説明

画像表示装置

【課題】 素子数の増加が少なく、素子寿命の低下や輝度の低下が少ない、広色域を表現可能な表面伝導型電子放出素子を用いた表示装置を提供する。
【解決手段】 複数の表面伝導型電子放出素子を複数の列配線と複数の行配線でマトリックス配線したマルチ電子ビーム源と、電子ビームの照射によって励起発光する複数の蛍光体を有する画像表示装置であって、一画素がn色(n≧4)のサブ画素で構成されており、一画素につきn−1個の前記表面伝導型電子放出素子が前記サブ画素の中間に配置され、前記表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の極性を反転させることで、n色のサブ画素のうち異なる組み合わせのn−1のサブ画素を発光させる 構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像を表示する表示装置として、CRTや、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等が広く用いられている。これらの表示装置は、通常赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色を組み合わせて1つの画素とし、その加法混色により様々な色を再現している。しかし、近年では3原色以上の原色を用いて色再現範囲のより広い表示装置を実現する試みがなされている。例えば特許文献1には2種類以上のスペクトルを持つ光源とカラーフィルターを組み合わせ、カラーフィルター方式のサブピクセルを増大させずに原色数を増大させた液晶表示装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003-107472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは新たなカラー画像表示装置として表面伝導型電子放出素子を用いた表示装置の研究開発を行っているが、表面伝導型電子放出素子を用いて四原色以上の表示装置を実現しようとする場合、一つの原色の蛍光体に対し、一つの電子放出素子を割り当てることにすると三原色の表示装置に比べ一画素あたりの電子放出素子数が多くなりコストの増加を招く。また高精細な表示装置を作成しようとした場合、電子放出素子を微細に作成する必要がある。
【0004】
素子数を蛍光体よりも少なくする方法としては、表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の極性を反転することにより異なる位置に電子を照射することができる性質を利用して、2つの蛍光体に対して一つの蛍光体を割り当てるものがある。この場合、表示装置の隣あう2行に対して一行分の電子放出素子を割り当てる方法、一水平走査期間を2分割し、一行中の半分の蛍光体を前半の期間、他の半分の蛍光体を後半の期間に点灯させる方法等がある。しかし、前者は一つの素子が2倍の時間点灯するため素子の寿命が半減することとなり、後者は一つの蛍光体が一水平走査期間の二分の一しか点灯しないため輝度が半減することになる。
【0005】
本発明は素子数の増加が少なく、素子寿命の低下や輝度の低下が少ない、広色域を表現可能な表面伝導型電子放出素子を用いた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の表面伝導型電子放出素子を複数の列配線と複数の行配線でマトリックス配線したマルチ電子ビーム源と、電子ビームの照射によって励起発光する複数の蛍光体を有する画像表示装置であって、一画素がn色(n≧4)のサブ画素で構成されており、一画素につきn-1個の前記表面伝導型電子放出素子が前記サブ画素の中間に配置され、前記表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の極性を反転させることで、n色のサブ画素のうち異なる組み合わせのn-1のサブ画素を発光させることを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明の効果としては、電子放出素子数の増加を抑制して四原色以上の表示装置が構成できる。また、電子放出素子数の寿命の低下や輝度の低下も少ない。
【0008】
理由としては、nの原色に対して、n-1の素子を割り当てるため素子数の増加が抑制される。またnの原色に対してn/2の素子の割り当てにしてしまうと寿命の半減や輝度の半減が起こるが、nに対してn-1なので寿命の低下や輝度の低下も少ない。
【0009】
請求項2に記載の発明の効果としては、多原色を利用して色再現範囲の広い表示装置が実現できる。
【0010】
理由としては、1水平走査期間に極性の反転を行うことで1画素を構成する全ての原色を発光させることができるので、色再現範囲を広くすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明の効果としては、入力に応じて色再現範囲を変えられる表示装置が実現できる。
【0012】
理由としては、正極性で駆動する場合と逆極性で駆動する場合で異なる組み合わせの原色が発光するため、入力の種類に応じて極性を切り替えれば、入力に応じて色再現範囲を変えられる表示装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0014】
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。
【0015】
まずこの実施形態で用いた表示パネルの全体の構成を図1に示す。リアプレート101の上に、走査信号が印加される配線である走査配線103と、変調信号が印加される配線である変調配線104と、表面伝導型電子放出素子である電子放出素子105とが形成されている。走査配線103と変調配線104はそれぞれ複数あり、マトリックス状に配置された素子を配線するマトリックス配線を構成している。リアプレート101に対向する位置にあるフェースプレート102には発光体である蛍光体106が形成されている。これら発光体の間にはブラックストライプ107が配されている。なお、ブラックストライプに代えてブラックマトリックスを配してもよい。このようなブラックストライプやブラックマトリックスで各発光体が区切られていない構成を採用することもできる。また、108はパネルを大気圧に対して支持するためのスペーサである。
【0016】
電子放出素子105は、しきい値特性を有し、走査配線104と変調配線103との間にしきい値Vthを超える電圧が印加されると電子放出が起こり、Vth以下の電圧印加では電子放出は起こらない。ただし表面伝導型素子は、印加電圧の極性依存性を有さないため、走査配線104と変調配線103に正、負どちらの極性の電圧が印加されても、しきい値Vthを超える電圧が存在すれば、電子放出を行う。
【0017】
図2は、図1におけるy軸の方向に垂直な断面を表したもので本発明の表示装置における電子放出素子と蛍光体の位置関係を示す。103a〜103cは変調配線であり、走査配線は図示されていない。本発明の表示装置における一画素はR,G1,G2,Bの4つの蛍光体を一組として構成されている。これらの蛍光体の色度を図のxy色度図上に示す。図2では106aがG1の蛍光体,106bがRの蛍光体,106cがBの蛍光体,106dがG2の蛍光体となっている。4つの蛍光体に相対する位置には電子放出素子105が3つ配置されておりそれぞれ電子放出部が隣あう二つの蛍光体の中間に位置するように配置されている。ここで、変調配線103に正の電圧を印加し、走査配線104に負の電圧を印加し電子放出素子にかかる電圧がVth以上になると電子放出素子から電子が放出さる。放出された電子は、リアプレート101とフェースプレート102の間に印加されている加速電圧により加速され図の実線の軌道を描いて蛍光体に入射する。このように電子放出素子を駆動することを正極性で駆動するということにする。逆に変調配線103に負の電圧を印加して、走査配線104に正の電圧を印加して電子放出素子にかかる電圧がVth以上になると電子放出素子から電子が放出され、図の点線の軌道を描いて蛍光体に入射する。このように電子放出素子を駆動することを逆極性で駆動するということにする。図2の場合、電子放出素子を正極性で駆動するとG1,R,Bの蛍光体が発光し,逆極性で駆動した場合にはR,B,G2の蛍光体が発光する。
【0018】
次に、本実施形態の表示装置の動作を、駆動回路のブロック図である図2を用いて説明する。TV受像回路等より入力されるNTSC映像信号s1は、同期分離回路(デコーダ)6で同期信号と輝度信号とに分けられる。同期信号はタイミング制御回路5に送られ、輝度信号は信号処理部1へ送られる。信号処理部1では、R,G,B色の復調やA/D変換、及びR,G,Bの三原色のデータからR,G1,G2,Bの四原色のデータへの変換を行いディジタルの輝度信号としてシリアル/パラレル(S/P)変換回路2へ送る。この際に、信号処理回路1は1行分のデータを2つに分割し,一水平走査期間(1H)を2分割した期間Paと期間Pbとに分けて送るがこの詳しい動作については後述する。S/P変換回路2では、信号処理部1から送られてきた輝度信号の1行分のデータをシリアル−パラレル変換して パルス幅変調回路3に出力する。このパルス幅変調回路3は、入力された信号をパルス幅変調信号s4として表示パネル4の変調配線の端子(Dy1,Dy2,…,DyN)へ送り出す。走査回路7はタイミング制御回路3が出力する信号(Tscan)を基に表示パネル4の行走査をする走査信号s6を出力する。また表示パネル4上の高圧端子は外部の高圧電源Vaに接続され、放出電子を加速するようになっている。
【0019】
次に、本実施形態の動作を図4のタイミングチャートを用いて説明する。尚、図中の記号は図3と同じものである。NTSC信号s1の映像信号は、信号処理部1及びパルス幅変調回路3などにより信号処理されてパルス幅変調信号s4となる。図4におけるパルス幅変調信号s4は、ある一本の変調配線に注目し、そこを流れる信号を示したものである。このパルス幅変調信号s4の幅Lが長いほど、電子放出素子から電子が放出される時間が長くなるため、それにより発光される画素の輝度が明るく感じられる。ここでパルス幅変調信号s4は図4に示すように期間Paは正極性,期間Pbは負極性となるように切り替えられる。一方、走査信号s6は、1H毎に順次走査行を切り替える信号である。図4にはn行目とその次の行であるn+1行目の走査信号s6を図示している。ここで走査信号s6は図4に示すように期間Paは負極性,期間Pbは正極性となるように切り替えられる。
【0020】
このように電子放出素子を駆動することにより、期間Paでは正極性で電子放出素子が駆動され,期間Pbでは逆極性で電子放出素子が駆動されることになる。従って期間Paにおいては図2に示すG1,R,Bの蛍光体が発光し、期間PbにおいてはR,B,G2の蛍光体が発光することになる。
【0021】
このようにすると、1H中にR,G1,G2,Bの4つの蛍光体が発光するため、その混色により図5の色度図において四角形RG1G2B内の色度を持つ発光が得られる。
【0022】
この時R,Bの蛍光体については最大で一水平期間の発光が可能であるのに対して,G1の蛍光体は最大で期間Paの長さ分の発光,G2の蛍光体は期間Pbの長さ分の発光となり、発光時間が短くなる。そこで本実施形態では、R,G1,G2,Bが最大限発光した時に、白色が得られるようにする。G1,G2の蛍光体が最大限発光した時にG0の色度が得られるものとするとG1、G2をそれぞれ期間Paと期間Pbの長さの比と同じ比で発光させた場合、R,G0,Bの三原色を持つ表示装置と同じ色再現域を持つことになる。従って本発明の表示装置は、従来の三原色の表示装置と同等の色再現能力を持ちさらに広色域についても表現可能な表示装置となる。
【0023】
ここで、信号処理回路1の動作を詳しく説明する。
【0024】
図2における電子放出素子105aに着目した場合,電子放出素子105aから放出された電子は期間PaにおいてはG1の蛍光体に、期間PbにおいてはRの蛍光体に照射される。従って変調配線103aには期間PaにおいてはG1のデータに相当する信号を出力し、期間PbにおいてはRのデータに相当する信号を出力する必要がある。同様にして変調配線103bは期間PaにおいてRのデータに相当する信号を期間PbにおいてはBのデータに相当する信号を出力する必要がある。また変調配線103cは期間PaにおいてBのデータに相当する信号を期間PbにおいてG2のデータに相当する信号を出力する必要がある。従って信号処理回路1ではR,G,Bの信号をまずR,G1,G2,Bの4つの信号に変換する。変換されたR,G1,G2,Bの4つの信号のデータをそれぞれDr,Dg1,Dg2,Dbとする。次にRとBのデータを期間Paと期間Pbに分配する。期間Paに出力するRのデータをDr_a,期間Pbに出力するRのデータをDr_bとするとDr=Dr_a+Dr_bを満たすように分配される。同様に期間Paに出力するBのデータをDb_a,期間Pbに出力するBのデータをDb_bとするとDb=Db_a+Db_bを満たすように分配される。そして、変調配線103a〜103cに対応するデータとして期間PaにはDg1,Dr_a,Db_aを出力し期間PbにDr_b,Db_b,Dg2を出力する。
【0025】
このようにすること一水平走査期間でみるとデータDr,Dg1,Dg2,Dbに相当する蛍光体R,G1,G2,Bの発光が得られることになる。
【0026】
なお本実施形態では、一画素を構成するn原色についてnが4の場合を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、nが5以上の場合にも同様にしてn原色に対してn−1素子の電子放出素子を割り当てる表示装置を構成可能である。
【0027】
(第二の実施形態)
次に本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態の回路構成は、第一の実施形態と同じであるので説明を省略する。第二の実施形態が第一の実施形態と異なるのは、表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の極性を一水平期間内ではなく、映像データの種類に応じて切り替えるようにした点ある。
【0028】
例えば、図6に示すように蛍光体G1をsRGBの緑の色度点を持つものとし、蛍光体G2をより色再現範囲の広いAdobe RGBの緑の色度点を持つものとする。そして、従来のsRGBに対応する映像データを表示する場合には、正極性で電子放出素子を駆動し、Adobe RGBに対応する映像データを表示する場合には逆極性で電子放出素子を駆動する。このようにすれば、映像データの色再現範囲に応じて最適な色再現範囲を持つ表示装置が実現できる。
【0029】
なお、Adobeは登録商標である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の表示パネルの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における蛍光体と電子放出素子の位置関係を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態における電気回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の第一の実施形態における蛍光体の色度を示すxy色度図である。
【図6】本発明の第二の実施形態における蛍光体の色度を示すxy色度図である。
【符号の説明】
【0031】
1 信号処理回路
2 シリアル/パラレル変換回路
3 パルス幅変調回路
4 表示パネル
5 タイミング制御回路
6 デコーダ
7 走査回路
101 リアプレート
102 フェースプレート
103 信号配線
104 変調配線
105 表面伝導型電子放出素子
106 蛍光体
107 ブラックストライプ
108 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表面伝導型電子放出素子を複数の列配線と複数の行配線でマトリックス配線したマルチ電子ビーム源と、電子ビームの照射によって励起発光する複数の蛍光体を有する画像表示装置であって、一画素がn色(n≧4)のサブ画素で構成されており、一画素につきn-1個の前記表面伝導型電子放出素子が前記サブ画素の中間に配置され、前記表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の極性を反転させることで、n色のサブ画素のうち異なる組み合わせのn-1のサブ画素を発光させることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の反転を1水平走査期間中に行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表面伝導型電子放出素子に印加する電圧の反転を入力する映像信号の種類に応じて行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−286419(P2007−286419A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114605(P2006−114605)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】