説明

画像形成装置

【課題】下流の黒色の画像形成部Pdに直径の大きい感光ドラム101dを有する構成で、画像不良が生じにくい構造を実現する。
【解決手段】転写ローラ124dは、導電性の剛体により形成される。また、転写ローラ124dを、感光ドラム101dと中間転写ベルト181を挟んで反対側で、且つ、感光ドラム101dと当接する中間転写ベルト181の領域よりも走行方向下流に配置する。これにより、感光ドラム101dの直径が大きくても、一次転写部T1dの下流の電界強度を小さくでき、一次転写部の転写電圧を小さくしても、異常放電による画像不良を抑制できる。転写電圧を小さくできれば、二次転写部での転写不良も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置に関し、特に、複数の像担持体に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して記録材に転写する構成で、中間転写ベルトの走行方向下流の像担持体の直径が大きい構成に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像形成装置では、いつもカラー画像を出力するものではなく、文字などの黒のみの画像を出力することが多かった。このため、黒画像を形成するブラックステーション(黒色の画像形成部)の像担持体である感光ドラムなどが他色のステーションよりも早く消耗してしまう。そして、ブラックステーションのメンテナンス頻度のみが多くなり、延いては画像形成装置全体として、メンテナンス頻度が増大する。
【0003】
このように使用頻度の高い黒画像を形成するブラックステーションの長寿命を求めるニーズから、ブラックステーションに他の色より直径の大きい感光ドラムが用いた構造が知られている(特許文献1参照)。この構成によれば、ブラックステーションの感光ドラムの周長を他のステーションの感光ドラムの周長よりも長くできる。そして、ブラックステーションの感光ドラムの画像形成に使用できる範囲が他のステーションの感光ドラムよりも広くなり、使用頻度が高くてもブラックステーションの感光ドラムの寿命を他のステーションの感光ドラムと同様にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−215885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように感光ドラムとして直径の大きいものを使用した場合、特に高温高湿環境において異常放電による画像不良が生じ易い。即ち、通常、感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写する一次転写手段としての転写ローラは、感光ドラムに対して中間転写ベルトの走行方向下流に僅かにシフトした位置に配置される。また、感光ドラムに形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部では、感光ドラムの直径が大きいと、一次転写部の走行方向下流の近傍で感光ドラム表面と中間転写ベルト表面との距離が近くなる。このため、転写ローラに転写バイアスを印加した際に、一次転写部下流の電界強度が高くなり、沿面放電を伴う火花放電(異常放電)が生じ易くなる。また、このような異常放電は、高温高湿環境でより生じ易くなる。そして、異常放電が生じた場合には、すじ状の画像不良が生じてしまう。
【0006】
そこで、このような異常放電を抑制するために一次転写部での転写電圧を上げることが考えられる。転写電圧を上げれば、一次転写部で沿面放電が生じにくくなり、異常放電が生じにくくなる。但し、転写電圧を上げると、上流で中間転写ベルトに転写されたトナー像の帯電量の分布が変化してしまう。即ち、図4(a)に示すような帯電量の分布を示すトナー像が、下流で転写電圧の高い一次転写部を通過することにより、図4(b)に示す様にその分布が広がってしまう。この結果、帯電量がゼロ近傍のトナーが増加してしまう。そして、中間転写ベルトから記録材に転写する二次転写部で、トナーのクーロン力による記録材への引力が低下して二次転写部での転写効率が低下し、画像抜けなどの画像不良が生じてしまう。特に2次色の二次転写効率が低下し、品質の良くない紙の凹部に対する画像抜けが顕著になる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、下流に直径の大きい像担持体を有する構成で、画像不良が生じにくい構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行する中間転写ベルトと、円筒状の第1像担持体と、前記第1像担持体にトナー像を形成する第1トナー像形成手段と、転写バイアスを印加することにより、前記第1像担持体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第1転写手段と、前記中間転写ベルトの走行方向に関して前記第1像担持体の下流に配置され、直径が前記第1像担持体よりも大きい円筒状の第2像担持体と、前記第2像担持体にトナー像を形成する第2トナー像形成手段と、転写バイアスを印加することにより、前記第2像担持体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第2転写手段と、二次転写バイアスを印加することにより、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写する二次転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記第2転写手段は、導電性の剛体により形成され、前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで反対側で、且つ、前記第2像担持体と当接する前記中間転写ベルトの領域よりも前記走行方向下流に配置されている、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2転写手段を、導電性の剛体により形成し第2像担持体と当接する中間転写ベルトの領域よりも下流に配置しているため、第2像担持体から中間転写ベルトにトナー像が転写される一次転写部の下流の電界強度を小さくできる。この結果、一次転写部で転写電圧を上げなくても異常放電を抑制できるため、転写電圧を低く設定でき、中間転写ベルトから記録材にトナー像が転写される二次転写部での転写抜けも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】(a)はブラックステーションの一次転写部の構成を、(b)は他のステーションの一次転写部の構成を、それぞれ簡略化して示す模式図。
【図3】本実施形態の効果を確認するために行った実験の結果を示す図。
【図4】(a)は上流のトナー像のトナー帯電量の分布を、(b)は上流のトナー像が転写電圧が高い一次転写部を通過した後のトナー帯電量の分布を、それぞれ示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図1ないし図3を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0012】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置は、図1に示すように4つの感光体からなる像担持体を、ベルト状中間転写体、即ち、無端状の中間転写ベルト181に沿って並べて配置した、中間転写タンデム方式である。中間転写ベルト181は、支持体として駆動ローラ125、テンションローラ126、及びバックアップローラ129に巻回されている。中間転写ベルト181の駆動ローラ125とテンションローラ126とにより張架された部分に中間転写ベルト181の走行方向に沿って、4個の画像形成部(画像形成ステーション)Pa、Pb、Pc、Pdが直列状に配設されている。本実施形態では、走行方向最下流の画像形成部Pdの電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)101dの直径を、他の色の画像形成部Pa、Pb、Pcの感光ドラム101a、101b、101cの直径より大きくしている。
【0013】
画像形成部Pa、Pb、Pcは、回転可能に配置された円筒状の第1像担持体である感光ドラム101a、101b、101cをそれぞれ備えている。感光ドラム101aの周囲には、一次帯電器122a、現像器123a、及びクリーニング装置112a等のプロセス機器が配置されている。他の画像形成部Pb、Pcも同様に、それぞれ感光ドラム101b、101cの周囲に、一次帯電器122b、122c、現像器123b、123c、クリーニング装置112b、112cを備えている。
【0014】
また、画像形成部Pdは、回転可能に配置された円筒状の第2像担持体であり、直径が感光ドラム101a、101b、101cよりも大きい感光ドラム101dを備えている。感光ドラム101dの周囲には、他の画像形成部と同様に、一次帯電器122d、現像器123d、及びクリーニング装置112d等のプロセス機器が配置されている。また、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの図中の上側には、それぞれ露光装置111a、111b、111c、111dを配置している。
【0015】
これら画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの感光ドラム直径以外の異なる点は、それぞれがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する点である。即ち、各画像形成部Pa〜Pdに配置した現像器123a〜123dにはそれぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーが収納されている。
【0016】
感光ドラム101aは一次帯電器122aによって一様に帯電され、露光装置111aから原稿のイエロー成分色による画像信号がポリゴンミラー等を介して感光ドラム101a上に投射されて静電潜像が形成される。次いで、現像器123aからイエロートナーが供給されて静電潜像がイエロートナー像として現像される。他の画像形成部でも同様に、それぞれマゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が形成される。したがって、本実施形態の場合、一次帯電器122a、122b、122c、露光装置111a、111b、111c、現像器123a、123b、123cが、それぞれの画像形成部の第1トナー像形成手段に相当する。また、一次帯電器122d、露光装置111d、現像器123dが、それぞれ第2トナー像形成手段に相当する。
【0017】
イエロートナー像は感光ドラム101aの回転に伴って、感光ドラム101aと中間転写ベルト181とが当接する一次転写部T1aに搬送される。そして、一次転写部T1aで、第1転写手段である転写ローラ124aから一次転写バイアスが印加され、イエロートナー像が中間転写ベルト181へ転写される。
【0018】
イエロートナー像を担持した中間転写ベルト181が次の画像形成部Pbに搬送されると、このときまでに画像形成部Pbで感光ドラム101b上に形成されたマゼンタトナー像が、一次転写部T1bでイエロートナー像上へ転写される。同様に中間転写ベルト181が矢印X方向に沿って画像形成部Pc、Pdに進行するにつれて、それぞれの一次転写部T1c、T1dで、シアントナー像、ブラックトナー像が前述のトナー像に重畳転写される。ここで、転写ローラ124a、124b、124cが第1転写手段、転写ローラ124dが第2転写手段に相当する。
【0019】
その後、このときまでに、給紙カセット160から送り出された記録材Pが二次転写部T2に達する。二次転写部T2には、バックアップローラ129と中間転写ベルト181を介して対向する二次転写手段である二次転写ローラ140が配置されている。そして、二次転写ローラ140に印加される二次転写バイアスによって、上述の4色のトナー像は記録材P上に転写される。トナー像が転写された記録材Pは定着部211に搬送される。定着部211では熱と圧力によってトナー像を記録材P上に固着させる。
【0020】
各一次転写部で転写しきれなかった感光ドラム上の転写残トナーは、それぞれクリーニング装置112a、112b、112c、112dによってクリーニングされる。また、二次転写部で転写しきれなかった中間転写ベルト181上の転写残トナーは、クリーニング装置116によってかきとられる。そして、各感光ドラム及び中間転写ベルト181が、それぞれ次の画像形成に供される。
【0021】
次に各部の構成について説明する。なお、各部の基本的な構成は同じであるため、画像形成部Paを例に順次説明する。像担持体としての感光ドラム101aは、アルミニウム製シリンダの外周面に有機光導電体層(OPC)を塗布して構成したものである。感光ドラム101aは、その両端部をフランジによって回転自在に支持されており、一方の端部に不図示の駆動モータから駆動力を伝達することにより、図の反時計回り方向に回転駆動される。
【0022】
一次帯電器122aは、ローラ状に形成された導電性ローラである。このローラを感光ドラム101a表面に当接させるとともに、不図示の電源によって帯電バイアス電圧を印加することにより、感光ドラム101a表面を一様に負極性に帯電させる。
【0023】
露光装置111aは、レーザスキャナで、不図示の駆動回路により画像信号に応じて点灯制御され、帯電された感光ドラム101a上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。
【0024】
現像器123aは、それぞれ負帯電特性のイエローのトナーを収納した不図示のトナー収納部を有する。また、感光ドラム101a表面に隣接し、不図示の駆動部により回転駆動されると共に、図示しない現像バイアス電源により現像バイアス電圧を印加することにより現像を行う現像ローラ等を有する。なお、各現像器のトナー収納部には、記録材の搬送方向上流側から順にトナー収納部にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナーが収納されている。また、このトナーにはトナーの離型性を上げるためのシリカ等の外添剤が添加されている。
【0025】
後述する中間転写ベルト181の内側には、4個の感光ドラム101a,101b,101c,101dの近傍に中間転写ベルト181に当接する一次転写手段である、転写ローラ124a,124b,124c,124dがそれぞれ並設されている。即ち、転写ローラ124a,124b,124c,124dは、それぞれ、感光ドラム101a,101b,101c,101dと中間転写ベルト181を挟んで反対側に配置されている。これら転写ローラは不図示の転写バイアス用電源に接続されており、転写ローラから正極性の電圧が印加される。そして、この電界により、感光ドラム101に接触中の中間転写ベルト181に、感光ドラム101上の負極性の各色トナー像が順次転写され、カラー画像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト181は、本実施形態では、樹脂で形成されているものを用いた。この樹脂材料としては、次のような材料が挙げられる。即ち、ポリカーボネート,フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体。スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体。スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体。スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)。スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)。メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂。スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン。ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂。変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、変性ポリカーボネート等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0027】
上記樹脂には、抵抗値調節用導電剤が添加される。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、次のようものが挙げられる。即ち、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫,酸化チタン,酸化アンチモン,酸化インジウム,チタン酸カリウム,酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)。酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム,ケイ酸マグネシウム,炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではない。
【0028】
一次転写部で中間転写ベルト181に担持されたカラー画像は、中間転写ベルト181に当接する二次転写ローラ140で記録材Pにさらに転写される。二次転写ローラ140は、不図示の転写バイアス用電源に接続されており、二次転写ローラから正極性の電圧が印加される。そして、この電界により、中間転写ベルト181に接触中の記録材Pに、中間転写ベルト181上の負極性のトナー像が順次転写され、カラー画像が形成される。この転写電界の決定は、例えば、特開平2−123385号公報に開示されているようなATVC(Active Transfer voltage Control)制御によって決定される。
【0029】
また、二次転写ローラ140は、中間転写ベルト181表面に当接する作動状態と、中間転写ベルト181から離間された非作動状態とを選択的に切替え可能に構成されている。本実施形態においては、切替え手段として、中間転写ベルト181に対して選択的に当接及び離間させる接離機構であるソレノイドを使用している(不図示)。
【0030】
次に、二次転写後に中間転写ベルト181上に残留する転写残トナーのクリーニング装置116について詳細を述べる。中間転写ベルトのクリーニング装置116は、ブレード状のクリーニング部材であるベルトクリーニングブレード116aを備えている。このベルトクリーニングブレード116aは、ゴム硬度77°(JIS A)、反発弾性率45%(23℃)、板厚2mm、自由長8mmで構成され、例えばポリウレタンゴムなどの弾性材料を用いることができる。
【0031】
中間転写ベルト181に当接する方向を正とした場合、当接設定角度は0°以上25°以下に構成されている。本実施形態では、揺動角度0°、当接設定角度25°、中間転写ベルト181に対しての総圧7.84Nで構成されている。
【0032】
また、ベルトクリーニングブレード116aの中間転写ベルト181に当接する先端角部分には、予め潤滑剤を塗布している。この潤滑剤としては、球形を有する平均粒径3μm、円形度0.93のシリコーン樹脂粒子と、不定形、具体的には鱗片形状を有する平均粒径2μmのフッ化黒鉛と、を所定の割合で混合したものを用いた。なお、シリコーン樹脂粒子としては、例えば、商品名トスパール(東芝シリコーン社製)のものを、フッ化黒鉛としては、例えば、商品名セフボン(セントラル硝子社製)のものを、それぞれ用いる。これは初期動作時に、ベルトとブレードの間の滑り性をよくし、めくれを発生させないためである。なお、ベルトクリーニングブレード116aのエッジ先端からの塗布幅としては、概ね1mmとした。
【0033】
クリーニング装置116は、ベルトクリーニングブレード116aによって除去された残留トナーや紙粉等の付着物を収容する収容部116bを備えている。収容部116bの内部では、ベルトクリーニングブレード116aによって除去された残留トナーや紙粉等の付着物を回動スクリューにより、クリーニング装置116の外部へと搬送する。
【0034】
[一次転写部]
次に、各画像形成部の一次転写部の構成について、図2を用いて説明する。黒色の画像形成部(ブラックステーション)Pdの一次転写部の構成を、図2(a)に示す。本実施形態の場合、画像形成部Pdの感光ドラム101dの直径は、他の画像形成部Pa〜Pcの感光ドラム101a〜101cよりも大きくしている。これにより、使用頻度の高い黒色の画像形成部Pdの寿命を他の画像形成部と同様にしている。
【0035】
このような黒色の画像形成部Pdの一次転写部T1dでは、第2転写手段である転写ローラ124dが、導電性の剛体により形成されている。本実施形態では、転写ローラ124dは、材質がSUMあるいはSUSなどの金属製のローラで構成されている。なお、剛体の第2転写手段としては、表面が金属面である金属ローラ以外に、例えば、金属ローラの表面に薄いゴム層を設けたもので、ほぼ剛体として扱えるものも含む。また、樹脂製のブレードにより構成されるものも含む。
【0036】
図2(a)に示す様に、転写ローラ124dは、第2像担持体である感光ドラム101dと中間転写ベルト181を挟んで反対側で、且つ、感光ドラム101dと当接する中間転写ベルト181の領域よりも走行方向下流に配置されている。具体的には、感光ドラム101dの半径をR、転写ローラ124dの半径をr、感光ドラム101dと転写ローラ124dとの中心間距離をdとする。このとき、転写ローラ124dは、d>R+rとなるように、感光ドラム101dに対して中間転写ベルト181の走行方向下流にずらして配置されている。そして、転写ローラ124dは、例えば、8.82Nのバネ荷重により中間転写ベルト181に接触している。
【0037】
例えば、転写ローラ124dの直径8mm、感光ドラム101dの直径を84mmとした場合に、転写ローラ124dを感光ドラム101dに対して下流に5mmにオフセットして配置している。この5mmとなるオフセット量fは、感光ドラム101dの中心軸から中間転写ベルト181に引いた垂線と、中間転写ベルト181の回転方向に関する転写ローラ124dの中心軸との距離である。なお、図2は、(a)の構成と(b)の構成との差異を明確にするために誇張して記載しているため、各部の寸法関係は、実際とは異なる。
【0038】
一方、他の画像形成部(ステーション)の一次転写部T1では、図2(b)に示す様に、転写ローラ124は、感光ドラム101に対して僅かに下流にずらして配置している。即ち、黒の画像形成部Pdよりも転写ローラ124を感光ドラム101に対して下流にずらす量を小さくしている。なお、図2(b)の説明では、各画像形成部Pa、Pb、Pcで共通であるため、各画像形成部の構成であることを示す添え字を省略して説明する。
【0039】
また、他の画像形成部の一次転写部T1の転写ローラ124は、スポンジローラとしている。例えば、直径が8mmの芯金の周囲に外径が16mmのスポンジを配置したローラである。また、他の画像形成部の感光ドラム101の直径は、例えば30mmとしている。また、感光ドラム101に対する転写ローラ124のオフセット量fは、例えば2mmである。そして、転写ローラ124は、例えば、11.76Nのバネ荷重により中間転写ベルト181を介して感光ドラム101に圧接されている。
【0040】
また、本実施形態の場合、中間転写ベルト181の体積抵抗率ρvは、1E+8〜1E+10(Ω・cm)とすることが好ましく、例えば、1E+10(Ω・cm)とする。また、表面抵抗率は1E+8〜1E+11(Ω/□)とすることが好ましく、例えば、3E+10(Ω/□)とする。
【0041】
このように構成される本実施形態の場合、黒色の画像形成部Pdの転写ローラ124dを、導電性の剛体により形成し、感光ドラム101dと当接する中間転写ベルト181の領域よりも下流に配置している。このため、感光ドラム101dの直径が大きくても、一次転写部T1dの下流で、感光ドラム101dの表面と中間転写ベルト181の表面との距離を確保できる。したがって、転写ローラ124dを例えば図2(b)に示す位置に配置した場合よりも、一次転写部T1dの下流の電界強度を小さくできる。
【0042】
電界強度を小さくできれば、一次転写部T1dで転写電圧を上げなくても異常放電を抑制できるため、転写電圧を低く設定できる。言い換えれば、転写電圧を小さくしても異常放電が生じにくい。転写電圧を小さくできれば、上流のトナー像、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンの少なくとも何れかのトナー像が、ブラックの一次転写部T1dを通過しても、このトナー像のトナーの帯電量分布が広がることを抑えられる。この結果、中間転写ベルト181から記録材Pにトナー像が転写される二次転写部T2での転写抜けも抑制できる。
【0043】
[実験]
次に、このような本実施形態の効果を確認するために行った実験について説明する。実験では、図1、2に示した本実施形態の構成を実施例、黒色の画像形成部Pdの転写ローラの構成及び配置を他の画像形成と同じとした構成を比較例とした。
【0044】
また、それぞれの実験条件は、動作時の温湿度環境は30度、80%RHであり、中間転写ベルト181等の移動速度であるプロセススピードは321mm/secとした。
【0045】
また、実施例の黒色の画像形成部Pdの転写ローラ124dの直径8mm、感光ドラム101dの直径を84mmとし、転写ローラ124dの感光ドラム101dに対するオフセット量fを5mmとした。また、転写ローラ124dに付勢するバネ荷重は、8.82Nとした。
【0046】
また、実施例の他の画像形成部及び比較例の全部の画像形成部の転写ローラ124は、直径が8mmの芯金の周囲に外径が16mmのスポンジを配置したローラとし、感光ドラム101の直径は、30mmとした。また、感光ドラム101に対する転写ローラ124のオフセット量fを2mmとした。また、転写ローラ124に付勢するバネ荷重は、11.76Nとした。
【0047】
また、実施例も比較例も、中間転写ベルト181の体積抵抗率ρvは1E+10(Ω・cm)とし、表面抵抗率は3E+10(Ω/□)とした。
【0048】
また、実施例も比較例も、各色の一次転写部に印加する一次転写設定電流はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に30μA、30μA、30μA、20〜50μAとした。ここでの設定電流とは、ATVC動作により決定される。つまり、ATVC動作時に感光ドラム101の暗部電位部に対して、転写ローラ124に転写高圧を印加し、設定電流となる定電圧を印加した状態である。また、黒色の一次転写部での設定電流(一次転写電流)は、20、30、40、50、60μAを順次印加した。
【0049】
このような実験条件のもとで、黒色の一次転写部での設定電流を上述のように変更して、それぞれ異常放電による画像不良の有無、二次転写部での2次色の転写抜けの有無を目視で調べた。この結果を図3に示す。なお、図3の丸印は、画像不良或いは転写抜けが殆どなかった場合を、三角印は、画像不良或いは転写抜けが多少生じるが許容できる場合を、バツ印は、画像不良或いは転写抜けが生じて許容できない場合を、それぞれ示している。
【0050】
図3から明らかなように、比較例の場合、黒色の一次転写部での設定電流が40μA以下で、異常放電による画像不良が発生した。これに対して実施例の場合、黒色の一次転写部での設定電流が40μA以下でも異常放電による画像不良が発生しなかった。なお、黒色の一次転写部での設定電流が50、60μAの場合には、何れの場合も異常放電による画像不良が発生しなかった。
【0051】
一方、二次転写部での転写抜けについては、比較例も実施例も同じ結果で、黒色の一次転写部での設定電流が30μA以下の場合に、それぞれ発生しなかった。
【0052】
以上より、本実施形態の構成によれば、黒色の一次転写部での設定電流が40μA以下でも異常放電による画像不良が発生しなかったため、一次転写部での電流を40μA以下に設定できる。したがって、二次転写部での転写抜けが生じない30μA以下に設定可能である。なお、黒色の一次転写部での設定電流が40μAでも二次転写部での転写抜けを許容できるため、この設定電流を40μA以下に設定することもできる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の像担持体、また他種の画像形成装置にも適用できる。また、これまで説明した実施形態において、説明に使用した数値等は一例を示すものであり、本発明はそれらに限定するものではない。更に、上述の実施形態では、他の画像形成部では一次転写部の転写ローラとしてスポンジローラを使用した構造について説明したが、他の画像形成部についても黒色の画像形成部と同様に剛体のローラを使用して、同様に配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
101a、101b、101c・・・感光ドラム(第1像担持体)、101d・・・感光ドラム(第2像担持体)、111a、111b、111c、111d・・・露光装置、122a、122b、122c、122d・・・一次帯電器、123a、123b、123c、123d・・・現像器、124a、124b、124c・・・転写ローラ(第1転写手段)、124d・・・転写ローラ(第2転写手段)、140・・・二次転写ローラ(二次転写手段)、181・・・中間転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する中間転写ベルトと、
円筒状の第1像担持体と、
前記第1像担持体にトナー像を形成する第1トナー像形成手段と、
転写バイアスを印加することにより、前記第1像担持体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第1転写手段と、
前記中間転写ベルトの走行方向に関して前記第1像担持体の下流に配置され、直径が前記第1像担持体よりも大きい円筒状の第2像担持体と、
前記第2像担持体にトナー像を形成する第2トナー像形成手段と、
転写バイアスを印加することにより、前記第2像担持体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第2転写手段と、
二次転写バイアスを印加することにより、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写する二次転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記第2転写手段は、導電性の剛体により形成され、前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで反対側で、且つ、前記第2像担持体と当接する前記中間転写ベルトの領域よりも前記走行方向下流に配置されている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2転写手段は、金属製のローラにより構成され、前記第2像担持体の半径をR、前記ローラの半径をr、前記第2像担持体と前記ローラとの中心間距離をdとしたとき、d>R+rとなるように、前記第2像担持体に対して前記中間転写ベルトの走行方向下流にずらして配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−97196(P2013−97196A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240473(P2011−240473)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】