説明

画像記録装置および画像記録方法

【課題】記録媒体やインク等の種類に制約されることなく、高いスループットにて高品質の画像記録を行う。
【解決手段】異なる色の記録処理を行う複数のノズル列32−nを記録媒体70の搬送方向に配列し、経路切換部21によって反転経路部への切換を行うことで両面記録を可能にした画像記録装置において、先行の記録媒体70aを反転経路部に導き、後続の記録媒体70bを直進させる場合に、画像記録を指示するジョブ情報に含まれる記録色の指定情報から、搬送方向に最後に動作するノズル列32−nを判別し、このノズル列32−nを記録媒体70aの後端が完全に通過したタイミングと記録媒体70aの搬送方向の長さ情報に基づいて、経路切換部21を切換(上昇)動作させるタイミングを早期化し、経路切換部21の切換動作に必要なページギャップPGを短縮してスループットを向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体の表裏両面に文字や画像(以下、画像と総称する)を記録処理する画像記録装置が知られている。この画像記録装置には、例えばインクジェット方式のフルライン型のカラープリンタがあり、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に、インク吐出のための複数のノズルを形成した記録ヘッドが、搬送方向に離間してインク色毎に配設されている。
【0003】
このような画像記録装置(カラープリンタ)では、記録媒体を給送して搬送するとともに、ノズル列(記録ヘッド)における複数のインクノズルに、記録処理を行う記録媒体を対向配置させて、搬送中の記録媒体に対して各色のインクを吐出することで、画像情報を記録している。
【0004】
また、このような画像記録装置は、記録媒体の第1面および第2面に対して、1つの画像記録部で記録を行うため、記録媒体の第1面に記録した後、反転経路を介して当該記録媒体を再び画像記録部へ搬送している。
【0005】
しかし、第1面へ記録する際の記録媒体と再給送により第2面へ記録する際の記録媒体とを搬送するタイミングを最適に制御しないと、記録媒体が搬送経路上において、先行する記録媒体と後続の記録媒体とが追突してしまう虞がある。
【0006】
特に両面印刷の場合は、経路切り替え部を切り替えて、記録媒体の搬送方向を切り替えるためページギャップ(先行と後続の記録媒体の間の距離)を広く確保するのが一般的であり、スループット(単位時間当たりの記録媒体の記録枚数)の低下の一因となっていた。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1には、両面記録をするために記録媒体を反転経路に導く経路切換部を備えた画像記録装置において、記録媒体の種類の情報に基づいて経路切換部の動作タイミングを早めることにより、ページギャップの短縮によるスループットの向上を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−207902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1では、画像記録直後の記録媒体に経路切換部が着地して接触することから、速乾性のないインクを使用した場合や、特定の種類やサイズの用紙以外の記録媒体を適用すると、経路切換部の接触の影響で記録品質が低下する懸念がある。
【0010】
本発明の目的は、記録媒体やインク等の種類に制約されることなく、高いスループットにて高品質の画像記録を行うことが可能な画像記録技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、記録媒体に記録処理を行う記録部と、前記記録部に対して前記記録媒体を相対的に搬送する搬送部と、前記搬送部に前記記録媒体を供給する給送部と、前記記録媒体を反転させて再び前記記録部に供給する反転機構部と、前記記録部を通過した前記記録媒体を前記反転機構部に送るか排出するかを切り換える経路切換部と、を含む画像記録装置であって、
前記記録媒体に対する前記記録処理を制御するジョブ情報に基づいて前記経路切換部の動作タイミングを制御する制御手段を具備した画像記録装置を提供する。
【0012】
本発明の第2の観点は、記録処理を行う記録部を通過した記録媒体をそのまま排出するか、経路切換部を経由して反転させて再び前記記録部に供給するか、を選択可能な画像記録方法であって、
前記記録媒体に対する前記記録処理を制御するジョブ情報に基づいて前記経路切換部の動作タイミングを制御する画像記録方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録媒体やインク等の種類に制約されることなく、高いスループットにて高品質の画像記録を行うことが可能な画像記録技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置を構成する機構の構成例を示す略側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である画像記録装置における作用例を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施の形態である画像記録装置における他の作用例を示す概念図である。
【図5】本発明の一実施の形態である画像記録装置で実施される画像記録方法における媒体搬送動作の制御例を示すフローチャートである。
【図6A】本発明の一実施の形態である画像記録装置における、さらに他の作用例を説明する側面図である。
【図6B】本発明の一実施の形態である画像記録装置における、さらに他の作用例を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2は、本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置を構成する機構の構成例を示す略側面図である。
【0016】
また、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向に直交する方向(主走査方向)をX方向または記録媒体の幅方向とし、記録媒体の搬送方向(副走査方向)をY方向とし、さらにXY平面に直交する方向をZ方向と記す。
【0017】
まず、本実施の形態に係わる画像記録装置の構成例を説明する。
本実施の形態に係わる画像記録装置1は、記録媒体70を供給する給送部40と、給送部40から受け渡された記録媒体70を搬送する搬送機構10(搬送部)と、記録媒体70に画像記録処理を行う画像記録部30(記録部)と、記録処理が施された記録媒体70を収納する収納部50と、記録媒体70の第2面に記録処理を行うため画像記録部30へ記録媒体70を再供給する反転経路部20(反転機構部)と、制御部2(制御手段)と、を備えている。
【0018】
この画像記録装置1は、上位装置60から発令されるジョブ情報61に基づいて、記録媒体70に対する記録動作が制御される。
【0019】
本実施の形態の場合、ジョブ情報61は、例えば、画像データサイズ61a、記録媒体_サイズ指定情報61b、記録媒体_縦/横指定情報61c、記録媒体_種類指定情報61d、記録処理枚数61e、片面/両面記録指定情報61f、解像度指定情報61g、使用記録色指定情報61h、画像データ61iが含まれている。
【0020】
画像データ61iは、記録媒体70に記録すべき情報である。
画像データサイズ61aは、記録媒体70の記録される画像データ61iの記録領域の縦横のサイズ(後述の長さ情報Liおよび幅情報Wi)、および搬送方向における記録開始位置(後述のYオフセット情報Lo)等の情報が含まれる。
【0021】
記録媒体_サイズ指定情報61bは、記録媒体70の縦横の寸法(後述の長さ情報Lp、幅情報Wp)、または、既定の長さ情報Lp、幅情報Wpを示す、A4、B5等の定形用紙の呼称の情報が含まれる。
【0022】
記録媒体_縦/横指定情報61cには、記録媒体70の画像記録部30に対する給送方向(矩形の記録媒体70の場合に短辺または長辺のいずれを先頭にするか)の情報が含まれている。
記録媒体_種類指定情報61dには、記録媒体70の厚さや紙質等の情報が含まれている。
【0023】
記録処理枚数61eには、記録媒体70の記録枚数を指定する情報が含まれている。
片面/両面記録指定情報61fには、記録媒体70に対して、片面記録を行うか、両面記録を行うか、を指定する情報が含まれている。
解像度指定情報61gには、記録媒体70に対する画像データの記録密度の情報が含まれている。
【0024】
使用記録色指定情報61hには、記録媒体70に対する画像記録に使用される色を指定する情報が含まれている。
【0025】
給送部40は、収納カセット40aと、ピックアップローラ40bと、媒体検出部40cと、レジストローラ40dで構成される。収納カセット40aは、異なる種類の記録媒体70を収容するために少なくとも1つ以上ある。ピックアップローラ40bは、1つの収納カセット40aに1つ備わり、収納カセット40aに収容された最上面の記録媒体70に当接して1枚ずつ取り出す。
【0026】
媒体検出部40cは、ピックアップローラ40bから取り出された記録媒体70を検知し、制御部2に通知する。レジストローラ40dは、前記媒体検出部40cによって検出された情報により制御部2によって制御され、記録媒体70の斜行を補正し当該記録媒体70を挟持して、搬送機構10へ受け渡す。
【0027】
さらに給送部40は、画像記録装置1における記録媒体70の搬送経路の最上流側に設けられ、記録処理が開始されると、収納された複数の記録媒体70を1枚ずつ搬送経路の下流側へ搬送する。
【0028】
画像記録部30は、制御部2の発令により、記録処理するインク80をノズル列駆動部31からの駆動信号により吐出する記録ヘッドとしての複数のノズル列32が、設計に基づく最大記録媒体幅を超える長さに配設されている。
【0029】
すなわち、ノズル列32は、記録色の数に対応して複数のノズル列32−1〜ノズル列32−nで構成されている。例えば、記録色が、ノズル列32−1から順に、C、K、M、Yの4色の場合には、n=4である。
【0030】
また、本実施の形態の場合、複数のノズル列32−1〜ノズル列32−nの各々は、記録媒体70の幅方向(主走査方向)に配列された図示しない1〜mのm個の複数の短尺ノズル列で構成され、m個の短尺ノズル列で、設計に基づく最大記録媒体幅を超える一つのノズル列32−nが構成されている。
【0031】
ノズル列駆動部31はノズル列32を制御して制御部2から出力された1ライン毎の画像情報を記録処理する。
すなわち、ノズル列駆動部31は、ノズル列32−1〜ノズル列32−nの各々に対応して、ノズル列駆動部31−1〜ノズル列駆動部31−nが設けられている。
【0032】
また、ノズル列駆動部31−1〜ノズル列駆動部31−nの各々は、ノズル列32−1〜ノズル列32−nの各々のm個の短尺ノズル列に対応して、ノズル列駆動部31−1−1〜ノズル列駆動部31−n−mを備えている。
【0033】
そして、図2の側面図では、画像記録部30における主走査方向の配列端の短尺ノズル列32−1−1〜32−n−1と、対応するノズル列駆動部31−1−1〜ノズル列駆動部31−n−1、が見えるように図示されているが、以下では、短尺ノズル列を省略してノズル列32−1〜ノズル列32−nでノズル列32に言及することとする。
【0034】
搬送機構10は、駆動ローラ13aと、搬送部材24と、従動ローラ13bと、搬送情報生成部11と、負圧部12と、搬送部ローラ40eと、で構成され、搬送部材24の搬送面が複数のノズル列32のインク吐出口に対向して設けられる。
【0035】
搬送部材24は、例えば、駆動ローラ13aと従動ローラ13bの間に架設される無端ベルト等で構成され、制御部2の発令により駆動ローラ13aを駆動させることで回転し、給送部40から受け渡された記録媒体70を搬送部ローラ40eと挟持させる。その後、記録媒体70は、負圧部12により搬送部材24に吸着されながら搬送を開始する。
【0036】
従動ローラ13bには、搬送情報生成部11における、例えばロータリエンコーダが設けられ、搬送部材24の移動量に対応したパルスを生成して制御部2に通知する構成となっている。
【0037】
反転経路部20は、経路切換部21と、経路切換部駆動ローラ21aと、反転・排出検出部21bと、図示しない搬送路と、複数の反転経路検出部22a、反転経路検出部22bと、反転ローラ対23と、で構成される。
【0038】
経路切換部21は、経路切換部駆動ローラ21aの位置を支点として、後述の排出路面部材50cに着地する位置と、排出路面部材50cから浮上した位置との間で揺動昇降する弯曲した媒体ガイド片等で構成されている。
【0039】
反転・排出検出部21bは、搬送機構10から収納部50の側に移動する記録媒体70の先端位置を検出するセンサからなる。
【0040】
そして、経路切換部21が排出路面部材50cに着地することによって、搬送機構10の側から到来する記録媒体70を当該経路切換部21に乗り移らせ、反転経路部20の側に記録媒体70の移動経路を切り換える動作が行われる。
【0041】
ジョブ情報61より第2面に記録する指示が制御部2に通知された際には、反転・排出検出部21bで検知した記録媒体70の先端位置の検出情報に基き、設定したタイミングで経路切換部駆動ローラ21aを駆動させて、経路切換部21を切り換え、反転経路部20上流側へ記録媒体70を案内する。
【0042】
反転経路部20における複数の反転経路検出部22a、反転経路検出部22bは、記録媒体70の通過状態を検出し、反転ローラ対23に挟持させて記録媒体70を反転させて、再び搬送機構10の上流側へ再供給する。
【0043】
収納部50は、排出ローラ対50aと収納トレイ50bと、排出路面部材50cで構成される。記録処理が終了した記録媒体70は、搬送機構10により排出路面部材50cに案内されて経路切換部21より下流側に設けられた排出ローラ対50aに至り、この排出ローラ対50aによって挟持されて、収納トレイ50bに収納される。
【0044】
また、上述のように、排出路面部材50cに経路切換部21が着地している場合には、搬送機構10から到来する記録媒体70は、反転経路検出部22に乗り移って反転経路部20の側に移動する。
【0045】
本実施の形態の画像記録装置1には、記録処理(画像記録)に関する情報であるジョブ情報61を制御部2に通知するホストコンピュータ等の上位装置60が接続されている。
上位装置60は、ユーザにより指定された上述のようなジョブ情報61を制御部2に通知する。
【0046】
制御部2は、駆動制御部4と、記憶部3を、備え、例えば、MPU等の処理回路により構成され、制御および処理に必要なプログラムや画像データを格納する図示しないメモリを有している。
【0047】
制御部2は、画像記録装置1のメモリに格納された画像データ61iに基づいて、当該画像データ61iにおける主走査方向の1ライン〜nラインの画像データを画像記録部30に通知して記録処理を行わせる。
【0048】
次に制御部2が備える駆動制御部4は、記録媒体70を設定されたページギャップPG値を保って給送するように制御するとともに、前記経路切換部21を設定したタイミングで、搬送経路を切り換える。
【0049】
記憶部3は、記録色に対応したページギャップPG値に関する情報と、経路切換部21を切り換えるタイミング、記録媒体70を検知してから駆動を開始する開始時間、に関する情報を有しており、駆動制御部4は、記憶部3から読み出した設定に応じて制御を行わせる。
【0050】
制御部2が有する図示しないメモリには、画像記録装置1設計時における搬送方向のノズル列32の離間距離が、前述したロータリエンコーダのパルス数に換算して予め格納され、ノズル列32からインク80の吐出開始のタイミングをパルス数として記憶している。
【0051】
そして、搬送情報生成部11から生成されたエンコーダパルスと、前述した図示しないメモリに予め格納されているノズル列毎の記録タイミングに対応するロータリエンコーダのパルス数と一致した際に、画像記録部30を駆動して、搬送部材24上の記録媒体70に向かってノズル列32からインク80を吐出し、記録処理を行わせる。
【0052】
ジョブ情報61は、記録処理の発令を行ったユーザ毎に分けられて画像記録装置1に通知され、通知されるジョブ情報61には、上述の画像データサイズ61a〜画像データ61i等が含まれる。
【0053】
上位装置60より制御部2がジョブ情報61とともに記録処理開始の通知を受けると、制御部2は、記録媒体70を1枚ずつ給送部40から決定されたページギャップPGを保って搬送機構10へ送り出す。
【0054】
上位装置60から通知されたジョブ情報61が第2面へ記録を行う場合、反転・排出検出部21bが、記録媒体70の先端を検出し、制御部2に検出信号を出力する。
【0055】
制御部2は、上位装置60から出力された記録媒体の情報に基づき、経路切換部21を反転経路部20側(第2経路側)に切り換えて、反転経路部20側に記録媒体70を案内するよう制御する。
【0056】
また、記録媒体70を収納部50側(第1経路側)に進める場合は、制御部2は経路切換部21を第1経路側に切り換えて、記録媒体70を第1経路側に進める。第1経路側に案内された記録媒体70は、排出路面部材50cに案内され、排出ローラ対50aにより収納トレイ50bに収納される。
【0057】
一方、第2経路側に案内された記録媒体70は、経路切換部21に沿って上昇し、再び搬送機構10の上流側へ案内される。
次に、上述の構成を踏まえて、実施の形態の画像記録装置1において実施される画像記録方法における搬送動作の作用の一例について説明する。
【0058】
(作用例1)
図3は、本実施の形態の画像記録装置1における作用例1を示す概念図である。
【0059】
この作用例1では、ジョブ情報61に含まれる記録色に基づいて、複数のノズル列32−nのうち、記録媒体70の搬送方向の最も下流側で当該記録色のインク80を吐出するノズル列32−nの位置を判別し、このノズル列32−nの位置と、記録媒体70の搬送方向の長さ等の情報に基づいて経路切換部21の動作タイミング(この場合、経路切換部21の上昇動作のタイミング)を早期化する例を示す。
【0060】
なお、記録色は、ジョブ情報61に含まれる使用記録色指定情報61hによって特定される。
また、記録媒体70の搬送方向の長さは、ジョブ情報61に含まれる記録媒体_サイズ指定情報61bおよび記録媒体_縦/横指定情報61cによって特定される。
【0061】
すなわち、上位装置60から通知されたジョブ情報61には、記録する画像データの記録色を指定する使用記録色指定情報61hが含まれており、図3の切換タイミング制御例Ex1、切換タイミング制御例Ex2、切換タイミング制御例Ex3は使用する記録色に応じて後続する記録媒体70bを排出側に排出するために、先行する記録媒体70aの記録処理が終了次第、経路切換部21を反転経路部20側へ切り換えるタイミングが異なっていることを表している。
【0062】
なお、ここで、複数のノズル列32−nは、例えば、記録媒体70の搬送方向の上流側から順に、K(ノズル列32−1)、C(ノズル列32−2)、M(ノズル列32−3)、Y(ノズル列32−4)の4色で構成されているが、この構成に限定するものではない。
【0063】
この図3の例では、先行する記録媒体70aが反転経路部20側、後続する記録媒体70bが排出側へ搬送される場合を示している。また、説明を分かりやすくするため、先行する記録媒体70aと後続の記録媒体70bで同じ記録色(すなわち、当該記録色のインク80を吐出するノズル列32−n)を使用する例を示している。
【0064】
図3の切換タイミング制御例Ex1は、最上流側のノズル列32−1(1色)のみを使って記録媒体70に画像記録すると通知された場合の経路切換部21を切り替え可能なタイミングを表しており、先行する記録媒体70aの後端がノズル列32−1の直後のB地点を完全に超えている状態で、かつ、経路を切り換えても先行する記録媒体70aの反転経路部20への搬送に影響がない位置まで先行する記録媒体70aが反転経路部20側に搬送されている場合に限り経路を切り換える(この場合、排出路面部材50cに着地していた経路切換部21の上昇動作を開始させる)ことができる。
【0065】
経路を切り換えるタイミングで最も速いのは、記録媒体70aの後端がB地点を超えてからであるが、画像記録に使用される用紙サイズ(記録媒体_サイズ指定情報61bおよび記録媒体_縦/横指定情報61cで決定される搬送方向の長さ)に応じて上述した条件を満たすタイミングで制御部2は、経路切換タイミングを記憶部3から読み出し、経路切換部21を切り換える。
【0066】
図3の切換タイミング制御例Ex2は、上流側から2番目までのノズル列32−2(2色)を使って記録処理を行うと通知された場合に経路切換部21を切り換え可能なタイミングを表しており、先行する記録媒体70aの後端が、ノズル列32−2の直後のC地点を完全に超えている状態で、かつ、経路を切り換えても先行する記録媒体70aの搬送に影響がない位置まで先行する記録媒体70aが反転経路部20側に搬送されている場合に限り経路を切り換えることができる。
【0067】
図3の切換タイミング制御例Ex3は、上流側から3番目までのノズル列32−3(3色)を使って画像記録すると通知された場合に経路切換部21を切り替え可能なタイミングを表しており、上述のEx1およびEx2の場合と同様に、使用するノズル列32−nの中で最下流のノズル列32−3を通過した直後のD地点を先行する記録媒体70aの後端が完全に超えている状態で、かつ、経路を切り換えても先行する記録媒体70aの搬送に影響がない位置まで先行する記録媒体70aが反転経路部20の側に搬送されている場合に限り経路を切り換えることができる。
【0068】
すなわち、この図3の例のように、先行の記録媒体70aを反転経路部20側に送り、後続の記録媒体70bをそのまま直進させて収納部50に送る場合、従来のように、記録媒体70aの後端が、画像記録部30の最後端のA地点を通過するまで、一律に経路切換部21の上昇動作を待つ場合、直進する後続の記録媒体70bを、収納部50側に通過させるための経路切換部21の上昇動作の時間を賄うためのページギャップPGが大きくなる。
【0069】
これに対して本実施の形態の上述のEx1〜Ex3のように、A地点よりも前に、上述のように所定の条件の許す限り早期に経路切換部21の上昇動作を開始させれば、後続の記録媒体70bが経路切換部21(反転・排出検出部21b)の位置に到来した時点で経路切換部21は既に上昇動作が完了しているため、記録媒体70bを通過させるための当該上昇動作の時間を賄う分だけ、記録媒体70aと記録媒体70bの間のページギャップPGを短縮することができる。
【0070】
(作用例2)
つづいて、図4を用いて、本実施の形態の作用例2として、先行する記録媒体70aを収納部50に排出し、後続する記録媒体70bを反転経路部20側に搬送するために経路切換部21を切り換える制御タイミングを説明する。
【0071】
図4は、先行する記録媒体70aが排出側、後続する記録媒体70bが反転経路部20側へ搬送される場合を示しており、制御部2は、上述の図3と同様に、上位装置60から通知されるジョブ情報61に含まれる使用記録色(使用記録色指定情報61h)を読み出して経路切換部21を切り換える。
【0072】
図4の切換タイミング制御例Ex4は、最も上流側のノズル列32−1(1色)を使って記録媒体70に画像記録すると通知された場合に経路切換部21を切り替え可能なタイミングを表しており、先行する記録媒体70aの後端が、ノズル列32−1の直後のB地点を完全に超えている状態で、かつ、経路を切り換えても先行する記録媒体70aの搬送に影響がない位置まで先行する記録媒体70aが反転経路部20側に搬送されている場合に限り経路を切り換えることができる。
【0073】
経路を切り換えるタイミングで最も速いのは、記録媒体70aの後端がB地点を超えた時点であるが、画像記録に使用される用紙サイズ(搬送方向における長さ)に応じて上述した条件を満たすタイミングで制御部2は、経路切換タイミングを記憶部3から読み出し、経路切換部21を切り換えることができる。
【0074】
図4の切換タイミング制御例Ex5、切換タイミング制御例Ex6の切り換えタイミングも同様に下流側のノズル列32−2、ノズル列32−3の画像記録が完了した時点である、C地点、D地点で経路切換部21を切り換えることにより画像記録の品質を低下させることなく経路を切り換えることができる。
【0075】
制御部2は、記録媒体70aの後端部が画像記録部30の最下流に位置するノズル列32−4の直後のA地点よりも上流側に位置した時点で経路切換部21を切り換えるときに限り、後続する記録媒体70bとのページギャップPGを縮めて、先行する記録媒体70aが経路切換部21の下を完全に通過する前に経路切換部21の切換動作を開始させて、スループットを向上させる。
【0076】
すなわち、この図4のように先行の記録媒体70aを通過させて後続の記録媒体70bを反転経路部20の側に導く場合、従来のように記録媒体70aの後端が、画像記録部30の最後端のA地点を完全に通過するのを待って、経路切換部21の下降動作を開始させると、経路切換部21の排出路面部材50cへの着地までの所要時間を賄う分だけ、ページギャップPGを大きくする必要がある。
【0077】
これに対して、本実施の形態の作用例2の図4の切換タイミング制御例Ex4〜Ex6の場合には、A地点を記録媒体70aの後端が通過する前に、経路切換部21の下降を開始させているので、経路切換部21の着地までの所要時間、すなわちページギャップPGを短縮して、スループットを向上させることができる。
【0078】
図5は、本実施の形態の画像記録装置1で実施される画像記録方法における媒体搬送動作の制御例を示すフローチャートである。
この図5に例示されるフローチャートにおける動作処理は、制御部2の演算処理装置が、駆動制御部4を実現するプログラム、または信号処理回路を制御して行われる。
【0079】
駆動制御部4は、上位装置60からジョブ情報61の送信を待ち(ステップS1)、ジョブ情報61を受信すると、駆動制御部4は、受信したジョブ情報61の片面/両面記録指定情報61fから、第2面に記録を行う(経路を切り換える)ジョブか否かを判定する(ステップS2)。
【0080】
ステップS2で、第2面に記録を行うジョブであると判定されると、駆動制御部4は、ジョブ情報61の使用記録色指定情報61hから、使用色を取得する(ステップS3)。
【0081】
さらに、駆動制御部4は、通知されたジョブ情報61(使用色の情報)から、ノズル列32−nの配列後端側で不使用の色のノズル列32−nがあり図3または図4のように経路切換部21の動作タイミングの早期化によってページギャップを短縮できるか否か判定する(ステップS4)。
【0082】
ステップS4の判定結果より、ページギャップが短縮できると判定されれば、駆動制御部4は、ステップS3で取得した使用色の情報を基に記憶部から、ページギャップと経路を切り換えるタイミングを読み出して設定し(ステップS5)、設定されたページギャップで搬送を開始させる(ステップS6)。
【0083】
一方、上述のステップS2で、第2面に記録しないジョブであると判定された場合、または、上述のステップS4で、ページギャップが短縮できないと判定された場合には、駆動制御部4は、ページギャップを短縮しないジョブの場合の通常のページギャップと経路切り換えタイミングを読み出して設定し、上述のステップS6へ処理を移行する(ステップS11)。
【0084】
上述のステップS6で記録媒体70の搬送が開始されると、駆動制御部4は、反転・排出検出部21bにおいて記録媒体70aの先端が検知されるのを待ち(ステップS7)、記録媒体70aの先端が検出されると、上述のステップS5またはステップS11で設定したタイミングで経路切換部21を上昇または下降動作させて経路を切り換えるように制御する(ステップS8)。
【0085】
駆動制御部4は、1つのジョブにおける一連の記録処理が終了したか否かを判定し(ステップS9)、未完の場合には、上述のステップS7に戻って記録媒体70の搬送制御を継続する。
【0086】
一方、駆動制御部4は、ステップS9で一つのジョブが完了したと判定された場合には、さらに、別のジョブがあるか否かを判定し(ステップS10)、別のジョブがある場合には、上述のステップS1に戻って上位装置60からのジョブ情報61の受信を待つ。
【0087】
一方、ステップS10で全てのジョブが終了したと判定されれば、記録処理の動作を終了する。
【0088】
(作用例3)
次に、本実施の形態のさらに別の作用例について図6Aおよび図6Bを参照しながら説明する。
図6Aは、本実施の形態の作用例3を説明する側面図であり、図6Bは、実施の形態の作用例3を説明する平面図である。
【0089】
この作用例3では、図6Aおよび図6Bに例示されるように、ジョブ情報61に含まれる画像記録に使用する記録色(使用記録色指定情報61h)ではなく、ジョブ情報61に含まれる画像データサイズ61aから得られる画像データ61iの搬送方向における長さ情報LiおよびYオフセット情報Loと、記録媒体_サイズ指定情報61bおよび記録媒体_縦/横指定情報61cによって定まる記録媒体70の搬送方向の長さ情報Lpに基づいて経路切換部21の制御を行なう。
【0090】
この作用例3では、記録媒体70の搬送方向の切換では、上述の作用例2と同様に、先行する記録媒体70aを直進させ、後続の記録媒体70bを反転経路部20の側に導くように動作する。
図6Bに例示されるように搬送方向であるY方向に対して、記録媒体の先端側からLo+Liの位置まで画像データ61iが記録される。
【0091】
記録媒体70の画像データ61iのY方向における記録領域(Lo+Li)内で経路切換部21を切り換える(この場合、経路切換部21を移動中の記録媒体70aの上に着地させる)と、記録媒体70aにインク80で記録された画像データ61iの画像品質に影響を及ぼす虞がある。
【0092】
そこで、この作用例3では、記録媒体70aにおいて、インク80によって画像データ61iが記録された領域の後方の空白領域に経路切換部21が着地するように切り換え動作を制御する点が、上述の作用例2と異なる。
【0093】
この作用例3の場合、先行する記録媒体70aの後端が反転・排出検出部21bを通過してから経路切換部21を制御するのではなく、記録媒体70aにおける画像データ61iの記録領域の直後に、経路切換部21が着地するように早期に経路切換部21の下降開始タイミングを制御する。
【0094】
このため、制御部2は、後続する記録媒体70bの反転・排出検出部21bの切換位置への到来時に、経路切換部21の排出路面部材50cへの着地を間に合わせる時間を賄うためにページギャップPGを大きくする必要がなくなり、先行の記録媒体70aと後続の記録媒体70bとのページギャップPGを小さくして搬送させることにより、記録媒体70における画像データ61iの記録品質に影響することなく、スループットを向上させることができる。
【0095】
例えば、画像記録部30において速乾性ではないインク80を用いて画像データ61iを記録媒体70に記録する場合に、この作用例3の効果は大きい。
【0096】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、記録媒体70に対する画像データ61iの記録処理に関するジョブ情報61に基づいて、画像記録部30で使用されるインクの種類や、記録媒体70の種類を問わず、可能な限り短い最適なページギャップPGを設定でき、記録媒体70に対する両面連続記録時、両面・片面連続記録時のスループット向上を実現できる。
【0097】
すなわち、本実施の形態によれば、記録媒体70やインク80の種類に制約されることなく、高いスループットにて高品質の画像記録を行うことが可能な画像記録方法および画像記録装置1を提供することができる。
【0098】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上述の説明では、便宜上、複数の作用例1〜3を個別に説明したが、作用例1〜3の各々に例示されている複数の構成要素や動作を適宜組み合わせることにより種々の実施の形態を構成できる。
【0099】
例えば、上述の実施の形態に例示される全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよいし、さらに異なる作用例に亘る構成要素や動作を適宜組み合わせてもよい。
また、例えば経路切換部21の駆動方法を段階的に切り換えて、後続する記録媒体70bの経路切り換えに備えてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 画像記録装置
2 制御部
3 記憶部
4 駆動制御部
10 搬送機構
11 搬送情報生成部
12 負圧部
13a 駆動ローラ
13b 従動ローラ
20 反転経路部
21 経路切換部
21a 経路切換部駆動ローラ
21b 反転・排出検出部
22 反転経路検出部
22a 反転経路検出部
22b 反転経路検出部
23 反転ローラ対
24 搬送部材
30 画像記録部
31 ノズル列駆動部
32 ノズル列
40 給送部
40a 収納カセット
40b ピックアップローラ
40c 媒体検出部
40d レジストローラ
40e 搬送部ローラ
50 収納部
50a 排出ローラ対
50b 収納トレイ
50c 排出路面部材
60 上位装置
61 ジョブ情報
61a 画像データサイズ
61b 記録媒体_サイズ指定情報
61c 記録媒体_縦/横指定情報
61d 記録媒体_種類指定情報
61e 記録処理枚数
61f 片面/両面記録指定情報
61g 解像度指定情報
61h 使用記録色指定情報
61i 画像データ
70 記録媒体
70a 記録媒体
70b 記録媒体
80 インク
PG ページギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録処理を行う記録部と、前記記録部に対して前記記録媒体を相対的に搬送する搬送部と、前記搬送部に前記記録媒体を供給する給送部と、前記記録媒体を反転させて再び前記記録部に供給する反転機構部と、前記記録部を通過した前記記録媒体を前記反転機構部に送るか排出するかを切り換える経路切換部と、を含む画像記録装置であって、
前記記録媒体に対する前記記録処理を制御するジョブ情報に基づいて前記経路切換部の動作タイミングを制御する制御手段を具備したことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像記録装置において、
前記記録部は、前記記録媒体の搬送方向に沿って配列され、互いに異なる色の記録を行う複数の記録ヘッドを備え、
前記制御手段は、前記ジョブ情報に含まれる前記記録媒体に対する記録色の情報に基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像記録装置において、
前記制御手段は、前記ジョブ情報に含まれる、前記記録媒体の搬送方向における媒体サイズ、および当該記録媒体に記録される画像情報の前記搬送方向における記録開始位置および記録範囲の情報に基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像記録装置において、
前記制御手段は、複数の前記記録ヘッドのうち、前記搬送方向で最後に動作する前記記録ヘッドの位置と、前記記録媒体のサイズに基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像記録装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体の前記記録範囲の前記搬送方向における後端の位置と前記記録媒体の前記搬送方向におけるサイズに基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
記録処理を行う記録部を通過した記録媒体をそのまま排出するか、経路切換部を経由して反転させて再び前記記録部に供給するか、を選択可能な画像記録方法であって、
前記記録媒体に対する前記記録処理を制御するジョブ情報に基づいて前記経路切換部の動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像記録方法において、
前記記録部は、前記記録媒体の搬送方向に沿って配列され、互いに異なる色の記録を行う複数の記録ヘッドを備え、
前記ジョブ情報に含まれる前記記録媒体に対する記録色の情報に基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録方法。
【請求項8】
請求項6記載の画像記録方法において、
前記ジョブ情報に含まれる、前記記録媒体の搬送方向における媒体サイズ、および当該記録媒体記録される画像情報の前記搬送方向における記録開始位置および記録範囲の情報に基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録方法。
【請求項9】
請求項7記載の画像記録方法において、
複数の前記記録ヘッドのうち、前記搬送方向で最後に動作する前記記録ヘッドの位置と、前記記録媒体のサイズに基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録方法。
【請求項10】
請求項8記載の画像記録方法において、
前記記録媒体の前記記録範囲の前記搬送方向における後端の位置と前記記録媒体の前記搬送方向におけるサイズに基づいて前記経路切換部の前記動作タイミングを制御することを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6B】
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【図3】
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【図4】
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【図6A】
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【公開番号】特開2011−255596(P2011−255596A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132482(P2010−132482)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】