説明

画像表示装置

【課題】 電圧無印加時において液滴を確実に保持する。
【解決手段】 表示側となる上部層と、該上部層と表示用空間をあけて配置する下部層とを備え、前記表示用空間に着色した導電性の液滴と、該液滴と交じり合わないオイルあるいは空気が充填され、前記表示用空間の下面側の前記下部層の上面あるいは表示用空間の上面側の前記上部層の下面に面状電極が設けられる一方、前記表示用空間には、前記上部層あるいは下部層から針状電極が上下方向に突出され、前記面状電極は親油性とされる一方、前記針状電極は親水性とされ、前記面状電極と針状電極との回路が開かれて電圧無印加時には前記液滴が垂直方向の針状電極の周囲に球状に付着した状態で保持される一方、回路閉時の電圧印加時に前記液滴が上記面状電極を設けた表示用空間の下面側あるいは上面側で水平方向に広がった状態となって着色表示する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、外部電場を利用して液体を移動させるエレクトロウェッティング現象を利用した電子ペーパーディスプレイ等に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明もしくは着色の液体の移動現象を利用して表示を行う電子ディスプレイが提案されている。例えば、外部電場を利用して液体を移動させて表示する方式として、電気浸透方式とエレクトロウェッティング方式がある。
【0003】
電気浸透方式は、多孔質体の表面の液体含浸率を制御して外光を散乱させ、外光に対する光反射率や光透過率を制御し、予め多孔質体と透明液体の屈折率を一致させておき、多孔質体の貫通孔内に液体が満たされると透明となり背景色が表示される一方、貫通孔から液体が流出すると光散乱が生じて白色表示される構成としている。
エレクトロウェッティング方式は、細孔内の液体に対する電界印加で液体の界面張力を変化させて貫通孔に沿って液体を移動させる一方、電界除去により細孔から液体を流出させる現象を利用している。詳しくは、細孔の内面に設けられる電極に電圧が印加されると、発生する電界により液体の細孔内面に対する濡れ性が変化して、液体の細孔内面に対する接触角が減少し、細孔内を液体が移動していく。一方、液体に対する電界が除去されると、細孔内面に対する液体の濡れ性が変化して接触角度は急激に増大し、細孔から液体が流出する。
【0004】
従来、エレクトロウエッティングを利用した表示装置として、特開平10−39800号公報(特許文献1)および特開平9−311643号公報(特許文献2)で、図9に示す装置が提供されている。該装置は、2枚の透明シート1、2の間の密閉空間3内に、複数の組の染色有極液からなる小滴4A、4B、…を封入し、透明シート2に面状の第1電極5を設けると共に、該第1電極5に低表面エネルギー絶縁膜6を設け、その上面に第2の電極8となる小面積の面状の高表面エネルギープレートを配置し密閉空間3に露出させている。該表示装置では、第1電極5と第2電極8との間の回路が閉じられて電圧が印加され、液滴に電解を直接に付加して液滴を広げて、着色表示する構成とされている。
【0005】
さらに、エレクトロウエッティングを利用した電子ディスプレイとして、特開2004−287008号公報(特許文献3)、特開2004−252444号公報(特許文献4)で図10に示す装置が提供されている。該装置は前記図9と同様に、シート1、2の間の形成した密閉空間3内に着色された小液滴4を封入し、シート1に第1電極5を設けると共に、該第一電極5上に絶縁膜6を介して第二電極8を設け、該第二電極8の周りに絶縁状態で第三電極9を設け、該第三電極9は着色液滴4の球状復帰を促進するものである。
【0006】
【特許文献1】特開平10−39800号公報
【特許文献2】特開平9−311643号公報
【特許文献3】特開2004−287008号公報
【特許文献4】特開2004−252444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4の構成からなる表示装置においては、液滴が小球状を呈した状態で、液滴を電極と確実に接触した状態に保持することは必須である。しかしながら、特許文献1〜4のいずれの装置も、この液滴保持について十分な考慮がなされていない。
まず、特許文献3、4には、外部から機械的な衝撃が負荷された場合、液滴を小球状に保持する液滴保持機構についての記載はない。
特許文献1、2では、図9(B)に示すように、各小滴4毎にアクリル板等により空洞10を設け、部分的にカプセル化することによって、機械的衝撃を免れることができると、記載されている。
しかしながら、液滴自体を有効な手段により固定していないと、機械的衝撃があった場合に液滴が電極から脱離してしまうため、液中の電界が乱れ、電気毛管現象が有効に作用しない画素が発生することとなる。その結果ディスプレイとしては致命的な色再現性が悪化することになる。
かつ、空洞10は電圧印加時に液滴を拡大させる容積とされているため、衝撃を受けると、液滴は空洞10内に拡大し、電圧が無印加時の小球状に保持することはできず、着色表示となる恐れがある。さらに、アクリル板により液滴を収容する空洞10を設けると、光の透過率が下がり、コントラストが低下する問題もある。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、外部からの機械的衝撃が付加されても、液滴は電極から離脱せずに小球状を保持でき、かつ、コントラストを阻害しない、液滴保持機能を備えた画像表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、表示側となる上部層と、該上部層と表示用空間をあけて配置する下部層とを備え、
前記表示用空間に着色した導電性の液滴と、該液滴と交じり合わないオイルあるいは空気が充填され、
前記表示用空間の下面側の前記下部層の上面あるいは表示用空間の上面側の前記上部層の下面に面状電極が設けられる一方、
前記表示用空間には、前記上部層あるいは下部層から針状電極が上下方向に突出され、
前記面状電極は親油性とされる一方、前記針状電極は親水性とされ、
前記面状電極と針状電極との回路が開かれて電圧無印加時には前記液滴が垂直方向の針状電極の周囲に球状に付着した状態で保持される一方、回路閉時の電圧印加時に前記液滴が上記面状電極を設けた表示用空間の下面側あるいは上面側で水平方向に広がった状態となって着色表示する構成としていることを特徴とする画像表示装置を提供している。
【0010】
前記したように、本発明では、電圧の無印加時に、表示用空間に突出させた針状電極の周りに液滴が戻り、該液滴を針状電極に付着させて球状に保持する構成としているため、外部からの機械的衝撃が負荷されても、液滴が針状電極から離れることはなく、耐久性に優れたものとすることができる。
このように、液滴を広げて表面積を拡大する一方、球状に縮小して表面積を減少させて表示制御を行う一対の電極のうち、一方の電極を液滴保持にも利用しているため、液滴保持のために更なる手段を設ける必要もなく、液滴自体を電極に付着させて保持できる。よって、液滴が電極から脱離して、液中の電界が乱れを発生させることはなく、色再現性の悪化を確実に防止できる。さらに、特許文献3、4に記載されているような液滴を収容するためにアクリル板等で空洞を設ける必要もなく、コントラストを低下させない。
【0011】
前記したように、面状電極は親油性とする一方、針状電極は親水性とし、具体的には白金、銅等からなる針状電極とし、導電性の液滴に導通させる必要があるため、絶縁被覆等は施さずに白金針、銅針を露出させた状態として用いている。なお、導通が取れる程度のSiOの薄膜をスパッタで被覆してもよい。
該構成とすると、電極の無印加時に、導電性液体は親油性の面状電極に弾かれる状態となって、液滴を高速で親水性の針状電極へと吸引することができ、表示切り替えの高速化を図ることができる。
前記面状電極の表面には絶縁膜と撥水膜を順次積層している。絶縁膜は例えばパレリンあるいは酸化アルミナを含有させ、その膜厚を1〜0.1μm程度とすることが好ましい。撥水膜が電圧印加時は親水層となるフッ素系樹脂で構成とすることが好ましい。
【0012】
前記表示用空間の上下垂直方向の寸法L1に対して、該表示用空間に垂直方向に突出する前記針状電極の突出寸法L3は、1/4以上としていることが好ましい。
針状電極の突出寸法は、液滴を針状電極の周囲に付着させて球状に保持するためには、1/4以上を突出させる必要がある一方、対向側に設けた面状電極との間には所要の絶縁空間を設けなければならない。上限は針状電極と面状電極の間隔が適度に近接すると放電が起こり、絶縁膜の破壊が生じるため、9/10以下とすることが好ましい。
【0013】
また、前記表示用空間の垂直方向の寸法(表示用空間の厚さ)L1と、直交する水平方向の寸法(表示用空間の幅)L2は、L1:L2が1:200〜5:2に設定していることが好ましい。
【0014】
また、前記針状電極は、水平方向に延在する前記表示用空間の長さ方向の中央部に設けていることが好ましい。
これは、表示用空間の中央部に針状電極を配置すると、該針状電極に付着して保持された液滴を、電圧印加時に両側方に迅速に拡大でき、高速で表示切り替えを行うことができる。
【0015】
表示用空間に連通する液溜め部を前記下部層に設け、該液溜め部の中心を通して前記表示用空間に前記針状電極は突出する構成とすることが好ましい。該液溜め部は下部層の中央部に設けることが好ましいが、一側端側に設けてもよい。
液溜め部を有する構造とすると、液滴を液溜め部で保持することができ、電圧ON,OFFにかかわらず常に液滴の保持力が高まり、機械的衝撃に対してより耐久性のあるものとすることができる。さらに、液溜め部の中央に針状電極を貫通させて表示用空間に突出させていることで、針状電極に液滴を付着させた状態で液溜め部に液滴を確実に収容でき、電圧を印加しない状態での液滴径を液滴自体の径に依存させずに、液溜め径に対応させることができるため、画像表示時と白色表示時とのコントラストの信頼性を高めることができる。
【0016】
さらに、液溜め部内で針状電極に付着していた液滴は、電圧印加時に針状電極上を移動して表示表空間へと拡散していき、液溜め部からの針状電極に沿った液滴の放出と、それに伴う液溜め部の内壁に沿った空気あるいはオイルの引き込みが発生することから、液滴と空気あるいは液滴とオイルのスムーズな循環が実現可能となる。その結果、液溜め部からの液滴の放出にかかる抵抗力が小さくなり、従来よりも低電圧駆動が可能となる。
【0017】
本発明の画像表示装置においては、前記上部層は前記表示用空間に広がった着色液体が透視できる略透明層すると共に、前記面状電極は透明電極とし、かつ、前記着色した液滴と交じり合わない前記オイルあるいは空気は無色透明とすると共に、前記下部層には光散乱層を設け、
前記表示用空間に液滴が水平方向に広がる電圧印加時は着色表示とする一方、前記針状電極に液滴が付着する電圧無印加時は光散乱層による光散乱で白色表示としている。
あるいは、前記下部層に光散乱層を設ける代わりに、前記着色した液滴と交じり合わない前記オイルに光散乱材を配合しており、針状電極に液滴が付着する電圧無印加時はオイル中の光散乱材による光散乱で白色表示する構成としてもよい。
【0018】
また、前記導電性の液滴としては、導電性を液体であれば良いが、熱的安定性を有する常温溶融塩で、水を含まないイオン性液体が好適に用いられる。
さらに、本発明の画像表示装置は、反射型、バックライトを設けた透過型、反射型と透過型とを併用した半透過型のいずれの構成としてもよい。
【0019】
前記表示用空間は隣接する画素の表示用空間と隔壁で区切られている。
即ち、各画素の着色導電性液体はR,G,Bのいずれかの着色液体としておき、前記表示用空間に着色された着色導電性液体が導入されて広がることにより、フルカラーの画像表示をさせ、かつ、該導電性液体を高速移動させることで、フルカラーの動画表示を行う画像表示装置としている。
なお、R,G,Bにより1つの画素を構成すると見なす場合には、本発明の1つの着色液体を封入する画素は、1つの画素を構成する絵素となる。
【0020】
本発明の画像表示装置では、前記上部層および下部層は厚さ10〜300μm程度のシート状とすると共に、前記表示用空間の垂直方向の寸法L1は1〜500μm程度とし、全体として薄いシート形状とし、シート状の画像表示装置としている。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明の画像表示装置では、電圧無印加時に液滴を針状電極に付着させて保持する構成としているため、振動や衝撃が負荷されても液滴が針状電極から離脱するのを抑制できる。よって、液滴が電極から脱離して、液中の電界が乱れを発生させることはなく、色再現性の悪化を確実に防止でき、耐久性に優れたものとすることができる。
かつ、電圧を印加する電極の一方を液滴保持にも利用しているため、液滴保持のために更なる別の手段を設ける必要がない。もなく、液滴自体を電極に付着させて保持できる。
【0022】
また、表示用空間と連通する液溜め部を設け、該液溜め部を貫通させて表示用空間に針状電極を突出する構成とすると、液溜め部内の針状電極に付着させて液溜め部内に液滴を収容でき、電圧無印加時における液滴径を液滴自体に依存させず、液溜め部の径で規定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2は第1実施形態のシート状の画像表示装置11を示し、
表示側となる透明基板からなる上部層12と、上部層12と水平方向に延在する表示用空間13をあけて下部層14を積層している。下部層14は基板15と、その上面に光散乱体16とを積層して一体化した構成としている。
前記表示用空間13は隣接する画素と隔壁19で仕切って密閉空間とし、その内部に着色した導電性の液滴Qと、液滴Qと交じり合わない透明なオイルOを密封状態で充填している。
【0024】
前記表示用空間13の下面側にあたる光散乱体16の上面全面に、ITOからなる薄膜透明な面状電極20を設けている。該面状電極20の上面全面に透明な絶縁膜21、撥水膜22を順次積層している。
前記絶縁膜21はパリレンあるいは酸化アルミナを含有させ、その層厚を1〜0.1μm程度としている。
撥水膜22は、電圧の印加時に親水層となるフッ素系樹脂等より形成している。動画表示を可能とするためには、液滴の移動速度の高速化する必要がある点から、表示用空間13に露出させる最表面には、電圧印加時に親水性、電圧非印加時に疎水性となる撥水膜22を形成することが有効である。
また、表示用空間13の面状電極20を配置する下面側を除く領域、即ち、上面側の上部層12の下面、隔壁19の空間側内面にも夫々撥水膜29を設けている。
【0025】
前記表示用空間13の長さ方向の中心位置には上部層12から針状電極25を表示用空間13に垂下させ、其の先端25aを表示用空間13の下面側の撥水膜22と空隙をあけて位置させている。即ち、水平方向に延在する表示用空間13の中央部に、上下方向に横断するように親水性の針状電極25を突出させている。
針状電極25は直径1μm〜10μm程度とした親水性を有する導線より形成し、本実施形態では白金を用いている。
表示用空間13の上下垂直方向の寸法L1とすると、針状電極25の突出寸法L3は、1/4以上とし、本実施形態では4/5程度としている。
【0026】
前記上部層12を形成する透明基板はガラス板あるいは絶縁樹脂シートから構成しているが、針状電極25を設けたミクロ的な部位だけは、白色塗料を塗布しておいてもよい。また、針状電極25と接続する微細線の透明回路26を上部層12内に設けている。
下部層14の基板15は上部層12と同様な透明ガラスから形成しているが、透明でなくとも良い。該基板15に積層する光散乱体16は、表示用空間13内に透明オイルOが広がった時に、表面画面を紙のような白さとするため、透明の高分子樹脂シートの中に、屈折率の大きな酸化チタン、アルミナの微粒子や屈折率の小さい中空ポリマー微粒子を含有させて表示面側に乱反射を発生させ、紙のような白さを現出させている。
光散乱体16のマトリクス樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等が用いられる。なお、樹脂に限らず、ガラス、セラミック等のいずれでも良い。
【0027】
前記上部層12および下部層14は10〜300μmのシート状とすると共に、表示用空間13の垂直方向の寸法L1は1〜500μmとし、本実施形態では約10μmとし、表示装置全体を薄いシート状としている。
【0028】
前記したように、表示用空間13は隣接する画素の表示用空間と隔壁19を仕切って密閉し、隣接する画素の液滴同士は異色としている。
導電性の着色した液滴Qは、蒸気圧がゼロであり、熱的安定性に優れ、かつ導電率も高いことからイオン性液体が好適に用いられるが、本実施形態では導電性水溶液を用いている。
該導電性液滴Qと交じり合わない無色透明なオイルOは、絶縁オイルとし、側鎖高級アルコール、側鎖高級脂肪酸、アルカン炭化水素、シリコーンオイル、マッチングオイルから選択された1種または複数種からなる無極性のオイルを用いている。これらオイルのうちシリコーンオイルが好適に用いられる。
なお、オイルOは透明とせずに、液滴Qと異なる色に着色されたものでもよい。また、オイルOの代わりに空気等の気体を用いてもよい。
【0029】
前記面状電極20と針状電極25とは、図示のように、開閉スイッチ27を介して電源28と接続し、開閉スイッチ27のON時に電極20、25に電圧が印加されるようにしている。
【0030】
次ぎに、前記画像表示装置の駆動について説明する。
初期状態が図1に示す白色状態であり、面状電極20と針状電極25との間のスイッチ27がオフで、液滴Qが針状電極25の周りにのみ付着して球状を呈し、表示用空間13の下側の面状電極20に沿って透明オイルOが広がっている。この状態で、光散乱体16からの乱反射により表示面は白色を呈する。
図2はスイッチ27をオンとした状態で、針状電極25の周りに保持されていた液滴Qが面状電極20側に移動すると共に、面状電極20に沿って表示用空間13内に広がり、液滴Qに付された着色表示へと変化する。
図1に示す液滴Qの表示側に面する側の表面積に対して、図2に示す液滴Qの表面積は20倍程度となる。
【0031】
詳細には、スイッチ27がオンされ、面状電極20と針状電極25に電圧が印加されると、表示用空間13では、面状電極20に対する液滴Qの濡れ性が変化する。即ち、電場により面状電極20の表面近傍の電気二重層に存在する液滴Qのイオン(電荷)が面状電極20の表面に引き寄せられる。密度が高くなったイオン(電荷)同士が反発し、その結果、液滴Qと面状電極20の表面での界面張力を減少させ、液滴Qを相対的に大きくなった外部張力(固相と気相の間の張力)で引っ張り、表示用空間13の長さ方向の両側端方向へと液滴Qを移動させ、液滴Qは表示用空間13内に広がり、オイルOを液滴Qの上層へと移動させる。
【0032】
スイッチ25がオフとなると、面状電極20の電場を取り去られて、液滴Qの界面張力は、液滴Q自身が有する固有の表面張力に戻され、表示用空間13内の液滴Qは親水化を有する針状電極25へと引き戻され、針状電極25に周面に付着した球状となる。このように針状電極の周囲にのみ着色した液滴が位置するため、表示面側からは着色液体は視野に入らず、白色表示となる。
この白色表示時に、液滴自身が有する表面張力にのみによって球状を保持させているのではなく、針状電極25に液滴Qを付着させて液滴を球状保持させているため、保持力を高めることができ、外部からの振動等が加えられても針状電極25から離脱して、表示用空間13内で広がることを抑制できる。
【0033】
このようにスイッチ27をオフ・オフすることで、着色した液滴Qを表示用空間13内で広がらせて着色表示する一方、液滴Qを針状電極25の周囲に付着させて小球状に保持することで白色表示とすることができる。
前記したように、表示用空間13は隣接する表示用空間と隔壁19で仕切り、表示用空間13には特定色で着色された液滴Qを封入している。
隣接する表示用空間には、本実施形態では、R(赤色)液滴、G(緑色液体)液滴、B(青色)液滴を風封入して、RGB表示でフルカラーの画像表示を行わせている。
【0034】
「実施例1」
前記第1実施形態の画像表示装置を、以下の製造プロセスで作成した。
下部層14の厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板15(旭硝子製)の表面に、東レ株式会社製のE−60(商品名)からなる光散乱体16を積層固着した。該光散乱体16は厚さ50μmで、ポリエステル樹脂中に空気層を含んだものとし、空気とポリエステル樹脂の屈折率差により白色を発現させている。
この光散乱体16の表面に、膜厚170nmで面状のITO膜からなる面状電極20をUV硬化性接着剤で接着した。該ITO膜からなる面状電極20の表面に、厚さ1μmのパリレン膜からなる絶縁膜21を成膜した。ついで、該絶縁膜21の表面にフロロテクノロジー製のFG−5010で厚さ20nmの撥水膜22を成膜した。
【0035】
上記下部層14の表面に、インクジェット法により、白色UV硬化樹脂を用いて高さ10μmの白色隔壁19を形成し、表示用空間13を形成した。
該表示用空間に透明なシリコーンオイルと、顔料を分散して着色した導電性水溶液からなるカラー液滴Q(1mM/L+マゼンダ3wt%)を滴下充填した。液滴径は2mmとした。
【0036】
上部層12の透明ガラス基板は、厚さ0.7μmの無アルカリガラス基板(旭硝子製)を用い、該基板の内部に透明な細線からなる電極回路を設け、該電極回路の先端と接続させて、直径5μmの白金からなる針状電極25の基部を基板内に埋設固定した。針状電極25は基板12からの突出寸法を2μmとした。
この上部層12の基板と、隔壁19の上端と接着固定し、針状電極25と面状電極20とをスイッチ27を介して電源28と接続した。
【0037】
前記電源28から面状電極20と針状電極25に周波数1KHzで60Vの交流電圧を印加して液滴を移動させた。
電圧無印加時における針状電極に液滴が保持されている状態と、電圧印加時に液滴が面状電極に沿って広がる状態とのコントラスト比を測定した。
該測定時に、可変周波数振動(10〜57Hz/0.075mm、58〜500Hz/1G掃引時間11分、2h/±(X,Y,Z))及び、衝撃(490m/s2 、11msec、1回/±(X,Y,Z))を負荷して、振動有りの場合と、振動無しの場合で、コントラスト比を比較評価した。
前記コントラスト比とは「液滴が広がった状態の表示側面積/針状電極周りに付着した時の表示側面積」である。
【0038】
その結果は、振動無しの場合の平均コントラスト比は20であった。一方、振動有りの場合の平均コントラスト比は19であった。
この測定結果より、外部からの振動や衝撃が負荷されても、電圧無印加時において、針状電極の周囲に液滴が確実に保持され、振動なしの場合と同等はコントラスト比が得られることが確認できた。
【0039】
図2及び図3は第2実施形態を示し、第1実施形態との相違点は、針状電極25を下部層14側から上方へ突出して表示用空間13内に突出させている点である。
該第2実施形態では、下部層14の基板15の表面にライン電極30を設け、該ライン電極30の中央位置に針状電極25の下端を接続して、針状電極25を上向きに突設している。基板15の上面側には、第1実施形態と同様に光散乱体16を積層し、該光散乱体16に針状電極25を貫通させている。該光散乱体16の上面に面状電極20を形成しているが、面状電極20と針状電極25との間に光散乱体16を介在させて絶縁している。
面状電極20の上面に第1実施形態と同様に絶縁膜21、撥水膜22を積層し、針状電極25は撥水膜22を貫通させて、表示用空間13内に下方から上向きに突出させている。他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
第2実施形態における着色液滴Qの作動は第1実施形態と同様であり、図3はスイッチ27がオフの電圧無印加時で、着色液滴Qは針状電極25の周りに付着して小さい液滴の状態で保持される。
一方、図4に示すスイッチ27のオン時には、液滴Qは表示用空間13の下面側で面状電極20に沿って広がり、着色表示となる。
【0041】
「実施例2」
第2実施形態の構成の装置を、実施例1と同様に作成した。
また、使用材料も実験例1と同様にし、カラー液滴はKCL水溶液1mM/L+マゼンダ3wt%を用い、オイルとしてシリコーンオイルを用いた。
評価テストも、電源28から面状電極20と針状電極25に周波数1KHzで60Vの交流電圧を印加して液滴を移動させ、電圧無印加時における針状電極に液滴が保持されている状態と、電圧印加時に液滴が面状電極に沿って広がる状態とのコントラスト比を測定した。測定時に、可変周波数振動(10〜57Hz/0.075mm、58〜500Hz/1G掃引時間11分、2h/±(X,Y,Z))及び、衝撃(490m/s2 、11msec、1回/±(X,Y,Z))を負荷して、振動有りの場合と、振動無しの場合で、コントラスト比を比較評価した。
その結果は、実施例1と同様に、振動無しの場合の平均コントラスト比は20であった。一方、振動有りの場合の平均コントラスト比は19で、外部からの振動や衝撃が負荷されても、電圧無印加時において、針状電極の周囲に液滴が確実に保持され、振動なしの場合と同等はコントラスト比が得られることが確認できた。
【0042】
図5および図6は第3実施形態を示す。
第3実施形態では、光散乱体16および、その上面の面状電極20、絶縁膜21、撥水膜22の中心の断面円形の液溜め部35を設け、該液溜め部35の中心に前記針状電極25を挿通させて表示用空間13内に突出させた。
第3実施形態では針状電極25は銅線から形成した。
他の構成は第2実施形態と同様とし、同一部材は同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
表示作動は実施形態1、2と同様で、図5はスイッチ27がオフで、電極20と25とには電圧が印加されない白色表示状態を示し、図6はスイッチ27がオンで電極20と25とに電圧が印加され着色表示状態を示す。
【0044】
液溜め部35を有する構造とすると、導電性の着色した液滴Qを液溜め部35内の針状電極25の周りに付着させて保持することができ、電圧無印加時の液滴Qの保持力をより高めることができ、外部振動や衝撃に対する耐久性を高めることができる。
かつ、液溜め部35内に液滴Qを確実に収容でき、電圧無印加状態での液滴径を液滴自体の径に依存させずに、液溜め径35の径に対応させることができるため、画像表示時と白色表示時とのコントラストの信頼性を高めることができる。
さらに、液溜め部35内で針状電極25に付着していた液滴は、電圧印加時に針状電極25上を移動して表示表空間13へと流れていき、液溜め部35からの針状電極25に沿った液滴Qの放出と、それに伴う液溜め部35の内壁に沿ったオイルQの引き込みを迅速に生じさせ、液滴QとオイルOのスムーズな循環を実現できる。その結果、液溜め部35からの液滴Qの放出にかかる抵抗力が小さくなり、低電圧駆動が可能となる。
【0045】
「実施例3」
第3実施形態の構成の装置を、実施例1と略同様に作成した。なお、針状電極は導電から形成した。
また、使用材料も実験例1と同様にし、カラー液滴はKCL水溶液1mM/L+マゼンダ3wt%を用い、オイルトしてシリコーンオイルを用いた。
評価テストも、電源28から面状電極20と針状電極25に周波数1KHzで60Vの交流電圧を印加して液滴を移動させ、電圧無印加時における針状電極に液滴が保持されている状態と、電圧印加時に液滴が面状電極に沿って広がる状態とのコントラスト比を測定した。測定時に、可変周波数振動(10〜57Hz/0.075mm、58〜500Hz/1G掃引時間11分、2h/±(X,Y,Z))及び、衝撃(490m/s2 、11msec、1回/±(X,Y,Z))を負荷して、振動有りの場合と、振動無しの場合で、コントラスト比を比較評価した。
その結果は、実施例1、2よりも振動の有無によるコントラスト比の変化はなく、振動無しの場合の平均コントラスト比および振動有りの場合の平均コントラスト比はいずれも20であった。
【0046】
図7および図8は第4実施形態を示す。
第4実施形態では、面状電極20を上部層12の透明ガラス基板の下面に形成し、該面状電極20の表面(下面)に絶縁膜21、撥水膜22を形成している。
上部層12と表示用空間13を挟んで配置する下部層14は光散乱体16と基板15とから構成し、光散乱体16の中央に液溜め部35を設けている。
前記第3実施形態と同様に、基板15の上面にライン電極30を形成し、該ライン電極30に下端を接続した針状電極25を液溜め部35の中央を貫通させて表示用空間13内に突出させている。
他の部材は前記実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
第4実施形態では、面状電極20を上部層12の基板の下面に設けているため、電圧印加時には、着色した液滴Qが透明は上部層12の基板に沿って広がり、より鮮明な着色表示することができる。
即ち、実施形態1〜3では着色表示時に液滴が下部層14の上面に沿って広がり、着色液滴Qの表示側には透明オイルOが存在し、オイルOを通して着色表示されることとなるが、第4実施形態では、オイルOを通さずに着色液滴Qを直接視認することができる。
【0048】
「実施例4」
第4実施形態の構成の装置を実施例1と略同様に作成した。なお、針状電極は導電から形成した。
また、使用材料も実験例1と同様にし、カラー液滴はKCL水溶液1mM/L+マゼンダ3wt%を用い、オイルトしてシリコーンオイルを用いた。
評価テストも、電源28から面状電極20と針状電極25に周波数1KHzで60Vの交流電圧を印加して液滴を移動させ、電圧無印加時における針状電極に液滴が保持されている状態と、電圧印加時に液滴が面状電極に沿って広がる状態とのコントラスト比を測定した。測定時に、可変周波数振動(10〜57Hz/0.075mm、58〜500Hz/1G掃引時間11分、2h/±(X,Y,Z))及び、衝撃(490m/s2 、11msec、1回/±(X,Y,Z))を負荷して、振動有りの場合と、振動無しの場合で、コントラスト比を比較評価した。
その結果は、実施例3と同様に、振動の有無によるコントラスト比の変化はなく、振動無しの場合の平均コントラスト比および振動有りの場合の平均コントラスト比はいずれも20であった。
【0049】
前記実施形態1〜4はいずれも導電性の液滴Qとして、着色した電解水溶液を用いているが、該電解水溶液に変えて、水を含まないイオン性液体を用い、平均粒子径を5μm以下とした顔料を分散させたイオン性着色液滴を用いてもよい。
具体的には、液滴Qは、電荷が1価のカチオンとアニオンとを1種類ずつ組み合わせている1−1塩からなる常温溶融塩で、かつ、水を殆ど含まないイオン性液体としている。
前記カチオンとアニオンとは、液滴Qが下記の融点、粘度、イオン伝導度を備える組み合わせとなるように選択している。
融点が−4〜−90℃の常温で液体であり、不揮発性であるため蒸気圧がゼロで、広い液体温度領域を備えて優れた熱安定性を有するものであること。
常温(25℃)におけるイオン伝導度(s/cm)が0.1×10−3以上であること。
常温(25℃)における粘度が300cp以下であること。
前記した物性を有する導電性液体としては、前記した1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、あるいはジメチル−3−プロピルイミダゾリウムからなる化学種を含むものが用いられる。
なお、液滴Qとしては前記イオン性液滴が好ましいが、他の液滴を用いても良く、限定されない。
さらに、無色透明はオイルに変えて、空気を用いてもよい。
また、前記常温溶融塩に配合する着色材料は、体積平均粒子径を5μm以下としていることが好ましい。
【0050】
さらに、下部層の基板の、さらに下方にバックライトを配置して、透過型の表示装置としてもよい。其の際、光散乱体層を無くしてもよい。また、部分的に光散乱体層を配置すると共にバックライトも部分的に配置し、反射型と透過型とを併用した半透過型としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、液体への電圧の印加の有無に応じて、液体の表面エネルギーを変化させ、該液体の移動あるいは液体の表面側の表面積を増減して画像表示を行う、電気泳動方式を含む電界誘導型のシート状の画像表示装置のいずれにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態の画像表示装置を示し、スイッチオフで電圧無印加時の白色表示時の断面図である。
【図2】第1実施形態のスイッチオンで電圧印加時の着色表示時の断面図である。
【図3】第2実施形態の画像表示装置を示し、スイッチオフで電圧無印加時の白色表示時の断面図である。
【図4】第2実施形態のスイッチオンで電圧印加時の着色表示時の断面図である。
【図5】第3実施形態の画像表示装置を示し、スイッチオフで電圧無印加時の白色表示時の断面図である。
【図6】第3実施形態のスイッチオンで電圧印加時の着色表示時の断面図である。
【図7】第4実施形態の画像表示装置を示し、スイッチオフで電圧無印加時の白色表示時の断面図である。
【図8】第4実施形態のスイッチオンで電圧印加時の着色表示時の断面図である。
【図9】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【図10】他の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0053】
11 画像表示装置
12 上部層
13 表示用空間
14 下部層
15 基板
16 光散乱体
19 隔壁
20 面状電極
21 絶縁膜
22、26 撥水膜
25 針状電極
27 スイッチ
28 電源
35 液溜め部
Q 着色液滴
O オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示側となる上部層と、該上部層と表示用空間をあけて配置する下部層とを備え、
前記表示用空間に着色した導電性の液滴と、該液滴と交じり合わないオイルあるいは空気が充填され、
前記表示用空間の下面側の前記下部層の上面あるいは表示用空間の上面側の前記上部層の下面に面状電極が設けられる一方、
前記表示用空間には、前記上部層あるいは下部層から針状電極が上下方向に突出され、
前記面状電極は親油性とされる一方、前記針状電極は親水性とされ、
前記面状電極と針状電極との回路が開かれて電圧無印加時には前記液滴が垂直方向の針状電極の周囲に球状に付着した状態で保持される一方、回路閉時の電圧印加時に前記液滴が上記面状電極を設けた表示用空間の下面側あるいは上面側で水平方向に広がった状態となって着色表示する構成としていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記表示用空間の上下垂直方向の寸法L1に対して、該表示用空間に垂直方向に突出する前記針状電極の突出寸法L3は、1/4以上としている請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記針状電極は、水平方向に延在する前記表示用空間の長さ方向の中央部に設けている請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示用空間の長さ方向の中央部に連通する液溜め部を前記下部層に設け、該液溜め部の中心を貫通させて前記表示用空間に前記針状電極は突出している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記上部層は前記表示用空間に広がった着色液体が透視できる略透明層すると共に、前記面状電極は透明電極とし、かつ、前記着色した液滴と交じり合わない前記オイルあるいは空気は無色透明とすると共に、前記下部層には光散乱層を設け、
前記表示用空間に液滴が水平方向に広がる電圧印加時は着色表示とする一方、前記針状電極に液滴が付着する電圧無印加時は光散乱層による光散乱で白色表示としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記上部層は前記表示用空間に広がった着色液体が透視できる略透明層すると共に、前記面状電極は透明電極とし、かつ、前記着色した液滴と交じり合わない前記オイルに光散乱材を配合しており、
前記表示用空間に液滴が水平方向に広がる電圧印加時は着色表示とする一方、前記針状電極に液滴が付着する電圧無印加時はオイル中の光散乱材による光散乱で白色表示としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記上部層および下部層は10〜300μmのシート状とすると共に、前記表示用空間の垂直方向の寸法L1は1〜500μmとし、全体として薄いシート形状として請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−276801(P2006−276801A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100149(P2005−100149)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】