説明

画像記録装置及び画像記録位置補正方法

【課題】本発明は記録媒体の位置を検出して画像形成の位置を補正する画像記録装置及び画像記録位置補正方法に関し、特に簡単な構成で記録媒体の搬送状態の周期的な変動を検出し、画像記録位置を補正することにより高品質な画像記録を実現できる画像記録装置及び画像記録位置補正方法を提供することを課題とする。
【解決手段】記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、上記記録媒体の位置を検出する媒体位置検出手段と、この媒体位置検出手段によって検出した記録媒体の位置情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶した前記記録媒体の位置情報に基づいて記録媒体への記録位置を補正する補正手段と、この補正手段によって記録位置が補正された記録媒体の位置に記録を行う記録手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを定着させて画像を記録する画像記録装置に関し、特に記録媒体の位置を検出して画像記録位置を補正する画像記録装置及び画像記録位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の用紙やフィルム等をロール状に巻回し、連続した記録媒体に画像を記録する画像記録装置が知られている。例えば、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色のインクを順次上記連続した記録媒体に吐出することによってカラー画像の記録を行う画像記録装置である。
【0003】
かかる画像記録装置は、例えば数十〜数百m/分の高速度で記録媒体を搬送しながら画像記録を行う。また、画像記録が行われた記録媒体(連続紙)は、ページ毎に切断され、排出される。上記のようにロール状に巻かれた記録媒体を搬送し、複数色の記録ヘッドによって順次画像記録を行う場合、記録媒体の搬送位置や搬送方向が変動すると、画像記録される色毎の位置に僅かな誤差が生じ、記録画像の品質が低下する。
【0004】
上記記録画像の品質低下を抑える発明として、例えば特許文献1及び2が提案されている。例えば、特許文献1は、記録媒体の斜行を機械的な機構により補正する発明を開示し、2つのラインセンサの検知結果に基づき連続紙のスキュー角度を求め、この斜行角度が所望の角度以下となるようにローラ角度とニップ圧を調整することによって、連続紙の搬送方向を真っ直ぐにし、印刷位置ズレを抑える。
【0005】
また、特許文献2は、2つのフォトセンサで連続シートの斜行状態を検出し、制御部によって記録媒体の斜行量を算出し、この斜行情報に基づき、印刷ヘッドの位置や、発光素子の位置、光量制御を行うことにより色ずれを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−70089号公報
【特許文献2】特開2006−91384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
連続した記録媒体は通常はロール状に巻かれており、ロールの加工状態やロールの取り付け状態によって、ロールの外周を周期とする周期的な記録媒体の搬送方向に直行する方向の搬送位置の変動、即ち直線的ではなく、例えば正弦波のような周期的な変動が発生する。
【0008】
しかしながら、特許文献1の装置では、記録媒体の斜行を機械的な機構で補正するため、ゆっくりと徐々に変化する記録媒体の搬送状態は補正できるが、短い周期の変動を補正することはできない。
【0009】
また、特許文献2の装置では、2つのフォトセンサで記録媒体の斜行状態を検出して補正するため、直線的な変動のみを補正することはできるが、記録媒体が蛇行するような変動について補正することはできない。
【0010】
また、検出した状態によって補正を行うため、検出した瞬間と補正を適応した時間にはタイムラグが発生し、周期的な変動については位相差が発生し、適切な補正を行うことができない。
【0011】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で記録媒体の搬送状態の周期的な変動を検出し、画像記録位置を補正することにより高品質な画像記録を実現できる画像記録装置及び画像記録位置補正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の態様のひとつである画像記録装置は、記録媒体の位置を検出する媒体位置検出手段と、この媒体位置検出手段によって検出した記録媒体の位置情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶した記録媒体の位置情報に基づいて記録媒体への記録位置を補正する補正手段と、この補正手段によって記録位置が補正された記録媒体の位置に記録を行う記録手段とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の別の態様のひとつである画像記録位置補正方法は、記録媒体の位置を検出する媒体位置検出処理と、この媒体位置検出処理によって検出した記録媒体の位置情報を記憶手段に記憶する処理と、記憶手段に記憶した記録媒体の位置情報に基づいて記録媒体への記録位置を補正する補正処理と、この補正処理によって記録位置が補正された記録媒体の位置に記録を行う記録処理とを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロール径に依存した周期的な変動について、媒体位置検出手段によって検出した記録媒体の位置データから記録ヘッド毎の記録媒体位置を算出し、直線的でない周期的な変化に対応し、かつ遅延なく画像記録位置を補正し、高品質な画像記録を実現する画像記録装置及び画像記録位置補正方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における画像記録装置の機能ブロック図である。
【図2】本実施形態における媒体搬送機構を中心とした画像記録装置の構成図である。
【図3】画像情報処理部の回路構成を示す図である。
【図4】(a)は、ロール状に巻かれた記録媒体の断面構成を示す図であり、(b)は、記録媒体及び紙管が正しく加工され、軸に対し設計意図通りに取り付けられている状態を示す図であり、(c)は、記録媒体が紙管に対し傾斜して巻き付けられている状態を示す図であり、(d)は、紙管の内径が大きく、軸との間に隙間があり、軸に対して記録媒体が傾斜して取り付けられている状態を示す図である。
【図5】本実施形態における主走査方向の位置補正方法を説明する図である。
【図6】補正値の演算とメモリへの書き込み処理を説明するフローチャートである。
【図7】位置補正及び記録データの生成処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明では、本実施形態の画像記録装置として、記録媒体の幅以上のノズル列長(画像記録幅)を有する固定されたライン型記録ヘッドを搭載し、搬送されてノズルの直下を通過する記録媒体に画像を記録する画像記録装置の例を説明する。なお、本実施形態の画像記録装置はライン型記録ヘッドの画像記録装置に限定されるものではなく、インクジェット方式の画像記録装置であれば走査型等、他の形式の画像記録装置を適用してもよい。
【0017】
図1は、本実施形態における画像記録装置の機能ブロック図を示し、図2は媒体搬送機構を中心とした本実施形態の画像記録装置の構成図を示す。なお、以下の説明では、記録媒体の搬送方向を副走査方向とし、副走査方向に対して直交する方向を主走査方向とする。
画像記録装置1は制御部2、記録部3、媒体位置検出部4、ロール径計測部5、媒体搬送機構6等で構成され、LAN(Local Area Network)等を介して上位装置7が接続されている。この上位装置7は、パーソナルコンピュータ(PC)等のホスト機器であり、画像記録装置1に対してジョブ情報を送信する。このジョブ情報としては、例えば記録処理の実施を指示するコマンドや、画像データ、各種制御コマンド等を含む情報であり、例えばポストスクリプト(Post Script(登録商標))等のフォーマットで送信される。
【0018】
画像記録装置1は、上位装置7から送信されたジョブ情報を受信し、このジョブ情報に含まれる画像データに基づいて記録媒体8にインクを吐出し、記録媒体8上に画像記録を行う。
【0019】
制御部2は、例えば制御機能及び演算機能を有するMPU(Micro Processor Unit:演算処理装置)、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、MPUのワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)等からなる処理回路と、画像記録装置1の制御に関する設定値等を記憶する不揮発性メモリを少なくとも有する。
【0020】
MPUは、所定の制御プログラムを実行することにより画像記録装置1の各構成要素の制御が可能である。制御部2は、このMPUによって所定の制御プログラムを実行することにより、画像情報処理部12による画像情報の処理機能を有すると共に、画像記録のためのデータ等を記憶する記憶部13を備える。
【0021】
画像情報処理部12は、上位装置7から送られてくるジョブ情報に基づいて、画像記録のための画像データを記憶部13に展開する。尚、インターフェイス部14は、上位装置7との間でジョブ情報等のデータや信号の送受信を行うためのインターフェイスである。
【0022】
また、上記記憶部13はRAMとしても利用される。さらに、不揮発性メモリには、記録不良検査に用いるパラメータ等の情報も記憶されている。なお、画像情報処理部12は、MPUにより制御される処理回路(ハードウェア)として構成することも可能である。
【0023】
上記構成の制御部2は、上位装置7から送信されたジョブ情報を受信し、所定の制御プログラムを実行することにより、媒体搬送機構6と、表面用記録部3Aと、裏面用記録部3Bと、媒体位置検出部4と、ロール径計測部5とをそれぞれ制御することによって記録媒体8への画像記録処理を行う。
【0024】
媒体搬送機構6は、記録媒体8を搬送上流側から下流側に搬送する機能を有する。この媒体搬送機構6は、媒体給送部16、表面用媒体支持部17A、裏面用媒体支持部17B、駆動部18、及び媒体搬送情報生成部19を有している。
【0025】
媒体給送部16は、不図示のスタンドに、図2に示す軸(シャフト)9を回転可能に支持し、この軸9に紙管10に巻装された記録媒体8を保持する。なお、記録媒体8は、例えば紙やフィルムであり、所定の幅を有する連続紙であり、ロール状に形成されている。また、媒体給送部16は、制御部2の指示によりロール状に巻かれた記録媒体8の回転に負荷を与えることで記録媒体8に対して一定の張力を与え、搬送中の記録媒体8の弛みを防止する。
【0026】
駆動部18は動力源である、例えばモータとローラによって構成され、制御部2の指示によりモータを駆動し、ローラを回転させることで記録媒体8を搬送する。
表面用媒体支持部17A及び裏面用媒体支持部17Bは、回転自在な円筒状の部材であり、記録媒体8に密接し、記録媒体8の搬送に連動して回転する。さらに、表面用媒体支持部17A及び裏面用媒体支持部17Bは、対応する表面用記録部3Aと裏面用記録部3Bに対峙して設けられ、記録処理中の記録媒体8の位置及び姿勢を安定させる。
【0027】
媒体搬送情報生成部19は、例えばロータリエンコーダで構成され、図2に示すように裏面用媒体支持部材17Bに設けられている。この媒体搬送情報生成部19は、裏面用媒体支持部材17Bの回転量、即ち記録媒体8の搬送量(移動量)に対応したパルス信号を生成し、制御部2に送信する。
【0028】
表面用記録部3Aには、例えばK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色の記録ヘッド20−1〜20−4が配設されている。これらの記録ヘッド20−1〜20−4は、記録媒体8の搬送経路の上流側からK、C、M、Yの順に副走査方向に略平行に配設されている。同様に、裏面用記録部3Bには、K、C、M、Yの各色の記録ヘッド20−5〜20−8が配設され、記録媒体8の搬送経路の上流側からK、C、M、Yの順に副走査方向に略平行に配設されている。
【0029】
なお、各記録ヘッド20−1〜20−8は、例えば300dpiの解像度を有する。この表面用記録部3A及び裏面用記録部3Bは、制御部2から記録処理の実行指示を受信すると、媒体搬送情報生成部19により生成されるパルス信号に同期した所定のタイミングで、記録媒体8上に記録処理を行う。
【0030】
すなわち、表面用記録部3Aと裏面用記録部3Bは、各記録ヘッド20−1〜20−8における複数のノズルからそれぞれK、C、M、Yの各色のインクを吐出して、記録媒体8上に画像や文字等の記録を行う。
【0031】
一方、媒体位置検出部4は、ラインセンサカメラやコンタクトイメージセンサ等の1次元センサで構成され、センサに内蔵、若しくは別体として設けられた光源からの光を記録媒体8で反射した光を受光し、光電変換された電気信号を制御部2に送信する。制御部2は、受信した電気信号から記録媒体8の主走査方向位置を判定し、画像情報処理部12にて記録媒体8の主走査方向位置に応じた画像形成位置を決定し、表面用記録部3Aおよび裏面用記録部3Bに画像データを送信する。
【0032】
媒体切断部28は、記録処理が行われた記録媒体8を上位装置7からの指示に従い、A4、A3、レター、タブロイド等の定型の用紙サイズ、若しくは予め設定された所定サイズに切断する。
【0033】
媒体排出部29は、回転駆動されるローラ対を有し、切断された記録媒体8を機外へ排出する。また、媒体回収部30は、所定サイズに切断され、排出された記録媒体8を整列し、積み重ねた状態に保持する。
【0034】
ロール径計測部5は、記録媒体8の搬送に応じて徐々に減少するロール紙の半径を計測する。ロール径計測部5は、例えばレーザによる距離測定が可能なセンサを使用する。なお、ロール径計測部5を媒体給送部16の軸9に取り付けられたエンコーダで構成し、軸9の回転速度と媒体搬送情報生成部19により計測される記録媒体8の搬送速度からロール紙の半径を算出する構成としてもよい。
【0035】
次に、図3は前述の画像情報処理部12の回路構成を示す図であり、搬送速度演算部22、ライトポインタ制御部23、リードポインタ制御部24、演算部25、メモリ26、及び記録データ生成部27で構成されている。
【0036】
搬送速度演算部22は前述の媒体搬送情報生成部19によって生成され、送信されたパルス信号を受信し、記録媒体8の搬送速度を演算する。また、ライトポインタ制御部23は搬送速度演算部22から上記搬送速度のデータを受信すると共に、ロール径計測部5から記録媒体8が巻装されたロール紙の半径のデータを受信する。そして、上記搬送速度とロール紙の半径のデータを使用してロール紙一周の長さを算出し、ライトポインタ制御部23の書き込みアドレスであるライトポインタPwを設定し、メモリ26への位置情報の書き込みアドレスとする。
【0037】
また、リードポインタ制御部24は、後述する記録ヘッド20−1〜20−8の配設位置に基づく経路長データに従って読み出しアドレス(リードポインタPr)を設定し、メモリ26に書き込まれた位置情報の読み出し処理を行う。
【0038】
記録データ生成部27は、メモリ26から読み出される位置データ(以下、位置補正データで示す)B1〜B8に基づいて、上位装置7から送信された画像データの位置補正処理を行い、画像データを記録ヘッド20−1〜20−8に出力する回路である。
次に、図4を用いてロール状に巻かれた記録媒体8の加工精度により発生する主走査方向の位置の変動について説明する。
【0039】
図4(a)は、ロール状に巻かれた記録媒体8の断面構成を示す図であり、前述のように記録媒体8は回転可能に支持された軸9に固設された紙管10に巻装されている。また、同図(b)は、記録媒体8及び紙管10が正しく加工され、軸9に対し設計意図通りに取り付けられている状態を示している。
【0040】
一方、同図(c)は、記録媒体8が紙管10に対し傾斜して巻き付けられている状態を示している。なお、この時の記録媒体8としてのロール紙の半径をR、巻き付けの傾斜による主走査方向の最大ずれ量をXとする。この場合、画像記録装置1の内部を搬送される記録媒体8の主走査方向の位置は、ロール紙が1回転(2πR)進むと距離Xの振幅で変動する。
【0041】
また、同図(d)は、紙管10の内径が大きく、軸9との間に隙間があり、軸9に対して記録媒体8が傾斜して取り付けられている状態を示している。このときの記録媒体8としてのロール紙の半径をR、巻き付けの傾斜による主走査方向の最大ずれ量をXとする。この場合も、同図(c)で説明したケースと同様、画像記録装置1の内部を搬送される記録媒体8の主走査方向の位置は、ロール紙が1回転(2πR)進むと距離Xの振幅で変動する。
【0042】
図5は、記録媒体8の搬送経路上に設けられた画像記録装置1の各構成要素の配設位置を示し、該配設位置に対する記録媒体8の副走査方向の周期的な位置ずれ状態を示す。なお、同図に示す記録媒体8の搬送経路上の経路Pは、主走査方向における記録媒体8のエッジ位置の経路を示す。
【0043】
また、同図に示すTは設計上の狙い位置であり、本来記録媒体8のエッジ位置が通過すべき経路を示す。また、同図に示す経路Pは、実際の記録媒体8のエッジ位置をプロットした一例であり、上記経路Pの平均値はロール紙の取り付け等に起因し、設計上の狙い位置Tから、同図に示すAだけオフセットした値である。また、上記経路Pには、図4で説明したロール紙の加工に起因するロール径周期の変動があるため、振幅X、周期2πRの変動成分が含まれている。
【0044】
次に、画像情報処理部12による画像データの主走査方向の位置補正処理について説明する。
媒体位置検出部4は、記録ヘッド20−1〜20−8による記録処理と同一の周期で記録媒体の位置の検出を行う。例えば、記録媒体8の搬送速度Vが565mm/sであり、印刷解像度が300dpiである場合、印刷周期tは以下の式(1)で求められる。
【数1】

【0045】
媒体位置検出部4による検出周期は、印刷周期tと同一であり、150μsである。
メモリ26は、媒体給送部16が許容する最大のロール半径Rmaxが686mmの場合、以下の式(2)で表されるアドレス空間を有することが必要となる。
【数2】

したがって、この場合のメモリ26としては、例えば64Kのアドレス空間を有するメモリを使用する。
【0046】
搬送速度演算部22は、媒体搬送情報生成部19から前述のエンコーダパルスを受信し、搬送速度Vを算出する。この搬送速度Vのデータはライトポインタ制御部23に送信される。
【0047】
ライトポインタ制御部23は、150μs周期で媒体位置データを書き込む毎にアドレスをインクリメントする。また、ライトポインタ制御部23は、ロール径計測部5からロール半径情報Rのデータを受信し、搬送速度演算部24から上記搬送速度情報Vを受信し、ライトポインタが下式(3)で示される値を超えた場合、ライトポインタをリセット(“0”)にする。
【数3】

【0048】
これにより、メモリ26はロール径1周に相当するリングバッファを構成し、メモリ26内にはロール径に対応した1周期分の媒体位置データが保持される。
リードポインタ制御部24は、各記録ヘッド20−1〜20−8に対応した媒体位置補正データB1〜B8を示すポインタPr1〜Pr8、及びライトポインタと同じ位置を示すPr9のポインタを管理する。
【0049】
ポインタPr9によって読み出される媒体位置データL0は、媒体位置検出部4で検出される媒体位置データL1から、ロール紙1周分過去のデータである。演算部25は過去の媒体位置データL0と新たに検出された媒体位置データL1より、メモリ26に書き込む媒体位置データLを以下の式(4)によって算出する。
【数4】

【0050】
なお、上記Kは予め設定された定数であり、Kを小さい値に設定することによって急峻なロール径の変動に追従するがノイズに敏感となり、Kを大きい値にすることによって緩やかな変化となる。また、Kを0に設定した場合、L=L1となり、過去に検出された値の影響なく媒体位置検出部4で検出された値がそのままメモリ26に書き込まれる。
【0051】
リードポインタ制御部24は、記録媒体8の搬送経路における記録ヘッド20−1から20−8と媒体位置検出部4の物理的な距離d1〜d8と、ライトポインタが示すアドレスより各々の記録ヘッド20−1から20−8に対応するポインタを算出する。
【0052】
ポインタPr1〜4は、記録ヘッド20−1〜20−4が媒体位置検出部4より搬送経路上の上流に位置しているため、以下の式(5)で算出される。
【数5】

【0053】
また、ポインタPr5〜8は、記録ヘッド20−5〜20−8が媒体位置検出部4より搬送経路上の下流に位置しているため、以下の式(6)で算出される。
【数6】

【0054】
また、算出されたポインタPr1〜8の値が0を下回るか、ライトポインタ制御部23で算出されたリングバッファの最大アドレスを超える場合、リングバッファの最大アドレス値を加算もしくは減算し、いずれのポインタもリングバッファ内のアドレスを示すように演算する。
【0055】
次に、図3に示す画像情報処理部12の処理動作を、上記計算式及び図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0056】
先ず、ライトポインタ制御部23はライトポインタPwを“0”に設定し、リードポインタ制御部24はリードポインタPr9を“0”に設定する(ステップ(以下、Sで示す)1)。すなわち、ライトポインタ制御部23及びリードポインタ制御部24は、それぞれのポインタの初期設定を行う。
【0057】
次に、媒体位置検出部4より媒体位置情報を取得する(S2)。すなわち、駆動部18を駆動し、媒体給送部16から記録媒体8を給紙し、搬送経路上を搬送される記録媒体の先端位置を検出する。具体的には、媒体位置検出部4に設けられたセンサによって搬送経路上を搬送される記録媒体8のエッジ位置を検出する。このエッジ位置のデータをaとする。
【0058】
次に、メモリ26よりデータbを読み出し(S3)、このデータbと上記位置データaにより書き込み値を演算し、演算結果をメモリ26に書き込む(S4)。すなわち、前述の演算部25による計算式(4)を使用し、過去の媒体位置データL0と新たに検出された媒体位置データL1から、メモリ26に書き込む新たな媒体位置データを計算する。
【0059】
次に、ライトポインタ制御部23はロール径計測部5によりロール径のデータcを取得し、更に媒体搬送情報生成部19から媒体搬送速度情報dを取得し、上記cとdのデータから最大アドレスを算出する(S5〜S7)。すなわち、前述の計算式(3)を使用し、メモリ26に必要となる最大アドレスeを算出する。
【0060】
次に、ライトポインタPwとリードポインタPr9をインクリメント(+1)し、ポインタ値fを取得(S8)、このポインタ値fと上記最大アドレスeの値を比較する(S9)。ここで、ポインタ値fが最大アドレスeより大きい場合(S9がYES)、ライトポインタPwとリードポインタPr9のリセットを行うが、最初のこの処理ではポインタ値fが最大アドレスeより小さく(S9がNO)、印刷処理が終了したか判断する(S10)。
【0061】
その後、上記処理(S10がNO、S2〜S10)を繰り返し、メモリ26から対応する過去の位置データbを読み出すと共に、媒体位置検出部4によって検出した位置データaを使用して、上記計算式(4)によりメモリ26に新たな媒体位置データを書き込む。したがって、上記処理を繰り返すことによって、例えば図5に示す経路Pの位置データがメモリ26に書き込まれる。また、上記計算式(4)により、媒体位置検出部4によって検出された新たな位置データに基づく経路Pに更新される。
【0062】
また、この間、ポインタ値fと上記最大アドレスeの値を比較する判断も実行され(S9)、例えばポインタ値fが最大アドレスeを超えると(S9がYES)、ライトポインタPwとリードポインタPr9のリセットを行う(S11)。すなわち、ライトポインタPwを“0”に設定し、リードポインタPr9を“0”に設定し、上記処理を繰り返す。
【0063】
この間、上位装置7から画像データがメモリ26に送信され、記録データ生成部27による記録データの生成処理が行われる。図7は上記処理を説明するフローチャートであり、上位装置7から画像データを取得すると(ステップ(以下、STで示す)1)、記録ヘッド20−1〜20−8毎の画像データを生成する(ST2)。すなわち、本実施形態では、表面用記録部3Aに、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色の記録ヘッド20−1〜20−4を使用し、裏面用記録部3Bに、K、C、M、Yの各色の記録ヘッド20−5〜20−8を使用しており、上記各色の記録ヘッド20−1〜20−8毎の画像データを生成する。
【0064】
次に、記録ヘッド20−1〜20−8毎の各リードポインタPr1〜Pr8を算出する(ST3)。この計算は前述の式(5)及び(6)に従って行われ、例えば記録ヘッド20−1〜20−4については、媒体位置検出部4より搬送経路上の上流に位置しているため、式(5)が使用され、対応するリードポインタPr1〜Pr4が計算される。また、記録ヘッド20−5〜20−8については、媒体位置検出部4より搬送経路上の下流に位置しているため、式(6)が使用され、対応するリードポインタPr5〜Pr8が計算される。
【0065】
次に、メモリ26から記録ヘッド20−1〜20−8毎に補正位置データ(B1〜B8)を読み出す(ST4)。すなわち、リードポインタ制御部24はメモリ26の上記計算したリードポインタPr1〜Pr8のアドレスで示される補正位置データを読み出し、主走査方向の記録位置のオフセットする(ST5)。
【0066】
例えば、リードポインタPr1の出力アドレスに基づいて、メモリ26から補正位置データB1を読み出し、記録ヘッド20−1の記録データに対する出力位置をオフセットする。この処理により、記録ヘッド20−1は、当該記録ヘッド20−1直下の記録媒体8の主走査方向の記録位置をB1分(オフセット分)ずらし、記録媒体8の正確な位置に画像記録を行うことができる(ST6)。
【0067】
同様に、記録ヘッド20−2についても、リードポインタPr2の出力アドレスに基づいて、メモリ26から補正位置データB2を読み出し(ST4)、記録ヘッド20−2の記録データに対する出力位置をオフセットする(ST5)。この処理により、記録ヘッド20−2は、当該記録ヘッド20−2直下の記録媒体8の主走査方向の記録位置をB2分(オフセット分)ずらし、記録媒体8の正確な位置に画像記録を行うことができる(ST6)。
【0068】
以下、同様にして、記録ヘッド20−3〜20−8についても、対応するリードポインタPr3〜8の出力アドレスに基づいて、メモリ26から補正位置データB3〜B8を読み出し、対応する記録ヘッド20−3〜20−8の記録データに対する出力位置をオフセットし、対応する記録ヘッド20−3〜20−8直下の記録媒体8の主走査方向の記録位置をB3〜B8(オフセット分)ずらし、記録媒体8の正確な位置に画像記録を行うことができる。
【0069】
その後、印刷処理が終了するまで上記処理を繰り返し(ST7がNO、ST1〜ST7)、記録媒体8への画像データの記録処理を行う。
【0070】
一方、前述の図6のフローチャートに基づくメモリ26への位置データの記録処理も行われており、順次更新されるメモリ26への位置データに基づいて、記録データ生成部27による記録データの生成処理が行われる。したがって、記録ヘッド20−1〜20−8は、当該記録ヘッド直下の記録媒体8の主走査方向位置に応じて記録位置をそれぞれB1〜B8の分だけオフセットすることによって、記録媒体8に対する主走査方向の正確な位置に画像記録を行うことができる。
【0071】
その後、印刷処理が終了すると(S10がYES、ST7がYES)、メモリ26への位置データの書き込み処理、及び記録データ生成部27による記録データの生成処理が終了し、印刷処理が終了する。
【0072】
以上のように、本実施形態の画像記録装置1によれば、記録媒体8としてのロール紙のセット位置による記録媒体8の主走査方向の記録位置をオフセットし、ロール紙自体の加工精度に起因するロール紙外形周期の主走査方向の位置変動に対応した位置補正を行うことで、記録媒体8上に良好な画像を形成することができる。
なお、メモリ26は、記録媒体8としてのロール紙が最初の1周を完了するまでの間は空である。その間、記録データ生成部27は、メモリ26からの読み出し値B1〜B8に変わって、媒体位置検出部4の出力値L1を使用する構成としてもよい。
【0073】
また、上記実施形態の説明では、インクジェット方式による記録方式を採用した画像記録装置について記載しているが、インクジェット方式以外の方式、例えば静電記録方式における主走査方向の画像形成位置補正にも応用することができる。
【0074】
また、本実施形態の説明は本発明の一例であり、本実施形態の画像記録装置1に示される全体構成からいくつかの要素を削除してもよいし、さらに異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1・・・画像記録装置
2・・・制御部
3・・・記録部
3A・・表面用記録部
3B・・裏面用記録部
4・・・媒体位置検出部
5・・・ロール径計測部
6・・・媒体搬送機構
7・・・上位装置
8・・・記録媒体
9・・・軸
10・・紙管
12・・画像情報処理部
13・・記憶部
14・・インターフェイス部
16・・媒体給送部
17A・・表面用媒体支持部
17B・・裏面用媒体支持部
18・・駆動部
19・・媒体搬送情報生成部
20−1〜20−8・・記録ヘッド
22・・搬送速度演算部
23・・ライトポインタ制御部
24・・リードポインタ制御部
25・・演算部
26・・メモリ
27・・記録データ生成部
28・・媒体切断部
29・・媒体排出部
30・・媒体回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の位置を検出する媒体位置検出手段と、
該媒体位置検出手段によって検出した前記記録媒体の位置情報を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶した前記記録媒体の位置情報に基づいて前記記録媒体への記録位置を補正する補正手段と、
前記補正手段によって記録位置が補正された前記記録媒体の位置に記録を行う記録手段と、
を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された前記位置情報に前記媒体位置検出手段によって検出した新たな位置情報を演算し、該演算結果を前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録手段は色毎に所定の間隔を有して複数設けられ、前記補正手段は前記記憶手段に記憶した前記記録媒体の位置情報に基づいて、前記複数の記録手段の配設位置に対応する位置情報を読み出し、前記記録媒体への記録位置を補正することを特徴とする請求項1、又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記記録媒体の位置情報が順次記憶された前記記憶手段から、前記記録媒体の記録位置に対応する位置情報を読み出し、該位置情報に基づいて前記記録データの記録位置を主走査方向に補正することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶される位置情報は、前記記録媒体が巻装されたロール紙一周分であり、該ロール紙の径は計測手段によって計測され、前記ロール紙一周長は該計測値に基づいて計算されることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
記録媒体の位置を検出する媒体位置検出処理と、
該媒体位置検出処理によって検出した前記記録媒体の位置情報を記憶手段に記憶する記憶処理と、
前記記憶手段に記憶した前記記録媒体の位置情報に基づいて前記記録媒体への記録位置を補正する補正処理と、
該補正処理によって記録位置が補正された前記記録媒体の位置に記録を行う記録処理と、
を行うことを特徴とする画像記録位置補正方法。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶された前記位置情報に前記媒体位置検出処理によって検出した新たな位置情報を演算し、該演算結果を前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項6に記載の画像記録位置補正方法。
【請求項8】
前記記録手段は色毎に所定の間隔を有して複数設けられ、前記補正処理は前記記憶手段に記憶した前記記録媒体の位置情報に基づいて、前記複数の記録手段の配設位置に対応する位置情報を読み出し、前記記録媒体への記録位置を補正することを特徴とする請求項6、又は7に記載の画像記録位置補正方法。
【請求項9】
前記補正処理は、前記記録媒体の位置情報が順次記憶された前記記憶手段から、前記記録媒体の記録位置に対応する位置情報を読み出し、該位置情報に基づいて前記記録データの記録位置を主走査方向に補正することを特徴とする請求項6、7、又は8に記載の画像記録位置補正方法。
【請求項10】
前記記憶手段に記憶される位置情報は、前記記録媒体が巻装されたロール紙一周分であり、該ロール紙の径は計測手段によって計測され、前記ロール紙一周長は該計測値に基づいて計算されることを特徴とする請求項6、7、又は8に記載の画像記録位置補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91362(P2012−91362A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239293(P2010−239293)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】