説明

画像表示装置

【課題】放電による異常電流の発生を抑えつつ、暗線やストリーキングによる画像劣化を防止しかつ抵抗部材の破壊を防止する。
【解決手段】フェイスプレート1は、画像領域22の外を画像領域22の一つの辺に沿って延び高圧電源からの給電を受ける共通電極8と、共通電極8に接続され画像領域を前記一つの辺23と直交する方向に横断し、対応する分割領域の各メタルバック6に接続されたn本の第一の抵抗部材10と、画像領域の外に、画像領域を挟んで一つの辺23と対向して位置し、一つの第一の抵抗部材と他の一つの第一の抵抗部材とを接続する第二の抵抗部材11と、を有している。第一の抵抗部材の、少なくとも1つの発光部材5で構成される1画素の長さあたりの平均抵抗値をR1、第一の抵抗部材の画像領域22内における全長分の抵抗値をR1all、第二の抵抗部材の抵抗値をR2、としたときに、0.1×R1<R2<R1allの関係を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特にフェイスプレートに設けられる抵抗部材の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電子放出源が形成されたリアプレートと、電子放出源から放出され加速された電子が衝突することで発光する発光部材が形成されたフェイスプレートと、を備えた画像表示装置が公知である。このような画像表示装置では、リアプレートとフェイスプレートとの間隔が非常に狭くされており、かつ電子の加速のためにリアプレートとフェイスプレートの間には高電圧が印加されるため、放電対策が課題となっている。
【0003】
特許文献1には、メタルバックが行方向に分断された画像表示装置が開示されている。分割された各メタルバックの一端は抵抗体を介して、高圧電源に接続された共通電極と接続されている。各メタルバックの他端は、画像領域外の共通電極と反対側の位置で、共通の抵抗体に接続されている。
【0004】
特許文献2には、フェイスプレートの面内に格子状の抵抗体が形成され、その間に発光体が設けられた画像表示装置が開示されている。抵抗体はフェイスプレートの対向する2辺で、接続抵抗体を介して共通電極と接続されている。
【0005】
特許文献3には、2次元に分断されたアノード電極ユニットと、アノード電極ユニット同士を接続する抵抗体と、を有する画像表示装置が開示されている。最外周に位置するアノード電極ユニットは、これらのアノード電極ユニットを取り囲む給電部に、抵抗部材を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−251530号公報
【特許文献2】特開2006−173094号公報
【特許文献3】特開2004−158232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気的に1方向に分断された抵抗体や電極によって複数の給電ラインを設け、個々の給電ラインに高電圧を印加する場合、各給電ラインの独立性が高まるため放電対策は容易となる。一方、各給電ラインの一方の端部が他の給電ラインや共通電極と接続されずに孤立して終端していると、給電ラインが途中で断線した場合に、断線箇所より先の部分で高電圧の供給ができなくなる。その結果、高電圧の供給されない発光部材は発光することができず、重大な画像欠陥である暗線が生じる。その対策として、特許文献1〜3のように、1方向に分断された給電ラインの両端同士を、抵抗部材を介して電気的に接続することは、暗線による画像劣化の程度を緩和する手段として有効である。
【0008】
しかし、単に給電ラインの両端同士を抵抗部材で接続するといくつかの課題が生じることを発明者は見出した。
【0009】
まず、第一に、給電ラインの両端同士を結ぶ抵抗部材の抵抗が高すぎると、断線時の暗線による画像劣化の程度を緩和することができない。両端が接続されていても、その経路の途中に抵抗値の極端に高い部分があると、リアプレートからの放出電流により電圧降下を生じるからである。ここで、本明細書では「放出電流」は電子の流れを意味する用語として用いており、放出電流の向きは、通常意味する電流の向きとは反対向きとなっている。
【0010】
第二に、抵抗部材の抵抗が高すぎると、放電時における抵抗部材両端での電位差が大きくなり、抵抗部材が破壊する可能性がある。フェイスプレートとリアプレートの間に放電が発生した場合、フェイスプレートの面内を流れる電流と、電流が流れる経路の抵抗値とに応じて抵抗部材に電圧降下が生じる。その際に、抵抗部材の抵抗だけが極端に高いと、その両端に生じる電位差が大きくなり、2次的な放電により抵抗部材が破壊してしまうおそれがある。
【0011】
第三に、逆に抵抗部材の抵抗が低すぎる場合、ある特定のパターンの表示を行なった際にクロストークやストリーキングと呼ばれる画質劣化が発生することがある。特に線順次駆動されるFEDにおいて、給電ラインの分割されている方向(給電ラインの延びる方向)が走査線と直交する場合、画質劣化が大きくなりやすい。
【0012】
本発明は、放電による異常電流の発生を抑えつつ、暗線やストリーキングによる画像劣化を防止しかつ抵抗部材の破壊を防止することの容易な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像表示装置は、複数の電子放出源が形成されたリアプレートと、画像領域は、画像領域の一つの辺と直交するn−1本の仮想線(ここで、nは2以上の自然数。)によってn個に分割された分割領域を有し、各分割領域は電子放出源から放出され加速された電子が衝突することで発光する複数の発光部材と、電子を加速するための複数のメタルバックと、を含むフェイスプレートと、を有している。フェイスプレートは、画像領域の外を画像領域の前記一つの辺に沿って延び高圧電源からの給電を受ける共通電極と、共通電極に接続され画像領域を前記一つの辺と直交する方向に横断し、対応する分割領域の各メタルバックに接続されたn本の第一の抵抗部材と、画像領域の外に、画像領域を挟んで前記一つの辺と対向して位置し、一つの第一の抵抗部材と他の一つの第一の抵抗部材とを接続する第二の抵抗部材と、を有している。第一の抵抗部材の、少なくとも1つの発光部材で構成される1画素の長さあたりの平均抵抗値をR1、第一の抵抗部材の画像領域内における全長分の抵抗値をR1all、第二の抵抗部材の抵抗値をR2、としたときに、0.1×R1<R2<R1allの関係を満たしている。
【0014】
本発明によれば、R2<R1allの条件が満たされているため、第一の抵抗体が断線しても極端な暗線が発生しない画像を得ることができ、また放電時に第二の抵抗体の破壊が生じにくい。さらに、0.1×R1<R2の条件が満たされているため、ストリーキングの少ない良好な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放電による異常電流の発生を抑えつつ、暗線やストリーキングによる画像劣化を防止しかつ抵抗部材の破壊を防止することの容易な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフェイスプレートを示す模式的平面図である。
【図2】本発明の画像表示装置の模式的断面図である。
【図3】第二の抵抗体を示す模式的断面図である。
【図4】第三の抵抗体を有するフェイスプレートを示す模式的平面図である。
【図5】第一の抵抗体を示す模式的平面図である。
【図6】第二の抵抗体を示す模式的平面図である。
【図7】第三の抵抗体を示す模式的平面図である。
【図8】本発明のフェイスプレートの等価回路である。
【図9】放電発生時に抵抗部材に生じる電位差を示す模式図である。
【図10】ストリーキングの発生原因を示す模式図である。
【図11】ストリーキングによる画質劣化の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の画像表示装置は、電子放出源からの電子ビームを照射して画像を形成する電界電子放出ディスプレイ(FED)に適用できる。特に、フェイスプレートとリアプレートが近接して配置され高電界が印加される平面型のFEDでは、放電が発生しやすく放電電流も大きくなりやすいため、本発明が好適に用いられる。本発明の実施の形態について、FEDの中でも表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置(SED)を例に挙げ、図面を用いて具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明の画像表示装置31のフェイスプレートを示す模式的平面図である。図2は本発明の画像表示装置を示す、図1のA−A線で切った模式的断面図である。フェイスプレート1とリアプレート2と側壁3により真空気密容器が形成され、その内部は減圧されて真空状態を保っている。
【0019】
リアプレート2には複数の電子放出源4が形成され、走査線25と不図示の信号線が接続されている。電子放出源は線順次駆動にて駆動され、フェイスプレート2に電子ビームを照射する。線順次駆動の場合、図2に示す走査線25が順次駆動される。フェイスプレート1とリアプレート2の間には不図示のスペーサが配置されてもよい。スペーサはフェイスプレート1とリアプレート2の間隔を規定する部材であり、柱状や板状の部材が好適に用いられる。
【0020】
次に、本発明の特徴であるフェイスプレート1に関して更に詳しく説明する。フェイスプレート1は、画像が表示される矩形形状の画像領域22を備えている。画像領域22は、画像領域の一つの辺23と直交するn−1本の仮想線21(ここで、nは2以上の自然数。)によってn個に分割された分割領域22a,22b,・・・を有している。図1は画像領域22の一部のみを示し、全ての分割領域は示していない。各分割領域22a,22b,・・・は電子放出源4から放出され加速された電子が衝突することで発光する複数の発光部材(蛍光体層5)と、電子を加速するための複数のメタルバック6と、を含んでいる。フェイスプレート1は、蛍光体層5の発光を透過するために、ソーダライムガラスやアルカリフリーガラスやアルカリ成分を調整した高ひずみ点ガラスなどのガラス基板で形成されている。
【0021】
蛍光体層5は、電子照射により発光する蛍光体材料を塗布することによって形成されている。図1では蛍光体層5は示していないが、蛍光体層5は概ねメタルバック6と同じ位置に形成されており、図2に示すように、メタルバック6に覆われている。蛍光体層5の材料としては、電子線の照射を受けて発光する蛍光体材料を用いることができる。カラーディスプレイを得るためには、CRTの分野で用いられるP22蛍光体が、色再現性や輝度の観点から好適に用いられる。
【0022】
蛍光体層5には、CRTの分野で公知のメタルバック6が形成されている。メタルバック6は、蛍光体層5に所望の加速電圧を印加すること、及び蛍光体層5の発光を反射し光の取り出し効率を増すことを目的として設置される。メタルバック6の材料としては、光の反射を実現でき、かつ電子線が透過できるものであればよく、電子透過性及び反射率に優れたアルミニウムを好適に用いることができる。
【0023】
蛍光体層5やメタルバック6で発生する反射電子を捕獲するために、リブ7が形成されている。リブ7の形状としては、ストレート状のものやワッフル状のものが挙げられる。カラーディスプレイを作製する場合、反射電子による混色を防ぐため、リブはRGB(赤、緑、青)の各色の蛍光体の間に配置するのが好ましい。リブ7の材料としては、後述する第一の抵抗部材10よりも十分抵抗が高く、スペーサが配置されても破壊されない強度を有していればよい。ガラスフリットや、アルミナなどの絶縁粉とガラスフリットなどを含んだペーストを焼結した材料が好適に用いられる。
【0024】
次に、給電のために配置されている第一の抵抗部材10について説明する。フェイスプレート1には画像領域22内の蛍光体層5及びメタルバック6に給電するために、電極や抵抗体によって給電ラインが形成されている。給電ラインの抵抗値が低いと、放電時にフェイスプレート1とリアプレート2の間の静電容量に蓄えられた充電電荷により大きな放電電流が流れる。そのため、フェイスプレート1とリアプレート2の間の放電電流を抑制するために給電ラインはある程度以上の抵抗値を有することが好ましく、給電ラインは電気抵抗が比較的高い第一の抵抗部材10で形成することが好ましい。
【0025】
一方、第一の抵抗部材10は、メタルバック6に入射される電子ビームの電流を流さなければならないため、抵抗値をあまり高くすることは好ましくない。これらのことから第一の抵抗部材10の抵抗値には、好ましい範囲が存在する。第一の抵抗部材10の材料としては、所望の抵抗値が得られる材料であれば特に限定されない。酸化ルテニウム、ITO (Indium Tin Oxide)、ATO (antimony tin oxide)などの材料が抵抗値の制御が容易であり、好適に用いることができる。
【0026】
第一の抵抗部材10の構成としては、1方向に電気的に分断される分割構造や、格子状(2次元)に分断される分断構造が挙げられる。ストレート形状のリブを配置した場合には、リブ上に第一の抵抗部材10を配置できるため、1方向に電気的に分断される構造とするほうが容易に作製できる。本実施形態では1方向に電気的に分断される構造を採用している。第一の抵抗部材10はn本設けられ、共通電極8に接続され、辺23と直交する方向に画像領域22を横断しており、対応する分割領域22a,22b,・・・の各メタルバック6に接続されている。
【0027】
1方向に電気的に分断される分割構造を有する第一の抵抗部材10を配置する場合、第一の抵抗部材10の画像領域22を横断する方向(図1のY方向)が、線順次駆動される走査線25(図2参照)と直交していることが望ましい。走査線25は図1のX方向に延びている。線順次駆動されるFEDの場合、走査線25上の電子放出源4は同時に駆動される。第一の抵抗部材10が走査線25と平行に延びていると、同時に多くの放出電流がひとつの第一の抵抗部材10に流れ込むことになる。この結果、放出電流が高圧電源に流れ込む経路での電圧降下が大きくなってしまい、画像が暗くなってしまう。第一の抵抗部材10を走査線25と直交する向きに配置することで、同時に流れ込む放出電流が少なくなり、電圧降下を小さくすることができる。
【0028】
フェイスプレート1には、画像領域22の外を画像領域22の辺23に沿って延び高圧電源(図示せず)からの給電を受ける共通電極8が設けられている。第一の抵抗部材10は共通電極8に接続され、共通電極8と直交する方向に配置されている。共通電極8は高圧導入部9を介して、高圧電源と接続されている。共通電極8は典型的には、画像領域22の辺に沿うように配置され、画像領域22の辺と略等しい長さで配置するのが好ましい。共通電極8は、電子ビームによる電流に起因する電圧降下が事実上ほとんどないように、低抵抗な材料で形成されている。共通電極8の材料としては、金属の薄膜もしくは金属粉が混入されたペーストの焼結材を用いることができ、銀粉末とガラスフリットとビヒクルを添加したペーストを焼結した材料が作成方法の容易さから好適に用いることができる。
【0029】
次に、本発明の特徴である第二の抵抗部材11について説明する。第二の抵抗部材11は、画像領域22の外に、画像領域22を挟んで辺23と対向して位置している。すなわち、第二の抵抗部材11は、画像領域22を隔てて共通電極8の反対側の辺24に沿って配置されている。第二の抵抗部材11は、互いに隣接する2つの第一の抵抗部材10同士をつなぐ部分を意味している。図1では、第二の抵抗部材11は、n本すべての第一の抵抗部材10を互いに接続して、全体として一つの抵抗部材11aを形成しているが、個々の第二の抵抗部材11は互いに隣接する2つの第一の抵抗部材10同士をつなぐ部分を指している。
【0030】
第二の抵抗部材11の機能は、第一の抵抗体10が途中で断線した場合に、共通電極8から見て断線部より遠い部分にあるメタルバック6に給電されず、暗線が発生することを防ぐことにある。従って、第二の抵抗部材11は一つの第一の抵抗部材10と他の一つの第一の抵抗部材10とを接続していればよく、全体として抵抗部材11aのような連続した抵抗要素を形成している必要はない。第二の抵抗部材11の設けられる分割領域が一つおきとなるように第二の抵抗部材11を設けること(図1において第二の抵抗部材11を一つおきに削除する。)も可能である。ただし、暗線を防止するためには、他の第一の抵抗部材10と接続されていない第一の抵抗部材10が存在することは好ましくなく、全ての第一の抵抗部材10が、少なくとも一つの他の第一の抵抗部材10と接続されていることが望ましい。第二の抵抗部材11の抵抗値を任意に定めることは好ましくなく、好適な抵抗値の範囲が存在する。好ましい抵抗値の範囲については後述する。
【0031】
図3に第二の抵抗部材11の配置を示す。同図(a)は図1のB−B線で切った断面図であり、同図(b)は図1のC−C線で切った断面図である。図3(b)に示すように、第二の抵抗部材11はリブ7の上に設けられている。第二の抵抗部材11との接続部では、図3(a)に示すように、第一の抵抗部材10がリブ7の上に設けられ、第二の抵抗部材11が第一の抵抗部材10の上に積層されており、これによって隣接する第一の抵抗部材10同士の電気的接続が取られている。第一の抵抗部材10と第二の抵抗部材11との電気的接続の方法はこれに限定されず、例えば、図2に示したのと同様の構成をとることができる。具体的には、2つの第一の抵抗部材10の間に第二の抵抗部材11を設置し、2つの第一の抵抗部材10と第二の抵抗部材11とをメタルバック6と同様の材料で覆って、電気的接続を確保するような構造でもよい。
【0032】
第二の抵抗部材11の材料としては、所望の抵抗値を得られれば特に限定されないが、第一の抵抗部材10と同様に酸化ルテニウム、ITO、ATOなどの材料が抵抗値の制御が容易であり、好適に用いることができる。
【0033】
次に、図4を用い、本発明の別の実施形態について説明する。図4は前述のフェイスプレート1に、さらに第三の抵抗部材12が配置された構造を示している。第三の抵抗部材12は、画像領域22内のうち共通電極8に近い部位で放電が発生した際に、大きな放電電流が共通電極8から画像領域22内に流れ込むことを防止する目的で配置される。画像表示中には放出電流による電圧降下をある程度小さくする必要があるため、好適な抵抗値の範囲が存在する。好ましい抵抗値の範囲については後述する。
【0034】
第三の抵抗部材12の材料としては、所望の抵抗値を得られれば特に限定されないが、第一の抵抗部材10と同様に酸化ルテニウム、ITO、ATOなどの材料が抵抗値の制御が容易であり、好適に用いることができる。
【0035】
次に、第一の抵抗部材10の抵抗値R1、第一の抵抗部材10の画像領域22内における抵抗値(合算値)R1all、第二の抵抗部材11の抵抗値R2、及び第三の抵抗部材12の抵抗値R3の定義を、図5、図6、図7を用いて説明する。
【0036】
図5に、第一の抵抗部材及びメタルバックの形成方法と、抵抗値R1の定義を示す。図5(a)は、メタルバック6が第一の抵抗部材10の上に形成されている場合を示している。図5(b)は、メタルバック6が第一の抵抗部材10に積層されておらず、メタルバック6への給電部材(図示せず)が別に設けられている場合を示している。図5(c)は、メタルバック6を2画素以上にまたがるように配置した例を示している。各図で符号14は1画素に相当する範囲を模式的に示している。1画素に相当する範囲は、カラーディスプレイの場合、RGBの3つの発光部材からなり、白黒ディスプレイの場合、1つの発光部材から構成することができる。つまり、1画素は少なくとも1つの発光部材から構成される。
【0037】
図5(a),(b)の場合、メタルバック6や給電部材は低抵抗な金属薄膜で形成されるため、第一の抵抗部材10の抵抗値R1は実質的に、メタルバック6が配置されていない部分の形状で決まる。図5(c)の場合、第一の抵抗部材10の形状から単純に抵抗値R1を求めることは難しい。そこで第一の抵抗部材10の抵抗値R1は、基準長さあたりの抵抗値として定義する。基準長さあたりの抵抗値は1画素の長さあたりの平均抵抗値とし、図中の抵抗測定点13の間の抵抗値を、1画素あたりに平均化して算出する。図5(a),(b)の場合、抵抗測定点13の間の抵抗値が基準長さあたりの抵抗値となる。図5(c)の場合、画素間の抵抗値が一定値とならないため、メタルバック6の繰り返しピッチに応じて抵抗値の測定を行ない、1画素の長さあたりの平均抵抗値R1を算出する。
【0038】
次に、画像領域22内におけるR1の抵抗値R1allについて説明する。R1allは、各第一の抵抗部材10の画像領域22内における全長分の抵抗値である。後述するように、抵抗R1は画像領域22内で1方向に直列接続されていると考えることができる。R1は1画素あたりの抵抗値であるため、画像領域の幅Wでの抵抗値R1allは、画素数をNとした場合、R1all=R1×Nとして表わすことができる。これは、共通電極8から最も離れた画素の高圧電源までの抵抗値にほぼ一致する。
【0039】
次に、第二の抵抗部材11の抵抗値R2について説明する。R2は、電気的に接続された2つの第一の抵抗部材10の間の抵抗値で示され、図6に示す抵抗測定点13の間の抵抗値として定義される。3つ以上の第一の抵抗部材10が互いに接続されている場合は、第一の抵抗部材10間の抵抗値が第一の抵抗部材10の数に応じて複数個存在する。その場合は、最も小さな抵抗値をR2として定義する。
【0040】
次に、第三の抵抗部材12の抵抗値R3について説明する。R3は共通電極8と第一の抵抗部材10との間の抵抗値、具体的には共通電極8と画像領域22の端部の間の抵抗値であり、図7に示す抵抗測定点13の間の抵抗値として定義される。
【0041】
次に、本発明の特徴である各抵抗部材の抵抗値の関係について、図8、図9、図10に示す等価回路を参照して、更に詳細に説明する。
【0042】
R1の好適範囲について
図8に、本発明のフェイスプレートの等価回路図を示す。R1は、放電時に放電電流を抑制すること、及び画像表示時に放出電流による電圧降下を低減することを考慮して決定される。その値は、画素のサイズ、フェイスプレート1とリアプレート2の間の距離、アノード電圧、放出電流量などにより決められ、数Ω〜数百MΩ程度の範囲の抵抗値が好ましい。
【0043】
R2の好適範囲について
R2は、最大値については暗線の抑制と放電電流の抑制を、最小値についてはストリーキングの抑制を考慮して定めることが望ましい。
【0044】
第一の抵抗部材10が途中で断線した場合、暗線が生じないように、共通電極8から見て断線部より遠いメタルバック6に給電を行なう必要がある。第一の抵抗部材10の断線部より遠い部分は、第二の抵抗部材11を介して第一の抵抗部材10と接続された他の第一の抵抗部材10の抵抗R1allと、第二の抵抗部材11の抵抗R2との直列抵抗によって、共通電極8と接続される。R2がR1allよりも極端に高いと、この直列抵抗の値が大きくなりすぎ、十分に給電することができない。発明者らは鋭意検討の結果、R2をR1allよりも小さくする(R2<R1all)ことで、R1が断線した場合でも、共通電極8から見て断線部より遠い画素の電圧降下による輝度低下が許容範囲に収まることを見出した。
【0045】
次に図9を用いて、放電時の電圧降下によりR2に生じる電位差について説明する。画像領域内で放電15が発生すると、フェイスプレート1とリアプレート2との間に充電されていた電荷が、放電電流16,17としてフェイスプレート1の面内を通じて流れ込み、最終的にリアプレート2に放電電流16,17が流れ込む。ここでR1all<<R2であると、放電電流を抑制するのはR2だけとなるため、放電時にR2に発生する電位差が大きくなり、第二の抵抗部材11の破壊や放電電流の増大につながる。発明者らは鋭意検討の結果、R2をR1allよりも小さくする(R2<R1all)ことで、放電時に第二の抵抗部材11にかかる電位差を十分小さく抑え、第二の抵抗部材11の破壊や放電電流の増大を防止できることを見出した。
【0046】
R2の最小値はストリーキングを防止する観点から決定することが望ましい。抵抗R2が低すぎる場合に発生する画質劣化について、図10、図11を用いて説明する。図10は駆動中の等価回路を示している。図11はストリーキングと呼ばれる画質劣化の様子を示す模式図で、同図(a)はストリーキングが発生しているときの画面の状態を、同図(b)はストリーキングの発生していない正常な表示が行われているときの画面の状態を示す。図10に示すように、2つの電流源I1、I2は同時に駆動され、リアプレート2から放出電流18、19を発生させている。図11の画像パターンから分かる通り、放出電流18の方が放出電流19よりも大きくされている。電流源I3は電流源I1、I2とは別のタイミングで駆動され、放出電流19を発生させている(線順次駆動)。
【0047】
図10に示す位置での電圧V1,V2について考える。電流源I1、I2が駆動される際には、電圧V1は電流源I1から流れ込む電流による電圧降下に加え、電流源I2からR2を介して流れ込む電流による電圧降下を受ける。一方、電流源I3が駆動される際には、電圧V2は電流源I3から流れる電流による電圧降下だけを受ける。従って、V1,V2の位置を同程度の明るさで駆動しようとしても、R2が大きいと、電流源I2からの電流による電圧降下が大きくなる。この結果、図11(a)に示すように、明るさの段差20が生じて画像に妨害感が生じる(ストリーキング)。R2が小さい場合は、図11(b)に示すように、明るさの段差は発生しないか、あるいは目立たなくなる。
【0048】
発明者らはR1及びR2とストリーキングの関係について鋭意検討を行なった結果、0.1×R1<R2とすることで、ストリーキングによる輝度差を十分小さくできることを見出した。
【0049】
次に、R3の好ましい範囲について説明する。R1とR3の関係は、放電電流の抑制及び放出電流による電圧降下の抑制を考慮して決定することが望ましい。放電が共通電極8に近い場所で発生すると、放電電流は共通電極8を通って画像領域22に流れ込む可能性がある。第三の抵抗部材12は、このような放電電流ができるだけ画像領域22に流入しないように設けられるため、R3はR1よりも大きい(R1<R3)ことが好ましく、R1の10倍より大きいことが更に好ましい。また、放出電流による電圧降下量はできる限り抑えることが望ましい。このため、R3をR1allよりも小さくする(R3<R1all)ことで、R3での電圧降下量を画像領域22における電圧降下量よりも小さくすることができる。
【0050】
R2との関係では、共通電極8に隣接する第三の抵抗部材12は、第二の抵抗部材11よりも高い放電電流抑制機能が必要とされる。放電が画像領域22のうち共通電極8側で生じた場合と、第二の抵抗部材11側で生じた場合とを比べると、共通電極8の抵抗値が低いため、共通電極8側の放電電流が大きくなりやすいためである。そのためR3はR2よりも大きくすること(R3>R2)が好ましい。
【0051】
(実施例1)
図1に示した構成のフェイスプレートを以下の工程により作製した。なお、以下の説明におけるX方向及びY方向は図1に示すとおりである。
【0052】
フェイスプレート1の基板として、厚さ2.8mmのガラス基板(PD200、旭硝子株式会社製)を用い、その上に遮光層(NP−7803D、ノリタケ機材株式会社製)を形成した。次に、フォトリソグラフィー法でリブ7を形成し、RGBの蛍光体層5をリブ7の間に塗布し焼成した。その後、蛍光体層5の上に島状のメタルバック層6を真空蒸着法により形成した。最後に、フォトリソグラフィー法で第一の抵抗体10と第二の抵抗体11をそれぞれこの順で形成した。画素ピッチは900μmとし、RGBのそれぞれのX方向幅は300μmとした。画素数は100×100画素とし、絵素数で300×100とした。
【0053】
本実施例では、メタルバック層6としてAlを用い、一画素あたりの寸法がX方向で200μm、Y方向で450μmとなるように形成した。リブ7は、体積抵抗が100kΩ・mの絶縁部材を用い、幅50μm、長さ900mm、高さ200μmで形成した。第一の抵抗部材10は、体積抵抗が1.0Ω・mの抵抗材を用いた。第一の抵抗部材10はリブ7の先端部に形成されるため、第一の抵抗部材10は、幅がリブ7の幅と同じ50μm、長さ900mm、膜厚10μmで形成した。メタルバック6が積層されている部分は低抵抗であるため、実質的に抵抗体として働く長さは450μmである。第二の抵抗部材11は、第一の抵抗体10と同様、体積抵抗が1.0Ω・mの抵抗材を用い、幅700μm、長さ650μm(リブ7の側壁の長さを含む。)、膜厚10μmで形成した。
【0054】
以上のようにして第一の抵抗部材10と第二の抵抗部材11を形成した結果、第一の抵抗部材10の抵抗値は900kΩ、第二の抵抗部材11の抵抗値は93kΩとなった。従って、第2の抵抗部材11の抵抗値は、第1の抵抗部材11の1/10よりも高くなった。画像領域内でのR1の合算抵抗値R1allは90MΩであり、R2よりも十分大きかった。
【0055】
このフェイスプレートを用いた画像表示装置を作成し、内部の真空度を悪化させた状態で耐放電テストを行ったところ、放電時に流れる電流が低減されていることが確認できた。さらに、放電個所に点欠陥も発生せず、放電前の状態を維持することができた。第一の抵抗部材10を部分的に欠損させた状態で画像形成装置を駆動したところ、欠損させた箇所より先の部分でライン欠陥(暗線)は発生せず、目視で確認する上では問題がなかった。画像形成装置を駆動し、所定の画像パターンを表示させて輝度差を測定したところ1%以下となり、目視で確認する上では問題がなかった。
【0056】
(実施例2)
図4に示した構成のフェイスプレートを以下の工程により作製した。なお、以下の説明におけるX方向及びY方向は図4に示すとおりである。
【0057】
洗浄した厚さ1.8mmのガラス基板(旭硝子製PD200)の表面に黒色ペースト(黒色顔料並びにガラスフリットを含有。)を、マトリクス状の開口パターンが形成されるようにスクリーン印刷した。開口パターンは、開口サイズが150μm(X方向)×300μm(Y方向)、X方向ピッチが200μm、Y方向ピッチが600μmとし、X方向に300絵素分、Y方向に100絵素分の開口を形成した。120℃で乾燥後、550℃で焼成して厚さ5μmのブラックマトリクス(不図示)を形成した。
【0058】
次に、複数本のリブ7をストライプ状に形成した。アルミナ粉とガラスフリットと感光性ペーストにより作製された感光性絶縁材料ペーストを、スリットコーターによってブラックマトリクス上に形成した。その後、フォトリソグラフィーによりパターニングを行ない、550℃で焼成した。焼成後のリブの形状は、幅が50μm、高さが100μmであった。
【0059】
次に、共通電極8を形成した。銀粉末及びフリットガラスを含有した低抵抗ペーストを、幅300μmの共通電極8及び高圧導入部9のパターンとなるようにスクリーン印刷した。その後、120℃で10分乾燥させ、共通電極8及び高圧導入部9となる部分を形成した。共通電極8はリブ7を跨ぐように、図3(a)に示す第二の抵抗部材11と同様な断面形状で形成した。なお、後述する工程を経ずに500℃で焼成し長さ600μm分の抵抗値を測定した結果、30mΩであった。
【0060】
次に、図4に示すパターンで第一の抵抗部材10を形成した。リブ7上に酸化ルテニウムの配合された高抵抗ペーストを、焼成後の線幅が50μm、膜厚が10μmとなるようにスクリーン印刷し、120℃で10分乾燥させて、第一の抵抗部材10になる部分を形成した。焼成後の高抵抗ペーストの体積抵抗率は1.0(Ω・m)であった。
【0061】
次に、第二の抵抗部材11を形成した。第一の抵抗部材10と同程度の抵抗となるように調整した酸化ルテニウムの配合された高抵抗ペーストを、幅300μmのパターンでスクリーン印刷し、120℃で10分乾燥させて、第二の抵抗部材11となる部分を作製した。焼成後の高抵抗ペーストの体積抵抗率は1.0(Ω・m)であった。
【0062】
次に、図4に示すパターンで第三の抵抗部材12を形成した。共通電極8よりも高抵抗となるように調整した酸化ルテニウムの配合された高抵抗ペーストを、幅50μm、長さ1mmのパターンでスクリーン印刷し、120℃で10分乾燥させて、第三の抵抗部材12となる部分を作製した。焼成後の高抵抗ペーストの体積抵抗率は5.0(Ω・m)であった。
【0063】
次に、蛍光体層5を形成した。リブ7の間に位置するブラックマトリクスの開口部分に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体層5を形成した。蛍光体としてP22蛍光体(赤:Y22S:Eu、青ZnS:Ag、Al、緑ZnS:Cu、Al)を用い、蛍光体ペーストを所望の個所にスクリーン印刷し、120℃で乾燥させた。
【0064】
次に、メタルバック6を形成した。CRTの分野で公知のアクリルエマルジョンを用いたフィルミングによって中間膜を形成後、メタルマスクを用いて、真空蒸着法にてメタルバックとなるAl膜を厚さ0.1μmで成膜した。その後、450℃で焼成して中間膜を熱分解し、メタルバック6を得た。メタルバック6はブラックマトリクスを覆うように形成され、第一の抵抗部材とのY方向の重なり幅は150μmであった。従って、第一の抵抗部材が形成された寸法は、長さ150μm、幅50μm、厚さ10μmであった。
【0065】
焼成後のフェイスプレート各個所の抵抗値を測定したところ、R1=30kΩ、R1all=30MΩ、R2=10kΩ、R3=10MΩ、であった。
【0066】
このフェイスプレートを用いた画像表示装置を作成し、内部の真空度を悪化させた状態で耐放電テストを行ったところ、放電時に流れる電流が低減されていることが確認できた。さらに、放電個所に点欠陥も発生せず、放電前の状態を維持することができた。第一の抵抗部材10を部分的に欠損させた状態で画像形成装置を駆動したところ、欠損させた箇所より先の部分でライン欠陥(暗線)は発生せず、目視で確認する上では問題がなかった。画像形成装置を駆動し、所定の画像パターンを表示させて輝度差を測定したところ1%以下となり、目視で確認する上では問題がなかった。
【符号の説明】
【0067】
1 フェイスプレート
2 リアプレート
8 共通電極
10 第一の抵抗部材
11 第二の抵抗部材
22 画像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子放出源が形成されたリアプレートと、
画像が表示される矩形形状の画像領域を備えたフェイスプレートであって、該画像領域は、該画像領域の一つの辺と直交するn−1本の仮想線(ここで、nは2以上の自然数。)によってn個に分割された分割領域を有し、各分割領域は前記電子放出源から放出され加速された電子が衝突することで発光する複数の発光部材と、電子を加速するための複数のメタルバックと、を含むフェイスプレートと、を有し、
前記フェイスプレートは、前記画像領域の外を該画像領域の前記一つの辺に沿って延び高圧電源からの給電を受ける共通電極と、該共通電極に接続され前記画像領域を前記一つの辺と直交する方向に横断し、対応する前記分割領域の各メタルバックに接続されたn本の第一の抵抗部材と、前記画像領域の外に、前記画像領域を挟んで前記一つの辺と対向して位置し、一つの前記第一の抵抗部材と他の一つの前記第一の抵抗部材とを接続する第二の抵抗部材と、を有し、
前記第一の抵抗部材の、少なくとも1つの前記発光部材で構成される1画素の長さあたりの平均抵抗値をR1、前記第一の抵抗部材の前記画像領域内における全長分の抵抗値をR1all、前記第二の抵抗部材の抵抗値をR2、としたときに、0.1×R1<R2<R1allの関係を満たしている、画像表示装置。
【請求項2】
前記画像表示装置は線順次駆動され、前記第一の抵抗部材の前記画像領域を横断する方向が、線順次駆動される走査線と直交している、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記フェイスプレートは、前記共通電極と前記第一の抵抗部材との間に第三の抵抗部材を有し、該第三の抵抗部材の抵抗値をR3としたときに、R1<R3<R1allの関係を満たしている、請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
R3>R2の関係を満たしている、請求項3に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−22837(P2012−22837A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158618(P2010−158618)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】