説明

画像情報作成方法,断層撮影装置の断層画像情報作成方法及び断層撮影装置

【課題】
呼吸及び心拍の影響を受けて動く部位を対象としたより鮮明なエミッション画像情報を短時間に得ることができる。
【解決手段】
PET薬剤に起因して体内で発生する第1γ線及びγ線源から放射されて体内を透過する第2γ線が放射線検出器で検出される。検出された第1γ線から得られた各情報を用いて心拍・呼吸周期を区分した各体動位相区間0,1,2のそれぞれのエミッション画像情報(E画像情報)E0,E1,E2を作成する。検出された第2γ線から得られた各情報を用いて各体動位相区間0,1,2のそれぞれのトランスミッション画像情報(T画像情報)T0,T1,T2を作成する。T画像情報T0に他のT画像情報T1,T2をそれぞれ重ね合わせることによって相対変位F10,F20を求める。この相対変位を用いてE画像情報E1,E2をE画像情報E0に重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の処理装置による画像情報の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線計測技術を応用して非観血的に被検体の体内の画像情報を得る放射線画像診断装置の代表的なものとして、陽電子放出型断層像撮像装置(以下、PET装置)及び単光子放出断層像撮像装置(以下、SPECT装置)等の核医学診断装置、及びX線CT装置(以下、CT装置という)がある。
【0003】
これらの放射線画像診断装置は、検出対象の物理量を放射線飛翔方向の積分値として計測し、その積分値を基に被検体の体内の各位置における物理量をそれぞれ用いて断層画像情報を再構成する。X線CT装置は、X線源を被検体の周囲を旋回させ、X線源から放出されたX線を周囲の各位置から被検体である被検者に照射する。各X線照射方向において、被検者を透過した各X線を放射線検出器で検出し、それぞれのX線検出信号に基づいて各照射方向毎の放射線透過率が求められる。これらの放射線透過率を用いて被検者の体内における放射線減弱率の空間的な分布を断層画像化するものである。詳細な形態画像が得られるので、医療分野において広く利用されている。
【0004】
PET装置及びSPECT装置等の核医学診断装置は、被検者に注入された放射性薬剤に由来して被検者の体内から放出されるγ線を放射線検出器で検出し、検出されたγ線検出信号を基に得られた計測情報を用いて被検者の体内における放射性薬剤の分布を断層画像化する。得られた断層画像情報は代謝機能及び生理機能の診断に用いられる。
【0005】
これらの技術では膨大なデータを処理する必要があるため、データ処理の制約から得られる画像情報の質が制限されていた。しかしながら、近年の信号処理回路及びコンピュータ技術の急速な発達に伴い、質の高い画像情報が得られるようになった。
【0006】
X線CT装置は、前述したように、放射線検出器から出力されたX線検出信号を用いて様々な方向におけるX線の透過率を得る。これらの透過率の計測データを例えば非特許文献1に記載されているフィルタード・バック・プロジェクション法(Filtered Back Projection Method)などの画像再構成アルゴリズムを用いて処理することによって、体内の各部での線減弱係数の分布を三次元的な画像情報として得ることができる。
【0007】
PET装置を用いた検査(PET検査)は、陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)で標識した、体内の特定の部位に特異的に集積する放射性薬剤(以下、PET薬剤と呼ぶ)を被検者に投与し、PET薬剤の被検者の体内での分布を調べるものである。被検者に投与されたPET薬剤から放出された陽電子は、体内の付近の電子と結合して陽電子消滅し、511KeVのエネルギーを有する一対のγ線(以下、対γ線と呼ぶ)を放出する。対γ線のそれぞれは互いにほぼ正反対の方向に放出されるため、双方のγ線をそれぞれの放射線検出器で計測し、これらの検出器から出力されるそれぞれのγ線検出信号を基に得られる各情報を用いて同時計測することによって、陽電子消滅イベントがどの直線上で起こったかを特定することができる。このようにして統計的に十分な数の対γ線を検出した後、前述のフィルタード・バック・プロジェクション法などの画像再構成アルゴリズムを用いて、対γ線の発生頻度分布、すなわちPET薬剤の被検者の体内での分布を断層画像化することができる。
【0008】
上記した体内のPET薬剤に起因して生じるγ線の計測をエミッション計測(以下、E計測という)、及びエミッション計測で得られたγ線検出信号を基に再構成された画像情報をエミッション画像情報(以下、E画像情報という)と呼ぶ。E画像情報は、一般的には単にPET画像と呼ばれるが、本明細書では後述のトランスミッション画像情報(以下、T画像情報という)と区別するためE画像情報と呼ぶ。またE計測から再構成までの一連のプロセスをまとめてエミッション撮像と呼ぶ。
【0009】
ところで、定量性を要求する、PET装置を用いた検査(PET検査)では、E計測とは別に、PET装置に設けられたトランスミッション線源であるγ線源を用いたトランスミッションと呼ばれる計測(トランスミッション計測(以下、T計測という))も行われる。PET計測におけるγ線の減弱とは、放射性薬剤由来のγ線が被検者の体外に出るまでに体内の物質と相互作用を及ぼす結果、画像化に有効な同時計測データとして検出されない現象のことを指す。このγ線の減弱分を補正するプロセスは、減弱補正と呼ばれ、現在では大部分のPET検査で実施されている。
【0010】
減弱補正は、通常、γ線源をベッド上に乗っている被検者の周囲で旋回させるT計測で得られるデータを用いて行われる。γ線源の替りに、非特許文献1に記載されているX線源を用いることも可能である。
【0011】
E画像情報の画質を低下させる大きな要因として被検者の動き(体動)の影響が挙げられる。体動には、不随意な呼吸及び心臓の鼓動に伴う周期的な動き、及び随意な姿勢変化がある。例えば、PET検査は計測時間が、通常、数分から数十分近く掛かるため、被検者にストレスを与えることなく体動を抑制することは難しい。特に、呼吸を止めた状態で長時間に亘ってPET検査を行うことは不可能なため、呼吸による動き(呼吸動)は抑制が困難である。それゆえ、肺野に近い部位でのE画像情報はボケてしまうことが知られている。特に、PET検査の検査対象を心臓とする場合には、拍動を抑制,制御することは不可能である。したがって、心臓の動きの影響によりE画像情報の画質が損なわれてしまう。
【0012】
呼吸及び心臓の鼓動などの周期的な体動に伴う画像情報のボケを補償する方法として、ゲート撮像と呼ばれる方法が知られている。ゲート撮像とは、複数の体動周期分にわたって計測したE計測のデータを各体動位相のデータごとに区分けし、区分けしたこれらのデータを用いて各体動位相区間ごとのE画像情報をそれぞれ再構成する方法である。例えば呼吸動に対するゲート撮像においては、非特許文献3に記載されているように息の温度の微小な変化を捉える、及び非特許文献4に記載されているように胸部体表面の動きを赤外線ステレオカメラで追跡するなどによって呼吸の位相区間情報を得て、この位相区間情報を基にE計測で得られたデータを体動位相区間ごとに区分けする。心臓のゲート撮像では通常、ECG(Eco Cardio-Graphy)から鼓動の位相区間を表すトリガー信号を得る。ゲート撮像は現在では特に心臓の検査に対して一般的に行われている(特許文献2及び3)ほか、呼吸動に対しても試みられるようになってきた。
【0013】
このゲート撮像法によれば周期的な体動に伴う影響を原理的には補償することが可能である。しかしながら、必要検査時間が長いという欠点がある。長時間検査は被検者(多くの場合は疾患を持つ患者である)にとって苦痛であることから、通常は20〜30分程度で計測を終了する。このとき、例えば、非特許文献3が指摘しているように、各々の体動位相区間に対してはたかだか数分間分しか計測が行われないため、十分な統計精度のE画像情報を作成するために必要なデータを得ることが難しい。したがって、得られるE画像情報は統計ノイズを多分に含んでいる。体動周期当りの体動位相区間の数を少なくすることによってE画像情報の統計精度は向上するが、一つの体動位相区間内での体動が大きくなり、結局は体動補償としての精度向上はさほど期待できない。さらに、心拍及び呼吸の双方を補償するためには、それぞれの体動位相区間ごとに計測を行う必要がありPET検査時間はさらに長くなってしまう。
【0014】
特に、PET検査では、減弱補正を行うことが多く、理想的にはE計測及びT計測がそれぞれ同一の体動位相にて計測されるべきである。しかし、前述のように位相ゲートして撮像するためには長時間の計測が必要となるため、一般にはT計測は呼吸を止めた状態か呼吸をしたままの状態で行い、その単一データで複数位相ゲート撮像したエミッション画像の減弱補正を行う。これでは、異なる状態の計測データを用いて減弱補正を行うことになり、E計測とT計測の間での被検者の位置ズレに起因するアーチファクトが得られた画像情報に生じてしまう。
【0015】
呼吸動を補償する他の方法として、複合PET/CT装置を用いる方法がある(非特許文献5参照)。非特許文献5では、複合PET/CT装置においてX線CT撮像をシネモードで行って呼吸位相ごとのE画像情報を得て、ゲート計測したE画像情報のそれぞれの位相画像情報を作成する際に、対応する呼吸位相のX線CT画像を用いて減弱補正している。トランスミッションのゲート計測は通常は行われないが、発明者の知るところでは、非特許文献6にその報告がある。非特許文献6のゲート計測は20分の長時間を要している。CT装置を用いた心臓ゲート撮像は、特許文献2及び3に記載されている。これらの心臓ゲート撮像は、単一の周期的体動のゲート撮像である。心拍動の補償をするためにはその動きの大きさゆえ、前述のように呼吸動の補償も行う必要があり、この二つの体動に対して単純にゲート撮像を行うと、より長い計測時間が必要になることは容易に想像できる。なお、非特許文献7は断層画像情報の再構成法であるフーリエリビニング法及び3次元逐次近似再構成法を説明している。非特許文献8は2つの画像情報の非線形の重ね合わせ技術(Non-rigid image registration 法)を開示している。
【0016】
【特許文献1】特開2006−231083号公報
【特許文献2】特開2004−65982号公報
【特許文献3】特開2000−107174号公報
【非特許文献1】IEEE Transactions on Nuclear Science、NS−21巻の228頁,229頁
【非特許文献2】The Journal of Nuclear Medicine、Vol.45、No.1の4S頁〜14S頁
【非特許文献3】The Journal of Nuclear Medicine、Vol.45、No.2の214頁〜219頁
【非特許文献4】The Journal of Nuclear Medicine、Vol.43、No.7 の876頁〜881頁
【非特許文献5】The Journal of Nuclear Medicine、Vol.45、No.8、1287頁〜1292頁
【非特許文献6】IEEE Transactions on Nuclear Science、Vol.44、No.6 2473頁〜2476頁
【非特許文献7】IEEE transactions on Medical Imaging 第18巻、657頁
【非特許文献8】IEEE transactions on Medical Imaging 第18巻、712頁〜720頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
E計測時において前述したようにゲート撮像を行うことによって、周期的な体動に伴う影響を原理的には補償することが可能である。しかしながら、それぞれの体動位相区間ごとに十分な統計精度のデータを得るためには、必要な計測時間が長くなる。しかしながら、長時間のPET検査は被検者(多くの場合は疾患を持つ患者である)にとって苦痛である。
【0018】
非特許文献3は、(1)E画像情報がボケること及び(2)E画像情報の定量性が低下することの問題に対し、ゲート計測にて得たE画像情報を、ある決まった位相の画像情報に非線形的に変形して重ね合わせ、画素値を重畳することによって統計精度を向上させることが可能であると述べている。しかし、非特許文献3は、E画像情報を変形して互いに重ね合わせることの困難性を認識していない。X線CTにより再構成される画像情報、及びT画像情報などの形態画像と異なり、E画像情報は体内の構造を描出することを意図していない。このため体動位相ごとのE画像情報を変形して互いに重ね合わせることは一般に極めて困難である。
【0019】
本発明の目的は、呼吸及び心拍の影響を受けて動く部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得ることができる画像情報作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ある周期を時間的に区分して得られる複数の第1位相区間と前記ある周期とは他の周期を時間的に区分して得られる複数の第2位相区間が個々に組み合わさって定まる複数の時間区間で第1断層画像情報を作成し、前記複数の時間区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2画像情報に他の前記時間区間の前記第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、前記ある1つの時間区間の前記第1画像情報に前記他の時間区間の前記第1画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成する画像情報作成方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、呼吸及び心拍の影響を受けて動く部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態である陽電子放出型断層撮影装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0023】
体動による画像情報のボケは、下記の点において問題となっている。
(1)体輪郭及び臓器,腫瘍の輪郭がボケる。
(2)放射性薬剤の集積度の高い部位ではその集積度が実際よりも低く評価され、診断能が低下する。
(3)複数モダリティによる画像情報の重ね合わせがうまくゆかない。
以上の問題点は体動が画像情報に与える根本的な影響である。(1)及び(2)は、PET装置の空間分解能が飛躍的に高まった現在、画質を損ねる最も大きな要因として関心の対象となっている。(3)については、近年登場した複合PET/CT装置(非特許文献5参照)によって画像情報の重ね合わせが身近になった現在においても、放射線治療及び生体検査など、悪性腫瘍の位置をより精度良く特定する必要がある分野を中心に解決を望む声が高い。
【0024】
(1)の問題は、臓器及び悪性腫瘍、あるいは他の疾病部位の領域が不鮮明になることで、放射線治療計画、及び治療の効果の評価を困難にする。また、小さくかつ比較的集積度の高くない悪性腫瘍も、体動がない場合には表示されたE画像情報内に鮮明に見える。しかし、体動がある場合には、その悪性腫瘍は、E画像情報に含まれる統計ノイズに埋もれてしまい、存在の認識すら困難になる。
【0025】
(2)の問題は、例えば動きの大きい悪性腫瘍では一般に集積度が低く見積もられることである。E画像情報において、体動の大きな位置におけるある画素に示される集積度は、周辺部位の時間平均的な集積度になるため、結果として集積度が実際の値からはずれてくる。このため、上記のように集積度が低くなる。
【0026】
(3)の問題は、自然に呼吸をしたまま数分間撮像して得られるE画像情報と、息止めして短時間に撮像されるX線CT画像を重ね合わせた時に起こる問題である。この重ね合わせ画像情報は診断上有用であるが、肺野周辺では最大で1cm程度まで画像上にずれがあるように見えてしまう。これは、呼吸に対する取り扱いがPET検査と通常のX線CT検査では異なるために位置的な対応が必ずしもとれないからである。PET/CT装置においてもこの問題は指摘されており、解決が望まれている。
【0027】
E計測時において前述したようにゲート撮像を行うことによって、周期的な体動に伴う影響を原理的には補償することが可能である。しかしながら、それぞれの体動位相区間ごとに十分な統計精度のデータを得るためには、必要な計測時間が長くなる。しかしながら、長時間のPET検査は被検者(多くの場合は疾患を持つ患者である)にとって苦痛である。
【0028】
非特許文献3は、(1)及び(2)の問題に対し、ゲート計測にて得たE画像情報を、ある決まった位相の画像情報に非線形的に変形して重ね合わせ、画素値を重畳することによって統計精度を向上させることが可能であると述べている。しかし、非特許文献3は、具体的な方法には触れていない。X線CTにより再構成される画像情報、及びT画像情報などの形態画像と異なり、E画像情報は体内の構造を描出することを意図していない。このため体動位相ごとのE画像情報を変形して互いに重ね合わせることは一般に極めて困難である。
【0029】
さらに、例えば非特許文献3が指摘しているように、E計測においてゲート撮像を行った場合においても、減弱補正は、PET装置では非ゲート撮像によって得られたT計測のデータを用いて行い、複合PET/CT装置では呼吸を止めた状態か呼吸をしたままの状態で撮られたX線CT画像を用いて行っている。このため、E計測によって得られたデータとT計測によって得られたデータの間において被検者の呼吸状態の差に起因して、減弱補正においてアーチファクトが発生したり、補正が正しく行われないために定量性が悪化するという問題が発生する。非特許文献3は、この問題については、γ線源を用いたT計測、またはX線CTでのゲート撮像が解決策になることを示唆している。しかしながら、引用文献3は、その解決策の具体的な方法を示していない。
【0030】
非特許文献5に記載された複合PET/CT装置を用いる方法は、そもそも高線量の照射を要するX線CT撮像を比較的長い時間行うため、被曝量が高くなるという問題が生じる。この方法も、E画像情報において非特許文献3に述べられた統計精度不足の問題が残され、(1)及び(2)の問題を根本的に解決することはできない。さらに、その複合PET/CT装置は、PETによるE計測とX線CTによる計測が時間的にずれている。このため、複合PET/CT装置は、両計測における被検者の姿勢変化及び呼吸の変動などの、その時間的なずれに基づいた影響を受け、減弱補正及び画像情報の位置合わせにおいてずれを生じる可能性がある。
【0031】
呼吸動に加えて心拍動をも考慮し、心拍動及び呼吸動を共に補償するPET検査を短時間で精度良く実施する方法は知られていない。心拍動を補償するためにはその動きの大きさゆえ、心拍動及び呼吸動の二つの体動に対して単純にゲート撮像を行った場合には、より長いPET検査時間が必要になることは容易に想像できる。ゲート撮像に要する時間を短縮することが望まれる。
【0032】
本発明の目的は、呼吸及び心拍の影響を受けて動く部位を対象としたより鮮明なエミッション画像情報を短時間に得ることができる陽電子放出断層撮影装置の断層画像情報作成方法及び陽電子放出断層撮影装置を提供することにある。
【0033】
前述したように、肺野周辺のPET検査では体動、特に呼吸動の影響を取り除くことが質の良いE画像情報を得るために不可欠である。このためには、上記した(1)〜(3)以外に、以下に示す課題も解決することが望ましい。
(4)被検体に無理な息止めを強いない。
(5)減弱補正に由来するアーチファクト,定量性悪化を起こさない。
(6)被検体の苦痛とならない程度に短時間で検査を行う。
【0034】
ところで、非特許文献3に記述されているように、E画像情報をゲート撮像し、それぞれの体動位相区間の画像情報をある一つの体動位相区間の画像情報に非線形的に歪ませながら変形させて重ね合わせ、対応する画素の画素値を足し合わせることで、統計精度の高い、呼吸動を補償した画像情報が得られるであろうとの示唆がなされている。もし、これが実現できれば、上記した課題のうち(1)〜(4)及び(6)が解決できる。しかしながら、前述したように、形態情報の乏しいE画像情報を手掛かりに非線形の画像情報の重ね合わせを行うことは一般には不可能である。したがって、これを解決するために何らかの工夫が必要となる。また、好ましくは(5)の問題も解決する必要がある。
【0035】
本発明の発明者らは、E画像情報の非線形の重ね合わせを行うことができる手法について検討を行った。この検討結果を以下に説明する。
【0036】
被検体における周期的体動(呼吸動及び心臓の拍動)の体動位相区間ごとに統計精度の高い計測データを得るためには、長時間に亘るPET検査が必要になる。このため、一般的な被検体が苦痛を生じることなく耐えられる計測時間内で、その計測データを得ることは困難である。そこで、本発明者らは、より短い時間のエミッション計測におけるゲート撮像(以下、Eゲート計測という)によって得られた各体動位相区間ごとのE画像情報をある一つの体動位相区間のその画像情報に重ね合わせ、それぞれの画素値を重畳することで統計精度が向上させられることに着目した。しかしながら、E画像情報はそもそも形態情報が乏しく、そして、短い時間でのゲート撮像で得られるデータに基づいて得ることができる、体動位相区間ごとのE画像情報は、統計精度が不足している。このため、体動位相区間ごとのE画像情報の間で直接的にE画像情報の非線形の重ね合わせを行うことは難しい。
【0037】
トランスミッション計測におけるゲート撮像(以下、Tゲート計測という)を行うPET検査で長時間を要する理由は、γ線源が被検体の周囲を旋回していることにある。アーチファクトがより少ないE画像情報を再構成するためには、あらゆる角度方向から略均一な時間で被検体にγ線を照射することが必要である。
【0038】
図2は、γ線源の旋回及び体動周期を示し、(a)はγ線源の旋回状態を示す説明図、(b)は体動周期を示す説明図である。あらゆる角度方向から略均一な時間で被検体にγ線を照射することが必要であるが、γ線源である放射線源26が被検者29の周囲をゲート撮像の対象である体動位相区間a,bとは無関係に旋回しているため、ある1つの体動位相区間に着目した場合、放射線源26の周方向における位置は不連続に変化している。すなわち、同一の体動位相区間である図2(b)に示す体動位相区間a,bにおける放射線源26の位置69a,69bは、その連続性及び一定期間での撮像において全てのγ線源位置を取ることを保障されていない。すなわち、例えば外部線源回転周期と体動周期が同期してしまった場合、いくら時間をかけても、ある決まった外部線源位置からしか撮像ができないなど、全ての体動位相区間において様々な角度方向から略均一時間照射したデータが得られるまでには相当の長時間を要する。
【0039】
種々検討を行った発明者らは、Eゲート計測と並行してTゲート計測を行って各体動位相区間ごとのT画像情報を再構成すれば良いことに気が付いた。この結果、発明者らは、体動位相区間ごとのT画像情報同士を非線形に重ね合わせて得られたトランスミッション重ね合わせ画像情報(以下、T重ね合わせ画像情報という)を利用して、間接的に、それらの体動位相区間ごとのE画像情報同士を非線形に重ね合わせることにより、エミッション重ね合わせ画像情報(以下、E重ね合わせ画像情報という)を得るという新たな方法を見出したのである。この新たな方法によって、E画像情報の非線形の重ね合わせを行うことができることが分かった。
【0040】
発明者らが見出した上記の新たな方法の基本概念を、図1の呼吸動補償方法の説明図を用いて以下に詳細に説明する。図1には、理解を得やすくするために、体動周期である呼吸周期を3つの体動位相区間に分けた場合を一例として示している。図1において、Bは背骨、Cは悪性腫瘍及びLは肺を表す。
【0041】
図1の上段のT1,T2及びT3は、それぞれ、体動位相区間1,2及び3に対応したT画像情報である。これらの画像情報は、Tゲート計測で得られた第2パケット情報を再構成することで得られる。ここで、Tゲート計測で得られた情報は、後述の時刻情報及び線源位置情報を含む第2検出情報と時刻情報が付与されている体動位相区間情報である。図1の下段のE1,E2及びE3は、それぞれ、体動位相区間1,2及び3に対応したE画像情報である。これらの画像情報は、Eゲート計測で得られた情報第1パケット情報を再構成することで得られる。ここで、Eゲート計測で得られた情報は、後述の時刻情報を含む第1検出情報と時刻情報が付与されている体動位相区間情報である。T画像情報T1,T2,T3は形態画像情報であるので骨及び内臓等の輪郭が鮮明であるのに対し、E画像情報E1,E2,E3は機能画像情報であるためその輪郭が不鮮明である。図1ではT画像情報の輪郭を実線で、E画像情報の輪郭を破線で示した。
【0042】
γ線源として、陽電子消滅によって被検体の体内で発生するγ線のエネルギーと異なるエネルギーのγ線を放出する線源を使用し、半導体放射線検出器などのエネルギー分解能の良い放射線検出器を用いる。放射線検出器から出力される放射線検出信号をエネルギーに基づいて弁別するので、E計測とT計測を並行して行うことができる。これらの計測によって得られ弁別されたそれぞれのデータ(後述の第1パケット情報及び第2パケット情報)を、知られているゲート撮像と同様に取得した体動位相情報に基づいて体動位相区間ごとに区分けする。区分けされた各データを用いて、体動位相区間ごとのE画像情報及びT画像情報をそれぞれ再構成する。これによって、T画像情報T1,T2,T3及びE画像情報E1,E2,E3を得ることができる。
【0043】
区分する体動位相区間の数にもよるが、Tゲート計測には一般に非常に長い時間が掛かってしまう。しかしながら、体動位相区間の周期とγ線源の回転周期との関係を意図的にずらすことによって、T計測においても短時間のゲート撮像が可能である。発明者らのシミュレーションにおいては、1つの呼吸周期あたりの体動位相区間の数を8としたとき、例えばγ線源の回転周期を被検体の呼吸周期の(整数±0.1)倍とすれば、ベッドをある一つの位置に位置決めした場合において、たかだか10分程度で再構成条件を満足するT計測データが得られるという結果を得ている。
【0044】
Eゲート計測、及び体動位相区間の周期とγ線源の回転周期との関係を意図的にずらしたTゲート計測により体動位相区間ごとに得られたそれぞれのE画像情報及びT画像情報は、同じ被検体の同一部位(例えば体動により影響を受ける部位)に対してそれらの計測を並行して(同時に)行った場合に得られる画像情報である。並行して行われるE計測とT計測の間では、本質的に被検体の形態の差はない。すなわち、Eゲート計測での2つの体動位相区間で対応した2つのE画像情報の間の空間的な相対変位は、Tゲート計測でのそれらの体動位相空間で対応した2つのT画像情報の間のそれと同一になる。例えば、Eゲート計測における体動位相区間1(参照位相区間)のE画像情報E1と体動位相区間2のE画像情報E2の間での空間的相対変位F21は、参照位相区間のT画像情報T1と体動位相区間2のT画像情報T2の間でのその変位と同一である。このため、Tゲート計測での2つの体動位相区間の間でその相対変位の情報(例えば、F21またはF31)を求め、この相対変位の情報をその2つの体動位相空間における2つのE画像情報に適用することによって、一方の体動位相区間のE画像情報を、他方の体動位相区間(例えば、参照位相空間)のE画像情報に非線形に重ね合わせることができるのである。この結果、非線形に重ね合わせたエミッション重ね合わせ画像情報を得ることができる。
【0045】
なお、T画像情報は体輪郭,肺野及び骨などの形態情報を取得できるので、例えば非特許文献8に記載されている非線形の重ね合わせ技術を用いることによって、それぞれの体動位相区間のT画像情報を非線形的に歪ませながら参照位相区間の画像に重ね合わせることができる。
【0046】
図1はエミッション重ね合わせ画像情報を得るプロセスを示している。図1では被検体の息を吐いた状態に対応する呼吸位相区間を参照位相区間とし、その区間でのT画像情報を参照画像情報T1としている。この参照画像情報T1に他の呼吸位相区間(位相区間jとする)のT画像情報Tjを空間的に重ね合わせたとき、参照画像情報T1に重ね合わせられたT画像情報Tjは(1)式のような写像として表すことができる(説明のため区分する位相数は3としてある)。
【0047】
【数1】

【0048】
ここで、Fj1は体動位相区間jに対する画像Tjから参照位相画像T1への相対変位を表す変換行列である。T重ね合わせ画像情報Tj1は体動位相区間jのT画素情報Tjを体動位相区間1のT画像情報T1の形態上にマッピングして得られたT画像情報である。これらのT画像情報はそれぞれベクトル表示になっている。形態の不明瞭なE画像情報の重ね合わせはT画像情報の重ね合わせから得られた変換行列Fj1を用いて行われる。この変換行列を用いて行われた参照画像情報E1への他の体動位相区間のE画像情報の重ね合わせは(2)式で表される。
【0049】
【数2】

【0050】
ここで、E重ね合わせ画像情報Ej1は体動位相区間jのE画像情報Ejを体動位相区間1参照画像情報E1へ非線形に重ね合わせて得られたE画像情報である。このようにして得られたE重ね合わせ画像情報の対応する各画素値を(3)式のように足しこむことにより統計精度の高いE画像情報E1′が得られる。
【0051】
【数3】

【0052】
E計測とT計測を並列に行っており、T計測のある体動位相区間、及びこの体動位相区間に対応するE計測における体動位相区間のそれぞれの時刻が略同時であるため、PET検査にて標準的に用いられる減弱補正においても、被検体の位置ずれがほとんどない精度の良い減弱補正を行うことができる。
【0053】
以上の処理により、統計精度がより高いPET画像情報を得ることができる。
【0054】
以上に述べた、2つの体動位相区間での該当するT画像情報間の相対変位を基に、それらの体動位相区間での該当するE画像情報を非線形に重ね合わせることによって、上記した(5)以外の課題を改善することができる。課題(5)、すなわち減弱補正時の形態のずれに起因する問題は、各体動位相区間ごとにE画像情報と形態の一致したT画像情報が得られるので、これらT画像情報に基づいた投影計算、またはT画像情報を再構成する際に用いた計測データ(投影データ)を用いて減弱補正することで解決できる。
【0055】
上述した呼吸動補償方法(体動補償方法)は、後述する図3のデータ処理装置30により計算処理される。ある2つの体動位相区間でのT画像情報間の相対変位を基に、それらの体動位相区間に対応するE画像情報を重ね合わせた画像情報は、表示装置33へ出力されるか、別の表示情報を更に重ねて表示する処理等のために記憶装置35へ出力され、記録される。
【実施例2】
【0056】
本発明の好適な一実施例である陽電子放出断層撮影装置1(PET装置)を、図3〜図10を用いて説明する。図3は一実施例の陽電子放出断層撮影装置の概略構成図である。本実施例のPET装置は、図3に示すように、撮像装置2,被検体である被検者29を支持するベッド27,データ処理装置30及び表示装置33を備えている。
【0057】
撮像装置2は、計測空間Rを取り囲む筐体45(図6参照),計測空間Rを取り囲むように配置された複数の検出器ユニット6(図4,図6参照)を有する。
【0058】
図7は検出器ユニットを撮像装置に装着する状態の説明図である。検出器ユニット6は、計測空間Rを取り囲んで配置され筐体45に設置されたユニット支持部材3によって保持される。これらの検出器ユニット6は、ユニット支持部材3に設けられ周方向に配置された複数の開口部4内に挿入されている。検出器ユニット6が開口部4内に装着された後、環状の前面エンドシールド5が検出器ユニット6の前面を覆って筐体45に取り付けられる。
【0059】
図8は検出器ユニット6の詳細構成を示す斜視図である。検出器ユニット6は、内部区空間が形成され直方体をした収納部材19,収納部材19内に配置された複数の半導体放射線検出器(以下、検出器9という),信号処理装置である複数のアナログASIC10及びディジタルASIC12、及び電圧調整装置21を有する。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は特定用途向けのICである。複数の検出器9,複数のアナログASIC10,複数のディジタルASIC12及びアナログ信号をディジタル信号へ変換するアナログ・ディジタル変換器(ADC11)は基板部材8に取り付けられている。1枚のモジュール基板7は、複数の検出器9,複数のアナログASIC10,ディジタルASIC12及び基板部材8を有する。収納部材19内の空間は、その内部に配置される仕切り部材20によって、第1領域22及び第2領域23に分割されている。複数のモジュール基板7が、第1領域22内に配置され、収納部材19に着脱可能に取り付けられる。これらのモジュール基板7は、それぞれの基板面(検出器9,ディジタルASIC12等が設置される)が収納部材19の長手方向、すなわちベッド27の長手方向(被検者の体軸方向)を向いて配置され、その長手方向において並列に配置されている。電圧調整装置21が、第2領域23内に配置され、収納部材19に取り付けられる。
【0060】
各検出器9は、エネルギー分解能に優れる半導体素子部にカドミウムテルル(CdTe)を用いている。半導体素子部には、ガリウムヒ素(GaAs),沃化鉛(PbI2),臭化タリウム(TlBr),カドミウムテルル亜鉛(CZT)などを用いることも可能である。半導体素子部は、前述した素材の組み合わせを用いてもよい。各検出器9は、PET薬剤に起因して被検者29から放出される511keVのγ線(第1γ線)及び後述の放射線源である放射線源26(図4,図6参照)から放出されて被検者29を透過したγ線(第2γ線)を検出する。これらの検出器9は、アナログASIC10及びディジタルASIC12よりも計測空間R側に位置している。蓋部材19aを含む収納部材19はアルミニウム及びアルミニウム合金等の遮光性を有する材料によって構成されている。
【0061】
収納部材19の一部である蓋部材19aが収納部材19の一端部に着脱自在に取り付けられる。ユニット統合FPGA(Field Programmable Gate Array、以下、FPGA17という)、コネクタ18,24,25及びC2が、蓋部材19aに設けられる。複数のコネクタC2の信号配線(図示せず)はFPGA17に接続され、これらのコネクタC2の電源配線(図示せず)はコネクタ25に接続される。コネクタ18の信号配線(図示せず)はFPGA17に、コネクタ18の電源配線(図示せず)はコネクタ24に接続される。電圧調整装置21はコネクタ24及びコネクタ25に接続されている。
【0062】
図9はモジュール基盤の詳細構成を示す図である。検出器9,アナログASIC10,アナログ・ディジタル変換器(ADC11),ディジタルASIC12及びコネクタC1は、信号配線によりこの順に接続されている。
【0063】
1個のアナログASIC10は、複数のアナログ信号処理回路(アナログ信号処理装置)10aを備えている。ファースト系及びスロー系を有するアナログ信号処理回路10aが検出器9ごとに設けられる。ファースト系は、γ線の検出時刻を特定するためのタイミング信号を出力するタイミングピックオフ回路10bを有する。スロー系は、検出したγ線の波高値を求めることを目的として、極性アンプ(線形増幅器)10d,バンドパスフィルタ(波形整形装置)10e,ピークホールド回路(波高値保持装置)10fがこの順序に接続されて設けられている。アナログ信号処理回路10aはタイミングピックオフ回路10b及び極性アンプ10dに接続されるチャージアンプ(前置増幅器)10cを有する。チャージアンプ10cは、1個の検出器9に接続される。
【0064】
ディジタルASIC12は、図9に示すように、複数の時刻決定回路(時刻情報生成装置)14及び1個のパケットデータ生成器15を含む複数のパケットデータ生成装置13、及びデータ転送回路(データ送信装置)16を有しており、これらをLSI化したものである。陽電子放出断層撮影装置1に設けられた全てのディジタルASIC12は、500MHzのクロック発生装置(図示せず)からのクロック信号を入力し、同期して動作している。ディジタルASIC12に入力されたクロック信号は、パケットデータ生成装置13内の各時刻決定回路14に入力される。パケットデータ生成装置13内の各時刻決定回路14は、別々のアナログ信号処理回路10a内のタイミングピックオフ回路10bに接続される。
【0065】
入射したγ線を検出した検出器9はγ線検出信号を出力する。検出器9は、そのγ線が第1γ線である場合には第1γ線検出信号を、そのγ線が第2γ線である場合には第2γ線検出信号を出力する。以降において、第1γ線及び第2γ線と区別しないで単にγ線と記載する場合には両方のγ線を意味し、第1γ線検出信号及び第2γ線検出信号と区別しないで単にγ線検出信号と記述する場合には両方のγ線検出信号を意味する。検出器9から出力されたγ線検出信号は、チャージアンプ10c,極性アンプ10dで増幅される。増幅されたγ線検出信号はバンドパスフィルタ10eを経てピークホールド回路10fに入力される。ピークホールド回路10fは、γ線検出信号の波高値を保持する。
【0066】
ピークホールド回路10fから出力された波高値信号は、ADC11でディジタル信号に変換されてパケットデータ生成器15に入力される。タイミングピックオフ回路10bは、チャージアンプ10cで増幅されたγ線検出信号を入力し、γ線を検出したタイミングを示すタイミング信号を出力する。このタイミング信号は該当する時刻決定回路14に入力される。時刻決定回路14はタイミング信号を入力した時のクロック信号に基づいてγ線の検出時刻を決定し、検出時刻情報を出力する。
【0067】
パケットデータ生成器15は、検出時刻情報を入力したときこの検出時刻情報を出力した時刻決定回路14に対応する検出器9の検出器IDを特定する。パケットデータ生成器15は、1個の検出器9に対応する検出時刻情報,検出器ID情報(検出器位置情報)及び波高値情報(γ線検出信号のエネルギー情報)を含むディジタル情報であるパケット情報を生成する。このパケット情報は、データ転送回路16に入力される。データ転送回路16に接続される信号配線(図示せず)は、コネクタC1を介してコネクタC2に接続された信号配線に接続される。なお、コネクタC2に接続された電源配線は、コネクタC1に接続された電源配線(図示せず)に接続される。後者の電源配線は、基板部材8内に配置され、検出器9及びタイミングピックオフ回路10b等のモジュール基板7に設けられた各エレメントに接続される。
【0068】
1つの検出器ユニット6内に配置された各モジュール基板7のデータ転送回路16は、それぞれ、パケット情報をその検出器ユニット6のFPGA17に出力する。撮像装置2に設けられた全検出器ユニット2の各FPGA17から出力された各パケット情報は、各コネクタ18に接続された情報伝送用配線(図示せず)を介してデータ処理装置30の信号弁別装置31に送信される。
【0069】
図6は、図1に示す撮像装置2の縦断面図である。撮像装置2は、図6に示すように、さらに、γ線源装置(放射線源装置48),線源旋回装置54及び線源直進移動装置53を備えている。環状の後面エンドシールド60が後述の回転部材56に取り付けられる。検出器ユニット6は、撮像装置2の軸方向において前面エンドシールド5と後面エンドシールド60の間に配置される。前面エンドシールド5及び後面エンドシールド60は放射線遮へい体である。
【0070】
線源旋回装置54は、回転駆動装置55(例えば、モータ),回転部材56,環状の歯車部材57,軸支持部材58及び転動部材59を有する。回転部材56は、筐体45の後端部に配置される。回転部材56の一部は、筐体45と後面エンドシールド60の間に配置され、筐体45に取り付けられた転動部材59(例えばスラスト軸受)に取り付けられる。転動部材59は回転部材56を支持している。回転駆動装置55が筐体45に取り付けられている。回転駆動装置55の回転軸に設けられた歯車が、回転部材56の外周部を取り囲んで回転部材56に設けられた歯車部材57と噛み合っている。後面エンドシールド60は回転部材56と共に回転する。回転駆動装置55に取り付けられたエンコーダ63は回転駆動装置55の回転軸に連結される。
【0071】
放射線源装置48は、γ線源である放射線源26,線源支持軸49及び保持部材50を有する。放射線源26は線源支持軸49の一端に取り付けられ、保持部材50は線源支持軸49の他端に取り付けられる。線源支持軸49は撮像装置2の中心軸(計測空間Rの中心軸)Zと平行になるように配置される。放射線源26は検出器ユニット6よりも中心軸Z側、すなわち、検出器ユニット6とベッド27の間に配置される。線源支持軸49は回転部材56に設置された軸支持部材58を貫通している。軸支持部材58は、放射線遮へい体であり、回転部材56の内部に形成される線源収納室61の一端部を封鎖している。線源収納室61に収納される放射線源26が通過するための切欠部60aが後面エンドシールド60に設けられている。放射線遮へい体である線源シールド64,65が設けられる。線源シールド64が切欠部60aに対向して、線源シールド65が線源収納室61の位置に対向してそれぞれ配置される。
【0072】
放射線源26は、第1γ線とはエネルギーの異なる第2γ線を放出する放射性同位元素を備えている。この放射性同位元素としては、662keVのγ線を放出するセシウム137を用いる。セシウム137の替りに、コバルト57(122keVの第2γ線を放出),テクネチウム99m(140keVの第2γ線を放出),テルル123m(159keVの第2γ線を放出)、セリウム139(166keVの第2γ線を放出),ガドリニウム153(153keVの第2γ線を放出)及びアメリシウム241(57keVの第2γ線を放出)などを用いてもよい。他の放射線源であるX線源などを用いても良い。
【0073】
線源直進移動装置53は、移動装置51及びガイド部材52を備える。ガイド部材52は、撮像装置2の軸方向に伸びており、筐体45の後端の側面に取り付けられる。移動装置51は、ガイド部材52に沿ってその軸方向に移動し、保持部材50が挿入される溝62を有する。放射線源26が最も低い位置にある状態で、すなわち、保持部材50が溝62内に入っている状態で、移動装置51はその軸方向に移動できる。移動装置51の移動によって、放射線源26が、撮像装置2の軸方向において前面エンドシールド5と軸支持部材58との間で移動される。放射線源26はT計測を行っていないときには線源収納室61内に収納される。T計測を行うときには、回転駆動装置55を駆動させて回転部材57を回転させることによって、保持部材50が溝62から抜け出して放射線源26がベッド27に乗っている被検者29の周囲を旋回する。
【0074】
図4は、図3に示す陽電子放出断層撮影装置の詳細構成図である。データ処理装置30は、図4に示すように、信号弁別装置31,同時計数装置32,第2放射線処理装置34(トランスミッションデータ処理装置),記憶装置35,第1断層画像情報作成装置36(エミッション画像情報作成装置),第2断層画像情報作成装置37(トランスミッション画像情報作成装置),体動補償装置38,線源位置検出装置41,体動位相情報取得装置43,位相情報付加装置44,線源回転制御装置42を備えている。これらの装置はコンピュータ及び回路基板などによって構成されている。
【0075】
図5は、図4に示す断層画像情報作成装置46及び体動補償装置38の詳細構成図である。図5に示すように、断層画像情報作成装置46は、第1断層画像情報作成装置36(エミッション画像情報作成装置)及び第2断層画像情報作成装置37(トランスミッション画像情報作成装置)を含んでいる。体動補償装置38も、図5に示すように、相対変位情報生成装置39及び断層画像重畳装置40を含んでいる。図5の断層画像情報作成装置46と体動補償装置38により図1の体動補償方法が実行される。第1断層画像情報作成装置36が記憶装置35のE計測の情報にもとづいて図1のエミッション画像E1,E2,E3を作成する。第2断層画像情報作成装置37が記憶装置35のT計測の情報にもとづいて図1のトランスミッション画像T1,T2,T3を作成する。相対変位情報生成装置39が図1の相対変位情報であるF21,F31を生成する。断層画像重畳装置40が図1の参照位相区間のE1へ、F21,F31を用いてE2,E3を重ね合わせる。
【0076】
図4において、信号弁別装置31は、各検出器ユニット6のそれぞれのコネクタ18に接続され、さらに、同時計数装置32及び第2放射線処理装置34にそれぞれ接続される。線源位置検出装置41は、エンコーダ63,第2放射線処理装置34及び線源回転制御装置42にそれぞれ接続される。線源回転制御装置42は回転駆動装置55の駆動を制御する。演算装置(図示せず)は、線源回転制御装置42,呼吸モニタ装置28及び心拍計測装置67にそれぞれ接続される。位相情報付加装置44は、記憶装置35に接続され、同時計数装置32,第2放射線処理装置34,体動位相情報取得装置43からの情報を取得する。データ処理装置30内の装置の相互の情報は、記憶装置35を介さずに装置間で直接取得しても良い。体動位相情報取得装置43は、呼吸モニタ装置28及び心拍計測装置67にそれぞれ接続される。記憶装置35は、第1断層画像情報作成装置36,第2断層画像情報作成装置37,相対変位情報生成装置39,断層画像重畳装置40,位相情報付加装置44及び情報出力装置66にそれぞれ接続される。情報出力装置66は、表示装置33に接続される。相対変位情報生成装置39は、第2断層画像情報作成装置37及び断層画像重畳装置40にそれぞれ接続される。断層画像重畳装置40は第1断層画像情報作成装置36に接続される。
【0077】
呼吸モニタ装置28は、被検者29の息の温度をモニタリングする装置であり、被検者29の顔に装着される。体動位相情報取得装置43は、呼吸モニタ装置28で計測した息の温度情報を入力し、呼気から吸気に変わるタイミングで息の温度がピークとなる時点の間隔を呼吸周期として求める。呼吸モニタ装置として、被検者29の胸部表皮の変位を測定する赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラを用いることができる。赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラを用いる場合には、三脚等の支持部材に設置した該当するカメラを撮像装置2の近くで被検者29を撮影できる位置に配置する。この場合には、体動位相情報取得装置43は、赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラから入力する映像情報に基づいて胸部表皮の変位波形を解析し、呼吸周期を求める。または、別途、呼吸モニタ可能な装置を用意し、この装置から出力された、位相情報解析の手掛かりとなる信号を体動位相情報取得装置43に入力してもよい。
【0078】
心拍計測装置67は、被検者29の腕に装着され、被検者29の心拍を計測して体動位相情報取得装置43に計測された心拍情報を出力する。
【0079】
本実施例のPET装置を用いたPET検査及びこの検査によって得られた情報に基づいた画像情報の作成について、詳細に説明する。
【0080】
オペレータ(医師または放射線技師)は、PET検査に必要な情報をオペレータコンソール(図示せず)に設けられた入力装置(図示せず)から入力する。この入力情報は、被検者29及びPET薬剤に関する情報,PET検査の時間情報(例えば、12分)、さらには呼吸動補償のための情報及び心拍動駆動補償のための情報が含まれる。例えば、呼吸補償の情報には1つの呼吸周期当りの第1体動位相区間数(呼吸動位相区間数)である8を含んでおり、1つの心拍周期当りの第2体動位相区間数(心拍動位相区間数)である4を含んでいる。オペレータは、さらに、検査開始指令をその入力装置から入力する。この検査開始指令を入力したベッド駆動装置(図示せず)は、PET薬剤を投与された被検者29が乗っているベッド27をその長手方向に移動させ、被検者29を計測空間R内に挿入する。被検者29は、計測空間R内で軸方向の所定位置に位置決めされる。
【0081】
上記の検査開始指令を入力した呼吸モニタ装置28は被検者29の呼吸のモニタリングを開始する。上記の検査開始指令を入力した心拍計測装置67は被検者29の心拍のモニタリングを開始する。呼吸モニタ装置28の計測情報、すなわち、被検者29の息の温度測定値及び心拍計測装置67で計測された心拍情報は、データ処理装置30の演算装置及び体動位相情報取得装置43に入力される。演算装置は、息の温度測定値に基づいて呼吸周期を求め、心拍情報に基づいて心拍周期を求める。演算装置は、求めた各呼吸周期の呼吸波形情報及び求めた各心拍周期の心拍波形情報を記憶装置35に記憶させる。演算装置は、短時間で心拍及び呼吸の位相カバー率、すなわち計測された体動位相区間数÷全体動位相区間数が最大になるγ線源である放射線源26の回転周期を求める。例えば、呼吸周期を心拍周期で割った値が自然数でなければ、放射線源26の回転周期を呼吸周期の整数倍から少しずらすなどの演算を行ってその回転周期が求められる。演算装置は、求めた放射線源26の回転周期を回転周期設定値として線源回転制御装置42に出力する。演算装置は、算出された回転周期設定値に基づいて、被検者29の呼吸周期を微調整する必要が生じた場合には、音声によるガイド情報を呼吸ガイド装置68に出力する。このガイド情報は、呼吸ガイド装置68から音声で出力され、被検者29に伝えられる。
【0082】
情報出力装置66は記憶装置35から読み出した被検者29の呼吸周期ごとの呼吸波形情報及び心拍周期ごとの心拍波形情報を表示装置33に出力する。情報出力装置66による関係情報の表示装置33への出力は、上記の入力装置から入力されたオペレータからの要求指令によって行われる。表示装置33に表示された被検者29の呼吸波形情報及び心拍情報が安定したとき、オペレータが、T計測を開始するために、入力装置にT計測開始指令を入力する。呼吸波形情報及び心拍情報は数分間で安定する。T計測は、E計測が行われている期間内で、E計測と並行に行われる。
【0083】
T計測開始指令は、入力装置から、体動位相情報取得装置43,線源直進移動制御装置(図示せず)及び線源回転制御装置42にそれぞれ入力される。
【0084】
T計測開始指令を入力した体動位相情報取得装置43は、入力した温度測定値に基づいて呼吸周期を求め、求められた各呼吸周期の呼吸波形情報を入力装置から入力された第1体動位相区間数に基づいて時間軸で区分する。第1体動位相区間数(例えば5)に基づいて時間軸で区分された第1体動位相区間(呼吸位相区間)ごとに第1時間情報を付与する。また、体動位相情報取得装置43は、入力した心拍情報に基づいて心拍周期を求め、求められた各心拍周期の心拍波形情報を入力装置から入力された第2体動位相区間数(例えば4)に基づいて時間軸で区分する。第2体動位相区間数に基づいて時間軸で区分された第2体動位相区間(心拍位相区間)ごとに第2時間情報を付与する。例えば、求められた呼吸周期が3秒である場合、入力された第1体動位相区関数が5であるので、1つの第1体動位相区間の時間幅が0.6秒となる。0.6秒ごとに分割された5つの第1体動位相区間ごとに第1時刻情報が付与される。この処理が呼吸周期ごとに繰り返される。呼吸周期ごとに第1時刻情報が付与された各第1体動位相区間の情報が位相情報付加装置44に入力される。例えば、求められた心拍周期が0.8秒である場合、入力された第2体動位相区関数が4であるので、1つの第2体動位相区間の時間幅が0.2秒となる。0.2秒ごとに分割された4つの第2体動位相区間ごとに第2時刻情報が付与される。この処理が心拍周期ごとに繰り返される。心拍周期ごとに第2時刻情報が付与された各第2体動位相区間の情報が位相情報付加装置44に入力される。
【0085】
T計測開始指令を入力した線源直進移動装置53を制御する制御装置は、駆動指令を移動装置51に出力する。駆動制御指令を入力した移動装置51は、ガイド部材52に沿って筐体45に向かって移動する。移動装置51と噛み合っている線源支持軸49が前面エンドシールド5に向かって移動する。これにより、放射線源26が、線源収納室61から外部に移動し、前面エンドシールド5と後面エンドシールド60の間の所定位置に設定される。
【0086】
T計測開始指令を入力した線源回転制御装置42は、放射線源26が上記の所定位置に設定された後、放射線源26の回転周期が演算装置から入力した回転周期設定値になるように、回転駆動装置55の回転を制御する。回転駆動装置55の回転力は、歯車部材57を介して回転部材56に伝えられ、回転部材56を回転させる。放射線源26は、回転部材56と共に回転し、回転周期設定値になるように、被検者29の周囲を旋回する。放射線源26から放出される662keVの第2γ線は、放射線源26の旋回に伴って周囲からベッド27上の被検者29に照射される。T計測は放射線源26を旋回させながら実行される。
【0087】
例えば、放射線源26の旋回が開始されたとき、オペレータは、上記した入力装置にデータ収集開始指令を入力する。このデータ開始指令が信号弁別装置31に入力されたとき、信号弁別装置31は各検出器ユニット6から出力された各パケット情報の入力を開始する。
【0088】
信号弁別装置31に入力される、E計測及びT計測におけるそれぞれのパケット情報の生成について説明する。
【0089】
被検者29が計測空間R内に挿入されているとき、全検出器9が被検者29の周囲を取り囲んでいる。この状態で、E計測が実施される。悪性腫瘍の患部に集積したPET薬剤に起因して発生した陽電子の消滅時に発生する対γ線(一対の第1γ線)が、撮像装置2の約180°反対方向に位置する一対の検出器9に入射され、これらの検出器9で検出される。第1γ線を検出した検出器9は、第1γ線検出信号を出力する。この第1γ線信号を入力するアナログ信号処理回路10aのタイミングピックオフ回路10bがタイミング信号を、ピークホールド回路10fが波高値信号を出力する。このタイミング信号を入力する時刻決定回路14は、前述したように、そのタイミング信号に基づいて決定した、第1γ線の検出時刻情報を生成する。ADC11でディジタル信号に変換された波高値情報、及び検出時刻情報を入力したパケットデータ生成器15は、検出された第1γ線に対するパケット情報(以下、第1パケット情報という)を生成する。この第1パケット情報は、第1γ線に対する検出時刻情報,検出器ID情報及び波高値情報を含んでいる。E計測で得られた第1パケット情報は信号弁別装置31に入力される。
【0090】
T計測において、放射線源26から放出されて被検者29を透過した第2γ線は、検出器9で検出される。第2γ線を検出した検出器9から出力された第2γ線検出信号は、第1γ線検出信号と同様に、アナログ信号処理回路10a及びパケットデータ生成装置13で処理される。パケットデータ生成器15は、検出された第2γ線に対するパケット情報(以下、第2パケット情報という)を生成する。この第2パケット情報は、第2γ線に対する検出時刻情報,検出器ID情報及び波高値情報を含んでいる。T計測で得られた第2パケット情報も信号弁別装置31に入力される。
【0091】
T計測を終了するときには、オペレータが、上記した入力装置からT計測終了指令を入力する。T計測終了指令を入力した線源回転制御装置42は、回転駆動装置55に停止制御指令を出力し、γ線源である放射線源26が最も下方の位置に到達したときに回転駆動装置55を停止させる。この状態で、保持部材50が移動装置51の溝62内に位置している。T計測終了指令を入力した線源直進移動制御装置は、移動装置51を、筐体45から遠ざかるように移動させるように制御する。移動装置51が筐体45から遠ざかるように移動するので、放射線源26が線源収納室61内に収納され、第2γ線の被検者29への照射が停止される。
【0092】
データ開始指令を入力した後、信号弁別装置31は、E計測及びT計測が並行して実行されているので、各検出器ユニット6から出力された第1パケット情報及び第2パケット情報の両方を入力し、検出したγ線のエネルギー、すなわち、波高値情報に基づいてそれらのパケット情報を弁別する。信号弁別装置31は、第1γ線のエネルギーに相当する波高値情報、すなわち、例えば450〜550keVのエネルギーに相当する範囲の波高値情報を含む第1パケット情報を同時計数装置32に出力する。第2γ線のエネルギーに相当する波高値情報、すなわち、例えば570〜650keVのエネルギーに相当する範囲の波高値情報を含む第2パケット情報は、第2放射線処理装置34に出力される。これらのパケット情報の出力先の切替えは、信号弁別装置31内に設けられた切替スイッチ(図示せず)の切替えによって行われる。E計測及びT計測が並行して実行される場合の時間情報の付与に際しては、呼吸周期の開始時刻と、時刻決定回路14で決定されるγ線の検出時刻は、同期をとらないとずれてしまい、第1断層画像情報作成装置36,第2断層画像情報作成装置37での体動位相区間毎のE画像情報及びT画像情報の作成に支障が出る。Eゲート計測とTゲート計測の同期の仕方を説明する。検出器ユニット6からデータ処理装置30に時刻情報を含むパケットが送られる。体動位相情報取得装置43は記憶装置35を介してリアルタイムに時刻情報を含むパケットを取得する。位相情報付加装置44は体動位相情報取得装置43から時刻情報を得る。
【0093】
同時計数装置32は、第1γ線検出信号に基づいて得られた検出時刻情報及び検出器IDを用いて同時計数を行い、一個の陽電子の消滅によって発生した一対の第1γ線を検出した一対の検出器9を特定する。同時計数装置32は、特定された一対の検出器9の、第1パケット情報に含まれる各検出器ID情報及び検出時刻情報を位相情報付加装置44に出力する。同時計数によって得られた各検出器ID情報及び検出時刻情報を第1検出情報という。
【0094】
線源位置検出装置41は、エンコーダ63の出力信号(回転駆動装置55の回転角度情報)を入力し、この出力信号に基づいて旋回している放射線源26の位置情報(以下、線源位置情報という)を求める。線源位置情報は第2放射線処理装置34及びフィードバック情報として線源回転制御装置42に入力される。線源回転制御装置42は、回転周期設定値及びフィードバックされた線源位置情報に基づいて回転駆動装置55を制御する。
【0095】
第2放射線処理装置34は、第2パケット情報に含まれる第2γ線を検出した検出器9の検出器ID情報及び検出時刻情報、及び付加された線源位置情報を位相情報付加装置44に出力する。第2放射線処理装置34から出力される検出器ID情報,検出時刻情報及び線源位置情報を第2検出情報という。
【0096】
位相情報付加装置44は、第1体動位相区間情報に付与された第1時間情報及び第2体動位相区間情報に付与された第2時間情報を用いて、同時計数装置32から入力した第1検出情報に、該当する第1体動位相区間情報を付与し、記憶装置35に記憶させる。すなわち、位相情報付加装置44は、第1検出情報に含まれている検出時刻情報とマッチングする第1時間情報の第1体動位相区間情報及び第2時間情報の第2体動位相区間情報を、第1検出情報に付与する。尚、この位相情報付加処理は、位相情報付加装置44内の一時記憶領域、または記憶装置35に一旦、第1検出情報と第1体動位相区間情報,第2体動位相区間情報を記憶してから改めて行っても良い。前述の第1検出情報は、記憶装置35内の二次元テーブル(図10参照)71に記憶される。
【0097】
図10は、図4に示す記憶装置35内の二次元テーブルを示す説明図である。図10の横軸は第1体動位相区間(呼吸位相区間)を表し、縦軸は第2体動位相区間(心拍位相区間)を表している。第1検出情報は、第1及び第2体動位相区間情報に基づいて、該当する第1体動位相区画と該当する第2体動位相区間の交点の体動位相区間(以下、区間領域72という)に記憶される。このようにして、同時計数装置32から出力される各第1検出情報は二次元テーブル71内の該当する区間領域72に、順次、記憶される。
【0098】
位相情報付加装置44は、第1体動位相区間情報に付与された第1時間情報及び第2体動位相区間情報に付与された第2時間情報を用いて、第2放射線処理装置34から入力した第2検出情報に、該当する第1体動位相区間情報を付与し、記憶装置35に記憶させる。すなわち、位相情報付加装置44は、第2検出情報に含まれている検出時刻情報とマッチングする第1時間情報の第1体動位相区間情報及び第2時間情報の第2体動位相区間情報を、第2検出情報に付与する。尚、この位相情報付加処理は、位相情報付加装置44内の一時記憶領域、または記憶装置35に一旦、第2検出情報と第1体動位相区間情報,第2体動位相区間情報を記憶してから改めて行っても良い。前述の第1検出情報は、記憶装置35内の二次元テーブル71に記憶される。第1検出情報は、第1及び第2体動位相区間情報、及び第2検出情報に含まれた線源位置情報に基づいて、該当する区間領域72に記憶される。このようにして、第2放射線処理装置34から出力される各第2検出情報は二次元テーブル71内の該当する区間領域72に、順次、記憶される。
【0099】
二次元テーブル71の各区間領域72は、被検者29の呼吸周期を時間的に区分して得られる複数の第1体動位相区間のそれぞれと心拍周期を時間的に区分して得られる複数の第2体動位相区間のそれぞれが個々に組み合わさって定まる時間区間に該当する。
【0100】
区間領域72の二次元テーブル71内での位置は、(m,n)で表す。ここで、mは第2体動位相区間の数、nは第1体動位相区間の数を表している。例えば、二次元テーブル71において、区間領域(3,2)は、「3」の第1体動位相空間と「2」の第2体動位相空間の交点の体動位相空間である区間領域72を意味している。
【0101】
第2断層画像作成装置36bは、二次元テーブル71の区間領域72ごとに、それぞれの区間領域72に記憶された第2検出情報に含まれた検出器ID情報及び線源位置情報を用いてそれぞれのT画像情報を再構成する。二次元テーブル71を例にとって説明すると、区間領域(1,1),…,区間領域(2,1),…,区間領域(4,1),…,区間領域(4,5)のそれぞれにおけるT画像情報T(1,1),…,T画像情報T(2,1),…,T画像情報T(4,1),…,T画像情報T(4,5)がそれぞれ作成される。これらのT画像情報は、図1に示すT画像情報T1,T2,T3,…に相当する。第2断層画像作成装置36bは、作成した各第2領域のT画像情報を該当する二次元テーブル71内の区間領域(m,n)にそれぞれ記憶させる。
【0102】
第1断層画像情報作成装置36aは、二次元テーブル71の区間領域72ごとに、それぞれの区間領域72に記憶された第1検出情報に含まれた、同時計数によって得られた各検出器ID情報を用いてそれぞれのE画像情報を再構成する。二次元テーブル71を例にとって説明すると、区間領域(1,1),…,区間領域(2,1),…,区間領域(4,1),…,区間領域(4,5)のそれぞれにおけるE画像情報E(1,1),…,E画像情報E(2,1),…,E画像情報E(4,1),…,E画像情報E(4,5)がそれぞれ作成される。これらのE画像情報は、図1に示すE画像情報E1,E2,E3,…に相当する。第1断層画像情報作成装置36は、作成した各区間領域のE画像情報を該当する二次元テーブル71内の区間領域(m,n)にそれぞれ記憶させる。
【0103】
ある区間領域(m,n)(例えば、区間領域(2,3))におけるE画像情報を再構成する際には、その区間領域(m,n)(例えば、第2領域(2,3))において再構成された第2γ線の透過率に関するT画像情報T(m,n)を基に、第1検出情報に対する減弱補正を行い、E画像情報E(m,n)を再構成する。
【0104】
第1断層画像情報作成装置36及び第2断層画像情報作成装置37は、例えばフィルタード・バック・プロジェクション法などの断層画像再構成アルゴリズムを用いて二次元テーブル71の第1領域ごとのE画像情報及びT画像情報並びに二次元テーブル73の第2領域ごとのE画像情報及びT画像情報をそれぞれ作成する。E画像情報及びT画像情報は、それぞれ断層画像情報である。本実施例は、E計測及びT計測の並列計測(実質的に同時計測)によって、被検者29の形態の同一性が保証されている。このため、本実施例は、減弱補正におけるEゲート計測とTゲート計測での位置ずれに伴うアーチファクト及び定量性の悪化が、従来のEゲート計測に比較して格段に少なくなっている。
【0105】
3次元撮像を行った場合は、上記したT画像情報及びE画像情報は、例えば非特許文献7に説明されているフーリエリビニング法または3次元逐次近似再構成法などを用いて再構成される。
【0106】
図1を用いて述べた体動位相区間ごとのT画像情報同士及びE画像情報同士をそれぞれ非線形に重ね合わせる、本実施例での具体的な処理を説明する。これらの処理は、体動補償装置38で行われる。相対変位情報生成装置39は、記憶装置35の二次元テーブル71に記憶されている各区間領域のT画像情報(例えば、T画像情報T(1,1),…,T画像情報T(4,5))、及び各区間領域の情報(例えば、区間領域(1,1),…,区間領域(4,5))を入力する。相対変位情報生成装置39は、ある1つの呼吸周期及びある1つの心拍周期の1つのセットを対象に、区間領域(1,2),…,区間領域(2,1),…,区間領域(4,1),…,区間領域(4,5)のそれぞれにおけるT画像情報T(1,2),…,T画像情報T(2,1),…,T画像情報T(4,1),…,T画像情報T(4,5)を、区間領域(1,1)(参照区間領域)のT画像情報T(1,1)に重ね合わせ、1つの呼吸周期及び1つの心拍周期に対するT重ね合わせ画像情報を作成する。この画像情報の非線形な重ね合わせ処理は、非特許文献8に記載されているNon-rigid Image Registration法と呼ばれるアルゴリズムを用いて行われる。それらのT画像情報の重ね合わせによって、参照区間領域のT画像情報(例えばT画像情報T(1,1))と他の各区間領域のそれぞれのT画像情報(例えばT画像情報T(1,2),…,T画像情報T(4,1),…,T画像情報T(4,5))の間のそれぞれの相対変位情報、すなわち、変換行列情報(図1に示す変換行列情報Fj1に相当)を得ることができる。これらの相対変位情報は、記憶装置35に記憶される。この参照区間領域のT画像情報T(1,1)への重ね合わせ処理において、1つの呼吸周期及び1つの心拍周期の1つのセットにおける他の各区間領域の各T画像情報を用い、それらのT画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる。この処理は、T重ね合わせ画像情報の全ての画素に対して行われる。このような画素値の情報を有するT重ね合わせ画像情報は記憶装置35に記憶される。以上に述べたT重ね合わせ画像情報の作成処理は、呼吸周期及び心拍周期のセットごとに行われる。相対変位情報生成装置39は、PET検査の期間内の呼吸周期及び心拍周期のセットごとに、参照位相空間(参照区間領域)でのそれぞれのT重ね合わせ画像情報及び各変換行列情報を作成する。
【0107】
さらに、相対変位情報生成装置39は、呼吸周期及び心拍周期のセットごとに作成された参照区間領域に対する各T重ね合わせ画像情報を用い、これらの画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる処理を、ある1つのT重ね合わせ画像情報の全ての画素に対して実行する。このような画素値の足し合わせによって得られた最終T重ね合わせ画像情報は、統計精度が高く、より鮮明な画像情報となる。最終T重ね合わせ画像情報は、記憶装置35に記憶される。断層画像重畳装置40は、記憶装置35の二次元テーブル71に記憶されている各区間領域のE画像情報(例えば、E画像情報E(1,1),……,E画像情報E(4,5))、及び各区間領域の情報(例えば、区間領域(1,1),……,区間領域(4,5))を入力する。断層画像重畳装置37bは、ある1つの呼吸周期及びある1つの心拍周期の上記セットにおいて、上記した区間領域(1,2),…,区間領域(2,1),…,区間領域(4,1),…,区間領域(4,5)のそれぞれにおけるE画像情報E(1,2),…,E画像情報E(2,1),…,E画像情報E(4,1),…,E画像情報E(4,5)を、相対変位情報生成装置39によって求められたそれぞれの変換行列情報(図1に示す変換行列情報Fj1に相当)を用いて、図1に示す処理概念と同様に、区間領域(1,1)(参照区間領域)のE画像情報E(1,1)に非線形に重ね合わせ、1つの呼吸周期及び1つの心拍周期のセットに対する重ね合わせE画像情報を作成する。この画像情報の非線形な重ね合わせ処理は、上記したNon-rigid Image Registration法と呼ばれるアルゴリズムを用いて行われる。断層画像重畳装置40は、各区間領域の各E画像情報を用いて、これらのE画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる処理を、参照区間領域のE画像情報の全ての画素に対して実行する。得られた重ね合わせE画像情報は記憶装置35に記憶される。以上に述べた重ね合わせE画像情報の作成処理は、PET検査の期間内における呼吸周期及び心拍周期のセットごとに行われる。
【0108】
断層画像重畳装置40は、さらに、呼吸周期及び心拍周期のセットごとに作成された参照区間領域に対する各E重ね合わせ画像情報を用いて、これらの重ね合わせE画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる処理を、ある1つの重ね合わせE画像情報の全ての画素に対して実行する。このような画素値の足し合わせによって得られた最終の重ね合わせE画像情報は、統計精度が高く、より鮮明な画像情報となる。最終の重ね合わせE画像情報は、記憶装置35に記憶される。
【0109】
情報出力装置66は、各区間領域の各E画像情報及び各T画像情報,呼吸周期及び心拍周期のセットごとの各重ね合わせE画像情報及び各重ね合わせT画像情報、及び最終重ね合わせE画像情報及び最終重ね合わせT画像情報を、それぞれの画像情報を単独で、または複数種類の画像情報を一緒に、記憶装置35から読み出して表示装置33に出力する。表示装置33は、入力した画像情報を表示する。表示装置33に表示する画像情報は、オペレータがオペレータコンソールの入力装置から入力する画像情報表示指令に基づいて情報出力装置66が記憶装置35から読み出される。
【0110】
本実施例は、ある1つの第1体動位相区間及びある1つの第2体動位相区間によって特定される1つの体動位相区間領域(例えば参照区間領域)のT画像情報への他の体動位相区間領域(他の区間領域)のT画像情報の重ね合わせによって得られる相対変位情報、すなわち、変換行列情報を用いて、その1つの体動位相区間領域(参照区間領域)のE画像情報に上記の他の体動位相区間領域(他の区間領域)のE画像情報を重ね合わせるので、1つの呼吸周期及び1つの心拍周期のセットにおける各体動位相区間領域のE画像情報を全て重ね合わせることができる。このため、呼吸動及び心拍動の影響を受ける部位においてもより鮮明なE画像情報(最終E重ね合わせ画像情報)をより短時間に得ることができる。本実施例によって得られるより鮮明なE画像情報(最終E重ね合わせ画像情報)によれば、呼吸及び心拍の影響を受けて動く部位に存在する悪性腫瘍の診断を精度良く行うことができる。本実施例におけるこのE画像情報に期待される統計精度は12分のE計測に対応する。通常、12分のE計測を行えば、統計精度は十分に満足できる。また、この最終E重ね合わせ画像情報は、本実施例において、各体動位相区間領域における各T画像情報により呼吸動及び心拍動が補償されているため、ボケの少ない、定量性の高い鮮明な画像情報となっている。また、本実施例は、減弱補正時のT計測とE計測において被験者29の位置ずれが発生しないので、その位置ずれに伴うアーチファクトも発生しない。被検者29は、本実施例でのPET検査の期間において、安静な呼吸を続けることができ、息を止める必要がない。
【0111】
上記のように体動位相区間領域の各T画像情報に基づいて得られた相対変位情報を異なる体動位相区間領域のE画像情報の重ね合わせに利用することができるのは、E計測とT計測を並列して行うからであり、1つの検出器9で第1γ線及び第2γ線を検出することに起因する。1つの検出器9は、時間的にずれて第1γ線検出信号及び第2γ線検出信号を出力するケースが多い。これらのγ線検出信号を基に作成された第1パケット情報と第2パケット情報は、信号弁別装置31によってγ線検出信号のエネルギーに基づいて容易に弁別することができる。すなわち、信号弁別装置31が、ピークホールド回路(波高値生成装置)10fで得られた、γ線検出信号のエネルギーに相当する波高値を入力しているので、求めるピークホールド回路(波高値生成装置)10fで得られる、第1パケット情報と第2パケット情報を容易に仕分けすることができる。
【0112】
必要ならば、他の体動位相区間領域のE画像情報の画素値を参照位相区間領域(参照区間領域)のE画像情報の画素値に足し合わせる際に、非線形的にゆがめられるE画像情報の伸縮度合いを考慮して画素値を調整して足し合わせる処理を行うと、PET薬剤の集積度の定量性をさらに向上させることができる。
【0113】
オペレータコンソールに設けられた1つまたは複数の表示装置33に、同じ体動位相区間領域のE画像情報及びT画像情報または参照位相区間領域の重ね合わせT画像情報及び重ね合わせT画像情報を、最終重ね合わせE画像情報と共に表示することができる。このような表示により最終E重ね合わせ画像情報を評価することができる。
【0114】
尚、核医学診断装置においては、被験者からのガンマ線がある放射線検出器内で散乱され、別の放射線検出器にて吸収されることによって、複数の放射線検出器にエネルギーを附与する場合がある。このような場合に対し、二つ、あるいはそれ以上の放射線検出器での放射線検出情報を元に、散乱される前のガンマ線が被検体Pに投与した放射性薬剤からのガンマ線かどうかを判定し、そうであった場合は有効な信号として処理することが考えられる。以下、このような手法を散乱線処理と呼ぶ。核医学診断装置は、放射線検出器から出力された出力信号に基づいて、放射線検出器で散乱した放射線による複数の放射線信号を一つの放射線信号として特定する散乱線処理手段を有する。ここで散乱線処理手段は、パケットデータ生成器15,FPGA17のいずれでも良い。また、散乱線処理手段をデータ処理装置30の信号弁別装置31よりデータ処理の上流側に設置しても良い。散乱線処理により有効な信号が増えるため、精度の良い診断画像が期待できる。
【0115】
尚、上述した実施例では、陽電子放出断層撮影装置の例を示したが、SPECT装置でもよく、生体の機能画像を撮像できれば良い。また、2次元の断層像だけではなく、3次元の生体の機能画像と構造画像の関係にも同様に適用できる。上述した画像情報作成方法は、体動の影響で医療画像に影響が出るコンピュータ撮影画像に適用できる。つまり、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得る為に、ある周期を時間的に区間して得られる複数の第1位相区間と前記ある周期とは他の周期を時間的に区間して得られる複数の第2位相区間が個々に組み合わさって定まる複数の時間区間で第1断層画像情報を作成し、前記複数の時間区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2画像情報に他の前記時間区間の前記第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、前記ある1つの時間区間の前記第1画像情報に前記他の時間区間の前記第1画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成する画像処理装置の画像情報作成方法を行う。
【0116】
尚、上述した実施例では、E画像情報とT画像情報についての呼吸周期の分割数を3分割や8分割とし、心拍周期の分割数を4分割としたが、指定した任意の分割数とすることができる。また、呼吸周期の時間の分割は等分割の例を示したが、等分割でなくとも良く、ある分割区間の時間を他の分割区間の時間より短く、又は長くしても良い。例えば、体動の影響が大きい区間は時間を短くして、体動の影響が小さい区間は時間を長くすることにより、体動の影響が少ない区間と体動の影響が大きい区間を区別して、画像処理をすることができ、より鮮明な画像を得ることができる。心拍周期の分割も同様である。ある分割区間の時間を他の分割区間の時間より短く、又は長くした場合、式(3)の右辺にてnで割っている点について、nで割らずに、足された分の撮像時間で割ることで重ねあわせた画像を得ることができる。また、ある分割区間の時間を他の分割区間の時間より短く、又は長くした場合、図10の2次元テーブルの各升目の長さを時間単位で表示させると、各升目が正方形ではなく長方形の表となり、異なる体動の関係を把握しやすくることができる。
【0117】
呼吸位相区間及び心拍位相区間のセットで定まる区間領域について、全ての区間領域を重ね合わせに使う必要はなく、一部の区間領域を指定して重ね合わせに使っても良い。例えば、全ての区間領域の内、体動の影響が小さい区間領域である空気を吐き終わった時点を含む区間領域と空気を吸いきった時点を含む区間領域を指定して重ね合わせることにより、体動の影響の少ない画像で、かつ、早い計測が可能である。また、呼吸位相区間については指定せず、特定の心拍位相区間を指定することで心拍の動きのボケ防止を重視した画像を得ることができる。同様に、特定の呼吸位相区間について指定し、心拍位相区間については指定しなければ呼吸の動きのボケ防止を重視した画像を得ることができる。また、特定の呼吸位相区間と、特定の心拍位相区間を指定することで両方の体動によるボケ防止を重視した画像をえることができる。また、体動の影響が大きく、ボケの程度を表す指標が所定値を超えた画像区間について排除することで、早い計測を重要視しながら、画像の精度を向上させることができる。
【0118】
尚、上述した実施例では、生体の機能画像であるE画像情報と、生体の構造画像であるT画像情報を1台の撮像装置で撮影することにより体動の周期の同期を取る例を示したが、ある撮像装置で撮影した生体の機能画像と、別の撮像装置で撮影した生体の構造画像の体動の周期の同期を取ることもできる。例えば、機能画像の周期を特定し、構造画像の周期を特定し、それぞれの周期の開始点と周期の長さを揃える様に分割する区間を割り当てることにより機能画像と構造画像の同期を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】呼吸動補償方法の説明図である。
【図2】γ線源の旋回及び体動周期を示し、(a)はγ線源の旋回状態を示す説明図、(b)は体動周期を示す説明図である。
【図3】一実施例の陽電子放出断層撮影装置の概略構成図である。
【図4】図3に示す陽電子放出断層撮影装置の詳細構成図である。
【図5】図4に示す断層画像情報作成装置及び体動補償装置の詳細構成図である。
【図6】図3に示す撮像装置の縦断面図である。
【図7】検出器ユニットを撮像装置に装着する状態の説明図である。
【図8】図4に示す検出器ユニットの詳細構成を示す斜視図である。
【図9】図8に示すモジュール基盤の詳細構成を示す図である。
【図10】図4に示す記憶装置内の二次元テーブルを示す説明図である。
【符号の説明】
【0120】
1 陽電子放出断層撮影装置
2 撮像装置
3 ユニット支持部材
4 開口部
5 前面エンドシールド
6 検出器ユニット
7 モジュール基板
8 基板部材
9 検出器
10 アナログASIC
10a アナログ信号処理回路
10b タイミングピックオフ回路
10c チャージアンプ
10d 極性アンプ
10e バンドパスフィルタ
10f ピークホールド回路
11 ADC
12 ディジタルASIC
13 パケットデータ生成装置
14 時刻決定回路
15 パケットデータ生成器
16 データ転送回路
17 FPGA
18,24,25,C2 コネクタ
19 収納部材
19a 蓋部材
20 仕切り部材
21 電圧調整装置
22 第1領域
23 第2領域
26 放射線源
27 ベッド
28 呼吸モニタ装置
29 被検者
30 データ処理装置
31 信号弁別装置
32 同時計数装置
34 第2放射線処理装置
35 記憶装置
36 第1断層画像情報作成装置
37 第2断層画像情報作成装置
38 体動補償装置
39 相対変位情報生成装置
40 断層画像重畳装置
41 線源位置検出装置
42 線源回転制御装置
43 体動位相情報取得装置
44 位相情報付加装置
45 筐体
46 断層画像情報作成装置
48 放射線源装置
49 線源支持軸
51 移動装置
53 線源直進移動装置
54 線源旋回装置
55 回転駆動装置
56 回転部材
60 後面エンドシールド
67 心拍計測装置
71 二次元テーブル
72 区間領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある周期を時間的に区分して得られる複数の第1位相区間と前記ある周期とは他の周期を時間的に区分して得られる複数の第2位相区間が個々に組み合わさって定まる複数の時間区間で第1断層画像情報を作成し、
前記複数の時間区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、
前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2画像情報に他の前記時間区間の前記第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの時間区間の前記第1画像情報に前記他の時間区間の前記第1画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成することを特徴とする画像処理装置の画像情報作成方法。
【請求項2】
放射性薬剤に起因した第1放射線を入力するときにベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される複数の第1放射線検出信号より得られる複数の第1情報に基づいて、ある周期を時間的に区分して得られる複数の第1位相区間と前記ある周期とは他の周期を時間的に区分して得られる複数の第2位相区間が個々に組み合わさって定まる複数の時間区間で第1断層画像情報を作成し、
放射線源から放出される第2放射線を入力するときに前記複数の放射線検出器から出力される複数の第2放射線検出信号より得られる複数の第2情報に基づいて、前記時間区間で第2断層画像情報を作成し、
前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2断層画像情報に他の前記時間区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの時間区間の前記第1断層画像情報に前記他の時間区間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項3】
前記第1情報と前記第2情報が、前記第1放射線検出信号と前記第2放射線検出信号のエネルギーの違いにより弁別され、弁別された前記第1情報を用いて前記第1断層画像情報を作成し、弁別された前記第2情報を用いて前記第2断層画像情報を作成する請求項2に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項4】
前記第2断層画像情報間の相対変位情報は非線形の相対変位情報であり、前記非線形の相対変位情報を用いて前記重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする請求項2に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項5】
前記時間区間の前記第1断層画像情報の作成は、この時間区間の前記第2断層画像情報を用いてこの時間区間に該当する前記第1情報を減弱補正することによって行われる請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項6】
前記第1情報は前記第1放射線の第1検出時刻情報を含んでおり、前記第2情報は前記第2放射線の第2検出時刻情報を含んでおり、前記時間区間ごとの前記第1断層画像情報の作成は前記第1検出時刻情報により特定された前記第1情報を用いて行われ、前記時間区間ごとの前記第2断層画像情報の作成は前記第2検出時刻情報により特定された前記第2情報を用いて行われる請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項7】
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出し、検出された複数の放射線源位置情報を前記第2断層画像情報の作成に用いる請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項8】
放射性薬剤に起因した第1放射線を入力するときにベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される複数の第1放射線検出信号より得られる、前記第1放射線の第1検出時刻情報、前記第1放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第1位置情報及び前記第1放射線検出信号の第1エネルギー情報を含む複数の第1情報を生成し、
複数の前記第1情報に含まれる前記検出時刻情報に基づいて同時計数を行って、設定時間内で、前記第1放射線検出信号を出力した一対の前記放射線検出器を特定し、
特定された前記一対の放射線検出器の前記第1位置情報及び前記第1検出時刻情報に基づいて、ある周期を時間的に区分して得られる複数の第1位相区間と前記ある周期とは異なる他の周期を時間的に区分して得られる複数の第2位相区間が個々に組み合わさって定まる複数の時間区間で第1断層画像情報を作成し、
放射線源から放出される第2放射線を入力するときに前記複数の放射線検出器から出力される複数の第2放射線検出信号より得られる複数の第2情報を生成し、
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出し、
複数の前記第2情報及び検出された複数の放射線源位置情報に基づいて、前記複数の位相区間に対し前記位相区間ごとに第2断層画像情報を作成し、
前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2断層画像情報に他の前記時間区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの時間区間の前記第1断層画像情報に前記他の時間区間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項9】
前記第2情報は前記第2放射線の第2検出時刻情報、前記第2放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第2位置情報及び前記第2放射線検出信号の第2エネルギー情報を含んでおり、
前記第1情報と前記第2情報が前記第1エネルギー情報及び前記第2エネルギー情報によって弁別され、
前記同時計数が弁別された前記第1情報の前記第1検出時刻情報を用いて行われ、前記第2断層画像情報の作成が弁別された前記第2情報を用いて行われる請求項8に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項10】
前記放射線検出器は半導体放射線検出器である請求項2ないし請求項9のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項11】
被検体を乗せるベッドと、
前記ベッドの周囲を旋回する放射線源と、
前記ベッドの周囲に配置され、放射性薬剤に起因して前記被検体から放出される第1放射線を検出して第1放射線検出信号を出力し、前記放射線源から放出される第2放射線を検出して第2放射線検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
複数の前記第1放射線検出信号より得られる複数の第1情報に基づいて、前記被検体の呼吸周期を時間的に区分して得られる複数の第1体動位相区間と心拍周期を時間的に区分して得られる複数の第2体動位相区間が個々に組み合わさって定まる時間区間で第1断層画像情報を作成する第1断層画像情報作成装置と、
複数の前記第2放射線検出信号から得られる複数の第2情報に基づいて、前記複数の時間区間で第2断層画像情報を作成する第2断層画像情報作成装置と、
前記複数の時間区間のうちのある1つの前記時間区間の前記第2断層画像情報に他の前記時間区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求める相対変位情報生成装置と、
前記ある1つの時間区間の前記第1断層画像情報に前記他の時間区間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成する断層画像情報重ね合わせ装置とを備えたことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項12】
前記第1情報及び前記第2情報を入力し、前記第1情報及び前記第2情報を前記第1放射線検出信号と前記第2放射線検出信号のエネルギーの違いにより弁別する弁別装置を備え、前記第1断層画像情報作成装置は弁別された前記第1情報を用いて前記第1断層画像情報を作成し、前記第2断層画像情報作成装置は弁別された前記第2情報を用いて前記第2断層画像情報を作成する請求項11に記載の断層撮影装置。
【請求項13】
前記第1断層画像情報作成装置は、前記時間区間の前記第2断層画像情報を用いてこの時間区間に該当する前記第1情報を減弱補正することによって前記時間区間の前記第1断層画像情報の作成を行う請求項11または請求項12に記載の断層撮影装置。
【請求項14】
前記第1断層画像情報作成装置は、前記時間区間ごとの前記第1断層画像情報の作成を、前記第1情報に含まれる前記第1放射線検出信号の第1検出時刻情報により特定した前記第1情報を用いて行い、前記第2断層画像情報作成装置は、前記時間区間ごとの前記第2断層画像情報の作成を、前記第2情報に含まれる前記第2放射線検出信号の第2検出時刻情報により特定した前記第2情報を用いて行う請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項15】
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出する放射線源位置検出装置を備え、
前記第2断層画像情報作成装置は、前記第2断層画像情報の作成に検出された複数の放射線源位置情報を用いる請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項16】
前記放射線源を、前記ベッドの周囲を旋回させる回転装置と、
前記被検体の呼吸計測信号及び心拍計測信号を入力し、これらの計測信号によって得られる前記呼吸周期及び前記心拍周期に基づいて、前記放射線源の回転周期の情報を求める回転周期情報生成装置と、
前記回転周期情報に基づいて前記回転装置の回転を制御する回転制御装置とを備えた請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項17】
被検体を乗せるベッドと、
前記ベッドの周囲を旋回する放射線源と、
前記ベッドの周囲に配置され、放射性薬剤に起因して前記被検体から放出される第1放射線を検出して第1放射線検出信号を出力し、前記放射線源から放出される第2放射線を検出して第2放射線検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
前記第1放射線の第1検出時刻情報、前記第1放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第1位置情報及び前記第1放射線検出信号の第1エネルギー情報を含む第1情報を、前記複数の放射線検出器から出力される前記第1放射線検出信号から生成し、前記第2放射線より得られる第2情報を前記複数の放射線検出器から出力される前記第2放射線検出信号から生成する放射線信号処理装置と、
複数の前記第1情報に含まれる前記検出時刻情報に基づいて同時計数を行って、設定時間内で、前記第1放射線検出信号を出力した一対の前記放射線検出器を特定する同時計数装置と、
特定された前記一対の放射線検出器の各前記第1位置情報及び前記第1検出時刻情報に基づいて、前記被検体の呼吸周期を時間的に区分して得られる複数の第1体動位相区間と心拍周期を時間的に区分して得られる複数の第2体動位相区間が個々に組み合わさって定まる時間区間で第1断層画像情報を作成する第1断層画像情報作成装置と、
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出する放射線源位置検出装置と、
複数の前記第2情報及び検出された複数の放射線源位置情報に基づいて、前記複数の時間区間で第2断層画像情報を作成する第2断層画像情報作成装置と、
前記複数の時間区間のうちある1つの前記時間区間の前記第2断層画像情報に他の前記時間区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求める相対変位情報生成装置と、
前記ある1つの時間区間の前記第1断層画像情報に前記他の時間区間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成する断層画像情報重ね合わせ装置とを備えたことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項18】
前記第1放射線検出信号より得られ、前記第2放射線の第2検出時刻情報、前記第2放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第2位置情報及び前記第2放射線検出信号の第2エネルギー情報を含む前記第2情報を、前記複数の放射線検出器から出力される前記第2放射線検出信号から生成する前記放射線信号処理装置と、
前記第1情報及び前記第2情報を入力し、前記第1情報及び前記第2情報を前記第1エネルギー情報及び前記第2エネルギー情報によって弁別する弁別装置を備え、
前記同時計数装置は、前記同時計数を弁別された前記第1情報の前記第1検出時刻情報を用いて行い、
前記第2断層画像情報作成装置は、前記第2断層画像情報の作成を弁別された前記第2情報を用いて行う請求項17に記載の断層撮影装置。
【請求項19】
前記放射線検出器は半導体放射線検出器である請求項11ないし請求項18のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項20】
前記半導体放射線検出器がカドミウムテルル(CdTe),ガリウムヒ素(GaAs),カドミウムテルル亜鉛(CZT),沃化鉛(PbI2),臭化タリウム(TlBr)のいずれか、またはその組み合わせである請求項19に記載の断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−236793(P2009−236793A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85185(P2008−85185)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】