説明

画像表示用パネル及びその駆動方法

【課題】バーコード表示した場合に読み取り間違いが生じない鮮明な画像表示を行うことができる画像表示用パネル及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルにより、バーコードを表示する。画像表示媒体としては粒子群または粉流体を用いる。本構成の画像表示用パネルの構成では、鮮明で視野角の依存性の少ない画像表示を行うことができるため、バーコード表示した場合に読み取り間違いが生じない。また、一方の基板上で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と他方の基板上で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とから構成されたマトリックス電極に電圧を印加してバーコード表示を行うにあたり、行電極を一端から他端にスキャンすることなく、バーコード表示をすべき列電極に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードを好適に表示することができる可逆性の画像表示用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコードは印刷により作製されていた。そして、バーコードを直接商品の風袋に印刷したり、印刷したラベルを商品の風袋に貼り付けて、バーコードを商品に付し、そのバーコードをバーコードリーダ等で読み取ることで、商品の情報を知るよう構成されていた。しかし、商品に一度貼り付けてしまったバーコード表示は書き換えることができないため、バーコードを印刷したラベル全部を作製し直さなければならなかった。また、不要になったバーコードラベルは廃棄するので、資源浪費となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、上述した問題を解消するための方法として、近年、液晶や感熱染料を利用した可逆性の画像表示方法が考えられている(例えば、特許文献1)。しかしながら、液晶や感熱染料を利用した画像表示方法では鮮明さが足りず、バーコード表示した場合に読み取り間違いを生じる等の問題があった。
【特許文献1】特開2003−222893号公報
【0004】
本発明の目的は上述した課題を解消して、バーコード表示した場合に読み取り間違いが生じない鮮明な画像表示を行うことができる画像表示用パネル及びその駆動方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルであって、バーコードを表示することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の画像表示用パネルの好適例としては、画像表示媒体が粒子群または粉流体であることがある。
【0007】
本発明の画像表示用パネルの駆動方法は、上述した画像表示用パネルの駆動方法において、一方の基板上で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と他方の基板上で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とから構成されたマトリックス電極に電圧を印加してバーコード表示を行うにあたり、行電極を一端から他端にスキャンすることなく、バーコード表示をすべき列電極に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行うことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の画像表示用パネルの駆動方法の好適例としては、バーコード表示のときのみ、駆動方法を上述した駆動方法に切り換えることがある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像表示用パネルでは、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルでバーコードを表示することで、バーコード表示した場合に読み取り間違いが生じない鮮明な画像表示を行うことができる。
【0010】
また、本発明の画像表示用パネルの駆動方法では、一方の基板上で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と他方の基板上で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とから構成されたマトリックス電極に電圧を印加してバーコード表示を行うにあたり、行電極を一端から他端にスキャンすることなく、バーコード表示をすべき列電極に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行うことにより、パネルの持つ最大のコントラストを引き出して、バーコード読み取り性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明の対象となる画像表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明で用いる画像表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した2種類の、互いに帯電特性の異なる画像表示媒体(粒子群または粉流体)に電界が付与される。付与された電界方向にそって、高電位側に向かっては低電位に帯電した画像表示媒体が電界の力やクーロン力などによって引き寄せられ、また、低電位側に向かっては高電位に帯電した画像表示媒体が電界の力やクーロン力などによって引き寄せられ、それら画像表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、画像表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示用パネルを設計する必要がある。ここで、画像表示媒体とする粒子または粉流体にかかる力は、粒子同士または粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0012】
本発明の画像表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図3(a)、(b)に基づき説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図2(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
また、図3(a)、(b)に、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)とは異なる、マイクロカプセル電気泳動式の表示パネルの一例を示す。本例も本発明の画像表示用パネルの対象となる。図3(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)をマイクロカプセル内に充填後基板1、2間に配置し、印加された電界に応じて基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
【0013】
本発明の画像表示用パネルの特徴は、上述した構成の可逆性の画像表示用パネルでバーコードを表示させた点である。次に、本発明の表示の対象となるバーコードについて説明する。
【0014】
図4はバーコードの一例を説明するための図である。図4に示すように、バーコードは長さ方向のクワイエットゾーン、バーコードシンボル、クワイエットゾーンから構成され、バーコードシンボルはステータキャラクタ、データ(メッセージ)、チェックデジット、ストップキャラクタから構成されている。図5はバーコードを構成するバーとスペースとを説明するための図である。図4に示す各部分を構成するバーコードは、最小単位である細・太のバー(NB、WB)と細・太のスペース(NS、WS)の組合せで構成されており、細・太の比率は、本発明では、NB:WB=NS:WS=1ドット:2ドットとしている。図6は2次元バーコードであるQRコードの一例を説明するための図である。バーコードは1方向だけにしかデータを持たせることができないのに対し、QRコードでは水平・垂直方向に情報を持たせることができるため、QRコードはバーコードの数十倍から数百倍のデータを持つ。
【0015】
ここで、反射型の液晶パネル(LCD)を用い白黒表示でバーコードや2次元バーコードであるQRコードを表示した場合、白黒のコントラストが十分でないこと、スキャンして表示しておりリーダとの干渉が起こる場合があること、および、視野角が狭いことから、読み取り間違いが多くなる。
【0016】
これに対し、本発明の、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルでは、まず、粒子または粉流体を画像表示媒体として使用していることで、元来、白黒のコントラストが大きいとともに、視野角も広くなる。また、画像表示媒体を移動させる時だけ電界を働かせ、移動後は電界をかけなくても、一旦移動した位置に画像表示媒体が留まるので表示画像が保持させる(メモリー性がある)。そのためスキャン表示による干渉は起きない。さらに、画像を書き換えたい時に再び電界を働かせることで、画像表示媒体がまた移動して別の画像を表示することになるので、画像の書換えを可逆的に行うことができる。さらにまた、画像表示媒体が画像を直接表示するので、画像表示媒体のサイズが画像の鮮明さを決める。本発明では、粒子径1〜20μmの粒子群等を画像表示媒体として用いるので、鮮明な画像を表示することができ、バーコードのような繊細で緻密な画像表示もできる。そのため、本発明の画像表示用パネルでバーコードや2次元バーコードであるQRコードを表示した場合は、従来の液晶や感熱染料利用した場合と比較して、読み取り精度を格段に向上させることができる。
【0017】
次に、本発明の画像表示用パネルの駆動方法について説明する。なお、以下に述べる駆動方法は、一方の基板上で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と他方の基板上で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とから構成されたマトリックス電極に電圧を印加してバーコード表示を行う場合に限定され、また、QRコードの表示には適用することができない。
【0018】
図7は本発明の画像表示用パネルの駆動方法で用いるマトリクス電極の一例を説明するための図である。図7に示す例において、一方の基板1上で行方向に延びる複数本(ここでは4本)の電極からなる行電極5−1〜5−4と、他方の基板2上で列方向に延びる複数本(ここでは5本)の電極からなる列電極6−1〜6−5とから、マトリックス電極を構成している。このマトリックス電極に電圧を行電極5−1〜5−4の順にスキャンして印加する駆動方法は、上述した構成の本発明の画像表示用パネルに一般的に用いられている。
【0019】
図8(a)〜(d)はそれぞれ図7に示すマトリックス電極を用いた通常の駆動方法の一例を示す図である。図8(a)〜(d)に示す例では、行電極5−1〜5−4と列電極6−1〜6−5との交点の表示セルにおいて、両電極間に+V(または−V)の電圧を印加することで表示を反転し、それ以外の表示セルにはどちらにも反転しない+V/2(または−V/2)の電圧を印加させて、表示セルの表示状態を維持する。そして、本例では、列電極6−2と6−4の位置を黒表示してバーコード表示を行うものとする。そのため、図8(a)〜(d)に示す例において、行電極5−1〜5−4を順にスキャンして電圧を印加する際、列電極6−2と6−4には常に駆動電圧Vを印加している。
【0020】
上述したマトリックス電極を用いた通常の駆動方法では、まず、図8(a)に示すように、第1行の行電極5−1には電圧0を印加し、その他の行電極5−2〜5−4には電圧V/2を印加することで、第1行目のバーコード表示を行う。次に、図8(b)に示すように、第2行の行電極5−2に電圧0を印加し、その他の行電極5−1、5−3、5−4には電圧V/2を印加することで、第2行目のバーコード表示を行う。次に、図8(c)に示すように、第3行の行電極5−3に電圧0を印加し、その他の行電極5−1、5−2、5−4には電圧V/2を印加することで、第3行目のバーコード表示を行う。次に、図8(d)に示すように、第4行の行電極5−4には電圧0を印加し、その他の行電極5−1〜5−3には電圧V/2を印加することで、第4行目のバーコード表示を行う。以上で1回のバーコード表示を終了する。
【0021】
この通常の駆動方法では、図8(b)の第2行目、図8(c)の第1、2行目、図8(d)の第1〜3行目のうち、列電極6−2及び6−4と交差する表示セルにおいて、黒く表示されるべき表示セルがV/2の印加で白っぽく灰色となるクロストークの減少が現れ、最大のコントラストが得られない場合があった。
この問題を解消できる本発明の駆動方法について以下に説明する。
【0022】
図9は図7に示すマトリックス電極を用いた本発明の駆動方法の一例を示す図である。図9に示す例では、行電極5−1〜5−4を一端から他端にスキャンすることなく、行電極5−1〜5−4の全てに電圧0を印加した状態で、バーコード表示をすべき列電極6−2、6−4に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行う。そのため、図9に示す例では、バーコード表示のためにスキャンしないため、クロストークの影響が発現せず、最大のコントラストを得ることができる。なお、本例は、バーコード表示のみに有効であり通常の表示ができない。そのため、バーコード表示以外の表示も兼用する画像表示用パネルの場合は、バーコード表示の時のみ図9に示す駆動方法を用い、その他の通常の表示の時は図8(a)〜(d)に示す駆動方法を用いるよう、表示の方法に従って駆動方法を切り換えることが好ましい。
【0023】
以下、本発明の画像表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0024】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から画像表示媒体の色が確認できる透明な基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型の画像表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0025】
必要に応じて設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した視野側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0026】
必要に応じて設ける隔壁4については、その形状は表示にかかわる画像表示媒体の種類により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0027】
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図10に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。このうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。いずれの方法においても本発明を好適に用いることができる。
【0028】
次に、本発明の画像表示用パネルで用いる画像表示媒体としての粉流体について説明する。なお、本発明の画像表示媒体としての粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標)」の権利を得ている。
【0029】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0030】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0031】
本発明の画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、画像表示媒体として例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に例えば用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0032】
次に、本発明の画像表示用パネルで用いる画像表示媒体としての粒子について説明する。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0033】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0034】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0035】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0036】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0037】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0038】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0039】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0040】
また、本発明の画像表示用パネルで用いる粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0041】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0042】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0043】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0044】
画像表示媒体の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示用パネルにおける画像表示媒体の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に画像表示媒体の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0045】
更に、本発明においては乾式の画像表示媒体を用いる場合に基板間の画像表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a)、(b)〜図3(a)、(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体3)の占有部分、隔壁4の占有部分(存在する場合)、装置シール部分を除いた、いわゆる画像表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、画像表示媒体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0046】
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、画像表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における画像表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には画像表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の画像表示用パネルでは、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルとして構成しているため、バーコードや2次元バーコードであるQRコードを表示するために好適に用いることができる。また、本発明の画像表示用パネルの製造方法では、行電極を一端から他端にスキャンすることなく、バーコードを表示すべき列電極に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行うことにより、パネルの持つ最大のコントラストを引き出して、バーコード読み取り性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルのさらに他の例として、マイクロカプセル電気泳動式の画像表示装置の一例を示す図である。
【図4】バーコードの一例を説明するための図である。
【図5】バーコードを構成するバーとスペースとを説明するための図である。
【図6】2次元バーコードであるQRコードの一例を説明するための図である。
【図7】本発明の画像表示用パネルの駆動方法で用いるマトリックス電極の一例を説明するための図である。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ図7に示すマトリックス電極を用いた通常の駆動方法の一例を示す図である。
【図9】図7に示すマトリックス電極を用いた本発明の駆動方法の一例を示す図である。
【図10】本発明の画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1、2 基板
3 画像表示媒体(粒子または粉流体)
3W 白色粒子(白色粉流体)
3B 黒色粒子(黒色粉流体)
4 隔壁
5、6 電極
5−1〜5−4 行電極
6−1〜6−4 列電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に、画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて、画像表示媒体を移動させて画像を表示する可逆性の画像表示用パネルであって、バーコードを表示することを特徴とする画像表示用パネル。
【請求項2】
画像表示媒体が粒子群または粉流体である請求項1に記載の画像表示用パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示用パネルの駆動方法において、一方の基板上で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と他方の基板上で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とから構成されたマトリックス電極に電圧を印加してバーコード表示を行うにあたり、行電極を一端から他端にスキャンすることなく、バーコード表示をすべき列電極に駆動電圧を印加することで、一度にバーコード表示を行うことを特徴とする画像表示用パネルの駆動方法。
【請求項4】
バーコード表示のときのみ、駆動方法を請求項3に記載の駆動方法に切り換えることを特徴とする画像表示用パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−47935(P2006−47935A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239640(P2004−239640)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】