説明

画像記録装置、並びに、記録濃度補正方法および吐出タイミング補正方法

【課題】交換ヘッドにおける記録濃度の補正作業を簡素化する。
【解決手段】画像記録装置1は、インクを吐出するヘッド214、記録媒体を移動する移動機構22およびこれらを制御する制御部3を備える。制御部3は情報記憶部103、変換部42および補正部5を備える。変換部42は、入力画像データを画像の記録に適した変換画像データへと変換する。情報記憶部103は、ヘッド214毎かつ記録媒体の種類毎の入力画像データと変換画像データとの関係を示すLUTを記憶する。補正部5は、代表記録媒体上に記録された参照画像に従って決定された補正量に基づいて、代表記録媒体に関するLUTを更新し、さらに、他の種類の記録媒体に関するLUTも更新する。補正部5が設けられることにより、記録濃度の補正作業が簡素化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェットプリンタ等の画像記録装置では、記録位置のずれを補正する機能を有するものがある。例えば、特許文献1に開示される記録システムは、複数の記録ユニットおよび記録媒体を搬送する搬送装置を備え、各記録ユニットは、CMYKの各色のインクを吐出する複数の記録ヘッドを備える。搬送方向に沿う縦方向における記録ヘッド間の記録のずれを調整する際には、基準ヘッドにより、搬送方向に直交する横方向に延びる複数の横バーが縦方向に記録される。同時に、比較ヘッドが、記録タイミングを単位量だけずらしつつ複数の横バーを上記複数の横バーに隣接して記録する。基準ヘッドによる横バーと比較ヘッドによる横バーとが縦方向に一致する位置を確認することにより、比較ヘッドの記録タイミングが調整される。
【0003】
横方向における記録ヘッド間の記録のずれを調整する際には、基準ヘッドにより、横方向に配列された複数の縦バーが記録される。比較ヘッドにより、記録タイミングを単位量だけずらしつつ上記複数の縦バーの下側に複数の縦バーが記録される。基準ヘッドによる縦バーと比較ヘッドによる縦バーとが横方向に一致する位置を確認することにより、比較ヘッドの記録タイミングが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−1053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録媒体がヘッドの下方を1回通過するのみで画像の記録を行う、いわゆる、ワンパス方式のインクジェットプリンタの場合、ヘッド間における画像の濃度の相違や吐出タイミングのずれを高精度に補正する必要がある。
【0006】
したがって、このような画像記録装置では、ヘッドの故障等により一部のヘッドが交換された場合、表面特性や厚さが異なる記録媒体への画像記録が行われる毎に、交換されたヘッドについての記録濃度の補正や吐出タイミングの補正が必要となる。その結果、補正作業が煩雑となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、交換されたヘッドによる記録濃度の補正作業および吐出タイミング情報の補正作業を簡素化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、記録媒体上に画像を記録する画像記録装置であって、記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部とを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能であり、前記制御部が、入力画像データが示す画素値である入力画素値と、該入力画素値に対応して前記複数のヘッドのそれぞれに入力される信号の生成に用いられる値との関係を示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の変換情報を記憶する記憶部と、各ヘッドに対応付けられた変換情報を用いて入力画像データの画素値を変換する変換部と、少なくとも1つの交換されたヘッドにより、複数の入力画素値にそれぞれ対応する複数の参照画像を代表記録媒体に記録させる参照画像記録制御部と、前記複数のヘッドのうち前記交換されたヘッドを示す交換ヘッド情報を受け付ける交換ヘッド受付部と、記録された前記複数の参照画像に従って決定された、前記交換されたヘッドに対応する変換情報に関する補正量が入力され、前記交換ヘッド情報および前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドに対応する複数の変換情報を更新する変換情報更新部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、記録された前記複数の参照画像を撮像し、撮像データを取得するスキャナをさらに備え、前記制御部が、前記交換ヘッド情報に従って、前記撮像データから前記交換されたヘッドの前記複数の入力画素値に対応する複数の記録濃度を取得し、前記複数の記録濃度に基づいて前記交換されたヘッドに対応する前記変換情報の前記補正量を求め、前記補正量を前記変換情報更新部に入力する補正量取得部をさらに備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置であって、前記複数の変換情報のそれぞれが、ルックアップテーブルである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置であって、前記複数の変換情報のそれぞれが、入力画素値を変数とする関数である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、記録媒体上に画像を記録する画像記録装置であって、記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部とを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能であり、前記制御部が、前記複数のヘッドのそれぞれの吐出タイミングを示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の吐出タイミング情報を記憶する記憶部と、少なくとも1つの交換されたヘッドおよび交換されていないヘッドを含む2以上のヘッドにより、参照画像を代表記録媒体に記録させる参照画像記録制御部と、前記複数のヘッドのうち前記交換されたヘッドを示す交換ヘッド情報を受け付ける交換ヘッド受付部と、記録された前記参照画像に従って決定された、前記交換されたヘッドに対応する吐出タイミング情報に関する補正量が入力され、前記交換ヘッド情報および前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドに対応する複数の吐出タイミング情報を更新する情報更新部とを備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像記録装置であって、記録された前記参照画像を撮像し、撮像データを取得するスキャナをさらに備え、前記制御部が、前記交換ヘッド情報に従って、前記撮像データから前記2以上のヘッドの間における記録ずれ量を取得し、前記記録ずれ量に基づいて前記交換されたヘッドに対応する前記吐出タイミング情報の前記補正量を求め、前記補正量を前記情報更新部に入力する補正量取得部をさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部とを備え、前記制御部が、入力画像データが示す画素値である入力画素値と、該入力画素値に対応して前記複数のヘッドのそれぞれに入力される信号の生成に用いられる値との関係を示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の変換情報を記憶する記憶部を備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能である、画像記録装置において、交換されたヘッドによる記録濃度を補正する記録濃度補正方法であって、a)少なくとも1つの前記交換されたヘッドにより、複数の入力画素値にそれぞれ対応する複数の参照画像を代表記録媒体に記録する工程と、b)記録された前記複数の参照画像に従って、前記交換されたヘッドに対応する変換情報の補正量を決定する工程と、c)前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドの複数の変換情報を更新する工程とを備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部とを備え、前記制御部が、前記複数のヘッドのそれぞれの吐出タイミングを示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の吐出タイミング情報を記憶する記憶部を備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能である、画像記録装置において、交換されたヘッドによる吐出タイミングを補正する吐出タイミング補正方法であって、a)少なくとも1つの交換されたヘッドおよび交換されていないヘッドを含む2以上のヘッドにより、参照画像を代表記録媒体に記録する工程と、b)記録された前記参照画像に従って、前記交換されたヘッドに対応する吐出タイミング情報の補正量を決定する工程と、c)前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドの複数の吐出タイミング情報を更新する工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および7の発明によれば、交換されたヘッドによる記録濃度の補正作業を簡素化することができる。請求項2の発明によれば、記録濃度の補正作業をより簡素化することができ、請求項4の発明によれば、情報記憶部の記憶容量を抑えることができる。
【0017】
請求項5および8の発明によれば、交換されたヘッドにおける吐出タイミング情報の補正作業を簡素化することができる。請求項6の発明によれば、吐出タイミング情報の補正作業をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像記録装置を示す図である。
【図2】ヘッドの底面図である。
【図3】制御部の機能構成を示す図である。
【図4】情報記憶部を示す図である。
【図5】ヘッドおよび記録媒体を示す図である。
【図6】補正部の機能構成を示す図である。
【図7】画像の記録の流れを示す図である。
【図8】変換曲線を示す図である。
【図9】元画像データおよび閾値マトリクスを抽象的に示す図である。
【図10】変換情報を更新する流れを示す図である。
【図11】変換情報を更新する流れを示す図である。
【図12】参照画像を示す図である。
【図13】参照画像を示す図である。
【図14】変換曲線を示す図である。
【図15】吐出タイミング情報を更新する流れを示す図である。
【図16】吐出タイミング情報を更新する流れを示す図である。
【図17】入力画像を示す図である。
【図18】参照画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るインクジェット方式の画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、記録媒体9上にカラーの画像を記録するカラープリンタである。本実施の形態では、記録媒体9としてコート紙や上質紙等の記録紙が使用される。画像記録装置1は、複数の記録媒体9上に画像を順次記録する枚様式の装置である。
【0020】
画像記録装置1は、CMYKのインクを吐出する記録ユニット21、移動機構22、供給部23、回収部24、スキャナ25、および、これらの構成を制御する制御部を備える。記録ユニット21は、インクの微小液滴を記録媒体9に向けて吐出する。移動機構22は、図1中の(+Y)方向に記録媒体9を記録ユニット21に対して相対的に移動する。供給部23は、複数の記録媒体9を保持するとともに複数の記録媒体9を移動機構22に順次供給する。回収部24は、画像が記録された記録媒体9を回収する。スキャナ25は、記録ユニット21の(+Y)側に配置される。
【0021】
画像記録装置1では、記録媒体9の(+Y)方向への相対移動に同期して、記録ユニット21からのインクの吐出が、制御部により制御されることにより、記録媒体9上に画像が記録される。なお、図1中のX方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直であり、Z方向が上下方向に対応する。以下の説明では、(+Y)方向を「移動方向」という。記録媒体9はX方向およびY方向に平行な姿勢にて搬送される。
【0022】
移動機構22は、2個のベルトローラ222、2個のベルトローラ222に掛けられたベルト223、複数のテーブル221、および、リニアモータ機構224を備える。ベルトローラ222は、記録媒体9の移動方向に沿って配列されるとともに図示省略のモータに接続される。複数のテーブル221は、ベルト223上に取り付けられる。移動機構22では、ベルトローラ222が反時計回りに回転することにより、テーブル221が周回軌道に沿って高速にて移動する。画像の記録時には、1枚の記録媒体9を保持したテーブル221がベルト223から取り外され、リニアモータ機構224により精度よく移動方向に移動する。そして、画像の記録が終了すると、テーブル221はベルト223に再度取り付けられる。
【0023】
記録ユニット21は、前処理部212、CMYKのインクを吐出する複数の記録部211、および、複数のヒータ213を備える。前処理部212は、必要に応じて、画像が記録される前の記録媒体9に透明な前処理剤を塗布する。ヒータ213は、記録媒体9に熱風を吹き付けることにより、記録媒体9上のインクを乾燥させる。
【0024】
図2は、記録部211の底面図である。記録部211には、記録媒体9の幅方向、すなわち、移動方向に垂直かつ記録媒体9の記録面に平行な方向であるX方向に複数のヘッド214が千鳥状に配列される。以下、X方向を「配列方向」と呼ぶ。複数のヘッド214のそれぞれは、新たなヘッドと個別に交換可能である。各ヘッド214の底面には、それぞれがインクの微小液滴を記録媒体9に向けて(図1中の(−Z)方向に)吐出する複数の吐出口215が設けられる。なお、図2では吐出口215の配列を簡略化して示しており、実際には、多数(例えば、1つのヘッド214に720個)の吐出口が配列される。画像記録装置により記録される画像の解像度は、例えば、720dpiである。ヘッド214では、圧電素子により吐出口215からの微小液滴の吐出が実現されるが、他の手法により微小液滴を吐出するヘッドが採用されてもよい。
【0025】
図1に示す前処理部212および記録部211は、配列方向に関して記録媒体9上の印刷領域の全体に亘って設けられており、移動機構22による記録媒体9のヘッド214に対する1回の相対移動により(すなわち、記録媒体9が移動方向へと移動してヘッド214の下方を1回通過するのみで)、記録媒体9への網点画像の記録が完了する(いわゆる、ワンパス印刷が行われる)。
【0026】
図3は、画像記録装置1の機能構成を示すブロック図である。制御部3は、本体制御部10および外部制御部11を備える。外部制御部11は、通常のコンピュータであり、装置本体の内部に設けられてもよい。本体制御部10は、移動制御部101、吐出制御部102、演算部4、情報記憶部103および補正部5を備える。
【0027】
移動制御部101は、移動機構22による記録媒体9のヘッド214に対する相対移動を制御する。吐出制御部102は、記録媒体9の相対移動に同期してヘッド214からのインクの吐出を制御する。演算部4は、画像メモリ41、変換部42、複数のマトリクス記憶部43および比較器44(ハーフトーン化回路)を備える。画像メモリ41は、外部制御部11から入力される入力画像のデータ931(以下、「入力画像データ」と呼ぶ。)を記憶する。変換部42は、入力画像データ931の画素値を画像の記録に適した画像値へと変換する。以下、変換された画素値により構成される画像データを「変換画像データ」と呼ぶ。
【0028】
マトリクス記憶部43は、複数の色成分について閾値マトリクスをそれぞれ記憶する。閾値マトリクスは、複数の閾値の2次元配列にて構成される。なお、マトリクス記憶部43は、SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。比較器44では、変換画像データと閾値マトリクスとが色成分毎に比較されることにより、各ヘッド214からのインクの吐出を制御する2値の網点画像データが成される。変換部42および比較器44はソフトウェアにて実現されてもよい。網点画像データは、吐出制御部102に送られ、吐出制御部102から各ヘッド214にインクの吐出を制御する信号が送信される。
【0029】
情報記憶部103は、ヘッド214毎かつ記録媒体の種類毎に入力画像データ931の画素値と変換画像データの画素値との関係を示す変換情報であるルックアップテーブル(以下、「LUT」と呼ぶ。)、および、各ヘッド214からのインクの吐出タイミングを示す吐出タイミング情報を記憶する。ここで、記録媒体の種類とは、記録媒体の表面特性と記録媒体の厚さとを含む種類を指す。
【0030】
図4は、情報記憶部103に記憶されるLUT61および吐出タイミング情報62を示す図である。LUT61および吐出タイミング情報62は、情報記憶部103において、記録媒体の種類に応じて複数のグループに分けられる。本実施の形態では、LUT61および吐出タイミング情報62は、まず、表面特性が異なる記録媒体毎にグループ化され、さらに、各グループは、記録媒体の厚さ毎に小グループに分けられる。各小グループには、各ヘッド214に対応付けられたヘッド番号、並びに、ヘッド番号毎に割り当てられたLUT61および吐出タイミング情報62が含まれる。
【0031】
ここで、厚さが異なる記録媒体9間に生じる吐出タイミングのずれについて説明する。図5は、ヘッド214および厚さが異なる2種類の記録媒体9a,9bを示す図である。実線にて記録媒体9aの表面の高さを示し、二点鎖線にて他の記録媒体9bの表面の高さを示している。図5では、記録媒体9a,9bの表面の高さの差dHを誇張して示している。仮に、2つの記録媒体9a,9bが同じ移動速度にて同時にヘッド214の下方を通過したとすると、表面の高さが高い記録媒体9bには、表面の高さが低い記録媒体9aよりもインクの微小液滴216が早く着弾する。その結果、移動方向に距離dLだけ画像の記録ずれが生じる。このため、画像記録装置1では、各ヘッド214に対して厚さが異なる記録媒体毎に異なる吐出タイミング情報が設定される。
【0032】
図6は、補正部5の機能構成を示すブロック図である。補正部5は、交換ヘッド受付部51、LUT補正量取得部52、LUT更新部53、吐出タイミング補正量取得部54および吐出タイミング更新部55を備える。交換ヘッド受付部51は、いずれかのヘッド214が交換された場合に、交換されたヘッド214、すなわち、記録部211に新たに取り付けられたヘッド214のヘッド番号を示す情報をGUI(Graphical User Interface)等を介して作業者から受け付ける。以下、交換されたヘッド214を「交換ヘッド214a」という。交換ヘッド214aを示すヘッド番号を「交換ヘッド番号」という。交換ヘッド番号を示す情報を「交換ヘッド情報」と呼ぶ。
【0033】
LUT補正量取得部52は、スキャナ25により取り込まれた後述の参照画像の撮像データに基づいて、交換ヘッド番号に割り当てられたLUT61の更新に用いられる補正量を求める。LUT更新部53は、補正量に基づいて変換情報であるLUT61を更新する変換情報更新部である。吐出タイミング補正量取得部54は、スキャナ25により取り込まれた他の参照画像の撮像データに基づいて、交換ヘッド番号に割り当てられた吐出タイミング情報62の更新に関する補正量を取得する。吐出タイミング更新部55は、補正量に基づいて吐出タイミング情報62を更新する情報更新部である。補正部5の動作の詳細については後述する。
【0034】
次に、画像記録装置1が画像を記録する動作について図7を参照しつつ説明する。実際には、図7のステップS11,S12,S14は、画像データの部分毎、または、画素毎に行われるが、適宜簡略化して説明する。画像記録装置1では、図3に示す外部制御部11から演算部4の画像メモリ41にカラーの入力画像データ931、すなわち、各画素が複数の色成分の階調値を有する画像データが入力されて記憶される。
【0035】
入力画像データ931は、画像メモリ41から変換部42に送られる。一方、予め、操作者により、記録媒体の種類、すなわち、記録媒体9の表面特性および厚さを示す情報が情報記憶部103に入力される。情報記憶部103は、記録媒体9に関する各ヘッド214のLUTを変換部42に入力し、各ヘッド214の吐出タイミング情報を吐出制御部102に入力する。
【0036】
図8は、ある種類の記録媒体9に関する1つのヘッド214に対応するLUTの特性を示す変換曲線81を例示する図である。以下、変換曲線の符号81をLUTに付して説明する。横軸は、入力画像データ931の画素値である入力画素値を示し、縦軸は、変換画像データの画素値である変換画素値を示す。以下の説明では、入力画像データ931は0〜255までの階調範囲にて表現されるものとするが、入力画像データ931は、当該階調範囲には限定されない。
【0037】
変換部42では、入力画像データ931の1つのヘッド214により記録される部分の画素の画素値が、LUT81を参照して、0〜128までの階調範囲の画素値に変換される。もちろん、変換後の階調範囲は、0〜128には限定されない。入力画像データ931の他のヘッド214により記録される部分の画素も、対応する他のLUTを参照して画素値が変換される。
【0038】
変換部42にて変換画像データ(の一部)が生成されると(ステップS11)、変換画像データが、比較器44に送られる。図9は、変換画像データ70および閾値マトリクス710を抽象的に示す図である。変換画像データ70および閾値マトリクス710のそれぞれでは、X方向に対応する行方向(図9中にてx方向として示す。)、および、行方向に垂直な列方向(図9中にてy方向として示す。)に複数の画素または複数の要素が配列されている。比較器44にて変換画像データを色成分毎に閾値マトリクス710と比較することにより、網点画像データが生成される(ステップS12)。画像記録装置1では、網点画像データにより、変換画像データが示す多階調の画像が網点画像として表現される。
【0039】
ステップS12における変換画像データ70のハーフトーン化(網点化)の際には、変換画像データ70が示す全体の領域を同一の大きさの多数の領域に分割してハーフトーン化の単位となる繰り返し領域71が設定される。各マトリクス記憶部43は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス710を記憶している。そして、概念的には変換画像データ70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス710とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の当該色成分の画素値と閾値マトリクス710の対応する閾値とが比較されることにより、記録媒体9上のその画素の位置に記録(当該色のドットの形成)を行うか否かが決定される。
【0040】
実際には、図3の比較器44が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ41から変換画像データ70の1つの画素値が色成分毎に読み出される。一方、アドレス発生器では変換画像データ70中の当該画素に相当する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、各色成分の閾値マトリクス710における1つの閾値が特定されてマトリクス記憶部43から読み出される。そして、画像メモリ41からの画素値とマトリクス記憶部43からの閾値とが比較器44にて色成分毎に比較されることにより、各色成分の2値の出力画像データにおけるその画素の位置(アドレス)の値が決定される。したがって、一の色成分に着目した場合に、図9に示す多階調の変換画像データ70において、階調値が閾値マトリクス710の対応する閾値よりも大きい位置には、例えば、値「1」が付与され(すなわち、ドットが置かれ)、残りの画素には値「0」が付与され(すなわち、ドットは置かれず)、2値の出力画像データが当該色成分の網点画像データとして生成される。
【0041】
変換画像データにおいて最初に記録される部分(例えば、最も(+y)側の複数の繰り返し領域71)の網点画像データ(の部分)が各色に対して生成されると、移動制御部101が移動機構22を駆動することにより記録媒体9のヘッド214に対する相対移動が開始される(ステップS13)。吐出制御部102により、網点画像データに従ってヘッド214からインクが吐出される。変換画像データにおいて次に記録される部分の網点画像データが生成されると、記録媒体9の相対移動に同期してヘッド214からインクがさらに吐出される。このように、上記ハーフトーン化処理(網点画像データの生成処理)を行いつつ、記録媒体9の相対移動に並行して複数のヘッド214からインクの吐出が制御される。
【0042】
変換画像データにおいて最後に記録される部分の網点画像データに基づいてヘッド214からのインクが吐出されると、記録媒体9上へのカラーの網点画像の記録が完了する(ステップS14)。その後、記録媒体9が回収部24に回収され、記録媒体9を移動させる動作が停止する(ステップS15)。
【0043】
画像記録装置1では、入力画素値と、入力画素値に対応して複数のヘッド214に入力される信号の生成に用いられる値である変換画素値との関係を示すLUTが用いられることにより、ヘッド214間における記録媒体9上の画像の濃度のムラが防止される。以下、記録媒体9上の画像の濃度を「記録濃度」と呼ぶ。後述するように、ヘッドが交換された場合に、交換ヘッド214aにより記録される画像の記録濃度の補正は、交換ヘッド214aのLUTを更新することにより行われる。
【0044】
次に、不具合のあるヘッドを交換した後における、交換ヘッド214aに対応するLUTを更新する流れについて図10および図11を参照しつつ説明する。以下、K(ブラック)のインクを吐出する1つのヘッド214が交換されるものとして説明するが、LUTの更新の流れは、2以上のヘッド214が交換される場合においても同様である。他の色のインクを吐出する複数のヘッド214の一部が交換される場合においても同様である。まず、作業者により、ヘッド214が交換されると、交換ヘッド情報がGUI等を介して交換ヘッド受付部51にて受け付けられる(ステップS21)。
【0045】
次に、複数種類の記録媒体から一の記録媒体(以下、「代表記録媒体90」と呼ぶ。)が選択され、代表記録媒体90に関するLUTの更新が行われる(ステップS22)。具体的には、まず、図3に示す外部制御部11から参照画像データ932が本体制御部10に入力され、本体制御部10により交換ヘッド214aを有する記録部211が制御されて、図12に示すように、代表記録媒体90上に複数の濃度のチント画像である複数の参照画像911〜915が記録される(図11:ステップS31)。すなわち、外部制御部11が、本体制御部10を介してヘッド214および移動機構22等により参照画像を記録させる参照画像記録制御部として機能する。なお、5以外の数の濃度の参照画像が代表記録媒体90上に記録されてもよい。
【0046】
複数の参照画像911〜915は、図12における上下方向、すなわち、代表記録媒体90の移動方向に配列される。各参照画像911〜915は、図12の下側から順に値が大きくなる入力画素値(図8参照)に従って、すなわち、記録濃度を高くしつつ記録される。以下、複数の参照画像911〜915をまとめて「参照画像91」と呼ぶ。また、各参照画像911〜915に対応する入力画素値をx1、x2、・・・、x5と表現する。
【0047】
参照画像91は、図1に示すスキャナ25により撮像される(ステップS32)。図6に示すLUT補正量取得部52は、スキャナ25により取得されたRGBの各色の撮像データから、色空間を変換する所定の演算により、濃度を示すK(ブラック)のモノクロ画像データを生成する。なお、スキャナ25によりモノクロ画像データが直接取得されてもよい。図13に示すように、このモノクロ画像から、交換ヘッド情報に従って交換ヘッド214aにより記録された領域の画像が切り出され、交換ヘッド214aによる各参照画像911〜915の記録濃度が取得される。図13では、図12の記録された参照画像911〜915に対応する部分に同符号を付している。また、交換ヘッド214a以外のヘッド214から予め選択された参照ヘッド214により記録された領域の画像も切り出され、参照ヘッド214による各参照画像911〜915の記録濃度が取得される。
【0048】
次に、入力画素値x(x=x1、x2、・・・、x5)における参照ヘッド214の記録濃度Ibase(x)に対する交換ヘッド214aの記録濃度I(x)の比の逆数である補正量Ibase(x)/I(x)が求められる(ステップS33)。
【0049】
参照画像911〜915に従って決定された補正量Ibase(x)/I(x)は、LUT更新部53に送られる。LUT更新部53では、図14中に太い実線にて示す交換ヘッド番号に割り当てられた補正前のLUT82を参照して入力画素値xに対応する変換画素値D(x)が取得される。入力画素値xにおける補正後の変換画素値D(x)は、補正量Ibase(x)/I(x)および変換画素値D(x)に基づいて、数1により求められる。
【0050】
【数1】

【0051】
次に、入力画素値x1、x2、・・・、x5に対応する補正後の変換画素値D(x1)、D(x2)、・・・、D(x5)の間を最小二乗法等を用いて補間することにより、図14中に間隔が狭い太い破線にて示すLUT83が生成される。LUT83は情報記憶部103に入力されて記憶される。
【0052】
代表記録媒体90に関するLUTが更新されると(ステップS34)、LUT82,83の間における各入力画素値に対応する変換画素値の符号付き差分を示す差分データが求められる(ステップS23)。
【0053】
交換ヘッド214aにおいて、各種類の記録媒体に対応付けられるべきLUTの変換特性は、交換前のヘッド214に対応付けられていたLUTと類似しているとみなすことができる。したがって、LUT更新部53では、図14中に細い実線にて示す補正前の他の記録媒体に関するLUT84に上記差分データを加えることにより間隔が広い破線にて示す補正後の当該他の記録媒体に関するLUT85が求められる。すなわち、入力画像データ931の入力画素値x(xは0以上255以下の整数)に対して、LUT82〜84を参照して求められる変換画素値をそれぞれ、LUTA1[x]、LUTA2[x]およびLUTB1[x]とすると、補正後のLUT85を参照して求められる変換画素値LUTB2[x]は、数2により与えられる。
【0054】
【数2】

【0055】
以上の処理が、代表記録媒体90以外の全ての記録媒体9のそれぞれに関するLUTに対して行われると、交換ヘッド214aにおける全ての種類の記録媒体9に関するLUTの更新が完了する(ステップS24)。なお、記録媒体9がコート紙の場合に種類毎に表面特性が大きく異なるため、LUTの自動更新は、記録媒体9として複数種類のコート紙が用いられる場合に特に適している。
【0056】
次に、不具合のあるヘッド214を交換した後における、交換ヘッド214aの吐出タイミング情報を補正する流れについて図15および図16を参照しつつ説明する。まず、作業者により、いずれかのヘッド214が交換されると、交換ヘッド情報がGUI等を介して交換ヘッド受付部51にて受け付けられる(ステップS41)。ただし、ステップS21〜S24が、既に行われた場合は、ステップS41は省かれる。
【0057】
また、代表記録媒体90が選択され、代表記録媒体90に関する吐出タイミング情報の更新が行われる(ステップS42)。具体的には、まず、外部制御部11から参照画像データ932(ただし、ステップS31の場合と異なる画像データである。)が画像メモリ41に入力される。参照画像データ932は、ヘッド214の配列方向に対応する図17の左右方向に延びる線の画像916を示す。そして、本体制御部10の制御により、交換ヘッド214aおよび交換されていない複数の他のヘッド214により、代表記録媒体90上に参照画像が記録される(ステップS51)。すなわち、外部制御部11が、本体制御部10を介してヘッド部214および移動機構22等に参照画像を記録させる参照画像記録制御部として機能する。
【0058】
参照画像は図1に示すスキャナ25により撮像される(ステップS52)。図6に示す吐出タイミング補正量取得部54は、スキャナ25により取得されたRGBの各色の撮像データに基づいて、モノクロ画像のデータを生成する。以下、当該モノクロ画像は記録された参照画像を表すため、当該モノクロ画像を参照画像として説明する。図18は、撮像データが示す参照画像917の一部を示す図である。図18の下側から上側に向かう方向が、代表記録媒体90の移動方向に対応する。図18では、参照画像917の各ヘッド214により記録される部分の境界を細い破線にて示している。
【0059】
参照画像917のうち、符号917aを付す部位は、交換ヘッド214aにより記録された部位である。参照画像917の他の部位917bは、交換されていないヘッド214(以下、「非交換ヘッド214」という。)により記録された部位である。以下、交換ヘッド214aにより記録される部位917aの移動方向における位置を「交換ヘッド記録位置922」という。太い破線にて示す非交換ヘッド214により記録される部位917bの移動方向における位置を「非交換ヘッド記録位置923」という。交換ヘッド記録位置922は、非交換ヘッド記録位置923よりも、図18における上側に位置し、交換ヘッド214aによるインクの着弾タイミングが、非交換ヘッド214よりも早いことが判る。
【0060】
次に、吐出タイミング補正量取得部54により、移動方向における交換ヘッド記録位置922と非交換ヘッド記録位置923との間の距離である記録ずれ量H1が求められる(ステップS53)。吐出タイミング補正量取得部54には、予め、移動機構22による代表記録媒体90の移動速度が入力されており、記録ずれ量H1を当該移動速度にて除して、非交換ヘッド記録位置923からの交換ヘッド記録位置922の時間差が補正量として求められる(ステップS54)。
【0061】
参照画像917に従って決定された補正量は、図6に示す吐出タイミング更新部55に送られる。そして、補正量に基づいて交換ヘッド214aの吐出タイミング情報が更新される(ステップS55)。これにより、交換ヘッド214aが、非交換ヘッド記録位置923上に画像を記録する。
【0062】
吐出タイミング更新部55では、さらに、代表記録媒体90に関する交換ヘッド214aの補正前の吐出タイミング情報と補正後の吐出タイミング情報との符号付き差分が求められる。他の記録媒体に関する交換ヘッド214aの補正前の吐出タイミング情報に上記差分が加えられることにより、他の記録媒体に関する交換ヘッド214aの吐出タイミング情報が更新される(ステップS43)。
【0063】
以上、画像記録装置1の構成および動作、並びに、記録濃度の補正の流れおよび吐出タイミング情報の補正の流れについて説明したが、記録濃度の補正では、LUT更新部53により、代表記録媒体90上の参照画像911〜915に従って決定された補正量および交換ヘッド情報に基づいて、代表記録媒体90および他の種類の記録媒体に関する交換ヘッド214aのLUTが更新される。これにより、新しい種類の記録媒体への画像記録が必要となる毎に、補正量を取得してLUTを更新する場合に比べて、交換ヘッド214aにおける記録濃度の補正作業を簡素化することができる。その結果、画像の記録作業のダウンタイムを短縮することができる。
【0064】
また、吐出タイミング情報の補正では、代表記録媒体90上の参照画像917に従って決定された交換ヘッド214aの補正量および交換ヘッド情報に基づいて、交換ヘッド214aの代表記録媒体90および他の種類の記録媒体に関する吐出タイミング情報が更新される。これにより、新しい記録媒体への画像記録が必要となる毎に、補正量を取得して吐出タイミング情報を更新する場合に比べて、補正作業を簡素化することができる。
【0065】
記録濃度の補正では、スキャナ25およびLUT補正量取得部52を用いて補正量を自動的に取得することにより、作業者が補正量を設定する場合に比べて補正作業をより簡素化することができる。同様に、吐出タイミング情報の補正では、スキャナ25および吐出タイミング補正量取得部54を用いることにより、補正作業をより簡素化することができる。
【0066】
画像記録装置1では、入力画素値と変換画素値との間の関係を示す変換情報として、入力画素値を変数とする3次関数が利用されてもよい。情報記憶部103は、3次関数の各項の係数を記憶する。
【0067】
交換ヘッド214aに対応する3次関数を更新する流れは、上述のLUTの更新の流れとほぼ同様である。代表記録媒体90に関する交換ヘッド214aの3次関数を更新する際には(ステップS22)、撮像データから参照ヘッド214および交換ヘッド214aの記録濃度が取得され、参照ヘッド214の記録濃度に対する交換ヘッド214aの記録濃度の比の逆数である補正量が求められる(ステップS33)。補正前の3次関数を参照して各参照画像の入力画素値に対する変換画素値が求められ、当該変換画素値に補正量を乗じて補正後の変換画素値が取得される。そして、入力画素値および補正後の変換画素値に基づいて最小二乗法により、補正後の3次関数が求められる(ステップS34)。
【0068】
他の記録媒体に関する交換ヘッド214aの3次関数を更新する際には、代表記録媒体90に関する補正前の3次関数と補正後の3次関数との差分が求められる(ステップS23)。代表記録媒体90に関する補正前の3次関数をFA1(x)、補正後の3次関数をFA2(x)、他の記録媒体に関する補正前の3次関数をFB1(x)とすると、補正後の関数FB2(x)は、数3により求められる(ステップS24)。
【0069】
【数3】

【0070】
画像記録装置1では、入力画素値と変換画素値との間の変換情報として3次関数が利用されることにより、情報記憶部103内の記憶容量を抑えることができる。なお、3次以外の関数が利用されてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0072】
上記実施の形態では、LUTに代えて、入力画素値と、各ヘッド214に入力される信号の強弱を補正する値との関係を示す変換情報が用いられてもよい。この場合においても、上記実施の形態に準じた処理により、ヘッドが交換された場合に、交換ヘッド214aに対応するこの変換情報が更新される。このように、画像記録装置1では、入力画素値と、入力画素値に対応して複数のヘッド214に入力される信号の生成に用いられる種々の値との関係を示す様々な変換情報が利用可能である。
【0073】
上記実施の形態の説明における数2および数3では、単純に、代表記録媒体90に関する補正前の変換画素値と補正後の変換画素値との符号付き差分が、他の種類の記録媒体9の変換画素値の補正に利用されるが、他の種類の記録媒体9に関する変換情報は様々な手法により補正されてよい。例えば、代表記録媒体90に関する補正前の変換画素値と補正後の変換画素値との比を、他の種類の記録媒体9の補正前の変換画素値に乗算することにより、補正後の変換画素値が求められてもよい。
【0074】
画像記録装置1では、各ヘッド214から異なる量の微小液滴を吐出することにより最小単位となる複数サイズのドットが形成可能であってもよい。
【0075】
記録濃度の補正作業および吐出タイミング情報の補正作業では、参照画像を参照して作業者により補正量が決定されてもよい。この場合、1回の処理では適切な補正量が得られない可能性があるため、複数の参照画像に対応する入力画素値を変更しつつ参照画像の記録および補正量の決定が必要に応じて繰り返される。画像記録装置1では、参照ヘッド214により記録される参照画像の記録濃度が予め取得されてもよい。この場合、ヘッド交換後に、交換ヘッド214aのみにより参照画像を記録するだけであっても、交換ヘッド214aのLUT61を更新することができる。
【0076】
上記実施の形態では、外部制御部11が本体制御部10に参照画像データ932を入力することにより、実質的に外部制御部11が、ヘッド214等に代表記録媒体90上に参照画像を記録させる参照画像記録制御部として機能するが、例えば、本体制御部10内に専用の電気回路として、あるいは、外部制御部11と本体制御部10の一部とにより、参照画像記録制御部が実現されてもよい。
【0077】
吐出タイミング情報の補正では、必ずしも交換ヘッド214aを含む記録部211内の全てのヘッド214により参照画像が記録される必要はなく、少なくとも1つの交換ヘッド214aおよび参照用の非交換ヘッド214を含む2以上のヘッド214により参照画像が記録されるのみでもよい。
【0078】
複数のヘッド214は、記録媒体9の記録面に平行な面内において、記録媒体9の幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列されてもよい。移動機構22は、必ずしも記録媒体9を移動する機構である必要はなく、例えば、記録部211を移動することにより、記録媒体9を記録部211に対して相対的に移動する機構であってもよい。記録媒体9は、フィルム等の撥液性を有するシート状の基材や、プラスチックにて形成される板状の部材等であってもよい。また、連続紙であるいわゆるウェブに対して記録が行われてもよい。
【0079】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0080】
1 画像記録装置
3 制御部
9,9a,9b 記録媒体
10 本体制御部
11 外部制御部(参照画像記録制御部)
22 移動機構
25 スキャナ
42 変換部
51 交換ヘッド受付部
52 LUT補正量取得部
53 LUT更新部
54 吐出タイミング補正量取得部
55 吐出タイミング更新部
61,81〜85 LUT
62 吐出タイミング情報
90 代表記録媒体
103 情報記憶部
214 ヘッド
214a 交換ヘッド
911〜915,917 参照画像
H1 記録ずれ量
S11〜S15,S21〜S24,S31〜S34,S41〜S43,S51〜S55 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に画像を記録する画像記録装置であって、
記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、
前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部と、
を備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能であり、
前記制御部が、
入力画像データが示す画素値である入力画素値と、該入力画素値に対応して前記複数のヘッドのそれぞれに入力される信号の生成に用いられる値との関係を示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の変換情報を記憶する記憶部と、
各ヘッドに対応付けられた変換情報を用いて入力画像データの画素値を変換する変換部と、
少なくとも1つの交換されたヘッドにより、複数の入力画素値にそれぞれ対応する複数の参照画像を代表記録媒体に記録させる参照画像記録制御部と、
前記複数のヘッドのうち前記交換されたヘッドを示す交換ヘッド情報を受け付ける交換ヘッド受付部と、
記録された前記複数の参照画像に従って決定された、前記交換されたヘッドに対応する変換情報に関する補正量が入力され、前記交換ヘッド情報および前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドに対応する複数の変換情報を更新する変換情報更新部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
記録された前記複数の参照画像を撮像し、撮像データを取得するスキャナをさらに備え、
前記制御部が、前記交換ヘッド情報に従って、前記撮像データから前記交換されたヘッドの前記複数の入力画素値に対応する複数の記録濃度を取得し、前記複数の記録濃度に基づいて前記交換されたヘッドに対応する前記変換情報の前記補正量を求め、前記補正量を前記変換情報更新部に入力する補正量取得部をさらに備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録装置であって、
前記複数の変換情報のそれぞれが、ルックアップテーブルであることを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の画像記録装置であって、
前記複数の変換情報のそれぞれが、入力画素値を変数とする関数であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
記録媒体上に画像を記録する画像記録装置であって、
記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、
前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部と、
を備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能であり、
前記制御部が、
前記複数のヘッドのそれぞれの吐出タイミングを示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の吐出タイミング情報を記憶する記憶部と、
少なくとも1つの交換されたヘッドおよび交換されていないヘッドを含む2以上のヘッドにより、参照画像を代表記録媒体に記録させる参照画像記録制御部と、
前記複数のヘッドのうち前記交換されたヘッドを示す交換ヘッド情報を受け付ける交換ヘッド受付部と、
記録された前記参照画像に従って決定された、前記交換されたヘッドに対応する吐出タイミング情報に関する補正量が入力され、前記交換ヘッド情報および前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドに対応する複数の吐出タイミング情報を更新する情報更新部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像記録装置であって、
記録された前記参照画像を撮像し、撮像データを取得するスキャナをさらに備え、
前記制御部が、前記交換ヘッド情報に従って、前記撮像データから前記2以上のヘッドの間における記録ずれ量を取得し、前記記録ずれ量に基づいて前記交換されたヘッドに対応する前記吐出タイミング情報の前記補正量を求め、前記補正量を前記情報更新部に入力する補正量取得部をさらに備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、
前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部と、
を備え、
前記制御部が、入力画像データが示す画素値である入力画素値と、該入力画素値に対応して前記複数のヘッドのそれぞれに入力される信号の生成に用いられる値との関係を示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の変換情報を記憶する記憶部を備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能である、画像記録装置において、交換されたヘッドによる記録濃度を補正する記録濃度補正方法であって、
a)少なくとも1つの前記交換されたヘッドにより、複数の入力画素値にそれぞれ対応する複数の参照画像を代表記録媒体に記録する工程と、
b)記録された前記複数の参照画像に従って、前記交換されたヘッドに対応する変換情報の補正量を決定する工程と、
c)前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドの複数の変換情報を更新する工程と、
を備えることを特徴とする記録濃度補正方法。
【請求項8】
記録媒体の幅方向に配列され、または、前記幅方向に垂直な方向に対して交差する方向に配列され、インクの微小液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記記録媒体を前記複数のヘッドに対して前記幅方向に垂直な方向に相対的に移動する移動機構と、
前記複数のヘッドおよび前記移動機構を制御して前記記録媒体の前記複数のヘッドに対する1回の相対移動により前記記録媒体上に画像を記録する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記複数のヘッドのそれぞれの吐出タイミングを示し、画像が記録される記録媒体の種類に対応する複数の吐出タイミング情報を記憶する記憶部を備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、新たなヘッドと個別に交換可能である、画像記録装置において、交換されたヘッドによる吐出タイミングを補正する吐出タイミング補正方法であって、
a)少なくとも1つの交換されたヘッドおよび交換されていないヘッドを含む2以上のヘッドにより、参照画像を代表記録媒体に記録する工程と、
b)記録された前記参照画像に従って、前記交換されたヘッドに対応する吐出タイミング情報の補正量を決定する工程と、
c)前記補正量に基づいて、前記代表記録媒体および他の種類の記録媒体に関する前記交換されたヘッドの複数の吐出タイミング情報を更新する工程と、
を備えることを特徴とする吐出タイミング補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−28127(P2013−28127A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166912(P2011−166912)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】