説明

画像形成装置

【課題】筐体の側面に設けられたカバーを開放して被記録媒体を挿入することのできる画像形成装置において、当該カバーを開放して挿入された被記録媒体に湾曲が加えられるのを抑制すること。
【解決手段】手差しトレイ60が開放されると、その動きがカム板67のカム面68とローラホルダ70のピン73との係合を介してピンチローラ9Bに伝達される。このとき、駆動ローラ9A,ピンチローラ9Bのニップ部は手差し側シュート面61の延長面上に配設され、各ローラ9A,9Bの中心をつなぐ線は鉛直になる。このため、レジストローラ9による用紙Pの搬送方向は水平になりそのニップ部が前記延長面上に配設される。従って、載置板63上からレジストローラ9を通過するまでの用紙搬送経路は水平になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、その筐体の側面に設けられたカバーを開放して被記録媒体を挿入することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、無端ベルトによって被記録媒体としての用紙を水平方向に搬送しながら電子写真方式でその用紙にカラー画像を形成する画像形成装置において、前面カバーを開放して手差しトレイとすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置では、手差しトレイから挿入された用紙は、一対のレジストローラの間に挿入され、そのレジストローラを介して無端ベルトの表面に搬送されて、前述のようにカラー画像を形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−202964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、カバーを開放して挿入された用紙が当接するローラを含めたそれより下流側の用紙搬送経路が、通常の給紙カセット等の保持手段から搬送された用紙と同様の搬送経路であると、次のような課題が発生する。すなわち、ユーザがカバーを開放して用紙を挿入する場合は、その用紙が例えばハガキや封筒などのようにできるだけ湾曲させたくない用紙である場合が多い。にもかかわらず、前述のように用紙搬送経路が同様であると、給紙カセット等から搬送された一般の用紙と同様に湾曲が加えられる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、筐体の側面に設けられたカバーを開放して被記録媒体を挿入することのできる画像形成装置において、当該カバーを開放して挿入された被記録媒体に湾曲が加えられるのを抑制することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、被記録媒体を保持する保持手段と、該保持手段の上方に配設され、前記被記録媒体を水平方向に搬送しながら当該被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、複数のローラを備え、前記保持手段に保持された前記被記録媒体を前記画像形成手段まで搬送する搬送手段と、前記画像形成手段及び前記保持手段及び前記搬送手段を収容した筐体と、前記筐体の側面に開口し、前記搬送手段による搬送経路のうち、当該搬送経路を構成する特定の前記ローラを含めた当該特定のローラより下流側の前記搬送経路へ被記録媒体を挿入可能な開口部と、前記側面に開閉可能に設けられ、開放時には前記開口部を介した被記録媒体の挿入を許可し、閉鎖時には前記開口部を介した被記録媒体の挿入を禁止するカバーと、前記搬送手段が備えたローラのうち、前記特定のローラまたは当該特定のローラより下流側に設けられた前記ローラの少なくとも一部に対して、前記カバーの動きを伝達して当該ローラを移動させることにより、前記カバーの開放時には、前記開口部から前記画像形成手段に至る前記被記録媒体の搬送経路を、前記カバーの閉鎖時に比べて水平に近づける移動手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の画像形成装置では、保持手段に保持された被記録媒体は、複数のローラを備えた搬送手段によって、当該保持手段の上方に配設された画像形成手段まで搬送される。また、前記画像形成手段及び前記保持手段及び前記搬送手段を収容した筐体の側面(例えば、前面,後面,右面,または左面)に設けられたカバーを開放すると、当該側面に設けられた開口部を介して被記録媒体が挿入可能となる。そして、その開口部を介して挿入された被記録媒体は、前記搬送手段による搬送経路のうち、当該搬送経路を構成する特定の前記ローラを含めた当該特定のローラより下流側の前記搬送経路を通って、前記画像形成手段まで搬送される。
【0008】
ここで、前記カバーの開放時には、前記特定のローラまたは当該特定のローラより下流側に設けられた前記ローラの少なくとも一部に対して、前記カバーの動きが移動手段を介して伝達される。すると、当該ローラが移動することにより、前記開口部から前記画像形成手段に至る前記被記録媒体の搬送経路が、前記カバーの閉鎖時に比べて水平に近づけられる。また、前記画像形成手段も、被記録媒体を水平方向に搬送しながら当該被記録媒体に画像を形成する。従って、本発明では、前記カバーを開放することによって前記開口部を介して挿入された被記録媒体に湾曲が加えられるのを、良好に抑制することができる。
【0009】
なお、前記搬送手段が、前記搬送経路を規定するガイドを備えている場合、前記搬送手段が備えたローラのうち最も前記画像形成手段に近い前記ローラから前記画像形成手段の間に設けられた前記ガイドが、前記被記録媒体の撓みを許容する位置に設けられてもよい。この種の画像形成装置では、搬送手段による被記録媒体の搬送速度を、画像形成手段における被記録媒体の搬送速度よりも大きくすることがなされる場合がある。これは、画像形成手段による画像形成中の被記録媒体が搬送手段に引っ張られて、その被記録媒体に正確な画像が形成できなくなるのを抑制するためである。このような場合、搬送手段が備えたローラのうち最も前記画像形成手段に近い前記ローラ(前記特定のローラであってもよい)と前記画像形成手段との間に搬送された被記録媒体に撓みが生じる場合があるが、ガイドがそのような撓みを許容する位置に設けられていれば、一層良好に画像を形成することができる。
【0010】
また、前記特定のローラが、回転駆動される駆動ローラとその駆動ローラに圧接されて回転するピンチローラとから構成されている場合、前記移動手段は、前記駆動ローラを中心にして前記ピンチローラを移動させてもよい。この場合、前記駆動ローラを移動させる場合に比べて、前記駆動ローラに関する駆動系の構成を簡略化することができる。
【0011】
そして、その場合、前記ピンチローラは、前記画像形成手段によって画像が形成される側の前記被記録媒体の面に当接し、前記被記録媒体の当該面に付着した紙粉を吸着する機能を有してもよい。その場合、被記録媒体の画像が形成される側の面の紙粉をピンチローラを介して吸着した上で、その被記録媒体に画像形成手段による画像形成を行うことができ、一層良好に画像を形成することができる。
【0012】
また、本発明において、前記画像形成手段は、複数のローラ間に架設されて回転駆動されることにより水平方向に被記録媒体を搬送し、導電性を有する無端ベルトと、前記無端ベルトによって搬送される前記被記録媒体に前記画像としてのトナー像を電子写真方式で形成するトナー像形成手段と、を備えたものであってもよい。このように、複数のローラ間に架設された無端ベルトを回転駆動することにより、水平方向に被記録媒体を搬送しながら電子写真方式で画像を形成する画像形成手段では、画像形成中には被記録媒体に殆ど湾曲が加えられない、従って、この場合、被記録媒体に湾曲が加えられるのを、一層良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を概略的に表す中央断面図である。
【図2】その画像形成装置のレジストローラとフロントカバーとの細部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[画像形成装置の概略構成]
次に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、本実施形態は、本発明に係る画像形成装置を電子写真方式の画像形成装置に適用したものである。図1は本実施形態に係る画像形成装置1の構成を概略的に表す中央断面図である。なお、以下の説明において、図1における左側を前方、右側を後方とする。
【0015】
図1に示すように、被記録媒体の一例としての用紙やOHPシート(以下、用紙Pという)に画像を形成する画像形成部2(画像形成手段の一例)は、4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3C(トナー像形成手段の一例)、露光器4、定着器5、ベルトユニット10等から構成されている。なお、本実施形態では、画像形成部2として、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナー(現像剤)に対応した4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cによって形成された4種類のトナー像(現像剤像)を、用紙Pの上で重ね合わせることにより用紙Pにカラー画像を形成するダイレクトタンデム方式を採用している。
【0016】
画像形成部2の下方に装着された給紙カセット6(保持手段の一例)に載置されている複数枚の用紙Pのうち、給紙機構(フィーダ部)7により拾い上げられた積層方向最上位に位置する用紙Pは、紙粉取りローラ8にて紙粉が除去された後、レジストローラ9まで搬送される。給紙機構(フィーダ部)7は、摩擦分離ローラと摩擦分離片との協働により最上位に位置する一枚の用紙Pのみを摩擦分離して給紙する周知のものであるが、摩擦分離の際に摩擦分離片との接触により用紙Pの幅方向中央付近に多く付着した紙粉が紙粉取りローラ8によって除去される。レジストローラ9は、駆動ローラ9Aとピンチローラ9Bとから構成され、用紙Pの斜行を矯正して所定のタイミングでベルトユニット10へ送り出す。なお、レジストローラ9,ベルトユニット10の詳細は後述する。
【0017】
そして、4つのプロセスカートリッジ3K等は、ベルトユニット10の用紙搬送面側において、用紙Pの搬送方向に沿って上流からプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの順に直列に配設されている。
【0018】
このため、ベルトユニット10上を搬送される用紙Pには、4種類のトナー像が順次、転写されていき、用紙Pへの転写が完了したトナー像は、定着器5にて加熱されて用紙Pに定着する。そして、定着器5から排出された用紙Pは、その搬送方向が上方側に転向された後、画像形成装置1の上端面側に設けられた排紙トレイ1Aに排出される。すなわち、給紙機構7、紙粉取りローラ8、及び、レジストローラ9が、搬送手段に相当する。
【0019】
なお、各プロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cには、トナー像が担持される感光体ドラム3A、及び、感光体ドラム3Aを帯電させる帯電器3E(図2参照)等が収納されている。そして、帯電した感光体ドラム3Aを露光器4にて露光して感光体ドラム3Aの外周面に静電潜像を形成した後、トナーを感光体ドラム3Aに供給すると、感光体ドラム3Aの外周面にトナー像が担持(形成)され、そのトナー像が用紙Pに転写される。
【0020】
また、定着器5は、トナーを加熱してトナー像を用紙Pに定着させる加熱ローラ51と、搬送されてくる用紙Pを挟んで加熱ローラ51と反対側に配設されて用紙Pを加熱ローラ51側に押し付ける加圧ローラ52とを備えている。
【0021】
ベルトユニット10は、前述したように、4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの各感光体ドラム3Aに対向する位置に配設されて用紙Pを搬送するものである。具体的には、ベルトユニット10は、感光体ドラム3Aの回転軸と平行な回転軸を有する駆動ローラ12A及び従動ローラ(テンションローラ)12B、並びに駆動ローラ12Aと従動ローラ12Bとの間に架設された転写搬送ベルト12C(無端ベルトの一例)等から構成されており、用紙Pは、転写搬送ベルト12C上に載置された状態(吸着された状態)で搬送されていく。なお、駆動ローラ12Aは、装置本体(図示省略した本体フレーム)に設けられたモータ(図示省略)から動力の供給を受けて転写搬送ベルト12Cを回転駆動し、従動ローラ12Bは転写搬送ベルト12Cの回転と共に駆動ローラ12Aに従動して回転する。
【0022】
また、各プロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの各感光体ドラム3Aと対向する転写搬送ベルト12Cの張架面は、転写搬送ベルト12Cのうち用紙Pを搬送する平面状の搬送面とされている。この搬送面は、必ずしも水平である必要はなく、多少傾斜していてもよいが、本実施形態では、水平面とほぼ一致する。また、ベルトユニット10の、各感光体ドラム3Aと半導電性の転写搬送ベルト12Cを挟んで対向する位置には、一定の転写電流を通電されることによって感光体ドラム3Aに担持されたトナー像を用紙Pに転写させる転写ローラ3Bが、それぞれ設けられている。
【0023】
ところで、前述の4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3C、ベルトユニット10、及び、給紙カセット6からレジストローラ9に至る機構は、外観意匠面を構成する筐体1Cに覆われた装置本体(本体フレーム)に着脱可能に装着されている。そして、筐体1Cのうち排紙トレイ1Aが設けられたトップカバー1Fは、筐体1Cに揺動(開閉)可能に組み付けられており、このトップカバー1Fを上方側に開放することにより、4つのプロセスカートリッジ3K、3Y、3M、3Cが交換可能となる。
【0024】
また、筐体1Cの前方に設けられたフロントカバー1Gは、一部が手差しトレイ60(カバーの一例)として揺動(開閉)可能に組み付けられており、二点鎖線で示すようにこの手差しトレイ60を開放することにより、給紙カセット6を介さずに装置の前方から用紙Pをレジストローラ9に供給することができる。更に、筐体1Cの後方にはリアカバー1Hが揺動(開閉)可能に組み付けられており、二点鎖線で示すようにこのリアカバー1Hを開放することにより、定着器5を通過した用紙Pを装置の後方に排出することができる。ハガキ等、腰の強い用紙Pに対する画像形成がなされる場合は、用紙Pに大きな湾曲が加えられるのを抑制するため、ユーザはこの手差しトレイ60,リアカバー1Hを開放することにより、用紙Pの供給及び排出を行う場合が多い。
【0025】
[レジストローラとフロントカバーとの詳細]
フロントカバー1Gの一部は、図2に示すように、左右方向(図1,図2の紙面に垂直方向)に伸びる揺動軸60Aを揺動の中心にして開放可能な手差しトレイ60として構成されている。手差しトレイ60は、揺動軸60Aを中心に揺動することにより、図2(A)に示す閉鎖位置と図2(B)に示す開放位置との間を揺動可能に構成されている。
【0026】
開放位置に揺動した手差しトレイ60を介してユーザによって直接挿入された用紙Pは、フロントカバー1Gに形成された開口部1Kの下部壁面としての手差し側シュート面61に案内されて、レジストローラ9の駆動ローラ9A,ピンチローラ9Bの間へ挿入される。このように手差しトレイ60を介して挿入された用紙Pも、給紙カセット6から搬送された用紙P同様にレジストローラ9によってベルトユニット10上へ送り出される。
【0027】
また、手差し側シュート面61の前端には、左右方向に伸びる揺動軸63Aが設けられ(図2(B)参照)、その揺動軸63Aを中心にして揺動可能な平板状の載置板63が設けられている。この載置板63は、手差しトレイ60が閉鎖位置に配設されたときには図2(A)に示すようにその手差しトレイ60にもたれ掛かっており、手差しトレイ60が開放されるとそれに伴って前方に揺動する。そして、手差しトレイ60が前記開放位置に配設されると、図2(B)に示すように、載置板63は手差しトレイ60の上に載置されると共にその表面が手差し側シュート面61と同一平面上に配設され、用紙Pの挿入が極めて容易になる。
【0028】
次に、ピンチローラ9Bは、駆動ローラ9Aの回転軸を中心に揺動可能に設けられたローラホルダ70に回転自在に支持されており、引張コイルバネ71によって駆動ローラ9A方向に付勢されている。駆動ローラ9Aは、装置本体(本体フレーム)に支持されてその装置本体側からの動力により回転し、ピンチローラ9Bは、駆動ローラ9Aの駆動軸に設けられたギヤと噛み合うギヤから駆動力を伝達されて、駆動ローラ9Aとは逆方向に回転する。なお、駆動ローラ9Aまたはピンチローラ9Bの何れか一方とそれに対応する前記ギヤとは、等速揺動ジョイント(いわゆるユニバーサルジョイント)を介して接続されている。このため、用紙Pの厚さに応じて各ローラ9A,9Bが離間した場合でも良好に各ローラ9A,9Bを駆動可能である。このような構成は、例えば特開2007−169024号公報に詳しいので参照されたい。
【0029】
また、ピンチローラ9Bは、用紙Pの画像が形成される面に当接してその面に付着した紙粉を除去する機能も有している。より詳細には、ピンチローラ9Bは、用紙Pの幅方向のほぼ全域に亘って付着している紙粉を除去するための紙粉吸着ローラとして機能するものであり、その外周面にスポンジ等の材質を用いて構成された紙粉掻き取り部材(図示省略)と摩擦接触しながら回転することにより、紙粉を静電的に吸着するために必要な静電気が発生すると同時に、当該ピンチローラ9Bに静電的に吸着された紙粉を、紙粉掻き取り部材によって物理的に掻き取る(除去する)ように構成されている。このため、開口部1Kを介して挿入された用紙Pに画像を形成する際も、その画像が形成される面から紙粉を除去して良好に画像を形成することができる。更に、ローラホルダ70は、駆動ローラ9A,ピンチローラ9Bの左右方向(軸方向)両端に設けられ、左右方向に垂直な平板状の一対の部材で、その外側面に前述の引張コイルバネ71がそれぞれ取り付けられている。なお、一対のローラホルダ70は、左右が連結されていてもよい。
【0030】
ローラホルダ70は、レジストローラ9の用紙搬送方向上流側に突出した形状を有する略三角形の板状に構成され、その突出部の先端には、円柱状のピン73が左右方向に向かって突出している。これに対して、手差しトレイ60の左右両端縁からは、ピン73に係合するカム板67が突出している。カム板67は、左右方向に垂直な一対の板状に構成され、揺動軸60Aの近傍を円弧の一端とする円弧状のカム面68を有している。
【0031】
そして、カム面68の他端は、手差しトレイ60が開放位置に配設されたとき、図2(B)に示すようにピン73に係合する。ローラホルダ70は、駆動ローラ9Aよりもベルトユニット10側に設けられた引張コイルバネ74によって、図2における時計回り方向、すなわちピン73が上昇する方向に付勢されている。手差しトレイ60が開放位置に配設された場合、カム面68の前記他端(揺動軸60Aとは反対側の端部)がピン73と係合し、引張コイルバネ74の付勢力に抗してローラホルダ70の位置を規定する。このとき、駆動ローラ9A,ピンチローラ9Bのニップ部は手差し側シュート面61の延長面上に配設され、各ローラ9A,9Bの中心をつなぐ線は鉛直(転写搬送ベルト12Cの搬送面に対して垂直)になる。
【0032】
このため、レジストローラ9による用紙Pの搬送方向は水平(転写搬送ベルト12Cの搬送面に対して平行)になりそのニップ部が前記延長面上に配設される。従って、載置板63上からレジストローラ9を通過するまでの用紙搬送経路は水平になる。なお、このように用紙Pが手差しされたときは、レジストローラ9には、用紙Pの先端を少し噛み込んで止まり、所定のタイミング(画像形成動作の開始が指示されたタイミング)で送り出す制御がなされる。
【0033】
一方、手差しトレイ60が閉鎖位置に配設されて、開口部1Kを介した用紙Pの挿入が禁止されたときは、図2(A)に示すように、ピン73はカム面68の中心に係合して当該カム面68によって押し下げられる。これによって、ローラホルダ70は図2における反時計回りに揺動し、レジストローラ9による用紙Pの搬送方向は斜め後上方となり、紙粉取りローラ8からガイド81を介して搬送されてくる用紙Pを搬送することが可能となる。すなわち、カム板67,ローラホルダ70,引張コイルバネ74が移動手段に相当する。
【0034】
なお、前記いずれの場合でも、レジストローラ9によって搬送された用紙Pはガイド82によってベルトユニット10に案内される。ガイド82は、レジストローラ9と転写搬送ベルト12Cの搬送面との間に、後方が下がるように傾斜して配設されている。図2(A),(B)いずれの場合でも、レジストローラ9によって搬送された用紙Pはガイド82の前後方向中間部に当たり、レジストローラ9の用紙搬送速度が転写搬送ベルト12Cの用紙搬送速度より大きい場合でも、用紙Pの撓みを許容する。この種の画像形成装置1では、転写搬送ベルト12Cにて搬送されながら画像形成される用紙Pが、レジストローラ9に引っ張られて正確な画像が形成できなくなるのを抑制するため、レジストローラ9の搬送速度を転写搬送ベルト12Cより大きくする場合がある。このような場合でも、前述のように用紙Pの撓みが許容されることで、用紙Pに一層良好に画像を形成することができる。
【0035】
[実施形態の効果及びその変形例]
以上説明したように、本実施形態では、手差しトレイ60を開放して用紙Pに手差しで画像を形成する際には、開口部1Kから画像形成部2に至る用紙Pの搬送経路が、手差しトレイ60が閉鎖位置にあるときと比べて水平に近づけられる。また、前記画像形成部2も、転写搬送ベルト12Cによって用紙Pを水平方向に搬送しながら当該用紙Pに画像を形成する。従って、本実施形態では、手差しトレイ60を開放することによって、開口部1Kを介して挿入された用紙Pに湾曲が加えられるのを良好に抑制することができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、手差しトレイ60の開閉動作に応じてピンチローラ9Bの位置を移動させる構成としては、本実施形態の構成に限らず、周知の各種リンクを応用したものを採用することができる。また、手差しトレイ60の開閉動作に応じて駆動ローラ9Aを移動させてもよい。但し、本実施形態のように、駆動ローラ9Aを中心にしてピンチローラ9Bを移動させる場合、駆動ローラ9Aに関する駆動系の構成を簡略化することができる。
【0037】
また、手差しトレイ60からベルトユニット10に至る用紙Pの搬送経路と給紙カセット6からベルトユニット10に至る搬送経路とに共通の搬送経路に、レジストローラ9以外にもローラが存在する場合は、そのローラをレジストローラ9と同様に揺動させて、前記共通の搬送経路を水平に近づけてもよい。更に、画像形成手段としては、前述のようなダイレクトタンデム方式の画像形成部2に限らず、モノクロ方式、中間転写方式、インクジェット方式など、種々の形態の画像形成手段を適用することができる。但し、画像形成部2では転写搬送ベルト12Cによって搬送しながら用紙Pに画像を形成している間は用紙Pに殆ど湾曲が加えられない、従って、この場合、用紙Pに湾曲が加えられるのを一層良好に抑制することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…画像形成装置 1C…筐体 1G…フロントカバー
1K…開口部 2…画像形成部 3A…感光体ドラム
4…露光器 6…給紙カセット 7…給紙機構
8…紙粉取りローラ 9…レジストローラ 9A…駆動ローラ
9B…ピンチローラ 10…ベルトユニット 12C…転写搬送ベルト
60…手差しトレイ 60A,63A…揺動軸 61…手差し側シュート面
63…載置板 67…カム板 68…カム面
70…ローラホルダ 71,74…引張コイルバネ 73…ピン
81,82…ガイド P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を保持する保持手段と、
該保持手段の上方に配設され、前記被記録媒体を水平方向に搬送しながら当該被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
複数のローラを備え、前記保持手段に保持された前記被記録媒体を前記画像形成手段まで搬送する搬送手段と、
前記画像形成手段及び前記保持手段及び前記搬送手段を収容した筐体と、
前記筐体の側面に開口し、前記搬送手段による搬送経路のうち、当該搬送経路を構成する特定の前記ローラを含めた当該特定のローラより下流側の前記搬送経路へ被記録媒体を挿入可能な開口部と、
前記側面に開閉可能に設けられ、開放時には前記開口部を介した被記録媒体の挿入を許可し、閉鎖時には前記開口部を介した被記録媒体の挿入を禁止するカバーと、
前記搬送手段が備えたローラのうち、前記特定のローラまたは当該特定のローラより下流側に設けられた前記ローラの少なくとも一部に対して、前記カバーの動きを伝達して当該ローラを移動させることにより、前記カバーの開放時には、前記開口部から前記画像形成手段に至る前記被記録媒体の搬送経路を、前記カバーの閉鎖時に比べて水平に近づける移動手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記搬送経路を規定するガイドを備え、前記搬送手段が備えたローラのうち最も前記画像形成手段に近い前記ローラから前記画像形成手段の間に設けられた前記ガイドが、前記被記録媒体の撓みを許容する位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特定のローラは、回転駆動される駆動ローラとその駆動ローラに圧接されて回転するピンチローラとから構成され、
前記移動手段は、前記駆動ローラを中心にして前記ピンチローラを移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ピンチローラは、前記画像形成手段によって画像が形成される側の前記被記録媒体の面に当接し、前記被記録媒体の当該面に付着した紙粉を吸着する機能を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段は、
複数のローラ間に架設されて回転駆動されることにより水平方向に被記録媒体を搬送し、導電性を有する無端ベルトと、
前記無端ベルトによって搬送される前記被記録媒体に前記画像としてのトナー像を電子写真方式で形成するトナー像形成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75754(P2013−75754A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217667(P2011−217667)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】