説明

画像表示装置および画像処理装置

【課題】1画素が複数の原色を表すサブ画素を備える多原色表示装置において、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像を表示する。
【解決手段】本発明の一実施形態にかかる画像表示装置は、画像表示部と、強度算出部と、制御部とを備える。前記画像表示部は、複数の色を表すサブ画素を含む画素を複数有する。前記強度算出部は、画素の明るさと色の情報を含む画像信号に基づき、前記画素における前記サブ画素の明るさで重み付けされた前記サブ画素の位置から計算される前記画素の重心と、前記画素毎に定められた特定の点との距離が最小もしくは閾値以下となるように、前記サブ画素の強度を決定する。前記制御部は、前記強度算出部で算出された強度で前記サブ画素を発光させる制御信号を生成する。前記画像表示部は、前記制御信号に基づいて前記画素の前記サブ画素を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像表示装置および画像処理装置に関し、たとえば1つの画素が複数の原色を表すサブ画素を備える多原色表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置において、表示する映像の色再現域の拡大を目的として、1画素が複数の原色を表すサブ画素によって形成される多原色表示装置について研究が行われている。複数色のサブ画素の強度を算出する方法として、例えば特許文献1では、指定された色を表示する各色サブ画素の強度であって、消費電力が最小となるようなサブ画素の強度を算出している。また、特許文献2では、指定された色を表示する各色サブ画素の強度を複数通り算出し、複数通りのサブ画素の強度を合成することによって、いずれのサブ画素も強度が0とならないように、サブ画素の強度を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005‐227408号公報
【特許文献2】特開2007‐104640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、消費電力の低いサブ画素を優先的に発光させるために、画素の明るさの空間的な重心が、画素ごとにまちまちになり、画素の位置がずれて見えるという問題がある。また、特許文献2では、複数通りのサブ画素の強度を合成(平均化)するため特許文献1と比較して画素の位置ずれは改善するが、各サブ画素の空間的な位置は考慮していないため、画素の位置ずれの改善は十分ではない。
【0005】
本発明の一側面は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、画素の位置がずれて見えることを防ぎつつ画像を表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態にかかる画像表示装置は、画像表示部と、強度算出部と、制御部とを備える。
【0007】
前記画像表示部は、複数の色を表すサブ画素を含む画素を複数有する。
【0008】
前記強度算出部は、画素の明るさと色の情報を含む画像信号に基づき、前記画素における前記サブ画素の明るさで重み付けされた前記サブ画素の位置から計算される前記画素の重心と、前記画素毎に定められた特定の点との距離が最小もしくは閾値以下となるように、前記サブ画素の強度を決定する。
【0009】
前記制御部は、前記強度算出部で算出された強度で前記サブ画素を発光させる制御信号を生成する。
【0010】
前記画像表示部は、前記制御信号に基づいて前記画素の前記サブ画素を駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の画像表示装置を示す図。
【図2】第1の実施形態における画像表示部を示す図。
【図3】第1の実施形態における強度算出部を示す図。
【図4】第1の実施形態のフローチャート。
【図5】第1の実施形態における画素とサブ画素の関係を示す図。
【図6】4原色表示おける画素ならびにサブ画素の形状を示す図。
【図7】第2の実施形態における強度算出部を示す図。
【図8】第3の実施形態における強度算出部を示す図。
【図9】第4の実施形態における強度算出部を示す図。
【図10】5色以上の多原色表示における画素内のサブ画素の配置例を示す図。
【図11】第5の実施形態における画素内のサブ画素の配置例を示す図。
【図12】第5の実施形態における強度算出部を示す図。
【図13】第6の実施形態における画像表示装置を示す図。
【図14】第6の実施形態における入力画像と画像表示部の解像度の比較を示す図。
【図15】第7の実施形態における画像表示装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【第1の実施形態】
【0012】
図1は、本実施形態の画像表示装置100を示す図である。
【0013】
本実施形態の画像表示装置100は、画像処理装置200と、画像表示部108とを備えている。画像処理装置200は、色変換部102と、強度算出部104と、制御部106とを含む。
【0014】
画像表示部108は、複数の画素を有し、各画素は複数の原色を表すサブ画素を有する。本実施形態において原色とは、サブ画素1つが表現する色のことであり、一般に言われる原色以外の色であっても、サブ画素が表示する色は、原色として扱う。各サブ画素は自発光する素子であってもよいし、自身は発光しないが、バックライトの光の透過率を変調する液晶のような非発光素子であってもよい。なお、本実施形態では、例として、1画素につきR、G、B、Cyの4色のサブ画素が存在する例について以下説明する。
【0015】
図2は本実施の形態における画像表示部108の詳細を示す図である。画像表示部108は複数の画素201を有し、画素はRサブ画素202、Gサブ画素203、Bサブ画素204、Cyサブ画素205の4色のサブ画素を有する。
【0016】
色変換部102は、まず入力映像信号(画像信号)101をガンマ変換した後、色変換を行い、変換信号103を得る。強度算出部104は、変換信号103が示す色と明るさを画像表示部108に表示する4色分のサブ画素の強度である点灯強度105を算出し、制御部106に送る。
【0017】
図3に本実施の形態における強度算出部104を示す。強度算出部104は、強度設定部301と距離算出部303と有する。強度設定部301は各画素の変換信号103が示す色と明るさを表現するサブ画素の強度302を算出して距離算出部303に送る。距離算出部303は、サブ画素の明るさを重みとして当該サブ画素の位置から求まる画素の空間的な重心と、画素毎に定められた特定の点との距離304を算出する。さらに、距離算出部303は、変換信号103が示す色と明るさを表現するサブ画素の強度の中で距離304が最小となるまたはあらかじめ定められた閾値以下になるサブ画素の強度を特定し、点灯強度105として制御部106に送る。制御部106は、制御信号107を生成し、画像表示部108の画素201の各サブ画素を点灯強度105で点灯させる。
【0018】
次に、本実施形態の画像表示装置100の動作の詳細について説明する。
【0019】
図4は、本実施形態の画像表示装置100の動作を示すフローチャートである。
【0020】
まず、色変換部102は、画像表示部108が表現可能な色再現域に応じて入力映像信号の色再現域を拡大した変換信号103を算出する(S401)。具体的には、色変換部102はまず入力映像信号の各画素のR、G、Bサブピクセル毎の階調値に対して数式(1)のガンマ変換を行う。
【数1】

ここで、Rin'、Gin'、Bin'は入力映像信号のR,G,B各サブピクセルの階調値であり、階調値は8ビット(0〜255)で表現されているとする。Rin、Gin、Binは、Rin'、Gin'、Bin'に対してガンマ変換を行った階調値であり、0から1の相対的な値で表現されているとする。γはガンマ係数を表す。本実施形態では、数式1によってガンマ変換を行う構成としたが、予め入力される階調値とガンマ変換後の階調値とを対応付けたルックアップテーブルを用意しておき、参照することでガンマ変換演算を行ってもよい。入力映像信号の全画素のR、G、B各サブピクセルの値に対して上記の変換を行う。
【0021】
色変換部はさらに、画像表示部108が表現可能な色再現域に従って、Rin、Gin、Binから色再現域を拡大した色と明るさを表す三刺激値Xin、Yin、Zinを数式2によって求める。
【0022】
ここでは、色再現域を拡大した色と明るさをデバイスに依存しない値で表現するために、三刺激値Xin、Yin、Zinに変換している。なお、色再現域の拡大処理は必須ではなく、ITU-R BT.709などの規格に定められた色再現域に従って入力信号を三刺激値Xin、Yin、Zinに変換し、以降の処理を行うことも可能である。
【数2】

Mは3×3の色変換マトリクスを示し、1つの色変換マトリクスを使用してもよいし、Rin、Gin、Binの値に応じて複数の色変換マトリクスを切り替えて使用してもよい。。三刺激値Xin、Yin、Zinを算出するには、数式(2)のように色変換マトリクスを保持しておき、画素毎にRin、Gin、Binから算出しても良いし、ルックアップテーブルに色変換によるXin、Yin、ZinとRin'、Gin'、Bin'の関係を保持しておき、画素毎にRin'、Gin'、Bin'からルックアップテーブルを参照してXin、Yin、Zinを求めてもよい。色変換によって求められた三刺激値Xin、Yin、Zinは変換信号103として強度算出部104に入力される。なお、入力映像信号101がXYZ三刺激値の形式で入力される場合は、入力映像信号101を直接強度算出部104に入力してもよいし、色変換部102において、入力映像信号であるXYZ三刺激値の色再現域を拡大した三刺激値Xin、Yin、Zinを算出し、強度算出部104に入力してもよい。
【0023】
次に、強度算出部104は変換信号103が示す色と明るさを表示するR、G、B、Cyの各サブ画素の点灯強度105を算出して制御部106に送る。
【0024】
具体的には、まず、強度設定部301が、変換信号103が示す色と明るさを表示するR、G、B、Cyの各サブ画素の強度302を算出する(S402)。ここで、R、G、B、Cyの各サブ画素の強度をRiGiBiCiとすると、変換信号Xin、Yin、Zinとサブ画素の強度RiGiBiCiの関係は、数式(3)のように表される。
【数3】

ただし、数式(3)において、XR、YR、ZRはRサブ画素が単色で最大輝度で点灯した時の三刺激値を表す。XG、YG、ZG 、XB、YB、ZB 、XC、YC、ZCについても同様である。強度設定部301は、数式(3)を満たすサブ画素強度RiGiBiCiを強度302として距離算出部303に送る。
【0025】
次に、距離算出部303は、各色のサブ画素の強度302に対して、サブ画素の明るさを重みとした画素の空間的な重心と、画素毎に定められた特定の点との距離を算出する(S403)。距離算出部303は、まずサブ画素の明るさを重みとして、画素の空間的な重心の座標(Gxi,Gyi)を数式(4)に従って算出する。
【数4】

ただし、(xR,yR)は画素内のサブ画素Rの位置を表す座標として、サブ画素Rの空間的な中心を表す座標である。(xG, yG),(xB, yB),(xC, yC)も同様である。図5に本実施形態における1画素内の(xR,yR),(xG, yG),(xB, yB),(xC, yC)の関係を示す。また、LR、LG、LB、LCは各色サブ画素の明るさを表す。本実施の形態では、LR、LG、LB、LCは数式(5)のように算出する。
【数5】

YR、YG、YB、YCは数式(3)と同様、各サブ画素が単色で点灯した時の三刺激値のY値の最大値である。すなわち、本実施の形態ではサブ画素強度RiGiBiCiの下での各サブ画素のY値をサブ画素の明るさとしている。なお、Y値は輝度を表す。サブ画素の明るさLR、LG、LB、LCの算出方法はこの限りではなく、例えばY値から算出可能な明度であってもよい。
【0026】
次に、数式(4)で算出された重心の座標(Gxi,Gyi)と、画素毎に定められた特定の点の座標との距離を算出する。本実施の形態では、各画素における空間的な中心となる点を特定の点とし、その座標を(Cx,Cy)とする。図5に本実施形態における特定の点の座標(Cx,Cy)を示す。本実施の形態においては、特定の点の一例として、矩形の画素の中心を特定の点としたが、この限りではなく、他の点であってもよい。例えば、画素の外郭部分のいずれかの位置を特定の点としてもよい。画素毎に特定の点はそれぞれ同じ位置であることが好ましい。これにより画素の位置がずれて見える問題をより効果的に解消できる。
【0027】
次に、距離算出部303は、(Gxi,Gyi)と(Cx,Cy)の距離Dを数式(6)に従って算出する。
【数6】

距離算出部303は数式(6)によって算出された距離Dが数式(3)を満たすサブ画素強度の中で最小であるか、またはあらかじめ定めた距離の閾値DTH以下であるかを判定する。
【0028】
距離Dが閾値DTH以下である場合(S404)、距離算出部303は、サブ画素強度RiGiBiCiを点灯強度Rout、Gout、Bout、Coutとして制御部106に送る(S405)。
【0029】
一方、距離Dが閾値DTHより大きい場合は、距離算出部303はサブ画素強度RiGiBiCiと距離Dを強度302、距離304として強度設定部301に送る。強度設定部301は、数式(3)を満たすサブ画素強度に対して、距離304が減少するようにサブ画素強度RiGiBiCiを更新し新たなサブ画素強度Ri+1Gi+1Bi+1Ci+1を算出する(S406)。
【0030】
強度設定部301は、サブ画素強度Ri+1Gi+1Bi+1Ci+1を強度302として再度距離算出部303に送り、数式(6)に従い距離を算出し、その値を評価する。距離が最小値となるか閾値DTH以下となった場合は、サブ画素強度Ri+1Gi+1Bi+1Ci+1を点灯強度Rout、Gout、Bout、Coutとして制御部106に送り、そうではない場合は、強度302と距離304を強度設定部301に送る。以上の処理を繰り返す。制御部106は、画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示装置に画像を表示させる。
【0031】
最小もしくは閾値以下となる距離の具体的な算出方法は任意でよい。たとえば、Ciの値を所定の範囲内で、所定の刻み幅で順次変更し、Ciの値ごとに、RiGiBiを求め、さらに距離を求める(Ciが決まれば、式(3)から、RiGiBiも一意に決まる。後述する式(7)参照)。そして、距離が閾値以下となったときのRiGiBiCi、あるいはすべての中で最も距離が小さかったときのRiGiBiCiを、点灯強度として決定する。閾値以下の距離が得られなかったときは、閾値より大きい最小の距離のときのCiの値の前後で、刻み幅を上記所定の刻み幅より小さくして、上記と同様の処理を繰り返す。サブ画素強度RiGiBiCiの更新回数を予めK回と定めておき、サブ画素強度をK回更新した後、距離が最小となるサブ画素強度を点灯強度として決定してもよい。なお、ここで述べた算出例はあくまで一例であり、本実施形態はこれに制限されるものではない。
【0032】
本実施の形態では、1画素がR、G、B、Cyの4色のサブ画素から形成される場合について説明したが、1画素を形成するサブ画素はR、G、B、Yeなど他の色の組み合わせであってもよい。また、画素ならびにサブ画素の形状については、本実施形態では、矩形の画素内に2×2のマトリクス状に矩形のサブ画素が配置される場合について説明したが、一例であってこの限りではない。
【0033】
例えば、図6に示すような画素ならびにサブ画素の形状であってもよい。図6(b)、図6(d)のように、サブ画素は正方形でなく、帯状形状でもよい(なお、図6(b)と図6(d)では、各サブ画素の横幅の大きさが異なっている)。図6(f)および図6(g)のようにサブ画素が菱形または平行四辺形でもよく、図6(j)のように三角形でもよい。また各サブ画素の面積が異なっていても良い。図6(c)では、BとRの面積がGとCyの面積よりも大きくされており、これは画素として表示出来る白色の輝度を高めるためである。また1つの画素の形状についても、正方形または矩形でなく、他の形状、たとえば図6(h)のような十字形でもよい。
【0034】
図6の例では、R,G,B,Cyの4色のサブ画素から画素が形成されているが、サブ画素の色もこの限りではなく、R,G,B,Yeなどの他の色の組み合わせであってもよいし、各サブ画素の配置順が異なっていてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、1画素が4色のサブ画素から形成される場合について説明したが、1画素を形成する原色数が5色以上であっても、同様に各サブ画素点灯強度を算出することが出来る。原色数が5色以上の例として、図10に、1画素がR,G,B,Cy,Yeの5色のサブ画素で形成される場合((a)、(b)、(c))と、1画素がR,G,B,Cy,Ye,Maの6色のサブ画素で形成される場合((d)、(e)、(f))について、画素とサブ画素の形状の例を示す。
【0036】
いずれの原色数、いずれの画素およびサブ画素の形状においても、各サブ画素の明るさを重みとした画素の空間的な重心と、画素毎に定められた特定の点との距離が最小または閾値以下となるように各サブ画素の強度を算出すればよい。
【0037】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心と、ある特定の点との距離が最小または閾値以下になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第2の実施形態】
【0038】
第2の実施形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施形態と全体的な構成は同様であり、強度算出部104の構成のみが異なっているため、強度算出部104について詳細に説明する。
【0039】
図7は本実施形態に係る強度算出部104を示したものである。本実施形態にける強度算出部104は、変換信号103を入力して、ルックアップテーブル701を参照することで、点灯強度105を算出する。ルックアップテーブル701にはあらかじめ、変換信号103が示す色と明るさを表示するサブ画素強度であって、サブ画素の明るさを重みとした画素の重心と、画素毎にあらかじめ定められた特定の点との距離が最小となるサブ画素強度の組み合わせを保持している。強度算出部104は、変換信号103を入力としてルックアップテーブル701を参照することで得られたサブ画素強度を点灯強度105として制御部106に送る。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部108に画像を表示する。
【0040】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心と、ある特定の点との距離が最小になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第3の実施形態】
【0041】
第3の実施形態について説明する。本実施の形態は、第1、第2の実施形態と全体的な構成は同様であり、強度算出部104の構成のみが異なっているため、強度算出部104について詳細に説明する。
【0042】
図8は本実施形態に係る強度算出部104を示したものである。本実施形態における強度算出部104は、変換信号103を入力として、ルックアップテーブル801を参照することで、1色分のサブ画素強度である強度802を求め演算部803に送る。ルックアップテーブル801にはあらかじめ、変換信号103が示す色と明るさを表示するサブ画素強度であって、サブ画素の明るさを重みとした画素の重心と、画素毎に定められた特定の点との距離が最小となるサブ画素強度のうちの1色の強度を保持している。本実施の形態ではこの1色をCyとするが、サブ画素が表すいずれの色でもよい。
【0043】
次に、演算部803は、変換信号103と4色のサブ画素強度が数式(3)の関係を満たすことから、残りの3色のサブ画素強度Rout, Gout, Boutを、1色分のサブ画素強度Coutと変換信号Xin, Yin, Zinから数式(7)のように算出する。
【数7】

演算部803は、数式(7)から得られたサブ画素強度を点灯強度105として制御部106に送る。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部108に画像を表示する。
【0044】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心とある特定の点との距離が最小になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第4の実施形態】
【0045】
第4の実施形態について説明する。本実施の形態は、第1、第2、第3の実施形態と全体的な構成は同様であり、強度算出部104の構成のみが異なっているため、強度算出部104について詳細に説明する。
【0046】
図9は本実施形態に係る強度算出部104を図示したものである。本実施形態における強度算出部104は、まず色度算出部901が、変換信号103である三刺激値Xin, Yin, Zinから2次元の色度図における色度座標902を算出する。本実施の例では色度座標の例として、xy色度図の色度座標xin,yinを数式(8)によって算出する。
【数8】

【0047】
次に、色度座標902を入力として、ルックアップテーブル903を参照することで1色のサブ画素強度904を算出する。本実施の形態ではこの1色をCyとするが、サブ画素が表すいずれの色でもよい。このサブ画素強度904は、この色度座標902の色を表示するサブ画素強度であって、サブ画素の明るさを重みとした画素の重心と、画素毎に定められた特定の点との距離が最小となるサブ画素強度のうちの1色の強度である。ただし、色度座標xin,yinは色のみを表す情報であり、輝度の情報が含まれていない。そのため、ルックアップテーブル903に保持されている色度座標xin,yinに対する1色のサブ画素強度Cnは、三刺激値のY値があらかじめ定められた基準値Ynである時に色度座標xin,yinの色を表すサブ画素強度(基準強度)とする。演算部905において、1色のサブ画素強度CoutはCnを用いて数式(9)のように算出される。また、ルックアップテーブルに(Cn/Yn)を保持しておき、色度座標xin,yin から(Cn/Yn)を参照し、(Cn/Yn)とYinを乗じることで、Coutを求めてもよい。
【数9】

演算部905はさらに、第3の実施の形態と同様に数式(7)に従って残りの3つのサブ画素の強度Rout,Gout,Boutを算出し、Coutと合わせて点灯強度105として制御部106へ送る。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部108に画像を表示する。
【0048】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心とある特定の点との距離が最小になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第5の実施形態】
【0049】
第5の実施形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施形態と全体的な構成は同様であり、強度算出部104と画像表示部108の構成のみが異なっているため、強度算出部104と画像表示部108について詳細に説明する。
【0050】
まず、図11に本実施形態における画像表示部の画素とサブ画素の関係の例を示す。本実施形態の画素には4つのサブ画素によって形成されているが、4つのサブ画素はR,G,B3色の原色のいずれかを表す。すなわちいずれか一色は、2つのサブ画素で共通する。以下では、本実施形態の画素の構造が図11の(a)であるとして説明する。
【0051】
次に、本実施形態の強度算出部104を図12に示す。本実施形態の強度算出部104は、演算部1201と、強度分配部1203と、距離算出部1205を有する。演算部1201は、変換信号103である三刺激値Xin, Yin, Zin,が示す色と明るさを表示する3色のサブ画素強度R0,G0,B0を数式(10)に従って算出し、強度1202として強度分配部1203に送る。
【数10】

強度分配部1203は、4つのサブ画素の強度をそれぞれ、Ri,G1i,G2i,Biとすると、強度分配部は数式(11)のようにRi,G1i,G2i,Bi を算出する。
【数11】

すなわち、2つ存在するGを表すサブ画素に対して、演算部1201が算出した強度G0の値を係数αiによって分配する。R、Bについては、演算部1201が算出した強度R0,B0をそのまま使用する。強度分配部は算出したRi,G1i,G2i,Biを強度1204として距離算出部1205に送る。
【0052】
距離算出部1205は第1の実施形態と同様に、各サブ画素の明るさを重みとした画素の重心と、画素毎に定められた特定の点との距離Dを算出し、距離Dが最小となるかまたはあらかじめ定めた閾値DTH以下になる場合は、Ri,G1i,G2i,Biを4サブ画素の点灯強度として制御部106に送る。距離Dがあらかじめ定めた閾値DTH以下にならない場合は、距離1206と強度1204を強度分配部1203に送り、強度分配部1203は距離304が小さくなるように係数αを更新する。そして、更新した係数αi+1によって、4つのサブ画素の強度Ri+1,G1i+1,G2i+1,Bi+1を数式(12)に従って算出し、Ri+1,G1i+1,G2i+1,Bi+1を強度1204として距離算出部1205に送る。
【数12】

以下同様の処理を繰り返し、距離1206が最小となるまたは閾値以下となる各サブ画素の強度を点灯強度105として制御部106に送る。なお、強度1202であるサブ画素強度R0,G0,B0と点灯強度105を対応付けたルックアップテーブルを予め保持しておき、サブ画素強度R0,G0,B0からルックアップテーブルを参照して点灯強度を求めてもよい。また、強度1202であるサブ画素強度R0,G0,B0と係数αを対応付けたルックアップテーブルを予め保持しておき、サブ画素強度R0,G0,B0からルックアップテーブルを参照して係数αを求め、係数αを使用して数式(12)に従って点灯強度1204を算出してもよい。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部108に画像を表示する。
【0053】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心とある特定の点との距離が最小になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第6の実施形態】
【0054】
第6の実施形態について説明する。図13に、本実施形態における画像表示装置100を示す。本実施の形態では、第1の実施形態の構成に加えて、画像表示装置100が、画像の解像度を変換する解像度変換部1302を備える。本実施の形態では、入力映像の解像度が画像表示部108の解像度よりも高く、入力映像の解像度を画像表示部108の解像度に合わせて解像度変換を行う場合について説明する。第1の実施形態と同じく、1画素がR、G、B、Cyの4色のサブ画素によって形成されている場合は、強度算出部104は、入力映像の解像度で各画素の点灯強度105を算出する。
【0055】
ここで本実施形態における入力映像の解像度と画像表示部の解像度の比較を図14に示す。本実施の形態では、入力映像の解像度が、画像表示部と比較して水平方向に2倍、垂直方向に2倍、合計4倍である場合について説明する。つまり、画像表示部の画素1405が、入力画像の画素4つ分(1401、1402、1403、1404)に対応する。
【0056】
解像度変換部1302は画像表示部1407の画素1405のサブ画素強度を、入力画像1406の画素のサブ画素強度から算出する。画素1405を画像表示部1407において水平方向にx番目、垂直方向にy番目の画素であるとし、画素1405の各色のサブ画素の強度をRout(x,y), Gout(x,y), Bout(x,y), Cout(x,y)と表現する。一方で、入力画像1406が画像表示部1407と比較して解像度が水平方向に2倍、垂直方向に2倍であることを考慮すると、画素1405と同じ位置に存在する画素1401、画素1402、画素1403、画素1404のサブ画素Rのサブ画素強度はそれぞれ、R'out(2x,2y), R'out(2x+1,2y), R'out(2x,2y+1), R'out(2x+1,2y+1)と表現することが出来る。G、B、Cyについても同様である。
【0057】
ここで、画像表示部1407の画素のサブ画素の点灯強度1303は、入力画像1406の画素のサブ画素強度1301から数式(13)のように算出される。
【数13】

ここで、w(i,j)は解像度変換で使用するフィルタのフィルタ係数であり、Mはフィルタの水平方向のサイズ、Nはフィルタの垂直方向のサイズを示す。
【0058】
解像度変換部1302は、数式(13)に従って、画像表示部の全ての画素のサブ画素の点灯強度1303を算出し、制御部106に送る。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部に画像を表示する。
【0059】
以上、本実施の形態によれば、各画素の明るさの空間的な重心とある特定の点との距離が最小になるように、サブ画素の強度を設定するため、表示画像の画素が空間的にずれて見えることなく、かつ元の解像度を大きく損なうことなく色再現域の広い画像が表示可能になる。
【第7の実施形態】
【0060】
第7の実施形態について説明する。図15に、本実施形態における画像表示装置100を示す。本実施の形態における画像表示装置100は、第1の実施形態の構成に加えて、第2強度算出部1502を備える。第2強度算出部1502は、変換信号103から第2の強度を算出し、強度算出部104が算出する第1の強度1501と合成することによって点灯強度1503を算出する。
【0061】
より詳細に、強度算出部104は、第1の実施形態と同様に、画像表示部108のサブ画素の強度である第1の強度1501を算出し、第2強度算出部1502に送る。第2強度算出部1502は、変換信号103が示す色と明るさを画像表示部108に表示するサブ画素の強度であって、強度算出部104が算出する第1の強度1501とは特徴の異なる第2の強度を算出する。第2強度算出部1502は例えば、変換信号103が示す色と明るさを画像表示部108に表示するサブ画素の強度であって、消費電力が最小となるようなサブ画素の強度である第2の強度を算出する。つまり、同一の色および明るさを表示するサブ画素の強度の組み合わせは複数通りあり、また色ごとに消費電力も異なる。そこで、消費電力が最も小さくなる組み合わせを、変換信号103が示す色と明るさから決定し、これを第2の強度とする。色と明るさに応じた第2の強度を事前にルックアップテーブルに格納し、変換信号103に基づきルックアップテーブルを参照することで、第2の強度を求めても良い。
【0062】
点灯強度1503をRout,Gout,Bout,Cout、第1の強度1501をR1out,G1out,B1out,C1out、第2の強度をR2out,G2out,B2out,C2outとすると、点灯強度Rout,Gout,Bout,Coutは数式(14)のように算出される。
【数14】

ただし、βは第1の強度と第2の強度を合成する合成係数である。第2強度算出部1502は、数式(14)で算出された点灯強度1503を制御部106に送る。制御部106は画像表示部108のサブ画素が点灯強度105で点灯するように制御信号107を生成し、画像表示部108に画像を表示する。
【0063】
以上、本実施の形態によれば、表示画像の画素の空間的なずれの低減と、もうひとつの特徴を考慮して、色再現域の広い画像が表示可能になる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色を表すサブ画素を含む画素を複数有する画像表示部と、
画素の明るさと色の情報を含む画像信号に基づき、前記画素における前記サブ画素の明るさで重み付けされた前記サブ画素の位置から計算される前記画素の重心と、前記画素毎に定められた特定の点との距離が最小もしくは閾値以下となるように、前記サブ画素の強度を決定する強度算出部と、
前記強度算出部で算出された強度で前記サブ画素を発光させる制御信号を生成する制御部と、を備え、
前記画像表示部は、前記制御信号に基づいて前記画素の前記サブ画素を駆動する
画像表示装置。
【請求項2】
前記明るさは、輝度または明度であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記特定の点は、前記画素の空間的な中心を表す点であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記強度算出部は、
前記サブ画素の強度を算出する強度設定部と
前記強度設定部で算出した強度で前記サブ画素が点灯したときの前記サブ画素の明るさで前記サブ画素の位置を重み付けして前記画素の重心を計算し、前記重心と、前記特定の点との距離を算出する距離算出部と、を含み、
前記強度設定部は、前記距離が最小もしくは閾値以下となるように、前記サブ画素の強度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記強度算出部は、
前記情報と、前記サブ画素の強度とを対応づけた第1のテーブルを有し、
前記画像信号に含まれる前記情報に基づき、前記第1のテーブルを参照することで、前記サブ画素の強度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記強度算出部は、
前記情報と、前記画素における前記サブ画素のうちの1つの強度とを対応づけた第2のテーブルと、
前記サブ画素のうちの1つの強度から、前記情報に基づき、前記画素内の残りのサブ画素の強度を計算する演算部と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記強度算出部は、
前記画像信号に基づき前記画素毎に色度座標を算出する色度算出部と、
前記色度座標と、前記画素における前記サブ画素のうちの1つの基準強度とを対応づけた第3のテーブルと、
前記サブ画素のうちの1つの基準強度から、前記情報に基づき、前記画素内のサブ画素の強度を算出する演算部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項8】
解像度変換部をさらに備え、
前記画像信号が表す画像の解像度は、前記画像表示部の解像度と異なり、
前記強度算出部は、前記画像の画素毎に前記サブ画素の強度を算出し
前記解像度変換部は、前記強度算出部で算出した前記サブ画素の強度を、前記画像表示部の解像度に合わせて解像度変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記強度算出部と異なる任意の方法で前記サブ画素の第2強度を算出し、前記第2強度を前記強度と合成することにより、前記サブ画素の強度を算出する第2強度算出部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記サブ画素は、自発光素子、またはバックライトの光の透過率を変調する非発光素子である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項11】
複数の色を表すサブ画素を含む画素を複数有する画像表示装置に画像を表示するための画像処理装置であって、
画素の明るさと色の情報を含む画像信号に基づき、前記サブ画素の明るさで重み付けされた前記サブ画素の位置から計算される前記画素の重心と、前記画素毎に定められた特定の点との距離が最小もしくは閾値以下となるように、前記サブ画素の強度を算出する強度算出部と、
前記強度算出部で算出された強度で前記サブ画素を発光させる制御信号を生成する制御部と、
を備えた画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−104903(P2013−104903A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246645(P2011−246645)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】