説明

画像記録装置および画像記録方法

【課題】双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させること。
【解決手段】記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと該記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、前記記録ヘッドを備え、前記搬送手段による相対移動方向と交差する方向に往復動作するキャリッジと、前記記録ヘッドから液滴を吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像記録装置であって、前記キャリッジが往復動作を行う場合に、該キャリッジの加速動作によって発生する前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の波形を、往路と復路とで一致させるように前記キャリッジの動作を制御する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを移動させて記録媒体に画像を形成する画像記録装置および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出するノズルを備えた記録ヘッドを移動させて、印刷用紙等の記録媒体に画像を形成する画像記録装置が知られている。
このような画像記録装置においては、記録ヘッドを有するキャリッジが走査方向に往復運動を行い、記録ヘッドが通過する記録媒体上の所定位置にインクが吐出されることにより、記録媒体に画像が形成される。
ここで、この種の画像記録装置においては、キャリッジの移動に伴って振動が発生し、記録品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
特許文献1には、キャリッジの移動に伴って発生する振動を抑制するための技術が開示されている。
特許文献1に記載された技術においては、キャリッジの自由振動と、キャリッジを移動させるためのモーターから発生する強制振動との共振を回避することで、キャリッジの振動を抑制することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−238609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、キャリッジの自由振動とモーターの強制振動とが共振することを回避しているものの、キャリッジに発生する振動を完全に抑制できるものではなかった。
そのため、キャリッジが走査方向に移動する際の往路および復路のそれぞれにおいてインクの吐出を行う双方向印刷を行う画像記録装置では、キャリッジの往路と復路における記録媒体上の移動経路にずれが生じ、記録品質が低下する要因となっていた。
このように、従来の技術においては、双方向印刷を行う場合の記録品質の低下を十分に抑制することが困難であった。
本発明の課題は、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様は、
記録媒体に画像を記録する記録ヘッド(例えば、図1,2の記録ヘッド19)と該記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段(例えば、図1,2の紙送りモーター25)と、前記記録ヘッドを備え、前記搬送手段による相対移動方向と交差する方向に往復動作するキャリッジ(例えば、図1,2のキャリッジ14)と、を備え、前記記録ヘッドから液滴を吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像記録装置であって、前記キャリッジが往復動作を行う場合に、該キャリッジの加速動作によって発生する前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の波形を、往路と復路とで一致させるように前記キャリッジの動作を制御する制御手段(例えば、図2の制御部35)を備えることを特徴としている。
このような構成により、キャリッジの加速によって発生する自由振動によって、往路と復路とでキャリッジの記録媒体に対する移動経路が異なり、それによって双方向印刷時の記録媒体に対するインクの吐出位置がずれる事態が防止される。
したがって、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることが可能となる。
【0007】
また、本発明の他の態様は、
前記制御手段は、前記キャリッジが往復動作を行う場合の加速度および減速度の大きさと加速時間および減速時間とを一致させると共に、往路および復路それぞれにおける加速開始から減速終了までの動作時間を、前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の周期の整数倍から半周期ずれた時間とすることを特徴としている。
このような構成により、往路と復路とで加速の方向が異なる場合でも、復路における自由振動の波形が往路における自由振動の波形と一致することとなり、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の他の態様は、
前記制御部は、前記キャリッジの加速動作によって発生する前記自由振動の固有周波数をf、正の整数をn、前記加速動作と加速終了から減速開始までの定速動作と前記減速動作とに要する時間をTとした場合に、T=(n+0.5)×1/fとなるように前記キャリッジの往復動作を制御することを特徴としている。
このような構成により、加速動作、定速動作、減速動作を行ってキャリッジを往復運動させる場合に、往路あるいは復路におけるキャリッジの移動時間Tが自由振動の周期の整数倍から半周期ずれるため、復路における自由振動の波形が往路における自由振動の波形と一致することとなる。
即ち、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、
前記制御手段は、前記キャリッジの加速動作によって発生する前記自由振動の波形を、往路と復路とで一致させつつ、前記キャリッジが複数回の往復動作を行う場合、該キャリッジに異なる種類の往復動作を行わせることを特徴としている。
このような構成により、印刷の状況に応じた適切なキャリッジの動作としつつ、双方向印刷の記録品質を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様は、
記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと該記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、前記記録ヘッドを備え、前記搬送手段による相対移動方向と交差する方向に往復動作するキャリッジと、を備え、前記記録ヘッドから液滴を吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像記録装置における画像記録方法であって、前記キャリッジが往復動作を行う場合に、該キャリッジの加速動作によって発生する前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の波形を、往路と復路とで一致させるように前記キャリッジの動作を制御する制御ステップを含むことを特徴としている。
これにより、キャリッジの加速によって発生する自由振動によって、往路と復路とでキャリッジの記録媒体に対する移動経路が異なり、それによって双方向印刷時の記録媒体に対するインクの吐出位置がずれる事態が防止される。
したがって、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】外装ケースを取り外した状態のプリンター1の斜視図である。
【図2】第1実施形態におけるプリンター1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】キャリッジの速度プロファイルを示す図である。
【図4】プリンター1が実行する印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図5】キャリッジ14の加速開始からの経過時間と、副走査方向へのキャリッジ14の変位との関係を示す図である。
【図6】本発明を適用した場合の往復路における紙面上のインク吐出位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明に係る画像記録装置および画像記録方法の実施の形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、本発明をインクジェット式のシリアル型プリンターに適用した場合を例に挙げて説明する。
(第1実施形態)
(構成)
図1は、外装ケースを取り外した状態のプリンター1の斜視図である。
図1において、画像記録装置としてのプリンター1は、上側が開口する略四角箱状の本体ケース12内に架設されたガイド軸13に沿って主走査方向(図1におけるX方向)に往復動可能なキャリッジ14が設けられている。キャリッジ14は、一対のプーリー15,16に巻き掛けられた無端帯状のタイミングベルト17を介してキャリッジモーター18の正逆転駆動力が伝達されることで、主走査方向Xに往復動する構成となっている。
【0013】
キャリッジ14の下部には、インクを吐出するノズルを有する記録ヘッド19が設置されている。また、記録ヘッド19の下方位置には、記録ヘッド19と記録媒体としての印刷用紙Pとの間隔を規定するプラテン20が記録ヘッド19の移動経路に沿って延出する状態に配置されている。また、キャリッジ14の上部に着脱可能に装填されたブラック用およびカラー用の各インクカートリッジ21,22から供給された各色のインクを、記録ヘッド19は色ごとのノズル群から吐出する。
【0014】
プリンター1の背面側には、給紙すべき多数枚の印刷用紙Pをセットする給紙トレイ23を有する自動給紙装置(Auto Sheet Feeder)24が設けられている。本体ケース12の図1における右側下部に配設された紙送りモーター25が駆動されることにより、搬送駆動ローラーと搬送従動ローラー、および排紙駆動ローラーと排紙従動ローラー(いずれも図示せず)が回転駆動されて、印刷用紙Pが副走査方向Yへ搬送される。そして、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド19のノズル19a(図2参照)から印刷用紙Pに向けてインクを吐出する印刷動作と、印刷用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを交互に繰り返すことで、印刷用紙Pに印刷が施される。なお、本実施形態では、紙送りモーター25が自動給紙装置24の駆動源としても利用されている。
【0015】
また、プリンター1には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー26がガイド軸13に沿って配設されており、リニアエンコーダー26の出力パルスのパルスエッジを計数して取得されるキャリッジ位置、単位時間当たりの出力パルス数の計数値から取得されるキャリッジ速度および二相の出力パルスの位相差から取得される移動方向に基づいて、キャリッジ14の位置制御および速度制御が行われる。
プリンター1においてキャリッジ14の移動経路上、正面から見た右端部に相当する位置が、キャリッジ14のホーム位置となっている。ホーム位置に配置された状態にあるキャリッジ14の直下には、記録ヘッド19のノズル目詰まり等を予防・解消するためのクリーニング等を行うメンテナンス装置28が配設されている。
【0016】
図2は、第1実施形態におけるプリンター1の電気的構成を示すブロック図である。
図2において、プリンター1は、その内部にコントローラー30を備える。コントローラー30は、インタフェース部(以下「I/F部31」という)、受信バッファー32、コマンド解釈部33、イメージ生成処理部34、制御部35、イメージバッファー36、不揮発性メモリ37、駆動部38などを備えている。
【0017】
制御部35は、計算部40、ヘッド制御部41およびキャリッジ制御部42を備えている。また、駆動部38は、ヘッド駆動部43、キャリッジ駆動部44および搬送駆動部(図示せず)を備えている。なお、コマンド解釈部33、イメージ生成処理部34および制御部35は、ROMに記憶された制御プログラムを実行するCPU、あるいはASIC(Application Specific Integrated Circuit)(特定用途向け集積回路)等の集積回路により構成されている。もちろん、各部33〜35は、ソフトウェアとハードウェアの協働により構築されている以外に、ソフトウェアだけで構成されていたり、ハードウェアだけで構成されていてもよい。また、受信バッファー32およびイメージバッファー36はRAMにより構成されている。
【0018】
まずキャリッジ14の位置(キャリッジ位置)をリニアエンコーダー26の出力パルスに基づいて検出する構成について説明する。図2に示すように、リニアエンコーダー26は、一定ピッチ(例えば1/180インチ(=1/180×2.54cm))毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板26aと、キャリッジ14に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサ26bとを有している。キャリッジ14が移動するときに発光素子から出射されて符号スリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサ26bが検出パルスを出力する。コントローラー30は、リニアエンコーダー26から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)の例えばパルスエッジを計数するCR位置カウンタ(図示せず)を内蔵している。そして、そのCR位置カウンタの計数値をキャリッジが反ホーム位置側へ移動するときにインクリメントし、ホーム位置側へ移動するときにデクリメントすることで、ホーム位置HPを原点とするキャリッジ14の位置を把握する。
【0019】
プリンター1のI/F部31には、通信ケーブルを介してホストコンピューター50が接続されている。ホストコンピューター50はプリンタードライバー51を内蔵する。プリンタードライバー51は、表示用アプリケーションによりモニター52に表示された画像や文書等を印刷すべく、ユーザが入力装置53を操作して印刷実行を選択すると、その画像データに所定処理を施してプリンター1が扱える印刷データ(吐出指示データ)を生成する。このときユーザがモニター52に表示される印刷設定画面において入力設定する印刷条件には、用紙種、用紙サイズ、印刷品質、カラー/モノクロ、レイアウト、双方向印刷等があり、選択された印刷条件に応じた印刷データが生成される。印刷データは、制御コマンドが記述されたヘッダと、印刷すべき画像のラスタデータである印刷画像データとを含んでいる。
【0020】
印刷画像データは、プリンタードライバー51がモニター表示用の表色系(例えばRGB表色系)の画像データに対し、色変換処理、解像度変換処理、ハーフトーン処理およびラスタライズ処理などを行って生成される。ここで、色変換処理とは、モニター表示用の表色系(例えばRGB表色系)の画像データをCMYK表色系の画像データに変換する処理である。解像度変換処理とは、モニター表示用の画像解像度をプリンターの印刷解像度に変換する処理である。ハーフトーン処理とは、ドットの濃淡を表す連続階調(例えば256階調)をプリンターが表現可能な所定の階調(例えば2階調又は4階調)に変換する階調値変換等を含む処理である。例えばインク滴を大中小の複数種のドットサイズで打ち分ける機能を有する場合は4階調に変換される。ラスタライズ処理とは、記録方式に合ったドット形成順序(インク吐出順序)にデータのドット配列を並び替える処理である。例えばインタレース記録方式のドット形成順序に並び替えるマイクロウィーブ処理等が挙げられる。
【0021】
また、ヘッダに記述された制御コマンドは、印刷条件データおよび印刷画像データに基づいて作成されたもので、給紙動作、紙送り動作、排紙動作等の搬送系コマンドや、キャリッジ動作および記録ヘッド動作(記録動作)等の印字系コマンドなどの各種コマンドからなる。また、印刷条件データに基づき印刷モードが決定される。なお、プリンタードライバー51は、印刷データをパケット単位で1行(1主走査ライン)分ずつプリンター1に送信する。
【0022】
図2に示す受信バッファー32は、I/F部31を介して受信された印刷データが一時格納される記録領域である。
コマンド解釈部33は、受信バッファー32から印刷データのヘッダを読み出してその中の制御コマンド等を取得し、プリンター記述言語で記述された制御コマンドを解釈する。コマンド解釈結果は制御部35のヘッド制御部41およびキャリッジ制御部42に送られる。
【0023】
イメージ生成処理部34は、受信バッファー32から印刷データ中の印刷画像データを一行分(主走査ライン)ずつ読み出し、印刷画像データに基づきホーム位置を原点とするキャリッジ移動経路をスケールとする印刷開始位置PSおよび印刷終了位置PEを計算する。ここで、印刷開始位置PSとは、キャリッジ14の往路における記録開始位置(先頭ドット記録位置)を指し、また印刷終了位置PEとは、キャリッジ14の往路におけるドット記録終了位置(最終ドット記録位置)を指す。なお、キャリッジ14の復路では、印刷終了位置PEが印刷開始位置となり、印刷開始位置PSが印刷終了位置となる。
計算部40は、キャリッジ制御位置計算部48を備え、キャリッジ制御位置計算部48は、キャリッジ14が印字動作のために移動を開始する始動位置(以下、「キャリッジ始動位置」という)を計算する。
【0024】
不揮発性メモリ37には、印刷のために主走査方向へキャリッジ14を移動させる際の1パス分の動作を規定するキャリッジ動作データAD(図3参照)が記憶されている。具体的には、キャリッジ動作データADとして、キャリッジの加減速度、定速移動時の速度および全体の移動時間を示すテーブルデータが記憶されている。
ここで、キャリッジ14が加速を開始した場合、キャリッジ14の副走査方向(印刷用紙の搬送方向)における自由振動は、キャリッジ14の加速の向きに関わらず、同一の初期移動方向および周波数で発生する。
【0025】
本実施形態においては、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍から半周期ずらした時間としている。
即ち、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期を1/fとすると、キャリッジ14の全体の移動時間Tは、T=(n+0.5)×(1/f)に設定されている。ここで、nは正の整数である。
【0026】
このようにキャリッジ14の移動時間Tと自由振動の周期1/fとの関係を設定することにより、キャリッジ14が移動を開始した場合に、主走査方向の復路において、往路における自由振動の振動波形と一致する自由振動が発生することとなる(図5(b)参照)。
そのため、キャリッジ14の加速によって発生する副走査方向の自由振動が発生した場合も、往路と復路とでキャリッジ14の印刷用紙Pに対する移動経路が一致することとなり、それによって双方向印刷時の記録媒体に対するインクの吐出位置がずれる事態を防止することができる。
【0027】
ヘッド制御部41は、キャリッジ駆動時にリニアエンコーダー26から入力したエンコーダパルスを基に吐出タイミングパルスの基準パルスを生成する第一信号生成部、吐出タイミングパルスより十分短周期の計数用パルスを生成する第二信号生成部、および前記基準パルスの入力をトリガーとして計数用パルスの計数を開始してその計数値が目標値に達すると吐出タイミング信号を出力する吐出信号生成部(いずれも図示せず)を有している。なお、記録ヘッド19には、ノズル毎に吐出駆動素子が内蔵されており、印刷画像データのドット値が例えば「1」のときには吐出駆動素子に所定駆動波形の電圧が印加されてノズル19aからインク滴が吐出され、一方、印刷画像データのドット値が例えば「0」のときには吐出駆動素子に電圧が印加されずノズルからインク滴の吐出が行われない。吐出駆動素子としては、圧電駆動素子(ピエゾ素子)、静電駆動素子の他、インクを加熱して膜沸騰による気泡(バブル)の圧力を利用してノズルからインク滴を吐出させるヒータなどを挙げることができる。
【0028】
また、キャリッジ制御部42はキャリッジ駆動部44を介してキャリッジモーター18を駆動制御する。キャリッジ制御部42には、コマンド解釈部33が解釈した印字系コマンドのうちキャリッジ動作に関するコマンドが渡される。またキャリッジ制御部42には、キャリッジ制御位置計算部48が計算したキャリッジ始動位置(以下、「CR始動位置Scr」と記す)などの制御位置がセットされる。印刷用紙Pへの印刷を行う場合、キャリッジ制御部42は、ホーム位置からキャリッジ始動位置までキャリッジ14を移動させて待機させ、紙送り動作終了タイミングもしくはそれより若干早い所定の起動タイミングになると、キャリッジモーター18の駆動を開始してキャリッジ14を始動させる。
【0029】
図3は、キャリッジの速度プロファイルを示す図である。
本実施形態では、図3に示すように、速度プロファイルを規定するために必要なキャリッジ動作データADが、不揮発性メモリ37に記憶されている。本実施形態の場合、上述の通り、キャリッジ動作データADに規定されるキャリッジ14の加速度の大きさと減速度の大きさとが等しいものとされている。即ち、キャリッジ始動位置「0」から目標速度に達するまでの加速距離は、減速開始位置DSからキャリッジ停止位置Ecrまでの減速距離と同一になっている。
【0030】
さらに、本実施形態では、上述の通り、キャリッジ14の加速開始から減速終了までの移動時間Tが、キャリッジ14の加速によって生じる自由振動の周期1/fの整数倍から半周期ずれた時間となっている。
即ち、図3において、キャリッジの加減速時間をtaとした場合、T=(n+0.5)×1/fの関係となっている。
【0031】
(動作)
次に、動作を説明する。
図4は、プリンター1が実行する印刷制御処理を示すフローチャートである。
図4に示す印刷制御処理は、ホストコンピューター50から印刷の実行が指示入力されることに対応して開始される。
図4において、印刷制御処理が開始されると、プリンター1は、ホストコンピューター50から送信される印刷データを受信バッファー32に格納する(ステップS1)。
この印刷データには、制御コマンドが記述されたヘッダと、印刷すべき画像のラスタデータである印刷画像データとが含まれている。
【0032】
次に、プリンター1は、コマンド解釈部33によって印刷データに含まれる制御コマンドを解釈し(ステップS2)、さらに、イメージ生成処理部34によって印刷データに含まれる印刷画像データを一行分読み出す(ステップS3)。
続いて、プリンター1は、イメージ生成処理部34によって印刷画像データから印刷開始位置PSおよび印刷終了位置PEを算出する(ステップS4)。
そして、プリンター1は、キャリッジ制御部42にCR始動位置Scrをセットし(ステップS5)、キャリッジ制御位置計算部48に不揮発性メモリ37に記憶されているキャリッジ動作データADを読み出す(ステップS6)。
なお、キャリッジ動作データADは、印刷に先立って一度読み出しておき、主走査方向へのキャリッジ14の移動時には、ステップS6の処理を省略することも可能である。
【0033】
次に、プリンター1は、キャリッジ制御部42によってキャリッジ14を駆動すると共に、ヘッド制御部41によって記録ヘッド19を駆動し、主走査方向の往路および復路の印刷を行う(ステップS7)。
このとき、キャリッジ14は、加速開始から減速終了までの移動時間Tが、キャリッジ14の加速によって生じる自由振動の周期1/fの整数倍から半周期ずれた時間となっているため、往路における移動経路と復路における移動経路とが一致したものとなり、双方向印刷時の記録媒体に対するインクの吐出位置がずれることが防止される。
【0034】
次いで、プリンター1は、印刷が終了したか否かの判定を行う(ステップS8)。印刷が終了したか否かについては、例えば、コマンド解釈33が、印刷データの制御コマンドに、最後の印刷データであることを示すフラグが記述されていることを検出することによって判定する。
ステップS8において、印刷が終了していないと判定した場合、プリンター1は、紙送りモーター25によって印刷用紙の搬送を行い(ステップS9)、ステップS1の処理に戻る。
【0035】
一方、ステップS8において、印刷が終了したと判定した場合、プリンター1は、印刷制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係るプリンター1は、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍から半周期ずらした時間としている。
そのため、キャリッジ14の加速によって発生する副走査方向の自由振動によって、往路と復路とでキャリッジ14の印刷用紙Pに対する移動経路が一致することとなり、それによって双方向印刷時の記録媒体に対するインクの吐出位置がずれる事態が防止される。
したがって、双方向印刷を行う場合の記録品質をより向上させることが可能となる。
【0036】
図5は、キャリッジ14の加速開始からの経過時間と、副走査方向へのキャリッジ14の変位との関係を示す図である。なお、図5(a)は、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍とした場合を示しており、本発明との比較例である。また、図5(b)は、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍から半周期ずらした場合を示しており、本発明を適用した一例である。
【0037】
図5(a)に示すように、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍とすると、復路における副走査方向への変位は、往路の移動経路に対して180度位相がずれたパターンとなる。即ち、往復路間でのキャリッジ14の移動経路の差は最大となり、印刷ムラが発生する。
【0038】
これに対し、図5(b)に示すように、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tを、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍から半周期ずらした状態とすると、復路における副走査方向への変位は、往路の移動経路に対して位相が一致したパターンとなる。即ち、往復路間でのキャリッジ14の移動経路の差はほぼゼロとなり、印刷ムラが抑制される。
【0039】
図6は、本発明を適用した場合の往復路における紙面上のインク吐出位置の例を示す図である。なお、図6においては、説明のために副走査方向のスケールを拡大して示している。
図6に示す例では、キャリッジ14の往復路において、副走査方向への自由振動が一致した状態となっている。
そのため、各画素について、往路における記録媒体に対するインクの吐出位置と、復路における記録媒体に対するインクの吐出位置とが一致することとなる。
即ち、本発明を適用することにより、双方向印刷を行う場合の記録品質がより向上するものとなる。
【0040】
(応用例1)
第1実施形態において、1つのキャリッジ動作データADを不揮発性メモリ37に記憶しておき、主走査方向にキャリッジ14を移動させる際に、このキャリッジ動作データを用いてキャリッジ14の動作を規定することとした。
これに対し、不揮発性メモリ37に複数種類のキャリッジ動作データADを記憶しておき、主走査方向にキャリッジ14を移動させる場合、これらの中からいずれかのキャリッジ動作データADを選択して読み出すこととしても良い。
【0041】
なお、これら複数のキャリッジ動作データADについても、主走査方向にキャリッジ14が移動する際の全体の移動時間Tは、キャリッジ14が加速することにより発生する副走査方向の自由振動の周期の整数倍から半周期ずらした時間となる。
このように、複数種類のキャリッジ動作データADの中からいずれかを選択して用いることで、印刷の状況に応じた適切なキャリッジ14の動作としつつ、印刷の記録品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 プリンター、12 本体ケース、13 ガイド軸、14 キャリッジ、15,16 プーリー、17 タイミングベルト、18 キャリッジモーター、19 記録ヘッド、19a ノズル、20 プラテン、21,22 インクカートリッジ、23 給紙トレイ、24 自動給紙装置、25 紙送りモーター、26 リニアエンコーダー、26a 符号板、26b センサ、28 メンテナンス装置、30 コントローラー、31 I/F部、32 受信バッファー、33 コマンド解釈部、34 イメージ生成処理部、35 制御部、36 イメージバッファー、37 不揮発性メモリ、38 駆動部、40 計算部、41 ヘッド制御部、42 キャリッジ制御部、43 ヘッド駆動部、44 キャリッジ駆動部、48 キャリッジ制御位置計算部、50 ホストコンピューター、51 プリンタードライバー、52 モニター、53 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと該記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、
前記記録ヘッドを備え、前記搬送手段による相対移動方向と交差する方向に往復動作するキャリッジと、を備え、
前記記録ヘッドから液滴を吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像記録装置であって、
前記キャリッジが往復動作を行う場合に、該キャリッジの加速動作によって発生する前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の波形を、往路と復路とで一致させるように前記キャリッジの動作を制御する制御手段を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記キャリッジが往復動作を行う場合の加速度および減速度の大きさと加速時間および減速時間とを一致させると共に、往路および復路それぞれにおける加速開始から減速終了までの動作時間を、前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の周期の整数倍から半周期ずれた時間とすることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記キャリッジの加速動作によって発生する前記自由振動の固有周波数をf、正の整数をn、前記加速動作と加速終了から減速開始までの定速動作と前記減速動作とに要する時間をTとした場合に、
T=(n+0.5)×1/f
となるように前記キャリッジの往復動作を制御することを特徴とする請求項1または2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記キャリッジの加速動作によって発生する前記自由振動の波形を、往路と復路とで一致させつつ、前記キャリッジが複数回の往復動作を行う場合、該キャリッジに異なる種類の往復動作を行わせることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと該記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、
前記記録ヘッドを備え、前記搬送手段による相対移動方向と交差する方向に往復動作するキャリッジと、を備え、
前記記録ヘッドから液滴を吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像記録装置における画像記録方法であって、
前記キャリッジが往復動作を行う場合に、該キャリッジの加速動作によって発生する前記相対移動方向と交差する方向への自由振動の波形を、往路と復路とで一致させるように前記キャリッジの動作を制御する制御ステップを含むことを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136528(P2011−136528A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299193(P2009−299193)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】