画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体
【課題】改竄困難、特徴ある視覚効果の画像を表示でき、真贋の判断を容易に行い得る。
【解決手段】支持体から個人認証媒体の基材上へと転写し、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により下地層上に転写される画像表示層とを備え、この画像表示層は、第1領域、第2領域の2種類の領域を有し、第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、第1領域の回折光の射出する範囲は、第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、第2領域の回折光の射出する範囲は、第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像で配置している画像表示体である。
【解決手段】支持体から個人認証媒体の基材上へと転写し、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により下地層上に転写される画像表示層とを備え、この画像表示層は、第1領域、第2領域の2種類の領域を有し、第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、第1領域の回折光の射出する範囲は、第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、第2領域の回折光の射出する範囲は、第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像で配置している画像表示体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術を用いた画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像が使用されている。
【0003】
従来、例えば、パスポートでは、顔画像を焼き付けた印画紙が冊子体に貼り付けられている。しかし、このようなパスポートは、写真印画の貼り替えによる改竄の恐れがある。
【0004】
そこで、近年、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現することが行われている。この画像再現方法には、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用した感熱転写記録方式のプリンタが広く普及してきている。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、その部分に別の顔画像を記録することは必ずしも困難ではない。
【0006】
ところで、以上のような画像表示技術を用いて、顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録する構成の蛍光体印刷物が提案されている(特許文献1)。また、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録した偽造防止画像形成体(特許文献2)、さらに、通常の顔画像とパール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置した個人認証媒体が提案されている(特許文献3)。
【0007】
従って、以上のような画像表示技術をパスポートに適用すれば、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認できるものの、パール顔料の粒径が大きいため、このパール顔料を用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
また、個人認証媒体に記録される顔画像の見え方が、単純で視覚効果が無いような見え方である場合、顔画像が複雑で特徴のある視覚効果を有する場合と比較して、その改竄が容易である。また、顔画像が単純な見え方で表示されている場合、改竄、偽造された顔画像を目視で容易に判断することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、改竄が困難で、且つより複雑で特徴のある視覚効果を発揮でき、目視により真贋の判断が容易に認識できる画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、前記支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により前記下地層上に転写される画像表示層とを備え
この画像表示層は、第1領域、第2領域の少なくとも2種類の領域を有し、これら第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、前記第1領域の回折光の射出する範囲は、前記第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、前記第2領域の回折光の射出する範囲は、前記第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、前記第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像で配置している画像表示体である。
【0012】
請求項2に対応する発明としては、前記第1領域は、特定の照明条件のもとで第1の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ秘匿情報の第1画像を回折像として表示し、
前記特定の照明条件のもとで前記第1領域及び前記第2領域を、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ第2画像を回折像として表示する請求項1に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0013】
請求項3に対応する発明としては、前記画像表示層の前記第1領域及び前記第2領域は、前記特定の照明条件のもとで前記第2画像を回折像として表示する前記ホログラム及び/又は回折格子の輝度が等しい請求項1又は請求項2に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0014】
請求項4に対応する発明としては、前記秘匿情報の画像は、特定の照明条件のもとで前記画像表示体に対して正面方向からは観察されないようにする請求項1乃至3の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0015】
請求項5に対応する発明としては、前記個人情報は、顔画像を含んでいる請求項1乃至4の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0016】
請求項6に対応する発明としては、前記秘匿情報の画像は、前記個人情報の他の一部を含んだ画像である請求項1乃至5の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0017】
請求項7に対応する発明としては、前記画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備した請求項1乃至6の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0018】
また、請求項8に対応する発明は、請求項1乃至7の何れか一項に対応する発明に記載する画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを備えた個人認証媒体である。
【0019】
さらに、請求項9に対応する発明は、請求項1乃至7の何れか一項に対応する発明に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、支持体と、この支持体に剥離可能に支持された転写材層とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、前記回折構造形成層は、特定の照明条件のもとで回折光を射出する範囲が異なる少なくとも2種類のホログラム及び/又は回折格子を有し、前記2種類のホログラム及び/又は回折格子のうち1つは、他のホログラム及び/又は回折格子より回折光の射出する範囲が大きいブランク媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示でき、真贋の判断を容易に行い得る画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体を提供できる。
【0021】
請求項1に対応する発明によれば、特定の範囲から観察することによって秘匿情報の画像を確認することができ、それ以外の範囲からは秘匿情報の画像を確認することが出来ない。
【0022】
従って、この画像表示体を個人認証媒体に用いることで、真贋の判断を容易に行うことが可能となる。さらに、このような秘匿情報の画像を記録するプロセスは精度が必要となり製造が難しい。それ故、この画像表示体は、改竄が困難となる。
【0023】
さらに、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。そして、この画像表示体は、熱転写によって個人認証媒体の基材に貼り付けられる。このようにして個人認証媒体の基材に貼り付けた画像表示体は、基材から剥離しようとすると、容易に破壊される。それ故、この画像表示体を用いると、改竄が困難な個人認証媒体が得られる。
【0024】
請求項2に対応する発明によれば、特定の照明条件のもとで第2の観察方向から観察すると、第2画像を観察することができ、第1の観察方向から観察した場合に、秘匿情報の第1画像を観察することができ、真贋の判断を容易に行うことが可能となる。
【0025】
請求項3に対応する発明によれば、一般的にホログラムや回折格子などは回折光を射出する範囲が異なる場合、つまり視域が異なると、観察する回折光の輝度が異なり、回折する範囲が狭いほど輝度が明るくなる傾向がある。このため、回折光を射出する範囲が異なる回折格子を用いて隠蔽画像を記録すると、画像が観察できないはずの領域(ここでは第1方向)でも、回折光の輝度の差で隠蔽画像が確認できてしまう。このことから、隠蔽画像を記録した領域のホログラム及び/又は回折格子の輝度を、その他の領域の輝度と等しくすることで、隠蔽画像の影が観察されてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0026】
請求項4に対応する発明によれば、第2の観察方向を画像表示体の正面付近を中心とした領域とし、第1の観察方向をその領域の若干外側の領域とすることで、正面方向より観察した場合には、秘匿情報の画像は観察されず、正面方向より若干傾いた方向で秘匿情報の画像を観察できるものである。
【0027】
請求項5に対応する発明によれば、画像表示層の正面方向から画像を観察すれば、個人情報の顔画像を観察することができ、正面方向より若干傾いた方向で画像を観察すれば、個人情報の顔画像とともに秘匿情報の画像を観察することができる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0028】
請求項6に対応する発明によれば、正面方向からは顔画像を観察することができ、正面方向より若干傾いた方向で画像を観察すれば、他の個人情報を観察することが出来る。他の個人情報としては、例えばパスポートの場合には、氏名、生年月日、国名、発行地、番号などの情報を記録し、また、IDカードの場合には、会社名や所属などの情報を記録しておくことで、もし、この画像表示体が偽造されてもこの秘匿情報の画像を確認することで、真偽判定を行うことができる。
【0029】
請求項7に対応する発明によれば、接着層は、支持体から個人認証媒体の基材上へ画像表示体の転写の際に、画像表示体を基材に強固に密着させる。また、接着層は、ホログラム及び/又は回折格子の複製を困難にする効果を奏する。
【0030】
請求項8に対応する発明によれば、請求項1乃至7に対応する発明の何れか一つに記載の構成を有する画像表示体を含む個人認証媒体とすることにより、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒体を提供できる。
【0031】
請求項9に対応する発明のブランク媒体を個人認証媒体に用いることにより、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像表示体のA−A線に沿った断面図。
【図4】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像表示体のB−B線に沿った断面図。
【図6】図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図6に示すブランク媒体を中間転写箔に転写した一例を概略的に示す断面図。
【図8】図7に示す中間転写箔を被転写体に転写した一例を概略的に示す断面図。
【図9】図7に示す画像表示体の隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す画像表示体の視域を概略的に示すC−C線に沿った断面図。
【図11】図9に示す画像表示体に含まれる回折格子形状の一例を概略的に示す平面図。
【図12】図9に示す画像表示体に含まれる他の回折格子形状の一例を概略的に示す平面図。
【図13】本発明の一実施の形態に係るブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図14】本発明の一実施の形態に係る画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図1は本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体であって、図1には開いた状態の冊子体が示されている。個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んだ構成である。
【0035】
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなり、典型的には、紙片11上に文字列及び地紋などの印刷パターン12が施されている。折り丁1は、1枚の紙片11又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11には、個人情報を記録するIC(integrated circuit)チップ及び非接触による無線通信によりICチップに必要な情報を書込み・読み出し可能とする送受信用アンテナなどが内蔵されている。
【0036】
表紙2は、二つ折りにされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0037】
表紙2には、個人情報を含んだ画像が表示される。個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0038】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴を有している。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0039】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0040】
図1において、表紙2には、複数の画像13a、13b、14及び15が表示されている。画像13a、14及び15は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像13a、14及び15は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。なお、これら画像13a、14及び15のうち、1つ以上を省略しても構わない。
【0041】
画像13a、14及び15は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。これら染料及び顔料を用いて画像13a、14及び15を形成する方法としては、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像13a、14及び15は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら幾つかの方法の組み合わせて利用することができる。画像14及び15の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0042】
一方、画像13bは、ホログラム及び/又は回折格子が表示する画像である。画像13bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録との順で行うことにより形成する。
【0043】
画像13a及び13bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像13aが含んでいる顔画像と、画像13bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像13aが含んでいる顔画像と、画像13bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、各画像13a、13bは、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0044】
画像13bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像13bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0045】
画像14は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像14は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を含んで構成されている。
【0046】
画像15は地紋である。例えば、画像15と画像13a及び13bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0047】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
【0048】
図2は、図1の個人認証媒体100に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す画像表示体のA−A線に沿った断面図である。図4は、図1の個人認証媒体100に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画像表示体のB−B線に沿った断面図である。
【0049】
図2及び図3に示す画像表示体の構造は、表紙2のうち画像13aに対応した部分である。他方、図4及び図5に示す画像表示体の構造は、表紙2のうち画像13bに対応した部分である。なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向で表示画像の横方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0050】
表紙2は、図3及び図5に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んだ構成である。表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造又は多層構造の何れでもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態では、折り丁1を挟み込むように二つ折りされる。
【0051】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0052】
画像表示体22は、画像表示層210(または220a)と剥離保護層227とを含んでいる。画像表示層210は、光の吸収を利用して画像13aを表示する。画像表示層210は、図2及び図3に示すように、画像13aに対応したパターン形状が施される。この画像表示層210は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層210は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用して形成することができる。
【0053】
画像表示層210は、パターニングされていなくてもよい。即ち、画像表示層210は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層210は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0054】
一方、図4及び図5に示す画像表示層220aは、ホログラム及び/又は回折格子を含んでいる。画像表示層220aは、画像13bに対応したパターン形状が施される。
【0055】
画像表示層220aの構造及び形成方法については、後で詳述する。
【0056】
剥離保護層227は、表紙本体21と画像表示層210、220aとを被覆する役割を有している。剥離保護層227は、光透過性を有し、典型的には透明である。剥離保護層227は、例えば樹脂からなる。
【0057】
なお、表紙2のうち画像14に対応する部分には、例えば、表示させる画像が異なること以外は、画像13aに対応した部分に関して上述したのとほぼ同様の構造を採用することができる。表紙2のうち画像I1aに対応した部分と画像14に対応した部分とは、同一の積層構造を有していてもよく、異なる積層構造を有していてもよい。
【0058】
次に、個人認証媒体100の製造方法と画像表示層220aの構造とについて、図6乃至図12を参照して説明する。
【0059】
図6は、図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体201の一例を概略的に示す断面図である。
【0060】
このブランク媒体201は、例えば転写リボンである。ブランク媒体201は、支持体221と、剥離層222によって剥離可能に支持された転写材層220とを含んでいる。
【0061】
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層220を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ剥型層が設けられていてもよい。
【0062】
転写材層220は、剥離層222と回折構造形成層223と反射層224と接着層225とを含んでいる。
【0063】
剥離層222は、支持体221上に形成されている。剥離層222は、転写剤層220の支持体221からの剥離を安定化すると共に、画像表示層220aの表紙本体21への接着を促進する役割を果たす。剥離層222は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層222は、例えば熱可塑性樹脂からなる。剥離層222は、省略することができる。
【0064】
回折構造形成層223は、剥離層222上に形成されている。回折構造形成層223は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいる。ここでは、回折構造形成層223は、表面に回折構造としてレリーフ構造が設けられた透明層である。透明層の材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂などの樹脂を使用することができる。なお、回折構造形成層223は、体積ホログラムであってもよい。
【0065】
反射層224は、回折構造形成層223上に形成されている。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けた場合には回折構造が表示する画像の視認性が向上する。反射層224としては、例えば、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。
【0066】
透明反射層としては、例えば、回折構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造又は多層構造の何れでもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0067】
また、透明反射層としては、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用できる。
【0068】
不透明な金属反射層としては、より厚いことを除けば、上述した透明反射層と同様の金属層を使用することができる。
【0069】
接着層225は、反射層224上に形成される。接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225は、省略することができる。
【0070】
次に、図7は、図6に示すブランク媒体を中間転写箔に転写した一例を概略的に示す断面図である。
【0071】
中間転写箔301は、支持体31と、下地層となる例えば剥離保護層32及びこの剥離保護層32によって剥離可能に支持された受像層33とを含んでいる。支持体31は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体31は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体31の受像層33を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0072】
剥離保護層32は、受像層33の支持体31からの剥離を安定化すると共に、受像層33の表面の耐性を促進する保護層の役割を果たす。剥離保護層32は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離保護層32は、例えば熱可塑性樹脂からなる。
【0073】
受像層33は、図6に示すブランク媒体201の接着層225との密着性の良好となる材料からなる。すなわち、図6に示すブランク媒体201の接着層225と、図7に示す中間転写箔301の受像層33とを密着させ、サーマルヘッドによりブランク媒体201の支持体221側から加熱し、転写材層220により画像表示層220aを印字する。
【0074】
画像表示層220aの表示画素311、表示画素312は、以上のような方法でブランク媒体201の転写材層220を印字したものである。第1の領域となる表示画素311は隠蔽画像を表示する画素であり、第2の領域となる表示画素312は隠蔽画像を表示しない画素である。隠蔽画像の形成方法については、後で詳述する。
【0075】
次に、図8は、図7に示す中間転写箔301を、被転写体である表紙本体21に転写した一例を概略的に示す断面図である。
【0076】
個人認証媒体4の被転写体である表紙本体21に、中間転写箔301の受像層33と画像表示層220aとを密着し、支持体31と表紙本体21側から加熱、加圧して接着する。その後、個人認証媒体4から、剥離保護層32と支持体31と界面で、支持体31を剥離する。
【0077】
次に、隠蔽画像の形成方法について説明する。図9は、図7に示す画像表示体の隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図である。図10は図2乃至図5に示す画像表示体の視域を概略的に示す図9のC−C線に沿った断面図である。
【0078】
図9に示す画素構造は、個人認証媒体4に印字された画像表示層220aである。前述したように、表示画素311は隠蔽画像を表示する画素であり、隠蔽画像は「S」の文字を表現している。表示画素312は隠蔽画像を表示しない画素である。
【0079】
ここで、画像表示層220aの印字に用いる図6の転写材層220の回折格子構造は、表示画素311と表示画素312とでは異なる形状の回折格子を用いて印字している。ここで、照明光として、Y軸に垂直で、XZ平面状でZ軸より45°上方に点照明光源があると仮定すると、その照明光で回折する光の状態が図10に示すようになる。
【0080】
すなわち、表示画素312から回折するY方向の光の範囲は、視域412となり、表示画素311から回折するY方向の光の範囲は、視域411となる。視域411は視域412と比較して狭い範囲となっている。
【0081】
ここで、観察範囲42の中から個人認証媒体4を観察すると、すべての画素からの回折光を観察できる。次に、観察範囲43は表示画素311からの回折光のみが観察されない範囲であるので、観察範囲43から個人認証媒体4を観察すると、表示画素311のみが光らない状態となる。つまり、表示画素311を配置することで隠蔽画像を形成することが可能となる。
【0082】
その結果、視域411は、視域412との差を大きくとれば、隠蔽画像を観察できる範囲が広くなり、逆に視域412との差を小さくすれば、隠蔽画像を観察することができる範囲を狭くすることが出来る。
【0083】
次に、図11は、図9に示す画像表示体に含まれる回折格子形状の一例を概略的に示す平面図である。図11の例は、表示画素311の回折格子の構造を拡大して示している。回折格子構造Gaは曲線の溝構造となっている。
【0084】
次に、図12は、図9に示す画像表示体に含まれる他の回折格子形状の一例を概略的に示す平面図である。図12の例は、表示画素312の回折格子の構造を拡大して示している。回折格子構造Gbは曲線の溝構造となっている。
【0085】
ここで、回折格子構造Gaの曲線の局率は、回折格子構造Gbと比較して大きく緩やかな曲線となっている。このような曲線を有する回折格子構造の場合、Y軸方向への回折光の拡散する範囲の大きさは、曲線の局率により決定する。このため、表示画素312の回折光の視域は表示画素311よりも広くなる。
【0086】
また、X軸方向への回折光の拡散範囲は、回折構造のピッチにより決定し、広く拡散させるためには、複数の回折格子ピッチを含めるようにすることが必要である。しかし、X軸方向は、光の分光による拡散も含まれるため、Y軸方向より広く拡散してしまい、隠蔽画像との切替わり方が徐々に変化するため、隠蔽画像を認識し易くなってしまう。このことから、隠蔽画像を記録する方法としては、回折格子の局率の変化を用いるようにする。
【0087】
次に、具体的な個人認証媒体の作製方法について説明する。個人認証媒体100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得ることができる。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0088】
次に、図7に示す中間転写箔301を準備する。中間転写箔301は、多層構造を有している層であって、支持体31と、その上に順次形成された剥離保護層32及び受像層33とを含んでいる。なお、剥離保護層32及び受像層33は下地層を構成する。
【0089】
引き続き、中間転写箔301上に、先の顔画像に対応したパターンを有している画像表示層220aを形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて、図6に示すブランク媒体201の支持体221から、転写材層220の一部を受像層33上へと熱転写する。
【0090】
ここで、サーマルヘッドを利用して、転写材層220のうち受像層33上へと熱転写される部分が、先の顔画像に対応したパターンのうち、隠蔽画像を表示するパターン以外の部分を印字する。
【0091】
また、ブランク媒体201における転写材層220の回折構造形成層223の回折格子の形状としては、図12に示す表示画素312の回折格子の構造とする。これにより、表示画素312の部分を印字することができる。
【0092】
さらに、ブランク媒体201の転写材層220の回折構造形成層223の回折格子の形状が、図11に示す表示画素311の回折格子の構造とした転写材層220を用いて、先の顔画像に対応したパターンのうち、隠蔽画像を表示するパターン部分を印字する。これにより、表示画素311の部分を印字することができる。
【0093】
次に、以上のようにして得られる画像表示層220aは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には、図4及び図5に示すように複数のドット状部からなる。これらドット状部の各中心は、図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0094】
なお、図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図4では、隣り合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣り合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0095】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。画像表示層220aに顔画像を表示させる場合には、ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする.この寸法を大きく刷る途、画像表示層に似0アールに高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、画像表示層220aのパターン形状の再現性が低下する。
【0096】
よって、以上のような手順に従って、支持体31と剥離保護層32と受像層33と画像表示層220aとを含んだ中間転写箔301を得ることができる。次に、図8に示す個人認証媒体4の被転写体である表紙本体21に、中間転写箔301の受像層33と画像表示層220aを密着し、支持体31と表紙本体21側から加熱、加圧して転写を行い、支持体31を剥離する。
【0097】
以上のようにして作製された個人認証媒体4について、図10に示す観察範囲42から観察すると、顔画像を観察できる。また、観察範囲43から観察すると、顔画像のうち隠蔽画像部分の回折光を観察できなくなるので、顔画像の中に隠蔽画像が現れてくる。
【0098】
従って、図9に示すように表示画素311、312を配列した場合、この範囲ではすべて画素で埋め尽くされているため、顔の中でも前面が光っている部分を示している。そして、正面方向から視点をずらして観察すると、「S」という文字の部分が暗くなって観察され、隠蔽画像として確認することが出来る。
【0099】
ところで、一般的にホログラムや回折格子などは回折光を射出する領域が異なる場合、つまり視域が異なると、観察する回折光の輝度が異なり、回折する範囲が狭いほど輝度が明るくなる傾向がある。このため、回折光を射出する領域が異なる回折格子を用いて隠蔽画像を記録すると、隠蔽画像が観察できないはずの領域(ここでは正面方向)でも、回折光の輝度の差で隠蔽画像が確認できてしまう。つまり、正面で観察した場合に「S」という部分の輝度が上がり、その部分を文字として認識してしまう。
【0100】
このことから、隠蔽画像を記録した領域の回折格子の輝度を、その他の領域の輝度と等しくすることで、隠蔽画像の影が観察されてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0101】
輝度を調整する方法としては、面積を変化させて輝度調整する方法が一般的であるが、この場合には、一定の大きさの画素が連続して配置している中に、周囲と面積が異なる領域がある場合には、その領域を認識し易くなってしまい、隠蔽画像を観察できてしまうおそれがある。
【0102】
輝度を調整する方法としては、回折格子の深さを変化させ、回折効率を調整することで、視域が異なっても輝度が一定の回折格子を作製することが可能となる。回折格子の深さを調整する方法としては、電子線描画によって作製する原版の回折格子の深さを変化させる方法が有効である。
【0103】
次に、図13は、本発明の一実施の形態に係るブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。
【0104】
顔画像を表現するのにカラー画像を印字するようにし、ロールフィルム状のブランク媒体リボン450には、赤用転写材層451、緑用転写材層452、青用転写材層453のパネルを設けてある。さらに、隠蔽画像用転写材層454を設けてあり、各パネルは連続して順次配置してある。また、位置決めマーク455によって各パネルの位置を調整して印字を行えるようにしてある。
【0105】
顔画像を赤緑青に色分解し、それぞれの色に対応した転写材層451〜453のパネルを用いて中間転写箔301に印字を行い、画像表示層220aを作製する。ここで、隠蔽画像用転写材層454のパネルの回折格子ピッチは、赤用転写材層451の回折格子のピッチと等しく設定し、隠蔽画像用転写材層454の視域は赤用転写材層451の視域より狭くなるように設定する。
【0106】
また、顔画像の赤色のデータに、隠蔽画像のデータを掛け合わせ、隠蔽画像用転写材層454のパネルで印字することで、斜め方向から観察した場合に顔の赤色データの中に隠蔽画像を観察することが出来る。ここで、赤色以外の隠蔽画像用転写材層454を用意すれば、カラーの隠蔽画像を印字することも可能である。
【0107】
次に、図14は、本発明の実施形態に係る画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図である。ここでの隠蔽画像用転写材層454の視域の設定は、図10に示したような設定としてある。観察画像460は観察範囲42から観察した画像で、顔画像のみ観察することができ、隠蔽画像は観察できない。
【0108】
次に、観察画像462は観察範囲43から観察した画像で、隠蔽画像と顔画像が観察することができる。また、観察画像461は片目が範囲42、もう片方の目が範囲43から観察した場合の画像である。
【0109】
左右方向に視域が異なっていることから、観察位置によっては左右の目に隠蔽画像を観察できる領域と、観察できない領域とが同時に入る場所が発生することになる。このため、左右で隠蔽画像の有る無しの画像情報であるため、非常に違和感の有る画像として観察される。
【0110】
そのため、より複雑で特殊な視覚効果を持った画像は再現することが難しく、改竄が困難であり、かつ真贋の判断を容易に行うことが可能となる個人認証媒体を提供することが可能となる。
【0111】
以上の説明は、パスポートとしての個人認証媒体を例示したが、この個人認証に利用可能な画像表示技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することが可能である。
【0112】
画像表示層220aを貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示層220aを貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0113】
画像表示層220aに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示層220aに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0114】
前記実施の形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前記実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…折り丁、2…表紙、4…個人認証媒体、11…紙片、13a…画像、13b…画像、14…画像、15…画像、21…表紙本体、22…転写材層、42…観察範囲、43観察範囲、100…個人認証媒体、201…ブランク媒体、210…画像表示層、220a…画像表示層、220…転写材層、222…剥離層、223…回折構造形成層、224…反射層、225…接着層、31…支持体、32…剥離保護層、33…受像層、311表示画素、312…表示画素、301…中間転写箔、411…視域、412…視域、450…ブランク媒体リボン、451…赤用転写材層、452…緑用転写材層、453…青用転写材層、454…隠蔽画像用転写材層、455…位置決めマーク、460…観察画像、461…観察画像、462…観察画像、Ga…回折構造、Gb…回折構造。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術を用いた画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像が使用されている。
【0003】
従来、例えば、パスポートでは、顔画像を焼き付けた印画紙が冊子体に貼り付けられている。しかし、このようなパスポートは、写真印画の貼り替えによる改竄の恐れがある。
【0004】
そこで、近年、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現することが行われている。この画像再現方法には、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用した感熱転写記録方式のプリンタが広く普及してきている。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、その部分に別の顔画像を記録することは必ずしも困難ではない。
【0006】
ところで、以上のような画像表示技術を用いて、顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録する構成の蛍光体印刷物が提案されている(特許文献1)。また、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録した偽造防止画像形成体(特許文献2)、さらに、通常の顔画像とパール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置した個人認証媒体が提案されている(特許文献3)。
【0007】
従って、以上のような画像表示技術をパスポートに適用すれば、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認できるものの、パール顔料の粒径が大きいため、このパール顔料を用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
また、個人認証媒体に記録される顔画像の見え方が、単純で視覚効果が無いような見え方である場合、顔画像が複雑で特徴のある視覚効果を有する場合と比較して、その改竄が容易である。また、顔画像が単純な見え方で表示されている場合、改竄、偽造された顔画像を目視で容易に判断することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、改竄が困難で、且つより複雑で特徴のある視覚効果を発揮でき、目視により真贋の判断が容易に認識できる画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、前記支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により前記下地層上に転写される画像表示層とを備え
この画像表示層は、第1領域、第2領域の少なくとも2種類の領域を有し、これら第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、前記第1領域の回折光の射出する範囲は、前記第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、前記第2領域の回折光の射出する範囲は、前記第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、前記第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像で配置している画像表示体である。
【0012】
請求項2に対応する発明としては、前記第1領域は、特定の照明条件のもとで第1の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ秘匿情報の第1画像を回折像として表示し、
前記特定の照明条件のもとで前記第1領域及び前記第2領域を、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ第2画像を回折像として表示する請求項1に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0013】
請求項3に対応する発明としては、前記画像表示層の前記第1領域及び前記第2領域は、前記特定の照明条件のもとで前記第2画像を回折像として表示する前記ホログラム及び/又は回折格子の輝度が等しい請求項1又は請求項2に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0014】
請求項4に対応する発明としては、前記秘匿情報の画像は、特定の照明条件のもとで前記画像表示体に対して正面方向からは観察されないようにする請求項1乃至3の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0015】
請求項5に対応する発明としては、前記個人情報は、顔画像を含んでいる請求項1乃至4の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0016】
請求項6に対応する発明としては、前記秘匿情報の画像は、前記個人情報の他の一部を含んだ画像である請求項1乃至5の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0017】
請求項7に対応する発明としては、前記画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備した請求項1乃至6の何れか一項に対応する発明に記載の画像表示体である。
【0018】
また、請求項8に対応する発明は、請求項1乃至7の何れか一項に対応する発明に記載する画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを備えた個人認証媒体である。
【0019】
さらに、請求項9に対応する発明は、請求項1乃至7の何れか一項に対応する発明に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、支持体と、この支持体に剥離可能に支持された転写材層とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、前記回折構造形成層は、特定の照明条件のもとで回折光を射出する範囲が異なる少なくとも2種類のホログラム及び/又は回折格子を有し、前記2種類のホログラム及び/又は回折格子のうち1つは、他のホログラム及び/又は回折格子より回折光の射出する範囲が大きいブランク媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示でき、真贋の判断を容易に行い得る画像表示体、個人認証媒体及びブランク媒体を提供できる。
【0021】
請求項1に対応する発明によれば、特定の範囲から観察することによって秘匿情報の画像を確認することができ、それ以外の範囲からは秘匿情報の画像を確認することが出来ない。
【0022】
従って、この画像表示体を個人認証媒体に用いることで、真贋の判断を容易に行うことが可能となる。さらに、このような秘匿情報の画像を記録するプロセスは精度が必要となり製造が難しい。それ故、この画像表示体は、改竄が困難となる。
【0023】
さらに、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。そして、この画像表示体は、熱転写によって個人認証媒体の基材に貼り付けられる。このようにして個人認証媒体の基材に貼り付けた画像表示体は、基材から剥離しようとすると、容易に破壊される。それ故、この画像表示体を用いると、改竄が困難な個人認証媒体が得られる。
【0024】
請求項2に対応する発明によれば、特定の照明条件のもとで第2の観察方向から観察すると、第2画像を観察することができ、第1の観察方向から観察した場合に、秘匿情報の第1画像を観察することができ、真贋の判断を容易に行うことが可能となる。
【0025】
請求項3に対応する発明によれば、一般的にホログラムや回折格子などは回折光を射出する範囲が異なる場合、つまり視域が異なると、観察する回折光の輝度が異なり、回折する範囲が狭いほど輝度が明るくなる傾向がある。このため、回折光を射出する範囲が異なる回折格子を用いて隠蔽画像を記録すると、画像が観察できないはずの領域(ここでは第1方向)でも、回折光の輝度の差で隠蔽画像が確認できてしまう。このことから、隠蔽画像を記録した領域のホログラム及び/又は回折格子の輝度を、その他の領域の輝度と等しくすることで、隠蔽画像の影が観察されてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0026】
請求項4に対応する発明によれば、第2の観察方向を画像表示体の正面付近を中心とした領域とし、第1の観察方向をその領域の若干外側の領域とすることで、正面方向より観察した場合には、秘匿情報の画像は観察されず、正面方向より若干傾いた方向で秘匿情報の画像を観察できるものである。
【0027】
請求項5に対応する発明によれば、画像表示層の正面方向から画像を観察すれば、個人情報の顔画像を観察することができ、正面方向より若干傾いた方向で画像を観察すれば、個人情報の顔画像とともに秘匿情報の画像を観察することができる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0028】
請求項6に対応する発明によれば、正面方向からは顔画像を観察することができ、正面方向より若干傾いた方向で画像を観察すれば、他の個人情報を観察することが出来る。他の個人情報としては、例えばパスポートの場合には、氏名、生年月日、国名、発行地、番号などの情報を記録し、また、IDカードの場合には、会社名や所属などの情報を記録しておくことで、もし、この画像表示体が偽造されてもこの秘匿情報の画像を確認することで、真偽判定を行うことができる。
【0029】
請求項7に対応する発明によれば、接着層は、支持体から個人認証媒体の基材上へ画像表示体の転写の際に、画像表示体を基材に強固に密着させる。また、接着層は、ホログラム及び/又は回折格子の複製を困難にする効果を奏する。
【0030】
請求項8に対応する発明によれば、請求項1乃至7に対応する発明の何れか一つに記載の構成を有する画像表示体を含む個人認証媒体とすることにより、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒体を提供できる。
【0031】
請求項9に対応する発明のブランク媒体を個人認証媒体に用いることにより、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像表示体のA−A線に沿った断面図。
【図4】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像表示体のB−B線に沿った断面図。
【図6】図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図6に示すブランク媒体を中間転写箔に転写した一例を概略的に示す断面図。
【図8】図7に示す中間転写箔を被転写体に転写した一例を概略的に示す断面図。
【図9】図7に示す画像表示体の隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す画像表示体の視域を概略的に示すC−C線に沿った断面図。
【図11】図9に示す画像表示体に含まれる回折格子形状の一例を概略的に示す平面図。
【図12】図9に示す画像表示体に含まれる他の回折格子形状の一例を概略的に示す平面図。
【図13】本発明の一実施の形態に係るブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図14】本発明の一実施の形態に係る画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図1は本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体であって、図1には開いた状態の冊子体が示されている。個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んだ構成である。
【0035】
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなり、典型的には、紙片11上に文字列及び地紋などの印刷パターン12が施されている。折り丁1は、1枚の紙片11又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11には、個人情報を記録するIC(integrated circuit)チップ及び非接触による無線通信によりICチップに必要な情報を書込み・読み出し可能とする送受信用アンテナなどが内蔵されている。
【0036】
表紙2は、二つ折りにされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0037】
表紙2には、個人情報を含んだ画像が表示される。個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0038】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴を有している。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0039】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0040】
図1において、表紙2には、複数の画像13a、13b、14及び15が表示されている。画像13a、14及び15は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像13a、14及び15は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。なお、これら画像13a、14及び15のうち、1つ以上を省略しても構わない。
【0041】
画像13a、14及び15は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。これら染料及び顔料を用いて画像13a、14及び15を形成する方法としては、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像13a、14及び15は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら幾つかの方法の組み合わせて利用することができる。画像14及び15の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0042】
一方、画像13bは、ホログラム及び/又は回折格子が表示する画像である。画像13bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録との順で行うことにより形成する。
【0043】
画像13a及び13bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像13aが含んでいる顔画像と、画像13bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像13aが含んでいる顔画像と、画像13bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、各画像13a、13bは、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0044】
画像13bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像13bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0045】
画像14は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像14は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を含んで構成されている。
【0046】
画像15は地紋である。例えば、画像15と画像13a及び13bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0047】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
【0048】
図2は、図1の個人認証媒体100に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す画像表示体のA−A線に沿った断面図である。図4は、図1の個人認証媒体100に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画像表示体のB−B線に沿った断面図である。
【0049】
図2及び図3に示す画像表示体の構造は、表紙2のうち画像13aに対応した部分である。他方、図4及び図5に示す画像表示体の構造は、表紙2のうち画像13bに対応した部分である。なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向で表示画像の横方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0050】
表紙2は、図3及び図5に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んだ構成である。表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造又は多層構造の何れでもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態では、折り丁1を挟み込むように二つ折りされる。
【0051】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0052】
画像表示体22は、画像表示層210(または220a)と剥離保護層227とを含んでいる。画像表示層210は、光の吸収を利用して画像13aを表示する。画像表示層210は、図2及び図3に示すように、画像13aに対応したパターン形状が施される。この画像表示層210は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層210は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用して形成することができる。
【0053】
画像表示層210は、パターニングされていなくてもよい。即ち、画像表示層210は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層210は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0054】
一方、図4及び図5に示す画像表示層220aは、ホログラム及び/又は回折格子を含んでいる。画像表示層220aは、画像13bに対応したパターン形状が施される。
【0055】
画像表示層220aの構造及び形成方法については、後で詳述する。
【0056】
剥離保護層227は、表紙本体21と画像表示層210、220aとを被覆する役割を有している。剥離保護層227は、光透過性を有し、典型的には透明である。剥離保護層227は、例えば樹脂からなる。
【0057】
なお、表紙2のうち画像14に対応する部分には、例えば、表示させる画像が異なること以外は、画像13aに対応した部分に関して上述したのとほぼ同様の構造を採用することができる。表紙2のうち画像I1aに対応した部分と画像14に対応した部分とは、同一の積層構造を有していてもよく、異なる積層構造を有していてもよい。
【0058】
次に、個人認証媒体100の製造方法と画像表示層220aの構造とについて、図6乃至図12を参照して説明する。
【0059】
図6は、図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体201の一例を概略的に示す断面図である。
【0060】
このブランク媒体201は、例えば転写リボンである。ブランク媒体201は、支持体221と、剥離層222によって剥離可能に支持された転写材層220とを含んでいる。
【0061】
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層220を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ剥型層が設けられていてもよい。
【0062】
転写材層220は、剥離層222と回折構造形成層223と反射層224と接着層225とを含んでいる。
【0063】
剥離層222は、支持体221上に形成されている。剥離層222は、転写剤層220の支持体221からの剥離を安定化すると共に、画像表示層220aの表紙本体21への接着を促進する役割を果たす。剥離層222は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層222は、例えば熱可塑性樹脂からなる。剥離層222は、省略することができる。
【0064】
回折構造形成層223は、剥離層222上に形成されている。回折構造形成層223は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいる。ここでは、回折構造形成層223は、表面に回折構造としてレリーフ構造が設けられた透明層である。透明層の材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂などの樹脂を使用することができる。なお、回折構造形成層223は、体積ホログラムであってもよい。
【0065】
反射層224は、回折構造形成層223上に形成されている。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けた場合には回折構造が表示する画像の視認性が向上する。反射層224としては、例えば、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。
【0066】
透明反射層としては、例えば、回折構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造又は多層構造の何れでもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0067】
また、透明反射層としては、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用できる。
【0068】
不透明な金属反射層としては、より厚いことを除けば、上述した透明反射層と同様の金属層を使用することができる。
【0069】
接着層225は、反射層224上に形成される。接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225は、省略することができる。
【0070】
次に、図7は、図6に示すブランク媒体を中間転写箔に転写した一例を概略的に示す断面図である。
【0071】
中間転写箔301は、支持体31と、下地層となる例えば剥離保護層32及びこの剥離保護層32によって剥離可能に支持された受像層33とを含んでいる。支持体31は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体31は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体31の受像層33を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0072】
剥離保護層32は、受像層33の支持体31からの剥離を安定化すると共に、受像層33の表面の耐性を促進する保護層の役割を果たす。剥離保護層32は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離保護層32は、例えば熱可塑性樹脂からなる。
【0073】
受像層33は、図6に示すブランク媒体201の接着層225との密着性の良好となる材料からなる。すなわち、図6に示すブランク媒体201の接着層225と、図7に示す中間転写箔301の受像層33とを密着させ、サーマルヘッドによりブランク媒体201の支持体221側から加熱し、転写材層220により画像表示層220aを印字する。
【0074】
画像表示層220aの表示画素311、表示画素312は、以上のような方法でブランク媒体201の転写材層220を印字したものである。第1の領域となる表示画素311は隠蔽画像を表示する画素であり、第2の領域となる表示画素312は隠蔽画像を表示しない画素である。隠蔽画像の形成方法については、後で詳述する。
【0075】
次に、図8は、図7に示す中間転写箔301を、被転写体である表紙本体21に転写した一例を概略的に示す断面図である。
【0076】
個人認証媒体4の被転写体である表紙本体21に、中間転写箔301の受像層33と画像表示層220aとを密着し、支持体31と表紙本体21側から加熱、加圧して接着する。その後、個人認証媒体4から、剥離保護層32と支持体31と界面で、支持体31を剥離する。
【0077】
次に、隠蔽画像の形成方法について説明する。図9は、図7に示す画像表示体の隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図である。図10は図2乃至図5に示す画像表示体の視域を概略的に示す図9のC−C線に沿った断面図である。
【0078】
図9に示す画素構造は、個人認証媒体4に印字された画像表示層220aである。前述したように、表示画素311は隠蔽画像を表示する画素であり、隠蔽画像は「S」の文字を表現している。表示画素312は隠蔽画像を表示しない画素である。
【0079】
ここで、画像表示層220aの印字に用いる図6の転写材層220の回折格子構造は、表示画素311と表示画素312とでは異なる形状の回折格子を用いて印字している。ここで、照明光として、Y軸に垂直で、XZ平面状でZ軸より45°上方に点照明光源があると仮定すると、その照明光で回折する光の状態が図10に示すようになる。
【0080】
すなわち、表示画素312から回折するY方向の光の範囲は、視域412となり、表示画素311から回折するY方向の光の範囲は、視域411となる。視域411は視域412と比較して狭い範囲となっている。
【0081】
ここで、観察範囲42の中から個人認証媒体4を観察すると、すべての画素からの回折光を観察できる。次に、観察範囲43は表示画素311からの回折光のみが観察されない範囲であるので、観察範囲43から個人認証媒体4を観察すると、表示画素311のみが光らない状態となる。つまり、表示画素311を配置することで隠蔽画像を形成することが可能となる。
【0082】
その結果、視域411は、視域412との差を大きくとれば、隠蔽画像を観察できる範囲が広くなり、逆に視域412との差を小さくすれば、隠蔽画像を観察することができる範囲を狭くすることが出来る。
【0083】
次に、図11は、図9に示す画像表示体に含まれる回折格子形状の一例を概略的に示す平面図である。図11の例は、表示画素311の回折格子の構造を拡大して示している。回折格子構造Gaは曲線の溝構造となっている。
【0084】
次に、図12は、図9に示す画像表示体に含まれる他の回折格子形状の一例を概略的に示す平面図である。図12の例は、表示画素312の回折格子の構造を拡大して示している。回折格子構造Gbは曲線の溝構造となっている。
【0085】
ここで、回折格子構造Gaの曲線の局率は、回折格子構造Gbと比較して大きく緩やかな曲線となっている。このような曲線を有する回折格子構造の場合、Y軸方向への回折光の拡散する範囲の大きさは、曲線の局率により決定する。このため、表示画素312の回折光の視域は表示画素311よりも広くなる。
【0086】
また、X軸方向への回折光の拡散範囲は、回折構造のピッチにより決定し、広く拡散させるためには、複数の回折格子ピッチを含めるようにすることが必要である。しかし、X軸方向は、光の分光による拡散も含まれるため、Y軸方向より広く拡散してしまい、隠蔽画像との切替わり方が徐々に変化するため、隠蔽画像を認識し易くなってしまう。このことから、隠蔽画像を記録する方法としては、回折格子の局率の変化を用いるようにする。
【0087】
次に、具体的な個人認証媒体の作製方法について説明する。個人認証媒体100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得ることができる。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0088】
次に、図7に示す中間転写箔301を準備する。中間転写箔301は、多層構造を有している層であって、支持体31と、その上に順次形成された剥離保護層32及び受像層33とを含んでいる。なお、剥離保護層32及び受像層33は下地層を構成する。
【0089】
引き続き、中間転写箔301上に、先の顔画像に対応したパターンを有している画像表示層220aを形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて、図6に示すブランク媒体201の支持体221から、転写材層220の一部を受像層33上へと熱転写する。
【0090】
ここで、サーマルヘッドを利用して、転写材層220のうち受像層33上へと熱転写される部分が、先の顔画像に対応したパターンのうち、隠蔽画像を表示するパターン以外の部分を印字する。
【0091】
また、ブランク媒体201における転写材層220の回折構造形成層223の回折格子の形状としては、図12に示す表示画素312の回折格子の構造とする。これにより、表示画素312の部分を印字することができる。
【0092】
さらに、ブランク媒体201の転写材層220の回折構造形成層223の回折格子の形状が、図11に示す表示画素311の回折格子の構造とした転写材層220を用いて、先の顔画像に対応したパターンのうち、隠蔽画像を表示するパターン部分を印字する。これにより、表示画素311の部分を印字することができる。
【0093】
次に、以上のようにして得られる画像表示層220aは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には、図4及び図5に示すように複数のドット状部からなる。これらドット状部の各中心は、図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0094】
なお、図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図4では、隣り合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣り合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0095】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。画像表示層220aに顔画像を表示させる場合には、ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする.この寸法を大きく刷る途、画像表示層に似0アールに高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、画像表示層220aのパターン形状の再現性が低下する。
【0096】
よって、以上のような手順に従って、支持体31と剥離保護層32と受像層33と画像表示層220aとを含んだ中間転写箔301を得ることができる。次に、図8に示す個人認証媒体4の被転写体である表紙本体21に、中間転写箔301の受像層33と画像表示層220aを密着し、支持体31と表紙本体21側から加熱、加圧して転写を行い、支持体31を剥離する。
【0097】
以上のようにして作製された個人認証媒体4について、図10に示す観察範囲42から観察すると、顔画像を観察できる。また、観察範囲43から観察すると、顔画像のうち隠蔽画像部分の回折光を観察できなくなるので、顔画像の中に隠蔽画像が現れてくる。
【0098】
従って、図9に示すように表示画素311、312を配列した場合、この範囲ではすべて画素で埋め尽くされているため、顔の中でも前面が光っている部分を示している。そして、正面方向から視点をずらして観察すると、「S」という文字の部分が暗くなって観察され、隠蔽画像として確認することが出来る。
【0099】
ところで、一般的にホログラムや回折格子などは回折光を射出する領域が異なる場合、つまり視域が異なると、観察する回折光の輝度が異なり、回折する範囲が狭いほど輝度が明るくなる傾向がある。このため、回折光を射出する領域が異なる回折格子を用いて隠蔽画像を記録すると、隠蔽画像が観察できないはずの領域(ここでは正面方向)でも、回折光の輝度の差で隠蔽画像が確認できてしまう。つまり、正面で観察した場合に「S」という部分の輝度が上がり、その部分を文字として認識してしまう。
【0100】
このことから、隠蔽画像を記録した領域の回折格子の輝度を、その他の領域の輝度と等しくすることで、隠蔽画像の影が観察されてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0101】
輝度を調整する方法としては、面積を変化させて輝度調整する方法が一般的であるが、この場合には、一定の大きさの画素が連続して配置している中に、周囲と面積が異なる領域がある場合には、その領域を認識し易くなってしまい、隠蔽画像を観察できてしまうおそれがある。
【0102】
輝度を調整する方法としては、回折格子の深さを変化させ、回折効率を調整することで、視域が異なっても輝度が一定の回折格子を作製することが可能となる。回折格子の深さを調整する方法としては、電子線描画によって作製する原版の回折格子の深さを変化させる方法が有効である。
【0103】
次に、図13は、本発明の一実施の形態に係るブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。
【0104】
顔画像を表現するのにカラー画像を印字するようにし、ロールフィルム状のブランク媒体リボン450には、赤用転写材層451、緑用転写材層452、青用転写材層453のパネルを設けてある。さらに、隠蔽画像用転写材層454を設けてあり、各パネルは連続して順次配置してある。また、位置決めマーク455によって各パネルの位置を調整して印字を行えるようにしてある。
【0105】
顔画像を赤緑青に色分解し、それぞれの色に対応した転写材層451〜453のパネルを用いて中間転写箔301に印字を行い、画像表示層220aを作製する。ここで、隠蔽画像用転写材層454のパネルの回折格子ピッチは、赤用転写材層451の回折格子のピッチと等しく設定し、隠蔽画像用転写材層454の視域は赤用転写材層451の視域より狭くなるように設定する。
【0106】
また、顔画像の赤色のデータに、隠蔽画像のデータを掛け合わせ、隠蔽画像用転写材層454のパネルで印字することで、斜め方向から観察した場合に顔の赤色データの中に隠蔽画像を観察することが出来る。ここで、赤色以外の隠蔽画像用転写材層454を用意すれば、カラーの隠蔽画像を印字することも可能である。
【0107】
次に、図14は、本発明の実施形態に係る画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図である。ここでの隠蔽画像用転写材層454の視域の設定は、図10に示したような設定としてある。観察画像460は観察範囲42から観察した画像で、顔画像のみ観察することができ、隠蔽画像は観察できない。
【0108】
次に、観察画像462は観察範囲43から観察した画像で、隠蔽画像と顔画像が観察することができる。また、観察画像461は片目が範囲42、もう片方の目が範囲43から観察した場合の画像である。
【0109】
左右方向に視域が異なっていることから、観察位置によっては左右の目に隠蔽画像を観察できる領域と、観察できない領域とが同時に入る場所が発生することになる。このため、左右で隠蔽画像の有る無しの画像情報であるため、非常に違和感の有る画像として観察される。
【0110】
そのため、より複雑で特殊な視覚効果を持った画像は再現することが難しく、改竄が困難であり、かつ真贋の判断を容易に行うことが可能となる個人認証媒体を提供することが可能となる。
【0111】
以上の説明は、パスポートとしての個人認証媒体を例示したが、この個人認証に利用可能な画像表示技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することが可能である。
【0112】
画像表示層220aを貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示層220aを貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0113】
画像表示層220aに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示層220aに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0114】
前記実施の形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前記実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…折り丁、2…表紙、4…個人認証媒体、11…紙片、13a…画像、13b…画像、14…画像、15…画像、21…表紙本体、22…転写材層、42…観察範囲、43観察範囲、100…個人認証媒体、201…ブランク媒体、210…画像表示層、220a…画像表示層、220…転写材層、222…剥離層、223…回折構造形成層、224…反射層、225…接着層、31…支持体、32…剥離保護層、33…受像層、311表示画素、312…表示画素、301…中間転写箔、411…視域、412…視域、450…ブランク媒体リボン、451…赤用転写材層、452…緑用転写材層、453…青用転写材層、454…隠蔽画像用転写材層、455…位置決めマーク、460…観察画像、461…観察画像、462…観察画像、Ga…回折構造、Gb…回折構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、
前記支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、
ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により前記下地層上に転写される画像表示層とを備え
この画像表示層は、第1領域、第2領域の少なくとも2種類の領域を有し、これら第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、前記第1領域の回折光の射出する範囲は、前記第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、前記第2領域の回折光の射出する範囲は、前記第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、前記第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像を配置していることを特徴とする画像表示体。
【請求項2】
前記第1領域は、特定の照明条件のもとで第1の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ秘匿情報の第1画像を回折像として表示し、
前記特定の照明条件のもとで前記第1領域及び前記第2領域を、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ第2画像を回折像として表示することを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記画像表示層の前記第1領域及び前記第2領域は、前記特定の照明条件のもとで前記第2画像を回折像として表示する前記ホログラム及び/又は回折格子の輝度が等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記秘匿情報の画像は、特定の照明条件のもとで前記画像表示体に対して正面方向からは観察されないことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記個人情報は、顔画像を含んでいることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記秘匿情報の画像は、前記個人情報の他の一部を含んだ画像であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備してなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の構成を有する画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを備えたことを特徴とする個人認証媒体。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、
支持体と、この支持体に剥離可能に支持された転写材層とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、
前記回折構造形成層は、特定の照明条件のもとで回折光を射出する範囲が異なる少なくとも2種類のホログラム及び/又は回折格子を有し、
前記2種類のホログラム及び/又は回折格子のうち1つは、他のホログラム及び/又は回折格子より回折光の射出する範囲が大きいことを特徴とするブランク媒体。
【請求項1】
支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、
前記支持体に剥離可能に支持され、光透過性を有する下地層と、
ホログラム及び/又は回折格を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写により前記下地層上に転写される画像表示層とを備え
この画像表示層は、第1領域、第2領域の少なくとも2種類の領域を有し、これら第1領域及び第2領域は、特定の照明条件のもとで回折光の射出する範囲が異なり、前記第1領域の回折光の射出する範囲は、前記第2領域の回折光の射出する範囲よりも大きく、前記第2領域の回折光の射出する範囲は、前記第1領域の回折光の射出する範囲に包含し、前記第1領域及び前記第2領域のホログラム及び/又は回折格子は、個人情報を含んだ秘匿情報の画像を配置していることを特徴とする画像表示体。
【請求項2】
前記第1領域は、特定の照明条件のもとで第1の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ秘匿情報の第1画像を回折像として表示し、
前記特定の照明条件のもとで前記第1領域及び前記第2領域を、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向から観察した場合に、個人情報を含んだ第2画像を回折像として表示することを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記画像表示層の前記第1領域及び前記第2領域は、前記特定の照明条件のもとで前記第2画像を回折像として表示する前記ホログラム及び/又は回折格子の輝度が等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記秘匿情報の画像は、特定の照明条件のもとで前記画像表示体に対して正面方向からは観察されないことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記個人情報は、顔画像を含んでいることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記秘匿情報の画像は、前記個人情報の他の一部を含んだ画像であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備してなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の画像表示体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の構成を有する画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを備えたことを特徴とする個人認証媒体。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、
支持体と、この支持体に剥離可能に支持された転写材層とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、
前記回折構造形成層は、特定の照明条件のもとで回折光を射出する範囲が異なる少なくとも2種類のホログラム及び/又は回折格子を有し、
前記2種類のホログラム及び/又は回折格子のうち1つは、他のホログラム及び/又は回折格子より回折光の射出する範囲が大きいことを特徴とするブランク媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−78891(P2013−78891A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220049(P2011−220049)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]