説明

画像表示装置および画像表示方法

【課題】画像表示装置において、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消する。
【解決手段】画像表示を行うLCDユニット5と、LCDユニット5を制御する表示制御部14と、映像信号の入力を受け、入力された映像信号を表示制御部14に直接出力するとともに、入力された映像信号から垂直同期信号を検出して出力するHDMIレシーバ10と、HDMIレシーバ10から出力された垂直同期信号の入力を受け、垂直同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、同期信号安定状態を検知する機能、および同期信号安定状態が検知されると、表示制御部14に、LCDユニット5による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する機能の各機能を有するCPU9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置および画像表示方法に関する。詳しくは、例えばヘッドマウントディスプレイのような比較的小型の画像表示装置に用いて好適な画像表示装置および画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置として、使用者の頭部に装着されて用いられるヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」という。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。HMDは、一般的に、使用者に認識させる画像を表示する表示ユニットと、この表示ユニットを支持し使用者の頭部に装着される支持フレームとを備える。HMDを構成する支持フレームとしては、使用者の頭部への装着が容易であること等から、眼鏡型のフレームが好適に用いられている。
【0003】
また、画像表示装置としては、例えばパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)の表示装置等、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)を用いた液晶表示装置が広く用いられている。特に、近年では、液晶表示装置は、家庭用のテレビ等として広く普及している。
【0004】
液晶表示装置は、液晶パネル等により構成されるLCDと、LCDの駆動を制御するための駆動回路や制御回路を含むLCD制御部と、LCDによる画像表示を行うためのバックライト等の光源とを有する。液晶表示装置においては、LCD制御部に対して画像表示命令が実行されると、光源が点灯され、画像表示が行われる。LCD制御部は、例えばPCのような外部装置等から入力される映像信号に基づいてLCDの制御を行う。一般に、LCDの制御に用いられる映像信号には、画像を表示するための画像信号のほか、垂直同期信号、および水平同期信号が含まれる。
【0005】
このような液晶表示装置においては、例えば装置の起動時や、装置の動作中において何らかの原因でノイズが生じた時等、LCDの制御に用いられる映像信号が乱れる場合がある。映像信号の乱れとしては、例えば、垂直同期信号が不安定な状態となることが挙げられる。乱れた状態の映像信号が用いられてLCD制御部によるLCDの制御が行われた場合、正常な画像表示を行うことができない。
【0006】
このため、例えばPCの表示装置やテレビ等の据え置き型の液晶表示装置においては、一般に、例えばスケーラ等のような画像処理回路が実装され、映像信号の乱れが補正される。すなわち、LCD制御部に画像処理回路が備えられ、LCD制御部に入力される映像信号が画像処理回路によってあらかじめ正常な状態に加工処理され、LCD制御部に入力される映像信号についての正常な状態が確保される。
【0007】
このように、従来の液晶表示装置においては、LCD制御部の制御に用いられる映像信号をスケーラ等の所定の画像処理回路によってあらかじめ加工処理することで、映像信号の乱れに対応するという構成が採用されている。例えば、特許文献2には、LCD制御部に入力される映像信号を処理する回路として、あらかじめ設定された補正データを周期的に出力するブロックを設け、このブロックから出力されるデータを、LCD制御部に入力されるデータにオフセットとして付加することで、LCD制御部に入力されるデータに周期的に乗るノイズをキャンセルする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−134134号公報
【特許文献2】特開2002−108289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
HMDのような比較的小型で移動性が要求される画像表示装置においては、低消費電力・小型化の観点から、上述したようなスケーラ等の画像処理回路を実装することは困難である。一方で、HMD等においてLCDを用いた画像表示構成を採用する場合、LCD制御部の仕様等によっては、例えば装置の起動時において、LCD制御部に入力される映像信号が安定する前に、LCD制御部に対する画像表示命令が実行されると、例えば表示画像に縦縞が入るといった不具合が生じる場合がある。
【0010】
このように、比較的小型なHMD等においてLCDを用いた画像表示構成を採用する場合、映像信号の乱れによる表示画像の不具合が生じることがあるものの、小型な構成や移動性を確保するためには、表示画像の不具合にスケーラ等の回路構成によって対応することが困難であるという状況が存在する。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消することができる画像表示装置および画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像表示装置は、画像表示を行う画像表示手段と、前記画像表示手段を制御する表示制御手段と、デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号の入力を受け、入力された前記映像信号を前記表示制御手段に直接出力するとともに、入力された前記映像信号から前記垂直同期信号および前記水平同期信号のうち少なくともいずれか一方の同期信号を検出して出力する映像信号入出力手段と、前記映像信号入出力手段から出力された前記同期信号の入力を受け、前記同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、入力された前記同期信号が安定した状態であることを検知する同期信号検知手段と、前記映像信号入出力手段への前記映像信号の入力が開始された後に、前記同期信号検知手段により前記同期信号が安定した状態であることが検知されると、前記表示制御手段に、前記画像表示手段による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する画像表示信号出力手段と、を備えるものである。
【0013】
本発明に係る画像表示装置においては、好ましくは、前記同期信号検知手段は、入力された前記同期信号の出力が前記基準時間の間一定となることがあらかじめ設定された所定回数連続したことを、前記同期信号が安定した状態であることとして検知する。
【0014】
本発明に係る画像表示装置においては、好ましくは、前記基準時間は、前記同期信号の走査周波数に基づいて設定される所定の幅を有する。
【0015】
本発明に係る画像表示装置においては、好ましくは、前記画像表示手段は、液晶ディスプレイと、該液晶ディスプレイによる画像表示を行うための光源とを有し、前記表示制御手段は、前記液晶ディスプレイを制御する液晶制御部と、前記光源を制御する光源制御部と、を有し、前記画像表示信号出力手段から出力された前記画像表示信号に基づいて前記画像表示手段に画像表示を実行させるに際し、前記液晶制御部により前記液晶ディスプレイに対する制御を開始した後、所定時間経過後に、前記光源制御部により前記光源に対する制御を開始する。
【0016】
本発明に係る画像表示装置においては、好ましくは、画像表示信号出力手段は、前記画像表示信号を出力した後、同期信号検知手段により前記同期信号が安定した状態であることが検知されなくなった場合、前記表示制御手段に、前記画像表示手段による画像表示を中断させる信号を出力する。
【0017】
本発明に係る画像表示方法は、デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号を、液晶ディスプレイを制御する手段に直接入力することで、前記液晶ディスプレイによる画像表示を行う画像表示方法であって、前記映像信号から前記垂直同期信号および前記水平同期信号のうち少なくともいずれか一方の同期信号を検出するステップと、前記同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、前記検出するステップにより検出された前記同期信号が安定した状態であることを検知するステップと、前記検知するステップにより前記同期信号が安定した状態であることが検知されると、前記画像表示を実行するステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るHMDシステムの構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るHMDシステムの構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係るHMDシステムにおける表示画像の不具合についての説明図。
【図4】本発明の一実施形態に係るHMDシステムにおける画像表示シーケンスについての説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係るHMDシステムにおける画像表示シーケンスについてのフロー図。
【図6】本発明の一実施形態に係るHMDシステムにおけるLCDユニットの制御についての説明図。
【図7】本発明の一実施形態に係るHMDシステムの適用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、LCD等の画像を表示するための構成を制御する表示制御部に対して画像表示を行うための映像信号が直接的に入力される構成において、映像信号が安定した状態であることが検知されてから映像信号を表示制御部に入力するような制御を行うことで、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消しようとするものである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する本発明の実施の形態では、画像表示装置として、使用者の頭部に装着されるタイプの画像表示装置であるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を例に挙げて説明する。
【0022】
本実施形態に係るHMD1は、HMD1の使用者(以下単に「使用者」という。)の一方の眼に対して、映像信号に基づく映像を液晶ディスプレイ(LCD)により表示することにより、使用者に映像を視認させる。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るHMD1は、中継器2とともに、HMDシステム50を構成する。つまり、HMDシステム50は、HMD1と中継器2とを備え、中継器2に対して外部から入力される映像信号に基づき、HMD1においてLCDによる画像表示を行う。HMD1と中継器2とは、ワイヤハーネスとしての専用ケーブル51により互いに接続される。
【0024】
中継器2に対して外部から入力される映像信号は、デジタル画像信号、垂直同期信号(V_SYNC)および水平同期信号(H_SYNC)を含む。中継器2に入力される映像信号は、例えば、PCやスマートフォン等の外部装置が有するHDMI(登録商標)(High−Definition Multimedia Interfase)端子やDVI−D(Digital Visual Interface−Digital)端子等の出力端子から出力される、例えば8ビット×3色のデジタルビデオデータを含む信号である。中継器2に入力された映像信号は、専用ケーブル51により、HMD1に送られる。
【0025】
[HMDの構成]
HMD1は、表示ユニット3と、表示ユニット3を支持するフレーム4とを備える。
【0026】
まず、表示ユニット3の構成について説明する。図2に示すように、表示ユニット3は、液晶を用いた画像表示を行う画像表示部としてのLCDユニット5と、LCDユニット5を制御する制御部6とを備える。LCDユニット5および制御部6は、表示ユニット3が有するハウジング3aに収納される(図1参照)。
【0027】
図2に示すように、LCDユニット5は、LCD7と、バックライト8とを有する。LCD7は、液晶を含む液晶パネルや、液晶パネルに対して電気信号を供給するための駆動回路等を有する。バックライト8は、LCD7による画像表示を行うための光源である。本実施形態では、バックライト8は、LED(Light Emitting Diode)により構成される。ただし、バックライト8は、LEDに限られず、例えば冷陰極を使用した小型蛍光管等の冷陰極管であってもよい。
【0028】
LCDユニット5は、制御部6による制御のもと、バックライト8からの光を用いて、LCD7による液晶表示を行う。LCD7は、例えば、バックライト8からの白色光を、画素ごとにR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の成分光に分解するカラーフィルタを有し、液晶パネルによって各画素における光の透過度を制御し、画素ごとに成分光の透過度を制御する。本実施形態のHMD1においては、LCD7とバックライト8とを有するLCDユニット5が、画像表示を行う画像表示手段として機能する。
【0029】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)9と、HDMIレシーバ10と、LCDコントローラ11と、LEDバックライトドライブIC(Integrated Circuit)12と、電源IC13とを有する。
【0030】
CPU9は、表示ユニット3の動作を制御する主制御部である。CPU9は、HDMIレシーバ10、LCDコントローラ11、およびLEDバックライトドライブIC12に対して制御信号を出力する。CPU9は、HDMIレシーバ10やLCDコントローラ11等に対してデータ通信用のバスにより接続される。
【0031】
HDMIレシーバ10は、中継器2から専用ケーブル51によって送られてきた映像信号の入力を受ける。また、HDMIレシーバ10は、入力された映像信号をLCDコントローラ11に直接出力する。つまり、HDMIレシーバ10は、LCDコントローラ11との間に映像信号を加工処理するスケーラ等の画像処理回路を介することなく、入力された映像信号をLCDコントローラ11に直接出力する。したがって、LCDコントローラ11には、HDMIレシーバ10から出力された映像信号が直接的に入力される。HDMIレシーバ10は、CPU9からの制御信号を受け取ることにより、CPU9によって制御される。
【0032】
LCDコントローラ11は、CPU9から入力された制御信号に基づき、LCDユニット5を構成するLCD7の動作を制御する。具体的には、LCDコントローラ11は、ドットクロックを生成するドットクロック生成回路、ビデオプロセッサ、フレームメモリ、LCDドライバとしてのLCD駆動回路等を有する。ドットクロック生成回路は、HDMIレシーバ10から送られてきた映像信号に含まれるデジタル画像信号の各画素をサンプリングするためのドットクロック信号を生成する。ドットクロック生成回路には、HDMIレシーバ10から出力される垂直同期信号と水平同期信号とが入力される。
【0033】
LCDコントローラ11が有するビデオプロセッサは、フレームメモリへの画像の書込みや読出しの制御を行うマイクロプロセッサである。HDMIレシーバ10から送られてきたデジタル画像信号は、フレームメモリに一旦書き込まれ、ビデオプロセッサにより必要に応じてフレームメモリから読み出される。フレームメモリから読み出されたデジタル画像信号は、ビデオプロセッサからLCDコントローラ11が有するLCD駆動回路に供給される。フレームメモリへのデジタル画像信号の書き込み動作は、垂直同期信号および水平同期信号に同期して行われる。また、ビデオプロセッサによるフレームメモリからのデジタル画像信号の読み出し動作は、LCD駆動回路から出力される同期信号に同期して行われる。
【0034】
LCDコントローラ11が有するLCD駆動回路は、LCDコントローラ11において、ビデオプロセッサから出力されたデジタル画像信号に応じて、LCD7に対する画像信号を生成する。LCD駆動回路により生成された画像信号がLCD7に入力されることで、LCD7による画像表示が行われる。
【0035】
LEDバックライトドライブIC12は、CPU9から入力された制御信号に基づき、LCDユニット5を構成するバックライト8の動作を制御する。具体的には、LEDバックライトドライブIC12は、LEDであるバックライト8に流れる駆動電流を制御し、バックライト8のオン/オフ、明るさ設定等、バックライト8の駆動を制御する。LEDバックライトドライブIC12から出力された駆動電流がバックライト8に供給されることにより、バックライト8が発光する。
【0036】
LCDコントローラ11およびLEDバックライトドライブIC12は、制御部6において、LCD7およびバックライト8を有するLCDユニット5を制御する表示制御部14を構成する。本実施形態のHMD1においては、LCDコントローラ11とLEDバックライトドライブIC12とを含む表示制御部14が、LCD7とバックライト8とを有するLCDユニット5を制御する表示制御手段として機能する。そして、LCD7を制御するLCDコントローラ11が、液晶制御部として機能し、バックライト8を制御するLEDバックライトドライブIC12が、光源制御部として機能する。
【0037】
LCDコントローラ11およびLEDバックライトドライブIC12は、CPU9からの制御信号を受け取ることにより、CPU9によって制御される。つまり、CPU9は、LCDコントローラ11およびLEDバックライトドライブIC12に制御信号を送ることで、LCDコントローラ11およびLEDバックライトドライブIC12に、LCDユニット5の動作を制御させる。そして、CPU9は、LCDコントローラ11に対する画像表示命令を実行した後、LEDバックライトドライブIC12に制御信号を送ることでバックライト8を点灯させ、LCDユニット5による画像表示を行わせる。
【0038】
電源IC13は、HMD1の制御部6において、中継器2から専用ケーブル51によって供給された電力の供給を受ける電源部を構成する。この電源部の電力は、制御部6のCPU9やLCDコントローラ11等の、HMD1を構成する各部の駆動に用いられる。また、制御部6においては、制御プログラム等をあらかじめ記憶する記憶部が設けられる。この記憶部は、CPU9に対してデータ通信用のバスにより接続される。
【0039】
図1に示すように、表示ユニット3は、使用者に映像を認識させるためのハーフミラー15を有する。ハーフミラー15は、表示ユニット3のハウジング3aの一端側に設けられるミラーホルダ3bに回動可能に支持された状態で、使用者の左眼の前方に位置するように設けられる。表示ユニット3は、ハーフミラー15により、LCDユニット5によって表示した映像を使用者に認識させる。また、ハーフミラー15は、外光を透過させて使用者の眼に入射させる。したがって、使用者は、外光により認識される背景に、表示ユニット3により表示される映像を重ねて視認することができる。
【0040】
このように、本実施形態のHMD1は、外光を透過させるとともに、表示ユニット3により表示する映像を使用者に対して表示するシースルー型の映像表示装置である。なお、本発明に係るHMDは、シースルー型である必要はない。
【0041】
次に、フレーム4の構成について説明する。図1に示すように、フレーム4は、眼鏡型のフレームであり、表示ユニット3を支持するとともに使用者の頭部に装着される装着部である。フレーム4は、使用者の頭部に装着された状態で、上述したような表示ユニット3による使用者への映像の表示ができるように、表示ユニット3を支持する。
【0042】
本実施形態のHMD1では、表示ユニット3は、フレーム4に対して、フレーム4を頭部に装着した状態の使用者の左側に取り付けられる。したがって、本実施形態のHMD1は、使用者の左側の眼に対して映像を表示することにより、使用者に映像を視認させる。
【0043】
上記のとおり眼鏡型のフレーム4は、使用者の顔の前に位置するフロント部41と、フロント部41の左右両端部から後方に延びるヨロイ部42と、各ヨロイ部42に回動可能に連結されるテンプル部43とを有する。フロント部41は、一対のテンプル部43が連結されるヨロイ部42が設けられる側を左右両端側とする。フロント部41は、その中央部分がテンプル部43の延びる側と反対側(前側)に凸となるように緩やかに湾曲した形状を有する。
【0044】
ヨロイ部42は、フロント部41の左右両端側に設けられ、フロント部41からテンプル部43が延びる方向に沿って突出する部分である。各ヨロイ部42の後端部に、テンプル部43が回動可能に取り付けられる。一対のテンプル部43は、使用者の顔を左右両側から挟む。テンプル部43は、前側から後側にかけて内側に向かう後半部分において、使用者の耳にかかる部分となるセル部43aを有する。
【0045】
ヨロイ部42とテンプル部43とは、ヨロイ部42の後端部に設けられるヒンジ部44にて、ネジ等が用いられて連結される。テンプル部43は、ヒンジ部44において、フロント部41及びヨロイ部42を含む構成に対して折りたたむことができるように、上下方向を回動軸方向として回動可能に連結される。
【0046】
また、フレーム4においては、フロント部41の下側に、使用者の眼を保護するためのカバーシート45が装着される。カバーシート45は、使用者の左右の各眼に対応して設けられる2枚のシート部材46と、これらのシート部材46をフレーム4に対して保持する保持体47とを有する。
【0047】
シート部材46は、使用者の左右の各眼を覆う透過性を有するシート状又は板状の部材である。シート部材46は、眼鏡型のフレーム4において、一般的な眼鏡におけるレンズのような態様で設けられる。シート部材46は、例えば透明なプラスチック等の合成樹脂材料からなる板状の部材である。上記のとおりシースルー型であるHMD1の使用者は、表示ユニット3による表示を認識するとともに、透明なシート部材46を透過する外光によって視界を得る。
【0048】
保持体47は、2枚のシート部材46を保持する一対の保持部47aと、これら保持部47aを連結する連結部47bとを有する。各保持部47aは、下側が開放するように形成された枠状の部分であり、シート部材46の上側の略半分の部分の外縁に対応した形状を有する。したがって、各シート部材46は、保持体47の保持部47aによって上側の略半分の部分の外縁が囲まれた状態で保持される。連結部47bは、左右両側においてシート部材46を保持する一対の保持部47aを、左右中央部において連結する部分である。
【0049】
また、カバーシート45においては、保持体47の連結部47bに、使用者の鼻に接触する鼻当て部48が設けられている。鼻当て部48は、フレーム4の装着状態において使用者の鼻筋に対して左右両側から接触する一対のパッドを有する。カバーシート45は、保持体47の部分がフレーム4のフロント部41に装着されることで、フレーム4に取り付けられる。
【0050】
フレーム4は、取付部材49により、表示ユニット3を支持する。取付部材49は、表示ユニット3のハウジング3aの内側部分に固定される。取付部材49は、左側のテンプル部43のヒンジ部44の位置よりも使用者の前方に延長された延長部分を貫通させた状態で、左側のテンプル部43に取り付けられることで、表示ユニット3をフレーム4に支持する。つまり、テンプル部43の前端部分である、ヒンジ部44よりも前側の延長部分が、取付部材49が有する孔部に挿入された状態で、取付部材49が固定される表示ユニット3が、フレーム4に支持される。なお、取付部材49によるフレーム4に対する表示ユニット3の支持部分は、例えば、表示ユニット3をフレーム4に対して前後方向に位置調整可能となるように構成される。
【0051】
以上のような構成を有するフレーム4は、一対のテンプル部43によって使用者の両耳にかかるとともに、前側は2個のパッドを有する鼻当て部48によって使用者の鼻筋に支持されることで、4箇所で支持される。そして、この眼鏡型のフレーム4に表示ユニット3が支持されることで、表示ユニット3が、使用者の頭部の左前側に配置される。なお、本実施形態では、HMD1は、使用者の左側の眼に映像を表示する左眼用の構成であるが、本発明に係るHMDは、使用者の右側の眼に映像を表示する右眼用の構成であったり、左右両眼用の構成であったりしてもよい。
【0052】
[中継器の構成]
図1に示すように、中継器2は、外部から入力される映像信号の入力を受ける映像信号入力用端子21と、外部からの電力の供給を受ける給電用入力端子22とを有する。映像信号入力用端子21は、上述したようにPC等の外部装置が有するHDMI端子やDVI−D端子等の出力端子から出力される映像信号の入力を受けるための端子である。このため、映像信号入力用端子21には、HDMIケーブルやHDMI−DVI−D変換ケーブル等が接続される。給電用入力端子22には、例えば、USB接続の外付けバッテリのUSBケーブルやACアダプタ等が接続される。なお、中継器2は、バッテリを内蔵する構成であってもよい。
【0053】
図2に示すように、中継器2は、CPU23と、電源IC24とを有する。CPU23は、中継器2の動作を制御する制御部である。CPU23は、映像信号入力用端子21からの映像信号の入力を受け、出力する。CPU23から出力された映像信号は、専用ケーブル51により、HMD1の表示ユニット3に送られる。専用ケーブル51により表示ユニット3に送られた映像信号は、制御部6のHDMIレシーバ10により受け取られる。
【0054】
また、中継器2は、使用者により操作される操作部25を有する。操作部25は、例えばディップスイッチ等のスイッチやボタン等により構成される。操作部25の操作により生じた操作信号は、CPU23に入力される。本実施形態では、中継器2の操作部25において、例えば、LCDユニット5による表示画像の明るさ調整、同表示画像の画面回転による右眼用・左眼用の切替え、同表示画像のオン/オフの切替え等が行われる。
【0055】
電源IC24は、中継器2において、給電用入力端子22によって外部から供給された電力の供給を受ける電源部を構成する。この電源部の電力は、CPU23等の駆動に用いられる。電源IC24を含む電源部に供給される電力としては、例えば、上述したようなUSB接続の外付けバッテリやACアダプタ、あるいは電池による電力が用いられる。電源IC24は、給電用入力端子22から供給される交流電圧を、安定した直流電圧へと変換する。
【0056】
以上のような構成を備えるHMDシステム50において、HMD1では、例えば装置の起動時等、HDMIレシーバ10からLCDコントローラ11に入力される映像信号(以下「コントローラ入力映像信号」という。)が不安定な状態となることがある。また、上述したように、HMD1の制御部6においては、HDMIレシーバ10から出力された映像信号は、LCDコントローラ11に対して直接的に入力される。このため、本実施形態のHMD1においては、コントローラ入力映像信号が不安定な状態となった場合、その不安定な状態の映像信号が、そのままLCDコントローラ11に入力される。また、使用者により中継器2の電源が入れられた後、映像信号入力用端子21にケーブルを介して接続されるPC等から中継器2への映像信号の出力操作が行われると、中継器2の操作部25において表示画像オンの設定となっていた場合、中継器2からHMD1に対する映像信号の入力よりも、HMD1においてCPU9からLCDコントローラ11への画像表示命令が先に実行されることになる。
【0057】
そして、例えば装置の起動時において、コントローラ入力映像信号が安定する前に、つまりコントローラ入力映像信号が不安定な状態で、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行されると、LCDユニット5による表示画像に不具合が生じる場合がある。この場合、LCDユニット5による表示画像に生じる不具合としては、例えば、表示画像に縦縞が入るとことがある。
【0058】
図3に、正常画像と縦縞が入った画像の一例を示す。図3(a)は、正常画像の模式図を示す。これに対し、図3(b)は、LCDユニット5による表示画像に不具合が生じた場合の一例として、縦縞が入った画像の模式図を示す。すなわち、図3(b)に示すように表示画像に縦縞が入る現象は、上記のとおりコントローラ入力映像信号が安定する前に、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行されることにより生じる。
【0059】
このようにコントローラ入力映像信号が安定する前に画像表示命令が実行されることにより生じる、縦縞が入る現象については、その原因の一つに、LCDコントローラ11の仕様が挙げられることが判明している。特に、縦縞が入る現象がLCDコントローラ11の仕様に起因する場合、表示画面に生じた縦縞は、コントローラ入力映像信号が安定した後も消えずに維持されるときがある。
【0060】
このような表示画像に生じる不具合を回避するため、HMD1の制御部6において、スケーラ等の画像処理回路を実装することが考えられる。この画像処理回路を実装する場合、本実施形態のHMD1では、画像処理回路は、コントローラ入力映像信号を加工処理するように設けられる。したがって、この場合の画像処理回路は、図2において符号11aで示すように、HDMIレシーバ10から出力されるコントローラ入力映像信号の入力を受ける位置に実装される。このように画像処理回路11aを実装する構成が採用された場合、HDMIレシーバ10から出力されるコントローラ入力映像信号が不安定な状態となっても、画像処理回路11aによってあらかじめ正常な状態に加工処理され、LCDコントローラ11には常に正常な状態の映像信号が入力されることになる。
【0061】
しかしながら、本実施形態のHMD1は、上述したように使用者の頭部に装着されて用いられる比較的小型で移動性が要求される画像表示装置である。このため、本実施形態のHMD1においては、低消費電力・小型化の観点から、上述したようなスケーラ等の画像処理回路を実装することは困難である。特に、画像処理回路における信号の加工処理には多くの電力が必要であり、CPU9の消費電力も大きくなるため、画像処理回路を実装する構成は、HMD1のような省電力の構成への適用は困難である。
【0062】
そこで、本実施形態のHMD1においては、以下に説明するような、画像表示に際しての制御シーケンス(以下「画像表示シーケンス」という。)が行われる。この画像表示シーケンスが行われることにより、本実施形態のHMD1のように、HDMIレシーバ10からのコントローラ入力映像信号がLCDコントローラ11に直接入力される構成においても、上述した縦縞が入る現象のような、コントローラ入力映像信号が不安定な状態となることによる表示画像の不具合を解消することができる。
【0063】
ここで、HDMIレシーバ10が入力を受けた映像信号について、その映像信号を表示制御部14(のLCDコントローラ11)に「直接出力する」とは、HDMIレシーバ10が、LCDコントローラ11に対するコントローラ入力映像信号の出力経路において、画像処理回路11a(図2参照)等の映像信号に何らかの処理を加えるための構成を有しないことを意味する。言い換えると、HDMIレシーバ10から出力されたコントローラ入力映像信号が、加工処理されることなくLCDコントローラ11に入力されることを意味する。以下、本実施形態のHMD1における画像表示シーケンスについて説明する。
【0064】
[画像表示シーケンス]
本実施形態のHMD1における画像表示シーケンスでは、所定の条件のもとでコントローラ入力映像信号が安定した状態であること(以下「映像信号安定状態」という。)が検知され、映像信号安定状態が検知されると、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行される。すなわち、CPU9からLCDコントローラ11への画像表示命令の実行に際しては、装置の起動時等においてコントローラ入力映像信号が不安定な状態の場合、その映像信号が安定した状態となるまで、画像表示命令の実行が待機状態となる。これにより、CPU9からLCDコントローラ11への画像表示命令が、コントローラ入力映像信号が安定した状態で実行されることが確保される。
【0065】
本実施形態のHMD1において、映像信号安定状態は、コントローラ入力映像信号に含まれる同期信号の状態に基づいて検知される。特に、本実施形態のHMD1では、コントローラ入力映像信号の乱れが垂直同期信号(V_SYNC)に反映されることから、同期信号のうち垂直同期信号に基づいて映像信号安定状態が検知される。
【0066】
このため、本実施形態のHMD1では、HDMIレシーバ10から出力されるコントローラ入力映像信号から、垂直同期信号が抽出される。コントローラ入力映像信号からの垂直同期信号の抽出は、例えば、HDMIレシーバ10の内部のインターフェース部分等に設けられる同期分離回路によって映像信号から垂直同期信号が分離されることで行われる。
【0067】
このように、本実施形態のHMD1においては、HDMIレシーバ10が、中継器2から出力される映像信号の入力を受け、入力された映像信号を表示制御部14(のLCDコントローラ11)に直接出力するとともに、入力された映像信号から垂直同期信号(V_SYNC)を検出して出力する映像信号入出力手段として機能する。
【0068】
図2に示すように、HDMIレシーバ10から出力されるコントローラ入力映像信号から抽出された垂直同期信号は、CPU9に入力される。CPU9は、映像信号安定状態として、入力された垂直同期信号が安定した状態であること(以下「同期信号安定状態」という。)を検知する。
【0069】
具体的には、図4に示すように、垂直同期信号(V_SYNC)は、ハイレベル(以下「Hレベル」とする。)とロウレベル(以下「Lレベル」とする。)とを周期的に繰り返すパルス信号である。垂直同期信号の出力レベルについて、Hレベルを第1の値とした場合、Lレベルは第1の値とは異なる第2の値といえる。CPU9は、垂直同期信号について、HレベルとLレベルとの間での信号レベルの遷移状態から、同期信号安定状態を検知する。CPU9は、例えば、垂直同期信号の入力を受ける入力ポートを有し、この入力ポートにおいて、垂直同期信号のオン/オフ、つまりHレベル/Lレベルを検知する。
【0070】
図4に示すように、映像信号が安定した状態においては、垂直同期信号(V_SYNC)について、Hレベルの状態が期間ΔXの間継続することが、規則的に繰り返される。つまり、期間ΔXの間Hレベルが連続する状態が、インターバル期間ΔYを隔てて安定的に繰り返される。なお、インターバル期間ΔYは、期間ΔXよりも短い期間であって垂直同期信号がLレベルの状態となる期間である。一方、映像信号が不安定な状態においては、垂直同期信号について、例えば、Hレベルの連続時間が不均一であったり、Hレベルの連続時間が安定状態における期間ΔXよりも短かったりする。
【0071】
図4に示すような垂直同期信号(V_SYNC)の遷移態様において、期間ΔXは、垂直同期信号の走査周波数(以下「垂直走査周波数」という。)によって決まる期間である。例えば、垂直走査周波数が60[Hz]の場合、一度垂直方向に走査するのに必要な期間、換言すれば1フレームの画像を描画する期間は、(1/60)×1000≒16.5[ms]となる。なお、インターバル期間ΔYは、コントローラ入力映像信号の安定状態の影響を受けない、もしくは影響が小さい期間である。インターバル期間ΔYは、例えば0.1[ms]である。本実施形態では、ΔY=0.1[ms]として説明する。そして、期間ΔXは、1フレームの描画期間である16.5[ms]からΔY(=0.1[ms])を差し引いて、ΔX=16.4[ms]と設定される。
【0072】
CPU9は、入力された垂直同期信号から、垂直同期信号の出力がHレベルの状態を保つ連続時間、つまり垂直同期信号の出力レベルがLレベルからHレベルになった時点から、HレベルからLレベルになった時点までの時間(以下「連続Hレベル時間」という。)についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、同期信号安定状態を検知する。具体的には、CPU9は、入力された垂直同期信号について、連続Hレベル時間を計測する。CPU9は、連続Hレベル時間の計測時間と、あらかじめ設定された基準時間とを比較することで、同期信号安定状態を検知する。
【0073】
CPU9は、例えば、連続Hレベル時間の計測時間が、あらかじめ設定された基準時間と一致する場合に、同期信号安定状態を検知する。この場合、あらかじめ設定される基準時間は、上述したような走査周波数が60[Hz]のときの例にならうと、期間ΔXと同じ16.4[ms]に設定される。つまり、この場合、CPU9による連続Hレベル時間の計測時間が、映像信号が安定した状態における期間ΔXと同じ16.4[ms]であるときに、同期信号安定状態が検知される。なお、連続Hレベル時間の計測時間に対する比較対象となる基準時間は、制御部6が有する記憶部等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0074】
CPU9は、入力された垂直同期信号から基準時間に基づいて同期信号安定状態を検知すると、表示制御部14に対して、LCDユニット5による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する。ここで、CPU9から表示制御部14に送られる画像表示信号には、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令の信号と、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に対する制御信号とが含まれる。
【0075】
具体的には、CPU9から表示制御部14に送られる画像表示信号のうち、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令の信号は、LCDコントローラ11が有する表示レジスタをオンし、LCDコントローラ11に、LCD7に対する駆動制御を開始させるための信号である。また、CPU9から表示制御部14に送られる画像表示信号のうち、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に対する制御信号は、LEDバックライトドライブIC12にバックライト8を点灯させるための信号である。
【0076】
また、CPU9から表示制御部14に送られる制御信号には、LCDユニット5による画像表示を停止させる画像非表示信号がある。CPU9から表示制御部14に送られる画像非表示信号には、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像非表示命令の信号と、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に対する制御信号とが含まれる。
【0077】
具体的には、CPU9から表示制御部14に送られる画像非表示信号のうち、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像非表示命令の信号は、LCDコントローラ11が有する表示レジスタをオフし、LCDコントローラ11によるLCD7に対する駆動制御を停止させるための信号である。また、CPU9から表示制御部14に送られる画像非表示信号のうち、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に対する制御信号は、LEDバックライトドライブIC12にバックライト8を消灯させるための信号である。
【0078】
このような画像表示シーケンスが行われる本実施形態のHMD1においては、CPU9は、同期信号検知手段として機能する。すなわち、本実施形態では、CPU9は、HDMIレシーバ10から出力された垂直同期信号の入力を受け、垂直同期信号の出力が一定となる時間、つまり連続Hレベル時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、入力された垂直同期信号が安定した状態であること(同期信号安定状態)を検知する。
【0079】
また、CPU9は、画像表示信号出力手段として機能する。すなわち、本実施形態では、CPU9は、HDMIレシーバ10への映像信号の入力が開始された後に、同期信号安定状態を検知すると、表示制御部14に、LCDユニット5による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する。ここで、HDMIレシーバ10への映像信号の入力が開始された後とは、例えばHMD1の電源投入時等、画像表示が行われていない状態からのHDMIレシーバ10への映像信号の入力開始直後である。また、CPU9から表示制御部14に送られる画像表示信号には、上記のとおり、LCDコントローラ11に対する画像表示命令の信号と、LEDバックライトドライブIC12に対する制御信号とが含まれる。
【0080】
本実施形態における画像表示シーケンスの一例について、図4、および図5に示すフロー図を用いて説明する。本実施形態における画像表示シーケンスの実行に際しては、使用者により、中継器2の電源が入れられる。中継器2の電源を入れる操作は、例えば中継器2が有する電源スイッチの操作であったり、中継器2の給電用入力端子22に外付けバッテリが接続される場合はその外付けバッテリの電源を入れる操作であったりする。
【0081】
中継器2の電源が入れられることで、専用ケーブル51によるHMD1に対する給電が開始され、HMD1の電源が入り、HMD1における処理が開始される。本実施形態のHMD1における画像表示シーケンスは、中継器2から入力される映像信号を、LCD7を制御する手段であるLCDコントローラ11に直接入力することで、LCD7による画像表示を行う画像表示方法として実行される。
【0082】
図5に示すように、HMD1における処理が開始された状態では、画像表示フラグはオフになっている(S10)。つまり、LCDコントローラ11が有する表示レジスタがオフの状態となっている。
【0083】
そして、本実施形態の画像表示シーケンスでは、画像表示操作か画像非表示操作かの判断が行われる(S20)。ここで、画像表示操作か画像非表示操作かの判断は、中継器2の操作部25の状態によって判断される。具体的には、操作部25として、画像表示と画像非表示とを切り替えるオン/オフの切替えスイッチが設けられる。そして、その切替えスイッチのオン/オフの状態により、画像表示操作か画像非表示操作かの判断が行われる。つまり、操作部25の切替えスイッチがオン状態の場合は、画像表示操作と判断され、切替えスイッチがオフ状態の場合は、画像非表示操作と判断される。
【0084】
先に、ステップS20において画像表示操作と判断された場合について、図4を加えて説明する。図4において、矢印T1で示すタイミングは、例えば、HMD1における処理が開始されてから、使用者によって操作部25の画像表示/画像非表示の切替えスイッチがオン操作されたタイミングに相当する。
【0085】
使用者による画像表示操作、つまり操作部25の切替えスイッチのオン操作が行われると、次に、映像信号の入力が行われる。映像信号は、PC等の外部装置から、中継器2の映像信号入力用端子21に接続されるHDMIケーブルやHDMI−DVI−D変換ケーブル等を介して、中継器2に入力される。中継器2に入力された映像信号は、専用ケーブル51によってHMD1に入力される。HMD1において、中継器2からの映像信号は、HDMIレシーバ10により受け取られる。図4において、HMD1に映像信号が入力されたタイミングは、矢印T2で示すタイミングに相当する。
【0086】
映像信号の入力が開始された後、画像表示フラグがオフであるか否かの判定が行われる(S30)。このステップS30では、すでにLCDユニット5による画像表示が行われているか否かが判定される。つまり、ステップS20における画像表示操作との判断が、例えば、中継器2の電源が入れられてHMD1の処理が開始され、使用者によって操作部25の切替えスイッチのオン操作が行われてから初回の判断であるか否かが判定される。
【0087】
したがって、ステップS30において、画像表示フラグがオフの場合(S30、Yes)は、まだ画像表示が行われていない状態であり、HMD1の処理が開始されてからステップS20の画像表示操作の判断が初回の場合である。一方、ステップS30において、画像表示フラグがオフでない場合(S30、No)、つまり画像表示フラグがオンの場合は、すでに画像表示が行われている状態である。
【0088】
ステップS30において、画像表示フラグがオフであると判定された場合(S30、Yes)、映像信号が安定しているか否かが判定される(S40)。ここでの映像信号が安定しているか否かの判定は、上述したようなCPU9による映像信号安定状態の検知、つまり同期信号安定状態の検知によって行われる。具体的には、CPU9により、コントローラ入力映像信号から抽出された垂直同期信号が検出される。CPU9は、検出した垂直同期信号についての連続Hレベル時間の計測時間と、あらかじめ設定された基準時間とから、同期信号安定状態を検知する。
【0089】
ステップS40において、CPU9により、同期信号安定状態が検知されると、映像信号が安定していると判定されたことになる(S40、Yes)。ステップS40における処理は、映像信号が安定していると判定されるまで繰り返し継続して行われる。つまり、ステップS40において、映像信号が安定していないと判定された場合(S40、No)、再度映像信号が安定しているか否かの判定が行われる。したがって、ステップS40によれば、HMD1に入力された映像信号が安定するまで待機することが行われる。
【0090】
このように、ステップS40においては、CPU9により、コントローラ入力映像信号から垂直同期信号(V_SYNC)を検出するステップと、垂直同期信号の出力が一定となる時間(連続Hレベル時間)についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、検出するステップにより検出した垂直同期信号が安定した状態であることを検知するステップとが行われる。
【0091】
ステップS40において、映像信号が安定していると判定されると(S40、Yes)、画像表示命令が実行され(S50)、バックライト8の点灯が行われる(S60)。ステップS50では、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令の信号が送られ、LCDコントローラ11によってLCD7の駆動が開始される。ステップS60では、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に、設定された明るさでバックライト8を点灯させるための信号が送られる。
【0092】
ステップS50およびステップS60は、CPU9により同期信号安定状態が検知されたことにより行われるステップであり、LCDユニット5のLCD7による画像表示を実行するステップに相当する。
【0093】
ステップS60においてバックライト8の点灯が行われると、画像表示フラグがオンされる(S70)。つまり、LCDコントローラ11が有する表示レジスタがオンの状態とされる。なお、ステップS30において画像表示フラグがオフでないと判定された場合(S30、No)については後述する。
【0094】
次に、ステップS20において画像非表示操作と判断された場合について説明する。ステップS20において画像非表示操作と判断されると、画像表示フラグがオフであるか否かの判定が行われる(S80)。このステップS80では、上述したステップS30と同様に、すでにLCDユニット5による画像表示が行われているか否かが判定される。
【0095】
したがって、ステップS80において、画像表示フラグがオフの場合(S80、Yes)は、まだ画像表示が行われていない状態であり、HMD1の処理が開始されてからステップS20の画像非表示操作の判断が初回の場合である。一方、ステップS80において、画像表示フラグがオフでない場合(S80、No)、つまり画像表示フラグがオンの場合は、すでに画像表示が行われている状態である。
【0096】
したがって、ステップS80において、画像表示フラグがオフでないと判定された場合(S80、No)、画像非表示命令が実行され(S90)、バックライト8の消灯が行われる(S100)。ステップS90では、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像非表示命令の信号が送られ、LCDコントローラ11によってLCD7の駆動が停止される。ステップ100では、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に、バックライト8を消灯させるための信号が送られる。
【0097】
ステップS100においてバックライト8の消灯が行われると、画像表示フラグがオフされる(S110)。つまり、LCDコントローラ11が有する表示レジスタがオフの状態とされる。
【0098】
一方、ステップS80において、画像表示フラグがオフであると判定された場合(S80、Yes)、処理はステップS20へと移行する。つまりこの場合、まだ画像表示が行われていない状態であるので、画像非表示命令によるバックライト8の消灯は行われない。
【0099】
本実施形態のHMD1においては、上述したような画像表示操作および画像非表示操作の各操作にともなう処理が、ステップS20における画像表示操作/画像非表示操作の切替えにともなって行われる。そして、図5に示す処理フローにおいて、画像表示操作が行われた場合の処理(S30〜S70)、および画像非表示操作が行われた場合の処理(S80〜S110)の各処理は、CPU9が制御部6の記憶部等に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0100】
以上のような画像表示シーケンスが行われる本実施形態のHMD1によれば、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消することができる。具体的には、本実施形態のHMD1においては、上述した処理フローにおいて、コントローラ入力映像信号が安定するまで待機することが行われてから(S40)、LCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行される(S50)。これにより、表示画像に縦縞が入る等の不具合を回避することができる。
【0101】
仮に、コントローラ入力映像信号が不安定な状態で、LCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行された場合、例えば表示画像に縦縞が入る現象(図3(b)参照)等が生じることがある。そこで、本実施形態のHMD1における画像表示シーケンスのように、コントローラ入力映像信号が安定した状態となってから、LCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行されることにより、縦縞現象等の表示画像の不具合が生じることなく、正常な画像表示(図3(a)参照)を確保することができる。このような画像表示シーケンスは、本実施形態のHMD1のように、HDMIレシーバ10とLCDコントローラ11との間にスケーラ等の画像処理回路11a(図2参照)が存在せずに、コントローラ入力映像信号がHDMIレシーバ10からLCDコントローラ11に直接入力される構成において有効である。
【0102】
以下では、本実施形態のHMD1における好ましい態様としての画像表示シーケンスの詳細について説明する。
【0103】
図4に示すように、映像信号が不安定な状態においては、垂直同期信号(V_SYNC)は、連続Hレベル時間が不均一であったり、連続Hレベル時間が垂直走査周波数から導かれる時間(期間ΔX)よりも短かったりする。これに対し、映像信号が安定した状態においては、期間ΔXの長さの連続Hレベル時間が、出力レベルがLレベルとなるインターバル期間ΔYとともに繰り返される。
【0104】
そこで、本実施形態の画像表示シーケンスでは、同期信号安定状態の検知処理において、連続Hレベル時間が基準時間の間一定となることが所定回数連続したことが、同期信号安定状態として検知される。したがって、基準時間として期間ΔXと同じ長さの時間が設定された場合、連続Hレベル時間が所定回数連続して期間ΔXとなったことが、同期信号安定状態として検知される。
【0105】
ここで、上記所定回数が3回として設定され、期間ΔXが16.4[ms]であり、基準時間が期間ΔXと同じ16.4[ms]として設定された場合を例に説明する。この場合、図5に示す処理フローにおけるステップS20において、CPU9は、計測した連続Hレベル時間が3回連続して16.4[ms]であったときに、同期信号安定状態を検知する。
【0106】
図4に示す垂直同期信号(V_SYNC)の例では、矢印T3で示すタイミングが、3回連続して期間ΔXの連続Hレベル時間が生じたタイミングに相当する。すなわち、図4において矢印T3で示すタイミングで、CPU9によって同期信号安定状態が検知され、これにより、画像表示命令が実行され、バックライト8の点灯処理が行われる。本例の場合、例えば、CPU9によって連続的に計測される連続Hレベル時間が、1回目16.4[ms]、2回目16.4[ms]、3回目14[ms]であったときには、再度1回目から連続Hレベル時間の計測が行われる。
【0107】
以上のように、本実施形態のHMD1においては、同期信号検知手段として機能するCPU9は、入力された垂直同期信号の出力が基準時間の間一定となることがあらかじめ設定された所定回数連続したことを、同期信号安定状態として検知する、これにより、映像信号安定状態に相当する同期信号安定状態を、精度良く検知することができる。結果として、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を効果的に解消することができる。
【0108】
なお、基準時間の連続Hレベル時間が連続する所定回数は、制御部6が有する記憶部等においてあらかじめ設定され記憶される。また、基準時間の連続Hレベル時間が連続する所定回数は、特に限定されるものではなく、垂直同期信号(V_SYNC)の遷移態様やLCDコントローラ11の仕様等によって適宜設定される。
【0109】
次に、基準時間の好ましい態様について説明する。同期信号安定状態の検知処理において用いられる基準時間は、垂直走査周波数に基づいて設定される所定の幅を有することが好ましい。つまり、同期信号安定状態の検知処理に用いられる基準時間は、所定の数値範囲により規定される時間であることが好ましい。
【0110】
このように、同期信号安定状態の検知処理に用いられる基準時間が所定の幅を有する数値範囲として規定される場合、CPU9により計測された連続Hレベル時間がその数値範囲内の値であれば、その連続Hレベル時間の信号は、上述したように所定回数連続することが必要とされる回数の1回としてカウントされる。
【0111】
具体的には、例えば、基準時間が15.0〜18.0[ms]として設定された場合、CPU9により計測された連続Hレベル時間が15.0〜18.0[ms]の範囲内の値であれば、その連続Hレベル時間の信号は所定回数連続することが必要とされる回数の1回としてカウントされる。そして、本例の場合、例えば、CPU9によって連続的に計測される連続Hレベル時間が、1回目15.5[ms]、2回目17.0[ms]、3回目16.5[ms]であったときには、垂直同期信号の出力が基準時間の間一定となること、つまり連続Hレベル時間が基準時間となることが3回連続したことになる。
【0112】
このように同期信号安定状態の検知処理に用いられる基準時間の幅(数値範囲)は、垂直走査周波数に基づいて設定される。例えば、垂直走査周波数が60[Hz]の場合、上記のとおり垂直同期信号における期間ΔXは16.4[ms]となる。そこで、垂直走査周波数が60[Hz]の場合、基準時間は、例えば、16.4ms±数msとして設定される。この場合、具体的には、基準時間は、例えば15.0〜18.0[ms]として設定される。
【0113】
また、例えば、垂直走査周波数が上述した60[Hz]の場合よりも大きい70[Hz]の場合、1フレームの描画期間は、(1/70)×1000≒14.3[ms]となることから、期間ΔXは、ΔX=14.3−ΔY(=0.1[ms])=14.2[ms]となる。この場合、基準時間は、例えば14.2ms±数msとして設定され、具体的には、例えば13.0〜16.0[ms]として設定される。また、例えば、HMD1において画像解像度の調整にともなって垂直走査周波数が60[Hz]と70[Hz]とで切り替わる場合、基準時間としては、各垂直走査周波数において期間ΔXとなる16.4[ms]および14.2[ms]を含む数値範囲が設定される。したがって、この場合の基準時間は、例えば13.0〜18.0[ms]として設定される。
【0114】
以上のように、同期信号安定状態の検知処理において用いられる基準時間は、垂直走査周波数に基づいて設定される所定の幅を有する数値範囲として設定されることにより、同期信号安定状態の検知処理において、映像信号が安定した状態における垂直同期信号についての期間ΔXの誤差が許容される。これにより、映像信号が安定した状態であるにもかかわらず、垂直同期信号の期間ΔXのわずかな変動によって同期信号安定状態が検知されないといった状況を回避することができる。結果として、同期信号安定状態を精度良く検知することが可能となる。
【0115】
続いて、CPU9から表示制御部14への制御信号の出力タイミングの好ましい態様について説明する。本実施形態のHMD1は、上述したように、画像表示を行うLCDユニット5において、LCD7とバックライト8とを有し、LCDユニット5を制御する表示制御部14において、LCD7を制御するLCDコントローラ11と、バックライト8を制御するLEDバックライトドライブIC12とを有する。
【0116】
そして、本実施形態のHMD1は、CPU9から出力された画像表示信号に基づいてLCDユニット5に画像表示を実行させるに際し、LCDコントローラ11によりLCD7に対する制御を開始した後、所定時間経過後に、LEDバックライトドライブIC12によりバックライト8に対する制御を開始する。つまり、LCDユニット5による画像表示に際し、CPU9からLCDコントローラ11に対する制御信号の出力タイミングと、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に対する制御信号の出力タイミングとの間に、所定の時間差が設けられている。
【0117】
具体的には、上述した画像表示シーケンスにおいては、映像信号が安定していると判定されると、CPU9からLCDコントローラ11に対する画像表示命令の信号が送られ、LCDコントローラ11によってLCD7の駆動が開始され(S50)、CPU9からLEDバックライトドライブIC12に、バックライト8を点灯させるための信号が送られる(S60)。このLCDコントローラ11に対する画像表示命令、およびバックライト8の点灯の流れにおいて、LCDコントローラ11に対する画像表示命令が実行されたタイミングから、所定時間経過後に、バックライト8が点灯される。つまり、CPU9は、LCDコントローラ11に対して画像表示命令の信号を出力してから、所定時間経過後に、LEDバックライトドライブIC12に対する制御信号を出力する。
【0118】
ここで、CPU9による画像表示命令の信号の出力タイミングから、バックライト8点灯のための制御信号の出力のタイミングまでの所定時間(以下「ライト点灯待機時間」という。)は、例えば、数10〜数100msの範囲内の時間として設定される。ライト点灯待機時間は、LCDコントローラ11において、CPU9からの画像表示命令を受けてから実行される表示オンシーケンスが完了するまでの時間に基づいて設定される。
【0119】
ライト点灯待機時間について、図6を用いて説明する。図6に示すように、LCDコントローラ11においては、CPU9からの画像表示命令の信号が入力され、タイミングt1に画像表示命令がオンされると、それを契機に表示オンシーケンスの実行が開始される。LCDコントローラ11における表示オンシーケンスとしては、例えば、内蔵電源の立上げ等が行われる。表示オンシーケンスが完了することで、LCD7は、画像表示が可能な状態となる。このLCD7が画像表示可能な状態で、バックライト8が点灯されることにより、LCD7による画像表示が行われる。
【0120】
このようなLCDコントローラ11における一連の動作の中で、CPU9におけるライト点灯待機時間は、LCDコントローラ11が画像表示命令を受けてから表示オンシーケンスが完了するまでの時間よりも長い時間に設定される。図6に示すように、ライト点灯待機時間は、LCDコントローラ11において画像表示命令がオンされたタイミングt1から、バックライト8がオンされるタイミングt2までの時間ΔZである。そこで、ライト点灯待機時間(時間ΔZ)は、画像表示命令がオンされたタイミングt1から、表示オンシーケンスが完了するタイミングt3までの時間よりも長い時間として設定される。
【0121】
ライト点灯待機時間によれば、LCDコントローラ11において表示オンシーケンスが完了したタイミングt3から、バックライト8がオンされるタイミングt2までの間に、若干のタイムラグが存在する。本実施形態のHMD1の場合、ライト点灯待機時間(時間ΔZ)は、例えば100msに設定される。ただし、ライト点灯待機時間は、LCDコントローラ11の仕様等によって適宜設定される。なお、ライト点灯待機時間は、制御部6が有する記憶部等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0122】
以上のように、CPU9による画像表示命令がLCDコントローラ11においてオンされてから、所定時間経過後に、バックライト8の点灯制御が行われることにより、LCDユニット5による表示画像について正常な画像を確保することができる。仮に、LCDコントローラ11において表示オンシーケンスが完了する前に、バックライト8が点灯されると、LCDコントローラ11の仕様等によっては、正常な画像が表示されない場合がある。そこで、上述したように、CPU9によるLCDユニット5の制御においてライト点灯待機時間を設けることにより、バックライト8が点灯されるに際し、LCDコントローラ11における表示オンシーケンスの完了状態が得られるので、LCDユニット5による正常な画像表示を確保することができる。
【0123】
次に、上述した画像表示シーケンスのもと、LCDユニット5による画像表示が行われている状態で実行される制御について説明する。ここで説明する制御は、CPU9によって所定の制御プログラムに基づいて行われる画像表示中断制御である。CPU9は、LCDユニット5に対して画像表示信号を出力した後、同期信号安定状態が検知されなくなった場合、表示制御部14に、LCDユニット5による画像表示を中断させる信号、つまり上述した画像非表示信号を出力する。
【0124】
ここで説明する画像表示中断制御は、上記のとおり画像表示が行われている状態で実行される。このため、画像表示中断制御は、図5に示す処理フローにおいて、ステップS30で画像表示フラグがオフでないと判定された場合(S30、No)、つまり画像表示フラグがオンの場合に処理を実行する制御である。
【0125】
具体的には次のとおりである。まず、例えばHMD1の処理が開始されてからステップS20の画像表示操作の判断が初回の場合、まだ画像表示が行われていない状態であるから、ステップS20で画像表示操作と判断されると、ステップS30にて、表示フラグはオフと判定される(S30、Yes)。
【0126】
そして、ステップS40で、同期信号安定状態が検知され、映像信号が安定していると判定されると(S40、Yes)、画像表示命令が実行され(S50)、バックライト8の点灯が行われ(S60)、画像表示フラグがオンされて(S70)、LCDユニット5による画像表示が行われる。このように、ステップS20にて画像表示操作と判断された場合において、ステップS30にて画像表示フラグがオフと判定されたときに行われるステップS40における映像信号についての判定は、上記のとおりHDMIレシーバ10への映像信号の入力開始直後に行われる。
【0127】
これに対し、画像表示中断制御においては、ステップS50〜S70によって画像表示が一旦開始された後、ステップS20にて画像表示操作と判断された場合、ステップS30では、画像表示フラグはオフでない(オンである)と判定され(ステップS30、No)、映像信号が安定しているか否かが判定される(S120)。ステップS120における、映像信号が安定しているか否かの判定は、上述したステップS40と同様の手法により行われる。
【0128】
ステップS120において、映像信号が安定していると判定された場合(S120、Yes)、そのまま画像表示が継続され、処理はステップS20に移行する。一方、ステップS120において、映像信号が安定していないと判定された場合(S120、No)、画像表示中にステップS20にて画像非表示操作と判断された場合(S80、No)と同様の画像非表示処理(S90〜S110)が行われる。
【0129】
このように、映像信号が安定し、LCDユニット5による画像表示が一旦開始された状態において、CPU9により、ステップS40と同様に、映像信号が安定しているか否かの判定処理が継続される。そして、映像信号が安定してないと判定された場合、つまりCPU9により同期信号安定状態が検知されなくなった場合、CPU9から表示制御部14に対して画像非表示信号が出力される。すなわち、図5に示す処理フローにおけるステップS90〜S110の処理と同様に、画像非表示命令が実行され、バックライト8の消灯が行われることで、LCDユニット5による画像表示が中断される。
【0130】
以上のような画像表示中断制御が行われることにより、HMD1の動作中に映像信号が乱れた場合、LCDユニット5による画像表示を停止させることができる。これにより、映像信号の乱れによって乱れた画像が使用者に対して表示されることを回避することができ、使用者が画像の乱れによって不快感を覚えることを防止することができる。
【0131】
以上説明した本発明の実施の形態では、映像信号安定状態の検知に際し、映像信号に含まれる同期信号として、垂直同期信号(V_SYNC)が採用されているが、これに限定されない。つまり、映像信号安定状態の検知に際して用いられる同期信号は、水平同期信号(H_SYNC)であってもよく、垂直同期信号(V_SYNC)および水平同期信号(H_SYNC)の両方であってもよい。したがって、HDMIレシーバ10より検出され出力され、CPU9により受け取られる同期信号は、垂直同期信号(V_SYNC)および水平同期信号(H_SYNC)のうち少なくともいずれか一方の同期信号であればよい。
【0132】
また、上述した本発明の実施の形態では、HMD1が備える表示ユニット3は、LCD7を用いた表示方式を採用するものであるが、これに限定されない。HMD1としては、例えば、走査したレーザ光を使用者の網膜上に投影する網膜走査型の画像表示装置であったり、CRT(Cathode−ray tube;陰極線管)や有機EL(Electro Luminescence)素子等を用いた画像表示装置であったりしてもよい。つまり、本発明は、垂直同期信号や水平同期信号といった同期信号を扱う表示装置全般に適用可能である。
【0133】
また、上述した本発明の実施の形態では、中継器2は、HMD1に対して専用ケーブル51で接続される外部装置である。しかし、中継器2の機能を有する構成をHMD1内に組み込むことで、中継器2がHMD1に内蔵された構成態様も実現可能である。
【0134】
また、上述した本発明の実施の形態では、中継器2からHMD1に入力される映像信号は、中継器2に対してPC等の外部装置から入力されるが、HMD1に入力される映像信号は、中継器2において格納されているものであってもよい。この場合、中継器2における映像信号の格納部分としては、例えばRAM等の内蔵記憶デバイスのほか、SDカード、USBフラッシュメモリ、CD(Compact Disk)、FD(Flexible Disk )、MO(Magneto−Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、HD(Hard Disk)等の記憶デバイスが適宜用いられる。
【0135】
[適用例]
以下では、上述した実施形態に係るHMD1を含むHMDシステム50の適用例について説明する。
【0136】
図7に示すように、本適用例のHMDシステム50Aは、スマートフォン71からの映像をHMD1に表示するシステムである。本適用例では、中継器2の映像信号入力用端子21には、スマートフォン71に接続されるDock−HDMI変換アダプタ75を介して、HDMIケーブル72が接続される。また、中継器2の給電用入力端子22には、給電用のUSBケーブル74によってUSB接続の外付けバッテリ73が接続される。また、本適用例では、Dock−HDMI変換アダプタ75を介して、Dock−USB変換ケーブル76により、外付けバッテリ73とスマートフォン71とが接続される。これにより、外付けバッテリ73からスマートフォン71への給電が行われる。なお、外付けバッテリ73とスマートフォン71との間にDock−USB変換ケーブル76が接続されていない場合は、スマートフォン71への給電は行われないが、本システムの動作には影響しない。
【0137】
本適用例のHMDシステム50Aにおいては、スマートフォン71の仕様によって、画像の表示側、つまり中継器2の電源が入っていない状態では、スマートフォン71からの映像信号の出力が行われない。このため、本適用例のHMDシステム50Aにおいては、必然的に、中継器2の電源が入れられてから、スマートフォン71から中継器2への映像信号の出力操作が行われる。
【0138】
したがって、本適用例のHMDシステム50Aにおいては、仮に、上述したような本実施形態の画像表示シーケンスが実行されない場合、適用例1と同様に、コントローラ入力映像信号の出力が不安定な状態で、LCDコントローラ11への画像表示命令が実行されている状況が生じ、表示画像に縦縞が入る等の不具合が生じる。そこで、本適用例のHMDシステム50Aにおいても、本実施形態の画像表示シーケンスが実行されることで、コントローラ入力映像信号の出力が安定するまで、LCDコントローラ11への画像表示命令が待機されることになる。これにより、LCDユニット5による表示画像について正常な画像が確保される。
【0139】
以上説明したように、本実施形態に係るHMD1および画像表示方法によれば、以下の効果が期待できる。
【0140】
(1)本実施形態のHMD1は、画像表示を行うLCDユニット5と、LCDユニット5を制御する表示制御部14と、デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号の入力を受け、入力された映像信号を表示制御部14に直接出力するとともに、入力された映像信号から垂直同期信号を検出して出力するHDMIレシーバ10と、HDMIレシーバ10から出力された垂直同期信号の入力を受け、垂直同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、入力された垂直同期信号が安定した状態であることを検知する同期信号検知手段、およびHDMIレシーバ10への映像信号の入力が開始された後に、この同期信号検知手段により垂直同期信号が安定した状態であることが検知されると、表示制御部14に、LCDユニット5による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する画像表示信号出力手段の各手段として機能するCPU9とを備える。これにより、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消することができる。
【0141】
(2)本実施形態のHMD1においては、同期信号検知手段としてのCPU9は、入力された垂直同期信号の出力が基準時間の間一定となることがあらかじめ設定された所定回数連続したことを、垂直同期信号が安定した状態であることとして検知する。これにより、映像信号安定状態に相当する同期信号安定状態を、精度良く検知することができる。結果として、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を効果的に解消することができる。
【0142】
(3)本実施形態のHMD1においては、基準時間は、垂直走査周波数に基づいて設定される所定の幅を有する。これにより、同期信号安定状態の検知処理において、映像信号が安定した状態における垂直同期信号についての期間ΔXの誤差が許容される。これにより、映像信号が安定した状態であるにもかかわらず、垂直同期信号の期間ΔXのわずかな変動によって同期信号安定状態が検知されないといった状況を回避することができる。結果として、同期信号安定状態を精度良く検知することが可能となる。
【0143】
(4)本実施形態のHMD1においては、LCDユニット5は、LCD7と、LCD7による画像表示を行うためのバックライト8とを有し、表示制御部14は、LCD7を制御するLCDコントローラ11と、バックライト8を制御するLEDバックライトドライブIC12とを有する。そして、HMD1は、画像表示信号出力手段としてのCPU9から出力された画像表示信号に基づいてLCDユニット5に画像表示を実行させるに際し、LCDコントローラ11によりLCD7に対する制御を開始した後、所定時間(ライト点灯待機時間)経過後に、LEDバックライトドライブIC12によりバックライト8に対する制御を開始する。これにより、LCDユニット5による表示画像について正常な画像を確保することができる。
【0144】
(5)本実施形態のHMD1においては、画像表示信号出力手段として機能するCPU9は、画像表示信号を出力した後、同期信号安定状態が検知されなくなった場合、表示制御部14に、LCDユニット5による画像表示を中断させる信号(画像非表示信号)を出力する。これにより、映像信号の乱れによって乱れた画像が使用者に対して表示されることを回避することができ、使用者が画像の乱れによって不快感を覚えることを防止することができる。
【0145】
(6)本実施形態の画像処理方法は、デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号を、LCD7を制御するLCDコントローラ11に直接入力することで、LCD7による画像表示を行う画像表示方法であって、映像信号から垂直同期信号を検出するステップと、垂直同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、検出するステップにより検出された垂直同期信号が安定した状態であることを検知するステップと、検知するステップにより垂直同期信号が安定した状態であることが検知されると、画像表示を実行するステップとを含む。これにより、スケーラ等の画像処理回路を用いることなく、映像信号の乱れに起因する表示画像の不具合を解消することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 HMD(画像表示装置)
2 中継器
5 LCDユニット(画像表示手段)
7 LCD(液晶ディスプレイ)
8 バックライト(光源)
9 CPU(同期信号検知手段、画像表示信号出力手段)
10 HDMIレシーバ(映像信号入出力手段)
11 LCDコントローラ(液晶制御部)
12 LEDバックライトドライブIC(光源制御部)
14 表示制御部(表示制御手段)
50 HMDシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示を行う画像表示手段と、
前記画像表示手段を制御する表示制御手段と、
デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号の入力を受け、入力された前記映像信号を前記表示制御手段に直接出力するとともに、入力された前記映像信号から前記垂直同期信号および前記水平同期信号のうち少なくともいずれか一方の同期信号を検出して出力する映像信号入出力手段と、
前記映像信号入出力手段から出力された前記同期信号の入力を受け、前記同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、入力された前記同期信号が安定した状態であることを検知する同期信号検知手段と、
前記映像信号入出力手段への前記映像信号の入力が開始された後に、前記同期信号検知手段により前記同期信号が安定した状態であることが検知されると、前記表示制御手段に、前記画像表示手段による画像表示を実行させる画像表示信号を出力する画像表示信号出力手段と、を備える、
画像表示装置。
【請求項2】
前記同期信号検知手段は、入力された前記同期信号の出力が前記基準時間の間一定となることがあらかじめ設定された所定回数連続したことを、前記同期信号が安定した状態であることとして検知する、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記基準時間は、前記同期信号の走査周波数に基づいて設定される所定の幅を有する、
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画像表示手段は、液晶ディスプレイと、該液晶ディスプレイによる画像表示を行うための光源とを有し、
前記表示制御手段は、前記液晶ディスプレイを制御する液晶制御部と、前記光源を制御する光源制御部と、を有し、
前記画像表示信号出力手段から出力された前記画像表示信号に基づいて前記画像表示手段に画像表示を実行させるに際し、前記液晶制御部により前記液晶ディスプレイに対する制御を開始した後、所定時間経過後に、前記光源制御部により前記光源に対する制御を開始する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
画像表示信号出力手段は、前記画像表示信号を出力した後、同期信号検知手段により前記同期信号が安定した状態であることが検知されなくなった場合、前記表示制御手段に、前記画像表示手段による画像表示を中断させる信号を出力する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
デジタル画像信号、垂直同期信号および水平同期信号を含む映像信号を、液晶ディスプレイを制御する手段に直接入力することで、前記液晶ディスプレイによる画像表示を行う画像表示方法であって、
前記映像信号から前記垂直同期信号および前記水平同期信号のうち少なくともいずれか一方の同期信号を検出するステップと、
前記同期信号の出力が一定となる時間についてあらかじめ設定された基準時間に基づき、前記検出するステップにより検出された前記同期信号が安定した状態であることを検知するステップと、
前記検知するステップにより前記同期信号が安定した状態であることが検知されると、前記画像表示を実行するステップと、を含む、
画像表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−61521(P2013−61521A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200388(P2011−200388)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】