説明

画像符号化装置、画像形成装置およびプログラム

【課題】同一色版の画像データ内のみで画素値を予測する場合と比較して、圧縮率を高くする。
【解決手段】予測係数決定部311〜3124は、CMYKの4つの色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数を決定する。最適係数選択部32は、決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択する。予測処理部33は、選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像符号化装置、画像形成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像の方向特徴によって決まる所定の幾何構造領域内にある要素個々の相関関係を評価し、要素間の相関を最大とする最適値を算出し、この算出された最適値に基づき対象要素のDPCM符号化を行い、生成されたDPCM符号化画像信号をエントロピー符号化して無損失圧縮画像を出力する画像圧縮装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−94995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、同一色版の画像データ内のみで画素値を予測する場合と比較して、圧縮率を高くすることが可能な画像符号化装置、画像形成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[画像符号化装置]
請求項1に係る本発明は、印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する複数の決定手段と、
前記複数の決定手段によりそれぞれ決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化する符号化手段とを備えた画像符号化装置である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記決定手段が、注目画素の画素値を予測する際に、注目画素と同一色版内の周辺の複数画素に適用する予測係数として固定の予測係数を用い、他の色版における注目画素と同一座標の画素に適用する予測係数のみを変化させて、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する請求項1記載の画像符号化装置である。
【0007】
請求項3に係る本発明は、前記複数の決定手段毎に設定されている予測式が、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を用いた予測を行わないよう設定されている請求項1または2記載の画像符号化装置である。
【0008】
請求項4に係る本発明は、前記複数の決定手段毎に設定されている予測式が、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を常に用いて予測するよう設定されている請求項1または2記載の画像符号化装置である。
【0009】
[画像形成装置]
請求項5に係る本発明は、印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する複数の決定手段と、
前記複数の決定手段によりそれぞれ決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化する符号化手段と、
前記符号化手段により符号化された画像データを格納する格納手段と、
前記格納手段により格納されている画像データを復号する復号手段と、
前記復号手段により復号された画像データに基づいて画像を出力する画像出力手段とを有する画像形成装置である。
【0010】
[プログラム]
請求項6に係る本発明は、印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定するステップと、
決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択するステップと、
選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出するステップと、
算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によれば、同一色版の画像データ内のみで画素値を予測する場合と比較して、圧縮率を高くすることが可能な画像符号化装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る発明により得られる効果に加えて、全ての予測係数を変化させてある条件を満たす予測係数を決定する場合と比較して、ある条件を満たす予測係数を決定する際の各決定手段における演算量を削減することが可能な画像符号化装置を提供することができるという効果が得られる。
【0013】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1または2に係る発明により得られる効果に加えて、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を用いた予測を行わないよう設定されていない場合と比較して、予測係数の決定や注目画素の画素値を予測する際の演算量を削減することが可能な画像符号化装置を提供することができるという効果が得られる。
【0014】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1または2に係る発明により得られる効果に加えて、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を用いた予測を行わないよう設定されていない場合と比較して、注目画素の画素値を予測する際の精度を向上することが可能な画像符号化装置を提供することができるという効果が得られる。
【0015】
請求項5に係る本発明によれば、同一色版の画像データ内のみで画素値を予測する場合と比較して、圧縮率を高くすることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0016】
請求項6に係る本発明によれば、同一色版の画像データ内のみで画素値を予測する場合と比較して、圧縮率を高くすることが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の画像形成システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の画像形成システムにおける画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態の画像形成システムにおける画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態における画像符号化装置21の構成を示すブロック図である。
【図5】図4中の予測係数決定部311〜3124の構成を示すブロック図である。
【図6】ある座標位置に注目画素を設定した場合に、CMYKの各色版データにおいて注目画素と、その注目画素の周辺の画素の一例を示す図である。
【図7】画像データが4つの印刷色CMYKの色版データにより構成されている場合における各色版間での参照順の設定例を示す図である。
【図8】図7に示したグループ1の予測式の具体例を説明するための図である。
【図9】図7に示したグループ2の予測式の具体例を説明するための図である。
【図10】画像データが3つの色RGBの色版データにより構成されている場合における各色版間での参照順の設定例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態における画像復号装置22の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の第1の実施形態の画像形成システムの構成を示すブロック図である。
本発明の第1の実施形態の画像形成システムは、図1に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された画像形成装置10、40、および端末装置20により構成される。端末装置20は、印刷データを生成して、ネットワーク30経由にて生成した印刷データを画像形成装置10、40に対して送信する。画像形成装置10、40は、端末装置20から送信された印刷データを受け付けて、印刷データに応じた画像を用紙上に出力する。なお、画像形成装置10、40は、印刷(プリント)機能、スキャン機能、複写(コピー)機能、ファクシミリ機能等の複数の機能を有するいわゆる複合機と呼ばれる装置である。また、画像形成装置10、40は、相互に画像データを送信する機能や、端末装置20に対して画像データを送信する機能を有している。
【0020】
次に、本実施形態の画像形成システムにおける画像形成装置10のハードウェア構成を図2に示す。なお、画像形成装置10と画像形成装置40の構成は同一であるため、画像形成装置40の説明は省略する。
【0021】
画像形成装置10は、図2に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)14、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UI)装置15、スキャナ16、プリントエンジン17を有する。これらの構成要素は、制御バス18を介して互いに接続されている。
【0022】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御する。
なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0023】
図3は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態の画像形成装置10は、図3に示されるように、画像符号化装置21、画像復号装置22、入出力インタフェース(IF)23、ユーザに対して各種情報を表示する表示装置24、画像読取部25、記憶装置26、画像出力部27、制御部28を備えている。
【0024】
入出力IF(インタフェース)23は、画像形成装置40、端末装置20との間のデータ送受信を行う。画像読取部25は、検出された原稿のサイズに基づいて原稿画像を読み取り画像データに変換する。
【0025】
記憶装置26は、画像読取部25により読み取られた画像データや、入出力IF23を介して受信した画像データ等を記憶する。
【0026】
画像符号化装置21は、画像読取部25により読み取られた画像データや、入出力IF23を介して受信した画像データを符号化することにより圧縮して記憶装置26に記憶させる。
【0027】
画像復号装置22は、記憶装置26に記憶されている符号化された画像データを復号して元の画像データに戻す処理や、他の画像形成装置40から送信されてきた画像データが符号化されていた場合、その符号化されている画像データを復号する等の処理を行う。
【0028】
画像出力部27は、出力指示がされた画像データを指定されたサイズの印刷用紙上に出力する。記憶装置26に符号化された状態で記憶されている画像データの出力が指示された場合には、符号化された画像データは画像復号装置22によって復号された後に画像出力部27により出力される。
【0029】
制御部28は、画像符号化装置21〜画像出力部27等の動作を制御することにより、印刷処理、複写処理等の各種処理を実行する。
【0030】
次に、本実施形態における画像符号化装置21の構成について説明する。図4は、図3中に示した画像符号化装置21の構成を示すブロック図である。
【0031】
本実施形態の画像符号化装置21は、図4に示されるように、24の予測係数決定部311〜3124と、最適係数選択部32と、予測処理部33と、予測残差符号化部34と、グループ情報符号化部35と、予測係数符号化部36とを備えている。
【0032】
予測係数決定部311〜3124は、それぞれ、CMYKの印刷色毎の4つの色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数を決定する。なお、予測係数決定部311〜3124には、24のグループに分けられた異なる予測式がそれぞれ設定されている。
【0033】
ここで、ある条件以下となるような予測係数を決定する具体的な方法としては、予測残差をErrorとした場合、誤差電力E=Error2が最少となるような予測係数の決定方法が知られている。この誤差電力Eを最少化するような予測係数は、正規方程式により解析的に求めることができ、予測係数を一意に決定することができる。この方法は、MMSE(Minimum Mean Square Error)法(平均二乗誤差最少化法)と呼ばれている。また、他の予測係数の決定方法としては、最急降下法や組み合わせ最適化アルゴリズム法を用いるようにしてもよい。
【0034】
さらに、誤差電力を用いた予測係数の決定方法以外に、出力符号量や残差情報量を用いた方法を用いるようにしても良い。これらの方法には公知である様々な方法を利用することができる。
【0035】
また、誤差電力等を最少化するような予測係数を決定するような方法は、圧縮率を高めるためには好ましいが演算量が膨大になる。そのため、予測係数の全てのパラメータを変化させるのでははく、パラメータを変化させた予測係数のセットを予め準備しておき、その予測係数のセットの中から最も適当なものを選択するようにしてもよい。実際のCPU演算能力を考えるとこの方法が最も合理的である。
【0036】
なお、予測係数決定部311〜3124のそれぞれにおける予測係数の決定方法の詳細については後述する。
【0037】
最適係数選択部32は、予測係数決定部311〜3124によりそれぞれ決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を最適な予測係数として選択する。なお、最適係数選択部32は、選択した予測式を特定するための情報として、グループ番号等のグループ情報を予測処理部33に出力する。ここで一定の条件とは、予測係数決定部311〜3124において算出された誤差電力Eが最少となることや、符号量が最少となることを用いることができる。
【0038】
予測処理部33は、最適係数選択部32により選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する。
【0039】
予測残差符号化部34は、予測処理部33により算出された予測残差を符号化する。そして、グループ情報符号化部35は、予測処理の際に使用した予測式の情報(グループ情報)を符号化し、予測係数符号化部36は、予測処理の際に使用した予測係数を符号化する。
【0040】
つまり、予測残差符号化部34、グループ情報符号化部35、および予測係数符号化部36は、予測処理部33により算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化する。
【0041】
次に、図4に示した予測係数決定部311〜3124の構成を図5を参照して説明する。この図5では、説明を簡単にするために予測係数決定部311の構成についてのみ説明を行うが基本的な構成は同様である。
【0042】
予測係数決定部311は、図5に示されるように、ブロック化部41と、エッジ特徴解析部42と、予測係数セット算出部43とから構成されている。
【0043】
ブロック化部41は、入力された画像データを、例えば、8×8画素のブロックのような所定数の画素にブロック化する。
【0044】
エッジ特徴解析部42は、ブロック化部41によりブロック化された画素ブロックに対して、例えば、0/45/90/135度方向(または左方向、右方向、上方向、下方向)のそれぞれの画素値の変化量を求め、もっとも変化量が少ない集合にブロックデータを分類する。具体的には、エッジ特徴解析部42は、最も画素値の変化量が少ない方向を示す識別子をエッジ特徴ID(IDentification)として予測係数セット算出部43に対して出力する。
【0045】
予測係数セット算出部43は、予測係数決定部311〜3124毎にそれぞれ設定されているグループ情報により指示された予測式を用い、エッジ特徴解析部42により出力されたエッジ特徴IDを参照して、入力された画像データにおいて、注目画素の画素値を予測した際の誤差電力が最少となるような予測係数セットを決定する。
【0046】
次に、予測係数決定部311〜3124において、予測係数を決定する際の方法を具体例を参照して説明する。
【0047】
例えば、ある座標位置に注目画素を設定した場合に、CMYKの各色版データにおいて注目画素の周辺の画素に図6に示したような番号を設定したものとする。
【0048】
この図6において、Y版の画像データにおける注目画素の画素値をYとして表現し、この注目画素の周辺の画素の画素値をX1〜X6として表現する。また、同様に、MCK版の画像データにおける注目画素の画素値をそれぞれ、M、C、Kとして表現し、これらの注目画素の周辺の画素の画素値をそれぞれX7〜X12、X13〜X18、X19〜X24として表現する。
【0049】
そして、予測係数決定部311〜3124には、それぞれ、グループ番号1〜24が割り当てられていて、このグループ番号により特定される予測式では各色版間での参照順がそれぞれ図7に示すような順番になっている。
【0050】
このように参照順に制限を設けている理由は、各色版の注目画素の予測に他の色版の注目画素の画素値を用いる場合、参照順を制限しないと、参照環が発生して復号できなくなる可能性があるからである。
【0051】
例えば、Y版の注目画素の予測式にM版の注目画素の画素値が使用され、M版の注目画素の予測式にC版の注目画素の画素値が使用され、C版の注目画素の予測式にY版の注目画素の画素値が使用された場合、どの色版の注目画素の画素値から復号しようとしても復号不能となってしまう。
【0052】
つまり、図7に示したグループ1の予測式では、YMCKの4色(4コンポーネント)により構成された画像を符号化して圧縮する場合、Y版の注目画素の予測には他の色版の注目画素の画素値を参照せず、M版の注目画素の予測にはY版の注目画素の画素値のみを参照し、C版の注目画素の予測にはY、M版の注目画素の画素値のみを参照し、K版の注目画素の予測にはY、M、C版の注目画素の画素値を参照するようになっていることを示している。
【0053】
このような参照順が設定された予測式の具体例を図8、図9に示す。図8は、図7に示したグループ1の予測式の例であり、図9は、図7に示したグループ2の予測式の例である。なお、ここで、Wa(1)〜Wa(24)(以下、Wa(i)と表現する。)は、注目画素の周辺に位置する画素の画素値に乗ずるための重み係数であり、Wb(1)〜Wb(6)(以下、Wb(i)と表現する。)は、注目画素の画素値に乗ずるための重み係数である。つまり、予測係数とは、重み係数Wa(i)、Wb(i)をパラメータとする係数である。
【0054】
図8を参照すると、グループ1の予測式の例では、Y版の注目画素の画素値の予測には、Y版における注目画素の周辺に画素の画素値X1〜X6のみが使用され、M版の注目画素の画素値の予測には、M版における注目画素の周辺に画素の画素値X7〜X12およびY版の注目画素の画素値が用いられていることがわかる。
【0055】
また、図9を参照すると、グループ2の予測式の例では、グループ1の予測式とはCKの参照順が入れ替わっていることにより、グループ1の予測式では、K版の注目画素の画素値の予測にC版の注目画素の画素値を用いているのに対して、グループ2の予測式では、C版の注目画素の画素値の予測にK版の注目画素の画素値を用いているのが分かる。
【0056】
なお、この図8、図9に示した例では、同一色版内の画素値に乗じるための重み係数Wa(i)および他の色版の画素値に乗じるための重み係数Wb(i)をともに可変にして予測係数決定部311〜3124のそれぞれにおいて決定するようにしていたが、同一色版内の画素値間には比較的高い相関関係があるので、Wa(i)は予め固定にしておき、Wb(i)のみを可変にして最適な予測係数を決定するようなハイブリッド方式を用いても良い。
【0057】
つまり、予測係数決定部311〜3124は、注目画素の画素値を予測する際に、注目画素と同一色版内の周辺の複数画素に適用する予測係数として固定の予測係数を用い、他の色版における注目画素と同一座標の画素に適用する予測係数のみを変化させて、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定するようにしてもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、CMYKの4色の色版間で互いの画素値を用いた予測を行う場合について説明しているが、全ての色版間で同様に画素値の予測を行う必要はない。
【0059】
例えば、予測係数決定部311〜3124のそれぞれにおいて設定されている予測式が、ある1色を特定の印刷色として、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を用いた予測を行わないよう設定するようにしてもよい。例えば、K版とは相関関係が低いと予測されるCMY版における注目画素を予測する際に、K版の画素の画素値を用いた予測を行わないようにしてもよい。
【0060】
逆に、予測係数決定部311〜3124のそれぞれにおいて設定されている予測式が、ある1色を特定の印刷色として、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を常に用いて予測するよう設定してもよい。例えば、他の印刷色との相関関係が高い場合が多いM色を特定の印刷色として、CYK版における注目画素を予測する際に、常にM版の画素の画素値を用いた予測を行うようにしてもよい。
【0061】
なお、上記で説明した実施形態では、ある色版の注目画素の画素値の予測に、他の色版の注目画素の周辺に位置する画素の画素値を使用していなかった。つまり、例えば、図6に参照したような画素において、Y版の注目画素の画素値の予測式に、M版の注目画素の周辺画素X7〜X12や、C版の注目画素の周辺画素X13〜X18の画素値を含めてはいなかった。しかし、ある色版の注目画素の画素値の予測に、他の色版の注目画素の周辺に位置する画素の画素値を使用することも可能である。ただし、予測式が複雑となり予測係数決定部311〜3124等における演算量が増えることとなる。
【0062】
また、ここまでの説明では、画像データが4つの印刷色(CMYK)の各色版の画像データにより構成されている場合を用いていたため、各色版間の全ての参照順を考慮すると図7に示すような24グループの参照順が存在していたが、RGBのような3つの色版により構成された画像データの場合には、図10に示すような6グループの参照順を考慮するだけで良い。
【0063】
次に、図4に示した本実施形態における画像復号装置22の構成を図11を参照して説明する。
画像復号装置22は、図11に示すように、予測残差復号部51と、グループ情報復号部52と、予測係数復号部53と、逆予測部54とを備えている。
【0064】
予測残差復号部51は、符号化データの中から予測残差を復号し、グループ情報復号部52は、符号化データの中からグループ情報(予測式情報)を復号し、予測係数復号部53は、符号化データの中から予測係数を復号する。
【0065】
逆予測部54は、予測残差復号部51、グループ情報復号部52および予測係数復号部53によってそれぞれ復号された、予測残差、グループ情報、予測係数を用いて、注目画素の画素値を順次復号して元の画像データを復号する。
【符号の説明】
【0066】
10 画像形成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース(IF)
15 ユーザインタフェース(UI)装置
16 スキャナ
17 プリントエンジン
18 制御バス
20 端末装置
21 画像符号化装置
22 画像復号装置
23 入出力IF(インタフェース)
24 表示装置
25 画像読取部
26 記憶装置
27 画像出力部
28 制御部
30 ネットワーク
311〜3124 予測係数決定部
32 最適係数選択部
33 予測処理部
34 予測残差符号化部
35 グループ情報符号化部
36 予測係数符号化部
40 画像形成装置
41 ブロック化部
42 エッジ特徴解析部
43 予測係数セット算出部
51 予測残差復号部
52 グループ情報復号部
53 予測係数復号部
54 逆予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する複数の決定手段と、
前記複数の決定手段によりそれぞれ決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化する符号化手段と、
を備えた画像符号化装置。
【請求項2】
前記決定手段は、注目画素の画素値を予測する際に、注目画素と同一色版内の周辺の複数画素に適用する予測係数として固定の予測係数を用い、他の色版における注目画素と同一座標の画素に適用する予測係数のみを変化させて、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する請求項1記載の画像符号化装置。
【請求項3】
前記複数の決定手段毎に設定されている予測式が、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を用いた予測を行わないよう設定されている請求項1または2記載の画像符号化装置。
【請求項4】
前記複数の決定手段毎に設定されている予測式が、特定の印刷色以外の印刷色の色版における注目画素を予測する際に、ある特定の印刷色の色版の画素の画素値を常に用いて予測するよう設定されている請求項1または2記載の画像符号化装置。
【請求項5】
印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定する複数の決定手段と、
前記複数の決定手段によりそれぞれ決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化する符号化手段と、
前記符号化手段により符号化された画像データを格納する格納手段と、
前記格納手段により格納されている画像データを復号する復号手段と、
前記復号手段により復号された画像データに基づいて画像を出力する画像出力手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項6】
印刷色毎の複数の色版により構成された画像データにおいて、ある色版の注目画素の画素値を、各色版間での参照順がそれぞれ異なる予測式を用いて、その色版の注目画素の周辺の複数の画素および他の色版における注目画素と同一座標の画素の画素値に基づいて予測した場合に、予測した画素値と注目画素の実際の画素値との差分がある条件以下となるような予測係数をそれぞれ決定するステップと、
決定された複数の予測係数の中から、一定の条件を満たす予測式および予測係数を選択するステップと、
選択された予測係数および予測式に基づいて注目画素の画素値を予測し、予測した画素値と注目画素の画素値との差分を予測残差として算出するステップと、
算出された予測残差を、予測処理の際に使用した予測係数および予測式の情報とともに符号化するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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