説明

画像表示装置及びその製造方法

【課題】 青色発光蛍光体の青色成分の高輝度化を図ることによって高精細・高コントラストの蛍光面を容易に実現可能とする画像表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 可視光透過性のフェースプレート2を有する真空外囲器と、フェースプレート2の内面に形成された青色発光蛍光膜7と、真空外囲器内に収容されて蛍光膜7に電子線を投射する電子銃10とを備え、青色発光蛍光膜7は、フェースプレート2の内面側からZnS:Ag,Al蛍光体膜7aとCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bとを順次積層して形成され、CaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径がZnS:Ag,Al蛍光体の平均粒径よりも小さくすることにより、高密度電子線照射に対する発光効率の低下、所謂輝度飽和が少なくなるので、高密度励起状態で高輝度が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその製造方法に係り、特に蛍光面を構成する青色発光蛍光体の青色発光成分の高輝度化に好適な蛍光体膜構造及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置として、例えば、投写型陰極線管を用いた投写型テレビジョン装置がある。投写型テレビジョン装置は、赤色画像用,緑色画像用及び青色画像用の3本の投写型陰極線管を映写スクリーンから所定距離だけ離れた位置に配置し、3本の投写型陰極線管のフェースプレートに表示された再生画像を投写レンズを通して映写スクリーン上に重ね合わせて投写表示する。
【0003】
この種の投写型陰極線管は、ガラス製の真空外囲器と、フェースプレートを有するパネル部と、内部に電子銃を収納した細長い円筒状のネック部と、パネル部とネック部とを連接する略漏斗形状のファンネル部とから構成されている。
【0004】
また、この投写型陰極線管では、そのパネル部のフェースプレート内面に蛍光面を有し、電子銃から出射する高密度の電子線を、偏向ヨークで形成される垂直及び水平偏向磁界で偏向し、蛍光面上を二次元走査させる。電子線が蛍光面に射突したことによって発生する光を投写レンズで映写スクリーン上に拡大投影する。
【0005】
また、投写型陰極線管では、高密度の電子ビームが緑色,青色,赤色の何れかからなる単色蛍光体膜に投射されたとき、電子ビームの内、これらの単色蛍光体膜内の蛍光体粒子に当らず、蛍光体の発光に寄与しない電子ビームの割合が多い。また、蛍光体粒子間を散乱しながら、透過し、フェースプレートに投射される電子がある。このため、フェースプレートは、フェースプレートに電子ビームが衝突してフェースプレート自体が茶色味を帯びる現象であるブラウニングが生じる。
【0006】
このように電子ビーム中で蛍光体粒子の発光に寄与しない電子ビームが比較的多く存在することと、その発光に寄与しない電子ビームがフェースプレートに投射することによりフェースプレートにブラウニングが生じることから、高輝度の表示画像を有する投写型陰極線管を得ることが難しかった。
【0007】
また、フェースプレートにこのようなブラウニングが生じると、フェースプレートは、特に緑領域から青領域の光を吸収する。そのため、ブラウニングは、緑色用投写型陰極線管及び青色用投写型陰極線管の長寿命化を妨げる一つの要因となっていた。
【0008】
なお、このようなブラウニングの発生は、前述した投写型陰極線管に限るものではなく、電界放射型画像表示装置,ディスプレイモニター管,テレビ受像機,その他の陰極線管,パネルガラスの内面に蛍光体を有しない陰極線管あるいは蛍光体以外の層を有する陰極線管などにおいても同様に発生する。
【0009】
下記特許文献1には、この種のブラウニングの対策技術が開示されている。この特許文献1では、ZnS:Ag系蛍光体と、CaMgSi26:Eu2+蛍光体とを混合して青色発光蛍光体膜を成膜する技術が開示されている。その要点は、平均粒径の大きいZnS:Ag系蛍光体と、平均粒径の小さいCaMgSi26:Eu2+蛍光体とを混合することにより、蛍光体膜の充填密度を高めて電子線によるフェースプレート到達を抑制してガラスブラウニングを低減させた画像表示装置が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−197135号公報
【0011】
また、近年では、投写型陰極線管(投写管)に用いられる蛍光体は、高密度の電子線励起状態で使用されるため、その条件下で優れた発光特性を有する材料が強く求められている。特に、
(1)発光効率の励起依存性(輝度飽和)が小さいこと。
(2)発光効率の経時変化が少ない(優れた輝度寿命を示す)こと。
(3)発光色調の変化が小さいこと。
などが要求されている。
【0012】
また、他の大画面ディスプレイ(例えばLCOSを用いた投写システム)との競合において、投写管では、映像の更なる解像度向上のために薄膜化して蛍光膜中の光散乱を抑制することが効果的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の画像表示装置では、平均粒径の大きい蛍光体粒子間に平均粒径の小さい蛍光体を略均一に分散させて蛍光体膜を形成する成膜方法は、技術的に極めて困難であり、量産性の観点から非現実的であるという課題があった。
【0014】
また、電子線照射による発光体特性(特に輝度飽和)が互いに異なる複数の蛍光体をフェースプレート内面の同一面上に配置することでは、それぞれの蛍光体特性が混在した形態となり易いので、蛍光体特性の良いところのみを発揮させることが困難であるという課題があった。
【0015】
したがって、蛍光体膜の高輝度化が容易に得られないことから、高輝度・高コントラストの表示画像が得られる投写型陰極線管を容易に実現することが困難であった。
【0016】
本発明は前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、画像表示装置の性能向上に対して実現不可能となつていた青色発光蛍光体の青色成分の高輝度化を図ることによって、高精細・高コントラストの蛍光面を容易に実現可能とする画像表示装置を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、青色発光蛍光膜の青色成分の高輝度化を図ることによって高精細・高コントラストの表示画像が容易に且つ生産性良く得られる画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために本発明による画像表示装置は、可視光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、フェースプレートの内面に形成された青色発光蛍光体膜を有する蛍光面と、真空外囲器内に収容されて蛍光面に電子線を投射する電子線源とを備え、青色発光蛍光体膜は、フェースプレートの内面側からZnS:Ag系蛍光体とCaMgSi26:Eu2+蛍光体とが順次積層して形成され、CaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径がZnS:Ag系蛍光体の平均粒径よりも小さくしたもの積層することにより、照射電流に対する発光効率の低下、所謂輝度飽和を低減するので、高密度励起状態で高輝度が得られる。
【0019】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、CaMgSi26:Eu2+蛍光体は、発光センタであるEu2+の濃度をCa置換サイトに対する比として、1%以上3%以下の範囲とすることを特徴としている。
【0020】
また、本発明による画像表示装置の製造方法は、フェースプレートの内面にZnS:Ag,Al蛍光体膜を形成した後に当該ZnS:Ag系蛍光体よりも平均粒径の小さいCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜を形成することにより、高密度電子線照射に対する発光効率の低下、所謂輝度飽和が少なくなるので、高密度励起状態で高輝度が得られる蛍光面が容易に実現できる。
【0021】
また、本発明によるが画像表示装置の製造方法は、好ましくは、上記製造方法において、CaMgSi26:Eu2+蛍光体を複数回に亘って塗布することにより、蛍光面の電子線源側でCaMgSi26:Eu2+蛍光体が高い充填密度で成膜される。
【0022】
なお、本発明は、前記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0023】
本発明による画像表示装置によれば、青色発光蛍光体としてCaMgSi26:Eu2+蛍光体を用いたことにより、照射電流に対する輝度飽和が少ないので、特に高密度励起の状態において高輝度発光が得られ、画面輝度の高い蛍光面が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0024】
また、CaMgSi26:Eu2+蛍光体の発光は、電子線の照射量で青色色調が変化しないので、蛍光面に赤,緑,青色発光蛍光体を用いた蛍光面を有する画像表示装置では、3色共に蛍光体の色調変動が小さいので、明るさを大きく変動させてもホワイトバランスが安定し、色調の変化が少ない高輝度・高品位の蛍光面が得られるという極めて優れた効果が得られる。
【0025】
また、本発明による画像表示装置の製造方法によれば、高輝度でしかも色調の変化の少ない高品位の蛍光面が容易にしかも生産性を良く得られるなどの極めて優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明による画像表示装置の実施例1による投写型陰極線管の構成を説明する要部断面図である、図1において、1はパネル部、2はフェースプレート、3はネック部、4はファンネル部、5は蛍光面、6はフェースプレート2の内面に形成されて電子線を反射させる金属反射膜、7は金属反射膜7上に形成された青色発光蛍光体膜である。この青色発光蛍光体膜7は、金属反射膜7側からZnS:Ag系の蛍光体として例えばZnS:Ag,Al蛍光体膜7aと青色発光用のCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bが順次積層されて形成されている。8はアルミニウム膜、9は偏向ヨーク、10は電子銃、11は電子銃10から投射される電子線、12は投写型陰極線管である。
【0028】
この投写型陰極線管12を構成するガラス製の真空外囲器(バルブ)は、大口径の透光性フェースプレート2を有するパネル部1と、内部に電子銃10を収納した細長い円筒状のネック部3と、パネル部1とネック部3とを連接するファンネル部4とから構成される。
【0029】
パネル部1は、フェースプレート2の内面に形成された反射膜6と、蛍光膜(第1の青色発光蛍光膜7a及び第2の青色発光蛍光膜7b)7との2層構造からなる蛍光面5と、この蛍光面5上に形成されたアルミニウム膜8とを有している。
【0030】
また、反射膜6は、フェースプレート1の内面と蛍光膜7との間に設けられ、電子銃10から投射された電子線11に対して高い反射特性を示すように構成されている。この反射膜6は、例えば、平均膜厚が約0.2μmの酸化ビスマス(Bi23)の金属化合物の薄膜である。また、ネック部3とファンネル部4との連接部分の外側には、偏向ヨーク9が装着され、電子銃10から放射された1本の電子線11は、偏向ヨーク9で所定の方向に走査偏向された後、蛍光面5に投射される。
【0031】
上記構成による投写型陰極線管12における画像表示動作は、既知の投写型陰極線管における画像表示動作と殆ど同じであり、また、緑色画像表示用投写型陰極線管,青色画像表示用投写型陰極線管及び赤色画像表示用投写型陰極線管を用いて映写スクリーン上にそれらの表示画像を合成状態で投写させ、拡大された合成カラー画像を表示させる投写型テレビジョン装置の動作も既知のこの種の投写型テレビジョン装置の動作と同じであるので、これらの動作についての説明はいずれも省略する。
【0032】
図2は、図1に示した投写型陰極線管のフェースプレート2及び蛍光面5の一部Aの具体的構造を示す拡大断面図であり、前述した図1と同一部分には同一符号を付してある。図2において、このフェースプレート2の内面には、このフェースプレート2の内面に形成された金属反射膜6と、この金属反射膜6上に設けられた青色発光の蛍光体膜7とが配置される。この場合、金属反射膜6は、例えば平均膜厚が約0.2μmの酸化ビスマス(Bi23)を主成分とする薄膜である。
【0033】
また、金属反射膜6上に形成される青色発光蛍光体膜7を構成するZnS:Ag,Al蛍光体膜7aは、例えば、平均粒径が約12μmのZnS:Ag,Al蛍光体により形成され、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bは、ZnS:Ag,Al蛍光体膜7aを構成するZnS:Ag,Al蛍光体の平均粒径よりも小さい例えば、平均粒径が約3μmのCaMgSi26:Eu2+蛍光体により形成されている。
【0034】
つまり、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bを構成するCaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径がZnS:Ag,Al蛍光体膜7aを構成するZnS:Ag,Al蛍光体の平均粒径より小さいので、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bが高密度で充填されて成膜される。
【0035】
次に、この青色発光蛍光膜7の成膜方法について説明する。青色発光蛍光膜7は、ZnS:Ag系蛍光体膜の形成工程の後にCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜の形成工程を行なって形成される。青色発光蛍光体膜7を構成するZnS:Ag,Al蛍光体膜7aは、通常市販されている平均粒径約12μmのZnS:Ag,Al蛍光体を用い、酢酸バリウムと水ガラスとの混合体による沈降塗布法にて成膜する。
【0036】
次に、ZnS:Ag,Al蛍光体膜7a上にCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bを成膜する。このCaMgSi26:Eu2+蛍光体は次のようにして生成する。まず、最初に高純度原料の炭酸カルシウム(CaCO3)9.808g,酸化マグネシウム(MgO)約4.030g,酸化ユーロピウム(Eu23)0.352g及び酸化珪素(SiO2)12.017gを瑪瑙乳鉢内で軽く混合し、さらに、その混合物にエタノールを少量加えた状態で混合した。この原料混合物を空気中で約120℃にて約1時間程度乾燥させた後にアルミナ坩堝に入れ、窒素ガス:水素ガス(体積比99:1)混合気体中で約1550℃にて約3時間程度熱処理した。
【0037】
この時、アルミナ坩堝にアルミナ製の蓋を載せた(セラミックス用接着剤は使用せず)。得られた生成物を瑪瑙乳鉢内に移し、純水を加えて軽く解しながら、篩を通した後、空気中にて約120℃にて乾燥させた。得られた生成物は、平均粒径が約3μmの白色粉末状であり、約254nmの紫外線を照射すると、青色発光を示した。また、X線回折パターンはCaMgSi26蛍光体とほぼ一致した。
【0038】
このようにして得られたCaMgSi26:Eu2+蛍光体を用いて7型投写型陰極線管を作製した。蛍光面作製には、水ガラス(K2O・nSiO2,n;3.4)をバインダとし、電解質として酢酸バリウム(Ba(CH3COO)2)を用いた。この時、膜重量が約4mg/cm2になるようにCaMgSi26:Eu2+蛍光体の投入量を調節した。
【0039】
このようにして作製された青色発光蛍光面に加速電圧約30kV,照射面積約110mm×90mm,照射電流約0.5mAでジャストフォーカスさせた状態で蛍光面に電子線を照射して光検出器(シリコンのフォトダイオードにRadiometricフィルタを装着したもの)を用いて発光強度を測定した。
【0040】
分光放射輝度計による測定も行なったが、比較対象のZnS:Ag,Al蛍光体膜は、励起強度(照射電流)や試料温度によって発光色調が変わるので、光子のエネルギー比率として比較し易い上記フィルタを光検出器に組み合わせて行なった。
【0041】
従来から市販されている代表的な青色発光用のZnS:Ag,Al蛍光体のみを用いて作製した投写型陰極線管との発光強度と電流の関係を下記表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
この表1から明らかなように低電流では、ZnS:Ag,Al蛍光体膜の方が高い発光強度を示すが、照射電流が増加するにつれて逆転し、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜の発光強度が励起強度に対して伸びが良いことが判る。また、発光スペクトル測定から算定したCIE色度座標(x、y)のうち、変化の大きいy値と電流との関係を下記表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
この表2の結果から、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜の色度座標yは、ZnS:Ag,Al蛍光膜のy値が電流によって変化する挙動に比べて小さいことが判る。このことは、画面の明るさを変えても発光色調が殆んど変動しないことを表しており、他のY2Si25:Tb3+緑色発光蛍光体膜及びY23:Eu3+赤色発光蛍光体膜の色調変化が同様に小さいことから、ハイライトの白色色度の変化が改善される。
【0046】
なお、この実施例1では、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bは、ZnS:Ag,Al蛍光体膜7a上に単層で形成した場合について説明したが、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bを複数層に亘って形成することにより、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜7bを構成するCaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径がZnS:Ag,Al蛍光体膜7aを構成するZnS:Ag,Al蛍光体の平均粒径よりも小さいことから、高密度に充填されて成膜されるので、より高い発光強度が得られる。
【実施例2】
【0047】
上記実施例1で作製した平均粒径が約3μmのCaMgSi26:Eu2+(以下、CMSと略す)蛍光体と、市販されている平均粒径が約12μmのZnS:Ag,Al(以下、ZnSと略す)蛍光体とを混合して投写型陰極線管用蛍光体膜を作製した。膜重量は約4mg/cm2とした。作製方法は、上記実施例1と同様に水ガラスと酢酸バリウムとを用いた沈降塗布法にて形成した。CaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径は上述したように平均粒径を約3μmとし、一方、ZnS:Ag,Al蛍光体では平均粒径を約12μmと違いがあるので、沈降塗布法により蛍光体膜を作製した場合、例えば、混合比1:4の場合、図2に示すような蛍光膜7が容易に得られる。
【0048】
次に、ZnS:Ag,Al蛍光体と、CaMgSi26:Eu2+蛍光体とを重量比を変えて作製した投写型陰極線管の相対発光強度を下記表3に示した。なお、この発光強度の測定は、加速電圧約30kV,照射面積約110mm×90mm,照射電流約0.35mA,照射電流約0.5mAでジャストフォーカスさせた状態で蛍光面に電子線を照射して光検出器を用いて行なった。
【0049】
【表3】

【0050】
この表3の結果から、蛍光体膜におけるCaMgSi26:Eu2+蛍光体の混合比率が約20%以上となると、発光強度がZnS:Ag,Al蛍光体の単一系よりも高くなることが判る。
【0051】
なお、実施例2では、青色発光蛍光体膜7は、ZnS:Ag,Al蛍光体とCaMgSi26:Eu2+蛍光体とを混合した混合膜で形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ZnS:Ag,Al蛍光体を混入せずにCaMgSi26:Eu2+蛍光体のみを用い、酢酸バリウムと水ガラスとの混合体による沈降塗布法により単色蛍光体膜で形成しても上述とほぼ同等の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0052】
上記実施例1に示したCaMgSi26:Eu2+蛍光体をニッケル鍍金した無酸素銅製の基板上に沈降塗布して電子線照射による発光特性測定用テストピースを作製した。塗布は、投写型陰極線管作製時と同様に行い、膜重量も約4mg/cm2であった。
【0053】
専用の評価装置を用いて電子線照射による各試料の発光特性を評価した。加速電圧約30kV,電子線照射面積約40mm×30mm,照射電流約0.012mAで蛍光膜に電子線を照射し、光検出器を用いて発光強度を測定した。発光強度の照射電流依存性を図3に、発光スペクトルを図4にそれぞれ示した。
【0054】
図3の結果から明らかなように上記表1でも示したようにCaMgSi26:Eu2+蛍光体CMSの方がZnS:Ag,Al蛍光体ZNSよりも発光出力が照射電流の増加に伴い高くなる、所謂輝度飽和が少ないことが判る。
【0055】
また、図4では、ZnS:Ag,Al蛍光体ZNSに比べてCaMgSi26:Eu2+蛍光体CMSの発光スペクトルの半値幅が狭いことが判る。このことは、発光の色純度が高いことを示しており、投写用レンズを用いる場合、レンズの収差の影響が軽減されて高品位の映像が得られる。
【0056】
これらのことから、高電流密度で照射される投写型陰極線管用青色蛍光面として現行のZnS:Ag,Al蛍光体膜よりも、特に高電流照射領域において、CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜が高輝度が得られることが明らかとなった。
【0057】
なお、前述した実施例においては、画像表示装置として投写型陰極線管を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィールドエミッション型ディスプレイに適用しても、照射電流密度が高いので、要求される蛍光面の輝度向上に効果的である。
【0058】
図5は、本発明による画像表示装置として前述した図1に示す投写型陰極線管を用いた映像表示装置の一例を説明する正面図であり、図6は図5に示す映像表示装置の内部配置例の説明図である。図5及び図6は、所謂投写型テレビ受像機であり、その内部には図7に示すような赤色用の投写型陰極線管rPRT,緑色用の投写型陰極線管gPRT及び青色用の投写型陰極線管bPRTと、投写レンズLNSと、反射ミラーMIRとが収納されている。なお、参照符号CPLは投写型陰極線管PRTに投写レンズLMSを取り付けるためのカップリングである。
【0059】
3本の投写型陰極線管PRTのパネルガラスPNLに有する蛍光体膜に作像された各原色の色映像は、投写レンズLNSと反射ミラーMIRとでスクリーンSCRに投影される。投影された各原色の色映像は、前記の投影時にスクリーンSCRで合成されてカラー映像が再生される。なお、図5及び図6に示した映像表示装置は、あくまで一例であり、投写型陰極線管PRTの部分をスクリーンSCRとは別装置として分離したものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による画像表示装置の実施例1による投写型陰極線管の構成を示す要部断面図である。
【図2】図1の投写型陰極線管のA部を示す拡大断面図である。
【図3】単一蛍光膜における輝度−電流特性を示す図である。
【図4】単一蛍光膜における発光スペクトルを示す図である。
【図5】本発明による画像表示装置として投写型陰極線管を用いた映像表示装置の一例を説明する正面図である。
【図6】図5の映像表示装置の内部配置例を示す説明図である。
【図7】カラープロジェクタの光学系の配置例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・パネル部、2・・・フェースプレート、3・・・ネック部、4・・・ファンネル部、5・・・蛍光面、6・・・金属反射膜、7・・・蛍光膜、7a・・・ZnS:Ag,Al蛍光体膜、7b・・・CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜、8・・・アルミニウム膜、9・・・偏向ヨーク、10・・・電子銃、11・・・電子線、12・・・投写型陰極線管。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に青色発光蛍光体膜を有する蛍光面と、
前記真空外囲器内に収容され、且つ前記蛍光面に電子線を投射する電子線源と、
を備え、
前記青色発光蛍光体膜は、前記フェースプレートの内面側からZnS:Ag系蛍光体とCaMgSi26:Eu2+蛍光体とが順次積層して形成され、且つ前記CaMgSi26:Eu2+蛍光体の平均粒径が前記ZnS:Ag系蛍光体の平均粒径よりも小さいことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
可視光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に青色発光蛍光体膜を有する蛍光面と、
前記真空外囲器内に収容され、且つ前記蛍光面に電子線を投射する電子線源と、
を備え、
前記青色発光蛍光体膜は、CaMgSi26:Eu2+蛍光体からなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
可視光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に青色発光蛍光体膜を有する蛍光面と、
前記真空外囲器内に収容され、且つ前記蛍光膜に電子線を投射する電子線源と、
を備え、
前記青色発光蛍光体膜は、ZnS:Ag系蛍光体とCaMgSi26:Eu2+蛍光体との混合膜からなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記CaMgSi26:Eu2+蛍光体は、前記電子線源側に20wt%以上含有することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記CaMgSi26:Eu2+蛍光体は、発光センタであるEu2+の濃度をCa置換サイトに対する比として、1%以上3%以下の範囲とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記ZnS:Ag系蛍光体をZnS:Ag,Al蛍光体とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像表示装置は、投写型陰極線管であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記画像表示装置は、電界放出型画像表示装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
可視光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に青色発光蛍光体膜を有する蛍光面と、
前記真空外囲器内に収容され、且つ前記蛍光面に電子線を投射する電子線源と、
を備え、
前記青色発光蛍光体膜の形成工程は、前記フェースプレートの内面にZnS:Ag系蛍光体膜を形成する工程と、その後に前記ZnS:Ag系蛍光体よりも平均粒径の小さいCaMgSi26:Eu2+蛍光体膜を形成する工程とを有することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記CaMgSi26:Eu2+蛍光体膜の形成工程は、複数回行うことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記ZnS:Ag系蛍光体膜形成工程では、ZnS:Ag,Al蛍光体を用いることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記画像表示装置は、投写型陰極線管であることを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れかに記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記画像表示装置は、電界放出型画像表示装置であることを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れかに記載の画像表示装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−165008(P2007−165008A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356367(P2005−356367)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】