説明

画像記録装置

【解決課題】各サーマルヘッド間で記録媒体を正確に搬送して、各サーマルヘッド間の画像の位置ずれや画像ピッチの変動を無くして各色の重ね合わせ精度を向上させるとともに、記録媒体の両面に印刷を可能とした、熱転写方式の記録装置を提供する。
【解決手段】隣接するサーマルヘッドの間に、搬送するプラテンドラムに臨んで一対の小片(300,302)を設け、この小片の円周方向の両端にローラ(307,308)を設けた。ローラは、記録紙100をプラテンドラム表面の弾性体18Aに押さえて、記録紙がプラテンドラムから離間するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に色材を転写し画像を形成する画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この画像記録装置は、サーマルヘッド及びインクリボンを複数備え、記録媒体の流れ方向に沿って、記録媒体に順次色を重ねて最終的な画像を形成するものである。この記録装置として、例えば、特開平08−244262号公報、特開2006−82248号公報、特開2006−75996号公報に記載のものが存在する。
【0003】
これらの記録装置は、色毎にサーマルヘッドとこれに向き合うプラテンローラを備え、これらサーマルヘッドとプラテンローラとをほぼ直線状に順番に、記録媒体の搬送方向に並べた構造を持っていた。そして、記録装置は、各色のサーマルヘッドの先に一対の搬送ローラを備え、一対の搬送ローラの間に記録媒体を挟んでこれを搬送しながら、サーマルヘッドにインクリボンを供給し、サーマルヘッドをプラテンローラに押し付けて、サーマルヘッドとプラテンローラとの間で搬送される記録媒体にインクを熱転写していた。記録装置は、記録媒体を搬送しながら、イエロー、マゼンタ、そしてシアンを転写して、目的とするカラー画像を記録媒体に形成していた。
【特許文献1】特開平08−244262号公報
【特許文献2】特開2006−82248号公報
【特許文献3】特開2006−75996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の記録装置は、複数のプラテンローラと、搬送ローラとを備えている。これらローラの精度を完全に一致させることは極めて難しい。たとえば、複数のプラテンローラや搬送ローラの平行度が互いに異なり、また、記録媒体の搬送方向に対する直角度が異なると、各色のサーマルヘッドの部分で記録媒体が独立して搬送されているため、各色でインクが転写される、記録媒体上の本来の位置から実際にインクが転写される位置がずれていき、その結果、インクの重ね合わせ精度が悪化するという問題があった。
【0005】
すなわち、従来の方式では、用紙が搬送ローラに対して正確に送られたとしても、少なくとも、ヘッドと、一対に回転する弾性体のプラテンローラと、が複数個存在しているため、プラテンローラそれぞれの平行度がずれていると紙の搬送の方向性が変化してスキューが発生してしまう。例えば、各色分あるプラテンのうち1つ目のプラテンと、2つ目のプラテンの平行度が100mmあたり0.1mmずれていた場合、100分の1の傾きがあるから、結果として紙を100mm送ると0.1mmのずれを生じてしまう。
【0006】
又、用紙の搬送経路上に 基準となる搬送ローラの他に、弾性体のプラテンローラが存在する為、プラテンローラの弾性変形が搬送に悪影響を与えるなど、結果的に、用紙が次のヘッド及びプラテンに到達する時点で、用紙の所定の位置で色を重ね合わせることが出来なく、搬送ローラが正確に用紙を送っていても、用紙の搬送経路上に同じく搬送の効果がある回転する弾性体であるプラテンが存在することから、各色の重ね合わせを正確にすることは極めて困難であった。
【0007】
また、記録媒体が複数の搬送ローラで搬送されているために、複数の搬送ローラ同士での搬送速度に相違が発生すると、記録媒体に張力が働き記録媒体に伸びや曲がりが発生したり、あるいは、記録媒体と搬送ローラとの間に滑りが発生したり等、各ヘッド間で記録媒体の送り精度に誤差が生じる。
【0008】
そこで、従来の記録装置では、記録媒体の送り精度を向上させるために、搬送ローラとして、突起を持ったグリップローラを用いていた。このグリップローラとは、ローラの外周に針状の突起がある金属ローラを印字裏面に当て 針状の突起のないニップローラとの対で、これらローラ間に記録媒体をニップして、用紙とローラ間に滑りが発生しないように、突起が記録媒体に噛み込むようにしながら記録媒体を搬送する際の精度を確保するものであった。
【0009】
しかしながら滑りが発生しなくても 互いの平行度や、搬送駆動系の送り誤差や、搬送ローラと他の搬送ローラ、他のプラテン等の搬送部材が干渉して結果的に用紙が伸びたり 滑ってしまうことがあり結果的に媒体の、送り精度に大きな誤差生じていた。
さらにこの種の記録装置では、搬送ローラにより記録媒体の印字裏面に凹凸が形成されてしまうため、記録媒体の両面に印刷できないという問題があった。
【0010】
そこで、この発明は、各サーマルヘッド間で記録媒体を正確に搬送して、各サーマルヘッド間の画像の位置ずれや画像ピッチの変動を無くして各色の重ね合わせ精度を向上させるとともに、記録媒体の両面に印刷を可能とした、熱転写方式の画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を解決するために、円周面に弾性体が設けられたプラテンドラムと、前記プラテンドラムを回転駆動する第1の手段と、前記プラテンドラムの円周面に沿って順番に配置される、少なくとも3つのサーマルヘッドと、前記プラテンドラムに対して記録媒体を供給する第2の手段と、各サーマルヘッドと前記記録媒体との間にインクリボンを供給する第3の手段と、前記複数のサーマルヘッド同士の間の前記プラテンドラムの円周面に臨むように設けられ、前記記録媒体を前記弾性体に付勢する第4の手段と、前記複数のサーマルヘッドそれぞれの前記記録媒体に対する印画周期タイミングを制御する第5の手段と、を備え、前記プラテンドラムは、前記弾性体と前記複数のサーマルヘッドによって当該弾性体に押圧される記録媒体との間に働く摩擦によって、前記記録媒体を前記プラテンドラムの回転に従って、前記複数のサーマルヘッドに順番に搬送する、熱転写記録装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、プラテンドラムに記録媒体を密着させ、さらに複数のサーマルヘッドに対し一つのプラテンドラムを基準として記録媒体を搬送することにより、各サーマルヘッド間で記録媒体を正確に搬送して、各サーマルヘッド間の画像の位置ずれや画像ピッチの変動を無くして各色の重ね合わせ精度を向上させるとともに、記録媒体の両面に印刷を可能とした、熱転写方式の記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。図1に示す様に、記録装置は、大別して、プラテンドラム18と、プラテンドラムに記録媒体である記録紙100を供給する給紙ロール14と、印画されながら、連続的に搬送される記録紙を、例えば葉書サイズに順次切断するカッター13と、駆動ベルト101が巻回され、この駆動ベルト101を回転させる駆動モータ102と、を備えている。
【0014】
符号103は、プラテンドラム18の回転軸方向の一端に固定されたプーリであって、これにも駆動ベルト101が巻回されている。この様子については、図2〜図4にも示されている。したがって、駆動モータ102が回転すると、駆動ベルト101によって、プーリ103が回転し、その結果、プラテンドラム18が回転する。
【0015】
プラテンドラム18の円周表面にはゴムなどの弾性体18Aが固着されている。弾性体18Aと記録紙100との間には所定の摩擦が生じる。
【0016】
プラテンドラム18が回転すると、プラテンドラムは、摩擦によって記録紙100を給紙ローラ14から引き出し、記憶紙に印刷を行った後カッター13までこれを搬送する。符号15aは記録紙の送り方向を示し、15bはプラテンドラム18の回転方向を示し、15cは記録紙の送り出し方向を示している。
【0017】
図1〜図3において、符号5は給紙ローラ14から搬送された記録紙100をプラテンドラムの円周面に向けて送り出す第1の送り出しローラである、符号11a,11bは記録紙を第1の送り出しローラ5に押さえる押さえローラである。符号600は用紙位置(用紙の開始端)を検出するセンサである。
【0018】
用紙位置センサがあることにより、センサの信号に基づいて各ヘッドの印画タイミングが決定される。実際には、紙がセンサを通過してから yインクを印画し、yインクの印画のタイミングからmインクの印がのタイミングを決め、次いで、cインクの印画のタイミングを決める。センサ信号から、y、m、cの各インクの印画のタイミングを決めてもよい。
【0019】
また、符号6はプラテンドラムの円周面に沿って搬送され、印画された記録紙をカッター13に向けて送り出す第2の送り出しローラである。符号12は記録紙を第2の送り出しローラに対して押さえる押さえローラである。
【0020】
プラテンドラム18の円周表面に沿って、イエロー、マゼンタ、シアン、そして、透明コートそれぞれ用のサーマルヘッドが等間隔で配置されている。図1〜図5において、符号9aはイエロー用のサーマルヘッドであり、9bはマゼンタ用のサーマルヘッドであり、9cはシアン用のサーマルヘッドであり、そして、9dは透明コート用のサーマルヘッドである。
【0021】
各サーマルヘッドにはインクリボンが供給される。図1及び図5において、符号1aはイエローインク用リボンの供給ローラであり、1bはイエローインク用リボンの巻き取りローラである。同様に、符号2aはマゼンタインク用リボンの供給ローラであり、2bはその巻き取りローラであり、符号3aはシアンインク用リボンの供給ローラであり、符号3bはその巻き取りローラであり、そして、符号4aはコートインク用リボンの供給ローラであり、符号4bはその巻き取りローラである。図2〜図4では、これらローラは省略されている。
【0022】
記録装置は、各サーマルヘッドをプラテンドラム18に対して、矢印方向100Aに進退させる、公知の機構を備えている。記録装置は、記録紙を印刷する際には、サーマルヘッドを搬送される記録紙に当接させ、記録紙とサーマルヘッドとの間にインクリボンを連続的に供給しながら、インクを記録紙に熱転写する。
【0023】
記録装置は、各色用のサーマルヘッドの間に、記録紙100をプラテンドラム表面の弾性体18Aに対して付勢する付勢手段を備える。記録紙はサーマルヘッド(9a,9b,9c,9d)によってプラテンドラム18に押さえられていても、記録紙を搬送する際、互いに隣接する二つのサーマルヘッドの間では、記録紙100はプラテンドラム表面の弾性体18Aから離れようとする。
【0024】
記録紙がプラテンドラム表面から離れると、隣接するサーマルヘッド間の円周上(プラテンドラムの)の距離とこの間にある記録紙の長さとが異なり、記録紙の送り精度が損なわれて、異なるインクを記録紙に重ね合わせる際の精度が低下する。そこで、記録紙がサーマルヘッド間でプラテンドラムから離れないようにするために既述の付勢手段を備えた。
【0025】
図1〜図5において、符号8aはイエロー用サーマルヘッド9aとマゼンタ用サーマルヘッド9bとの間に等しく存在する第1の付勢手段であり、符号8bはマゼンタ用サーマルヘッド9bとシアン用サーマルヘッド9cとの間で等しく存在する第2の付勢手段であり、符号8cはシアン用サーマルヘッド9cとコート用サーマルヘッド9dとの間で等しく存在する第3の付勢手段である。図2は、付勢手段の側面図を示している。図3及び図4は、付勢手段の斜視図を示している。図5は付勢手段の拡大図を示している。
【0026】
付勢手段は、プラテンドラムに向き合う面がプラテンドラムの円周の曲率に即した形状を持った小円弧状の小片の一対(300、302)が、プラテンドラムの軸方向に向き合った構造を備えている。小片300,302の円周方向の両端にはこれら一対の小片を連結する小軸304と306とが存在する。これら小軸304の前記一対の小片側それぞれには、円筒形状の転がり体307が設けられている。小軸306に対しても同様に転がり体308が設けられている。転がり体は小軸の回りを円滑に回転するローラから構成されている。小軸306と転がり体308が一体であっても300,302に対して同様の効果があればよい。
【0027】
一対の小片300,302は、転がり体を支持するサポート体及び記録紙をプラテンドラムに沿わせる部材として機能する。転がり体307,308はサポート体によって、プラテンドラム18の円周方向に沿って支持されている。
【0028】
プラテンドラム18の回転が転がり体に及ぶことによって、転がり体はプラテンドラムの周りの記録紙100をプラテンドラム表面の弾性体18Aに押さえながら回転する。記録紙100がサーマルヘッド間で搬送される過程で、記録紙がプラテンドラムから離れようとするのを、転がり体が、円周方向から抑制する。
【0029】
図3及び図4に示す様に、既述の付勢手段の3基が、プラテンドラムの回転軸方向に沿って、一列になってプラテンドラムに対して配置されている。このように一列状にプラテンドラムに対して配置された、複数の付勢手段は二つのサーマルヘッドの間に存在する。符号310は、複数の付勢手段をプラテンドラムの回転軸方向に沿って連結する、シャフトである。小片体300,302の中心にはシャフト310が貫通しながら固定される軸穴が設けられている。複数の付勢手段は、シャフト310によって、回転軸方向に固定される。さらに、シャフト310の両端部は、図3の符号330によって模式的に示されるバネ部材の如くの弾性部材によって、プラテンドラムの中心方向に引かれている。その結果、転がり体307,308が記録紙100をプラテンドラムの中心方向に付勢する。この弾性部材330は、記録装置が固定される不図示のフレームに対して、プラテンドラムの中心方向に沿って固定されている。
【0030】
シャフト310の両端には、このシャフトによって互いに連結された付勢手段群をフレームに固定するためのブラケット312,314が設けられている。このブラケットは、一端が膨らんだ形状の膨出部332を備えている。既述のシャフト310は、この膨出部に嵌入されている。膨出部の対向側は、先細り状の基端部334が存在し、この基端部334の円形穴336に、フレームから回転軸方向に突出する短軸316が嵌入されている(図3,図4)。これにより、シャフトの一端側がシャフトと同じ側のフレームに固定される。シャフト310の他端側も同様に、この側のフレームに固定される。
【0031】
図3,図4において、符号314は、シャフト310の他端側のブラケットであり、符号318はこの側でフレームから付勢手段側に突出する短軸である。これにより、シャフトの他端側もフレームに固定される。したがって、シャフト310の両端側がフレームに固定されることによって、複数の付勢手段がプラテンドラムに臨みながらフレームに固定される。
【0032】
付勢手段の小片300、302は、図5に示すように、最小限のクリアランス17を介してプラテンドラム18に臨んでいる。こうすることにより、記録紙100が、付勢手段の両端の転がり体(307,308)の間でプラテンドラムから、仮に、離間することがあっても、最小限のクリランスを介して記録紙と向き合う小片が記録紙の浮き上がりに干渉し、記録紙がプラテンドラムから離れる程度を極力抑制することができる。
【0033】
このクリアランス17がどの程度許容さるかは、サーマルヘッド間での記録紙の送り誤差(送り量のバラツキ)によって決まる。例えば、送り誤差をゼロにしたい場合は、クリアランスはゼロであるが、実際には用紙と摺れてしまうためクリアランスはあったほうが好ましい。しかしながらこのクリアランスが大きいと記録紙がドラム表面から離れようとするので円周誤差等により送り誤差が発生する。
【0034】
又、サポート体が大きくプラテンドラムから離れていると、記録紙の先端では、特に、プラテンドラムの円周より大きい半径を描き、送りずれが生じる。300DPIの印画品質を得る為には、記憶媒体の許容される送り誤差は、最大1ドット相当分の84ミクロンであるが、この送り誤差が常に一定であればその誤差をパラメータとして印画タイミングを変えれば其々のヘッドで印画されるドットの重ね合わせは一定になる。このクリアランスと送り誤差とバラツキの傾向を本機構に当てはめて検証した結果、図6に示すように、ドラム表面と付勢部材のドラム側表面クリアランスが1,5ミリから急激に送り精度が不安定になることがわかった。誤差許容値を3Σとした場合84ミクロン÷3が標準偏差の値であって約28ミクロンとすれば、図6によればクリアランスは1.5ミリ以下でなければならない。バラツキのない定数的な送り誤差を解消するには、各サーマルヘッドの通電印画タイミングを変えて調整している。たとえば付勢部材のクリアランスを1ミリにした場合は各サーマルヘッド間で100ミクロンに相当する分通電タイミングをずらしている。0.5ミリの場合は50ミクロンに相当する分通電タイミングをずらしている。これらの設定は実際の印画したずれを測定して決定するか、付勢部材の設計上のクリアランスから決定している。このクリアランスは小さいほどよく、0−1.5ミリの範囲内で出来るだけ小さい方が良かった。
【0035】
ところで、転がり体を利用することなく、円弧状の小片(300、302)そのものをプラテンドラムにクリアランスなく押圧することも考えられるが、付勢手段と搬送される記録紙100との間の摩擦が記録紙100と弾性体18Aとの間の摩擦に打ち勝つようなことがあると、記録紙100の送り精度が劣化するおそれがある。
【0036】
また、そのようなことが無いとしても、記録紙に小片の擦り傷が付く虞がある。一方、転がり体が記録紙を押さえることによって、このような問題がない。但し、転がり体とプラテンドラムの回転と一緒に移動する記録紙との間の摩擦係数は、記録紙とプラテンドラム表面の弾性体との間の摩擦係数より小さい必要がある。転がり体は付勢手段の円周方向の両端にあるとして説明したが、これに限らず、付勢手段はさらに転がり体を備えるものであってもよい。なお、図1及び図5において、符号16a,16b,16cはそれぞれインクリボン巻き取りローラの回転方向である。
【0037】
記録装置は、記録紙100をプラテンドラム18に巻き付け、プラテンドラム表面の弾性体18Aと記録紙100との間の摩擦によって、記録紙を搬送する。その結果、記録紙の搬送はプラテンドラムという一つの搬送系で実現されるため、従来のように複数の搬送系で記録紙を送る際のような記録紙の送り精度の低下という問題が発生しない。また、記録紙の伸びや座屈の問題が発生しない。
【0038】
記録装置は、イエロー用サーマルヘッド7aの近傍の上流側(記録紙の搬送方向に沿って)と、コート用サーマルヘッド7d近傍の下流側にも、同様な構成の付勢手段(7a,7b)を備え(図1、図3、図4)、記録紙100とプラテンドラム18との密着性を向上させている。この構成によって、記録紙がプラテンドラムに供給された後直ぐのサーマルヘッド9aにおける記録紙の送り込精度と、記録紙がプラテンドラムから排出される直前のサーマルヘッド9dにおける記録紙の送り出し精度とを向上させている。
【0039】
なお、図4に示すように、これらの付勢手段では、転がり体は、小片の両端にあるのではなく、サーマルヘッド側にのみ設けられている。これは、記録紙がプラテンドラムに対して送り込まれること、そして、記録紙がプラテンドラムから送り出されることを干渉しないようにするためである。
【0040】
さらに、記録装置は、以上説明した付勢手段をプラテンドラムに対して進退させる駆動機構を備えている。この実施形体は、この機構としてカム構造を利用している。以後このことについて説明する。
【0041】
図1〜図4に示されているように、プラテンドラム18のプーリ103とは反対側に、外周にカム構造が形成された円形体400が設けられている。この円形体の周囲にはカム構造に相当する大径部402が円周方向に均等に複数形成されている。符号404はこの円形体を回転させるためのモータである。このモータはギア406を回転させる。このギアは円形体400に固定されたロータ408の周縁部の溝に噛み合っている。モータ404が回転するとギア406が回転し、このギアの回転によってロータ408が回転する。ロータの回転によって円形体が時計あるいは反時計方向に回転する(図2の412)。円形体400が回転すると、その大径部402がブラケット312の膨出部332に当たる。
【0042】
すると、ブラケットは基端部334の軸を中心にして、ブラケット312の膨出部332がプラテンドラム18から離間する方向に、弾性部材330(図3)の弾性力に抗して持ち上がる。この結果、記録紙に印刷が行われていない期間、転がり体307,308によるプラテンドラムの表面の弾性体18Aへの押圧が開放される。
【0043】
一方、記録装置が記録紙に印刷をする際には、円形体400g回転して大径部402と膨出部332との当接が解除される。その結果、シャフト310の端部が弾性部材330に引かれて、ブラケット312がプラテンドラムの中心側に向けて回転し、転がり体307,308が記録紙100に対して押接される。
【0044】
次に、プラテンドラム18の回転中心(図5の500)がプラテンドラム18の真の中心から偏心している際、記録装置が、プラテンドラムの回転を補正処理する動作について説明する。プラテンドラムの角速度が一定であるとすると、プラテンドラムの表面のある点における実際の周速度(V´)は次のように変化する。

(R−(△R×π×sinθ))/R×V =V´

R:プラテンドラムの真に半径
△R:偏心量
θ:プラテンドラムの回転角
V:偏心がない場合の周速度
【0045】
したがって、偏心量を予め測定しておけば、プラテンドラムの周速度は回転角度によって変化することにより180度位相をずらした計算式が補正式となり、すなわち、
V´/V×モータパルス(モータ回転数)になるように、駆動ベルト101を介してプラテンドラム18を回転させることを、駆動装置102の制御回路が、駆動装置のモータに対して行えば、プラテンドラムが偏心していても、その周速度を一定(V)にすることができる(図7参照)。
【0046】
既述の記録装置のように、記録媒体をサーマルヘッドに対して送り誤差なく正確に搬送出来れば、プラテンドラムの円周上に配置されたサーマルヘッドの位置は寸法的に固定されているので、記録紙に一定時間ごとに印画を行えば正確に其々の印画を同期させて重ね合わせることが可能となる。
【0047】
またプラテンドラムが偏心していても、ドラムの周速度の変動を測定して、その速度変動を打ち消すように駆動部が、偏心誤差を補償し、プラテンドラムを回転させることによって、プラテンドラムの周速度が一定になり、記録紙の送り誤差を無くすことができる。したがって、記録装置は、記録紙の位置情報を取得して、記録装置の送りに関して、フィードバック制御を行う必要が無い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、ヘッドが3つ以上ある熱転写プリンタにおいて、記録紙の搬送誤差を少なくすることにより、正確な色合わせを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱転写記録装置を構成する複数の要素の配置の概要を示した、当該記録装置の側面図である。
【図2】付勢手段の位置関係を特に示した、前記記録装置の側面図である。
【図3】前記記録装置のプラテンドラムを強調した斜視図である。
【図4】図3とは異なる方向からプラテンドラムを俯瞰した斜視図である。
【図5】付勢手段を拡大して示した、記録装置の側面図である。
【図6】付勢手段とドラム表面のクリアランスが記録紙の送り精度に当たる影響に関する測定結果である。
【図7】ドラムの偏心量に対する補正式を説明するための特性図である。
【符号の説明】
【0050】
1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a,4b インクリボン用ローラ
8a,8b,8c 付勢手段
9a,9b,9c,9d サーマルヘッド
14 給紙ローラ
18 プラテンドラム
18A 弾性体(プラテンドラム表面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周面に弾性体が設けられたプラテンドラムと、
前記プラテンドラムを回転駆動する第1の手段と、
前記プラテンドラムの円周面に沿って順番に配置される、少なくとも3つのサーマルヘッドと、
前記プラテンドラムに対して記録媒体を供給する第2の手段と、
各サーマルヘッドと前記記録媒体との間にインクリボンを供給する第3の手段と、
前記複数のサーマルヘッド同士の間の前記プラテンドラムの円周面に臨むように設けられ、前記記録媒体を前記弾性体に付勢する第4の手段と、
前記複数のサーマルヘッドそれぞれの前記記録媒体に対する印画周期タイミングを制御する第5の手段と、
を備え、
前記プラテンドラムは、前記弾性体と前記複数のサーマルヘッドによって当該弾性体に押圧される記録媒体との間に働く摩擦によって、前記記録媒体を前記プラテンドラムの回転に従って、前記複数のサーマルヘッドに順番に搬送する、熱転写記録装置。
【請求項2】
前記第4の手段は、前記プラテンドラムの円周面に沿ってほぼ等間隔で配置される前記複数のサーマルヘッドのうち、前記記録媒体の搬送方向において、最上流のサーマルヘッドの直前と、最下流のサーマルヘッドの直後と、にも設けられている、請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項3】
前記第4の手段は、記録媒体の搬送に影響を与えないようにして当該記録媒体に接するか、あるいは少なくとも不可避のクリアランス以下の隙間を介して前記記録媒体に臨んでいる、請求項1又は2記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
前記第4の手段は、前記弾性部体によって搬送される記録媒体に対して、転がり接触、あるいは滑り接触しながら、前記記録媒体を前記弾性体に押圧する第1部材を備える、請求項3記載の熱転写記録装置。
【請求項5】
前記第4の手段は、前記第1部材を複数備え、さらに、当該複数の第1部材がサポート部材に連結された構造を備え、当該サポート部材は、不可避のクリアランスを介して前記記録媒体に臨んでいる、請求項4記載の熱転写記録装置。
【請求項6】
前記第1部材と前記記録媒体との間の摩擦係数は、前記記録媒体と前記弾性体との間の摩擦係数より小さい、請求項4又は5記載の熱転写記録装置。
【請求項7】
前記第4の手段を前記記録媒体に対して進退駆動させる駆動機構を備え、
当該駆動機構は、
前記記録媒体に対する印刷が行われる時に、前記第4の手段を、前記記録媒体を前記プラテンドラムに付勢する位置に進ませ、
前記記録培媒体に対する印刷が行われない状態では、前記第4の手段を当該位置から退かせる、請求項3記載の熱転写記録装置。
【請求項8】
前記プラテンドラムの真の中心と、その回転中心との差である偏心度を予め測定し、
当該プラテンドラムの表面速度が前記複数のサーマルヘッドのそれぞれに対して一定になるように、前記偏心度に基づく前記プラテンドラムの回転ムラを補償するように前記第1の手段を制御する、請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項9】
前記サーマルヘッドの通電印画タイミングは 用紙位置検出センサを基準にして設定される請求項1に記載の熱転写記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188595(P2010−188595A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34815(P2009−34815)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(399047714)株式会社ウェッジ (9)
【Fターム(参考)】