説明

画像記録装置及び画像記録方法並びにドット形成位置評価方法

【課題】着弾位置の誤差が高精度で評価され、評価結果に基づくノズルの異常の有無の判断をより正確に行うことを可能とする画像記録装置及び画像記録方法並びにドット形成位置評価方法を提供する。
【解決手段】描画胴(44)の周面(204)から上側に突出しないようにグリッパー(80)は凹部(210)の内部に配置されている。グリッパーによって先端固定エリア(14A)が挟持される記録媒体(14)はその一部が押部(210)の中に入り込んでいる。記録媒体の当該エリアはインクジェットヘッド(48)とのスローディスタンスが周面に支持されているエリアよりも大きくなっている。当該部分に着弾位置評価パターン(280)を形成することで着弾位置評価パターンにおける位置誤差を相対的に拡大することができ、より高い精度で着弾位置の誤差を評価することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録装置及び画像記録方法並びにドット形成位置評価方法に係り、特にドットの位置ズレを検出するためのパターンの形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用の画像記録装置として、インクジェット方式により記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置において、インクの吐出状態が不安定となっている異常ノズルは種々の不具合を引き起こすため、ノズルごとに異常の有無を検出する必要がある。
【0003】
例えば、インクジェットヘッドに設けられたノズルの各々からインク液滴を吐出させ、スキャナなどの読取装置を用いて記録媒体に着弾したインク液滴を読み取り、読取結果に基づいて着弾位置の誤差を把握するとともに当該着弾位置誤差が評価される。着弾位置誤差の評価後の処理として、インクジェットヘッドのメンテナンス、異常ノズルを使用しないようにマスク化処理、サービスマンコール、ヘッドの交換等が挙げられる。
【0004】
特許文献1は、ノズルと被印刷物との距離を可変する駆動部を備え、インクの着弾位置を確認するための印刷物(確認用の印刷物)を作製する場合は、所定のパターンが形成された印刷物(印刷物)を作製する場合と比べてノズルと被印刷物との距離を大きくするようにノズルと被印刷物との距離を可変させるように構成し、確認用の印刷物はインクの着弾位置ズレが強調(拡大)され、容易にかつ正確にインクの着弾位置ずれを認識することができる旨を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−265206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノズルごとに着弾位置ずれを認識するには、ノズルの配置密度に対応して読取装置の読取解像度を設定しなければならない。一方、所定時間内に所定面積の読み取りを行うには、主として読取装置の読取時間性能により読取解像度が制限されてしまい、実用的な測定時間に対応するためは読取装置の読取解像度を小さく設定しなければならない。インライン型の読取装置は迅速性(高速性)を要求されるために、読取解像度は記録解像度よりも十分に低く設定される。かかる低解像度の読取装置では、正常又は異常を正確に判断することは困難である。すなわち、記録解像度よりも低い解像度で読み取りが行われると、正常範囲のノズルを異常と判断することや、正常範囲外のノズルを正常と判断することがあり、異常ノズルを確実に発見することが困難になってしまう。
【0007】
また、特許文献1に開示されたインク噴射装置は、インクジェットヘッドをY軸方向に移動させる構造を備えるか、又は異なる印刷物を作製するときの印刷台と確認用の印刷物を作製するときの印刷台とを別々に備える必要があり、インクジェットヘッド周辺の構成が大規模化又は複雑化してしまう。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、着弾位置の誤差が高精度で評価され、評価結果に基づくノズルの異常の有無の判断をより正確に行うことを可能とする画像記録装置及び画像記録方法並びにドット形成位置評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像記録装置は、記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドと、前記記録媒体の記録画像が描画される描画部を裏側から支持する第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置され、前記記録媒体の端部を固定する固定部材を具備するとともに、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きく、前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定される第2の面を有する記録媒体保持手段と、前記記録媒体保持手段によって保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、描画領域を支持する第1の面よりも記録ヘッドとの距離が大きい第2の面に記録媒体の余白領域が固定され、該余白領域にドット形成位置評価パターンが記録されるので、当該ドット形成位置評価パターンの誤差が相対的に拡大され、より高い精度でドット形成位置の誤差を評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドの構造を示す平面図
【図3】図2の拡大図
【図4】図2に示すサブヘッドのノズル配置を説明する図
【図5】図2に示すサブヘッドの立体構造を示す断面図
【図6】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置の描画胴の全体構成を示す斜視図
【図8】図7に示す描画胴の真空流路の構造例を示す平面展開図
【図9】図1に示す描画胴の一部拡大図
【図10】図1に示す描画胴の立体構造を示す断面図
【図11】記録媒体のレイアウトを説明する平面図
【図12】図1に示す描画胴に支持された記録媒体を模式的に図示した説明図
【図13】図12に示す面204の角度の算出例を説明する図
【図14】図12に示す記録媒体の支持の他の態様の説明図
【図15】図12に示す描画胴の一部拡大図
【図16】本例に適用される押圧ローラの構造例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0013】
〔インクジェット記録装置の全体構成の説明〕
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置(画像記録装置)の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体14の記録面に画像を形成する2液凝集方式のオンデマンド型記録装置である。
【0014】
インクジェット記録装置10は、主として、給紙部20、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60、及び排出部70を備えて構成される。処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60の前段に搬送される記録媒体14の受け渡しを行う手段として渡し胴32,42,52,62が設けられるとともに、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60のそれぞれに記録媒体14を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴34,44,54,64が設けられている。
【0015】
渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64は、外周面の所定位置に記録媒体14の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパー80A,80Bが設けられている。グリッパー80Aとグリッパー80Bにおける記録媒体14の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体14の受け渡しを行う構造は同一であり、かつ、グリッパー80Aとグリッパー80Bは、圧胴34の外周面の圧胴34の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
【0016】
グリッパー80A,80Bにより記録媒体14の先端部を狭持した状態で渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64を所定の方向に回転させると、渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64の外周面に沿って記録媒体14が回転搬送される。
【0017】
なお、図1中、圧胴34に備えられるグリッパー80A,80Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
【0018】
給紙部20に収容されている記録媒体(枚葉紙)14が処理液塗布部30に給紙されると、圧胴34の外周面に保持された記録媒体14の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体14の記録面」とは、圧胴34,44,54,64の保持された状態における外側面であり、圧胴34,44,54,64に保持される面と反対面である。
【0019】
その後、凝集処理液が付与された記録媒体14は描画部40に送出され、描画部40において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
【0020】
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体14は乾燥処理部50に送られ、乾燥処理部50において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部60に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体14上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体14の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体14の記録面に定着した後に、排出部70から装置外部に搬送される。
【0021】
以下、インクジェット記録装置10の各部(給紙部20、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60、排出部70)について詳細に説明する。
【0022】
(給紙部)
給紙部20は、給紙トレイ22と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体14は給紙トレイ22から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ22から送り出された記録媒体14は、渡し胴(給紙胴)32のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。
【0023】
(処理液塗布部)
処理液塗布部30は、給紙胴32から受け渡された記録媒体14を外周面に保持して記録媒体14を所定の搬送方向へ搬送する圧胴(処理液ドラム(胴))34と、処理液胴34の外周面に保持された記録媒体14の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置36と、含んで構成されている。処理液胴34を図1における反時計回りに回転させると、記録媒体14は処理液胴34の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
【0024】
図1に示す処理液塗布装置36は、処理液胴34の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布装置36の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体14上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
【0025】
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液胴34の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、該塗布ローラとグリッパー80A,80Bとの衝突を回避可能に構成する態様が好ましい。
【0026】
処理液塗布部30により記録媒体14に付与される処理液は、描画部40で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体14上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
【0027】
処理液塗布装置36は、記録媒体14に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体14上の処理液の膜厚は、描画部40から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
【0028】
(描画部)
描画部40は、記録媒体14を保持して搬送する圧胴(描画ドラム(胴))44と、記録媒体14を描画胴44に密着させるための用紙抑えローラ46と、記録媒体14にインクを付与するインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yを備えている。なお、描画胴44の基本構造は、先に説明した処理液胴34と共通しているので、ここでの説明は省略する。
【0029】
用紙抑えローラ46は、描画胴44の外周面に記録媒体14を密着させるためのガイド部材であり、描画胴44の外周面に対向し、渡し胴42と描画胴44との記録媒体14の受渡位置よりも記録媒体14の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yよりも記録媒体14の搬送方向上流側に配置される。
【0030】
渡し胴42から描画胴44に受け渡された記録媒体14は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙抑えローラ46によって押圧され、描画胴44の外周面に密着する。このようにして、記録媒体14を描画胴44の外周面に密着させた後に、描画胴44の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの直下の印字領域に送られる。
【0031】
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画胴44の回転方向(図1における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのインク吐出面(ノズル面、図5に符号114Aを付して図示する。)が描画胴44に保持された記録媒体14の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体14の記録面と対向するインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図4に符号108を付して図示する。)が形成される面である。
【0032】
また、図1に示すインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは、描画胴44の外周面に保持された記録媒体14の記録面とインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
【0033】
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは、記録媒体14における画像形成領域の最大幅(記録媒体14の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体14の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0034】
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのノズル面には、記録媒体14の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
【0035】
記録媒体14がインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yから記録媒体14の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
【0036】
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yから、対応する色インクの液滴が、描画胴44の外周面に保持された記録媒体14の記録面に向かって吐出されると、記録媒体14上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体14上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色ムラ)が防止される。
【0037】
また、描画部40の描画胴44は、処理液塗布部30の処理液胴34に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
【0038】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0039】
(乾燥処理部)
乾燥処理部50は、画像形成後の記録媒体14を保持して搬送する圧胴(乾燥ドラム(胴))54と、該記録媒体14上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す溶媒乾燥装置56を備えている。なお、乾燥胴54の基本構造は、先に説明した処理液胴34及び描画胴44と共通しているので、ここでの説明は省略する。
【0040】
溶媒乾燥装置56は、乾燥胴54の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体14に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部40により記録媒体14にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体14上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
【0041】
溶媒乾燥装置56は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体14上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体14上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体14に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体14上に残留する水分量、記録媒体14の種類、及び記録媒体14の搬送速度(干渉処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
【0042】
溶媒乾燥装置56による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部50の乾燥胴54は、描画部40の描画胴44に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
【0043】
記録媒体14のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥胴54の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥胴54の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
【0044】
また、乾燥胴54の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体14の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥胴54の外周面に記録媒体14を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体14を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
【0045】
なお、乾燥胴54の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥胴54の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0046】
このように構成された乾燥胴54の外周面に、記録媒体14の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体14の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体14のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
【0047】
(定着処理部)
定着処理部60は、記録媒体14を保持して搬送する圧胴(定着ドラム(胴))64と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体14に加熱処理を施すヒータ66と、該記録媒体14を記録面側から押圧する定着ローラ68と、を備えて構成される。なお、定着胴64の基本構造は処理液胴34、描画胴44、及び乾燥胴54と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ66及び定着ローラ68は、定着胴64の外周面に対向する位置に配置され、定着胴64の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
【0048】
定着処理部60では、記録媒体14の記録面に対してヒータ66による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ68による定着処理が施される。ヒータ66の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
【0049】
定着ローラ68は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体14を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ68は、定着胴64に対して圧接するように配置されており、定着胴64との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体14は、定着ローラ68と定着胴64との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
【0050】
定着ローラ68の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体14を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
【0051】
この状態で記録媒体14の記録面に加圧を施すと、記録媒体14の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ68を複数段設けた構成も好ましい。
【0052】
また、定着ローラ68の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ68の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体14の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体14の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
【0053】
図1に示すインクジェット記録装置10は、定着処理部60の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ82が設けられている。インラインセンサ82は、記録媒体14に形成された画像(又は記録媒体14の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
【0054】
本例に示すインクジェット記録装置10は、インラインセンサ82の読取結果に基づいてインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの吐出異常の有無が判断される。また、インラインセンサ82は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部50の処理温度や定着処理部60の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
【0055】
(排出部)
図1に示すように、定着処理部60に続いて排出部70が設けられている。排出部70は、張架ローラ72A,72Bに巻きかけられた無端状の搬送チェーン74と、画像形成後の記録媒体14が収容される排出トレイ76と、を備えて構成されている。
【0056】
定着処理部60から送り出された定着処理後の記録媒体14は、搬送チェーン74によって搬送され、排出トレイ76に排出される。
【0057】
〔インクジェットヘッドの構造の説明〕
図2は、本発明に適用されるインクジェットヘッドの概略構成図であり、同図はインクジェットヘッドから記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。なお、図1に図示したインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは同一構造を有しているので、以下の説明ではインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yを区別する必要がない場合は、これらを総称して「インクジェットヘッド100」、又は単に「ヘッド100」と記載する。
【0058】
同図に示すヘッド100は、n個のサブヘッド102‐i(iは1からnの整数)を一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各サブヘッド102‐iは、ヘッド100の短手方向の両側からヘッドカバー104,106によって支持されている。なお、サブヘッド102を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
【0059】
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に沿って、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図4に符号108を付して図示する。)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するヘッド100と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
【0060】
図3は、ヘッド100の一部拡大図である。同図に示すように、サブヘッド102は、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、サブヘッド102‐iの並び方向(図2における左右方向、図3に図示する主走査方向X)に隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される。
【0061】
図4は、サブヘッド102‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各サブヘッド102‐iは、ノズル108が二次元状に並べられた構造を有し、かかるサブヘッド102‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
【0062】
図4に示したサブヘッド102‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル108が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図4では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号110を付して図示され、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号112を付して図示されている。
【0063】
図5は、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル108に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のヘッド100は、ノズル108が形成されたノズルプレート114と、圧力室116や共通流路118等の流路が形成された流路板120等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート114は、ヘッド100のノズル面114Aを構成し、各圧力室116にそれぞれ連通する複数のノズル108が2次元的に形成されている。
【0064】
流路板120は、圧力室116の側壁部を構成するとともに、共通流路118から圧力室116にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口122を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図5では簡略的に図示しているが、流路板120は一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0065】
ノズルプレート114及び流路板120は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0066】
共通流路118はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路118を介して各圧力室116に供給される。
【0067】
圧力室116の一部の面(図5において天面)を構成する振動板124には、個別電極126及び下部電極128を備え、個別電極126と下部電極128との間に圧電体130がはさまれた構造を有するピエゾアクチュエータ132が接合されている。振動板124を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ132の下部電極128に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0068】
個別電極126に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ132が変形して圧力室116の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル108からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ132が元の状態に戻る際、共通流路118から供給口122を通って新しいインクが圧力室116に再充填される。
【0069】
かかる構造を有するインク室ユニットを図4に示す如く、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル108が一定のピッチP=L/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0070】
なお、本発明に適用可能なノズル配列は、図4に図示したノズル配列に限定されず、例えば、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して斜めの列方向に沿って複数のノズルがマトリクス配列された態様にも適用可能である。
【0071】
〔制御系の説明〕
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース140、システム制御部142、搬送制御部144、画像処理部146、ヘッド駆動部148を備えるとともに、画像メモリ150、ROM152等を備えている。
【0072】
通信インターフェース140は、ホストコンピュータ154から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース140は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース140は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0073】
システム制御部142は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ150及びROM152のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部142は、通信インターフェース140、搬送制御部144等の各部を制御し、ホストコンピュータ154との間の通信制御、画像メモリ150及びROM152に対するデータの読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0074】
ホストコンピュータ154から送出された画像データは通信インターフェース140を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ150に記憶される。画像メモリ150は、通信インターフェース140を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システム制御部142を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ150は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0075】
搬送制御部144は、画像処理部146により生成された印字制御用の信号に基づいて記録媒体14(図1参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図6における搬送駆動部156は、図1の圧胴34〜64を回転させるモータや、渡し胴32〜62を回転させるモータ、給紙部20における記録媒体14の送出機構のモータ、排出部70の張架ローラ72A(72B)を駆動するモータなどが含まれ、搬送制御部144は上記のモータのドライバーとして機能している。
【0076】
画像処理部146は、画像メモリ150に記憶されている画像データを読み出すとともに、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをヘッド駆動部148に供給する制御部である。画像処理部146において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッド駆動部148を介してヘッド100の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図6に示すヘッド駆動部148には、ヘッド100の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0077】
画像メモリ150は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0078】
ROM152には、システム制御部142のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(テストチャートを打滴するためのデータ、異常ノズル検知用の波形データ、描画記録用の波形データ、異常ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM152は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。
【0079】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース140を介して外部から入力され、画像メモリ150に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ150に記憶される。
【0080】
インクジェット記録装置10では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ150に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システム制御部142を介して画像処理部146に送られ、濃度データ生成、補正処理、インク吐出データ生成を経てインク色ごとのドットデータに変換される。
【0081】
すなわち、画像処理部146は、入力されたRGB画像データをM,K,C,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、画像処理部146で生成されたドットデータは、図示しない画像バッファメモリに蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド100のノズルからインクを吐出するためのMKCY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0082】
こうして、ヘッド駆動部148から出力された駆動波形がヘッド100に加えられることによって、該当するノズル108からインクが吐出される。記録媒体14の搬送速度に同期してヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
【0083】
また、インクジェット記録装置10は、処理液付与制御部160、乾燥処理制御部162、及び定着処理制御部164を備えており、システム制御部142からの指示にしたがって、それぞれ処理液塗布部30、乾燥処理部50、及び定着処理部60の各部の動作を制御する。
【0084】
処理液付与制御部160は、画像処理部146から得られた印字データに基づいて、処理液付与のタイミングの制御を制御するとともに、処理液の付与量を制御する。また、乾燥処理制御部162は、乾燥処理のタイミングを制御するとともに、処理温度、送風量等を制御し、定着処理制御部164は、定着処理部60のヒータ66の温度を制御するとともに、定着ローラ68の押圧を制御する。
【0085】
インライン検出部166は、図1に示したインラインセンサ82と、インラインセンサ82から出力される読取信号にノズル除去や増幅、波形整形などの所定の信号処理を施す信号処理部を含む処理ブロックである。システム制御部142は、インライン検出部166により得られた検出信号に基づいて、ヘッド100の吐出異常の有無を判断する。
【0086】
すなわち、システム制御部142は、インライン検出部166から読み込まれたテストチャートや着弾位置評価パターンの読取データを判定部168へ送出する。判定部162は当該読取データから着弾位置の誤差、ドットサイズの誤差、濃度の誤差等を把握してノズルごとに異常の有無を判断する。当該処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。判定部168において求められた吐出異常ノズルの情報(データ)は所定のメモリに記憶される。例えば、ROM152の記憶領域を活用することで、ROM152を吐出異常ノズル情報が記憶されるメモリとして兼用する構成も可能である。
【0087】
異常があると判断されたノズル(正常吐出ができない吐出異常ノズル)は、マスク化(不吐化)処理が施されて不使用とされ、マスク化処理されたノズルによる描画は他のノズルにより代替される。また、マスク化処理が施されたノズル数やマスク化処理されたノズルの分布が所定の基準を超えると、システム制御部142はヘッド100のメンテナンスを実行するように装置各部に対して指令信号を送出する。ヘッド100のメンテナンスには、ノズル面114A(図5参照)のワイピング、ノズルの吸引などの処理が含まれる。さらに、ワイピング、ノズルの吸引などの処理を実行しても所定の性能を回復することができない場合は、サービスマンによるメンテナンスが必要である旨(サービスマンコール)や、ヘッド交換が必要である旨が報知される。
【0088】
本例に示すインクジェット記録装置10に搭載されるインラインセンサ82は、インクジェットヘッド48の記録解像度よりも低解像度で読み取りが行われる。例えば、ヘッド100の記録解像度が2400dpiに対して、インラインセンサ82の読取解像度は400〜600dpi程度となっている。なお、インラインセンサ82は、記録媒体14の描画領域の全幅よりも小さい読取幅を、拡大光学系を用いて拡大させて描画領域の全幅を読み取るように構成してもよい。また、複数のイメージセンサを含む構成としもよい。
【0089】
ユーザインターフェースとしての操作部170は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置172と表示部(ディスプレイ)178を含んで構成される。入力装置172には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置172を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部176の表示を通じて確認することができる。この表示部176はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
【0090】
ポンプ制御部180は、圧胴34,44,54,64の周面に記録媒体14を保持固定させつための負圧を発生させる真空ポンプ182のオンオフや回転速度を制御する。すなわち、システム制御部142から送られた指令信号に基づいて、ポンプ制御部180を介して真空ポンプ182が制御される。なお、圧胴34,44,54,64のそれぞれについて個別の真空ポンプが設けられてもよいし、複数の圧胴に対して共通の真空ポンプが設けられてもよい。図6ではインクジェット記録装置10に具備される複数の真空ポンプを代表し、符号182を付して図示されている。
【0091】
〔描画胴の説明〕
(概略構成)
図7は、描画胴44の全体構造を示す斜視図である。同図に示す描画胴44は、不図示の回転機構に連結され、不図示の軸受けにより支持される回転軸202の周りを、該回転機構の動作によって回転可能に構成される回転体部材である。
【0092】
また、描画胴44の周面204は、記録媒体14(図1参照)を裏面側から支持する媒体支持面として機能し、記録媒体14に作用する吸着圧力(負圧)を発生させる多数の吸着穴(図7では個別の図示を省略し、図9に符号250を付して個別に図示する。)が設けられる媒体支持領域206を有している。図7においてドットハッチを付して図示した媒体支持領域206は、吸着穴が設けられていない帯状の非開口部208が周方向に沿って、全周長の略1/2の長さにわたり設けられており、この非開口部208によって後述する絞り部(図7中不図示、図8に符号234を付して図示する。)の背後がふさがれている。なお、図7の斜視図には図示されない裏側にも同様の構造を有する媒体支持領域が設けられている。
【0093】
図7に示す描画胴44の内部は、媒体支持領域206に設けられる吸着穴と連通する吸引用の真空流路が設けられている。この真空流路は、描画胴44の側面222に設けられた図2に図示しない真空配管系(配管、ジョイント等)及び、描画胴44の回転軸202の内部に設けられた真空流路(不図示)を介して描画胴44の外部に設けられた真空ポンプ182(図7中不図示、図6参照)に接続されている。真空ポンプ182を動作させて真空(負圧)を発生させると、該吸着穴及び該真空流路等を介して記録媒体14に吸着圧力が付与される。すなわち、描画胴44は、真空(エア)吸着方式により周面(媒体支持面)104に記録媒体14が固定保持されるように構成されている。
【0094】
描画胴44の外周面は軸方向の全長にわたって2か所の凹部210が形成されており、この2か所の凹部210は、回転方向の位置が略180°ずらされて配置されている。なお、図示の都合上、図7では2か所の凹部210のうち1ヶ所のみが図示されている。凹部210は記録媒体14の先端部を挟持する挟持手段として機能する複数のグリッパー80と、グリッパー80を開閉させるためのグリッパー開閉機構212が配設されている。
【0095】
グリッパー80は爪形状(略L字形状、図12参照)を有し、記録媒体14の先端部を裏側から支持する爪台213との間に記録媒体14の先端部をはさみ込んで記録媒体14の先端部を挟持するように構成されている。複数のグリッパー80は、軸方向に沿って等間隔に配置されるとともに、記録媒体14の最大幅に対応する長さにわたって配置されている。また、グリッパー80は、描画胴44の周面204から突出しないように凹部210の中に収容されている。
【0096】
グリッパー80を開閉させるグリッパー開閉機構212は、グリッパー80を支持する不図示のグリッパーベースと、該グリッパーベースが連結される開閉シャフト214と、描画胴44に対して開閉シャフト214を回転可能に支持するシャフトブランケット216と、開閉シャフト214とカムフォロア218とを連結させる開閉アーム220と、を有して構成されている。カムフォロア218及び開閉アーム220は描画胴44の側面222の外側に設けられている。
【0097】
本例に示すグリッパー開閉機構212は、不図示の駆動源(モータ)の動作に応じてカムフォロア218が所定のカム曲線に沿って移動し、開閉アーム220に連結された開閉シャフト214が回転し、開閉シャフト214の回転に応じてグリッパー80は開閉動作をするように構成されている。
【0098】
本例に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体14の描画胴44の周面204よりも凹部210の内側に沈み込ませた部分に、各ノズル108から吐出されるインク液滴の記録媒体14の搬送方向と直交する幅方向についての着弾位置の誤差を評価するための着弾位置評価パターンが形成される。かかる構成によって着弾位置誤差が拡大され、着弾位置誤差の評価が容易になるとともに、着弾位置誤差の評価に基づくヘッドメンテンナンスの判断の精度が上がり、記録画像の画像品質が向上する。なお、着弾位置評価パターンの形成及び着弾位置誤差の評価の詳細については後述する。
【0099】
(真空流路の説明)
次に、本例に示す描画胴44に適用される真空流路について説明する。なお、以下に説明する真空流路はあくまでも一例であり、他の構成を適用することも可能である。
【0100】
図8は、図2にドットハッチを付して図示した媒体支持領域206の内部構造(媒体支持領域206に設けられた吸着穴の裏側の構造)を示す展開図である。同図における横方向は軸方向であり、縦方向は周方向であり、同図における下側は記録媒体14の搬送方向における先端側であり、「CL」と表記された位置は軸方向の中心位置である。
【0101】
図8に示すように、媒体支持領域206の内部は、多数の吸着溝230,232が設けられ、この多数の吸着溝230,232は、符号240〜246を付して太枠で図示した4種類の記録媒体のサイズに対応するように配置されている。
【0102】
記録媒体14の中央部及び後端部に対応する位置(図中、上側)に設けられる吸着溝230の溝幅周方向の長さWは、記録媒体14の後端部以外に対応する位置(図中、中央及び下側)に設けられる吸着溝232の溝幅Wよりも大きくなっている。一方、吸着溝230の溝長(軸方向の長さ)Lと吸着溝232の溝長Lとは略同一になっている。かかる構造により記録媒体14の後端部におけるエア量を中央部及び先端部よりも多くすることができ、記録媒体14の後端部の浮きやめくれが効果的に防止される。
【0103】
図8に示すように、吸着溝230及び吸着溝232は、軸方向の一方の端部が閉じられた構造を有し、他方の端部は絞り部234が設けられている。また、1本の絞り部234は両端のそれぞれが異なる吸着溝230又は吸着溝232と連通している。なお、軸方向の両端部に配置される絞り部234’は、一方(内側)のみが吸着溝230,232と連通し、他方(外側)は閉じられた構造を有している。
【0104】
絞り部234は、吸着溝230,232の溝幅よりも小さい溝幅(断面積)を有し、図2に示す非開口部208の裏側に配置され、該非開口部208によって背後(描画胴44の周面204側)がふさがれた構造を有している。すなわち、絞り部234(234’)は、吸着溝230,232に流れる空気の流量を制限して、記録媒体14を吸着する圧力の抜けを妨げる機能を有している。
【0105】
吸着溝230の中には、凸形状を有するリブ236,238が設けられる。リブ236,238は島状のパターンを有し、その高さは吸着溝230,232の深さと概ね同等である。リブ236は軸方向に平行な破線状に形成されている。また、軸方向に沿って破線状に並ぶリブ236の列(リブ列)が吸着溝230内に複数列(図3では2列)平行に形成されている。リブ列の間隔は概ね吸着溝232の溝幅と等しいものとなっている。さらに、軸方向に平行に並ぶリブ236の切れ目の部分には、周方向に沿ってリブ238が破線状に形成されている。
【0106】
このように、それぞれ分断された島状のリブ236,238を設けたことにより、媒体支持領域206に吸着保持される記録媒体14の円弧面に対するへこみを防止することができ、スローディスタンスを均一にすることができる。また、分割されたリブ236,238間の隙間を空気が移動できるため、吸着溝230の空気の流量を確保することができる。
【0107】
また、吸着溝232の中には周方向に沿って形成される複数のリブ238が、軸方向に沿って配置されている。吸着溝232の壁とリブ238との間には隙間は設けられており、この隙間を空気が移動できるように構成されている。
【0108】
図9は、媒体支持領域206の一部拡大図である。同図に示すように、媒体支持領域206には多数の吸着穴250が設けられている。吸着穴250と吸着溝232(230)との配置関係は図示のとおりとなっている。吸着穴250の配置パターンは、裏面の吸着溝232(230)のパターンに対応していることが好ましいが、吸着穴250のうち、吸着溝232(230)と連通しないものがあってもよい。
【0109】
また、絞り部234の幅は、吸着溝232の幅よりも狭く、また、絞り部234と吸着溝232(230)の深さは略同一となっている。すなわち、絞り部234の流路断面積は、吸着溝232の流路断面積よりも小さくなっており、絞り部234により吸着溝232(230)を流れる空気の流量が制限される。
【0110】
図9に破線で図示したドラム吸着溝252は、絞り部234(234’)と連通し、不図示のドラム吸着穴を介して描画胴44の内部に設けられた真空流路と連通している。また、絞り部234,234’と同様に非開口部208(図7参照)によって周面204側を塞がれている。
【0111】
図10は、描画胴44の立体構造を示す断面図(図9のA−A線に沿う断面図)である。同図に示すように、描画胴44は吸着穴250が設けられる吸着層260と、吸着溝230,232、絞り部234,234’が設けられる中間層262と、ドラム吸着溝252が設けられる本体部264に分離して考えることが可能である。
【0112】
例えば、吸着層260と中間層262とを1枚のシート状部材で構成し、所定の流路構造や回転機構等が設けられた本体部264に中間層262を積み重ねて巻きつけ、さらに、中間層262に吸着層260を積み重ねて巻きつけた構造とすることが可能である。また、吸着層260と中間層262とを一体構成として、吸着穴250、吸着溝230,232及び絞り部234,234’が形成された1枚のシート状部材を本体部264に積層して巻きつけてもよい。
【0113】
なお、吸着層260の厚みは、中間層262の厚みよりも厚くすることが好ましい。同図に示す態様では、吸着層260の厚みに対する中間層262の厚みは略1/2となっている。中間層262は、図8で説明した吸着溝230,232やリブ236,238等のパターンが形成されているシート裏面側の所定厚部分である。中間層262の厚みは、薄ければ薄いほど少ない負圧で高い吸着力を得ることが可能であるが、過度に薄いと、紙粉、ゴミ等の異物による詰まりが起こりやすくなる。このような条件を考慮すると、中間層262の厚みは、0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0114】
吸着層260は、下にリブ236,238が存在しないところでも吸着圧力によって陥没しない程度の剛性を確保する厚みが必要であり、かつ、吸着層260を本体部264の周面に巻き付けて固定するために、相応の柔軟性が必要である。例えば、ステンレスを用いて製作した吸着層260の厚みは、0.1mm〜0.5mmとすることが好ましく、より好ましい厚みは0.2〜0.3mm程度である。ステンレス以外の材料を用いる場合には、使用する材料の剛性及び柔軟性を考慮して、適宜の厚みに設計される。
【0115】
なお、吸着穴250の平面形状をだ円や多角形などの円以外の形状としてもよい。また、吸着穴250を省略する構造も可能である。ただし、いずれの構造を適用する場合にも、絞り部234,234’の背後(周面204側)が必ずふさがれた構造とし、絞り部234,234’が直接大気開放されない構造としなければならない。
【0116】
以上説明した真空流路は、最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体を使用した場合に、オープンとなる(大気開放される)吸着穴250及び吸着溝230,232が存在しても、絞り部234,234’の作用によってオープンとなった吸着穴250及び吸着溝230,232から吸着圧力の抜けが発生することがなく、様々なサイズの記録媒体14に対して所定の吸着圧力を維持することが可能である。
【0117】
〔着弾位置評価パターン形成の説明〕
次に、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Y(以下、単にインクジェットヘッド48と記載することがある。)から吐出されたインク液滴の着弾位置の誤差を評価するための専用パターン(着弾位置評価パターン、図11に符号280を付して図示)の形成(評価)について詳細に説明する。
【0118】
本例に示すインクジェット記録装置10は、描画胴44の周面204に支持されている記録媒体14とインクジェットヘッド48とのスローディスタンスは1mm以下であり、記録媒体14とインクジェットヘッド48とのスローディスタンスが1mmのときの記録媒体14上における着弾位置誤差の正常範囲は±3μm以内となっている。すなわち、吐出角度の正常範囲は、atan(0.003(mm)/1(mm))=3mrad以内である。この正常範囲を超える誤差を有するノズルは異常ノズルと判断される。
【0119】
各ノズルについて着弾位置誤差が±3μm以内の正常範囲であるか否かを正確に判断するには、サブミクロンオーダーで着弾位置評価パターンを読み取る必要があるものの、400〜600dpi程度の読取解像度を有するインラインセンサ82(図1参照)を用いると、せいぜい数μm〜十数μm程度の読取精度しか得られない。一方、2400dpi程度の読取解像度で着弾位置評価パターンを読み取ることができれば、読取データの処理を工夫すれば、約1μm程度の精度で着弾位置評価パターンを評価することが可能である。
【0120】
すなわち、記録媒体上における着弾位置誤差を少なくとも5倍以上に拡大することができれば、400〜600dpi程度の読取解像度による読取結果から吐出角度の正常範囲(3mrad以内)であるか否かを判断することが可能である。そこで、本例に示すインクジェット記録装置10では、描画胴44に形成された凹部210(図7参照)を利用して、記録媒体14の凹部210の中に入り込ませた部分に着弾位置評価パターンを形成することで、記録媒体14の着弾位置評価パターンが形成される領域とインクジェットヘッド48とのスローディスタンスを拡大して、着弾位置評価パターンにおけるドット間の誤差を相対的に拡大している。
【0121】
図11は、記録媒体14のレイアウトを示す平面図である。同図に示すように、記録媒体14は、グリッパー80(図7参照)によって挟持(固定)される先端固定エリア14Aと、着弾位置評価パターン280が形成される着弾位置評価パターン形成エリア14Bと、所望の画像が記録されるユーザレイアウトエリア14Cと、ダミージェット処理によって吐出されたインクの受容エリアである後端余白エリア14Dと、を含んで構成されている。着弾位置評価パターン形成エリア14Bとユーザレイアウトエリア14Cとの境界14Eが描画胴44の周面204に位置するように記録媒体14は支持される。
【0122】
なお、先端固定エリア14Aと着弾位置評価パターン形成エリア14Bは先端余白エリアを構成する。すなわち、記録媒体14は先端から先端余白エリア、ユーザレイアウトエリア(描画エリア)14C、後端余白エリア14Dから構成される。
【0123】
図12は、描画胴44に支持された記録媒体14を模式的に図示した説明図であり、同図において紙面を貫く方向は軸方向となっている。図11に示すように、記録媒体14の先端固定エリア14Aは、凹部210の内部に配置されるグリッパー80によって固定されるので、記録媒体14の先端固定エリア14Aから所定の範囲は凹部210の内部の面204A(第2の面)に支持される。記録媒体14の面204Aに支持される部分を着弾位置評価パターン形成エリア14Bとすることで、インクジェットヘッド48と着弾位置評価パターン形成エリア14Bとのスローディスタンスが拡大され、着弾位置評価パターンにおける誤差を拡大させることが可能となる。
【0124】
例えば、記録媒体14の面204Aに支持された部分のうち、周面204からの深さαが4mmとなる位置に着弾位置評価パターン280(図11参照)を形成することで、該着弾位置評価パターン280における位置誤差を5倍に拡大させることができる。すなわち、α≧(記録解像度/読取解像度)−(インクジェットヘッド48と記録媒体14のユーザレイアウトエリア14Cにおけるスローディスタンス)の関係を満たす位置に着弾位置評価パターン280を形成することで、着弾位置評価パターン280における位置誤差が読取解像度に対する記録解像度の比に対応して拡大されるので、インクジェットヘッド48の記録解像度よりも十分に低い読取解像度を有するインラインセンサ82を用いて着弾位置評価パターン280の読み取りを行ったとしても、記録解像度と同程度の読取解像度により着弾位置評価パターン280の読み取りを行ったものと等価となり、各ノズルの吐出角度が正常範囲内であるか否かを精度よく判断することが可能である。
【0125】
グリッパー80によって挟持される先端固定エリア14Aの長さは、2mmから4mmであり、グリッパー80の先端から凹部210と周面204との境界までの距離は10mm以上20mm以下である。面204Aの水平面に対する角度を20°以上(より好ましくは30°以上)にすることで、上述したαの条件を満たすことができるとともに、着弾位置評価パターン280の描画エリアを確保できる。
【0126】
ここで、水平面(一点破線で図示)に対する面204Aの角度θの算出例について説明する。図13は、水平面に対する面204Aの角度θの算出例を示す図である。角度θを算出する際に図示のパラメータが用いられる。角度θは、描画胴44の軸を通る垂線(一点破線で図示)とグリッパー80の先端位置とのなす角度であり、Lは水平面上におけるグリッパー80の先端位置から凹部210と周面204との境界までの距離、Lはノズル面114Aから描画胴44の軸Oまでの距離、Lはノズル面114Aから面204Aまでの距離、Lは面204から描画胴44の軸Oまでの距離である。
【0127】
ノズル面114Aから周面204までの距離(スローディスタンス、L−D)を1mmとしたときに、D≧5mmとなるθを求めればよい。なお、描画胴44の半径Rは255mmとする。
【0128】
=11.8mm、L=255.3mm、L=5.9mm、L=219.4mm、θ=3°として、θの値を30°とすると、D=5.6mmとなり上記条件を見たす。このときのグリッパー80の先端位置から凹部210と周面204との境界までの距離は、11.9×cos30°=10.3mmとなる。また、記録媒体14の浮きを抑制するためにθを20°とすると、L=19.7mm、L=255.9mm、L=6.7mm、L=219.1mm、θ=5°とすればD=5.8mmとなり、上記条件を満たす。このときのグリッパー80の先端位置から凹部210と周面204との境界までの距離は、19.7×cos20°=18.5mmとなる。
【0129】
なお、θ=20°の場合は、θ=30°の場合よりもLが大きくなるので、ユーザレイアウトエリアが縮小されてしまうものの、記録媒体14の浮きが抑制される点では有利であるといえる。本例では、面204Aが1つの傾斜を有する場合について説明したが、傾斜が異なる複数の面から面204Aを構成してもよい。
【0130】
着弾位置評価パターンの具体例として、次のパターンが挙げられる。まず、記録媒体14の幅方向について所定のノズル数だけ離れたノズルから連続的に吐出させたインク液滴より記録媒体14の搬送方向に沿ってドット列を形成し、一段分のドット列群を形成する。次に、インクを吐出させるノズルを切り換えて同様のノズル列群を形成し、これを所定回数繰り返してすべてのノズルからインク液滴を吐出させて、記録媒体14の搬送方向に沿って所定間隔で並べられたドット列を、記録媒体14の搬送方向について複数段有するパターンが形成される。
【0131】
上記の着弾位置評価パターンは、一段分のドット列群は記録媒体14の幅方向について等間隔に並べられたドット列からなり、このドット列群が記録媒体14の搬送方向について位置をずらして複数段並べられたパターンを有している。当該着弾位置評価パターンの読取結果からドット列ごとの位置が把握され、ノズルごとに記録媒体14の幅方向における着弾位置誤差が求められる。読取ピッチよりもドット列の間隔を大きくすると、読取誤差を減らすことが可能となる。
【0132】
なお、本例に適用される着弾位置評価パターンは、ノズルごとに着弾位置の誤差を評価できるものであればよく、上述したパターン以外にも様々なパターンを適用することが可能である。
【0133】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置によれば、記録媒体14の描画胴44の凹部210に入り込ませた部分を着弾位置評価パターン形成エリア14Bとし、当該着弾位置評価パターン形成エリア14Bに着弾位置評価パターン280を形成することで、着弾位置評価パターン280における着弾位置誤差を拡大することができ、着弾位置誤差の評価の精度を向上させることが可能となる。
【0134】
本例では、記録媒体14の幅方向について、記録媒体14の全幅に対応する長さにわたってノズルが並べられた構造を有するフルライン型ヘッドを備えたインクジェット記録装置10を例に挙げて説明したが、本発明はシリアルスキャン型のヘッドを備えたインクジェット記録装置にも適用可能である。また、記録媒体14を保持搬送する形態は圧胴搬送方式に限定されず、ベルト搬送方式などの他の方式にも適用可能である。
【0135】
〔第1変形例〕
次に、本発明の実施形態に係る第1変形例について説明する。図14は、第1変形例に係る描画胴44’に支持された記録媒体14を模式的に図示した説明図である。なお、同図中、図12と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0136】
図14に示すように、描画胴44’の凹部210’は、周面204と略平行な面204A’を有するとともに、周面204と面204A’との間に段差が設けられている。すなわち、段差量α’だけインクジェットヘッド48とのスローディスタンスを拡大することができ、面204A’に支持された記録媒体14(着弾位置評価パターン形成エリア14B)上に形成される着弾位置評価パターン280(図11参照)の誤差を拡大することが可能となる。
【0137】
かかる構造は、インクジェットヘッド48のノズル面114A(図5参照)と、記録媒体14の着弾位置評価パターン形成エリア14Bが略平行となるので、図12に示す態様と比較して、実質的な着弾位置評価パターン形成エリア14Bをより広く確保することができる。
【0138】
〔第2変形例〕
次に、本発明の実施形態に係る第2変形例について説明する。図15は、第2変形例に係る描画胴の凹部を拡大した一部拡大図である。同図に示すように、記録媒体14の先端固定エリア14A(図11参照)が固定される爪台213は吸着穴300が設けられている。また、記録媒体14の着弾位置評価パターン形成エリア14Bが固定される面204Aにも吸着穴302が設けられている。
【0139】
この吸着穴300及び吸着穴302を介して記録媒体14に先端固定エリア14A及び着弾位置評価パターン形成エリア14Bに吸着圧力を発生させることで、これらを確実に固定することができ、着弾位置評価の精度を向上させることが可能となる。なお、吸着穴300,302の平面形状は円形状、だ円形状など様々な形状が適用可能である。
【0140】
〔第3変形例〕
図16は、本発明の実施形態に係る第3変形例の構成を示す説明図である。同図に示すように、第3変形例では図11に図示した構成に対して、記録媒体14を押圧する押圧部材320が追加されている。押圧部材320は、描画胴44の周面204と面204Aとからなる形状に対応した形状の押圧部322を有し、記録媒体14の周面204と面204Aとの境界に位置する部分に押圧部322を押し付けて、記録媒体14の着弾位置評価パターン形成エリア14Bを面204Aに密着させるように構成されている。
【0141】
かかる構成によれば、面204Aに記録媒体14の着弾位置評価パターン形成エリア14Bを密着させることができ、着弾位置評価の精度を向上させることが可能となる。
【0142】
〔他の装置への応用例〕
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルタ製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
【0143】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0144】
(発明1):記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドと、前記記録媒体の記録画像が描画される描画部を裏側から支持する第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置され、前記記録媒体の端部を固定する固定部材を具備するとともに、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きく、前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定される第2の面を有する記録媒体保持手段と、前記記録媒体保持手段によって保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【0145】
本発明によれば、描画領域を支持する第1の面よりも記録ヘッドとの距離が大きい第2の面に記録媒体の余白領域が固定され、該余白領域にドット形成位置評価パターンが記録されるので、当該ドット形成位置評価パターンの誤差が相対的に拡大され、より高い精度でドット形成位置の誤差を評価することが可能である。
【0146】
本発明における固定部材は、第2の面との間に記録媒体の先端部をはさみ込んで該先端部を挟持する挟持部材を適用することが可能である。
【0147】
(発明2):発明1に記載の画像記録装置において、前記記録媒体保持手段は、前記第1の面を外周面とするドラム形状の記録媒体搬送部材を備えたことを特徴とする。
【0148】
かかる態様において、記録媒体の描画領域を外周面に固定する態様が好ましい。記録媒体の描画領域を外周面に固定する態様として吸着固定方式が挙げられる。
【0149】
(発明3):発明1又は2に記載の画像記録装置において、前記記録媒体と前記記録ヘッドとの一回の相対移動によって前記記録ヘッドが画像記録可能な前記記録媒体上の領域と前記記録ヘッドとを一回だけ相対移動させ、当該画像記録における前記記録媒体の画像記録対象領域のすべてについて前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させるように前記移動手段を制御する移動制御手段を備え、前記駆動制御手段は、当該画像記録における前記記録媒体の画像記録対象領域に所定の画像が記録されるように前記記録ヘッドの駆動を制御することを特徴とする。
【0150】
かかる態様において、記録媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の記録素子が並べられたフルライン型記録ヘッドを備える態様が好ましい。
【0151】
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の画像記録装置において、前記ドット形成位置評価パターンを読み取る読取手段を備えたことを特徴とする。
【0152】
かかる態様における読取手段は、記録解像度よりも低い読取解像度により読み取りを行う態様を適用可能である。
【0153】
(発明5):発明4に記載の画像記録装置において、前記読取手段の読取結果に基づいて前記記録素子ごとにドット形成位置を評価して、ドット形成の異常の有無を判断するとともに、前記判断されたドット形成の異常に応じて前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するか否かを判断する判断手段を備えたことを特徴とする。
【0154】
かかる態様によれば、より正確にノズルの異常の有無を判断することができ、メンテナンスを実行するか否かノズル判断を誤ることが防止される。
【0155】
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載の画像記録装置において、前記第2の面は、前記第1の面から内側へ傾斜した傾斜面を含むことを特徴とする。
【0156】
かかる態様によれば、既存の形態を大きく変更することがなく、より高い精度のドット形成位置の評価が可能となる。
【0157】
かかる傾斜面と水平面との角度を20°以上とする態様が好ましく、該傾斜面と水平面との角度を30°以上とするとより好ましい。また、かかる傾斜面は斜度が異なる複数の傾斜面が構成されていてもよい。
【0158】
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置において、前記記録媒体保持部材は、前記第1の面と前記第2の面との間に段差が設けられた構造を有することを特徴とする。
【0159】
かかる態様によれば、ドット位置評価パターンを形成することができるエリアをより大きく確保することができる。
【0160】
該段差の量を、記録ヘッドと第1の面に支持される記録媒体との間隔の5倍以上とする態様が好ましい。かかる態様によれば、ドット位置評価パターンの読取解像度を記録解像度の1/5程度にすることが可能となり、読取装置の選択肢が広くなる。
【0161】
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記第2の面に固定される前記余白領域を吸着保持する吸着保持手段を備えたことを特徴とする。
【0162】
かかる態様によれば、余白領域が確実に固定され浮きが防止されるので、ドット位置形成パターンをより正確に形成することが可能となる。
【0163】
かかる態様において、余白領域のうち少なくともドット位置形成パターンが形成される領域が固定されていればよい。もちろん、固定部材により固定されている部分をさらに固定してもよい。
【0164】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の画像記録装置において、前記第1の面と前記第2の面とから形成される形状に対応する形状をする押圧部を有し、前記押圧部により前記記録媒体保持手段に保持された記録媒体を押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする。
【0165】
かかる態様において、記録媒体を第1の面と第2の面とから形成される形状に合わせて密着させることができる。
【0166】
(発明10):記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドの記録面と対向する第1の面に前記記録媒体の記録画像が描画される描画部が裏側から支持され、前記第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置される固定部材により前記記録媒体の端部が固定され、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きい第2の面に前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定され、前記保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させて、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御することを特徴とする画像記録方法。
【0167】
(発明11):記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドの記録面と対向する第1の面に前記記録媒体の記録画像が描画される描画部が裏側から支持され、前記第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置される固定部材により前記記録媒体の端部が固定され、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きい第2の面に前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定され、前記保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させて、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御し、前記形成されたドット形成位置評価パターンを読み取り、読取結果に基づいて記録素子ごとにドット形成位置を評価して、ドット形成の異常の有無が判断されることを特徴とするドット形成位置評価方法。
【0168】
(発明12):発明11に記載のドット形成位置評価方法において、前記判断されたドット形成の異常の有無に応じて前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するか否かが判断されることを特徴とする。
【0169】
記録ヘッドのメンテナンスは、記録素子の清掃等の回復処理でもよいし、記録ヘッド全体の回復処理でもよい。
【符号の説明】
【0170】
10…インクジェット記録装置、44…描画胴、48,48M,48K、48C,48Y,100…ヘッド、80…グリッパー、82…インラインセンサ、108…ノズル、148…ヘッド駆動部、166…インライン検出部、168…判定部、172…システムコントローラ、204…周面、204A…面、213…爪台、300,302…吸着穴、320…押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドと、
前記記録媒体の記録画像が描画される描画部を裏側から支持する第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置され、前記記録媒体の端部を固定する固定部材を具備するとともに、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きく、前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定される第2の面を有する記録媒体保持手段と、
前記記録媒体保持手段によって保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記記録媒体保持手段は、前記第1の面を外周面とするドラム形状の記録媒体搬送部材を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像記録装置において、
前記記録媒体と前記記録ヘッドとの一回の相対移動によって前記記録ヘッドが画像記録可能な前記記録媒体上の領域と前記記録ヘッドとを一回だけ相対移動させ、当該画像記録における前記記録媒体の画像記録対象領域のすべてについて前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させるように前記移動手段を制御する移動制御手段を備え、
前記駆動制御手段は、当該画像記録における前記記録媒体の画像記録対象領域に所定の画像が記録されるように前記記録ヘッドの駆動を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記ドット形成位置評価パターンを読み取る読取手段を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像記録装置において、
前記読取手段の読取結果に基づいて前記記録素子ごとにドット形成位置を評価して、ドット形成の異常の有無を判断するとともに、前記判断されたドット形成の異常に応じて前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するか否かを判断する判断手段を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記第2の面は、前記第1の面から内側へ傾斜した傾斜面を含むことを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記記録媒体保持部材は、前記第1の面と前記第2の面との間に段差が設けられた構造を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記第2の面に固定される前記余白領域を吸着保持する吸着保持手段を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記第1の面と前記第2の面とから形成される形状に対応する形状をする押圧部を有し、前記押圧部により前記記録媒体保持手段に保持された記録媒体を押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項10】
記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドの記録面と対向する第1の面に前記記録媒体の記録画像が描画される描画部が裏側から支持され、前記第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置される固定部材により前記記録媒体の端部が固定され、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きい第2の面に前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定され、
前記保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させて、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御することを特徴とする画像記録方法。
【請求項11】
記録媒体上にドットを形成する記録素子が設けられた記録ヘッドの記録面と対向する第1の面に前記記録媒体の記録画像が描画される描画部が裏側から支持され、前記第1の面よりも前記記録ヘッド側に突出しないように前記第1の面よりも内側に配置される固定部材により前記記録媒体の端部が固定され、前記記録ヘッドと前記第1の面との距離よりも前記記録ヘッドとの間の距離が大きい第2の面に前記固定部材により固定される端部を含む余白領域が固定され、
前記保持された記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させて、前記第2の面に固定された前記余白領域に前記記録素子を動作させてドット形成位置を評価するためのドット形成位置評価パターンを記録するように前記記録ヘッドの駆動を制御し、
前記形成されたドット形成位置評価パターンを読み取り、読取結果に基づいて記録素子ごとにドット形成位置を評価して、ドット形成の異常の有無が判断されることを特徴とするドット形成位置評価方法。
【請求項12】
請求項11に記載のドット形成位置評価方法において、
前記判断されたドット形成の異常の有無に応じて前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するか否かが判断されることを特徴とするドット形成位置評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−173279(P2011−173279A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37622(P2010−37622)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】