説明

画像形成装置

【課題】簡単な構成で温度を制御することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、熱を発する定着装置300と、定着装置300の温度を検知する温度センサ330と、定着装置300から離間して設けられていて、定着装置300により加熱される画像形成装置本体の定着装置カバー部18と、
温度センサ330により検知された定着装置300の温度に基づいて定着装置カバー部18の温度を予測し、定着装置カバー部18の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する制御装置500とを有する。制御装置500が、画像形成装置10が設置された環境の温度にさらに基づいて定着装置カバー部18の温度を予測し、予測された温度に基づいて画像形成動作を制御するようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像形成装置において、前記画像形成装置の設置場所の温度を測定する環境温度測定手段と、前記画像形成装置内部の温度を測定する機内温度測定手段と、
前記環境温度測定手段および前記機内温度測定手段の測定結果に基づいて、前記画像形成装置内部の当該機内温度測定手段の設置位置とは異なる特定箇所の温度を推定する温度推定手段と、前記温度推定手段により推定された前記特定箇所の温度の推定値に応じて、前記画像形成装置の動作を制御する制御手段とを備える画像形成装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、画像を記録材上に記録せしめる画像記録手段と、単位時間当りに記録可能な記録材枚数を切り替え自在な切替手段とを備えた画像記録装置において、画像を記録材に記録する毎に所定値だけ減少または増加し、所定時間経過毎に所定値だけ増加または減少する計数手段を備え、上記切替手段は、該計数手段の計数値が所定値に達した後は、単位時間当りに記録可能な記録材枚数を減少させるように設定されている画像記録装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、原稿面を照明しながら、該原稿面に沿って走査駆動される照明ランプを備えた原稿読取装置の内部に配設され、前記照明ランプにより放出される熱を冷却扇により対流放散させる原稿読取装置の冷却装置を制御する原稿読取装置の冷却制御装置において、設定値を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている設定値を加算する加算手段と、前記記憶手段に記憶されている設定値を減算する減算手段と、前記照明ランプが点灯している間は、所定期間毎に前記記憶手段に記憶されている設定値を前記加算手段により所定の加算値ずつ加算して前記記憶手段に記憶させ、前記照明ランプが消灯している間は、所定期間毎に前記記憶手段に記憶されている設定値を前記減算手段により所定の減算値ずつ減算して前記記憶手段に記憶させ、該記憶手段に記憶されている設定値が所定の値を越えた時、前記冷却扇を所定の期間だけ回転駆動させる制御を行う制御手段を有した原稿読取装置の冷却制御装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、離型性材料層で表面が被覆され、内部に加熱源が配設された極薄肉の加熱ロールと、前記加熱ロールに圧接されてその間のニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を通過させるように配設され、離型性材料層で表面が被覆された加圧ロールと、前記加熱ロールの表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて加熱源への通電を制御する温度制御手段とを備えた熱定着装置において、前記熱定着装置で定着処理が施される記録媒体を、当該記録媒体の加熱ロールの軸方向に沿った幅に応じて複数のグループに分類し、前記複数のグループに分類された記録媒体の所定期間内の定着枚数に応じて、前記加熱ロールの非通紙部の温度を予想し、定着動作を制御する制御手段を具備する熱定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−322539号公報
【特許文献2】特開平7−128919号公報
【特許文献3】特開平5−333627号公報
【特許文献4】特開2001−56620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な構成で温度を制御することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、熱を発する発熱部と、前記発熱部の温度を検知する温度検知部と、前記発熱部から離間して設けられていて、前記発熱部により加熱される被加熱部と、前記温度検知部により検知された温度に基づいて前記被加熱部の温度を予測し、前記被加熱部の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する制御部と、を有する画像形成装置である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記制御部は、当該画像形成装置が設置された環境の温度にさらに基づいて前記被加熱部の温度を予測し、前記被加熱部の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する請求項1記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記発熱部を覆う画像形成装置本体をさらに有し、前記被加熱部は、前記画像形成装置本体の一部である請求項1又は2記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項4に係る本発明は、前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度が予め定められた所定温度を超えた場合に、前記発熱部の温度を低下させる請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置である。
【0012】
請求項5に係る本発明は、前記温度検知部により検知された前記発熱部の温度、及び予測された前記被加熱部の温度を記憶する記憶手段をさらに有し、前記制御部は、前記制御部に電源供給が開始された時点で、前記記憶手段に記憶されている前記発熱部の温度、及び前記記憶手段に記憶されている前記被加熱部の予測された温度を用いて前記被加熱部の温度を予測する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項6に係る本発明は、前記被加熱部の予測された温度が予め定められた制限温度以下の場合には、前記温度 検知部により検知された前記発熱部の温度、及び前記被加熱部の予測された温度を前記記憶手段に新たに記憶させることを制限する請求項5記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項7に係る本発明は、前記被加熱部の予測された温度として、前記所定温度と同程度の温度を前記記憶部に記憶させた後に画像を形成する請求項6記載の画像形成装置である。
【0015】
請求項8に係る本発明は、前記発熱部は、記録媒体を搬送するとともに、熱を用いて記録媒体に像を定着させる定着装置であって、前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、前記定着装置の温度と、前記定着装置が記録媒体を搬送する速度とを制御する請求項1乃至7いずれか記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項9に係る本発明は、前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、画像形成動作を禁止する請求項1乃至8いずれか記載の画像形成装置である。
【0017】
請求項10に係る本発明は、前記発熱部を冷却する冷却装置をさらに有し、前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、前記冷却装置の動作を開始させるか、又は前記冷却装置による冷却作用を強くさせる請求項1乃至9いずれか記載の画像形成装置である。
【0018】
請求項11に係る本発明は、当該画像形成装置が設置された環境の温度を検知する環境温度検知部をさらに有し、前記制御部は、前記環境温度検知部で検知された当該画像形成装置が設置された温度に基づいて画像形成動作を制御する請求項2乃至10いずれか記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る本発明によれば、簡単な構成で温度を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0020】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、画像形成装置が設置された環境の温度に応じた温度の制御をすることができる画像形成装置を提供することができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1又は2に係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、簡単な構成で画像形成装置本体の一部の温度を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0022】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1乃至3に係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、簡単な構成で温度の上昇を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0023】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、本構成を有しない場合と比較して、画像形成動作後に電源を一旦切り再度電源投入した時等の状況における温度を正確に制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0024】
請求項6に係る本発明によれば、請求項5に係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、記憶手段の劣化を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0025】
請求項7に係る本発明によれば、請求項6に係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、温度を低下させるべき温度であるにもかかわらず、温度を低下させる制御がなされないとの弊害を生じにくくすることができる画像形成装置を提供することができる。
【0026】
請求項8に係る本発明によれば、請求項1乃至7いずれかに係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、定着装置が発する熱による温度を制御しつつ、像の記録媒体への定着不良の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0027】
請求項9に係る本発明によれば、請求項1乃至8いずれかに係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、本構成を有しない場合と比較して短時間で温度を低下させることができる画像形成装置を提供することができる。
【0028】
請求項10に係る本発明によれば、請求項1乃至9いずれかに係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、本構成を有しない場合と比較して短時間で温度を低下させることができる画像形成装置を提供することができる。
【0029】
請求項11に係る本発明によれば、請求項2乃至10いずれかに係る本発明が奏する効果を奏することに加えて、本構成を有しない場合と比較して設置された環境の温度の変化に応じて細かな温度の制御を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置が有する制御部を示すブロック図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の動作を説明する第1のフローチャートである。
【図4】図1に示す画像形成装置の動作を説明する第2のフローチャートである。
【図5】図1に示す画像形成装置の動作の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、画像形成装置本体12内に画像形成部100と、例えば1つのシート供給装置200と、定着装置300と、例えばCPU等の制御回路を有する制御装置500とが配置されている。また、画像形成装置本体12内には、シートの搬送に用いられるシート搬送路400が形成されている。
【0032】
画像形成装置本体12は、上側の面における前側(図1における左側)の部分がシートの排出される排出部16として用いられている。また、画像形成装置本体12の上側の面における後側(図1における右側)の部分であって定着装置300の上方に位置し、定着装置300をカバーする定着装置カバー部18が、定着装置300から離間して設けられていて、定着装置300により加熱される被加熱部となっている。また、画像形成装置本体12には、シートが排出される排出口20が形成されている。
【0033】
また、画像形成装置本体12に、画像形成装置10が設置された環境の温度を検知する環境温度検知部として用いられる環境温度センサ540を取り付けても良い。また、環境温度センサ540を取り付ける場合、環境温度センサ540を、画像形成装置本体12内に配置された配電用等の基板(不図示)に装着しても良い。
【0034】
画像形成部100は電子写真方式のもので、潜像を保持する像保持体として用いられている例えばドラム形状の感光体110と、感光体110を一様帯電する帯電装置112と、帯電装置112により帯電された感光体110に潜像を書き込み、潜像を形成する潜像形成装置114と、潜像形成装置114により感光体110の表面に形成された潜像を現像する現像装置120と、現像装置120により潜像が現像されることによって感光体110の表面に形成された現像剤像をシートに転写する例えば転写ロールからなる転写装置130と、感光体110に残存する現像剤をクリーニングするクリーニング装置140とを有する。
【0035】
現像装置120は、現像装置本体122と、感光体110に現像剤を供給する現像剤供給部材として用いられる現像ロール124とを有する。現像装置本体122内には現像に用いる現像剤が収納されている。
【0036】
クリーニング装置140は、クリーニング装置本体142と、感光体110の表面から現像剤等を掻き落とす掻き落とし部材として用いられているクリーニングブレード144とを有する。クリーニング装置本体142内には、クリーニングブレード144によって掻き落とされた現像剤が回収される。
【0037】
シート供給装置200は、例えば給紙カセットからなるシート収納部202を有する。シート収納部202には、記録媒体として用いられる例えば普通紙等のシートが収納されている。また、シート供給装置200は、シート収納部202に収納された最上位に位置するシートを抽出するとともに、シート搬送方向における下流側に向けて抽出されたシートを送り出す送り出しロール204と、送り出しロール204に接触するように配置されていて、シートの重送を予防する重送防止ロール206とを有する。シート供給装置200は、画像形成部100に向けてシートを送り出す。
【0038】
シート搬送路400は、シート供給装置200から排出部16までシートを搬送するために用いられていて、シート搬送路400に沿ってシート搬送方向における上流側から順に、先述の送り出しロール204及び重送防止ロール206と、レジストロール402と、先述の感光体110及び転写装置130と、定着装置300と、排出ロール404とが配置されている。
【0039】
レジストロール402は、シート供給装置200から供給されたシートの先端部を一時的に停止させ、画像形成部100で形成された像がシートの適正な位置に転写されるように、適当なタイミングでシートの先端部の移動を再開させる。排出ロール404は、定着装置300によって像が定着された用紙を排出部16に向けて排出する。
【0040】
定着装置300は、シートを搬送するとともに、熱を用いてシートに現像剤像を定着する装置であって、熱を発する発熱部として用いられている。また、定着装置300は、中空部を有する加熱ロール302と、加熱ロール302に圧接されている加圧ロール304とを有する。加熱ロール302は、後述するモータ420からの駆動伝達を受けて図1に示す矢印方向に回転し、加圧ロール304は、加熱ロール302に従動するようにして図1に示す矢印方向に回転する。加熱ロール302の中空部には、熱源として用いられるヒータ310が配置されている。
【0041】
定着装置300は、加熱ロール302と加圧ロール304とで挟みこむようにしてシートを搬送し、加熱ロール302と加圧ロール304との接触する部分でシートを加熱し、加圧することでシートに現像剤像を定着させる。
【0042】
画像形成装置10は、定着装置300の温度を検知する温度検知部として用いられていて、例えば加熱ロール302の表面の温度を検知する温度センサ330を有する。
【0043】
また、画像形成装置10は、駆動源として用いられているモータ420を有する。モータ420は、例えばギア列等からなる駆動伝達機構430を介して、送り出しロール204、レジストロール402、感光体110、加熱ロール302、及び排出ロール404に連結されている。モータ420からの駆動が伝達され、送り出しロール204、レジストロール402、感光体110、加熱ロール302、及び排出ロール404が回転することでシートが搬送される。また、モータ420の回転速度を制御することで、例えば定着装置300がシートを搬送する速度等のシートの搬送速度を制御することができる。
【0044】
図2には、制御装置500が示されている。
制御装置500は、例えばCPU等を備えた制御回路502を有し、制御回路502に通信インターフェイス504を介して画像データが入力される。また、制御回路502には、温度センサ330からの出力が入力される。また、環境温度センサ540を設けた場合には、制御回路502に環境温度センサ540からの出力が入力される。また、制御回路502によって、画像形成部100、ヒータ310、及びモータ420が制御される。例えば、温度センサ330の出力に基づいて、定着装置300の温度が一定の温度となるようにヒータ310が制御される。
【0045】
また、制御回路502には、例えば不揮発性のメモリチップ等からなる記憶装置520が連結されている。
【0046】
制御装置500は、温度センサ330により検知された温度に基づいて定着装置カバー部18の温度を予測し、定着装置カバー部18の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する制御部として用いられている。より具体的には、制御装置500は、温度センサ330により検知された定着装置300の温度と、画像形成装置10が設置された環境の温度とに基づいて画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度を予測し、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた所定温度を超えた場合に定着装置300の温度を低下させる制御部として用いられている。
【0047】
記憶装置520は、温度センサ330により検知された定着装置300の温度と、予測された定着装置カバー部18の温度とを記憶する記憶手段として用いられている
【0048】
図3は、第1の実施形態に係る画像形成装置10の動作を説明する第1のフローチャートである。
図3に示すように、一連の動作が開始されると、最初のステップS10で、制御装置500は、画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度を、温度センサ330により検知された定着装置300の温度と、画像形成装置10が設置された環境の温度とに基づいて予測する。
【0049】
画像形成装置10が設置された環境の温度を用いて定着装置カバー部18の温度を予測する場合、画像形成装置10が設置された環境の温度としては、例えば画像形成装置10の動作が保証されている環境の最高温度を用いることができる。また、画像形成装置10が設置された環境の温度としては、転写装置130を構成する転写ロールの温度による抵抗値の変化から予想される転写装置130近傍の温度を用いることができる。また、環境温度センサ540を取り付けた場合、環境温度センサ540により検知された温度を画像形成装置10が設置された環境の温度として用いることができる。
【0050】
ステップS10においては、制御装置500は、定着装置カバー部18の温度を、定着装置300から定着装置カバー部18に流入する熱量が定着装置300と定着装置カバー部18との温度差に比例し、定着装置カバー部18から外気中へ流出する熱量が定着装置カバー部18と外気の温度とに比例すると仮定して定着装置カバー部18の温度を予想している。即ち、定着装置カバー部18の予想される温度をTc、定着装置カバー部18の直前に予想された温度をTc1、測定された加熱ロール302の温度をTr、画像形成装置10が設置された環境の温度、即ち外気の温度をTairとして、h1、h2をそれぞれ比例定数とした場合、制御装置500は、以下の式に基づいて定着装置カバー部18の温度を予測している。
【0051】
Tc = Tc1+h1×(Tr−Tc1)−h2×(Tc1−Tair)
ここで比例定数であるh1、h2については、例えば、シートの搬送速度や、画像形成がなされるシートの大きさや、予測をする時点で画像形成を行っているか否か等に応じて、適宜、変更した値を用いても良い。
【0052】
次のステップS12では、制御装置500は、ステップS10で予測した画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度が、予め定められた所定温度を越えているか否かの判別をする。ここで、予め定められた温度は、画像形成装置本体12の材質や、定着装置カバー部18が操作者の触れやすい位置であるかどうか等を考慮して定められている。このステップS12で定着装置カバー部18の温度が予め定められた所定温度を越えていると判別された場合、ステップS20に進み、定着装置カバー部18の温度が予め定められた所定温度を越えていない判別された場合、ステップS30に進む。
【0053】
ステップS20では、制御装置500は、ヒータ310を制御することにより、定着装置300の温度を低下させる。
【0054】
次のステップS22では、例えばステップS20で定着装置300の温度を低下させると同時に、モータ420を制御して定着装置300がシートを搬送する速度を低下させる。このステップS22において、定着装置300がシートを搬送させる速度を低下させるので、シートの速度を低下させなかった場合と比較してシートの単位面積あたりに供給される熱量が増加する。このため、ステップS20でヒータ310の温度を低下させても、熱不足による現像剤像のシートへの定着不良が生じにくくなる。
【0055】
次のステップS30では、制御装置500は、画像形成部100を制御して、画像形成部100に現像剤像を形成させる。画像形成部100で形成された現像剤像は、転写装置130によってシートに転写され、定着装置300によってシートに定着される。そして、定着装置300によってトナー像が定着されたシートが、排出ロール404によって、排出部16へと排出される。
【0056】
次のステップS40では、制御装置500は、通信インターフェイス504を介して入力された画像データから、一連の処理が最後の画像データに関するものであるか否かを判別し、最後の画像データであるとの判別がなされればステップS100に進み、最後の画像データでないとの判別がなされればステップS10に戻る。
【0057】
ステップS100においては、制御装置500は、温度センサ330で測定された定着装置300の温度と、ステップS10で予測された画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度とを、所定条件の下、記憶装置520に記憶させる。
【0058】
このように、画像形成装置10においては、ステップS30における画像が形成されている間には記憶装置520にデータを記憶させず、画像が形成されていない間に記憶装置520にデータを記憶させる。このため、モーター駆動や高圧電源いんかといった画像形成に伴う電気ノイズが、記憶装置へのデータ書き込みに悪影響を与えることが無い。
【0059】
図4は、第1の実施形態に係る画像形成装置10の動作を説明する第2のフローチャートであり、図3に示すステップS100の詳細を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップS100が開始されると、制御装置500は、ステップS102で、ステップS10で予測された画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度が予め定められた制限温度以下であるか否かを判別する。そして、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた制限温度よりも大きい場合、制御装置500は、測定された定着装置300の温度と、予測された定着装置カバー部18の温度とを記憶装置520に記憶させる。
【0060】
一方、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた制限温度以下である場合、制御装置500は、測定された定着装置300の温度と、予測された定着装置カバー部18の温度とを記憶装置520にデータを記憶させることなく一連の処理を終了させる。このように、測定された定着装置300の温度と、予測された定着装置カバー部18の温度とを記憶装置520へ新たに記憶させることが温度に応じて制限されるため、記憶装置520に繰り返してデータを記憶させることを原因とする記憶装置520の劣化が抑制される。
【0061】
ステップS104において記憶装置520に記録された定着装置300の測定温度と、予測された定着装置カバー部18の温度とは、電源が切断された状態にあった後、新たに電源を投入した後に画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度を予測するために用いられる。即ち、電源が切断された状態にあった後に新たに電源を投入した後においては、制御装置500は、記憶装置520に記憶されている定着装置300の温度と、記憶装置520に記憶されている定着装置カバー部18の予測された温度とを用いて定着装置カバー部18の温度を予測する。
【0062】
先述のように、ステップS10においては、定着装置カバー部18の温度を予測するために、直前に予想された定着装置カバー部18の温度であるTc1を用いている。この点、電源を投入した後においては、電源を切断した状態では温度センサ330が定着装置300の温度を測定できないことから、直前に予想された定着装置カバー部18の温度であるTc1が存在しない。このため、電源が投入された後においては、記憶装置520に記憶されている定着装置300の測定された温度と、記憶装置520に記憶されている定着装置カバー部18の予測された温度とを用いて、制御装置500は、定着装置カバー部18の温度を予測する。
【0063】
この際、電源が切断されている間に環境温度に対して定着装置300の低下する割合と同様の割合で、環境温度に対して定着装置カバー部18の温度が低下すると仮定し、制御装置500は定着装置カバー部18の温度を予測している。即ち、定着装置カバー部18の予想される温度をTc、記憶装置520に記憶された定着装置カバー部18の予想された温度をTc2、画像形成装置10が設置された環境の温度、即ち外気の温度をTair、電源が投入された時点において測定された定着装置の温度をTr、記憶装置520に記憶された定着装置の温度をTr2とした場合、制御装置500は、以下の式に基づいて定着装置カバー部18の温度を予測している。
【0064】
Tc = (Tc2−Tair)×〔(Tr−Tair)/(Tr2−Tair)〕
【0065】
ここで、上の式で予想される温度に一定の補正を加えて定着装置カバー部18の温度を予測しても良い。即ち、補正値をAとした場合に、以下の式に基づいて定着装置カバー部18の温度を予測しても良い。
【0066】
Tc = (Tc2−Tair)×〔(Tr−Tair)/(Tr2−Tair)〕+A
ここで、補正値Aは、定着装置300と環境温度との温度差が、温度が定着装置カバー部18と環境温度との温度差よりも大きいことから、定着装置300の温度が低下する速度が定着装置カバー部18の温度が低下する速度よりも大きいことを考慮して定められた値である。
【0067】
以上で説明をした第1の実施形態に係る画像形成装置10においては、図3に示されるようにステップS30における画像形成動作中は、記憶装置520に定着装置カバー部18の予測された温度等を記憶させずに、画像形成が終了した後にステップS100において記憶装置520に定着装置カバー部18の予測された温度等を記憶させている。このため、ステップS30における画像形成中に電源が切断される事態が生じた場合、記憶装置520に記憶された定着装置カバー部18の予測された温度が記憶された後に定着装置カバー部18の予測された温度が上昇していたとしても、この上昇した定着装置カバー部18の温度が記憶装置520に記憶されない。
【0068】
このため、ステップS30における画像形成中に電源が切断される事態が生じた場合には、電源を投入した際に、以前に記憶装置520に記憶された定着装置カバー部18の予測された温度を用いて定着装置カバー部18の温度が予測されることになる。このため、本来は、定着装置300の温度を低下させるべきであり、定着装置300によるシートの搬送速度を低下させるべきであるにもかかわらず、制御装置500による定着装置300の温度を低下させる制御と、定着装置300によるシートの搬送速度を低下させる制御とがなされない虞がある。このため、係る弊害の発生を抑制するために、定着装置300の温度を低下させ、定着装置300によるシートの搬送速度を低下させる基準となる温度(閾値)と同程度の温度を、定着装置カバー部18の予測された温度として記憶装置520に記憶させた後に画像形成を行うようにしても良い。またこの記憶装置520に記憶させる温度は、対象となる部材(ここでは定着カバー部)が閾値を超えたときの問題レベルが大きいほど低く設定するのが望ましい。
【0069】
また、以上で説明をした第1の実施形態に係る画像形成装置10においては、ステップS12で予測された定着装置カバー部18の温度が、予め定められた所定温度を越えているとの判別がなされた場合、ステップS20で定着装置300の温度を低下させるとともに、ステップS22で定着装置がシートを搬送する速度を低下させた上で、画像形成部100による画像形成を行わせている。この制御に替え、又はこの制御に併せて、ステップS12で予測された定着装置カバー部18の温度が、予め定められた所定温度を越えているとの判別がなされた場合に、画像形成部100による画像形成を禁止させる制御をしても良い。
【0070】
画像形成装置10による画像形成を停止させる場合、例えば予め定められた所定時間の間、画像形成を停止させ、その後に画像形成を再開させる制御を行うことができる。また、例えば、定着装置300の温度が予め定められた所定温度以下になるまで画像形成を停止させ、その後に画像形成を再開させる制御をすることができる。また、例えば、定着装置カバー部18の予測された温度が予め定められた所定温度以下になるまで画像形成を停止させ、その後に画像形成を開始させる制御をすることができる。
また、以上の説明は、画像形成動作中のカバー温度を予測することを前提としていたが、画像形成動作以外にも定着装置300の温度を低く設定しつつ画像形成動作に備える状態である所謂スタンバイ動作中や、それ以外の動作中も、定着部カバー温度を随時予測する方が望ましい。
【0071】
また、以上で説明をした第1の実施形態に係る画像形成装置10においては、画像形成装置本体12の定着装置カバー部18が、被加熱部として用いられていて、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた所定温度を超えた場合に定着装置300の温度を低下させるとの制御がなされる例を説明した。この点、定着装置カバー部18を被加熱部として用いることに替えて、例えば現像装置120やクリーニング装置140を被加熱部として用いても良い。即ち、例えば、温度センサ330の出力からか、環境温度及び温度センサ330の出力から現像装置120又はクリーニング装置140の温度を予測し、この予測された温度が予め定められた所定温度となった場合に、定着装置300の温度を低下させるとの制御を行うようにしても良い。
【0072】
図5は、第1の実施形態に係る画像形成装置10の動作の一例を示すグラフである。
図5において、線aは定着装置300の温度の時間に応じた変化を示している。線aに示す定着装置300の温度は、温度センサ330により測定されるか、測定用に別途装着された定着部用温度センサ(不図示)を用いて測定される。但し、画像形成装置10の電源が切断された場合は、温度センサ330による測定ができないため、定着装置300の温度は、定着部用温度センサを用いて測定される。
【0073】
また、図5において、線bは、画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度を示している。定着装置カバー部18の温度は、測定用に別途装着された本体用温度センサ(不図示)を用いて測定される。また、図5において、線cは、定着装置300の温度と環境温度とを用いて制御装置500によって予測された定着装置カバー部18の温度を示している。また、図5において、線dは、定着装置300がシートを搬送する際のシートの搬送速度を示している。
【0074】
また、図5における時間帯Aと時間帯Cとは、画像形成装置10に電源が投入されて画像形成が行われた後に電源が切断されるまで時間帯である。また、時間帯Bは、電源が切断された後、次に電源が投入されるまでの時間帯である。また、時間帯Dは、時間帯Cで画像が形成された後、電源が切断された後の時間帯である。
【0075】
図5において、線cと線bとを比較すると、時間帯Aと時間帯Cとにおいて、制御装置500により予測された定着装置カバー部18の温度が、本体用温度センサにより測定された定着装置カバー部18の温度に近接していることが分かる。
【0076】
図5に示される動作においては、時間t1に電源が投入されて画像形成が開始される。その際、定着装置300の温度はT1である。その後、時間t2に、制御装置500によって、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた温度T2を超えたとの判別がなされる。そして、制御装置500は、線aに示されるように定着装置300の温度をT3まで低下させるとともに、線dに示されるよう定着装置300がシートを搬送する速度を、例えば時間t2以前の速度の50%に低下させる。その後、時間t3に画像形成が終了し、画像形成装置10の電源が切断される。
【0077】
その後、時間t4に再び電源が投入されて画像形成が再開される。その際、定着装置300の温度はT1である。時間t4においての、定着装置カバー部18の温度の予測には、時間帯Aの間に予測され記憶装置520に記憶された定着装置カバー部18の温度と、時間帯Aの間に測定され記憶装置520に記憶された定着装置300の温度とが用いられる。
【0078】
その後、時間t5に、制御装置500によって、予測された定着装置カバー部18の温度が予め定められた温度T2を超えたとの判別がなされる。そして、制御装置500は、線aに示されるように定着装置300の温度をT3まで低下させるとともに、線dに示されるよう定着装置300がシートを搬送する速度を、例えば時間t2以前の速度の50%に低下させる。その後、時間t6に画像形成が終了し、画像形成装置10の電源が切断される。
【0079】
図6には、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置10が示されている。
図6に示すように、第2の実施形態に係る画像形成装置10は、送風装置40を有している。送風装置40は、発熱部である定着装置300を冷却する冷却装置として用いられていて、送風ファン42を有する。送風装置40は、送風ファン42を回転させ、画像形成装置本体12外の空気を定着装置300に吹きつけることによって定着装置カバー部18を冷却させる。第2の実施形態に係る画像形成装置10は、送風装置40を有すること以外は、その構成が先述の第1の実施形態に係る画像形成装置と共通している。構成において、第1の実施形態に係る画像形成装置10と共通している部分の説明は省略する。
【0080】
先述の第1の実施形態に係る画像形成装置10においては、ステップS12で画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度が、予め定められた所定温度を越えているとの判別がなされた場合、制御装置500は、ステップS20で定着装置300の温度を低下させるともに、次のステップS22で定着装置300がシートを搬送する速度を低下させていた。これに対して、この第2実施形態に係る画像形成装置10では、ステップS12で画像形成装置本体12の定着装置カバー部18の温度が予め定められた所定温度を越えているとの判別がなされた場合、制御装置500は、定着装置300の温度を低下させ、定着装置300がシートを搬送させることに替えて、送風装置40による定着装置カバー部18の冷却を開始させる。また、定着装置カバー部18の温度が、予め定められた所定温度を越えているとの判別がなされる以前に送風装置40よる定着装置カバー部18の冷却がなされていた場合、制御装置500は、送風ファン42が回転する速度を高くして、送風装置40による定着装置カバー部18を冷却させる作用を強くさせる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上で述べたように、本発明は、例えばプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10・・・画像形成装置
12・・・画像形成装置本体
18・・・定着装置カバー部
40・・・送風装置
100・・・画像形成部
120・・・現像装置
140・・・クリーニング装置
300・・・定着装置
310・・・ヒータ
330・・・温度センサ
420・・・モータ
500・・・制御装置
520・・・記憶装置
540・・・環境温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を発する発熱部と、
前記発熱部の温度を検知する温度検知部と、
前記発熱部から離間して設けられていて、前記発熱部により加熱される被加熱部と、
前記温度検知部により検知された温度に基づいて前記被加熱部の温度を予測し、前記被加熱部の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する制御部と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、当該画像形成装置が設置された環境の温度にさらに基づいて前記被加熱部の温度を予測し、前記被加熱部の予測された温度に基づいて画像形成動作を制御する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記発熱部を覆う画像形成装置本体をさらに有し、
前記被加熱部は、前記画像形成装置本体の一部である請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度が予め定められた所定温度を超えた場合に、前記発熱部の温度を低下させる請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記温度検知部により検知された前記発熱部の温度、及び予測された前記被加熱部の温度を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記制御部は、前記制御部に電源供給が開始された時点で、前記記憶手段に記憶されている前記発熱部の温度、及び前記記憶手段に記憶されている前記被加熱部の予測された温度を用いて前記被加熱部の温度を予測する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記被加熱部の予測された温度が予め定められた制限温度以下の場合には、前記温度検知部により検知された前記発熱部の温度、及び前記被加熱部の予測された温度を前記記憶手段に新たに記憶させることを制限する請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記被加熱部の予測された温度として、前記所定温度と同程度の温度を前記記憶部に記憶させた後に画像を形成する請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記発熱部は、記録媒体を搬送するとともに、熱を用いて記録媒体に像を定着させる定着装置であって、
前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、前記定着装置の温度と、前記定着装置が記録媒体を搬送する速度とを制御する請求項1乃至7いずれか記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、画像形成動作を禁止する請求項1乃至8いずれか記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記発熱部を冷却する冷却装置をさらに有し、
前記制御部は、前記被加熱部の予測された温度に基づいて、前記冷却装置の動作を開始させるか、又は前記冷却装置による冷却作用を強くさせる請求項1乃至9いずれか記載の画像形成装置。
【請求項11】
当該画像形成装置が設置された環境の温度を検知する環境温度検知部をさらに有し、
前記制御部は、前記環境温度検知部で検知された当該画像形成装置が設置された温度に基づいて画像形成動作を制御する請求項2乃至10いずれか記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88548(P2013−88548A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227683(P2011−227683)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】