説明

画像表示装置

【課題】画像表示装置が表示する画像の色調整に関する技術を提供する。
【解決手段】入力された画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、画像信号である第1HLS信号に含まれる前記色相信号と、前記明度信号と、前記彩度信号とをそれぞれ個別に変更・補正処理し、第2HLS信号として出力する色調整回路を備える画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置が表示する画像の調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動画を含む各種画像を表示する画像表示装置では、画像信号を入力し、これをリアルタイムで処理し、表示している。こめため、従来、プロジェクターや、CRTや、LCDなどの画像表示装置では、表示のし易さや処理の簡略化を図るために、画像信号として、R(赤)・G(緑)・B(青)信号またはY(輝度)・U(第1色差)・V(第2色差)信号を用いることが一般的である。
【0003】
こうした画像表示装置に表示される画像の色相や明るさ、彩度などは、画像信号のソース(例えば、DVDプレーヤーなど)で調整することができるが、最近では、プロジェクターなどの画像表示装置も、調整の仕組みを備えている。画像の色味や明るさ、鮮やかさなどを、ユーザーが調整しようとすると、これらの画像表示装置が標準で扱っているRGB信号やYUV信号などを直接調整することになるが、これらの信号では、一つの信号を強めたり弱めたりすると、その変化は他の色にまで及び、所望の画像を得ることが難しかった。
【0004】
そこで、従来から、例えばカラースキャナなどでは、標準画像のRGB信号を一旦HLS信号に変換して、標準色からのズレを計算し、これを用いて、読み込んだ画像の色調整を行なうということが行なわれている(例えば下記特許文献1参照)。HLS信号とは、物体色の標準として、H(色相)・L(明度)・S(彩度)で表されたマンセル表色系に即した信号である。HLS信号により、カラーコレクションを行なう技術としては、特許文献2も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−18724
【特許文献2】特開平11−69186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの技術は、いずれも画像処理系が持っているズレやバランスのズレを補正することを目的としており、プロジェクターのような動画を扱うこともある画像表示装置において、リアルタイムで処理されている画像信号を、所望の状態に調整して表示することはできなかった。ユーザーからすれば、表示されている画像の色味や明るさ、鮮やかさなどを、好みに応じて調整したいのであって、RGB信号やYUV信号を調整したい訳ではない。従来の画像表示装置では、こうしたユーザーの要望に応えることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0008】
[適用例1]
入力された画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、画像信号である第1HLS信号に含まれる色相信号と、明度信号と、彩度信号とをそれぞれ個別に変更・補正処理し、第2HLS信号として出力する色調整回路を備える画像表示装置。
【0009】
この画像表示装置によれば、画像信号であるHLS信号を、ハードウェアとしての色調整回路によって変更・補正処理するので、ソフトウェアをCPUによって実行し同処理を行うのに比べて、処理速度が速く、且つ、安定して行うことができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の画像表示装置であって、更に、前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を指示する色調整指示部を備える画像表示装置。
【0011】
この画像表示装置によれば、色調整指示部を備えるので、色調整回路に入力されたHLS信号に対して、任意の変更・補正処理が可能である。
【0012】
[適用例3]
適用例2記載の画像表示装置であって、前記色調整指示部は、前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を示した色調整用画像をユーザーが視認可能な表示部へ表示する表示制御部を備える画像表示装置。
【0013】
この画像表示装置によれば、画像表示装置が行う変更・補正処理の処理内容をユーザーが視認し、理解することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例3記載の画像表示装置であって、前記色調整用画像は、色相変更用画像と、明度補正用画像と、彩度補正用画像との3つの画像によって前記変更・補正処理の処理内容を表現した画像である画像表示装置。
【0015】
この画像表示装置によれば、ユーザーは画像表示装置が行う変更・補正処理の処理内容を、色相、明度、彩度について、それぞれ個別に視認し、理解することができる。
【0016】
[適用例5]
適用例4記載の画像表示装置であって、前記色相変更用画像、前記明度補正用画像、前記彩度補正用画像のうち少なくとも一つは、青と、マゼンダと、赤と、黄と、緑と、シアンとを色相を表す基準に用いて、前記変更・補正処理の処理内容を表現した画像である画像表示装置。
【0017】
この画像表示装置によれば、ユーザーは、画像表示装置が行う変更・補正処理の処理内容を、色相については、青と、マゼンダと、赤と、黄と、緑と、シアンを基準にして視認することができるので、変更・補正処理内容を理解するのが容易となる。
【0018】
[適用例6]
適用例2ないし適用例5のいずれか記載の画像表示装置であって、前記色調整指示部はさらに、ユーザーによる前記変更・補正処理の処理内容の変更指示により、前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を変更する画像表示装置。
【0019】
この画像表示装置によれば、画像表示装置が行う変更・補正処理の処理内容をユーザーが変更することが可能となり、つまりは、ユーザーは、画像表示装置が行う変更・補正処理の処理内容を、色相については、青と、マゼンダと、赤と、黄と、緑と、シアンとを基準にして表現された色調整用画像を視認しつつ、画像表示装置が表示する画像の色調整を行うことが可能となる。
【0020】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6記載の画像表示装置であって、更に、前記入力された画像信号に含まれる、輝度信号、第1色差信号、第2色差信号の3つの信号からなる第1YUV信号を、前記色相信号、前記明度信号、前記彩度信号の3つの信号からなる前記第1HLS信号に変換する色空間変換回路を備える画像表示装置。
【0021】
この画像表示装置によれば、YUV信号からなる入力画像信号をHLS信号に変換する色空間変換回路を備えているので、入力される画像信号がYUV信号でも、色調整回路によって、画像信号に対して変更・補正処理をすることが可能である。
【0022】
[適用例8]
適用例7記載の画像表示装置であって、前記色空間変換回路は、3次元直交座標系の第1色空間を構成する前記輝度、前記第1色差、前記第2色差の3つの要素に対応する第1YUV信号を、3次元極座標系の第2色空間を構成する前記明度、前記彩度、前記色相の3つの要素に対応する第1HLS信号に変換する回路であり、彩度算出部と、色相算出部とを備え、前記彩度算出部は、前記第1色差の値同士の乗算値である第1乗算値を出力する第1乗算器と、前記第2色差の値同士の乗算値である第2乗算値を出力する第2乗算器と、前記第1乗算値と前記第2乗算値との加算値を出力する加算器と、前記加算値の平方根の値を前記彩度に対応した信号として出力する開平器とを備え、前記色相算出部は、前記彩度に対応する信号と前記第1及び第2色差に対応した信号とに基づいて前記色相に対応した信号を出力する回路である
画像表示装置。
【0023】
この画像表示装置によれば、色空間変換回路は、輝度、第1色差、第2色差の3つの要素に対応する第1の信号、いわゆるYUV信号を、明度、彩度、色相の3つの要素に対応した第2の信号、いわゆるHLS信号に、ハードウェアである電気回路を用いて変換処理を行うので、ソフトウェアであるプログラムをCPUで実行することによって同変換処理を行うより、処理速度が速く、且つ、安定して行うことができる。よって、色調整回路に向けてHLS信号を安定して出力できる。この結果、例えば動画表示などを行う場合に、動画表示中にその動画の画像信号をYUV信号からHLS信号にリアルタイムで変換するなど、入力された画像信号の信号変換を高速に行うことが可能となり、且つ、ユーザーが色調整として指示するHLS信号の変更・補正処理の処理内容の変更指示に対しても、色調整回路によって、高速かつ安定して対応することが可能である。
【0024】
[適用例9]
適用例7または適用例8のいずれか記載の画像表示装置はさらに、前記第2HLS信号を、輝度信号、第1色差信号、第2色差信号の3つの信号からなる第2YUV信号に変換して出力する逆変換回路を備える画像表示装置。
【0025】
この画像表示装置によれば、色調整回路で変更・補正されて出力された第2HLS信号を第2YUV信号に変換する逆変換回路を備えているので、この画像表示装置は、画像を表示するのに適した画像信号であるYUV信号に基づいて画像を表示することができる。
【0026】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、色調整方法および装置、色調整システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施例における液晶プロジェクター100の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例における色空間変換回路110の構成を示すブロック図である。
【図3】YUV信号とHLS信号との関係を示した説明図である。
【図4】YUV空間とHLS空間とを、輝度、明度の要素に対応するYおよびL軸上から見た説明図である。
【図5】浮動小数点変換器24における浮動種数点演算の一例を示した説明図である。
【図6】セレクター加算器38が色相値Hを出力する算出方法を説明した説明図である。
【図7】セレクター加算器38が行う色相値Hの算出方法を、概念的に説明する説明図である。
【図8】色調整回路120の構成を示すブロック図である。
【図9】色相調整用画像を示した説明図である。
【図10】彩度調整用画像を示した説明図である。
【図11】彩度調整回路50が行う処理の概念を示した説明図である。
【図12】第1実施例における逆変換回路140の構成を示すブロック図である。
【図13】Ph出力器71が色相角Phと、象限値DIV_Hとを算出する算出方法を示した説明図である。
【図14】第1色差出力器75が行う演算の演算式を示した説明図である。
【図15】第2色差出力器76が行う演算の演算式を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
(A1)液晶プロジェクターの概略構成
(A2)色空間変換回路
(A3)色調整
(A4)逆変換回路
B.変形例:
【0029】
A.第1実施例:
(A1)液晶プロジェクターの概略構成:
図1は、本発明の一実施例としての色空間変換回路が適用される液晶プロジェクター100の全体の構成を示すブロック図である。この液晶プロジェクター100は、色空間変換回路110、色調整回路120、CPU130、逆変換回路140、液晶ライトバルブ駆動回路150、液晶ライトバルブ160、光源部170、投写レンズ180、操作制御部190、操作ボタン192を備え、色空間変換回路110に入力されてくる画像信号に基づいて動画をスクリーン200に表示する。また色調整回路120と、CPU130と、操作制御部190とは内部バス102によって接続されている。なお、画像信号は、図示しないビデオカメラやスキャナーやパーソナルコンピューター等の入力装置によってリアルタイムに色空間変換回路110に入力されてくる場合と、図示しないコンピューターで読取可能な記憶媒体から色空間変換回路110に読み出されてくる場合のいずれでもよい。ここで、コンピューターで読取可能な記憶媒体には、ROM、RAM、CD−ROM、DVD、FD、MD、メモリーカード等のいずれでもよい。
【0030】
色空間変換回路110は、YUV信号として入力されたデジタルの画像信号に対してYUV−HLS変換を行ない、HLS信号として画像信号を出力する電気回路である。色空間変換回路110については後で詳しく説明する。
【0031】
色調整回路120は、入力されたHLS信号に対応する色相、明度、彩度の各信号(以下、これら各信号を、色相信号、明度信号、彩度信号とも呼ぶ)を、CPU130からのコマンドによって、色相については変更し、明度及び彩度については、その各信号の出力ゲインの値を補正(以下、ゲイン補正とも呼ぶ)する回路である。なお、以下、各信号を変更および補正する処理を変更・補正処理とも呼ぶ。色調整回路120については、後で詳しく説明する。
【0032】
CPU130は、色調整指示部132を備え、図示しないROMに予め記憶した特定のプログラムをCPU130が実行することにより実現される。色調整指示部132は、上述した色調整回路120が行う変更・補正処理の処理内容を制御する。色調整指示部132については、後で詳しく説明する。
【0033】
逆変換回路140は入力されるHLS信号をYUV信号に変換(以下、HLS−YUV変換とも呼ぶ)して出力する回路である。逆変換回路140に入力されるHLS信号は、前述したユーザーによる色調整によって、変更及びゲイン補正がされた信号である。逆変換回路140については、後で詳しく説明する。
【0034】
液晶ライトバルブ駆動回路150は、液晶ライトバルブ160を駆動する回路である。液晶ライトバルブ160は、液晶ライトバルブ駆動回路150で生成された信号を映像化するパネルであり、光源部170から射出される光を変調して投写に必要な光をスクリーン200側へ向けて射出する。
【0035】
光源部170は、画像を投写するための光源であり、主に、光を発するランプ171と、このランプ171から発せられる光を平行光とするレンズ172とを有している。平行光は、液晶ライトバルブ160で変調された後、投写レンズ180に入射する。投写レンズ180は、光源部170から投写される光をスクリーンに拡大して表示させる。また、スクリーン200は、液晶プロジェクター100から投写される投写像を表示する投写面を有している。
【0036】
操作制御部190は、液晶プロジェクター100が投写した画像に対する色調整の指示を操作ボタン192を通じてユーザーから受信し、内部バス102を介してCPU130に伝える。操作ボタン192は十字キーボタンと、決定ボタンとを備え、後述する色調整を行う際に、ユーザーはこれらのボタンを用いて画像の色調整を行う。なお、本実施例では液晶プロジェクター100はユーザーからの指示を、操作制御部190及び操作ボタン192を介して受信しているが、ユーザーからの指示を、液晶プロジェクター100に備えた操作パネルや、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウスやキーボード等の外部操作機器を介して受信するものとしてもよい。
【0037】
(A2)色空間変換回路:
次に、色空間変換回路110の具体的構成および動作について説明する。図2は色空間変換回路110の構成を示すブロック図である。この色空間変換回路110は図示するように、明度算出部10、彩度算出部20、色相算出部30を備えている。色空間変換回路110は、入力された画像信号に含まれる輝度信号(Y)、第1色差信号(U)、第2色差信号(V)を、明度信号(L)、彩度信号(S)、色相信号(H)に変換して出力する。なお、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。よって、色空間変換回路110に入力されたYUV信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したHLS信号として変換され、同期して出力される。
【0038】
ここで、YUV信号とHLS信号との関係について説明する。図3は、YUV信号とHLS信号との関係を示した説明図である。YUV信号は、画像信号を、輝度と、第1色差と、第2色差との3つの要素から成る3次元直交座標空間(以下、YUV色空間とも呼ぶ)で表した信号である。HLS信号は、画像信号を、色相と、明度と、彩度との3つの要素から成る3次元極座標空間(以下、HLS色空間とも呼ぶ)で表した信号である。図3に示すように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において軸方向が同じであり一対一の対応をしている。よって、輝度信号と明度信号とを同一の信号として扱うことができる。結果として、YUV信号として入力された画像信号を、HLS信号に変換することは、実質、画像信号に含まれる第1色差信号と第2色差信号とを、色相信号と彩度信号とに変換することに相当する。図4は、図3に示した両座標空間を輝度、明度の要素に対応するYおよびL軸上から見た図である。図3,図4に示した、YUV空間とHLS空間との関係に基づいて、図2に示した色空間変換回路110はYUV−HLS変換を行っている。
【0039】
図2において、明度算出部10は、色空間変換回路110に入力された輝度信号(Y)に対応する値(以下、輝度値とも呼ぶ)を、そのまま明度信号(L)に対応した値(以下、明度値とも呼ぶ)に適用して、明度信号(Y)として出力する。これは図3で示したように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において一対一の対応をしていることに拠っている。換言すれば、入力された輝度信号(Y)を、そのまま明度信号(L)として出力する。なお本実施例において、輝度信号(Y)および明度信号(L)は、ともに10ビットの階調データである。
【0040】
彩度算出部20は、色空間変換回路110に入力された第1色差信号(U)、第2色差信号(V)に基づいて、彩度信号(S)を出力する。彩度算出部20は、第1乗算器21、第2乗算器22、加算器23、浮動小数点変換器24、ルックアップテーブル25、彩度指数算出器26、ビットシフト演算器27を備える。なお、以下、ルックアップテーブルをLUTとも呼び、例えば、ルックアップテーブル25はLUT25とも表記する。
【0041】
以下、彩度算出部20が第1色差値信号(U)と第2色差信号(V)とを、彩度信号(S)に変換するまでを信号の流れる順に沿って説明する。第1色差信号(U)および第2色差信号(V)は、それぞれ10ビットの階調データである。このため、両信号はそれぞれ、(0〜1023)の信号値をとることになるが、信号値が(512)の時、無色であることを示すものとして扱うので、以下、こうした場合には信号値を(−512〜511)と表記する。
【0042】
第1乗算器21は、入力された第1色差信号を(−512〜511)の階調データに変換後、信号値を、0(零)を中心とした対称性をもった階調値で表すため、(−512〜511)の階調データを(−511〜511)の階調データに丸め処理を行う。丸め処理後、第1乗算器21は第1色差信号の値(以下、第1色差値Uとも呼ぶ)をべき乗した第1乗算値U2を算出する。第2乗算器22は、第1乗算器21と同様の処理を、入力された第2色差信号に対して行い、第2色差信号の値をべき乗した第2乗算値V2を算出する。加算器23は、第1および第2乗算器21,22から出力された第1,第2乗算値U2,V2を互い加算した加算値、つまりU2+V2の値を算出する。
【0043】
加算器23が出力した加算値に対して、平方根の値を算出し、HLS信号のスケールに正規化した値が彩度値Sとなる。正規化は、加算値の平方根の値を開平結果値Rとすると、開平結果値Rに√2を乗ずることで行う。この時、彩度値Sと開平結果値Rとは式(1)で表される。
【0044】
浮動小数点変換器24は、加算値U2+V2、つまりR2の値に対応した信号が入力されると、R2の値に対して浮動小数点演算を行い、式(2)を満たす第1実数値Kおよび第1指数値Lの値を算出する。またこの時、第1指数値Lの値を偶数の値として算出する。浮動小数点変換器24における浮動種数点演算の一例を図5に示した。
【0045】
S=√2*R・・・・(1)
2=K/2L・・・・(2)
【0046】
次に、彩度値Sを、式(3)を満たす第2実数値Srと第2指数値Siとで表すと、式(1)〜(3)により、第2実数値Srおよび第2指数値Siは、式(4)および式(5)として表すことができる。なお、式(4),(5)のnは、正の整数である。このnは、後述する各演算器による演算の性質上、出力される信号の値が小さくなり、その後の演算の精度が低下するのを回避する。演算の精度を確保するため、適宜、nに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0047】
S=Sr/2Si・・・・(3)
Sr=2n*√2*√K・・・・(4)
Si=L/2+n・・・・(5)
【0048】
図2に示す、LUT25は浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Kの値に対して、式(4)を満たす第2実数値Srを読み出すLUTである。本実施例においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Kに対応した第2実数値Srの値が、LUT25に記憶されている。
【0049】
彩度指数算出器26は浮動小数点変換器24から出力された第1指数値Lの値に対して、式(5)に示す演算処理を行い第2指数値Siを算出する算出器である。先述したように、浮動小数点変換器24は、第1指数値Lを偶数の値で出力している。よって、彩度指数算出器26が式(5)に示す演算処理を行う際に、少数の概念を含んだ演算を行う必要がない。また、彩度指数算出器26は第2指数値Siを整数値で出力する。
【0050】
ビットシフト演算器27はLUT25および彩度指数算出器26から出力された第2実数値Srおよび第2指数値Siから、式(3)を満たす彩度値Sを算出する演算器である。第2指数値Siは、彩度指数算出器26から整数値として出力されている。よってビットシフト演算器27は、式(3)の演算処理を行う際に、第2実数値Srの値に対してSi桁分のビットシフトを行うことで、彩度値Sを出力する。なお、浮動小数点変換器24と、LUT25と、彩度指数算出器26と、ビットシフト演算器27とが、特許請求の範囲に記載の開平器に相当する。以上が、彩度算出部20が行う演算処理である。
【0051】
次に、色相算出部30について説明する。図2に示すように、色相算出部30は第1色差信号(U)、第2色差信号(V)、および、彩度算出部20で算出した第1実数値K、第2指数値Siに基づいて、色相信号(H)を出力する。色相算出部30は、LUT31、Ur乗算器33、Vr乗算器34、セレクター35、LUT36、セレクター減算器37、セレクター加算器38を備えている。
【0052】
ここで、第1色差値U、第2色差値V、開平結果値Rを用いて、式(6),(7)に示す余弦値Urおよび正弦値Vrを定義する。また彩度算出部20で算出した第2実数値Srを用いて、第2実数値Srの逆数を、式(8)に示すinvSrで定義する。また、式(4)および式(8)より、invSrを式(8a)で表すことができる。その結果、式(1)〜式(8)および式(8a)より、余弦値Urおよび正弦値Vrは、式(9)および式(10)で表すことができる。なお、式(8),(8a),(9),(10)のwおよびmは、正の整数である。先述したnと同様に、後述する各演算器による演算の性質上、演算の精度を確保するため、適宜、w,mに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0053】
Ur=U/R・・・・(6)
Vr=V/R・・・・(7)
invSr=w/Sr・・・・(8)
invSr=w/2n*√2*√K・・・・(8a)
Ur=|U|*√2*invSr*2(Si-m)・・・・(9)
Vr=|V|*√2*invSr*2(Si-m)・・・・(10)
【0054】
図2に示すLUT31は、浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Kに対応して、式(8a)を満たすinvSrを読み出すLUTである。また、先述したLUT25と同様に、本実施例においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Kに対応したinvSrの値がLUT31に記憶されている。
【0055】
Ur乗算器33は、第1色差値Uおよび、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Siおよび、LUT31から出力されたinvSrに対して式(9)に示す演算処理を行い、余弦値Urを算出する。また、Vr乗算器34は、第2色差値Vおよび、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Siおよび、LUT31から出力されたinvSrに対して式(10)に示す演算処理を行い、正弦値Vrを算出する。
【0056】
セレクター35は、Ur乗算器およびVr乗算器から出力された余弦値Urおよび正弦値Vrの大小を比較し、小さい方の値(以下、セレクター出力値Dとも表記する)を選択し出力する。また、セレクター35は、セレクター出力値Dとともに、余弦値Urと正弦値Vrとの比較の結果、どちらが小さかったのかを示すセレクター情報を出力する。
【0057】
LUT36は、セレクター35が出力したセレクター出力値Dに対応して、式(11)を満たすLUT算出値Eを読み出すLUTである。式(11)のwは上述したように正の整数である。
【0058】
E=arcsin(D/w)・・・・式(11)
尚、Eの単位は「度」である。
【0059】
セレクター減算器37はセレクター35から出力されたセレクター情報に基づいて、式(12)又は式(13)で示す2つの減算処理を選択して、LUT出力値Eに対して、色相角Phを算出する。
【0060】
Ur≧Vrのとき Ph=E・・・・式(12)
Ur<Vrのとき Ph=90−E・・・・式(13)
【0061】
図6はセレクター加算器38が第1色差値Uと第2色差値Vと色相角Phに基づいて色相値Hを出力する算出方法を説明した説明図である。セレクター加算器38は、入力される第1色差値Uの値と、第2色差値Vの値との組み合わせによって色相値Hの出力方法を選択する。図6に示した、セレクター加算器38が行う色相値Hの算出方法を、概念的に説明する説明図を図7に示した。図7は横軸を第1色差値U、縦軸を第2色差値VとしたU−Vグラフである。図6,図7を用いて、具体例を示してセレクター加算器38によるHの算出方法を説明する。
【0062】
例えば、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uが正の値、第2色差値Vが正の値である場合、図7に示すように色相角PhはU−Vグラフ上の第1象限上の角度に相当する。この場合、色相値Hと色相角Phが同じであることが図7から理解できる。図6において、第1色差値Uの値が正の値、第2色差値Vの値が正の値に対応したHの算出方法はH=Phとなっており、図7を用いて説明した色相値Hの算出方法に対応していることが分かる。
【0063】
次に、2つ目の具体例として、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uが負の値、第2色差値Vが負の値である場合、図7に示すように色相角PhはU−Vグラフ上の第3象限上の角度に相当する。この場合、図7に示すように、色相値Hは色相角Phに180度を加算することで求められることが理解できる。図6において、第1色差値Uの値が負の値、第2色差値Vの値が負の値に対応したHの算出方法はH=Ph+180となっており、図7を用いて説明した色相値Hの算出方法に対応していることが分かる。上記2つの具体例で示したように、セレクター加算器38では図6に対応した算出方法で、第1色差値Uと第2色差値Vと色相角Phに基づいて色相値Hを出力する。なお、セレクター35、LUT36、セレクター減算器37、セレクター加算器38が特許請求の範囲に記載の色相角算出部に相当する。さらに、セレクター35が特許請求の範囲に記載の第1判断部に相当し、セレクター加算器38が特許請求の範囲に記載の第2判断部および色相値出力部に相当する。以上、色空間変換回路110は上記の方法により、画像信号として入力されたYUV信号に対してYUV−HLS変換を施して、HLS信号を出力する。
【0064】
(A3)色調整:
次に、ユーザーが行う色調整および、その際の液晶プロジェクター100で行う処理の詳細について説明する。色空間変換回路110が行ったYUV−HLS変換によって出力されたHLS信号は、色調整回路120に入力される。図8は色調整回路120の構成を示すブロック図である。この色調整回路120は図示するように、色相調整回路40、彩度調整回路50、明度調整回路60を備えている。
【0065】
色相調整回路40はLUT41を備えている。LUT41は入力される色相信号(H)の値に対して、出力する色相信号(H)の値を記憶したLUTであり、RAMで構成されている。なお、以下、LUTに入力される信号の値を入力信号値、LUTから出力される信号の値を出力信号値とも呼ぶ。
【0066】
次に彩度調整回路50の構成について説明する。彩度調整回路50は、LUT51、LUT52、彩度ゲイン補間回路53、彩度乗算回路54を備えている。彩度調整回路50には、色相信号(H)と彩度信号(S)とが入力される。LUT51は、彩度調整回路50に入力される色相信号と彩度信号のうち、彩度信号の信号値がS=0(彩度信号値の最小値)の時の、出力する彩度信号値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT52は、彩度調整回路50に入力される彩度信号値がS=1023(彩度信号の最大値)の時の、出力する彩度信号値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。彩度ゲイン補間回路53は、彩度信号の入力信号値が0〜1023の間の時の、各色相における彩度信号の出力ゲイン値である彩度ゲイン値を演算し出力する。彩度乗算回路54は、彩度信号(S)と、彩度ゲイン値とを乗算して、色調整後の彩度信号(S)として出力する。これらの処理については、後で具体例を示して詳細を説明する。
【0067】
次に明度調整回路60について説明する。明度調整回路60は上述した彩度調整回路50とほぼ構成は同じである。彩度調整回路50と比較して、構成および処理で異なる点は、処理対象となる信号が明度信号(L)となったことである。明度調整回路60は、LUT61、LUT62、明度ゲイン補間回路63、明度乗算回路64を備えている。明度調整回路60には、色相信号(H)と明度信号(L)とが入力される。LUT61は、明度調整回路60に入力される色相信号と明度信号のうち、明度信号の信号値がL=0(明度信号値の最小値)の時の、出力する明度信号値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT62は、明度調整回路60に入力される明度信号値がL=1023(明度信号の最大値)の時の、出力する明度信号値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。明度ゲイン補間回路63は、明度信号の入力信号値が0〜1023の間の時の、各色相における明度信号の出力ゲイン値である明度ゲイン値を演算し出力する。明度乗算回路64は、明度信号(L)と、明度ゲイン値とを乗算して、色調整後の明度信号(L)として出力する。なお、色調整回路120内の各LUTは、いずれも、液晶プロジェクター100の電源投入時に初期値が書き込まれる。このLUTの値は、以下に説明するユーザー操作による色調整の指示により書き換えられる。
【0068】
次にユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う色調整の処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像を見ながら色調整を行う。図9は、色調整用画像のうち、色相調整用画像を示した説明図である。色相調整用画像は、LUT41が記憶している、入力信号値と出力信号値との対応関係に基づいて、CPU130が作成する。具体的には、図9の色相調整用画像の横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。CPU130は作成した色相調整用画像をスクリーン200に投写する。これらの機能はCPU130が色調整指示部132の機能として行う。そして、スクリーン200に投写された色相調整用画像を見たユーザーは、操作ボタン192を用いて、色相に関する色調整を行う。
【0069】
操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130は、LUT41に記憶された色相信号(H)の出力信号値の値の書き換えを行う。出力信号値の書き換えを行ったLUT41は、色相調整回路40に入力された色相信号(H)の値を、書き換え後の出力信号値に従って変更し出力する。
【0070】
図9に示す色相調整用画像について詳しく説明する。上述したように、色相調整用画像は、横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。縦軸、横軸ともに、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、色相調整用画像内の太線が、色相調整回路40が行っている色相信号の変更処理の内容を表現している。ユーザーは、操作ボタン192が備える十字キーボタンおよび決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定し、選択した色相の太線を上下させることによって太線の形状を変形させ、液晶プロジェクター100が投写する画像の、色相に関する色調整を行う。一例として、図9の色相調整用画像が示す太線によると、色相調整回路40は、投写する画像の「赤(R)を黄(Y)に寄せ、シアン(C)を緑(G)に寄せる」処理を色相信号(H)に対して行う。
【0071】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う彩度の補正処理について説明する。図10は、色調整用画像のうち、彩度調整用画像を示した説明図である。実際には、彩度調整用画像には、彩度信号値がS=0の時の画像(以下、最小彩度画像とも呼ぶ)と、彩度信号値がS=1023の時の画像(以下、最大彩度画像とも呼ぶ)との2つの画像がある。最小彩度画像と最大彩度画像は、処理内容を示す太線の形状は各々異なるが、それ以外の部分は同じであるので、図10にはS=0の時の彩度調整用画像、つまり最小彩度画像を示した。
【0072】
図10に示す最小彩度画像の横軸は、色調整回路120に入力される色相信号の値を示している。縦軸は、入力された彩度信号の入力信号値に対応して出力する彩度信号の出力ゲインの値を示している。横軸には、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、最小彩度画像内の太線が、入力色相信号の値ごとの、S=0の入力彩度信号に対して、出力する彩度信号の値に対応した出力ゲイン値を表現している。なお上述したように、最大彩度画像は、図10に示した最小彩度画像の太線の形状以外は同様の画像であるので、説明は省略する。
【0073】
ユーザーは、先述した色相調整の操作と同様に、操作ボタン192が備える十字キーボタンおよび決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定し、最小彩度画像および最大彩度画像の太線の形状を変形させて、液晶プロジェクター100が投写する画像の、彩度信号の出力ゲインを調整することによって、彩度に関する色調整を行う。
【0074】
上述した彩度調整回路50が行う処理内容について、図11を用いて具体例を示して説明する。図11は、彩度調整回路50が行う処理について、本具体例の内容に沿って概念を示した説明図である。図11のLUT51、LUT52に示すように、事前にユーザーが最小彩度画像および最大彩度画像の太線の形状を変形させることによって、S=0、S=1023の時の彩度信号の出力ゲイン値が設定されているとする。今、色調整回路120に画像信号が入力され、その画像信号に含まれる色相信号(H)と彩度信号(S)とが彩度調整回路50に入力された場合を考える。この時の、例えば、色相信号値H、彩度信号値SをそれぞれH=p、S=qであるとする。LUT51、LUT52にそれぞれ、H=pの色相信号が入力されると、LUT51はS=0の時の出力ゲイン値を、LUT52はS=1023の時の出力ゲイン値を出力する。本具体例においては、図11に示すように、LUT51におけるS=0の時の出力ゲイン値は1.5である。またLUT52におけるS=1023の時の出力ゲイン値は0.7である。この、2つの出力ゲイン値が、彩度ゲイン補間回路53に入力される。
【0075】
彩度ゲイン補間回路53は、図11に示すように、H=pの時の補間直線を生成する。補間直線は、S=0の時の出力ゲイン値1.5に対応する点と、S=1023の時の出力ゲイン値0.7に対応する点とを直線で結んだ線である。彩度ゲイン補間回路53は、H=pに対応した補間直線を生成すると、入力された彩度信号の入力信号値S=qに対応する彩度ゲイン値を補間直線より算出し、彩度乗算回路54に向けて出力する。本具体例においては、図11に示すように、入力信号値S=qに対応する彩度ゲイン値は1.3となる。彩度乗算回路54は、彩度調整回路50に入力された彩度信号(S)の入力信号値に彩度ゲイン値1.3を乗じた値に対応した彩度信号を、色調整後の彩度信号として出力する。
【0076】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う明度の補正処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像のうち、明度調整用画像を見ながら明度に関する色調整を行う。ユーザーが画像の明度調整を行うための明度調整用画像については、上記で説明した彩度調整用画像と同様の画像であり、調整の対象となる要素が明度になったことが、上述の彩度調整用画像とは異なる。よって、明度調整用画像の説明および図は省略する。
【0077】
以上説明したように、液晶プロジェクター100は、操作制御部190及び操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130が色調整指示部132の処理として、色調整回路120に備える各LUTの書き換えを行うことによって、投写する画像の色調整を行う。なお、液晶プロジェクター100は、図示しないOSD(オンスクリーンディスプレイ)処理部を備えており、CPU130はOSD処理部の機能として、色相調整用画像、彩度調整用画像、明度調整用画像をそれぞれ、投写画像に重畳してスクリーン200に投写する。また、色調整用画像上に表現された変更・補正処理の内容を示す太線は、ユーザーが色調整の操作によって上下させると、滑らかな曲線形状となるような曲線補間処理を、色調整指示部132が行っている。
【0078】
(A4)逆変換回路:
次に、逆変換回路140の具体的構成および動作について説明する。先述したように、逆変換回路140は、ユーザーによって色調整が行われ、色調整回路120によって変更・補正が施された後のHLS信号に対して、HLS−YUV変換をし、変換したYUV信号を液晶ライトバルブ駆動回路150に向けて出力する回路である。図12は逆変換回路140の構成を示すブロック図である。この逆変換回路140は図示するように、Ph出力器71、LUT73、LUT74、第1色差出力器75、第2色差出力器76を備えている。なお、色空間変換回路110の構成と同様に、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。よって、逆変換回路140に入力されたHLS信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したYUV信号として変換され、同期して出力される。
【0079】
逆変換回路140に入力された明度信号(L)は、先述したように、図3に示した座標空間において、輝度信号(Y)と一対一で対応しているので、明度信号(L)をそのまま輝度信号(Y)として出力する。
【0080】
Ph出力器71は入力された色相信号(H)から、色相角Phと、色相信号(H)に対応する色相値HのU−Vグラフ(図7)上での象限値DIV_H(第1象限から第4象限に対応した値)とを算出する。図13は、Ph出力器71に入力された色相値Hに対応して、色相角Phと、象限値DIV_Hとを算出する算出方法を示した説明図である。色相値Hの大きさによって、色相角Phの算出する方法が異なる。一例として、色相値H=100(度)の時、色相値Hは図13において、90〜180(度)の範囲に対応しているので、色相角Phの算出方法はPh=180−Hとなり、Ph=80(度)となる。またこの時、色相値H(=100(度))はU−Vグラフ(図7)では第二象限に存在し、H_DIV=1として出力される。このようにして、色相値Hから色相角Phと象限値DIV_Hとを出力する。
【0081】
図12において、Ph出力器71から出力された色相角Phに対応する信号はLUT73およびLUT74に入力される。LUT73は、入力された色相角Phの信号に対応して、その余弦値であるcos(Ph)を出力するLUTである。またLUT74は、入力された色相各Phの信号に対応して、その正弦値であるsin(Ph)を出力するLUTである。Ph出力器から出力された色相角Phに対応する信号は、LUT73およびLUT74を介して、cos(Ph)およびsin(Ph)に対応する信号に変換され、第1色差出力器75および第2色差出力器76に向けて出力される。
【0082】
図12に示すように、第1色差出力器75は、彩度値Sと、cos(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第1色差値Uに対応した信号を出力する。図14は、第1色差出力器75が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図である。第1色差出力器75は、象限値DIV_Hの値(0〜3)に基づいて、第1色差値Uを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、入力された彩度値Sと、cos(Ph)とに基づいて第1色差値Uに対応する信号を出力する。
【0083】
第2色差出力器76は、彩度値Sと、sin(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第2色差値Vに対応した信号を出力する。図15は、第2色差出力器76が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図である。第2色差出力器76は、象限値DIV_Hの値に基づいて、第2色差値Vを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、彩度値Sと、sin(Ph)とに基づいて第2色差値Vに対応する信号を出力する。こうして、逆変換回路140は、入力されたHLS信号に対して、HLS−YUV変換を行い、YUV信号を出力する。
【0084】
以上説明したように、液晶プロジェクター100は、入力されたYUV信号の画像信号を、色空間変換回路110でYUV−HLS変換し、HLS信号を出力する。そして、色調整回路120において、ユーザーからの色調整の指示により、HLS信号である画像信号を変更・補正する。この時、色調整回路120が、画像信号をHLS信号の状態で変更・補正処理を行うので、液晶プロジェクター100は、その処理内容を、色相、明度、彩度の3つの要素、つまりマンセル表色系で表現した色調整用画像として、ユーザーに示すことができる。また、ユーザーは、その色調整用画像を見ながら、画像の色調整を、色相、明度、彩度の各要素において変更・補正することができる。さらに、本実施例では、色調整用画像における色相を、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現しているので、ユーザーは色の目安となる、上記6つの色相を基準にしながら容易に画像の色調整を行うことができる。加えて、液晶プロジェクター100は、ハードウェアとして色空間変換回路110および色調整指示部132を備えるので、処理が高速であり、入力される画像信号のHLS信号への変換および変更・補正処理をリアルタイムに行うことが可能となる。
【0085】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
(B1)変形例1:
第1実施例では、色調整回路120が出力したHLS信号を、逆変換回路140がYUV信号に変換しているが、逆変換回路140が行う信号変換は、YUV信号への信号変換に限らず、画像表示に適した信号であれば、その他の信号形式への変換でもよい。また液晶プロジェクター100が、YUV信号形式で画像を表示可能な回路および処理部を備えるようにすれば、液晶プロジェクター100は逆変換回路140を備えないとしても、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0087】
(B2)変形例2:
第1実施例では、色調整用画像を、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写することによってユーザーに示したが、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターのディスプレイ画面上に、色調整用画像を表示することによって、ユーザーに示すようにしてもよい。
【0088】
(B3)変形例3:
第1実施例では、色調整回路120が行っている処理内容を、色調整用画像として、ユーザーが視認可能な表示部に示し、ユーザーがその色調整用画像を見ながら投写画像の色調整を行うとしたが、液晶プロジェクター100が色調整用画像を表示せず、色相、明度、彩度、つまりマンセル表色系で表現された色調整用操作パネルや、色調整用の例えば、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の各色相ごとの調整用ダイヤルを備え、別に備える切換ボタンによって、色相調整、明度調整、彩度調整を切り替えて色調整を行うとしてもよい。若しくは、色調整用の操作機能部を、液晶プロジェクター100が備えるようにし、ユーザーがスクリーン200上の投写画像を見ながら、その操作機能部を操作して投写画像の色調整をするとしてもよい。
【0089】
(B4)変形例4:
第1実施例では、色調整用画像において、色調整用画像における色相を、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現したが、基準軸の数は3つ、4つ、8つなど、任意の数としてもよい。また、色調整用画像における色相の基準軸の数を、ユーザーが任意に設定できるとしてもよい。その他、色調整用画像に色相の基準軸を設けず、色相を連続階調で表現するとしてもよい。その他、色調整用画像を、マンセル色立体を3次元表現した画像としてユーザーに示し、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウスやキーボード等で直接、ユーザーが、マンセル色立体上に表現された変更・補正処理の内容を操作するとしてもよい。
【0090】
(B5)変形例5:
第1実施例では、画像表示装置として液晶プロジェクター100を例示したが、光変調素子を液晶ライトバルブに限定するものではなく、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。なお、DMDは米国テキサスインスツルメンツ社の商標である。また、本発明はプラズマディスプレイや有機ELディスプレイなど、直視型の画像表示装置として実装することもできる。
【符号の説明】
【0091】
10…明度算出部
20…彩度算出部
21…第1乗算器
22…第2乗算器
23…加算器
24…浮動小数点変換器
25,31,36,41,51,52,61,62,73,74…LUT(ルックアップテーブル)
26…彩度指数算出器
27…ビットシフト演算器
30…色相算出部
35…セレクター
37…セレクター減算器
38…セレクター加算器
40…色相調整回路
50…彩度調整回路
53…彩度ゲイン補間回路
54…彩度乗算回路
60…明度調整回路
63…明度ゲイン補間回路
64…明度乗算回路
75…第1色差出力器
76…第2色差出力器
100…液晶プロジェクター
102…内部バス
110…色空間変換回路
120…色調整回路
130…CPU
132…色調整指示部
140…逆変換回路
150…液晶ライトバルブ駆動回路
160…液晶ライトバルブ
170…光源部
171…ランプ
172…レンズ
180…投写レンズ
190…操作制御部
192…操作ボタン
200…スクリーン
DIV_H…象限値
R…開平結果値
K…第1実数値
L…第1指数値
U…第1色差値
V…第2色差値
D…セレクター出力値
U2…第1乗算値
V2…第2乗算値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、
画像信号である第1HLS信号に含まれる色相信号と、明度信号と、彩度信号とをそれぞれ個別に変更・補正処理し、第2HLS信号として出力する色調整回路を備える画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置であって、更に、
前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を指示する色調整指示部を備える画像表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像表示装置であって、
前記色調整指示部は、前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を示した色調整用画像をユーザーが視認可能な表示部へ表示する表示制御部を備える画像表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像表示装置であって、
前記色調整用画像は、色相変更用画像と、明度補正用画像と、彩度補正用画像との3つの画像によって前記変更・補正処理の処理内容を表現した画像である画像表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像表示装置であって、
前記色相変更用画像、前記明度補正用画像、前記彩度補正用画像のうち少なくとも一つは、青と、マゼンダと、赤と、黄と、緑と、シアンとを色相を表す基準に用いて、前記変更・補正処理の処理内容を表現した画像である画像表示装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか記載の画像表示装置であって、
前記色調整指示部はさらに、ユーザーによる前記変更・補正処理の処理内容の変更指示により、前記色調整回路が行う前記変更・補正処理の処理内容を変更する画像表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6記載の画像表示装置であって、更に、
前記入力された画像信号に含まれる、輝度信号、第1色差信号、第2色差信号の3つの信号からなる第1YUV信号を、前記色相信号、前記明度信号、前記彩度信号の3つの信号からなる前記第1HLS信号に変換する色空間変換回路を備える画像表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像表示装置であって、
前記色空間変換回路は、
3次元直交座標系の第1色空間を構成する前記輝度、前記第1色差、前記第2色差の3つの要素に対応する第1YUV信号を、3次元極座標系の第2色空間を構成する前記明度、前記彩度、前記色相の3つの要素に対応する第1HLS信号に変換する回路であり、
彩度算出部と、
色相算出部とを備え、
前記彩度算出部は、前記第1色差の値同士の乗算値である第1乗算値を出力する第1乗算器と、前記第2色差の値同士の乗算値である第2乗算値を出力する第2乗算器と、前記第1乗算値と前記第2乗算値との加算値を出力する加算器と、前記加算値の平方根の値を前記彩度に対応した信号として出力する開平器とを備え、
前記色相算出部は、前記彩度に対応する信号と前記第1及び第2色差に対応した信号とに基づいて前記色相に対応した信号を出力する回路である
画像表示装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8のいずれか記載の画像表示装置はさらに、前記第2HLS信号を、輝度信号、第1色差信号、第2色差信号の3つの信号からなる第2YUV信号に変換して出力する逆変換回路を備える画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−232773(P2010−232773A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75724(P2009−75724)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】