説明

画像補正装置及びそのプログラム

【課題】本発明は、共用ズームレンズに適用可能で、運用が容易な画像補正装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像補正装置4は、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像とから、式(5)で表される特徴点距離lの和が最小となるように、補正係数θと、補正係数a〜cとをズーム値に応じて共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数で算出する補正係数算出手段41と、補正係数θと、補正係数a〜cとを記憶する記憶手段42と、補正係数a〜cと補正係数θとを用いて、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像との位置関係を求める補正手段43と、カラー画像を補正処理の時間だけ遅延させて出力する遅延手段44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズーム値を出力可能な共用ズームレンズを介して可視光波長領域で撮影した可視光画像と、共用ズームレンズを介して不可視光波長領域で撮影した不可視光画像とのずれを補正する画像補正装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラーカメラ、白黒カメラ等の可視光カメラが撮影した可視光画像と、赤外線カメラ、紫外線カメラ等の不可視光カメラが撮影した不可視光画像とを合成することが行われている。このとき、可視光画像と不可視光画像との間にずれが生じることがある。具体的には、例えば、可視光画像と不可視光画像との位置が単純にずれる場合、可視光画像及び不可視光画像が回転してずれる場合、可視光画像及び不可視光画像の部分毎に複雑にずれる場合がある。
【0003】
ここで、ずれを補正するものとして、例えば、非特許文献1に記載の技術が提案されている。この非特許文献1に記載の技術では、被写体の位置と、撮影した画像上での位置と、カメラの位置との関係を補正することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”A Flexible New Technique for Camera Calibration”,Zhengyou Zhang,December 2,1998,Technical Report MSR-TR-98-71,Microsoft Corporation
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術は、非常に高い精度(ずれが非常に小さい)で可視光画像と不可視光画像とを合成させる必要があるテレビ番組の制作等の分野には、その適用が困難である。具体的には、従来技術は、可視光カメラと不可視光カメラとを光学的に共役な位置関係に配置すること、及び、レンズの取り付け精度を確保することが困難である。また、従来技術は、テレビ番組の制作で多用されるズームによってレンズ歪が変化するため、ズームレンズに適用が困難である。
【0006】
また、可視光カメラで可視光画像を撮影し、不可視光カメラで不可視光画像を撮影し、これら画像に対して非特許文献1に記載の技術を適用すれば、それぞれの画像毎に、被写体の位置と画像上での位置との関係を補正することは可能である。しかし、この場合でも、可視光カメラと不可視光カメラとの位置を考慮した補正を行うことができず、テレビ番組の制作等の分野で要求される精度を確保することが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ズームレンズに適用可能で、運用が容易な画像補正装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、補正係数がズーム値に応じて徐々に変化することに着目し、この補正係数をズーム値に応じた2次関数の数式で近似できることを見出し、本願発明を完成させた。具体的には、本願第1発明に係る画像補正装置は、ズーム値を出力可能な共用ズームレンズを介して可視光波長領域で撮影した可視光画像と、共用ズームレンズを介して不可視光波長領域で撮影した不可視光画像とのずれを補正する画像補正装置において、補正係数算出手段と、補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、画像補正装置は、補正係数算出手段によって、所定のパターンを撮影した可視光画像及び不可視光画像と、パターンを撮影したときのズーム値とが入力され、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを算出する。ここで、画像補正装置は、補正係数算出手段によって、パターンを撮影した可視光画像及び不可視光画像から特徴点を検出し、特徴点距離の和が最小となるように、画像の回転ずれを示す補正係数と、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数とを、共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数により算出することを特徴とする。
【0010】
また、画像補正装置は、補正手段によって、被写体を撮影したときのズーム値が入力され、補正係数算出手段が算出した画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを用いて、被写体を撮影した可視光画像と不可視光画像との位置関係を求めて補正する。
【0011】
これによって、画像補正装置は、補正係数算出手段によって、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数を簡易に演算できる。
また、例えば、可視光カメラと不可視光カメラとを新たな場所に配置してテレビ番組の撮影を行う場合、画像補正装置は、その場所で撮影した不可視光画像と不可視光画像とを用いて補正係数を算出すれば良い。このため、画像補正装置は、共用ズームレンズの高い取り付け精度が要求されない。
【0012】
また、本願第2発明に係る画像補正装置は、補正手段が、被写体を撮影したときのズーム値と、補正係数算出手段が算出した画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、補正係数算出手段が算出した画像の回転ずれを示す補正係数とを関数に代入して、可視光画像と不可視光画像との位置関係を求めることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、画像補正装置は、補正手段によって、補正係数を関数に代入するだけの簡易な演算で、可視光画像と不可視光画像との位置関係を求めることができる。
【0014】
また、本願第3発明に係る画像補正プログラムは、ズーム値を出力可能な共用ズームレンズを介して可視光波長領域で撮影した可視光画像と、共用ズームレンズを介して不可視光波長領域で撮影した不可視光画像とのずれを補正する画像補正プログラムにおいて、補正係数算出手段と、補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、画像補正プログラムは、補正係数算出手段によって、所定のパターンを撮影した可視光画像及び不可視光画像と、パターンを撮影したときのズーム値とが入力され、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを算出する。ここで、画像補正プログラムは、補正係数算出手段によって、パターンを撮影した可視光画像及び不可視光画像から特徴点を検出し、特徴点距離の和が最小となるように、画像の回転ずれを示す補正係数と、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数とを、共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数により算出することを特徴とする。
【0016】
また、画像補正プログラムは、補正手段によって、被写体を撮影したときのズーム値が入力され、補正係数算出手段が算出した画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを用いて、被写体を撮影した可視光画像と不可視光画像との位置関係を求めて補正する。
【0017】
これによって、画像補正プログラムは、補正係数算出手段によって、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数を簡易に演算できる。
また、例えば、可視光カメラと不可視光カメラとを新たな場所に配置してテレビ番組の撮影を行う場合、画像補正プログラムは、その場所で撮影した不可視光画像と不可視光画像とを用いて補正係数を算出すれば良い。このため、画像補正プログラムは、共用ズームレンズの高い取り付け精度が要求されない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1,3発明によれば、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数を簡易に演算するので、共用ズームレンズに適用可能である。また、本願第1,3発明によれば、共用ズームレンズの高い取り付け精度が要求されず、運用が容易である。
本願第2発明によれば、簡易な演算で可視光画像と不可視光画像との位置関係を求めることができ、補正処理を高速化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の本実施形態に係る画像補正装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の本実施形態における、被写体の撮影を説明する図である。
【図3】図1の画像合成システムが合成する画像を説明する図である。
【図4】本発明の本実施形態における、パターン画像の第一例を示す図である。
【図5】本発明の本実施形態における、パターン画像の第二例を示す図である。
【図6】図1の画像補正装置4による、補正係数算出処理を示すフローチャートである。
【図7】図1の画像補正装置4による、補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0021】
[画像合成システムの概略]
図1を参照して、本発明の本実施形態における、画像合成システム1の概略について説明する。ここで、画像合成システム1は、例えば、テレビ番組の制作に用いる画像(動画)を合成するものであり、撮影カメラ装置2と、撮影カメラ制御装置3と、画像補正装置4と、CG画像生成装置5と、画像合成装置6とを備える。まず、画像合成システム1は、所定のパターンをカラーカメラ23と赤外線カメラ25とでそれぞれ撮影する(図4,図5参照)。そして、画像合成システム1は、画像補正装置4が、パターンを撮影したカラー画像(可視光画像)と赤外線画像(不可視光画像)とを用いて補正係数を算出する。なお、補正係数の詳細は、後記する。また、図1では、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像との入出力を、破線矢印で図示した。
【0022】
次に、画像合成システム1は、被写体Ob(図2参照)をカラーカメラ23と赤外線カメラ25とでそれぞれ撮影する。ここで、画像合成システム1では、図2に示すように、被写体Obの背後に暗色のスクリーンScを配置し、撮影カメラ装置2の近傍に配置した赤外線ライトLで被写体Obを照らしながら撮影を行う。このスクリーンScは、入射光を赤外線ライトLの方向に反射、言い換えると、赤外線ライトLが照射した赤外線を撮影カメラ装置2に反射する(再帰性反射材)。このため、カラーカメラ23は、図3(a)に示すように、スクリーンScが背景(図3(a)の点打ち部分)となり、被写体Obを写したカラー画像を出力する。一方、赤外線カメラ25は、図3(b)に示すように、スクリーンScが赤外線を反射するため、スクリーンSc部分の輝度が高く、かつ、被写体Obの輝度が低くなるような、被写体Obのシルエットを示す赤外線画像を出力する。
【0023】
また、画像合成システム1は、画像補正装置4が、算出した補正係数を用いて、被写体Obを撮影したカラー画像に対する、被写体Obを撮影した赤外線画像のずれを補正する。そして、画像合成システム1は、CG画像生成装置5で、例えば、月や星のCG画像を生成しておく。さらに、画像合成システム1は、画像合成装置6が、図3(b)の赤外線画像のうちの輝度が高い部分、つまり、スクリーンSc部分を検出して、この部分にCG画像を合成する。一方、画像合成システム1は、画像合成装置6が、図3(b)の赤外線画像のうちの輝度が低い部分、つまり、被写体Obを含む部分には、図3(a)の被写体Obを写したカラー画像を合成する。従って、画像合成システム1は、画像合成装置6が、図3(c)に示すように、月や星の背景と被写体Obとを合成したCG合成画像を出力する。このとき、画像合成システム1は、図3(a)のカラー画像と、図3(b)の赤外線映像とにずれがないため、共用ズームレンズ21を用いる場合であってもCG合成を容易に行うことができる。
【0024】
なお、CG合成で用いられるクロマキー処理は、青色、緑色等の単色のスクリーンを配置し、このスクリーンに均一に照明光を照射する必要がある。このため、クロマキー処理では、照明光の拘束条件が発生することや、スクリーンに照射した照明光が被写体に反射されて被写体がスクリーンの色(例えば、青色又は緑色)に着色されて、テレビ番組の制作者が意図する画像をCG合成できないことがある。このような場合、画像合成システム1を用いてCG合成を行うと良い。
【0025】
以下、画像合成システム1を構成する各装置について簡単に説明する。
図1の撮影カメラ装置2は、被写体Ob及びパターンを、カラーカメラ23と赤外線カメラ25とで撮影するものであり、共用ズームレンズ21と、カラーカメラ23と、赤外線カメラ25と、ホットミラー27とを備える。
【0026】
共用ズームレンズ21は、可視光波長領域及び赤外線波長領域での撮影が可能なズームレンズである。ここで、共用ズームレンズ21は、ズーム値、フォーカス量及びアイリス量をロータリエンコーダ(不図示)で測定し、レンズデータとして出力する。また、共用ズームレンズ21は、撮影カメラ制御装置3からのレンズ制御信号に基づいてレンズ駆動モータ(不図示)を駆動して、ズーム値、フォーカス量及びアイリス量を制御できる。
【0027】
なお、可視光波長領域とは、一般的な放送用カメラが感度を有する波長領域(例えば、波長が400nm〜700nm)である。また、不可視光波長領域とは、この放送用カメラが感度を有さない波長領域であり、例えば、赤外線波長領域及び紫外線波長領域を含む。ここで、赤外線画像を用いた画像合成手法では、軸上色収差の影響を少なくするため、可視光波長領域に近い760nm程度の赤外線を多用する。従って、赤外線波長領域は、例えば、この760nmの波長を含む、700nm〜1000μmの波長領域である。また、この紫外線波長領域は、例えば、10nm〜400nmの波長領域である。
【0028】
カラーカメラ23は、共用ズームレンズ21を介して、可視光波長領域で被写体Ob及びパターンを撮影するビデオカメラ、CCDカメラ又はCMOSカメラである。ここで、カラーカメラ23は、パターンを撮影したカラー画像を撮影カメラ制御装置3に出力する。また、被写体Obを撮影したカラー画像を画像補正装置4に出力する。なお、撮影カメラ装置2は、カラーカメラ23の代わりに、モノクロ画像を撮影するモノクロカメラ(不図示)を備えても良い。
【0029】
赤外線カメラ25は、共用ズームレンズ21を介して、赤外線波長領域で被写体Ob及びパターンを撮影するカメラである。また、赤外線カメラ25は、赤外線波長領域で撮影した画像を、例えば、赤外線の波長が短い側を白色、及び、赤外線の波長が長い側を黒色といったように肉眼で認識できる画像に変換する。ここで、赤外線カメラ25は、パターンを撮影した赤外線画像を撮影カメラ制御装置3に出力する。また、被写体Obを撮影した赤外線画像を画像補正装置4に出力する。なお、撮影カメラ装置2は、赤外線カメラ25の代わりに、紫外線画像を撮影する紫外線カメラ(不図示)を備えても良い。
【0030】
ホットミラー27は、赤外線を赤外線カメラ25に反射すると共に、可視光をカラーカメラ23に透過させる光学素子である。このような光学素子としては、ホットミラー27の他、ハーフミラー又はプリズムがある。
【0031】
撮影カメラ制御装置3は、レバー、ボタン等の操作手段(不図示)を備え、カメラマンの操作に応じてレンズ制御信号を生成し、撮影カメラ装置2に出力するものである。また、撮影カメラ制御装置3は、撮影カメラ装置2からのレンズデータに含まれるズーム値と、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像とを、画像補正装置4に出力する。
【0032】
画像補正装置4は、被写体Obを撮影したカラー画像を基準として、被写体Obを撮影した赤外線画像のずれを補正するものである。ここで、画像補正装置4は、被写体Obを撮影したカラー画像と、ずれを補正した赤外線画像とを画像合成装置6に出力する。なお、画像補正装置4の詳細は、後記する。
【0033】
CG画像生成装置5は、例えば、オペレータの指令によって、月や星のCG画像を生成するコンピュータである。また、CG画像生成装置5は、生成したCG画像を画像合成装置6に出力する。
【0034】
画像合成装置6は、被写体Obを撮影したカラー画像と、ずれを補正した赤外線画像と、CG画像生成装置5が生成したCG画像とをCG合成するものである。なお、CG合成の詳細は、前記したとおりなので省略する。
【0035】
(第一実施形態)
[画像補正装置の構成]
以下、図1を参照して、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4の構成について説明する。図1に示すように、画像補正装置4は、補正係数算出手段41と、記憶手段42と、補正手段43と、遅延手段44とを備える。
【0036】
補正係数算出手段41は、パターンを撮影したカラー画像及び赤外線画像と、パターンを撮影したときのズーム値とが撮影カメラ制御装置3から入力され、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数a〜cと、画像の回転ずれを示す補正係数θとを算出するものである。
【0037】
ここで、予め、撮影カメラ装置2は、共用ズームレンズ21のズームを所定間隔で変えながらパターンを撮影しておく。このとき、撮影カメラ装置2は、ずれが大きくなるズーム値近傍では、このズーム間隔を短くしてパターンを撮影することが好ましい。つまり、補正係数算出手段41は、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像との対が、この対同士のズーム値が異なるように複数入力される。
【0038】
また、補正係数算出手段41は、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像とから、それぞれ、特徴点を検出する。以下、特徴点の検出について、第一例及び第二例をあげて説明する。
【0039】
<特徴点の検出:第一例>
この第一例は、図4に示すように、パターンが市松模様をパターンとしたパターン画像Ptから特徴点を検出する手法である。このとき、補正係数算出手段41は、市松模様のパターン画像Ptに、Moravecコーナー検出、Harris−Stephensコーナー検出等のコーナー検出を適用し、特徴点を検出する。ここでは、補正係数算出手段41は、図4の市松模様から、各四角形の4隅を特徴点として検出する。
【0040】
このようなコーナー検出を用いると、補正係数算出手段41は、特徴点を検出する演算量を低減できるという利点がある。一方、共用ズームレンズ21をズームしたとき(拡大撮影したとき)、又は、カラーカメラ23や赤外線カメラ25の解像度によっては、図4に示すように、パターン画像Ptにおいて、黒色四角形の4隅がつぶれてしまい、特徴点を検出できないことがある(図4拡大部分)。このような場合、以下の第二例を用いる。
【0041】
<特徴点の検出:第二例>
この第二例は、図5に示すように、白地に黒丸同士が重ならないように配置した水玉模様をパターンとしたパターン画像Ptから特徴点を検出する手法である。このとき、補正係数算出手段41は、水玉模様のパターン画像Ptから、黒丸領域(黒色領域)を抽出し、黒丸領域毎の重心位置を特徴点として検出する。この第二例の検出手法は、特徴点の検出精度が高いという利点がある。
【0042】
なお、第一例及び第二例において、補正係数算出手段41は、パターンを撮影したカラー画像(パターン画像Pt)と、パターンを撮影した赤外線画像(パターン画像Pt)との両方から、特徴点を検出することは言うまでもない。
【0043】
なお、前記した第一例及び第二例の何れを用いても、カラー画像と赤外線画像とのずれ(つまり、算出する補正係数)は、同じになる。従って、画像補正装置4は、例えば、オペレータからの指令に応じて、第一例又は第二例の何れか一方の手法を選択し、特徴点を検出すれば良い。
【0044】
図1に戻り、画像補正装置4の構成について説明を続ける。
また、補正係数算出手段41は、下記式(5)で表される特徴点距離lの和が最小となるように、補正係数θと、補正係数a〜cとを下記式(1)〜下記式(4)で算出する。ここで、特徴点距離lは、パターンを撮影したカラー画像と赤外線画像とで対応する特徴点、つまり、同一位置から検出された検出点の対の距離(座標のずれ)である。
【0045】
但し、式(1)〜式(5)では、a,b,c,a,b,c,a,b,cは画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数であり、θは画像の回転ずれ示す補正係数であり、Sはスケール値であり、Zはズーム値であり、Cは画像中心の水平方向のずれであり、Cは画像中心の垂直方向のずれであり、Vは可視光画像の水平方向の位置(座標)であり、Vは可視光画像の垂直方向の位置(座標)であり、Iは不可視光画像の水平方向の位置(座標)であり、Iは不可視光画像の垂直方向の位置(座標)である。
【0046】
また、式(5)では、iは式(1)にVを代入して算出した不可視光画像の水平方向の位置であり、iは式(1)にVを代入して算出した不可視光画像の垂直方向の位置である。
【0047】
【数1】

【0048】
ここで、式(5)で表される特徴点距離lは、ズーム値Z毎に算出するものである。従って、補正係数算出手段41は、ズーム値毎の特徴点距離lの総和が最小となる補正係数a〜cを算出すれば良い。例えば、補正係数算出手段41は、レーベンバーグ−マーカート法、ガウス−ニュートン法等の最適化手法を用いて、ズーム値Z毎の特徴点距離lの総和が最小となる補正係数θと補正係数a〜cとを算出する。そして、補正係数算出手段41は、ズーム値Zに対応付けて、補正係数a〜cと補正係数θとを、記憶手段42に書き込む。
【0049】
記憶手段42は、補正係数a〜cと補正係数θとをズーム値Zに対応付けて記憶するハードディスク、メモリ等の記憶手段である。なお、本実施例では、記憶手段42を備えることとして説明したが、画像補正装置4は、記憶手段42を備えなくとも良い。この場合、補正係数算出手段41は、ズーム値Zに対応付けた補正係数a〜cと補正係数θとを、補正手段43に出力する。
【0050】
補正手段43は、撮影カメラ制御装置3から被写体Obを撮影したときのズーム値Z´が入力され、補正係数算出手段41が算出した補正係数a〜cと補正係数θとを用いて、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像との位置関係を求めるものである。まず、補正手段43は、記憶手段42を参照し、ズーム値Z´と同一のズーム値Zに対応した補正係数a〜cと補正係数θとを読み出す。ここで、このズーム値Zに対応する補正係数a〜cと補正係数θとが記憶手段42に記憶されていない場合、補正手段43は、ズーム値Z´に最も近いズーム値Zに対応した補正係数a〜cと補正係数θとを読み出す。
【0051】
また、補正手段43は、ズーム値Z´をズーム値Zとして式(3)〜式(4)に代入し、補正係数a〜cと補正係数θとを式(2)〜式(4)に代入し、スケール値Sと画像中心の位置ずれC,Cとを算出する。そして、補正手段43は、算出したスケール値Sと、算出した画像中心の位置ずれC,Cと、補正係数算出手段41が算出した示す補正係数θとを式(1)に代入して、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像とのずれを算出する。言い換えると、式(1)は、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像との位置関係(つまり、座標の変換式)を示す。
【0052】
また、補正手段43は、式(1)より、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像との位置関係が判ったため、撮影カメラ装置2から入力された赤外線画像のずれを補正する。このとき、補正手段43は、赤外線画像においてずれを補正したい画素の座標IC,ICを、式(1)のV,Vにそれぞれ代入する。さらに、補正手段43は、被写体Obを撮影した赤外線画像において、式(1)に、スケール値Sと画像中心の位置ずれC,Cと補正係数θと代入して算出したI,Iが示す画素の画素値を取得する。その後、補正手段43は、座標I,Iにおける画素値を、画素IC,ICの画素値とする。
【0053】
このとき、補正手段43は、例えば、3タップのランチョス(Lanczos)法によって、カラー画像に対して赤外線画像のずれをなくすために、赤外線画像に対して拡大、縮小等の画像処理を施す。この他、補正手段43は、バイリニア法、ニアレストネイバー法又はバイキュービック法を用いても良い。そして、補正手段43は、補正した赤外線画像を画像合成装置6に出力する。
【0054】
なお、一般的には、各画素が格子状に配列され、各画素の座標が整数で表現される。一方、式(1)左辺の座標I,Iは、常に画像のサンプリング位置になるとは限らず、小数を含めて表現される。この場合、補正手段43は、画素の内挿処理を行っても良い。
【0055】
遅延手段44は、被写体Obを撮影したカラー画像が入力され、このカラー画像を蓄積するフレームメモリである。また、遅延手段44は、補正手段43の補正処理の時間だけ遅延させて、蓄積したカラー画像を画像合成装置6に出力する。
【0056】
[共用ズームレンズのレンズ歪のモデル化]
以下、本発明における、共用ズームレンズのレンズ歪のモデル化について説明する。
本発明のように、カラーカメラ23(可視光カメラ)と赤外線カメラ25(不可視光カメラ)とで、共用ズームレンズ21を用いる場合、以下の理由でカラー画像と赤外線画像との間にずれが生じる。この第一の理由は、共用ズームレンズ21、ホットミラー27等の取り付け精度に起因する。また、第二の理由は、共用ズームレンズ21の波長特性から、倍率色収差が生じるためである。
【0057】
まず、これらを理由とする画像の変位量は、カラー画像と赤外線画像との画像中心の位置ずれC,Cと、共用ズームレンズ21の光軸に対する垂直方向の回転ずれθとおく。ここで、本願発明者らの実験により、例えば、可視光を基準に設計した共用レンズであれば、可視光波長領域に対して、赤外線波長領域や紫外線波長領域での倍率色収差が、単純なスケール値に対応することが判った。このことから、式(1)が成立する。なお、式(1)は、極度の広角レンズには当てはまらない場合がある。
【0058】
【数2】

【0059】
さらに、本願発明者らの実験により、共用ズームレンズ21の場合、撮影面に対して共用ズームレンズ21の光軸が正確に垂直になっていないことから、前記した補正係数a〜cが、ズーム値Zに応じて、徐々に変化することも判った。様々な共用ズームレンズ21を用いて実験した結果、前記した補正係数a〜cが、ズーム値Zに応じた2次関数の数式で近似できることを見出した。このことから、式(2)〜式(4)が成立する。なお、式(1)〜式(4)が、請求項に記載の共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数である。
【0060】
【数3】

【0061】
[画像補正装置の動作:補正係数算出処理]
以下、図6を参照し、図1の画像補正装置4による補正係数算出処理について説明する(適宜図1参照)。まず、画像補正装置4は、補正係数算出手段41に、パターンを撮影したカラー画像(パターン画像Pt)と、パターンを撮影した赤外線画像(パターン画像Pt)とを入力する(ステップS1)。そして、画像補正装置4は、補正係数算出手段41に、このパターンを撮影したときのズーム値Zを入力する(ステップS2)。
【0062】
ステップS2の処理に続いて、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、ステップS1で入力されたカラー画像と、パターンを撮影した赤外線画像とのそれぞれから、例えば、コーナー検出により特徴点を検出する(ステップS3)。
【0063】
ステップS3の処理に続いて、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、式(5)で表される特徴点距離lの和が最小となるように、補正係数θと、補正係数a〜cとを式(1)〜式(4)で算出する。ここで、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、例えば、レーベンバーグ−マーカート法、ガウス−ニュートン法等の最適化手法を用いて、特徴点距離lの総和が最小となる補正係数θと補正係数a〜cとを算出する(ステップS4)。
【0064】
ステップS4の処理に続いて、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、ステップS4で算出した補正係数θと補正係数a〜cとを、ステップS2で入力されたズーム値Zに対応付けて記憶手段42に書き込む(ステップS5)。
【0065】
ここで、例えば、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、ステップS1〜S5の動作を繰り返し行い、異なるズーム値Zで撮影されたパターンを撮影したカラー画像と赤外線画像とから、補正係数を算出する。このとき、画像補正装置4は、補正係数算出手段41によって、ずれが大きくなるズーム値近傍、及び、撮影時に多用するズーム値近傍で、補正係数を算出しておくことが好ましい。これによって、画像補正装置4は、ズームによる共用ズームレンズ21のレンズ歪の変化を補正係数により正確に反映でき、ずれの補正精度が向上する。
【0066】
[画像補正装置の動作:補正処理]
以下、図7を参照し、図1の画像補正装置4による補正処理について説明する(適宜図1参照)。まず、画像補正装置4は、補正手段43に、被写体Obを撮影したカラー画像と、被写体Obを撮影した赤外線画像とを入力する(ステップS11)。また、画像補正装置4は、補正手段43に、被写体Obを撮影したときのズーム値Z´を入力する(ステップS12)。
【0067】
ステップS12の処理に続いて、画像補正装置4は、補正手段43によって、記憶手段42から、ズーム値Z´に対応する補正係数a〜cと補正係数θと読み出す(ステップS13)。
【0068】
ステップS13の処理に続いて、画像補正装置4は、補正手段43によって、ズーム値Z´をズーム値Zとして式(3)〜式(4)に代入し、補正係数a〜cと補正係数θとを式(2)〜式(4)に代入し、スケール値Sと画像中心の位置ずれC,Cとを算出する(ステップS14)。
【0069】
ステップS14の処理に続いて、画像補正装置4は、補正手段43によって、ステップS14で算出したスケール値Sと画像中心の位置ずれC,Cと、ステップS13で読み出した補正係数θとを式(1)に代入して、被写体Obを撮影したカラー画像と赤外線画像との位置関係を求める(ステップS15)。
【0070】
以上のように、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4は、画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数a〜cを、式(1)〜式(5)を用いて簡易に演算できるので、ズームレンズに適用可能である。また、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4は、撮影カメラ装置2を新たな場所に配置してテレビ番組の撮影を行う場合、その場所で撮影したカラー画像と赤外線画像とを用いて補正係数a〜cと補正係数θとを算出すれば良い。このため、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4は、ズームレンズの高い取り付け精度が要求されない。さらに、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4は、撮影中にズームを行った場合でも、カラー画像と赤外線画像とのずれを画素単位の精度で補正することができ、テレビ番組の制作等の非常に高い精度が要求される分野でも実用に十分耐えられる。
【0071】
また、本発明の本実施形態に係る画像補正装置4は、その用途が制限されないが、特に、クロマキー処理が難しい場合、図2のスクリーンScのような再帰性反射材を用いる場合、又は、カラー画像に含まれる被写体に関する情報を不可視光だけに反応するマーカで取得する場合に有効である。
【0072】
また、例えば、本発明に係る画像補正装置4は、赤外線サーモグラフィカメラで人物を撮影したサーモグラフィ画像と、カラー画像とのずれを補正する。そして、画像合成装置6が、カラー画像の背景部分とサーモグラフィ画像とを合成しても良い。このように、本発明に係る画像補正装置4は、カラーの実写背景に被写体の体温表示が合成された画像を生成する場合にも用いることができる。
【0073】
本発明の本実施形態では、画像補正装置4を独立した装置として説明したが、これに限定されない。本発明では、一般的なコンピュータの演算装置、記憶装置等のハードウェア資源を、前記した各手段として協調動作させるプログラムで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布しても良く、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 画像合成システム
2 撮影カメラ装置
21 共用ズームレンズ
23 カラーカメラ
25 赤外線カメラ
27 ホットミラー
3 撮影カメラ制御装置
4 画像補正装置
41 補正係数算出手段
42 記憶手段
43 補正手段
44 遅延手段
5 CG画像生成装置
6 画像合成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム値を出力可能な共用ズームレンズを介して可視光波長領域で撮影した可視光画像と、当該共用ズームレンズを介して不可視光波長領域で撮影した不可視光画像とのずれを補正する画像補正装置において、
所定のパターンを撮影した前記可視光画像及び前記不可視光画像と、前記パターンを撮影したときの前記ズーム値とが入力され、画像中心の位置ずれを前記ズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを算出する補正係数算出手段と、
被写体を撮影したときの前記ズーム値が入力され、前記補正係数算出手段が算出した前記画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、前記画像の回転ずれを示す補正係数とを用いて、被写体を撮影した前記可視光画像と前記不可視光画像との位置関係を求めて補正する補正手段と、を備え、
前記補正係数算出手段は、前記パターンを撮影した前記可視光画像及び前記不可視光画像から特徴点を検出し、当該特徴点距離の和が最小となるように、前記画像の回転ずれを示す補正係数と、前記画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数とを、前記共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数により算出することを特徴とする画像補正装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記被写体を撮影したときの前記ズーム値と、前記補正係数算出手段が算出した前記画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、前記補正係数算出手段が算出した前記画像の回転ずれを示す補正係数とを前記関数に代入して、前記可視光画像と前記不可視光画像との位置関係を求めることを特徴とする請求項1に記載の画像補正装置。
【請求項3】
ズーム値を出力可能な共用ズームレンズを介して可視光波長領域で撮影した可視光画像と、当該共用ズームレンズを介して不可視光波長領域で撮影した不可視光画像とのずれを補正するために、コンピュータを、
所定のパターンを撮影した前記可視光画像及び前記不可視光画像と、前記パターンを撮影したときの前記ズーム値とが入力され、画像中心の位置ずれを前記ズーム値に応じて示す補正係数と、画像の回転ずれを示す補正係数とを算出する補正係数算出手段と、
被写体を撮影したときの前記ズーム値が入力され、前記補正係数算出手段が算出した前記画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数と、前記画像の回転ずれを示す補正係数とを用いて、被写体を撮影した前記可視光画像と前記不可視光画像との位置関係を求めて補正する補正手段、として機能させ、
前記補正係数算出手段は、前記パターンを撮影した前記可視光画像及び前記不可視光画像から特徴点を検出し、当該特徴点距離の和が最小となるように、前記画像の回転ずれを示す補正係数と、前記画像中心の位置ずれをズーム値に応じて示す補正係数とを、前記共用ズームレンズのレンズ歪をモデル化した関数により算出することを特徴とする画像補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−272957(P2010−272957A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121014(P2009−121014)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】