画像記録装置及びその制御方法
【課題】ユーザにより選択された用紙種別と実際の用紙種別とが違っていたときに生じる問題の解決を図る。
【解決手段】
画像記録装置の制御方法は、ロール紙モードおよびカット紙モードのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程(S203)と、用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程(S211)と、回転測定工程(S211)で測定された回転量に基づいて、用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程(S213)と、用紙種別選択工程(S203)で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに、用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、カット紙モード中に搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程(S218)と、を有する。
【解決手段】
画像記録装置の制御方法は、ロール紙モードおよびカット紙モードのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程(S203)と、用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程(S211)と、回転測定工程(S211)で測定された回転量に基づいて、用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程(S213)と、用紙種別選択工程(S203)で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに、用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、カット紙モード中に搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程(S218)と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置及びその制御方法に関し、特に記録ヘッドと被記録材とを相対的に移動させて記録を行う画像記録装置及びその制御方法に関し、ロール紙とカット紙とを共通の給紙口から挿入して搬送する用紙搬送の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にインクジェット記録装置は、記録ヘッドから被記録材にインクを吐出して記録を行うものであり、記録ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少ない。さらにインクジェット記録装置は、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。
【0003】
また、一般にインクジェット記録装置は、用紙などの多様な被記録材への記録が可能である。具体的には、光沢紙やコート紙といった様々な用紙種別、A4定型サイズやA0定型サイズといった様々な用紙サイズ、更には、カット紙やロール紙といった複数種の用紙を利用することができる。この特徴を利用して、文書や写真といった一般的な印刷物のみでなく、POPやポスターなどといった多様な用途に向けた印刷物を生産できる。
【0004】
また、一般に画像記録装置には、カット紙とスプールに巻かれたロール紙とを共通の給紙口から挿入できるように構成されたものが知られている(特許文献1の図7参照)。このような構成の画像記録装置においては、用紙を画像記録装置に供給するのに先立って、ロール紙もしくはカット紙の何れの用紙を搬送するのかを、何らかの選択手段によって装置に入力する。このように事前に画像記録装置に用紙の種別を知らせることで、給紙、画像記録(例えば印字)、排紙といった各種の動作を、それぞれの用紙の種別に応じて最適に制御できる。用紙種別の選択は、画像記録装置の操作パネルに設けられ、用紙種別を選択可能に構成された複数のボタンの何れかを押下するもの(特許文献2参照)や、単一のボタンの押下時間の長さによるもの(特許文献3参照)が知られている。
【0005】
また、画像記録装置として、ロール紙とカット紙とを共通の搬送路から排紙するものが知られている。このような構成の画像記録装置は、上記のような用紙種別を選択する手段などによって、排紙する対象の用紙の種別を特定し、最適な排紙制御を行うことが望ましい。記録後の用紙の排紙のために用紙を下流に搬送するときに、所定の搬送量以内で所定の位置に用紙の後端が検出されるか否かによって、用紙種別を判別する画像記録装置(特許文献3参照)が知られている。
【0006】
また、画像記録装置には、給紙口(用紙の搬送路の入口部分)に挿入された用紙が、装置内の、画像を形成する部分(画像形成部)まで搬送される際に、用紙の種別、つまりロール紙であるかカット紙であるかを判断するものが知られている(特許文献4参照)。特許文献4に記載の画像記録装置では、ロール紙を保持するスプールの回転の有無によって用紙種別を判断し、この判断結果を画像記録動作後の用紙の切断の要否に利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−324052号公報
【特許文献2】特開2002−234222号公報
【特許文献3】特開2001−97582号公報
【特許文献4】実開平7−31391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、画像記録装置は、ユーザによって選択されている用紙種別に合わせた用紙の搬送制御を行う。そのため、選択された用紙種別と、実際に供給され搬送している用紙の種別とが合致している場合は、正常且つ最適な搬送が行なわれる。しかしながら、用紙種別が合致していない場合には、様々な問題が発生する。
【0009】
例えば、給紙時(用紙の搬送開始から用紙に記録を行う直前までの搬送時)には次のような問題が発生し得る。用紙種別としてロール紙が選択された状態(以降、“ロール紙モード”と呼ぶ)のときに、カット紙が給紙口に挿入された場合を考える。この場合、カット紙を給紙すると、カット紙は画像形成部の上流側に配置されるラインフィードローラ(以降、“LFローラ”と呼ぶ)とピンチローラからなるLFローラ対に噛み込まれ、カット紙は大きく下流方向に搬送されてしまう。ロール紙の場合には用紙長が十分に長いので、このような処理を行うことで、ロール紙の斜行補正や斜行検知が行える。しかし、カット紙は用紙長が短いので、用紙が装置外部に排紙されたり、用紙切れのエラーが誤検出されて、装置の動作が中断したりすることがある。逆に、用紙種別としてカット紙が選択された状態(以降、“カット紙モード”と呼ぶ)のときに、ロール紙が給紙口に挿入された場合を考える。この場合、ロール紙は、LFローラ対にロール紙の先端を突き当ててローラ対の上流側に所定のループを形成してから、LFローラ対に噛み込まれて下流の画像形成部に搬送される。カット紙の場合には用紙の先端が真直ぐに整っているので、このようにすることで、斜行取りや位置決めが行える。しかし、ロール紙の先端は真直ぐになっていないことがあるので、カット紙と同様に給紙すると、かえって斜行してしまったり、紙ジャムを起こしたりすることがある。
【0010】
また、排紙時(画像記録後において用紙を装置外に排出するための搬送時)には、次のような問題が発生することがある。ロール紙モードでは、用紙の、画像が形成された部分よりも上流側を、カッターで切断して、ロール紙のロール部分から切り離そうとする。ロール紙の場合には用紙長が十分に長いので問題は生じない。しかしながら、用紙がカット紙の場合には、用紙長が短いので、搬送中に用紙切れエラーと検知され、搬送動作が中断してしまう。逆に、カット紙モードのときに、ロール紙を排紙しようとすると、用紙の後端が検出されるまで、用紙を下流(排紙方向)に搬送しようとする。カット紙の場合には用紙長が短いので、直ぐに用紙の後端が検出されて搬送が停止し、排紙が正常に完了する。しかし、ロール紙は用紙長が長いので、いくら搬送しても用紙後端が検出されず、ロール紙が大量に巻き出されてしまう。用紙の後端が所定の搬送量以内に検出されないときには、用紙の搬送を停止するなどの対策を行うことも考えられる。しかしながら、A0定型サイズ(841×1189mm)などの大判のカット紙を正常に排紙することを考慮すると、上記所定の搬送量を短く設定することはできず、ロール紙が無駄に巻き出されてしまうことがある。
【0011】
したがって、ユーザにより選択された用紙種別と実際の用紙種別とが違っていたときに生じる上記問題の少なくとも1つの解決を図ることが可能な画像記録装置、およびその制御方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像記録装置は、用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置に関し、ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択手段と、ロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定手段と、用紙の搬送中に前記回転測定手段で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記用紙種別選択手段で選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定したときに、前記用紙の搬送を中断する搬送中断手段と、前記カット紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開手段と、を有する。
【0013】
また、本発明の画像記録装置の制御方法は、用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置の制御方法に関し、ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程と、用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程と、前記回転測定工程で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程と、前記用紙種別選択工程で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに前記用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、前記カット紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程と、を有する。
【0014】
さらに、本発明のプログラムは上記の画像記録装置の制御方法をコンピュータにより実行させるものであり、本発明の記憶媒体は当該プログラムを格納し、コンピュータで読み取り可能なものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定されたとき、搬送を中断するため、誤った搬送モードで搬送することに起因する用紙の斜行や紙ジャムなどを防止したり、ロール紙の大量の巻き出しを防止したりすることができる。また、一態様によれば、正常な搬送モードに切り換えて搬送を再開することで、誤った種別の用紙を取り付けてしまった場合であっても、用紙を取り付け直したり、用紙にダメージを与えたりすることなく、搬送を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像記録システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタドライバにおける画像情報の処理を説明するための構成を示すブロック図である。
【図3】画像記録装置の基本構成を示すブロック図である。
【図4】画像記録装置の斜視図である。
【図5】カット紙またはロール紙を搬送するときの画像記録装置の縦断面図である。
【図6】ロール紙を保持するスプールの分解斜視図である。
【図7】ロール紙またはロール紙を搬送するときの、一実施形態における画像記録装置の模式的断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のロール紙給紙処理のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のカット紙給紙処理のフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のリカバリ用ロール紙給紙処理のフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のカット紙排紙処理のフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の制御プログラム及びデータの供給方法を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の制御プログラム及びデータを供給する外部記憶媒体のメモリマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、画像記録装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、本発明はインクジェットプリンタに限定されず、ロール紙とカット紙とを共通の給紙口から挿入し、搬送する機構を備えた画像記録装置全般に適用できる。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る画像記録システムの概略構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施形態に係る画像記録装置(インクジェットプリンタ)100は、例えば、インクジェット方式により画像を記録するプリンタエンジン120を備えている。このプリンタエンジン120は、カラー記録用のプリンタエンジンである。画像記録装置100は、YMCKの各色に対応したインクを吐出する複数の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)を備え、これら複数の記録ヘッドを主走査方向に往復走査させて、被記録材としての用紙に画像を記録する。この画像記録装置100の構成は、図4および図5を参照して詳しく後述する。
【0019】
ホストコンピュータ200は、各種アプリケーションプログラム220、及び、インクジェットプリンタ100用のプリンタドライバ221等を、不図示のハードディスクに記憶している。本発明の画像記録装置の制御方法は、画像記録装置100自体により実行されても良く、或いはホストコンピュータ200のプリンタドライバ221により実行されても良い。このプリンタドライバ221は、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されており、プリンタ100のメーカから提供されてホストコンピュータ200のハードディスクにインストールされる。そして、プリンタドライバ221は、実行時にホストコンピュータ200のRAM223にロードされ、CPU222の制御の下に実行される。
【0020】
画像記録装置100は、このプリンタドライバ221から送られてくる記録データを受信し、指示された記録方法、例えばマルチパス記録方法により画像を記録する。尚、この画像記録装置100は、各走査において記録するドット位置を決定するためのマスク情報を備えており、このマスク情報に従って、各パスで記録するドット位置(ノズル)を決定している。但し、このマスク情報をホストコンピュータ200に設け、画像記録装置100は単に受信した記録データに基づいて記録するように構成されていてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係るプリンタドライバ221における画像情報の処理を説明するための構成を示すブロック図である。
【0022】
入力補正部301は、例えばアプリケーションプログラム220などから入力される、RGB各8ビットで表される画像データを、記録で使用されるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のそれぞれの8ビットデータに変換する。色調補正部302は、入力補正部301で補正されたCMYデータに基づいて、CMYK(黒)データを生成して出力する。出力補正部303は、画像記録装置100で記録する際、各パスで記録される画像データの値を決定している。この場合、補正用テーブル113の補正データに基づいて、各パスで記録するデータを補正しても良い。量子化部304は、出力補正部303から出力されるCMYKの各8ビットの画像データを、例えば誤差拡散法などを用いて量子化し、量子化の結果であるCMYKの各1ビットデータ(記録データ)を出力している。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置100の基本構成を示すブロック図である。尚、この画像記録装置100は、図2に示す画像処理機能を備えているものとして説明する。しかし、ホスト200側のプリンタドライバ221がこの機能を備えている場合には、画像記録装置100は、この機能を省略した、より簡易な構成となることは言うまでもない。
【0024】
画像記録装置100は、画像記録装置全体の動作を制御する制御部101を有する。ヘッドドライバ102は、制御部101からの記録データに基づいて記録ヘッド11を駆動する。モータドライバ103,104は、それぞれ対応するキャリッジモータ106およびLFモータ(ラインフィードモータ)107を回転駆動する。入力部108は、例えばホストコンピュータ200などの外部機器からの画像データを制御部101に供給している。
【0025】
次に制御部101の構成について説明する。制御部101は、マイクロプロセッサ等のCPU110、CPU110で実行されるプログラム等を記憶するプログラムメモリ111、RAM115、プリントバッファコントローラ(PBC)112、補正用テーブル113およびマスクデータ114を有する。RAM115は、CPU110の動作時に各種データを記録するワークエリアを有するとともに、記録データを格納するプリントバッファ116も備えている。PBC112は、プリントバッファ116から、プリント(画像記録)すべき記録データの取り出しを行うように制御する。補正用テーブル113は図2を参照して前述したもので、マスクデータ114は、記録ヘッド11の各走査時において記録すべき記録データを決定するために使用される。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置の斜視図である。本実施形態では、画像記録装置がインクジェット記録装置である場合を例示する。画像記録装置(装置本体)100は、記録ヘッド11、記録ヘッド11を搭載して往復移動するキャリッジ12を備えている。記録ヘッド11及びキャリッジ12により画像形成部80が構成されている。記録ヘッド11の、用紙と対向する面は吐出面と呼ばれる。吐出面には複数の吐出口列が形成され、それぞれの吐出口列から異なるインクが吐出される。各吐出口列は、複数の吐出口を所定ピッチで配列して構成されている。装置本体100にはインクタンク14が装着されており、インクタンク14から記録ヘッド11の各吐出口列に対し、各色のインク供給チューブ13を通して各色のインクが供給される。
【0027】
キャリッジ12はガイド部材であるガイドシャフト16及びガイドレール(不図示)に沿って摺動可能に案内支持されている。ガイドシャフト16及びガイドレールは、装置本体100のフレーム15等に互いに平行に固定されている。被記録材としての用紙が画像形成部80まで搬送されてくると、キャリッジ12を往復移動させながら記録ヘッド11から用紙へインクを吐出することにより、用紙に画像が形成される。なお、キャリッジ12の動きは、不図示のキャリッジモータ、タイミングベルト(駆動伝達手段)及びリニアエンコーダなどにより制御される。この記録(画像形成)を行うときは、キャリッジ12の速度を一定に保つ必要があり、キャリッジの速度はリニアエンコーダの信号により常に監視されている。キャリッジ12の移動中に何らかの負荷によってリニアエンコーダの信号が変化すると、速度を一定にするためにキャリッジモータへの供給電流を増減させる。
【0028】
図5(a)は、カット紙を搬送するときの画像表示装置の概略断面図である。図5(b)はロール紙を搬送するときの画像表示装置の概略断面図である。図6はロール紙を保持するスプールの分解斜視図である。次に、図4〜図6を用いて本実施形態に係る画像記録装置の給紙搬送機構について説明する。本実施形態では、装置本体100の底部に装着されたカセット2からカット紙Pを給紙する給紙搬送機構と、装置本体100の後部に装着されたロール紙用のスプール32からロール紙Rを給紙する給紙搬送機構とが設けられている。
【0029】
まず、装置本体100の底部に設けられた、カット紙Pの給紙搬送機構について説明する。装置本体100の底部には、被記録材であるカット紙Pを収納したカセット2が着脱自在に装着されている。カセット2のシート送り出し部には、カット紙Pを1枚ずつ分離して送り出すための給紙ローラ5及び分離ローラ6からなるローラ対が配置されている。カセット2には、複数枚のカット紙Pを、図5(a)中の矢印方向に押圧可能に積載支持するための圧板3と、複数枚のカット紙Pの側端及び後端を規制するための端縁規制板(不図示)とが設けられている。圧板3は、カセット2に揺動可能に取り付けられ、不図示のバネにより矢印方向に付勢されている。圧板カム等による規制を解除することにより、圧板3上のカット紙Pは給紙ローラ5に圧接される。不図示のモータにより給紙ローラ5が図中の反時計回りに回転することにより、圧板3上のカット紙Pの最上層の1枚が送り出される。この際、2枚目以降の下位のカット紙Pは分離ローラ6の摩擦抵抗により搬送を阻止される。
【0030】
分離ローラ6の内部には、所定の回転負荷トルクを発生するトルクリミッタが設けられている。このため、分離ローラ6は、回転負荷トルクを超えたトルクが発生した場合に、給紙ローラ5とともにカット紙Pを挟持して搬送力を発生するニップローラとして機能する。すなわち、給紙ローラ5とカット紙Pとの間の摩擦力をF1、カット紙P同士の間の摩擦力をFp、カット紙Pと分離ローラ6との間の摩擦力(回転負荷トルクの接線力)をF3とすると、これらの関係は「F1>F3>Fp」となっている。よって、最上位のカット紙Pのみがカセット2から搬送路Aへ送り出され、搬送路A中の搬送ローラ7aとピンチローラ7bのニップに到達する。
【0031】
さらに、カット紙Pは、搬送ローラ対7a、7bの搬送力を得て搬送され、画像形成部80の上流側近傍に配置された搬送ローラ9及びピンチローラ10のニップに到達する。なお、搬送ローラ対9、10の上流側には、後述するロール紙Rの搬送路Bとの切り替えを行うためのフラップ18と、ロール紙Rを給紙するための搬送ローラ対8a、8bとが配置されている。フラップ18及び搬送ローラ対8a、8bは、カット紙Pを給紙搬送するときは、図5(a)に示すような退避位置にあり、カット紙Pの搬送路Aを確保している。記録ヘッド11と対向する位置にはプラテン19が配置されており、カット紙Pは搬送ローラ9、10に挟持された状態でプラテン19上へ搬送される。そして、カット紙Pの記録面に対して画像形成(記録)が開始される。記録されたカット紙Pは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して排紙トレイ22上へ排出される。
【0032】
次に、図4〜図6を用いて、スプール32に巻かれたロール紙Rの給紙搬送機構について説明する。図6は、ロール紙Rを保持するロール紙保持手段を示している。ロール紙保持手段としてのロール紙スプール32は、ロール紙Rの巻き中心にある紙管Sに挿通されている。ロール紙スプール32の一端には、ロール紙ホルダ30が固定され、ロール紙ホルダ30の内側にはロック部30aが設けられている。挿通されたロール紙スプール32は、ロック部30aを紙管Sの内面にバネ力によって食い込ませることにより固定保持される。次いで、ロール紙スプール32の他端部を別のロール紙ホルダ31に固定することにより、ロール紙Rはロール紙スプール32に対し巻き出し可能にセットされる。つまり、ロール紙スプール32を装置本体100に回転自在に装着することにより、ロール紙Rがロール紙スプール32から巻き出し可能にセットされる。
【0033】
なお、ロール紙Rの搬送動作においては、ロール紙Rの回転による慣性力を考慮することが好ましい。このため、ロール紙スプール32にトルクリミッタ33(図6参照)を設け、ロール紙Rの回転(巻き出し及び巻き取り)に一定の負荷トルクを与えている。かかる構成によれば、搬送ローラ9の回転によってロール紙Rが自転(回転)を始めた後、搬送ローラ9が停止した際、トルクリミッタ33による負荷トルクが作用しているため、慣性力による自転を早急に収束させることができる。すなわち、搬送中のロール紙Rに、慣性力に起因する弛みが生じないように配慮されている。
【0034】
装置本体100内にセットされたロール紙Rは搬送路Bを通して送り出される。送り出されたロール紙Rは、フラップ18を押し下げるとともに、ニップ解除された搬送ローラ8a、8bの間を通過して、搬送ローラ9の手前に配置された用紙検出手段(不図示)まで送り出される。本実施形態では、搬送ローラ8aは振り子アーム式のフラップ8に軸支されている。ここまでのロール紙Rの送り出しは、ユーザによる操作で行っても良いし、自動で行っても良い。用紙検出手段によってロール紙Rが検出されると、振り子アーム式のフラップ8が回動し、搬送ローラ8aがピンチローラ8bに圧接されることでロール紙Rをニップ(挟持)する。そして、搬送ローラ8aを回転駆動することで、ロール紙Rを搬送ローラ9へ向けて自動的に繰り出していく。図5(b)は、このときの搬送機構の状態を示す。次いで、ロール紙Rは搬送ローラ9、10に挟持された状態でプラテン19上へ搬送され、ロール紙Rに対する画像形成(記録)が開始される。記録が行われたロール紙Rは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して搬送され、その後端をカッター21で裁断されて排紙トレイ22上へ排出される。
【0035】
また、搬送路Bは、ロール紙Rだけでなく、カット紙Pが通過することも可能になっている。この場合、上述のロール紙Rの搬送と同様に、装置100のカセット2とは別の場所にセットされたカット紙Pは搬送路Bを通して送り出される。このように、搬送路Bは、ロール紙およびカット紙の共通の搬送路となっている。以降、ロール紙Rの搬送と同様にしてプラテン19上へ搬送される。そして、プラテン19上に搬送された以降のカット紙は、図5(a)におけるカット紙Pの搬送と同様に、画像形成された後に排出される。搬送路Bは搬送路Aよりも緩やかに曲げられているため、比較的厚手のカット紙Pを搬送することも可能である。また、カセット2に収まらないような長尺のカット紙Pを搬送することも可能である。
【0036】
次に、図4および図5を用いて、画像形成部80における記録動作について説明する。本実施形態に係る画像記録装置はインクジェット記録装置であり、画像情報に基づいて記録ヘッド11から用紙へインクを吐出して画像を記録する。記録ヘッド11はキャリッジ12に搭載されている。装置本体100のフレーム15には、キャリッジ12の移動を案内するガイド部材16が設置されている。つまり、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ12は、ガイド部材16に沿って主走査方向に往復移動可能に案内支持されている。ガイド部材16は、シャフトで形成されており、キャリッジ12は軸受を介してガイド部材16に摺動可能に支持されている。記録ヘッド11には、複数の吐出口の配列からなる吐出口列が形成された吐出面が設けられている。用紙にカラー画像を記録する場合は、インクの種類の数に応じて複数の吐出口列が使用される。
【0037】
プラテン19上へ搬送された用紙(カット紙Pまたはロール紙R)に対し、記録ヘッド11による画像記録動作が開始される。キャリッジ12の移動に同期して記録ヘッド11による1ライン分(1走査分)の記録が終了すると、一旦記録動作を中断し、プラテン19上に位置する用紙を搬送ローラ9により所定量だけ搬送する。そして、再び記録ヘッド11をガイド部材16に沿って主走査方向に移動させながら、次の1ライン分の画像を記録する。このような1ライン分の記録と用紙の搬送とを繰り返し実行することで、用紙全体に記録が行われる。
【0038】
図4において、キャリッジ12の移動範囲であって記録領域を外れた位置(通常、ホームポジション)には、記録ヘッド11のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット23が配設されている。記録動作の待機中、記録の前後、もしくは1ライン分の記録の合間に、記録ヘッド11を回復ユニット23と対向する位置へ移動させて、所望の回復動作が行われる。回復動作としては、記録ヘッド11の吐出口をキャップで密閉するキャッピング、吐出口からインクを吸引する吸引回復、記録ヘッド11の吐出面をクリーニングするワイピングなどがある。これらの回復動作により、吐出口の目詰まり等を防止し、記録画像の画質を維持することができる。
【0039】
プラテン19上で記録ヘッド11による画像形成が行われた後、カット紙Pは、搬送ローラ20a及び拍車20bで搬送され、排紙トレイ22上へ排出される。一方、ロール紙Rは、画像形成が終了した後、搬送ローラ対9、19によってさらに下流へ搬送され、搬送ローラ20aと拍車20bでニップした状態でカッター21により裁断され、排紙トレイ22上へ排出される。なお、裁断及び排出された後、ロール部分と連結しているロール紙Rは、搬送ローラ対9、10及びロール紙スプール32を逆回転させて巻き取られ、ロール紙Rの先端を所定の位置まで後退させることにより次の画像形成に備える。
【0040】
図7(a)および図7(b)は、図5(b)における画像記録装置100の搬送路Bを用紙(カット紙Pまたはロール紙R)が搬送される様子を模式的に示した図である。
【0041】
図7(a)は、画像記録装置100がロール紙Rを搬送している様子を示している。このとき、通常、画像記録装置100の、用紙種別選択手段としての操作部(不図示)を利用して、ユーザによりロール紙モードが選択されている。ロール紙モードは、画像記録装置が用紙をロール紙として適切に搬送するように制御された搬送モードである。ロール紙Rは、ロール紙Rの紙管Sにスプール32を通した状態で、ロールカバー34を開けて、ロールカバー34内のスプール軸受け部にスプール32の両端部を載せることで、装置本体100に取り付けられる。次に、ロール紙Rの用紙先端を巻き出して、給紙口37に挿入する。そして、画像形成部80の上流側に配置された搬送ローラ9(以降、この位置の搬送ローラを特に“LFローラ”と呼ぶ)とピンチローラ10とからなるLFローラ対9,10に、ロール紙Rの先端が突き当たるまでロール紙Rを送り込む。なお、給紙口37は、搬送路Bの入り口部分である。ロール紙Rの先端が搬送路Bの途中に配置された用紙検出手段としてのPEセンサ38の位置を通過すると、PEセンサ38によりロール紙Rが検出されて、ロール紙Rの給紙動作が開始される。給紙動作が開始されると、LFモータ107が駆動して、LFローラ9が回転し、ロール紙RがLFローラ対9,10に噛み込まれて下流の画像形成部80に向けて搬送される。
【0042】
ロール紙Rは、LFローラ9の作用で下流に向けて搬送されるとき、搬送量に応じた分だけスプール32から巻き出されていくので、ロール紙Rのロール部分は、図7(a)に示す矢印の方向に回転する。このとき、ロール紙Rの紙管Sに通されて、ロール紙Rを円周方向に回転自在に支持しているスプール32が一体となって回転する。スプール32の回転は、不図示のギア列を介してエンコーダ36のコードホイールに伝達されるように構成されているので、このコードホイールの回転によって発生する状態変化をエンコーダ36が電気信号として出力する。すなわち、エンコーダ36の出力を監視することによって、間接的にスプール32の回転状況(ロール紙が巻き出される方向に回転していること)を検出することができる。
【0043】
図7(b)は、画像記録装置100がカット紙Pを搬送している様子を示している。このとき、通常、画像記録装置100の、用紙種別選択手段としての操作部よりカット紙モードが選択されている。カット紙モードは、画像記録装置が用紙をカット紙として適切に搬送するように制御された搬送モードである。カット紙Pは、ロールカバー34を閉めた状態で、カット紙ガイド35にカット紙Pを沿わせながら、カット紙Pの先端を給紙口37に挿入し、LFローラ対9,10に突き当たるまで送り込むことで装置本体100に取り付けられる。PEセンサ38によりカット紙Pの先端が検出されると、カット紙Pの給紙動作が開始する。給紙を開始すると、LFモータ107の駆動によって、LFローラ9が回転して、カット紙PをLFローラ対9,10に噛み込んだのち、カット紙Pを下流の画像形成部80に向けて搬送する。
【0044】
カット紙PがLFローラ9の作用で下流に搬送されるとき、ロール紙Rは巻き出されないので、スプール32は回転しない。よって、エンコーダ36のコードホイールも回転しないので、エンコーダ36からの出力を監視することで、ロール紙Rの回転状況(回転していないこと)を検出することができる。なお、カット紙Pを装置本体100に取り付けるときには、ロールカバー34を閉じるので、カット紙Pがスプール32に保持されているロール紙Rに接触して連れ回したり、ロール紙Rに手が触れて回転したりすることは防止される。これにより、ロール紙Rが誤って回転することに起因する誤検知は回避できる。
【0045】
次に図8〜図10のフローチャートを参照して、本実施形態の用紙の搬送処理を詳細に説明する。
【0046】
図8は、画像記録装置100におけるロール紙用の給紙処理を示している。ロール紙用の給紙処理は、給紙口37から挿入されたロール紙Rを、搬送路Bを通して、画像形成部80に位置するプラテン19に向けて搬送し、画像記録動作が可能な状態にする処理である。
【0047】
図9は、画像記録装置100におけるカット紙用の給紙処理を示している。カット紙用の給紙処理は、給紙口37から挿入されたカット紙Pを、搬送路Bを通して、画像形成部80に位置するプラテン19に向けて搬送し、画像記録動作が可能な状態にする処理である。
【0048】
図10は、画像記録装置100におけるリカバリ用ロール紙給紙処理である。リカバリ用ロール紙給紙処理は、カット紙Pの給紙処理中に、カット紙Pではない用紙(ロール紙)が検出されたときに、ロール紙として搬送処理を再開する手段である。
【0049】
ロール紙モードが選択されている状態で、用紙(カット紙Pおよびロール紙R)が給紙口37から送り込まれて、PEセンサ38が用紙を検知すると、図8に示すロール紙用の給紙処理が開始される。
【0050】
図8を参照すると、まず、PEセンサ38で検知された用紙がLFローラ対9、10にニップされるように、LFローラ9を所定量回転する(S101)。用紙がニップされると、以降の給紙動作は自動で行われるので、ユーザは用紙を送り込んでいた手を離してよい。続いて、以降の給紙及び画像記録などの動作を最適に行なうために、用紙種別選択手段が、ロール紙モードおよびカット紙モードのいずれかをユーザに選択させる(用紙種別選択工程S103)。具体的には、操作パネルの表示装置に利用可能な用紙種別が列挙され(S102)、この中から記録を行うべき用紙に合致した用紙種別を、ユーザが操作パネルのキー操作で選択する(S103)。なお、キャンセルキーなどの所定のキー操作をすることで、給紙動作を中止することが可能である(S104)。この時点で、ユーザが給紙口37に送り込んだ用紙がロール紙Rでないことに気が付いたならば、この給紙キャンセルの操作によって給紙動作を中止できる。
【0051】
用紙種別が選択されたら、用紙がLFローラ対9、10の間を通過してプラテン19上まで搬送されているかどうか、用紙の位置を確認する(S105)。用紙が搬送路Bの途中などで詰まっていたり、給紙口37からの用紙の送り込みが不十分で用紙がLFローラ対9、10に届いていなかったりする場合があるためである。ここでの用紙位置の確認は、LFローラ対9、10の下流側のプラテン19の上方に配置された光学センサ(不図示)を利用することができる。光学センサは、プラテン19の上方に位置し、プラテン19の方を向いて設置されている。用紙がプラテン19上まで搬送されていない場合は、光学センサは、例えば表面が黒色に形成されたプラテン19からの反射光(光量が小さい)を受光する。用紙がプラテン19上まで搬送されている場合は、光学センサは、例えば表面が白色の用紙からの反射光(光量が大きい)を受光する。光学センサは、受光した光の光量の違いによってプラテン19上の用紙の有無を識別できる(S106)。上記例では、プラテン19が黒色であり、用紙が白色であることを想定しているが、反射光の光量の違いが検出できれば、プラテン19および用紙の色はこれらに限定されない。プラテン19上に用紙が無かった場合には、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました。」などのメッセージを表示して(S107)、給紙動作を中断する。
【0052】
用紙がプラテン19上まで搬送されていたら、用紙を予め定められた蛇行補正開始位置39に移動する(S108)。蛇行補正開始位置39は、用紙が蛇行して搬送されている場合に、その補正を開始する位置である。この蛇行補正開始位置39を起点にして、後述する用紙の蛇行の補正および用紙の姿勢検知を行なう。これにより、安定した用紙の給紙動作が行なえる。
【0053】
続いて、後述する蛇行補正処理の開始に先立って、スプール32の回転量の監視を開始する(S109)。スプール32の回転量の監視は、図7(a)および図7(b)で示したように、スプール32の回転が伝達される、回転測定手段としてのエンコーダ36の出力を監視することで行われる。
【0054】
スプール32の回転の監視の準備ができたら、“蛇行補正処理”と呼ばれる、ロール紙の紙姿勢を矯正する処理を実施する(S110)。“蛇行”とは、用紙を搬送するにつれて、用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に用紙がずれたり用紙が弛んだりして、その位置が定まらない状態のことである。この状態を解消する蛇行補正手段として、ロール紙Rを下流に大きく引き出す手段が考えられる。具体的には、ロール紙の先端付近を把持して、ロース紙を引き出すことで、ロール紙を把持した部分より上流側のロール紙の蛇行や弛みが解消さする。本実施形態においては、蛇行補正処理におけるロール紙Rの引き出し量を300mmに設定している。300mm引き出せば、直径100mm程度の大径ロールであっても、ロール紙Rおよびスプール32がほぼ1回転するので、スプール32の回転の監視には十分である。
【0055】
ここで、ロール紙Rが弛んでいる状況を想定する。ロール紙Rのロール部分に弛みが生じていると、蛇行補正処理においてロール紙Rを引き出しても、引き出し始めでは、ロール紙Rの引き出し作用はロール部分の弛みの解消に使われてしまう。したがって、この場合、スプール32は回転しない。しかしながら、通常想定されるロール紙の弛みは100mm程度以下であるので、後半の200mmの搬送を行うと弛みが解消されて、スプール32が回転する。よって、搬送前半におけるスプール32の回転量の情報を破棄して、搬送後半でのスプール32の回転量の情報のみを有効とすることが好ましい。このように、蛇行補正処理の直後に、回転量の測定などを行うことで、スプール32の回転量が小さい場合であっても、用紙がカット紙Pであると誤って検知する虞が低減される。具体的には、まず、蛇行補正処理における用紙の搬送状況を監視して、前半の搬送、ここでは100mmの搬送が行われているかを確認する(S111)。LFローラ9は、エンコーダ(不図示)と共に構成されているので、LFモータ107の駆動によってどれだけLFローラ9が回転したか、すなわち用紙がどれだけ搬送されたかが随時フィードバックされる。
【0056】
用紙が十分搬送され、前半の搬送が済んだら、これまでのスプール32の回転の監視によって取得された回転量の情報を破棄する(S112)。こうすることで、これ以降に検出されるスプール32の回転量の情報のみが、後述のスプール32の回転監視の終了時に残る。
【0057】
そして、蛇行補正処理のための用紙の搬送が所定の距離、ここでは300mmに達するのを待って(S113)、スプール32の回転監視を停止する(S114)。ここで、スプール32の回転監視によってサンプリングされたエンコーダ36の出力(パルス数)に基づいて、スプール32の回転量を測定する(S115)。エンコーダ36のコードホイールは所定のギア比でスプール32と連結されているので、エンコーダ36のパルス数と、コードホイールの解像度と、ギア比とから、スプール32の回転量を計算によって導出することができる(回転測定手段)。
【0058】
続いて、予めメモリに記憶してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S116)。このしきい値と導出したスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中において、スプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる(S117)。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量を回転判定しきい値に設定している。スプール32が1/4回転していれば、搬送中の用紙がロール紙であると推定できるからである。また、回転測定手段は、スプール32の回転方向を検出し、回転方向がロールを巻き解いたときに回転する方向と一致しているか否かも考慮して、ロール紙であるか否かを判定すると、判定の精度が向上するためより好ましい。
【0059】
前記ロール紙モード中にスプール32が十分に回転していなかったときは、搬送している用紙がカット紙Pであると推定されるので給紙動作を中断する(搬送中断工程)。この場合、まず、カット紙Pの後端近傍をLFローラ対9、10でニップするために、PEセンサ38が用紙を検出しなくなる状態までLFローラ9を下流方向に回転させ、カット紙を排送する(第2の搬送再開工程S118)。このようにして、カット紙Pと判定されている用紙を画像表示装置100から取り出しやすいようにしている。続いて、操作パネルの表示部に「用紙がロール紙ではありません」などのメッセージを表示して(S119)、用紙が、選択された用紙種別と一致していない旨を通知するとともに、カット紙モードへの設定変更、もしくはロール紙を供給し直すことをユーザに促す。
【0060】
スプール32が十分に回転していたときは、搬送している用紙がロール紙Rであると推定され、選択されているロール紙モードと合致するので、ロール紙モードでの給紙動作を継続する。この場合、上述した蛇行補正処理によって引き出したロール紙Rを、段階的に引き戻しながら用紙姿勢の検知を行う(S120)。このときの引き戻し動作では、ロール紙Rのロール部分に弛みが発生しないように、LFローラに同期しながら巻き取り手段(不図示)によってロール紙Rの巻き取りを行う。ここでは、用紙の先端、左端および右端の各端部の数箇所ずつを、プラテン19の上方に配置した用紙端部検知手段(不図示)にて検出する。用紙端部検知手段は、前述の光学センサと同一であることが好ましい。用紙端部検知手段による用紙端部の検知結果によって、搬送方向および主走査方向における用紙位置、斜行量、用紙幅が得られる。その後、用紙先端を所定の記録待機位置に移動して記録開始に備える(S121)。本実施形態においては、LFローラ対9、10の下流3mmの位置として、記録領域(印字領域)をニップし続けないようにしている。
【0061】
カット紙モードが選択されている状態で、用紙が給紙口37から送り込まれて、PEセンサ38が用紙を検知すると、図9に示すカット紙用の給紙処理を開始する。
【0062】
図9を参照すると、まず、PEセンサ38で検知された用紙がLFローラ対9、10にニップされるように、LFローラ9を所定量回転させる(S201)。用紙がニップされると、以降の給紙動作は自動で行われるので、ユーザは用紙を送り込んでいた手を離してよい。続いて、以降の給紙動作及び画像記録動作などを適切に行なうために、用紙種別選択手段としての表示部は、ユーザに用紙種別を選択させる。具体的には、操作パネルの表示部に利用可能な用紙種別を表示し(S202)、これらの中から実際に給紙する用紙に合致した用紙種別を、ユーザが操作パネルのキー操作で選択する(S203)。なお、キャンセルキーなどの所定のキー操作をすることで、給紙動作を中止することが可能である(S204)。この時点で、ユーザが給紙口37に送り込んだ用紙がカット紙Pでないことに気が付いたら、この給紙キャンセル操作によって給紙動作を中止できる。
【0063】
用紙種別が選択されたら、用紙がLFローラ対9、10の間を通過してプラテン19上まで搬送されているか否かを確認する(S205)。用紙が搬送路Bの途中などで紙詰まりを起こしていたり、給紙口37からの送り込みが不十分でLFローラ対9、10に届いていなかったりすることがあるためである。ここでの用紙位置の確認は、LFローラ対9、10の下流側のプラテン19上方に配置された光学センサを利用することができる。光学センサは、図8に示すステップS106において、ロール紙Rがプラテン19上にあるか否かを検出する光学センサと同じである。光学センサで受光した光の光量の違いによって、光学センサの位置における用紙の有無が識別できる(S206)。用紙が検出できなかった場合には、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました」などのメッセージを表示して(S207)、給紙動作を中断する。
【0064】
用紙がプラテン19上まで搬送されていたら、後述する用紙姿勢検知ために行われる搬送処理の開始に先立って、スプール32の回転の監視を開始する(S208)。スプール32の回転の監視は、図7で説明したように、スプール32の回転が伝達されるエンコーダ36の出力を監視することで行う。
【0065】
スプール32の回転の監視の準備ができたら、“用紙姿勢検知”と呼ばれる、カット紙Pの紙姿勢を検知するための搬送処理を実施する(S209)。用紙姿勢検知は、光学センサによって用紙の各端部の位置を検知する。このとき、プラテン19の下流に用紙を所定量搬送することで、用紙の先端付近での検出を避けて、用紙のカールの影響を受け難いようにすることが好ましい。本実施形態においては、用紙姿勢検知での、カット紙Pの搬送量を50mmに設定している。これは、給紙中の用紙がロール紙Rであった場合、直径100mmの大径ロールであっても、ロール紙およびスプール32がほぼ1/6回転するので、スプール32の回転の監視には十分だからである。図7(b)を用いて説明したように、カット紙Pであればスプール32が回転しないので、少しでも搬送下流方向へのスプール32の回転が検出されれば、カット紙Pでないと推定できる。
【0066】
そして、用紙の姿勢検知のための、所定の50mmの搬送が完了するのを待って、スプール32の回転監視を停止する(S210)。ここで、スプール32の回転監視によってサンプリングされたエンコーダ36の出力(パルス数)に基づいて、スプール32の回転量を取得する(S211)。エンコーダ36のコードホイールは所定のギア比でスプール32と連結されているので、エンコーダ36のパルス数とコードホイールの解像度と、ギア比とから、スプール32の回転量は計算によって導出することができる。
【0067】
続いて、予め用意してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S212)。このしきい値とスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中においてスプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる(S213)。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量をしきい値に設定している。これだけ回転していれば、搬送中の用紙がカット紙Pでないと推定できる。
【0068】
前記カット紙モード中にスプール32が回転していたときは、搬送している用紙がカット紙Pでないと推定されるので、用紙の給紙動作を中断する。まず、操作パネルの表示部に「カット紙を取り付けてください」などのメッセージを表示して(S214)する。次に「ロール紙として給紙しますか? Yes→[OK]/No→[Cancel]」などのメッセージを表示して、リカバリ動作の要否の選択を要求する(第1の搬送再開選択工程S215、S216)。
【0069】
リカバリ動作は、誤ってカット紙モードのまま、給紙口37にロール紙Rを送り込んでしまったことを救済するために、カット紙モードで搬送中の用紙を、ロール紙モードに切り換えて搬送を再開するものである。本実施形態において、搬送再開選択手段による選択肢は、「ロール紙として給紙する」、「ロール紙として給紙しない」の2択であることが好ましく、それぞれ操作パネルのOKキーまたはCancelキーをユーザが押下することで選択できる。
【0070】
ユーザにより、ロール紙Rとして搬送しないことが選択されたときは、搬送路Bに残留している用紙を搬送路Bの外に排出する(S217)。用紙は、既にカット紙Pでないと判断されているので、ロール紙Rであるものとして上流側に向けて巻き取る。これにより、搬送路B内に残留する用紙は無くなるので、この後、ユーザは必要に応じて用紙を取り付ければよい。
【0071】
ユーザにより、ロール紙Rとして搬送することが選択されたときは、搬送路Bに残留している用紙を、ロール紙モードに切り換えて搬送する(第1の搬送再開工程)。具体的には、まず、搬送路B内の用紙をロール紙Rとして取り扱うために、搬送モードをカット紙モードからロール紙モードに切替える(S218)。これにより、この後の搬送動作を含めて、記録や排紙といった全てのプリンタ動作が、ロール紙Rに対して最適化された動作となる。この場合、カット紙モードで途中まで搬送されたロール紙Rは、一旦、画像待機位置に移動される(S219)。続いて、後述するリカバリ用ロール紙給紙処理を実施して(S220)、給紙動作を終了する。
【0072】
図9に示すカット紙モードにおいて、給紙している用紙がカット紙でないと判定されて、更にユーザによりロール紙モードとして給紙を再開することが選択されると、図10に示すリカバリ用ロール紙給紙処理(S220)が実施されることが好ましい。
【0073】
図10を参照すると、リカバリ用ロール紙給紙処理(S220)では、まずロール紙Rを搬送して、ロール紙Rを蛇行補正開始位置39に移動する(S301)。続いて、ロール紙Rの蛇行を補正するために、ロール紙Rを下流に所定量搬送する(S302)。本実施形態においては、この所定量は、図8に示すロール紙給紙処理での蛇行補正の場合と同じ300mmとしている。続いて、所定量引き出したロール紙Rを、段階的に巻き戻しながら用紙姿勢の検知を行う(S303)。最後に、用紙先端を所定の記録待機位置に位置させて、記録の開始に備える(S304)。
【0074】
本実施形態におけるリカバリ用ロール紙給紙処理は、図8に示す、用紙がLFローラにニップされる工程S101以降の処理と同様である。但し、用紙がロール紙Rであると確定しているので、蛇行補正時のスプール32の回転の監視は不要である。
【0075】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、用紙を、記録の開始に備えた記録待機位置へ搬送(給紙)する給紙動作時に、用紙の種別の判定を行っているが、本発明はこれに限られるものではない。用紙がカット紙であるかロール紙であるかを特定するための処理は、用紙への記録中または記録後にも行うことができる。
【0076】
カット紙モードでの動作時に、誤って給紙口37に送り込まれたロール紙Rのロール部分に著しい弛みが生じていた場合、スプール32が正常に回転せず、用紙種別の判定が適切に行われない可能性がある。つまり、ロール紙Rを搬送しても、ロール紙の巻き出しの作用がロール部分の弛みの解消に使われてしまうので、スプール32が回転しない。
【0077】
このような場合でも、画像記録動作や排紙動作によって、用紙が更に下流に搬送されていく過程でロール部分の弛みが解消され、ロール紙Rのロール部分およびスプール32が回転するようになる。よって、記録を開始するまでの給紙動作より後の動作においても、用紙種別の判定を行うことで、用紙の排紙までにロール紙であることを検出して、不適切な排紙動作になることを回避することができる。
【0078】
図11のフローチャートを参照して、本実施形態の用紙の搬送処理を詳細に説明する。図11は、画像記録装置100におけるカット紙モードでの排紙処理(カット紙排紙処理)を示している。カット紙排紙処理は、画像記録動作によって画像形成されたカット紙Pを排紙トレイ22に排出する処理である。ホストコンピュータ200からの指示に従って、画像形成部80において画像記録動作が行なわれた後、排紙動作に移行する。
【0079】
図11を参照すると、まずカット紙Pの最大排紙長さをメモリから取得する(S401)。“最大排紙長さ”とは、画像記録装置100が取り扱い可能な、最も長いカット紙の用紙長に、所定のマージンを加えた長さである。本実施形態においては、用紙長が1600mmのカット紙を排出できるように、所定のマージンを加えて、最大排紙長さを1700mmに設定している。
【0080】
続いて、予め用意してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S402)。回転判定しきい値とスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中において、スプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量を回転判定しきい値に設定している。これだけ回転していれば、搬送中の用紙がカット紙でないと推定できる。
【0081】
続いて、後述する排紙トレイ22への搬送処理の開始に先立って、スプール32の回転監視を開始する(S403)。スプール32の回転監視は、図7の説明で示したように、スプール32の回転が伝達される回転測定手段としてのエンコーダ36(図7参照)の出力を監視することで行われる。
【0082】
スプール32の回転監視の準備ができたら、用紙を排紙トレイ22に排出するために、下流方向に用紙の搬送を開始する(S404)。搬送が開始されたら、用紙の後端が所定位置に達するかどうかを監視する(S405)。搬送路Bに設けられたPEセンサ38が用紙を検知している状態から用紙を検知しない状態に変化することを監視することで、用紙の後端が検出される。用紙の後端が検出されるまで、下流方向へ用紙の搬送を続けることで、如何なる用紙長のカット紙であっても用紙の後端が搬送路B上のLFローラ対9、10の直ぐ上流の所定位置まで移動する。
【0083】
用紙の後端が検出されないときは、現時点までの搬送量を取得して(S406)、当該搬送量が最大排紙長さに達しているか否かを評価する(S407)。これにより、搬送不良などによって用紙が搬送路Bに詰まったとしても、用紙の後端が検出できずにいつまでも搬送し続けようとすることを防止することができる。
【0084】
搬送量が最大排紙長さに達していないときは、スプール32の回転監視で得られた、現時点までのスプールの回転量を取得する(S408)。このスプール回転量と回転判定しきい値とを比較して、スプール32が回転していたか否かを判定する(S409)。スプール32が回転していないときは、搬送中の用紙はカット紙Pであると推定できるので、用紙の後端を監視しながら搬送を継続する。
【0085】
スプール32が回転していたときは、搬送中の用紙がカット紙Pでないと推定されるので、用紙の搬送を直ちに停止する(S410)。用紙がロール紙Rであった場合には、画像形成されていない未使用の部分までロール紙が巻き出されてしまうので、これを最小限に止めるためである。続いて、スプール32の回転監視を停止する(S411)。その後、操作パネルの表示部に「カット紙を取り付けてください」などのメッセージを表示して(S412)、カット紙排紙処理を終了する。この場合、ユーザは、手作業でロール紙Rの画像形成部分(記録部分)を切り離してから、ロール紙Rを搬送路Bから除去する。
【0086】
用紙の搬送量が最大排紙長さに達したか否かの監視(S407)において、最大排紙長さに達していたときは、搬送不良の可能性があるので、用紙の搬送を直ちに停止する(S413)。この場合、引き続いて、スプール32の回転監視を停止する(S414)。その後、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました」などのメッセージを表示して(S415)、排紙処理を終了する。
【0087】
用紙の後端の監視(S405)において、用紙の後端が検出されたときは、搬送している用紙がカット紙であり、更にカット紙Pの後端がLFローラ対9、10の直ぐ上流の所定位置まで搬送されたことが確認できたので、このまま更に搬送を続ける(S416)。このときの搬送量は、PEセンサ38から、装置100の排紙口までの距離にマージンを加えた距離であり、用紙長に関わらずにこの距離だけ搬送することで、用紙後端が排紙口を通過して、カット紙Pが排紙トレイ22に排出される。その後、スプール32の回転監視を停止して(S417)、排紙処理を終了する。
【0088】
[第3の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙給紙動作の過程で実施される搬送動作(蛇行補正動作)によってロール紙Rのロール部分の弛みが解消されるのを待ってから、実質的なスプール32の回転監視を行うようにしているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0089】
ロール紙巻取り手段(不図示)によってロール紙を巻き取り方向に回転させることで、積極的にロール部分の弛みを解消することが可能である。より具体的には、画像記録装置100側からモータ駆動によって発生させた駆動量を、必要な減速比を持って構成されたギア列を介して、スプール32に伝達させる。そして、スプール32とともにロール紙のロール部分を回転させられるように構成して、ロール紙が巻き取られる方向に回転が伝達されるように、モータを所定の方向に駆動する。これにより、蛇行補正動作に先立って、ロール部分の弛みを解消する動作を実施することができる。したがって、蛇行補正動作による搬送の始めからスプール32が回転し始めるため、蛇行補正動作の開始時からスプール32の回転監視を開始することができるようになる。蛇行補正動作の開始時から用紙種別の判定を行えるので、より正確に用紙を特定することができる。
【0090】
また、ロール紙モードでの搬送処理だけでなく、カット紙モードでの搬送(カット紙給紙処理やカット紙排紙処理)においても、スプール32の回転監視の開始に先立って、弛みを解消する動作を実施しても良い。これにより、ロール紙Rのロール部分の弛みの影響を取り除いた状態で、回転測定手段による用紙種別の特定をすることができる。
【0091】
[第4の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙モードで搬送している用紙がロール紙でないと判定されたときには、給紙動作を中断して終了していたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0092】
ロール紙でないと判定された用紙、すなわちカット紙の後端が搬送路Bの上流側に残った状態で給紙動作が中断されている場合には、このまま継続してカット紙モードで給紙を再開することができる(搬送再開手段)。例えば、搬送路Bが途中で他の搬送路Aと合流するように構成されている場合には、この合流点より下流にカット紙の後端が搬送されてしまうと、バックフィードしたときに合流点で用紙が詰まることがあるため、上流に向けて用紙を搬送できない。よって、この合流点に用紙の後端が達する前に、ロール紙でないと判定されて用紙の搬送が停止されれば、用紙のバックフィード可能であるので、カット紙モードで給紙を再開することができる。
【0093】
[第5の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙モードで搬送している用紙がロール紙であるか否かを判定するとき(S117)に、予め用意しておいた回転判定しきい値を利用していたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0094】
ロール紙Rの場合、用紙を下流方向に搬送するときの移動量に相当したスプール32の回転量が検出されるはずである。したがって、ロール紙Rの弛みがなく、スプール32が回転したときの理論上の回転量を基準にして、理論上の回転量に所定の比率をかけた回転量を、回転判定しきい値とすることで、より正確な判定ができる。例えば、ロール部分が直径100mmのときに、200mmだけ用紙を搬送して用紙種別の判定を行う場合、200mm/(100mm×円周率)≒0.6回転が理論上の回転量となる。そのため、この回転量の80%である約0.5回転に相当する回転量を回転判定しきい値とすることが好ましい。ロール紙が巻き出されたときの回転量が最も小さくなるのは、ロール部分の直径が最大のときである。したがって、上記のように、回転判定しきい値として、理論上の回転量を算出する際、ロール部分に最大のロール紙が巻かれているときの直径(最大径)を用いることが好ましい。上記例では、このことを考慮して、ロール部分の最大径を100mmとしている。
【0095】
[第6の実施形態]
図12は、ホストコンピュータ200に接続される外部記憶媒体の一例としてフレキシブルディスク200aを使用した場合を示している。上記実施形態では、ROMに格納された各制御プログラム及びデータをメモリにロードして実行させる例を示した。しかし、フレキシブルディスク200a等の記憶媒体に記録された制御プログラム及びデータを、外部記憶読取装置200bが接続されたホストコンピュータ200から、プリンタ100に設けられたフラッシュROMに記録し、そこからメモリにロードしてもよい。
【0096】
また、制御プログラム及びを記録する記録媒体は、フレキシブルディスク以外にCD−ROM、ICメモリカード等であってもよい。
【0097】
図13に示すメモリマップのフレキシブルディスクを、ホストコンピュータ200に接続されたフレキシブルディスクドライブに読み取らせ、プリンタ100に転送することで、プリンタ100に制御プログラムを供給することができる。
【0098】
図13は、ホストコンピュータ200に接続される外部記憶媒体の一例としてフレキシブルディスク200aを使用した場合のメモリマップである。メモリマップは、ボリューム情報記憶領域201aと、ディレクトリ情報記憶領域201bと、制御プログラム格納領域201cと、制御プログラムにおいて使用されるデータ(回転判定しきい値等)が記憶されるデータ記憶領域201dとを有している。制御プログラム格納領域201cには、所定の制御プログラムが格納されている。所定の制御プラグラムとしては、印刷処理プログラム、図8に示す処理を行うロール紙給紙処理プログラム、図9に示す処理を行うカット紙給紙処理プログラムおよび図10に示す処理を行うリカバリ用ロール紙給紙プログラム等がある。
【符号の説明】
【0099】
32 スプール
36 エンコーダ
B 搬送路
R ロール紙
P カット紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置及びその制御方法に関し、特に記録ヘッドと被記録材とを相対的に移動させて記録を行う画像記録装置及びその制御方法に関し、ロール紙とカット紙とを共通の給紙口から挿入して搬送する用紙搬送の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にインクジェット記録装置は、記録ヘッドから被記録材にインクを吐出して記録を行うものであり、記録ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少ない。さらにインクジェット記録装置は、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。
【0003】
また、一般にインクジェット記録装置は、用紙などの多様な被記録材への記録が可能である。具体的には、光沢紙やコート紙といった様々な用紙種別、A4定型サイズやA0定型サイズといった様々な用紙サイズ、更には、カット紙やロール紙といった複数種の用紙を利用することができる。この特徴を利用して、文書や写真といった一般的な印刷物のみでなく、POPやポスターなどといった多様な用途に向けた印刷物を生産できる。
【0004】
また、一般に画像記録装置には、カット紙とスプールに巻かれたロール紙とを共通の給紙口から挿入できるように構成されたものが知られている(特許文献1の図7参照)。このような構成の画像記録装置においては、用紙を画像記録装置に供給するのに先立って、ロール紙もしくはカット紙の何れの用紙を搬送するのかを、何らかの選択手段によって装置に入力する。このように事前に画像記録装置に用紙の種別を知らせることで、給紙、画像記録(例えば印字)、排紙といった各種の動作を、それぞれの用紙の種別に応じて最適に制御できる。用紙種別の選択は、画像記録装置の操作パネルに設けられ、用紙種別を選択可能に構成された複数のボタンの何れかを押下するもの(特許文献2参照)や、単一のボタンの押下時間の長さによるもの(特許文献3参照)が知られている。
【0005】
また、画像記録装置として、ロール紙とカット紙とを共通の搬送路から排紙するものが知られている。このような構成の画像記録装置は、上記のような用紙種別を選択する手段などによって、排紙する対象の用紙の種別を特定し、最適な排紙制御を行うことが望ましい。記録後の用紙の排紙のために用紙を下流に搬送するときに、所定の搬送量以内で所定の位置に用紙の後端が検出されるか否かによって、用紙種別を判別する画像記録装置(特許文献3参照)が知られている。
【0006】
また、画像記録装置には、給紙口(用紙の搬送路の入口部分)に挿入された用紙が、装置内の、画像を形成する部分(画像形成部)まで搬送される際に、用紙の種別、つまりロール紙であるかカット紙であるかを判断するものが知られている(特許文献4参照)。特許文献4に記載の画像記録装置では、ロール紙を保持するスプールの回転の有無によって用紙種別を判断し、この判断結果を画像記録動作後の用紙の切断の要否に利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−324052号公報
【特許文献2】特開2002−234222号公報
【特許文献3】特開2001−97582号公報
【特許文献4】実開平7−31391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、画像記録装置は、ユーザによって選択されている用紙種別に合わせた用紙の搬送制御を行う。そのため、選択された用紙種別と、実際に供給され搬送している用紙の種別とが合致している場合は、正常且つ最適な搬送が行なわれる。しかしながら、用紙種別が合致していない場合には、様々な問題が発生する。
【0009】
例えば、給紙時(用紙の搬送開始から用紙に記録を行う直前までの搬送時)には次のような問題が発生し得る。用紙種別としてロール紙が選択された状態(以降、“ロール紙モード”と呼ぶ)のときに、カット紙が給紙口に挿入された場合を考える。この場合、カット紙を給紙すると、カット紙は画像形成部の上流側に配置されるラインフィードローラ(以降、“LFローラ”と呼ぶ)とピンチローラからなるLFローラ対に噛み込まれ、カット紙は大きく下流方向に搬送されてしまう。ロール紙の場合には用紙長が十分に長いので、このような処理を行うことで、ロール紙の斜行補正や斜行検知が行える。しかし、カット紙は用紙長が短いので、用紙が装置外部に排紙されたり、用紙切れのエラーが誤検出されて、装置の動作が中断したりすることがある。逆に、用紙種別としてカット紙が選択された状態(以降、“カット紙モード”と呼ぶ)のときに、ロール紙が給紙口に挿入された場合を考える。この場合、ロール紙は、LFローラ対にロール紙の先端を突き当ててローラ対の上流側に所定のループを形成してから、LFローラ対に噛み込まれて下流の画像形成部に搬送される。カット紙の場合には用紙の先端が真直ぐに整っているので、このようにすることで、斜行取りや位置決めが行える。しかし、ロール紙の先端は真直ぐになっていないことがあるので、カット紙と同様に給紙すると、かえって斜行してしまったり、紙ジャムを起こしたりすることがある。
【0010】
また、排紙時(画像記録後において用紙を装置外に排出するための搬送時)には、次のような問題が発生することがある。ロール紙モードでは、用紙の、画像が形成された部分よりも上流側を、カッターで切断して、ロール紙のロール部分から切り離そうとする。ロール紙の場合には用紙長が十分に長いので問題は生じない。しかしながら、用紙がカット紙の場合には、用紙長が短いので、搬送中に用紙切れエラーと検知され、搬送動作が中断してしまう。逆に、カット紙モードのときに、ロール紙を排紙しようとすると、用紙の後端が検出されるまで、用紙を下流(排紙方向)に搬送しようとする。カット紙の場合には用紙長が短いので、直ぐに用紙の後端が検出されて搬送が停止し、排紙が正常に完了する。しかし、ロール紙は用紙長が長いので、いくら搬送しても用紙後端が検出されず、ロール紙が大量に巻き出されてしまう。用紙の後端が所定の搬送量以内に検出されないときには、用紙の搬送を停止するなどの対策を行うことも考えられる。しかしながら、A0定型サイズ(841×1189mm)などの大判のカット紙を正常に排紙することを考慮すると、上記所定の搬送量を短く設定することはできず、ロール紙が無駄に巻き出されてしまうことがある。
【0011】
したがって、ユーザにより選択された用紙種別と実際の用紙種別とが違っていたときに生じる上記問題の少なくとも1つの解決を図ることが可能な画像記録装置、およびその制御方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像記録装置は、用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置に関し、ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択手段と、ロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定手段と、用紙の搬送中に前記回転測定手段で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記用紙種別選択手段で選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定したときに、前記用紙の搬送を中断する搬送中断手段と、前記カット紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開手段と、を有する。
【0013】
また、本発明の画像記録装置の制御方法は、用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置の制御方法に関し、ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程と、用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程と、前記回転測定工程で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程と、前記用紙種別選択工程で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに前記用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、前記カット紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程と、を有する。
【0014】
さらに、本発明のプログラムは上記の画像記録装置の制御方法をコンピュータにより実行させるものであり、本発明の記憶媒体は当該プログラムを格納し、コンピュータで読み取り可能なものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定されたとき、搬送を中断するため、誤った搬送モードで搬送することに起因する用紙の斜行や紙ジャムなどを防止したり、ロール紙の大量の巻き出しを防止したりすることができる。また、一態様によれば、正常な搬送モードに切り換えて搬送を再開することで、誤った種別の用紙を取り付けてしまった場合であっても、用紙を取り付け直したり、用紙にダメージを与えたりすることなく、搬送を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像記録システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタドライバにおける画像情報の処理を説明するための構成を示すブロック図である。
【図3】画像記録装置の基本構成を示すブロック図である。
【図4】画像記録装置の斜視図である。
【図5】カット紙またはロール紙を搬送するときの画像記録装置の縦断面図である。
【図6】ロール紙を保持するスプールの分解斜視図である。
【図7】ロール紙またはロール紙を搬送するときの、一実施形態における画像記録装置の模式的断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のロール紙給紙処理のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のカット紙給紙処理のフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のリカバリ用ロール紙給紙処理のフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係る画像記録装置のカット紙排紙処理のフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の制御プログラム及びデータの供給方法を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の制御プログラム及びデータを供給する外部記憶媒体のメモリマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、画像記録装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、本発明はインクジェットプリンタに限定されず、ロール紙とカット紙とを共通の給紙口から挿入し、搬送する機構を備えた画像記録装置全般に適用できる。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る画像記録システムの概略構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施形態に係る画像記録装置(インクジェットプリンタ)100は、例えば、インクジェット方式により画像を記録するプリンタエンジン120を備えている。このプリンタエンジン120は、カラー記録用のプリンタエンジンである。画像記録装置100は、YMCKの各色に対応したインクを吐出する複数の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)を備え、これら複数の記録ヘッドを主走査方向に往復走査させて、被記録材としての用紙に画像を記録する。この画像記録装置100の構成は、図4および図5を参照して詳しく後述する。
【0019】
ホストコンピュータ200は、各種アプリケーションプログラム220、及び、インクジェットプリンタ100用のプリンタドライバ221等を、不図示のハードディスクに記憶している。本発明の画像記録装置の制御方法は、画像記録装置100自体により実行されても良く、或いはホストコンピュータ200のプリンタドライバ221により実行されても良い。このプリンタドライバ221は、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されており、プリンタ100のメーカから提供されてホストコンピュータ200のハードディスクにインストールされる。そして、プリンタドライバ221は、実行時にホストコンピュータ200のRAM223にロードされ、CPU222の制御の下に実行される。
【0020】
画像記録装置100は、このプリンタドライバ221から送られてくる記録データを受信し、指示された記録方法、例えばマルチパス記録方法により画像を記録する。尚、この画像記録装置100は、各走査において記録するドット位置を決定するためのマスク情報を備えており、このマスク情報に従って、各パスで記録するドット位置(ノズル)を決定している。但し、このマスク情報をホストコンピュータ200に設け、画像記録装置100は単に受信した記録データに基づいて記録するように構成されていてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係るプリンタドライバ221における画像情報の処理を説明するための構成を示すブロック図である。
【0022】
入力補正部301は、例えばアプリケーションプログラム220などから入力される、RGB各8ビットで表される画像データを、記録で使用されるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のそれぞれの8ビットデータに変換する。色調補正部302は、入力補正部301で補正されたCMYデータに基づいて、CMYK(黒)データを生成して出力する。出力補正部303は、画像記録装置100で記録する際、各パスで記録される画像データの値を決定している。この場合、補正用テーブル113の補正データに基づいて、各パスで記録するデータを補正しても良い。量子化部304は、出力補正部303から出力されるCMYKの各8ビットの画像データを、例えば誤差拡散法などを用いて量子化し、量子化の結果であるCMYKの各1ビットデータ(記録データ)を出力している。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置100の基本構成を示すブロック図である。尚、この画像記録装置100は、図2に示す画像処理機能を備えているものとして説明する。しかし、ホスト200側のプリンタドライバ221がこの機能を備えている場合には、画像記録装置100は、この機能を省略した、より簡易な構成となることは言うまでもない。
【0024】
画像記録装置100は、画像記録装置全体の動作を制御する制御部101を有する。ヘッドドライバ102は、制御部101からの記録データに基づいて記録ヘッド11を駆動する。モータドライバ103,104は、それぞれ対応するキャリッジモータ106およびLFモータ(ラインフィードモータ)107を回転駆動する。入力部108は、例えばホストコンピュータ200などの外部機器からの画像データを制御部101に供給している。
【0025】
次に制御部101の構成について説明する。制御部101は、マイクロプロセッサ等のCPU110、CPU110で実行されるプログラム等を記憶するプログラムメモリ111、RAM115、プリントバッファコントローラ(PBC)112、補正用テーブル113およびマスクデータ114を有する。RAM115は、CPU110の動作時に各種データを記録するワークエリアを有するとともに、記録データを格納するプリントバッファ116も備えている。PBC112は、プリントバッファ116から、プリント(画像記録)すべき記録データの取り出しを行うように制御する。補正用テーブル113は図2を参照して前述したもので、マスクデータ114は、記録ヘッド11の各走査時において記録すべき記録データを決定するために使用される。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置の斜視図である。本実施形態では、画像記録装置がインクジェット記録装置である場合を例示する。画像記録装置(装置本体)100は、記録ヘッド11、記録ヘッド11を搭載して往復移動するキャリッジ12を備えている。記録ヘッド11及びキャリッジ12により画像形成部80が構成されている。記録ヘッド11の、用紙と対向する面は吐出面と呼ばれる。吐出面には複数の吐出口列が形成され、それぞれの吐出口列から異なるインクが吐出される。各吐出口列は、複数の吐出口を所定ピッチで配列して構成されている。装置本体100にはインクタンク14が装着されており、インクタンク14から記録ヘッド11の各吐出口列に対し、各色のインク供給チューブ13を通して各色のインクが供給される。
【0027】
キャリッジ12はガイド部材であるガイドシャフト16及びガイドレール(不図示)に沿って摺動可能に案内支持されている。ガイドシャフト16及びガイドレールは、装置本体100のフレーム15等に互いに平行に固定されている。被記録材としての用紙が画像形成部80まで搬送されてくると、キャリッジ12を往復移動させながら記録ヘッド11から用紙へインクを吐出することにより、用紙に画像が形成される。なお、キャリッジ12の動きは、不図示のキャリッジモータ、タイミングベルト(駆動伝達手段)及びリニアエンコーダなどにより制御される。この記録(画像形成)を行うときは、キャリッジ12の速度を一定に保つ必要があり、キャリッジの速度はリニアエンコーダの信号により常に監視されている。キャリッジ12の移動中に何らかの負荷によってリニアエンコーダの信号が変化すると、速度を一定にするためにキャリッジモータへの供給電流を増減させる。
【0028】
図5(a)は、カット紙を搬送するときの画像表示装置の概略断面図である。図5(b)はロール紙を搬送するときの画像表示装置の概略断面図である。図6はロール紙を保持するスプールの分解斜視図である。次に、図4〜図6を用いて本実施形態に係る画像記録装置の給紙搬送機構について説明する。本実施形態では、装置本体100の底部に装着されたカセット2からカット紙Pを給紙する給紙搬送機構と、装置本体100の後部に装着されたロール紙用のスプール32からロール紙Rを給紙する給紙搬送機構とが設けられている。
【0029】
まず、装置本体100の底部に設けられた、カット紙Pの給紙搬送機構について説明する。装置本体100の底部には、被記録材であるカット紙Pを収納したカセット2が着脱自在に装着されている。カセット2のシート送り出し部には、カット紙Pを1枚ずつ分離して送り出すための給紙ローラ5及び分離ローラ6からなるローラ対が配置されている。カセット2には、複数枚のカット紙Pを、図5(a)中の矢印方向に押圧可能に積載支持するための圧板3と、複数枚のカット紙Pの側端及び後端を規制するための端縁規制板(不図示)とが設けられている。圧板3は、カセット2に揺動可能に取り付けられ、不図示のバネにより矢印方向に付勢されている。圧板カム等による規制を解除することにより、圧板3上のカット紙Pは給紙ローラ5に圧接される。不図示のモータにより給紙ローラ5が図中の反時計回りに回転することにより、圧板3上のカット紙Pの最上層の1枚が送り出される。この際、2枚目以降の下位のカット紙Pは分離ローラ6の摩擦抵抗により搬送を阻止される。
【0030】
分離ローラ6の内部には、所定の回転負荷トルクを発生するトルクリミッタが設けられている。このため、分離ローラ6は、回転負荷トルクを超えたトルクが発生した場合に、給紙ローラ5とともにカット紙Pを挟持して搬送力を発生するニップローラとして機能する。すなわち、給紙ローラ5とカット紙Pとの間の摩擦力をF1、カット紙P同士の間の摩擦力をFp、カット紙Pと分離ローラ6との間の摩擦力(回転負荷トルクの接線力)をF3とすると、これらの関係は「F1>F3>Fp」となっている。よって、最上位のカット紙Pのみがカセット2から搬送路Aへ送り出され、搬送路A中の搬送ローラ7aとピンチローラ7bのニップに到達する。
【0031】
さらに、カット紙Pは、搬送ローラ対7a、7bの搬送力を得て搬送され、画像形成部80の上流側近傍に配置された搬送ローラ9及びピンチローラ10のニップに到達する。なお、搬送ローラ対9、10の上流側には、後述するロール紙Rの搬送路Bとの切り替えを行うためのフラップ18と、ロール紙Rを給紙するための搬送ローラ対8a、8bとが配置されている。フラップ18及び搬送ローラ対8a、8bは、カット紙Pを給紙搬送するときは、図5(a)に示すような退避位置にあり、カット紙Pの搬送路Aを確保している。記録ヘッド11と対向する位置にはプラテン19が配置されており、カット紙Pは搬送ローラ9、10に挟持された状態でプラテン19上へ搬送される。そして、カット紙Pの記録面に対して画像形成(記録)が開始される。記録されたカット紙Pは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して排紙トレイ22上へ排出される。
【0032】
次に、図4〜図6を用いて、スプール32に巻かれたロール紙Rの給紙搬送機構について説明する。図6は、ロール紙Rを保持するロール紙保持手段を示している。ロール紙保持手段としてのロール紙スプール32は、ロール紙Rの巻き中心にある紙管Sに挿通されている。ロール紙スプール32の一端には、ロール紙ホルダ30が固定され、ロール紙ホルダ30の内側にはロック部30aが設けられている。挿通されたロール紙スプール32は、ロック部30aを紙管Sの内面にバネ力によって食い込ませることにより固定保持される。次いで、ロール紙スプール32の他端部を別のロール紙ホルダ31に固定することにより、ロール紙Rはロール紙スプール32に対し巻き出し可能にセットされる。つまり、ロール紙スプール32を装置本体100に回転自在に装着することにより、ロール紙Rがロール紙スプール32から巻き出し可能にセットされる。
【0033】
なお、ロール紙Rの搬送動作においては、ロール紙Rの回転による慣性力を考慮することが好ましい。このため、ロール紙スプール32にトルクリミッタ33(図6参照)を設け、ロール紙Rの回転(巻き出し及び巻き取り)に一定の負荷トルクを与えている。かかる構成によれば、搬送ローラ9の回転によってロール紙Rが自転(回転)を始めた後、搬送ローラ9が停止した際、トルクリミッタ33による負荷トルクが作用しているため、慣性力による自転を早急に収束させることができる。すなわち、搬送中のロール紙Rに、慣性力に起因する弛みが生じないように配慮されている。
【0034】
装置本体100内にセットされたロール紙Rは搬送路Bを通して送り出される。送り出されたロール紙Rは、フラップ18を押し下げるとともに、ニップ解除された搬送ローラ8a、8bの間を通過して、搬送ローラ9の手前に配置された用紙検出手段(不図示)まで送り出される。本実施形態では、搬送ローラ8aは振り子アーム式のフラップ8に軸支されている。ここまでのロール紙Rの送り出しは、ユーザによる操作で行っても良いし、自動で行っても良い。用紙検出手段によってロール紙Rが検出されると、振り子アーム式のフラップ8が回動し、搬送ローラ8aがピンチローラ8bに圧接されることでロール紙Rをニップ(挟持)する。そして、搬送ローラ8aを回転駆動することで、ロール紙Rを搬送ローラ9へ向けて自動的に繰り出していく。図5(b)は、このときの搬送機構の状態を示す。次いで、ロール紙Rは搬送ローラ9、10に挟持された状態でプラテン19上へ搬送され、ロール紙Rに対する画像形成(記録)が開始される。記録が行われたロール紙Rは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して搬送され、その後端をカッター21で裁断されて排紙トレイ22上へ排出される。
【0035】
また、搬送路Bは、ロール紙Rだけでなく、カット紙Pが通過することも可能になっている。この場合、上述のロール紙Rの搬送と同様に、装置100のカセット2とは別の場所にセットされたカット紙Pは搬送路Bを通して送り出される。このように、搬送路Bは、ロール紙およびカット紙の共通の搬送路となっている。以降、ロール紙Rの搬送と同様にしてプラテン19上へ搬送される。そして、プラテン19上に搬送された以降のカット紙は、図5(a)におけるカット紙Pの搬送と同様に、画像形成された後に排出される。搬送路Bは搬送路Aよりも緩やかに曲げられているため、比較的厚手のカット紙Pを搬送することも可能である。また、カセット2に収まらないような長尺のカット紙Pを搬送することも可能である。
【0036】
次に、図4および図5を用いて、画像形成部80における記録動作について説明する。本実施形態に係る画像記録装置はインクジェット記録装置であり、画像情報に基づいて記録ヘッド11から用紙へインクを吐出して画像を記録する。記録ヘッド11はキャリッジ12に搭載されている。装置本体100のフレーム15には、キャリッジ12の移動を案内するガイド部材16が設置されている。つまり、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ12は、ガイド部材16に沿って主走査方向に往復移動可能に案内支持されている。ガイド部材16は、シャフトで形成されており、キャリッジ12は軸受を介してガイド部材16に摺動可能に支持されている。記録ヘッド11には、複数の吐出口の配列からなる吐出口列が形成された吐出面が設けられている。用紙にカラー画像を記録する場合は、インクの種類の数に応じて複数の吐出口列が使用される。
【0037】
プラテン19上へ搬送された用紙(カット紙Pまたはロール紙R)に対し、記録ヘッド11による画像記録動作が開始される。キャリッジ12の移動に同期して記録ヘッド11による1ライン分(1走査分)の記録が終了すると、一旦記録動作を中断し、プラテン19上に位置する用紙を搬送ローラ9により所定量だけ搬送する。そして、再び記録ヘッド11をガイド部材16に沿って主走査方向に移動させながら、次の1ライン分の画像を記録する。このような1ライン分の記録と用紙の搬送とを繰り返し実行することで、用紙全体に記録が行われる。
【0038】
図4において、キャリッジ12の移動範囲であって記録領域を外れた位置(通常、ホームポジション)には、記録ヘッド11のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット23が配設されている。記録動作の待機中、記録の前後、もしくは1ライン分の記録の合間に、記録ヘッド11を回復ユニット23と対向する位置へ移動させて、所望の回復動作が行われる。回復動作としては、記録ヘッド11の吐出口をキャップで密閉するキャッピング、吐出口からインクを吸引する吸引回復、記録ヘッド11の吐出面をクリーニングするワイピングなどがある。これらの回復動作により、吐出口の目詰まり等を防止し、記録画像の画質を維持することができる。
【0039】
プラテン19上で記録ヘッド11による画像形成が行われた後、カット紙Pは、搬送ローラ20a及び拍車20bで搬送され、排紙トレイ22上へ排出される。一方、ロール紙Rは、画像形成が終了した後、搬送ローラ対9、19によってさらに下流へ搬送され、搬送ローラ20aと拍車20bでニップした状態でカッター21により裁断され、排紙トレイ22上へ排出される。なお、裁断及び排出された後、ロール部分と連結しているロール紙Rは、搬送ローラ対9、10及びロール紙スプール32を逆回転させて巻き取られ、ロール紙Rの先端を所定の位置まで後退させることにより次の画像形成に備える。
【0040】
図7(a)および図7(b)は、図5(b)における画像記録装置100の搬送路Bを用紙(カット紙Pまたはロール紙R)が搬送される様子を模式的に示した図である。
【0041】
図7(a)は、画像記録装置100がロール紙Rを搬送している様子を示している。このとき、通常、画像記録装置100の、用紙種別選択手段としての操作部(不図示)を利用して、ユーザによりロール紙モードが選択されている。ロール紙モードは、画像記録装置が用紙をロール紙として適切に搬送するように制御された搬送モードである。ロール紙Rは、ロール紙Rの紙管Sにスプール32を通した状態で、ロールカバー34を開けて、ロールカバー34内のスプール軸受け部にスプール32の両端部を載せることで、装置本体100に取り付けられる。次に、ロール紙Rの用紙先端を巻き出して、給紙口37に挿入する。そして、画像形成部80の上流側に配置された搬送ローラ9(以降、この位置の搬送ローラを特に“LFローラ”と呼ぶ)とピンチローラ10とからなるLFローラ対9,10に、ロール紙Rの先端が突き当たるまでロール紙Rを送り込む。なお、給紙口37は、搬送路Bの入り口部分である。ロール紙Rの先端が搬送路Bの途中に配置された用紙検出手段としてのPEセンサ38の位置を通過すると、PEセンサ38によりロール紙Rが検出されて、ロール紙Rの給紙動作が開始される。給紙動作が開始されると、LFモータ107が駆動して、LFローラ9が回転し、ロール紙RがLFローラ対9,10に噛み込まれて下流の画像形成部80に向けて搬送される。
【0042】
ロール紙Rは、LFローラ9の作用で下流に向けて搬送されるとき、搬送量に応じた分だけスプール32から巻き出されていくので、ロール紙Rのロール部分は、図7(a)に示す矢印の方向に回転する。このとき、ロール紙Rの紙管Sに通されて、ロール紙Rを円周方向に回転自在に支持しているスプール32が一体となって回転する。スプール32の回転は、不図示のギア列を介してエンコーダ36のコードホイールに伝達されるように構成されているので、このコードホイールの回転によって発生する状態変化をエンコーダ36が電気信号として出力する。すなわち、エンコーダ36の出力を監視することによって、間接的にスプール32の回転状況(ロール紙が巻き出される方向に回転していること)を検出することができる。
【0043】
図7(b)は、画像記録装置100がカット紙Pを搬送している様子を示している。このとき、通常、画像記録装置100の、用紙種別選択手段としての操作部よりカット紙モードが選択されている。カット紙モードは、画像記録装置が用紙をカット紙として適切に搬送するように制御された搬送モードである。カット紙Pは、ロールカバー34を閉めた状態で、カット紙ガイド35にカット紙Pを沿わせながら、カット紙Pの先端を給紙口37に挿入し、LFローラ対9,10に突き当たるまで送り込むことで装置本体100に取り付けられる。PEセンサ38によりカット紙Pの先端が検出されると、カット紙Pの給紙動作が開始する。給紙を開始すると、LFモータ107の駆動によって、LFローラ9が回転して、カット紙PをLFローラ対9,10に噛み込んだのち、カット紙Pを下流の画像形成部80に向けて搬送する。
【0044】
カット紙PがLFローラ9の作用で下流に搬送されるとき、ロール紙Rは巻き出されないので、スプール32は回転しない。よって、エンコーダ36のコードホイールも回転しないので、エンコーダ36からの出力を監視することで、ロール紙Rの回転状況(回転していないこと)を検出することができる。なお、カット紙Pを装置本体100に取り付けるときには、ロールカバー34を閉じるので、カット紙Pがスプール32に保持されているロール紙Rに接触して連れ回したり、ロール紙Rに手が触れて回転したりすることは防止される。これにより、ロール紙Rが誤って回転することに起因する誤検知は回避できる。
【0045】
次に図8〜図10のフローチャートを参照して、本実施形態の用紙の搬送処理を詳細に説明する。
【0046】
図8は、画像記録装置100におけるロール紙用の給紙処理を示している。ロール紙用の給紙処理は、給紙口37から挿入されたロール紙Rを、搬送路Bを通して、画像形成部80に位置するプラテン19に向けて搬送し、画像記録動作が可能な状態にする処理である。
【0047】
図9は、画像記録装置100におけるカット紙用の給紙処理を示している。カット紙用の給紙処理は、給紙口37から挿入されたカット紙Pを、搬送路Bを通して、画像形成部80に位置するプラテン19に向けて搬送し、画像記録動作が可能な状態にする処理である。
【0048】
図10は、画像記録装置100におけるリカバリ用ロール紙給紙処理である。リカバリ用ロール紙給紙処理は、カット紙Pの給紙処理中に、カット紙Pではない用紙(ロール紙)が検出されたときに、ロール紙として搬送処理を再開する手段である。
【0049】
ロール紙モードが選択されている状態で、用紙(カット紙Pおよびロール紙R)が給紙口37から送り込まれて、PEセンサ38が用紙を検知すると、図8に示すロール紙用の給紙処理が開始される。
【0050】
図8を参照すると、まず、PEセンサ38で検知された用紙がLFローラ対9、10にニップされるように、LFローラ9を所定量回転する(S101)。用紙がニップされると、以降の給紙動作は自動で行われるので、ユーザは用紙を送り込んでいた手を離してよい。続いて、以降の給紙及び画像記録などの動作を最適に行なうために、用紙種別選択手段が、ロール紙モードおよびカット紙モードのいずれかをユーザに選択させる(用紙種別選択工程S103)。具体的には、操作パネルの表示装置に利用可能な用紙種別が列挙され(S102)、この中から記録を行うべき用紙に合致した用紙種別を、ユーザが操作パネルのキー操作で選択する(S103)。なお、キャンセルキーなどの所定のキー操作をすることで、給紙動作を中止することが可能である(S104)。この時点で、ユーザが給紙口37に送り込んだ用紙がロール紙Rでないことに気が付いたならば、この給紙キャンセルの操作によって給紙動作を中止できる。
【0051】
用紙種別が選択されたら、用紙がLFローラ対9、10の間を通過してプラテン19上まで搬送されているかどうか、用紙の位置を確認する(S105)。用紙が搬送路Bの途中などで詰まっていたり、給紙口37からの用紙の送り込みが不十分で用紙がLFローラ対9、10に届いていなかったりする場合があるためである。ここでの用紙位置の確認は、LFローラ対9、10の下流側のプラテン19の上方に配置された光学センサ(不図示)を利用することができる。光学センサは、プラテン19の上方に位置し、プラテン19の方を向いて設置されている。用紙がプラテン19上まで搬送されていない場合は、光学センサは、例えば表面が黒色に形成されたプラテン19からの反射光(光量が小さい)を受光する。用紙がプラテン19上まで搬送されている場合は、光学センサは、例えば表面が白色の用紙からの反射光(光量が大きい)を受光する。光学センサは、受光した光の光量の違いによってプラテン19上の用紙の有無を識別できる(S106)。上記例では、プラテン19が黒色であり、用紙が白色であることを想定しているが、反射光の光量の違いが検出できれば、プラテン19および用紙の色はこれらに限定されない。プラテン19上に用紙が無かった場合には、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました。」などのメッセージを表示して(S107)、給紙動作を中断する。
【0052】
用紙がプラテン19上まで搬送されていたら、用紙を予め定められた蛇行補正開始位置39に移動する(S108)。蛇行補正開始位置39は、用紙が蛇行して搬送されている場合に、その補正を開始する位置である。この蛇行補正開始位置39を起点にして、後述する用紙の蛇行の補正および用紙の姿勢検知を行なう。これにより、安定した用紙の給紙動作が行なえる。
【0053】
続いて、後述する蛇行補正処理の開始に先立って、スプール32の回転量の監視を開始する(S109)。スプール32の回転量の監視は、図7(a)および図7(b)で示したように、スプール32の回転が伝達される、回転測定手段としてのエンコーダ36の出力を監視することで行われる。
【0054】
スプール32の回転の監視の準備ができたら、“蛇行補正処理”と呼ばれる、ロール紙の紙姿勢を矯正する処理を実施する(S110)。“蛇行”とは、用紙を搬送するにつれて、用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に用紙がずれたり用紙が弛んだりして、その位置が定まらない状態のことである。この状態を解消する蛇行補正手段として、ロール紙Rを下流に大きく引き出す手段が考えられる。具体的には、ロール紙の先端付近を把持して、ロース紙を引き出すことで、ロール紙を把持した部分より上流側のロール紙の蛇行や弛みが解消さする。本実施形態においては、蛇行補正処理におけるロール紙Rの引き出し量を300mmに設定している。300mm引き出せば、直径100mm程度の大径ロールであっても、ロール紙Rおよびスプール32がほぼ1回転するので、スプール32の回転の監視には十分である。
【0055】
ここで、ロール紙Rが弛んでいる状況を想定する。ロール紙Rのロール部分に弛みが生じていると、蛇行補正処理においてロール紙Rを引き出しても、引き出し始めでは、ロール紙Rの引き出し作用はロール部分の弛みの解消に使われてしまう。したがって、この場合、スプール32は回転しない。しかしながら、通常想定されるロール紙の弛みは100mm程度以下であるので、後半の200mmの搬送を行うと弛みが解消されて、スプール32が回転する。よって、搬送前半におけるスプール32の回転量の情報を破棄して、搬送後半でのスプール32の回転量の情報のみを有効とすることが好ましい。このように、蛇行補正処理の直後に、回転量の測定などを行うことで、スプール32の回転量が小さい場合であっても、用紙がカット紙Pであると誤って検知する虞が低減される。具体的には、まず、蛇行補正処理における用紙の搬送状況を監視して、前半の搬送、ここでは100mmの搬送が行われているかを確認する(S111)。LFローラ9は、エンコーダ(不図示)と共に構成されているので、LFモータ107の駆動によってどれだけLFローラ9が回転したか、すなわち用紙がどれだけ搬送されたかが随時フィードバックされる。
【0056】
用紙が十分搬送され、前半の搬送が済んだら、これまでのスプール32の回転の監視によって取得された回転量の情報を破棄する(S112)。こうすることで、これ以降に検出されるスプール32の回転量の情報のみが、後述のスプール32の回転監視の終了時に残る。
【0057】
そして、蛇行補正処理のための用紙の搬送が所定の距離、ここでは300mmに達するのを待って(S113)、スプール32の回転監視を停止する(S114)。ここで、スプール32の回転監視によってサンプリングされたエンコーダ36の出力(パルス数)に基づいて、スプール32の回転量を測定する(S115)。エンコーダ36のコードホイールは所定のギア比でスプール32と連結されているので、エンコーダ36のパルス数と、コードホイールの解像度と、ギア比とから、スプール32の回転量を計算によって導出することができる(回転測定手段)。
【0058】
続いて、予めメモリに記憶してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S116)。このしきい値と導出したスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中において、スプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる(S117)。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量を回転判定しきい値に設定している。スプール32が1/4回転していれば、搬送中の用紙がロール紙であると推定できるからである。また、回転測定手段は、スプール32の回転方向を検出し、回転方向がロールを巻き解いたときに回転する方向と一致しているか否かも考慮して、ロール紙であるか否かを判定すると、判定の精度が向上するためより好ましい。
【0059】
前記ロール紙モード中にスプール32が十分に回転していなかったときは、搬送している用紙がカット紙Pであると推定されるので給紙動作を中断する(搬送中断工程)。この場合、まず、カット紙Pの後端近傍をLFローラ対9、10でニップするために、PEセンサ38が用紙を検出しなくなる状態までLFローラ9を下流方向に回転させ、カット紙を排送する(第2の搬送再開工程S118)。このようにして、カット紙Pと判定されている用紙を画像表示装置100から取り出しやすいようにしている。続いて、操作パネルの表示部に「用紙がロール紙ではありません」などのメッセージを表示して(S119)、用紙が、選択された用紙種別と一致していない旨を通知するとともに、カット紙モードへの設定変更、もしくはロール紙を供給し直すことをユーザに促す。
【0060】
スプール32が十分に回転していたときは、搬送している用紙がロール紙Rであると推定され、選択されているロール紙モードと合致するので、ロール紙モードでの給紙動作を継続する。この場合、上述した蛇行補正処理によって引き出したロール紙Rを、段階的に引き戻しながら用紙姿勢の検知を行う(S120)。このときの引き戻し動作では、ロール紙Rのロール部分に弛みが発生しないように、LFローラに同期しながら巻き取り手段(不図示)によってロール紙Rの巻き取りを行う。ここでは、用紙の先端、左端および右端の各端部の数箇所ずつを、プラテン19の上方に配置した用紙端部検知手段(不図示)にて検出する。用紙端部検知手段は、前述の光学センサと同一であることが好ましい。用紙端部検知手段による用紙端部の検知結果によって、搬送方向および主走査方向における用紙位置、斜行量、用紙幅が得られる。その後、用紙先端を所定の記録待機位置に移動して記録開始に備える(S121)。本実施形態においては、LFローラ対9、10の下流3mmの位置として、記録領域(印字領域)をニップし続けないようにしている。
【0061】
カット紙モードが選択されている状態で、用紙が給紙口37から送り込まれて、PEセンサ38が用紙を検知すると、図9に示すカット紙用の給紙処理を開始する。
【0062】
図9を参照すると、まず、PEセンサ38で検知された用紙がLFローラ対9、10にニップされるように、LFローラ9を所定量回転させる(S201)。用紙がニップされると、以降の給紙動作は自動で行われるので、ユーザは用紙を送り込んでいた手を離してよい。続いて、以降の給紙動作及び画像記録動作などを適切に行なうために、用紙種別選択手段としての表示部は、ユーザに用紙種別を選択させる。具体的には、操作パネルの表示部に利用可能な用紙種別を表示し(S202)、これらの中から実際に給紙する用紙に合致した用紙種別を、ユーザが操作パネルのキー操作で選択する(S203)。なお、キャンセルキーなどの所定のキー操作をすることで、給紙動作を中止することが可能である(S204)。この時点で、ユーザが給紙口37に送り込んだ用紙がカット紙Pでないことに気が付いたら、この給紙キャンセル操作によって給紙動作を中止できる。
【0063】
用紙種別が選択されたら、用紙がLFローラ対9、10の間を通過してプラテン19上まで搬送されているか否かを確認する(S205)。用紙が搬送路Bの途中などで紙詰まりを起こしていたり、給紙口37からの送り込みが不十分でLFローラ対9、10に届いていなかったりすることがあるためである。ここでの用紙位置の確認は、LFローラ対9、10の下流側のプラテン19上方に配置された光学センサを利用することができる。光学センサは、図8に示すステップS106において、ロール紙Rがプラテン19上にあるか否かを検出する光学センサと同じである。光学センサで受光した光の光量の違いによって、光学センサの位置における用紙の有無が識別できる(S206)。用紙が検出できなかった場合には、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました」などのメッセージを表示して(S207)、給紙動作を中断する。
【0064】
用紙がプラテン19上まで搬送されていたら、後述する用紙姿勢検知ために行われる搬送処理の開始に先立って、スプール32の回転の監視を開始する(S208)。スプール32の回転の監視は、図7で説明したように、スプール32の回転が伝達されるエンコーダ36の出力を監視することで行う。
【0065】
スプール32の回転の監視の準備ができたら、“用紙姿勢検知”と呼ばれる、カット紙Pの紙姿勢を検知するための搬送処理を実施する(S209)。用紙姿勢検知は、光学センサによって用紙の各端部の位置を検知する。このとき、プラテン19の下流に用紙を所定量搬送することで、用紙の先端付近での検出を避けて、用紙のカールの影響を受け難いようにすることが好ましい。本実施形態においては、用紙姿勢検知での、カット紙Pの搬送量を50mmに設定している。これは、給紙中の用紙がロール紙Rであった場合、直径100mmの大径ロールであっても、ロール紙およびスプール32がほぼ1/6回転するので、スプール32の回転の監視には十分だからである。図7(b)を用いて説明したように、カット紙Pであればスプール32が回転しないので、少しでも搬送下流方向へのスプール32の回転が検出されれば、カット紙Pでないと推定できる。
【0066】
そして、用紙の姿勢検知のための、所定の50mmの搬送が完了するのを待って、スプール32の回転監視を停止する(S210)。ここで、スプール32の回転監視によってサンプリングされたエンコーダ36の出力(パルス数)に基づいて、スプール32の回転量を取得する(S211)。エンコーダ36のコードホイールは所定のギア比でスプール32と連結されているので、エンコーダ36のパルス数とコードホイールの解像度と、ギア比とから、スプール32の回転量は計算によって導出することができる。
【0067】
続いて、予め用意してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S212)。このしきい値とスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中においてスプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる(S213)。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量をしきい値に設定している。これだけ回転していれば、搬送中の用紙がカット紙Pでないと推定できる。
【0068】
前記カット紙モード中にスプール32が回転していたときは、搬送している用紙がカット紙Pでないと推定されるので、用紙の給紙動作を中断する。まず、操作パネルの表示部に「カット紙を取り付けてください」などのメッセージを表示して(S214)する。次に「ロール紙として給紙しますか? Yes→[OK]/No→[Cancel]」などのメッセージを表示して、リカバリ動作の要否の選択を要求する(第1の搬送再開選択工程S215、S216)。
【0069】
リカバリ動作は、誤ってカット紙モードのまま、給紙口37にロール紙Rを送り込んでしまったことを救済するために、カット紙モードで搬送中の用紙を、ロール紙モードに切り換えて搬送を再開するものである。本実施形態において、搬送再開選択手段による選択肢は、「ロール紙として給紙する」、「ロール紙として給紙しない」の2択であることが好ましく、それぞれ操作パネルのOKキーまたはCancelキーをユーザが押下することで選択できる。
【0070】
ユーザにより、ロール紙Rとして搬送しないことが選択されたときは、搬送路Bに残留している用紙を搬送路Bの外に排出する(S217)。用紙は、既にカット紙Pでないと判断されているので、ロール紙Rであるものとして上流側に向けて巻き取る。これにより、搬送路B内に残留する用紙は無くなるので、この後、ユーザは必要に応じて用紙を取り付ければよい。
【0071】
ユーザにより、ロール紙Rとして搬送することが選択されたときは、搬送路Bに残留している用紙を、ロール紙モードに切り換えて搬送する(第1の搬送再開工程)。具体的には、まず、搬送路B内の用紙をロール紙Rとして取り扱うために、搬送モードをカット紙モードからロール紙モードに切替える(S218)。これにより、この後の搬送動作を含めて、記録や排紙といった全てのプリンタ動作が、ロール紙Rに対して最適化された動作となる。この場合、カット紙モードで途中まで搬送されたロール紙Rは、一旦、画像待機位置に移動される(S219)。続いて、後述するリカバリ用ロール紙給紙処理を実施して(S220)、給紙動作を終了する。
【0072】
図9に示すカット紙モードにおいて、給紙している用紙がカット紙でないと判定されて、更にユーザによりロール紙モードとして給紙を再開することが選択されると、図10に示すリカバリ用ロール紙給紙処理(S220)が実施されることが好ましい。
【0073】
図10を参照すると、リカバリ用ロール紙給紙処理(S220)では、まずロール紙Rを搬送して、ロール紙Rを蛇行補正開始位置39に移動する(S301)。続いて、ロール紙Rの蛇行を補正するために、ロール紙Rを下流に所定量搬送する(S302)。本実施形態においては、この所定量は、図8に示すロール紙給紙処理での蛇行補正の場合と同じ300mmとしている。続いて、所定量引き出したロール紙Rを、段階的に巻き戻しながら用紙姿勢の検知を行う(S303)。最後に、用紙先端を所定の記録待機位置に位置させて、記録の開始に備える(S304)。
【0074】
本実施形態におけるリカバリ用ロール紙給紙処理は、図8に示す、用紙がLFローラにニップされる工程S101以降の処理と同様である。但し、用紙がロール紙Rであると確定しているので、蛇行補正時のスプール32の回転の監視は不要である。
【0075】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、用紙を、記録の開始に備えた記録待機位置へ搬送(給紙)する給紙動作時に、用紙の種別の判定を行っているが、本発明はこれに限られるものではない。用紙がカット紙であるかロール紙であるかを特定するための処理は、用紙への記録中または記録後にも行うことができる。
【0076】
カット紙モードでの動作時に、誤って給紙口37に送り込まれたロール紙Rのロール部分に著しい弛みが生じていた場合、スプール32が正常に回転せず、用紙種別の判定が適切に行われない可能性がある。つまり、ロール紙Rを搬送しても、ロール紙の巻き出しの作用がロール部分の弛みの解消に使われてしまうので、スプール32が回転しない。
【0077】
このような場合でも、画像記録動作や排紙動作によって、用紙が更に下流に搬送されていく過程でロール部分の弛みが解消され、ロール紙Rのロール部分およびスプール32が回転するようになる。よって、記録を開始するまでの給紙動作より後の動作においても、用紙種別の判定を行うことで、用紙の排紙までにロール紙であることを検出して、不適切な排紙動作になることを回避することができる。
【0078】
図11のフローチャートを参照して、本実施形態の用紙の搬送処理を詳細に説明する。図11は、画像記録装置100におけるカット紙モードでの排紙処理(カット紙排紙処理)を示している。カット紙排紙処理は、画像記録動作によって画像形成されたカット紙Pを排紙トレイ22に排出する処理である。ホストコンピュータ200からの指示に従って、画像形成部80において画像記録動作が行なわれた後、排紙動作に移行する。
【0079】
図11を参照すると、まずカット紙Pの最大排紙長さをメモリから取得する(S401)。“最大排紙長さ”とは、画像記録装置100が取り扱い可能な、最も長いカット紙の用紙長に、所定のマージンを加えた長さである。本実施形態においては、用紙長が1600mmのカット紙を排出できるように、所定のマージンを加えて、最大排紙長さを1700mmに設定している。
【0080】
続いて、予め用意してある“回転判定しきい値”をメモリから取得する(S402)。回転判定しきい値とスプール32の回転量とを比較することで、スプール32の回転監視中において、スプール32及びロール紙Rのロール部分が回転していたか否かを判定することができる。本実施形態においては、スプール32の1/4回転に相当する回転量を回転判定しきい値に設定している。これだけ回転していれば、搬送中の用紙がカット紙でないと推定できる。
【0081】
続いて、後述する排紙トレイ22への搬送処理の開始に先立って、スプール32の回転監視を開始する(S403)。スプール32の回転監視は、図7の説明で示したように、スプール32の回転が伝達される回転測定手段としてのエンコーダ36(図7参照)の出力を監視することで行われる。
【0082】
スプール32の回転監視の準備ができたら、用紙を排紙トレイ22に排出するために、下流方向に用紙の搬送を開始する(S404)。搬送が開始されたら、用紙の後端が所定位置に達するかどうかを監視する(S405)。搬送路Bに設けられたPEセンサ38が用紙を検知している状態から用紙を検知しない状態に変化することを監視することで、用紙の後端が検出される。用紙の後端が検出されるまで、下流方向へ用紙の搬送を続けることで、如何なる用紙長のカット紙であっても用紙の後端が搬送路B上のLFローラ対9、10の直ぐ上流の所定位置まで移動する。
【0083】
用紙の後端が検出されないときは、現時点までの搬送量を取得して(S406)、当該搬送量が最大排紙長さに達しているか否かを評価する(S407)。これにより、搬送不良などによって用紙が搬送路Bに詰まったとしても、用紙の後端が検出できずにいつまでも搬送し続けようとすることを防止することができる。
【0084】
搬送量が最大排紙長さに達していないときは、スプール32の回転監視で得られた、現時点までのスプールの回転量を取得する(S408)。このスプール回転量と回転判定しきい値とを比較して、スプール32が回転していたか否かを判定する(S409)。スプール32が回転していないときは、搬送中の用紙はカット紙Pであると推定できるので、用紙の後端を監視しながら搬送を継続する。
【0085】
スプール32が回転していたときは、搬送中の用紙がカット紙Pでないと推定されるので、用紙の搬送を直ちに停止する(S410)。用紙がロール紙Rであった場合には、画像形成されていない未使用の部分までロール紙が巻き出されてしまうので、これを最小限に止めるためである。続いて、スプール32の回転監視を停止する(S411)。その後、操作パネルの表示部に「カット紙を取り付けてください」などのメッセージを表示して(S412)、カット紙排紙処理を終了する。この場合、ユーザは、手作業でロール紙Rの画像形成部分(記録部分)を切り離してから、ロール紙Rを搬送路Bから除去する。
【0086】
用紙の搬送量が最大排紙長さに達したか否かの監視(S407)において、最大排紙長さに達していたときは、搬送不良の可能性があるので、用紙の搬送を直ちに停止する(S413)。この場合、引き続いて、スプール32の回転監視を停止する(S414)。その後、操作パネルの表示部に「用紙が詰まりました」などのメッセージを表示して(S415)、排紙処理を終了する。
【0087】
用紙の後端の監視(S405)において、用紙の後端が検出されたときは、搬送している用紙がカット紙であり、更にカット紙Pの後端がLFローラ対9、10の直ぐ上流の所定位置まで搬送されたことが確認できたので、このまま更に搬送を続ける(S416)。このときの搬送量は、PEセンサ38から、装置100の排紙口までの距離にマージンを加えた距離であり、用紙長に関わらずにこの距離だけ搬送することで、用紙後端が排紙口を通過して、カット紙Pが排紙トレイ22に排出される。その後、スプール32の回転監視を停止して(S417)、排紙処理を終了する。
【0088】
[第3の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙給紙動作の過程で実施される搬送動作(蛇行補正動作)によってロール紙Rのロール部分の弛みが解消されるのを待ってから、実質的なスプール32の回転監視を行うようにしているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0089】
ロール紙巻取り手段(不図示)によってロール紙を巻き取り方向に回転させることで、積極的にロール部分の弛みを解消することが可能である。より具体的には、画像記録装置100側からモータ駆動によって発生させた駆動量を、必要な減速比を持って構成されたギア列を介して、スプール32に伝達させる。そして、スプール32とともにロール紙のロール部分を回転させられるように構成して、ロール紙が巻き取られる方向に回転が伝達されるように、モータを所定の方向に駆動する。これにより、蛇行補正動作に先立って、ロール部分の弛みを解消する動作を実施することができる。したがって、蛇行補正動作による搬送の始めからスプール32が回転し始めるため、蛇行補正動作の開始時からスプール32の回転監視を開始することができるようになる。蛇行補正動作の開始時から用紙種別の判定を行えるので、より正確に用紙を特定することができる。
【0090】
また、ロール紙モードでの搬送処理だけでなく、カット紙モードでの搬送(カット紙給紙処理やカット紙排紙処理)においても、スプール32の回転監視の開始に先立って、弛みを解消する動作を実施しても良い。これにより、ロール紙Rのロール部分の弛みの影響を取り除いた状態で、回転測定手段による用紙種別の特定をすることができる。
【0091】
[第4の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙モードで搬送している用紙がロール紙でないと判定されたときには、給紙動作を中断して終了していたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0092】
ロール紙でないと判定された用紙、すなわちカット紙の後端が搬送路Bの上流側に残った状態で給紙動作が中断されている場合には、このまま継続してカット紙モードで給紙を再開することができる(搬送再開手段)。例えば、搬送路Bが途中で他の搬送路Aと合流するように構成されている場合には、この合流点より下流にカット紙の後端が搬送されてしまうと、バックフィードしたときに合流点で用紙が詰まることがあるため、上流に向けて用紙を搬送できない。よって、この合流点に用紙の後端が達する前に、ロール紙でないと判定されて用紙の搬送が停止されれば、用紙のバックフィード可能であるので、カット紙モードで給紙を再開することができる。
【0093】
[第5の実施形態]
第1の実施形態においては、ロール紙モードで搬送している用紙がロール紙であるか否かを判定するとき(S117)に、予め用意しておいた回転判定しきい値を利用していたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0094】
ロール紙Rの場合、用紙を下流方向に搬送するときの移動量に相当したスプール32の回転量が検出されるはずである。したがって、ロール紙Rの弛みがなく、スプール32が回転したときの理論上の回転量を基準にして、理論上の回転量に所定の比率をかけた回転量を、回転判定しきい値とすることで、より正確な判定ができる。例えば、ロール部分が直径100mmのときに、200mmだけ用紙を搬送して用紙種別の判定を行う場合、200mm/(100mm×円周率)≒0.6回転が理論上の回転量となる。そのため、この回転量の80%である約0.5回転に相当する回転量を回転判定しきい値とすることが好ましい。ロール紙が巻き出されたときの回転量が最も小さくなるのは、ロール部分の直径が最大のときである。したがって、上記のように、回転判定しきい値として、理論上の回転量を算出する際、ロール部分に最大のロール紙が巻かれているときの直径(最大径)を用いることが好ましい。上記例では、このことを考慮して、ロール部分の最大径を100mmとしている。
【0095】
[第6の実施形態]
図12は、ホストコンピュータ200に接続される外部記憶媒体の一例としてフレキシブルディスク200aを使用した場合を示している。上記実施形態では、ROMに格納された各制御プログラム及びデータをメモリにロードして実行させる例を示した。しかし、フレキシブルディスク200a等の記憶媒体に記録された制御プログラム及びデータを、外部記憶読取装置200bが接続されたホストコンピュータ200から、プリンタ100に設けられたフラッシュROMに記録し、そこからメモリにロードしてもよい。
【0096】
また、制御プログラム及びを記録する記録媒体は、フレキシブルディスク以外にCD−ROM、ICメモリカード等であってもよい。
【0097】
図13に示すメモリマップのフレキシブルディスクを、ホストコンピュータ200に接続されたフレキシブルディスクドライブに読み取らせ、プリンタ100に転送することで、プリンタ100に制御プログラムを供給することができる。
【0098】
図13は、ホストコンピュータ200に接続される外部記憶媒体の一例としてフレキシブルディスク200aを使用した場合のメモリマップである。メモリマップは、ボリューム情報記憶領域201aと、ディレクトリ情報記憶領域201bと、制御プログラム格納領域201cと、制御プログラムにおいて使用されるデータ(回転判定しきい値等)が記憶されるデータ記憶領域201dとを有している。制御プログラム格納領域201cには、所定の制御プログラムが格納されている。所定の制御プラグラムとしては、印刷処理プログラム、図8に示す処理を行うロール紙給紙処理プログラム、図9に示す処理を行うカット紙給紙処理プログラムおよび図10に示す処理を行うリカバリ用ロール紙給紙プログラム等がある。
【符号の説明】
【0099】
32 スプール
36 エンコーダ
B 搬送路
R ロール紙
P カット紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置であって、
ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択手段と、
ロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定手段と、
用紙の搬送中に前記回転測定手段で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記用紙種別選択手段で選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定したときに、前記用紙の搬送を中断する搬送中断手段と、
前記カット紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開手段と、を有する、画像記録装置。
【請求項2】
前記第1の搬送再開手段により用紙の搬送が再開された後に、ロール紙と判定された前記用紙の蛇行を補正する処理を行うリカバリ用ロール紙給紙処理手段を有する、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ロール紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記カット紙モードに切り替えて再開する第2の搬送再開手段を有する、請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記搬送中断手段による用紙の搬送の中断の後に、該用紙の搬送を再開するか否かをユーザに選択させる搬送再開選択手段をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記ロール紙モードでの用紙の搬送中に該用紙の蛇行を補正する蛇行補正手段をさらに有し、
前記蛇行補正手段による用紙の蛇行の補正の直後に、前記判定手段が動作するように制御されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記回転測定手段および前記判定手段は、用紙の搬送が開始されたときから、該用紙が記録の開始に備えた記録待機位置に達するまでの間に動作するように制御されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記回転測定手段および前記判定手段は、用紙への記録中または記録後にも動作するように制御されている、請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記回転測定手段は、前記ロール紙のロール部分の前記回転量とともに回転方向を測定し、
前記判定手段は、前記回転測定手段によって測定された前記回転方向が前記ロール紙の巻き出し方向と一致し、かつ前記回転量が所定のしきい値を超えたときに、搬送中の前記用紙がロール紙であると判定する、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置の制御方法であって、
ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程と、
用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程と、
前記回転測定工程で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程と、
前記用紙種別選択工程で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに前記用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、
前記カット紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程と、を有する、画像記録装置の制御方法。
【請求項10】
前記第1の搬送再開工程により用紙の搬送が再開された後に、ロール紙と判定された前記用紙の蛇行を補正する処理を含むリカバリ用ロール紙給紙処理を行う、請求項9に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記搬送中断工程の後に、該用紙の搬送を再開するか否かをユーザに選択させる第1の搬送再開選択工程をさらに有し、
前記用紙の搬送を再開することが選択されたときに前記第1の搬送再開工程を行う、請求項9または10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項12】
前記用紙の搬送を再開しないことが選択されたときに、ロール紙を保持するロール紙保持手段を回転して該ロール紙を巻き戻す、請求項11に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項13】
前記ロール紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記カット紙モードに切り替えて再開する第2の搬送再開工程を有する、請求項9から12のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項14】
前記ロール紙モードでの用紙の搬送中に該用紙の蛇行を補正する蛇行補正工程をさらに有し、
前記蛇行補正工程の直後に、前記回転測定工程および前記判定工程を実施する、請求項9から13のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項15】
前記回転測定工程および前記判定工程は、用紙の搬送の開始から、該用紙が記録の開始に備えた記録待機位置に達するまでの間に行われる、請求項9から14のいずれか1項
に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項16】
前記回転測定工程および前記判定工程は、用紙への記録中または記録後にも行われる、請求項15に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項17】
前記回転測定工程では、前記ロール紙のロール部分の回転量とともに回転方向を測定し、
前記判定工程では、前記回転測定工程によって測定された前記回転方向が前記ロール紙の巻き出し方向と一致し、かつ前記回転量が所定のしきい値を超えたときに、搬送中の前記用紙がロール紙であると判定する、請求項9から16のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項18】
請求項9から17のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法をコンピュータにより実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のプログラムを格納し、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項1】
用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置であって、
ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択手段と、
ロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定手段と、
用紙の搬送中に前記回転測定手段で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記用紙種別選択手段で選択された用紙種別とは異なる用紙を搬送していると判定したときに、前記用紙の搬送を中断する搬送中断手段と、
前記カット紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開手段と、を有する、画像記録装置。
【請求項2】
前記第1の搬送再開手段により用紙の搬送が再開された後に、ロール紙と判定された前記用紙の蛇行を補正する処理を行うリカバリ用ロール紙給紙処理手段を有する、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ロール紙モード中に前記搬送中断手段によって中断された用紙の搬送を、前記カット紙モードに切り替えて再開する第2の搬送再開手段を有する、請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記搬送中断手段による用紙の搬送の中断の後に、該用紙の搬送を再開するか否かをユーザに選択させる搬送再開選択手段をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記ロール紙モードでの用紙の搬送中に該用紙の蛇行を補正する蛇行補正手段をさらに有し、
前記蛇行補正手段による用紙の蛇行の補正の直後に、前記判定手段が動作するように制御されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記回転測定手段および前記判定手段は、用紙の搬送が開始されたときから、該用紙が記録の開始に備えた記録待機位置に達するまでの間に動作するように制御されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記回転測定手段および前記判定手段は、用紙への記録中または記録後にも動作するように制御されている、請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記回転測定手段は、前記ロール紙のロール部分の前記回転量とともに回転方向を測定し、
前記判定手段は、前記回転測定手段によって測定された前記回転方向が前記ロール紙の巻き出し方向と一致し、かつ前記回転量が所定のしきい値を超えたときに、搬送中の前記用紙がロール紙であると判定する、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
用紙としてのロール紙およびカット紙を共通の搬送路により搬送し、該用紙に記録を行う画像記録装置の制御方法であって、
ロール紙用の搬送処理を行うロール紙モードとカット紙用の搬送処理を行うカット紙モードとのいずれかをユーザに選択させる用紙種別選択工程と、
用紙の搬送中にロール紙のロール部分の回転量を測定する回転測定工程と、
前記回転測定工程で測定された前記回転量に基づいて、前記用紙がロール紙かカット紙かを判定する判定工程と、
前記用紙種別選択工程で選択されたモードとは異なる用紙を搬送していると判定されたときに前記用紙の搬送を中断する搬送中断工程と、
前記カット紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記ロール紙モードに切り替えて再開する第1の搬送再開工程と、を有する、画像記録装置の制御方法。
【請求項10】
前記第1の搬送再開工程により用紙の搬送が再開された後に、ロール紙と判定された前記用紙の蛇行を補正する処理を含むリカバリ用ロール紙給紙処理を行う、請求項9に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記搬送中断工程の後に、該用紙の搬送を再開するか否かをユーザに選択させる第1の搬送再開選択工程をさらに有し、
前記用紙の搬送を再開することが選択されたときに前記第1の搬送再開工程を行う、請求項9または10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項12】
前記用紙の搬送を再開しないことが選択されたときに、ロール紙を保持するロール紙保持手段を回転して該ロール紙を巻き戻す、請求項11に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項13】
前記ロール紙モード中に前記搬送中断工程によって中断された用紙の搬送を、前記カット紙モードに切り替えて再開する第2の搬送再開工程を有する、請求項9から12のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項14】
前記ロール紙モードでの用紙の搬送中に該用紙の蛇行を補正する蛇行補正工程をさらに有し、
前記蛇行補正工程の直後に、前記回転測定工程および前記判定工程を実施する、請求項9から13のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項15】
前記回転測定工程および前記判定工程は、用紙の搬送の開始から、該用紙が記録の開始に備えた記録待機位置に達するまでの間に行われる、請求項9から14のいずれか1項
に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項16】
前記回転測定工程および前記判定工程は、用紙への記録中または記録後にも行われる、請求項15に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項17】
前記回転測定工程では、前記ロール紙のロール部分の回転量とともに回転方向を測定し、
前記判定工程では、前記回転測定工程によって測定された前記回転方向が前記ロール紙の巻き出し方向と一致し、かつ前記回転量が所定のしきい値を超えたときに、搬送中の前記用紙がロール紙であると判定する、請求項9から16のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項18】
請求項9から17のいずれか1項に記載の画像記録装置の制御方法をコンピュータにより実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のプログラムを格納し、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−56110(P2012−56110A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198997(P2010−198997)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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