどの金属板を積層して、貫通孔105、液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材102は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
【0024】
そして、振動板部材102の液室106と反対側の面に液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての柱状の電気機械変換素子である積層型圧電部材112が接合されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータ111を構成している。
【0025】
なお、この例では、圧電部材112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードでもよい。
【0026】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図4に示すように、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後、図5に示すように、圧電部材112に印加する電圧を上げて圧電部材112を積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて液室106の容積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
【0027】
そして、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0028】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、図6は同制御部のブロック説明図である。
【0029】
主制御部500は、この画像形成装置全体の制御を司る本発明におけるヘッド駆動制御手段及び空吐出制御手段を兼ねるマイクロコンピュータ、画像メモリ、通信インタフェースなどで構成した主制御部(システムコントローラ)501を備えている。主制御部501は、外部の情報処理装置(ホスト側)などから転送される画像データ及び各種コマンド情報に基づいて用紙に画像を形成するために、印刷制御部502に印刷用データを送出する。
【0030】
印刷制御部502は、主制御部501から受領した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ503に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ503に対して出力する。
【0031】
ヘッドドライバ503は、シリアルに入力される1つの記録ヘッド51に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して記録ヘッド51の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電部材112に対して印加することで記録ヘッド51を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0032】
また、主制御部501は、モータドライバ504を介して、元巻きローラ11、搬送ローラ12〜18、巻取りローラ21などの各ローラ類510を駆動制御する。
【0033】
また、主制御部501には各種センサからなるセンサ群506からの検出信号が入力され、また、操作部507との間で各種情報の入出力及び表示情報のやり取りを行う。
【0034】
次に、印刷制御部502及びヘッドドライバ503の一例について図7のブロック説明図を参照して説明する。
【0035】
印刷制御部502は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数のパルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M4を出力するデータ転送部702を備えている。
【0036】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ203の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0037】
ヘッドドライバ503は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715とを備えている。
【0038】
このアナログスイッチ715は、各圧電部材112の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvが入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M4をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形Pvを構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)圧電部材112に印加される。
【0039】
次に、本発明における空吐出動作と微駆動波形(非吐出パルス)の関係について説明する。
【0040】
この画像形成装置は、被記録媒体が連続紙であることから、印刷中に空吐出動作を行う必要がある。そこで、主制御部500の空吐出動作を制御する空吐出制御手段(プログラムで構成)は、記録ヘッド51から画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作として、連続した被記録媒体に対して一定の長さごとに1回空吐出滴を吐出させる第1空吐出動作(前記ラインフラッシング動作)と、被記録媒体の画像形成領域に対して視認されにくい小さな空吐出滴を吐出させる第2空吐出動作(前記スターフラッシング動作)とを制御することができるようにしている。
【0041】
ここで、ラインフラッシング動作(第1空吐出動作)の例を図8(a)に示している。大きな空吐出滴401がライン状に着弾することからラインフラッシングと称される。また、スターフラッシング動作(第2空吐出動作)の例を図8(b)に示している。小さな空吐出滴402が星状に点在して着弾することからスターフラッシングと称される。
【0042】
一方、印刷中は、記録ヘッド51の液滴を吐出させるノズルの圧力発生手段に対しては液滴を吐出させる吐出パルスを与え、液滴を吐出させないノズルの圧力発生手段に対して液滴を吐出させないでノズルのメニスカスを振動させる非吐出パルス(微駆動パルス)を与える制御を行っている。
【0043】
ここで、微駆動パルスの電圧値(波高値)と空吐出動作によるノズルの回復状態との関係について検討したところ、図9及び図10に示す関係が得られた。
【0044】
すなわち、ラインフラッシング動作(第1空吐出動作)で空吐出を行った場合には、図9に示すように、微駆動波形の電圧値が大きくなるほど、吐出不能(ノズル抜け)や着弾位置乱れが生じる異常ノズル数が増加した。これにより、ラインフラッシング動作(第1空吐出動作)で空吐出を行う場合には、微駆動パルスの電圧値は小さいほど少ない滴数でもノズル回復効果(空吐出効果)を得られることが分かる。
【0045】
これに対し、スターフラッシング動作(第2空吐出動作)で空吐出を行った場合には、図10に示すように、微駆動波形の電圧値が小さくなるほど、吐出不能(ノズル抜け)や着弾位置乱れが生じる異常ノズル数が増加した。これにより、スターフラッシング動作(第2空吐出動作)で空吐出を行う場合には、微駆動パルスの電圧値は大きいほど少ない滴数でもノズル回復効果(空吐出効果)を得られることが分かる。
【0046】
この点について図11及び図12を参照して更に説明する。
【0047】
まず、図11(a)はラインフラッシング動作を行う場合に、微駆動パルスの電圧を小さくしたときのラインフラッシング動作後のノズル部分の状態を示している。この場合、駆動パルスの電圧が小さいことから、メニスカスの振動が小さくなり、結果として、メニスカス近傍のみインクが増粘している(増粘部分404)。このとき、増粘部分404は言わば硬くて浅い(薄い)状態となる。したがって、ラインフラッシング動作によって大きな液滴を1滴あるいは2滴程度空吐出させることで、ノズル内のインク粘度及びメニスカスのインク粘度を初期値(初期状態)に戻すことができる。
【0048】
これに対し、図11(b)は、微駆動パルスの電圧を大きくしたときのラインフラッシング動作後のノズル部分の状態を示している。の場合、駆動パルスの電圧が大きいことから、メニスカスの振動が大きくなり、表面の増粘部分がノズルの奥部まで引き込まれ、結果として、ノズル奥部までインクが増粘している(増粘部分405)。このとき、増粘部分405はいわば軟らかくて深い(厚い)状態となる。したがって、ラインフラッシング動作によって多数の滴を空吐出しないと、ノズル内のインク粘度及びメニスカスのインク粘度を初期値に戻すことができない。
【0049】
そのため、前述した図9に示すように、微駆動パルスの電圧値が高いと、異常ノズル数が増加することになる。
【0050】
一方、図12(a)は、スターフラッシング動作を行う場合に、微駆動パルスの電圧を小さくしたときのスターフラッシング動作後のノズル部分の状態を示している。この場合、駆動パルスの電圧が小さいことから、メニスカスの振動が小さくなり、結果として、メニスカス近傍のみインクが増粘している(増粘部分406)。この場合、増粘部分406は、ラインフラッシング動作よりも空吐出間隔が短いため、インク増粘度が低く。しかしながら、空吐出を視認できない程度の液滴(相対的に小さな液滴:小滴)で空吐出を行わなければならないため、少ない小滴で増粘部分406を排出することは難しく、多数の滴を必要とすることになる。
【0051】
これに対し、図12(b)は、スターフラッシング動作を行う場合に、微駆動パルスの電圧を大きくしたときのスターフラッシング動作後のノズル部分の状態を示している。この場合、駆動パルスの電圧が大きいことから、メニスカスの振動が大きくなり、結果として、ノズル内部のインクまで増粘している(増粘部分407)。しかしながら、ラインフラッシング動作よりも空吐出間隔が短いことから、インク増粘度は低く、小滴での空吐出でも十分に排出することができる。
【0052】
そのため、前述した図10に示すように、微駆動パルスの電圧値が低いと、異常ノズル数が増加することになる。
【0053】
以上を踏まえて、本発明の第1実施形態について図13ないし図15を参照して説明する。図13は同実施形態における駆動波形を示す説明図、図14は同駆動波形を構成する駆動パルスの選択期間(○を付した期間を選択)を説明する説明図、図15は同駆動波形の駆動パルスを選択して生成した吐出パルス及び非吐出パルスの説明図である。
【0054】
なお、駆動パルスとは駆動波形を構成する要素としてのパルスを示す用語として、吐出パルスとは圧力発生手段に印加されて液滴を吐出させるパルスを示す用語とし、非吐出パルス(又は微駆動パルス)とは圧力発生手段に印加されるが滴を吐出させないでノズル内のインクを振動(流動)させるパルスを示す用語として用いる。
【0055】
この駆動波形Pvは、図13に示すように、時系列で生成出力される、駆動パルスP1〜P7で構成されている。
【0056】
そして、図14に示すように、滴制御信号M0〜M4を用いて、大滴を吐出させるときには、駆動パルスP1〜P7のすべてを選択することで、図15(a)に示す大滴用の吐出パルスを生成させる。
【0057】
中滴を吐出させるときには、駆動パルスP4、P6、P7を選択することで、図15(b)に示す中滴用の吐出パルスを生成させる。
【0058】
小滴を吐出させるときには、駆動パルスP2を選択することで、図15(c)に示す小滴用の吐出パルスを生成させる。
【0059】
第1非吐出パルス(第1微駆動パルス)を印加するときには、駆動パルスP1を選択して、図15(d)に示す第1非吐出パルス(第1微駆動パルス)を生成する。
【0060】
第2非吐出パルス(第2微駆動パルス)を印加するときには、駆動パルスP6を選択して、図15(e)に示す第2非吐出パルス(第2微駆動パルス)を生成する。
【0061】
ここで、駆動パルスP6の電圧波高値は駆動パルスP1よりも大きく設定しているので、第2非吐出パルスを与えたときのノズルのメニスカスの振動の振幅は、第1非吐出パルスを与えたときのノズルのメニスカスの振動の振幅よりも相対的に大きくなる。
【0062】
そして、第1空吐出動作(ラインフラッシング動作)を行うときには大滴用吐出パルスを使用し、第2空吐出動作(スターフラッシング動作)を行うときには小滴用吐出パルスを使用する。空吐出用吐出パルスを印字用吐出パルスと兼用することで、液滴を効率よく吐出させることができる。
【0063】
また、空吐出動作として第1空吐出動作(ラインフラッシング動作)を行う場合には、微駆動電圧(電圧波高値)が小さくメニスカスを小さく振動させる第1微駆動パルス(駆動パルスP1)によって微駆動を行わせる。
【0064】
これに対して、空吐出動作として第2空吐出動作(スターフラッシング動作)を行う場合には、駆動パルスP1よりも微駆動電圧(電圧波高値)が大きくメニスカスを大きく振動させる第2微駆動パルス(駆動パルスP6)によって微駆動を行わせる。
【0065】
このようにして、同一駆動波形を用いて、ラインフラッシング動作、スターフラッシング動作のいずれを行う場合でも、空吐出動作に伴う無駄な液体消費を低減することができる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について図16ないし図18を参照して説明する。図16は同実施形態における駆動波形を示す説明図、図17は同駆動波形を構成する駆動パルスの選択対象(○を付した期間を選択)を説明する説明図、図17は同駆動波形の駆動パルスを選択して生成した吐出パルス及び非吐出パルスの説明図である。
【0067】
この駆動波形Pvは、図16に示すように、時系列で生成出力される、駆動パルスP1〜P7で構成されている。
【0068】
そして、図17に示すように、滴制御信号M0〜M4を用いて、大滴を吐出させるときには、駆動パルスP1〜P7のすべてを選択することで、図18(a)に示す大滴用の吐出パルスを生成させる。
【0069】
中滴を吐出させるときには、駆動パルスP4(期間T5)、P6、P7(期間T7〜T9)を選択することで、図18(b)に示す中滴用の吐出パルスを生成させる。
【0070】
小滴を吐出させるときには、駆動パルスP2(期間T2)を選択することで、図18(c)に示す小滴用の吐出パルスを生成させる。
【0071】
第1非吐出パルス(第1微駆動パルス)を印加するときには、駆動パルスP3(期間T4)を選択して、図18(d)に示す第1非吐出パルス(第1微駆動パルス)を生成する。
【0072】
第2非吐出パルス(第2微駆動パルス)を印加するときには、駆動パルスP1の立ち下がり波形要素a(期間T1)と駆動パルスP6の立ち上がり波形要素b(期間T8)を選択して、図18(e)に示す第2非吐出パルス(第2微駆動パルス)を生成する。
【0073】
こここで、この第2非吐出パルス(第2微駆動パルス)を印加することで、ノズルのメニスカスは最初の立ち下がりで振動し、戻ったところで、立ち上がりで振動されるので、実質2回振動されることになる。したがって、第2非吐出パルスを与えたときのノズルのメニスカスの振動の振動回数は、第1非吐出パルスを与えたときのノズルのメニスカスの振動の振幅又は振動回数よりも相対的に大きくなる。
【0074】
そして、空吐出動作として第1空吐出動作(ラインフラッシング動作)を行う場合には、メニスカスを1回振動させる第1微駆動パルス(駆動パルスP3)によって微駆動を行わせる。
【0075】
これに対して、空吐出動作として第2空吐出動作(スターフラッシング動作)を行う場合には、メニスカスを実質的に2回振動させる第2微駆動パルス(駆動パルスP1とP6)によって微駆動を行わせる。
【0076】
このようにして、同一駆動波形を用いて、ラインフラッシング動作、スターフラッシング動作のいずれを行う場合でも、空吐出動作に伴う無駄な液体消費を低減することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 連続した被記録媒体
51 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
500 制御部
502 印刷制御部
503 ヘッドドライバ
701 駆動波形生成部
702 データ転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルが通じる個別液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段と、を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの液滴を吐出させるノズルの前記圧力発生手段に対して前記液滴を吐出させる吐出パルスを与え、前記液滴を吐出させないノズルの前記圧力発生手段に対して液滴を吐出させないで前記ノズルのメニスカスを振動させる非吐出パルスを与えるヘッド駆動制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を制御する空吐出制御手段と、を備え、
前記空吐出制御手段は、連続した被記録媒体に対して一定の長さごとに1回前記空吐出滴を吐出させる第1空吐出動作と、前記被記録媒体の画像形成領域に対して前記空吐出滴を吐出させる第2空吐出動作とを制御可能であり、
前記ヘッド駆動制御手段は、
前記空吐出制御手段が前記第1空吐出動作の制御を行うときには第1非吐出パルスを与え、
前記空吐出制御手段が前記第2空吐出動作の制御を行うときには第2非吐出パルスを与え、
前記第2非吐出パルスを与えたときの前記ノズルのメニスカスの振動の振幅又は振動回数は、前記第1非吐出パルスを与えたときの前記ノズルのメニスカスの振動の振幅又は振動回数よりも相対的に大きい
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記空吐出動作で使用する吐出パルスは、画像形成に使用する吐出パルスと同じであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
少なくとも、滴の大きさの異なる複数の液滴を吐出可能であり、
前記第1空吐出動作で吐出させる空吐出滴は、前記複数の液滴のうちの最も大きな液滴であり、
前記第2空吐出動作で吐出させる空吐出滴は、前記複数の液滴のうちの最も小さな液滴である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヘッド駆動制御手段は、
1駆動周期ごとに複数の駆動パルスを時系列で含む駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形生成手段から出力された前記駆動波形に含まれる複数の駆動パルスのうちの所要の1又は2以上の駆動パルスを前記吐出パルス又は前記非吐出パルスとして選択して前記圧力発生手段に与える手段と、を有し、
前記第1非吐出パルスとして1つの前記駆動パルスが選択され、
前記第2非吐出パルスとして2つ以上の駆動パルスが選択され、又は2つの駆動パルスの一部の波形要素が選択される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−59875(P2013−59875A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198220(P2011−198220)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】