説明

画像表示装置、その制御方法、及び画像表示システム

【課題】バックライト内部に温度ムラが生じていても精度良くキャリブレーションを行うことができる画像表示装置を提供する。
【解決手段】複数の発光ブロックを有するバックライトと、表示パネルと、表示パネルの輝度及び色度を測定するパネル測定手段による測定結果に基づき表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、複数の発光ブロックの各々の温度を測定する温度測定手段と、所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックに対応する表示パネルの領域内にパッチ画像表示領域を設定する設定手段と、設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成手段と、を有し、キャリブレーション手段は、パッチ画像表示領域にパッチ画像を表示した場合のパネル測定手段による測定結果に基づきキャリブレーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、その制御方法、及び画像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の高画質化が進む中、表示デバイスの安定性および、高精度な色再現に対するユーザの要求レベルも日々高まっている。しかしながら、液晶表示装置は、経年劣化により色再現性が変化してしまう。そのため、常に安定した色再現性を実現するためには、定期的にキャリブレーションを行う必要がある。
【0003】
そこで、画像表示装置の画面上に測色用のパッチを表示し、ユーザが光学センサを用いてパッチの輝度、色度を測定することで、画質調整を実行する処理方法が開示されている。(特許文献1参照)以下、この処理方法をキャリブレーションと称す。
【0004】
また、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)は、長寿命でかつ低消費電力であることから、近年では、液晶表示装置のバックライトとして使用されている。LEDは、使用される温度条件によってその発光特性が変化してしまうことが知られている。しかしながら、液晶表示装置は多様な環境下で使用されるため、LED毎の温度に不均一性(以下、温度ムラと称す。)が生じてしまう場合がある。
【0005】
更に、近年では、入力される画像信号に応じてLED毎の発光強度を個別に制御することで、より高コントラストを得る制御方法が知られている。(以下ローカルディミングと称す。)ローカルディミングを実行した場合においても、バックライト内部のLED毎に発光強度が異なるために、同様に温度ムラが生じてしまう。
【0006】
温度ムラが生じると、上述したLEDの特性により、発光強度がLED毎に異なってしまい、これにより、液晶表示装置に表示される画面には、輝度、色度のムラ(以下、面内ムラと称す。)が生じてしまう。このように、面内ムラが生じている状態でキャリブレーションを実行すると、画面内の領域毎に輝度、色度が異なっているために精度よく調整することが難しい。
【0007】
そこで、面内ムラが生じている場合においても、良好にキャリブレーションが実行可能な処理方法が開示されている。(特許文献2参照)
特許文献2に開示されている処理方法は、表示装置の面内ムラを測定し、その測定結果である面内ムラ情報ならびに、測色パッチの表示位置に関する情報を取得し、双方の情報を用いて画質調整を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−209230号公報
【特許文献2】特開2008−147889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された方法では、キャリブレーションを実行する度に面内ムラの分布を測定する必要があり、その結果キャリブレーションに係る時間が増大してしまう。
また、バックライト内部に温度ムラが生じている状態でキャリブレーションを実行する
と、温度ムラが生じているLEDの温度が一定でないことより、キャリブレーション実行中に当該LEDの発光特性が変化してしまう。これにより、精度よくキャリブレーションを行うことができない。
【0010】
つまり、特許文献2に開示された処理方法では、キャリブレーション実行中に、面内ムラの特性が一定でない場合については、精度よく調整することが難しい。
そこで、本発明は、バックライト内部に温度ムラが生じている状態でも精度良くキャリブレーションを行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルの輝度及び色度を測定するパネル測定手段による測定結果に基づき前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により所定期間内に前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定し、所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成手段と、
を有し、
前記キャリブレーション手段は、前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に前記生成手段により生成されたパッチ画像を表示した場合の前記パネル測定手段による測定結果に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示装置である。
【0012】
本発明は、複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
を有する画像表示装置の制御方法であって、
前記表示パネルの輝度及び色度の測定値を取得するパネル測定値取得ステップと、
前記取得した測定値に基づき前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーションステップと、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を取得する温度取得ステップと、
所定期間内における前記複数の発光ブロックの各々の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定ステップと、
前記特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定ステップと、
前記設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成ステップと、を有し、
前記キャリブレーションステップでは、前記設定ステップにおいて設定されたパッチ画像表示領域に前記生成ステップにおいて生成されたパッチ画像を表示した場合に前記パネル測定値取得ステップにより取得される測定値に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示装置の制御方法である。
【0013】
本発明は、画像表示装置と、画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置と、を有する画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、
複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定する温度測定手段と、
を有し、
前記キャリブレーション装置は、
前記表示パネルの輝度及び色度を測定するパネル測定手段と、
前記パネル測定手段による測定結果に基づいて前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を所定期間、測定するよう前記温度測定手段を制御し、前記温度測定手段による該所定期間の測定結果を取得し、該所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成手段と、
を有し、
前記キャリブレーション手段は、前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に前記生成手段により生成されたパッチ画像を表示した場合の前記パネル測定手段による測定結果に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バックライトに温度ムラが生じている状態でも精度良くキャリブレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の画像表示装置のブロック図及び発光部の構成図
【図2】図1の画像表示装置に係るバックライト、温度分布、フラグの説明図
【図3】図1の画像表示装置の表示部の説明図
【図4】キャリブレーション処理を表すフローチャート
【図5】実施例2の画像表示装置のブロック図
【図6】実施例2に記載の発光強度の調整方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1(A)は、本発明が適用できる画像表示装置のブロック図である。
【0017】
図1(A)に示す画像表示装置100は、バックライト101と、バックライト101内部に配置されている複数の発光部102(発光ブロック)と、表示部106(表示パネル)と、を有する。表示部106は、入力する画像データに応じてバックライト101からの照射光の透過率を画素毎に変更する液晶パネルにより構成され、画像データに基づく画像を表示する。画像表示装置100は、キャリブレーション用のパッチ画像を生成するパッチ生成部105と、表示部106の所定の測定対象領域の輝度及び色度を測定する光学センサ112と、を有する。画像表示装置100は、キャリブレーション制御部111を有する。キャリブレーション制御部111は、光学センサ112による測定結果(測定値)を取得し、測定結果に基づき表示部106のキャリブレーションを行う。画像表示装置100は、複数の発光部102それぞれの温度測定を行う複数の温度検出部103と、温度検出部103の検出結果から、キャリブレーション用のパッチ画像を表示する領域を
特定する表示領域特定部104と、を有する。キャリブレーション制御部111は、表示領域特定部104で特定した表示領域にパッチ生成部105が生成した測色用のパッチ画像を表示した場合の光学センサ112による測定結果に基づきキャリブレーションを行う。
【0018】
図1(A)に示すバックライト101は、図2(A)に示すように発光部102が複数個配置されており、本実施例では、5×4の計20個の発光部102が配置されている構成とする。
本実施例では、計20個の発光部102を有する構成としているが、この値は任意であり用途に応じて適した個数を配置すればよい。
【0019】
本実施例では、各発光部102の位置は、図2(B)に示すように左上から数えた横方向の位置x1と、左上から数えた縦方向の位置y1と、の組み合わせ(x1、y1)で表す。本実施例の構成では(x1,y1)は(1,1)〜(5、4)の値をとる。領域(x1、y1)に対応する発光部102を、発光部102(x1、y1)と表記する。
【0020】
図1(A)に示す発光部102には、図1(B)に示すように、赤、緑、青の3色のLEDを1組として4組配置されており、温度検出部103は、発光部102の中央部に配置されている構成とする。
温度検出部103は、発光部102の温度を検出することができるセンサである。
また、図1(A)に示す表示部106は、1920×1080ドットの液晶パネルとする。液晶パネルの画素数はこれに限らない。
【0021】
以上のように構成された本実施例の動作を図2(C)に示す画像を用いて説明する。
図2(C)は、バックライト101内部の発光部102(x1、y1)毎の温度分布を示しており、図中の数字は、各発光部102(x1、y1)の温度を示している。この例では、発光部102(3、2)、発光部102(4、2)、発光部102(3、3)、及び発光部102(4、3)の温度(図中の斜線の領域)は30度、他の発光部102(x1、y1)の温度は40度であり、温度分布(温度ムラ)が生じている。
【0022】
本実施例では、発光部102(x1、y1)に対応する温度TをT(x1、y1)と表記する。
本実施例では、図2(C)に示す温度分布が生じている状態で、キャリブレーションを実行する場合の処理方法を記述する。
キャリブレーション制御部111がキャリブレーション処理を実行すると、図1(A)に示す温度検出部103は発光部102(x1、y1)各々の温度を検出し、各発光部102(x1、y1)に対応する温度T(x1、y1)を表示領域特定部104に送信する。ここでは、温度T(x1、y1)として、図2(C)に示す温度検出値が送信される場合を例に説明する。
【0023】
表示領域特定部104は、送信された各発光部102(x1、y1)の温度T(x1、y1)に基づいて、キャリブレーションに用いる測色パッチの表示領域を決定する。
表示領域特定部104は、図1(A)に示すように、温度変化検出部107、基準温度比較部108、表示領域計算部109とで構成される。
【0024】
図1(A)に示す温度変化検出部107は、温度検出部103による温度検出結果T(x1、y1)から、時間方向に対する温度の変化を検出する。そして、温度が一定であるならばフラグF1=1とし、温度が一定でない場合には、フラグF1=0として、その判定結果を基準温度比較部108へ送信する。
温度変化検出部107は、温度検出部103により測定される発光部102(x1,y
1)の各々の温度を所定期間取得することにより時間方向に対する温度の変化を検出する(温度取得処理)。温度変化検出部107は、取得した温度に基づき所定期間内の温度変化量(温度変化の大きさ)を求め、その温度変化量と、閾値Th1とを比較することにより、温度変化の検出を行う。温度変化検出部107は、温度変化量が閾値Th1より小さい発光部102(x1,y1)のフラグF1=1とし、温度変化量が閾値Th1以上である発光部102(x1,y1)のフラグF1=0として出力する。
【0025】
本実施例では、図2(D)に示すフラグF1が基準温度比較部108へ送信されるものとする。図2(D)の例では、領域(3,2)、(4,2)、(3,3)、及び(4,3)のフラグF1=0、それ以外の領域のフラグF1=1である。つまり、この例では、図2(D)において斜線で示す領域の温度が一定ではなく、それ以外の領域の温度が一定であるものとする。温度変化検出部107は、所定期間内の温度変化量が閾値Th1より小さい発光部102(x1,y1)を特定する処理を行っている。
【0026】
図1(A)に示す基準温度比較部108は、各発光部102(x1,y1)の温度T(x1,y1)とキャリブレーションに適した温度である基準温度Tsとを比較する。基準温度Tsは、発光部102(x1、y1)毎に定めてもよく、また、バックライトの発光強度毎に定めてもよい。
【0027】
本実施例では、説明を簡略化するために、基準温度Tsは、発光部102(x1、y1)やバックライトの発光強度によらない値であるものとする。本実施例では、基準温度比較部108は、温度Tが38℃≦T≦42℃の範囲内に入っている場合に、温度Tと基準温度Tsとの差異が閾値Th2より小さい、すなわち温度Tは基準温度Tsに一致する、と判定する。
図1(A)に示す基準温度比較部108は、フラグF1=1である領域において、温度T(x1,y1)の各々と基準温度Tsとを順次比較する。
【0028】
基準温度比較部108は、温度T(x1,y1)と基準温度Tsとの差異が閾値Th2より小さい場合、領域(x1,y1)のフラグF2=1とする。また、基準温度比較部108は、温度T(x1,y1)と基準温度Tsとの差異が閾値Th2以上の場合、領域(x1,y1)のフラグF2=0とする。基準温度比較部108は、これらの判定結果を表示領域計算部109へ送信する。つまり、フラグF2=1となる領域は、温度が一定でかつ温度が基準温度Tsに一致する領域である。本実施例では、フラグF2=1となる領域を領域Aと呼ぶ。
【0029】
本実施例の場合、図2(E)に示すフラグF2が、表示領域計算部109へ送信される。この例では、領域(3,2)、(4,2)、(3,3)、及び(4,3)はフラグF2=0である。それ以外の領域がフラグF2=1となり、この領域が領域Aとして特定される(図2(E)に示す斜線の領域)。
【0030】
図1(A)に示す表示領域計算部109は、フラグF2=1に対応する領域Aからパッチの表示を行う領域Bを決定する。キャリブレーションは画面中央部で調整を行うことが一般的であるため、本実施例では、表示領域計算部109は、領域Aのうち画面中央部に近い位置にある領域を領域Bとする。但し、領域Aのうちのどれを領域Bとして指定するかは任意であり、用途に応じて設定すればよい。本実施例では、表示領域計算部109は、領域Aのうち画面中央部に近い領域(2,2)及び(2,3)を領域Bとして決定する。決定された領域Bを図2(F)において斜線で示す。領域Bのサイズは、表示するパッチの最小サイズよりも大きければよい。表示するパッチのサイズが小さすぎると測色できないため、表示するパッチのサイズは予め定められたサイズ以上とする。
【0031】
次に、表示領域計算部109は、領域Bの位置に基づき、パッチを表示する領域の表示部106における座標を計算する。
本実施例では、表示部106は、図3(A)に示すように1920×1080ドットの液晶パネルであり、表示領域の座標は、図中に示すように、その表示領域の最も左上の画素の座標と、その表示領域の最も右下の画素の座標と、の組によって表す。表示領域内の画素の座標は(0,0)〜(1919、1079)の値をとる。
【0032】
表示領域計算部109は、決定した領域Bに対応する表示部106における領域Cの座標(x2_0、y2_0)、(x2_1、y2_1)を算出する。領域Bに対応する領域Cの座標の算出は、各発光部102の領域(x1、y1)とその領域に対応する表示部106における座標とを対応づけるテーブルデータを予め不図示の記憶手段などに保存しておき、このテーブルデータを参照することにより行えばよい。
【0033】
本実施例では、領域Bは領域(2,2)及び(2,3)からなるので、領域Bに対応する領域Cの座標は、図3(B)に示すように、(x2_0、y2_0)=(385、271)、(x2_1、y2_1)=(768、810)と算出される。
【0034】
キャリブレーションは一般的に画面中央部で調整を行うため、表示領域計算部109は、領域Cの範囲内で画面中央部に近い位置にある領域を、測色用パッチの表示領域(パッチ画像表示領域)として決定する。ここで、画面中央部に近い位置をパッチ画像表示領域とするのは、光学センサ112による測定対象領域(図3(B)において破線で示す領域)が画面中央部に存在するからである。すなわち、表示領域計算部109は、領域Cと測定対象領域の両方に含まれる領域内に測色用パッチの表示領域を設定する。本実施例では、図3(B)に示す領域Cと測定対象領域との共通部分の範囲内で決定される測色用パッチの表示領域を領域Dと呼ぶ。表示領域計算部109は、領域Cの座標(x2_0,y2_0)、(x2_1,y2_1)に基づき領域Dの座標(x3_0、y3_0)、(x3_1、y3_1)を算出する。
【0035】
領域Dの座標の算出は次のように行う。領域Cの座標(x2_0、y2_0)、(x2_1、y2_1)と、測色用パッチの表示領域Dの座標(x3_0、y3_0)、(x3_1、y3_1)と、を対応づけるテーブルデータを予め不図示の記憶手段などに保存しておく。そして、このテーブルデータを参照することにより領域Dの座標を算出する。
本実施例では、領域Dの座標として、(x3_0、y3_0)=(385、406)、(x3_1、y3_1)=(768、675)が算出されるとする。算出された表示部106における領域Dを図3(C)において斜線で示す。
【0036】
パッチ生成部105は、領域Dに表示する測色用パッチを生成し、表示部106へ出力する。これにより表示部106の領域Dに測色用パッチが表示される。領域Dは、対応する発光部102の温度が、キャリブレーションに適した温度に一致し、かつ所定期間内で一定であるような領域である。その後、キャリブレーション制御部111は、光学センサ112から、パッチが表示された領域Dの輝度、色度の測定値を取得(パネル測定値取得処理)し、測色用パッチと比較することにより、表示部106のキャリブレーションを行う。
【0037】
領域Dに対応する発光部102の温度は、所定期間内で一定であったことから、キャリブレーション実行中においても一定であると考えられる。よって、キャリブレーション実行中にLEDの発光特性が変化することを抑制でき、精度良くキャリブレーションを実行することが可能となる。
【0038】
なお、領域Dとして設定する領域は、領域Cの範囲内であれば光学センサでの測定に支
障のない大きさ及び位置の領域を任意に設定すればよい。
また、温度が一定である領域の面積によって、表示するパッチの大きさを変えても良い。つまり、温度が一定である領域が小さい場合には、表示するパッチの大きさを小さくし、また、温度が一定である領域が大きい場合には、表示するパッチの大きさを大きくしてもよい。
また、本実施例では、温度変化検出部107と基準温度比較部108の両方を設ける構成を例示したが、温度変化検出部107と基準温度比較部108のどちらか一方だけを設ける構成であってもよい。例えば、温度変化検出部107のみを設ける場合は、温度変化量の比較に用いる閾値Th1をより小さな値に設定することが好ましい。温度変化量が十分に小さい場合は、基準温度に近いケースが多いと考えられる。また、基準温度比較部108のみを設ける場合は、基準温度Tsとの比較に用いるしきい値Th2をより小さな値に設定することが好ましい。基準温度に十分に近い場合は、温度変化量も小さいケースが多いと考えられる。
また、本実施例では、領域Cと測定対象領域の両方に含まれる領域内に測色用パッチの表示領域を設定する例を挙げたが、領域Cに含まれる領域内に測色用パッチの表示領域を設定するようにしてもよい。つまり、測定対象領域を画面全体としてもよい。
本実施例では、表示装置の使用環境の影響によりバックライト内部に温度ムラが発生した場合の例を用いて記述したが、ローカルディミングによりバックライト内部に温度ムラが発生した場合についても、本発明は同様に適用することができる。
また、本実施例では、赤、緑、青色の3色のLEDを用いたバックライト構成の画像表示装置を例に説明したが、3色のLEDではなく白色のLEDを用いたバックライト構成の画像表示装置においても本発明は適用可能である。
【0039】
ここで、本実施例の画像表示装置によるキャリブレーション処理の実行手順の一例を説明する。図4はキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
S101において、温度検出部103は、バックライト101の各発光部102の温度を取得する。
S102において、表示領域特定部104の温度変化検出部107は、所定期間内における複数の発光部102の各々の温度変化の大きさが閾値Th1より小さい発光ブロックを特定する。
S103において、表示領域特定部104の表示領域計算部109は、S102で特定された発光部102に対応する表示部106の領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する。
S104において、パッチ生成部105は、S103で設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する。
S105において、光学センサ112は、表示部106の輝度及び色度の測定値を取得する。
S106において、キャリブレーション制御部111は、S105で光学センサ112が取得した測定値に基づき表示部106のキャリブレーションを行う。
【0040】
本実施例の画像表示装置によれば、バックライト内部に温度ムラが生じている場合においても、精度よくキャリブレーションを行うことが可能である。
【0041】
(実施例2)
以下に本発明の第2の実施例について図面を用いて説明する。
実施例1では、LEDの温度が一定かつ基準温度の範囲内である発光部の領域に対応する表示部の領域にキャリブレーションで用いる測色用パッチを表示することを説明した。実施例2では、実施例1の方法を用いたキャリブレーションの実行期間中に、温度が一定でないと判定された発光部について、その発光部の温度が一定になるようにLEDの発光強度を調整する。
【0042】
図5は、本発明が適用できる画像表示装置のブロック図である。図5は、実施例1の図1(A)と比べて、発光強度調整部210が追加されている点が異なる。
【0043】
発光強度調整部210は、図5に示すように、基準温度比較部208による比較結果F2から、F2=0と判定された発光部202(x1、y1)を特定する。すなわち、発光強度調整部210は、所定期間内の温度変化の大きさが閾値以上、または、測定された温度と基準温度Tsとの差異が閾値以上である発光部202(x1,y1)を特定する。フラグF2=0である発光部202(x1,y1)を特定する処理を実行する温度変化検出部207及び基準温度比較部208が、本発明における第2特定手段として機能している。
【0044】
発光強度調整部210は、前記特定された各発光部の温度T(x1、y1)と基準温度Tsとの差異が小さくなるようにLEDの発光強度の調整を行い、発光強度Vとして各発光部202(x1、y1)へ出力する。発光強度Vは、各発光部202(x1、y1)の発光強度を設定するためのパラメータである。
【0045】
バックライト内部の温度分布が図2(C)に示す温度分布の場合には、基準温度比較部208からは、実施例1で説明した図2(E)に示すフラグF2が出力される。発光強度調整部210は、フラグF2=0に対応する発光部202(x1、y1)を特定し、発光部202_0として出力する。図2(E)に示す例では、発光部202_0として特定される発光部202(x1,y1)は、斜線で示した発光部以外の発光部202(3,2)、(4,2)、(3,3)、及び(4,3)となる。また、以下、フラグF2=1に対応する発光部202(x1、y1)を発光部202_1と表記する。
【0046】
次に、発光強度調整部210は、発光部202_0の発光強度の調整を行う。
発光強度調整部210は、発光部202_0の温度が基準温度Tsよりも低い場合には、図6(A)に示すように、発光部202_0の発光強度(図中の実線)を、発光部202_1の発光強度(図中の点線)よりも明るくする。その後、発光部202_0の温度が、基準温度Tsと一致するように、発光部202_0の発光強度を下げる調整を行う。
【0047】
発光強度調整部210は、発光部202_0の温度が基準温度Tsよりも高い場合には、図6(B)に示すように、発光部202_0の発光強度(図中の実線)を、発光部202_1の発光強度(図中の点線)よりも暗くする。その後、発光部202_0の温度が、基準温度Tsと一致するように、発光部202_0の発光強度を上げる調整を行う。
【0048】
上述した処理により、キャリブレーション実行時に、温度が一定でないか又は基準温度Tsと一致しない発光部202の温度を、基準温度Tsに一致させることができる。すなわち発光部の温度を均一に調整することができるので、面内ムラを解消できる。
【0049】
本実施例では、温度検出値を用いて、温度が一定になるように各発光部202の発光強度を調整する例について記述した。その他にも、バックライト内部に輝度センサを配置し、輝度センサの検出値を用いて発光強度を調整してもよい。
本実施例の画像表示装置によれば、キャリブレーション終了後には、所望の光学特性を得ることができ、かつ、面内ムラも解消された状態にすることができる。
【0050】
以上に、本発明を実施するための形態について実施例を用いて詳細に説明したが、本発明の実施例は上述の実施例のみに限られるものではない。
【0051】
例えば、上述の各実施例では、画像表示装置に備わるキャリブレーション制御部がキャ
リブレーションを実行する構成例を示したが、画像表示装置とは別体のキャリブレーション装置によってキャリブレーションを実行する構成も可能である。例えば、画像表示装置に接続したパーソナルコンピュータ(PC)に、キャリブレーション用のソフトウェアをインストールしたり、キャリブレーションを実行する機能拡張ユニットを接続したりする。そして、光学センサは測定結果をPCに送信する。画像表示装置は、温度検出部による測定結果をPCに送信する。PCは、画像表示装置の温度検出部から受信した各発光部の温度の検出結果に基づき、発光部毎の温度変化や基準温度との一致性を判定し、パッチ画像表示領域を決定する。すなわち、上記実施例における表示領域特定部104の処理をPCが実行しても良い。PCは、決定したパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成し、画像表示装置へ出力する。すなわち、上記実施例におけるパッチ生成部105の処理をPCが実行しても良い。この場合、PCは、フラグF2の情報を画像表示装置に送信し、画像表示装置はPCから受信したフラグF2の情報に基づき、発光強度調整部210による発光部毎の発光強度の調整を行っても良い。この場合、画像表示装置及びPCは本発明の画像表示システムを構成する。
【0052】
本発明は画像表示装置の各ブロックをハードウェアにより実施した場合でも、コンピュータを用いたソフトウェア処理にて実施した場合でも適用する事ができ、同様な効果を得ることが可能である。この場合、前記ソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。そして、そのプログラムコード自体、およびそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記憶媒体としては、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0053】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、上述の実施例で説明した機能が実現される場合、かかるプログラムコードは本発明の実施例に含まれる。さらに、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等が共同して上述の実施例で示した機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施例に含まれる。
【0054】
更に、次の処理によって上述した実施例の機能が実現される場合にも本発明に含まれる。すなわち、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納される。その後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う。
【符号の説明】
【0055】
100:画像表示装置、101:バックライト、106:表示部、103:温度検出部、104:表示領域特定部、105:パッチ生成部、111:キャリブレーション制御部、112:光学センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルの輝度及び色度を測定するパネル測定手段による測定結果に基づき前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により所定期間内に前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定し、所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成手段と、
を有し、
前記キャリブレーション手段は、前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に前記生成手段により生成されたパッチ画像を表示した場合の前記パネル測定手段による測定結果に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記特定手段は、所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さく、かつ、温度測定手段により測定される温度と所定の基準温度との差異が閾値より小さい発光ブロックを特定する請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記特定手段により特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域と、前記パネル測定手段による予め定められた測定対象領域に含まれる領域、との両方に含まれる領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記設定手段は、表示パネルの中央部に近い位置にパッチ画像表示領域を設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域の大きさに応じて、生成するパッチ画像の大きさを調整する請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の発光ブロックの各々の発光強度を調整する発光強度調整手段と、
所定期間内の温度変化の大きさが閾値以上又は温度測定手段により測定される温度と基準温度との差異が閾値以上の発光ブロックを特定する第2特定手段と、
を備え、
前記発光強度調整手段は、前記キャリブレーション手段によるキャリブレーションの実行時に、前記第2特定手段により特定された発光ブロックの温度と基準温度との差異が小さくなるように、当該発光ブロックの発光強度を調整する請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
を有する画像表示装置の制御方法であって、
前記表示パネルの輝度及び色度の測定値を取得するパネル測定値取得ステップと、
前記取得した測定値に基づき前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーションステップと、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を取得する温度取得ステップと、
所定期間内における前記複数の発光ブロックの各々の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定ステップと、
前記特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定ステップと、
前記設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成ステップと、を有し、
前記キャリブレーションステップでは、前記設定ステップにおいて設定されたパッチ画像表示領域に前記生成ステップにおいて生成されたパッチ画像を表示した場合に前記パネル測定値取得ステップにより取得される測定値に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項8】
画像表示装置と、画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置と、を有する画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、
複数の発光ブロックを有するバックライトと、
入力する画像データに応じてバックライトからの照射光の透過率を画素毎に変更することで画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を測定する温度測定手段と、
を有し、
前記キャリブレーション装置は、
前記表示パネルの輝度及び色度を測定するパネル測定手段と、
前記パネル測定手段による測定結果に基づいて前記表示パネルのキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記複数の発光ブロックの各々の温度を所定期間、測定するよう前記温度測定手段を制御し、前記温度測定手段による該所定期間の測定結果を取得し、所定期間内の温度変化の大きさが閾値より小さい発光ブロックを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された発光ブロックに対応する表示パネルの領域内に、キャリブレーション用のパッチ画像を表示するためのパッチ画像表示領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に表示するパッチ画像を生成する生成手段と、
を有し、
前記キャリブレーション手段は、前記設定手段により設定されたパッチ画像表示領域に前記生成手段により生成されたパッチ画像を表示した場合の前記パネル測定手段による測定結果に基づきキャリブレーションを行うことを特徴とする画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208472(P2012−208472A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12079(P2012−12079)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】