説明

画像拡大方法及び画像拡大装置

【課題】輪郭強調法を用いた擬似輪郭の発生しない高品質な拡大方法及び装置を実現し、且つ、回路規模の増加を抑え、且つ、消費電力を抑えることを可能とする画像拡大方法及び画像拡大装置を提供することである。
【解決手段】バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出して重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出し、補間画素を算出する際に用いた周辺4画素の輪郭値を求め、周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定し、判定の結果が、輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えているときは、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像拡大方法及び画像拡大装置に関し、特に画像を拡大する際に輪郭調を行う画像拡大方法及び画像拡大装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の拡大を行うときには画素数が増加し、拡大後の座標における画素(補間画素という)に与える階調値(画素値という)は元画像の座標における補間画素の周辺の局所的な複数(例えば4つ)の画素の画素値を元に算出される。
画像を拡大する際の補間方法には、ニアレストネイバー(nearest neighbor)法 、バイリニア(biliner)法、バイキュービック(bicubic)法等がある。ニアレストネイバー法は、回路規模が小さくて済むが画像の品質が低く、バイキュービック法では、回路規模が大きいが品質が高い、バイリニア法では、回路規模、品質共にニアレストネイバー法、バイキュービック法の中間ぐらいに位置する。
【0003】
ところで、携帯端末向けの仕様で画像拡大を実施する場合、回路規模の増加は、消費電力の増加につながり、また、コストが増大する。このため、バイリニア法を利用する場合が多い。しかし、バイリニア法は、画素の輪郭がぼやける欠点がある。この問題を解決するため、輪郭強調法を用いてボケを軽減するが、擬似輪郭が発生し、品質が低下する。擬似輪郭は、輪郭強調によって実際のエッジより広い範囲にまで強調がかかることによって生じる。
携帯端末では、自然画と文字の両方を同時に出力し、拡大することが多く、輪郭強調法を実施し、バイリニア法を行った場合、擬似輪郭による品質低下が起こる問題があった。
【0004】
従来の画像拡大装置としては、例えば特許文献1のように、輝度変化量検出部によって拡大する2画素間の輝度の差を検出し、この値によって補間係数に重み付けを行うことによって、補間係数が距離にのみ依存し拡大する2点間で輝度が平均化して拡大画像がぼやけるのを解消する提案をしているものがある。
しかしながら、特許文献1では、バイリニア法によるボケに対して輪郭強調法を実施し、その際に発生する擬似輪郭の問題を解決するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−78552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、輪郭強調法を用いた擬似輪郭の発生しない高品質な拡大方法及び装置を実現し、且つ、回路規模の増加を抑え、且つ、消費電力を抑えることを可能とする画像拡大方法及び画像拡大装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し、前記補間画素を算出する際に用いた前記周辺4画素の輪郭値を求め、前記周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定し、前記判定の結果が、輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えているときは、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、前記拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行い、変更された重み付けにより前記拡大後の位置の補間画素の値を算出することを特徴とする画像拡大方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し、前記補間画素を算出する際に用いた前記周辺4画素の輪郭値を求め、前記周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定し、前記判定の結果が、周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えているときは、輪郭値に応じて、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行い、変更された重み付けにより前記拡大後の位置の補間画素の値を算出することを特徴とする画像拡大方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率に応じて拡大後の補間画素の位置の情報を生成して出力する補間位置生成部と、前記補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を算出する輪郭値算出部と、前記周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定する輪郭値判定部と、バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであって、前記輪郭値判定部での判定結果が閾値を超えていれば、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う拡大時画素生成部とを具備したことを特徴とする画像拡大装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率に応じて拡大後の補間画素の位置の情報を生成して出力する補間位置生成部と、前記補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を算出する輪郭値算出部と、前記周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定する輪郭値判定部と、バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであって、前記輪郭値判定部での判定結果が閾値を超えていれば、前記輪郭値に応じて、バイリニア法で求められる拡大後の位置の前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う拡大時画素生成部とを具備したことを特徴とする画像拡大装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、輪郭強調法を用いた擬似輪郭の発生しない高品質な拡大方法及び装置を実現し、且つ、回路規模の増加を抑え、且つ、消費電力を抑えることを可能とする画像拡大方法及び画像拡大装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像拡大方法における輪郭強調方法を説明する図。
【図2】本発明の第1の実施形態の画像拡大方法を説明するローチャート。
【図3】第1の実施形態の画像拡大方法を実現する、ハードウェアとしての画像拡大装置の構成の一例を示すブロック図。
【図4】輪郭値算出方法の一例であるラプラシアン法を説明する図。
【図5】バイリニア法を用いた画像拡大時の補間画素値生成方法を説明する図。
【図6】本発明の第2の実施形態の画像拡大方法における輪郭強調方法を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施形態の画像拡大方法を説明するローチャート。
【図8】第2の実施形態の画像拡大方法を実現する、ハードウェアとしての画像拡大装置の構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図3、図6乃至図8で、本発明の第1,第2の実施形態の主要部を説明する前に、図4及び図5を参照して本発明の第1,第2の実施形態で用いる輪郭値算出法、及び、画像拡大時におけるバイリニア法による補間画素値生成方法について説明する。
【0014】
図4は、画像を拡大するに際に、入力される元画像の映像信号を、水平及び垂直ラインの交点に配置される複数の画素で表している。水平方向の点線は画像の各ラインを示している。各ライン上の丸印は画素の位置を示しており、ライン上にない×印は拡大画像の1画素に対応した元画像上における補間画素位置を示し、斜線を施した丸印は補間画素の生成に用いる周辺の4つの画素を示している。画素が左上を原点とするxy平面に並んでいると見なし、座標(x,y)に相当する複数の画素としてp00〜p33を示している。
【0015】
まず、図4で輪郭値算出方法の一例であるラプラシアン法を説明する。図4では、対象となる画素の輪郭情報の大小を表す輪郭値を、対象画素と対象画素の周りの8画素との9画素から算出する。対象画素を8倍、周辺画素を−1倍して、9画素を全て加算する。具体的には、対象画素をp11、その周辺画素をp00、p01、p02、p10、p12、p20、p21、p22とすると、対象画素p11の輪郭値eは以下の式(1)で求められる。
【0016】
e = p11*8 − (p00+p01+p02+p10+p12+p20+p21+p22) …(1)
但し、*は乗算を示している。
【0017】
次に、図5でバイリニア法による補間画素値生成方法を説明する。拡大倍率から拡大後の位置を算出すると、拡大前の元画像の画素D1(×印にて示す)の周辺4画素が特定できる。周辺4画素の画素データをd00、d01、d10、d11とし、d00からの距離を水平方向はa(0≦a≦1)、垂直方向はb(0≦b≦1)とすると、求める補間画素D1の画素値dataは以下の式(2)で求められる。
【0018】
data = (1-b)*((1-a)*d00 + a*d10) + b*((1-a)*d01 + a*d11) …(2)
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の画像拡大方法における輪郭強調方法を説明する図である。
図1において、拡大後の座標における補間画素の位置に相当する元画像の座標での補間画素D1の位置を×印で示してある。補間画素D1の位置が左上の点d00から水平にa、垂直にbの位置(a,b)にあるとすると、補間画素D1の画素値dataはその周辺4画素d00〜d11から前述の式(2)から求められる。
【0019】
本第1の実施形態では、周辺4画素d00,d01,d10,d11の4つの輪郭値eのうちの1つ以上が、輪郭値eに対して設けられる閾値を超える場合は、補間画素D1の位置をその周辺4画素のうちの最近傍画素(図1ではd00)に近づくように変更する。ここでは、補間画素D1の周辺4画素d00〜d11の最近傍点d00の方向に距離を例えば1/2とする。このとき、最近傍画素d00からの距離が1/2とされることによって、補間画素D1がD1′の位置(a/2,b/2)に移動し、移動した点の画素D1′の重み付けが変更されることになる。なお、輪郭値eは図4で説明したように周辺4画素d00〜d11のうちの各画素についての周辺8画素から算出されるので、対象画素によって変わる。閾値は対象画素の輪郭値eの大小を判別するための値であって、固定値である。
【0020】
左上の点d00からの補間画素D1の距離が水平方向にa、垂直方向にbとし、補間画素D1の位置を最近傍画素に近づけた位置の補間画素D1′の距離が水平方向にA、垂直方向にBとすると以下の式(3)となる。
【0021】
a<0.5 A=a/2
a≧0.5 A=0.5+a/2
b<0.5 B=b/2 …(3)
b≧0.5 B=0.5+b/2
求める補間画素D1′の画素値dataは以下の式(4)となる。
【0022】
data = (1-B)*((1-A)*d00 + A*d10) + B*((1-A)*d01 + A*d11) …(4)
拡大後の座標における補間画素の位置に対応する元画像の座標での補間画素の周辺4画素の最近傍画素方向に補間画素の位置を近づけることによって重み付けの重みを変えることによって、その補間画素がより最近傍画素の値に近づくよう重みが変更される結果、輪郭が強調されることになる。より具体的には、周辺4画素のうちの、補間画素に対する最近傍の画素の輪郭値が高い(例えば閾値よりも高い)場合には、補間画素が階調値が高い即ち明るい画素に距離的に近づくことになり、補間画素の重み付けの重みも明るい方の値に変更され、周辺の他の画素と比べて相対的に輪郭が強調されたように見えることになる。同様に、周辺4画素のうちの、補間画素に対する最近傍の画素の輪郭値が低い(例えば閾値よりもかなり低い)場合には、補間画素が階調値が低い即ち暗い画素に距離的に近づくことになり、補間画素の重み付けの重みも暗い方の値に変更され、周辺の他の画素と比べて相対的に輪郭が強調されたように見えることになる。また、周辺4画素のうちの、補間画素に対する最近傍の画素の輪郭値が高低レベルの中間レベルの場合には、補間画素が階調値が中間値即ち中間の明るさの画素に距離的に近づくことになり、補間画素の重み付けの重みはも中間レベルの値で変化し、周辺の他の画素と比べて格別に強調されたように見えることはない。
【0023】
なお、閾値を越える個数の条件としては、1つ以上のほか、2つ以上、3つ以上、或いは、4つ全てと変えても良い。
【0024】
図1の輪郭強調方法では、輪郭値はその値に比率を掛けたものを、対象画素に対して加算したり掛け算したりして画素の値を変えることによって、輪郭強調するのではなくて、輪郭強調すべき補間画素の最近傍の画素の輪郭値eを求め、輪郭値eが閾値を超えていれば、それは輪郭強調されるべきものであると判定するのに輪郭値を用いており、その判定結果に基づいて、すでに決まっている補間画素の位置を最近傍画素に近づく方向に移動させることによって、距離比に基づいて重み付けを重い方に変更して最近傍画素の輪郭強調をさらに強めるようにしている。
【0025】
図2は図1の画像拡大方法を説明するフローチャートである。
まず、ステップS1では、バイリニア法で、拡大後の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出する。つまり、拡大後の座標における画素の位置を拡大倍率で除算して得た実数値を元画像の座標における補間画素の位置とする。
【0026】
ステップS2では、補間画素の周辺4画素の輪郭値の絶対値を求める。
ステップS3では、周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定する。
【0027】
ステップS4では、ステップS3での判定結果が、輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えているときは、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う。つまり、周辺4画素の輪郭値のうちの1つでも閾値を超えると、補間画素の周辺4画素の最近傍点方向の距離を短くする(例えば1/2とする)ことによって、周辺4画素の最近傍画素に近づけるように重み付けを変更する。
ステップS5では、変更した重み付けに基づいて、拡大後の補間画素の値を算出する。
【0028】
なお、ステップS3で、周辺4画素の輪郭値の1つも閾値を超えていない場合は、周辺4画素の重み付けを変更することなくそのまま終了する。
【0029】
以上述べた画像拡大方法では、周辺4画素の輪郭値のうちの1つでも閾値を超えると、補間画素の周辺4画素に対する最近傍点方向の距離を1/2とするものであったが、1/2に限定されるものではなく、一般的には1/n(但しn>1)であれば良い。
【0030】
また、重み付けを変更する際の判定基準として周辺4画素の輪郭値のうちの1つでも閾値を超えた場合としているが、輪郭値が閾値を超える個数に応じて重み付けを変更してもよい。すなわち、周辺4画素の輪郭値が閾値を1つ、2つ、3つ、4つと超える数が増えるのに従い、最近傍画素との距離を1/2、1/3、1/4、1/5と変更することによって輪郭値が閾値を超える個数に応じて重み付けを順次に重くするように変更してもよい。
【0031】
また、周辺4画素の最大輪郭値によりnを変更しても良い。輪郭値の最大は、周辺8画素が=0、中心点が255の場合であり2040となる。
例えば、比例して変更する場合でありnが最大8の場合であれば、0-255の場合であればn=2、256−511の場合であればn=3、...、1792−2047の場合であればn=8となる。
また、輪郭値の最大bit毎にnを決めても良い。例えば、輪郭値が1024-2047(100_0000_0000b - 111_1111_1111b、すなわちbit9が1の場合)の場合n=8、輪郭値が512−1023(010_0000_0000b - 011_1111_1111b)の場合n=7、輪郭値が256−511(001_0000_0000b - 001_1111_1111b)の場合はn=6、...としても良い。
【0032】
図3は図2の画像拡大方法を実現する、ハードウェアとしての画像拡大装置の構成の一例を示している。
図3に示す画像拡大装置10は、入力映像信号の入力端子11と、4個のラインメモリー12a〜12dを含むメモリー部12と、補間位置生成部13と、輪郭値算出部14と、輪郭値判定部15と、重み付け変更部16-1を含む拡大時画素生成部16と、出力映像信号の出力端子17とを備えている。
【0033】
入力端子11を介して入力される入力映像信号は、メモリー部12に供給される。メモリー部12は、並列接続した4個のラインメモリー12a〜12dを有している。ラインメモリー12a〜12dは、映像信号を4ライン分蓄えることができる。メモリー部12からの複数の映像信号は、輪郭値算出部14に供給されるようになっている。また、ラインメモリー12b,12cからの映像信号は拡大時画素生成部16に供給されるようになっている。
【0034】
補間位置生成部13は、図示しない制御部より例えば拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率等に応じて補間すべき補間位置の情報を生成して、輪郭値算出部14及び拡大時画素生成部16に出力する。
輪郭値算出部14は、補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を式(1)により算出する。
【0035】
輪郭値判定部15は、周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定する。ここで、閾値は画素の輪郭値に対して設定された固定の値である。
【0036】
拡大時画素生成部16は、バイリニア法で、拡大後の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであるが、重み付け変更部16-1を備えており、輪郭値判定部15での判定結果が閾値を超えていれば、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う。
【0037】
第1の実施形態によれば、補間画素の周辺4画素のうちの最近傍の画素データの重みが増し、輪郭が強調される結果となる。
輪郭強調法で求められた周辺4画素のうちの少なくとも1つの輪郭値が閾値を超えていれば、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することで、輪郭強調法を用いた擬似輪郭の発生しない高品質な拡大方法及び装置を実現でき、且つ、回路規模の増加を抑え、且つ、消費電力を抑えることを可能となる。
【0038】
[第2の実施形態]
図6は本発明の第2の実施形態の画像拡大方法における輪郭強調方法を説明する図である。
図6において、拡大後の座標における補間画素の位置に相当する元画像の座標での補間画素D1の位置を×印で示してある。補間画素D1の位置が左上の点d00から水平にa、垂直にbの位置(a,b)にあるとすると、補間画素D1の画素値dataはその周辺4画素d00〜d11から前述の式(2)から求められる。
【0039】
本第2の実施形態では、補間画素D1の周辺4画素d00,d01,d10,d11のうちの最近傍の画素(図ではd00)の輪郭値eが閾値を超える場合、輪郭値eの大きさに反比例して距離を短くする。このとき、最近傍画素d00からの距離が1/(e/Denom)とされることによって、補間画素D1がD1′の位置{a/(e/Denom),b/(e/Denom)}に移動し、移動した点の画素D1′の重み付けが変更されることになる。なお、輪郭値eは周辺4画素の各画素についてその周辺8画素から算出されるので、周辺4画素の各画素によって変わる。閾値は輪郭値eの大小を判別するための固定の値である。
【0040】
左上の点からの距離が水平方向にa、垂直方向にbとし、補間画素D1の位置を最近傍画素に近づけた位置の補間画素D1′の距離が水平方向にA、垂直方向にBとすると以下の式(5)となる。
【0041】
a<0.5 A=a/(e/Denom)
a≧0.5 A=0.5+a/ (e/Denom)
b<0.5 B=b/(e/Denom) …(5)
b≧0.5 B=0.5+b/ (e/Denom)
Denomは適切な固定の値とする。なお、Denomはその設定される値によってb/ (e/Denom)の分母(e/Denom)のeの値を除算して変えることになり、Denomの値の大小によって重み付けの重みA又はBが変わっていくが、通常は適当な値に固定しておく。例えば、設定値Denomを100にすると、輪郭値eが200又は300の場合、e/Denomの値は2又は3となる。e/Denomの値が2ということは、第1の実施形態と同様に距離がa/2になる。e/Denomの値が3になるということは、距離がa/3となって近傍画素d00に近づくことを意味する。
【0042】
求める補間画素D1′の画素値dataは以下の式(6)となる。
data = (1-B)*((1-A)*d00 + A*d10) + B*((1-A)*d01 + A*d11) …(6)
図7は第2の実施形態の画像拡大方法を説明するフローチャートである。
まず、ステップS11では、バイリニア法で、拡大後の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出する。つまり、拡大後の座標における画素位置を拡大倍率で除算して得た実数値を元画像の座標における補間画素の位置とする。
ステップS12では、補間画素の周辺4画素の輪郭値の絶対値を求める。
ステップS13では、周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定する。
【0043】
ステップS14では、ステップS3での判定結果が、周辺4画素の最近傍の輪郭値が閾値を超えているときは、輪郭値に応じて、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う。つまり、周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えていると、補間画素の周辺4画素の最近傍の輪郭値の大きさに反比例して最近傍点方向の距離を短くすることによって、周辺4画素の最近傍画素に近づけるように重み付けを変更する。
ステップS15では、変更した重み付けに基づいて、拡大後の補間画素の値を算出する。
【0044】
なお、ステップS13で、周辺4画素の最近傍の輪郭値が閾値を超えていない場合は、周辺4画素の重み付けを変更することなくそのまま終了する。
【0045】
図8は図7の画像拡大方法を実現する、ハードウェアとしての画像拡大装置の構成の一例を示している。
図8に示す画像拡大装置10Aは、入力映像信号の入力端子11と、4個のラインメモリー12a〜12dを含むメモリー部12と、補間位置生成部13と、輪郭値算出部14と、輪郭値判定部15Aと、重み付け変更部16A-1を含む拡大時画素生成部16Aと、出力映像信号の出力端子17とを備えている。
【0046】
入力端子11を介して入力される入力映像信号は、メモリー部12に供給される。メモリー部12は、並列接続した4個のラインメモリー12a〜12dを有している。ラインメモリー12a〜12dは、映像信号を4ライン分蓄えることができる。メモリー部12からの複数の映像信号は、輪郭値算出部14に供給されるようになっている。また、ラインメモリー12b,12cからの映像信号は拡大時画素生成部16に供給されるようになっている。
【0047】
補間位置生成部13は、図示しない制御部より例えば拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率等に応じて補間すべき補間位置の情報を生成して、輪郭値算出部14及び拡大時画素生成部16Aに出力する。
輪郭値算出部14は、補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を式(1)により算出する。
【0048】
輪郭値判定部15Aは、周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定する。ここで、閾値は画素の輪郭値に対して設定された固定の値である。
【0049】
拡大時画素生成部16Aは、バイリニア法で、拡大後の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであるが、重み付け変更部16A-1を備え、図示しない制御部によりDenomが設定可能となっており、輪郭値判定部15Aでの判定結果が閾値を超えていれば、輪郭値(具体的にはe/Denom)に応じて、バイリニア法で求められる拡大後の位置の周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う。
【0050】
第2の実施形態によれば、補間画素の周辺4画素のうちの最近傍の画素データの重みが増し、輪郭が強調される結果となる。
輪郭強調法で求められた周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えていれば、バイリニア法で求められる周辺4画素の重み付けを変更することで、輪郭強調法を用いた擬似輪郭の発生しない高品質な拡大方法及び装置であり、且つ、回路規模の増加を抑え、且つ、消費電力を抑えることを可能となる。
【0051】
本発明は、携帯電話機やデジタルカメラなどの携帯端末たげでなく、画像を拡大して表示するあらゆる電子及び電気機器に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10,10A…画像拡大装置
12…メモリー部
13…補間位置生成部
14…輪郭値算出部
15,15A…輪郭値判定部
16,16A…拡大時画素生成部
16-1,16A-1…重み付け変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し、
前記補間画素を算出する際に用いた前記周辺4画素の輪郭値を求め、
前記周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定し、
前記判定の結果が、輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えているときは、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、前記拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行い、変更された重み付けにより前記拡大後の位置の補間画素の値を算出する
ことを特徴とする画像拡大方法。
【請求項2】
バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し、
前記補間画素を算出する際に用いた前記周辺4画素の輪郭値を求め、
前記周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定し、
前記判定の結果が、周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えているときは、輪郭値に応じて、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行い、変更された重み付けにより前記拡大後の位置の補間画素の値を算出する
ことを特徴とする画像拡大方法。
【請求項3】
前記周辺4画素の重み付けの変更は、前記周辺4画素の補間画素に対する最近傍点方向に距離を1/n、但しn>1とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像拡大方法。
【請求項4】
拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率に応じて拡大後の補間画素の位置の情報を生成して出力する補間位置生成部と、
前記補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を算出する輪郭値算出部と、
前記周辺4画素の輪郭値の少なくとも1つが閾値を超えたか否かを判定する輪郭値判定部と、
バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであって、前記輪郭値判定部での判定結果が閾値を超えていれば、バイリニア法で求められる前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う拡大時画素生成部と、
を具備したことを特徴とする画像拡大装置。
【請求項5】
拡大倍率情報が入力されており、拡大倍率に応じて拡大後の補間画素の位置の情報を生成して出力する補間位置生成部と、
前記補間画素の周辺4画素の各々の輪郭値を算出する輪郭値算出部と、
前記周辺4画素の最近傍の画素の輪郭値が閾値を超えたか否かを判定する輪郭値判定部と、
バイリニア法で、拡大後の補間画素の位置に相当する元画像の位置の周辺4画素との距離を算出し重み付けを求めることによって、拡大後の位置の補間画素の値を算出するものであって、前記輪郭値判定部での判定結果が閾値を超えていれば、前記輪郭値に応じて、バイリニア法で求められる拡大後の位置の前記周辺4画素の重み付けを変更することによって、拡大後の位置の補間画素の輪郭強調を行う拡大時画素生成部と、
を具備したことを特徴とする画像拡大装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218312(P2010−218312A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65288(P2009−65288)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】