説明

画像記録装置

【課題】高速で被記録媒体の記録面に画像を記録する。
【解決手段】プリンタ1は、記録方向決定部54により画像データに基づいて記録面Paの長手方向または短手方向の記録時間が短い方向を記録方向とし、この記録方向に応じて給紙ローラ選択部55により駆動する給紙ローラを選択し、その給紙トレイから用紙搬送経路に記録用紙を給紙する。そして、給紙された記録用紙は、その記録面の記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向が一致して搬送され、走査方向に走査するインクジェットヘッド3によりノズルから記録用紙の記録面へインクを噴射させて、記録面に所望の画像を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体の記録面に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像記録装置として、記録用紙などの被記録媒体に対して所定の走査方向に往復移動可能なキャリッジに搭載され、被記録媒体の記録面に画像を記録する記録ヘッドを備えたものがある。このような画像記録装置として、例えば、特許文献1には、走査方向に往復移動可能なキャリッジに搭載され、複数のノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドと、被記録媒体を前記走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構を備えたインクジェットプリンタについて開示されている。
【0003】
このプリンタは、インクジェットヘッドを走査方向に移動させながら被記録媒体の記録面へインクを噴射させる動作と、被記録媒体を搬送方向に所定量搬送する動作を、交互に繰り返すことにより、被記録媒体の記録面に所望の画像を記録している。また、画像によっては、被記録媒体上にドットを形成しない空白領域が存在する場合がある。この空白領域がインクジェットヘッドの走査方向の全域に渡っている場合に、インクジェットヘッドを走査することは、記録時間の無駄であるから、その領域についてはパスを省略している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−118097号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載のインクジェットプリンタに代表される画像記録装置においては、記録面に対する記録ヘッドの走査方向が固定であり、記録面への画像の記録方向がどのような画像データに対しても同じであるため、例えば、記録用紙における記録ヘッドの走査方向の一部にのみ画像を記録する場合にも、その領域についてパスを行うことになり、画像データによっては記録時間が長くなってしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、どのような画像データに対しても、高速で被記録媒体の記録面に画像を記録することができる画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像記録装置は、被記録媒体の記録面に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを走査方向に往復走査する走査手段と、前記被記録媒体の前記記録面に平行な第1方向、または、前記第1方向と交差し前記記録面に平行な第2方向のうちいずれかの方向に、前記記録ヘッドが走査され画像が記録される記録方向を決定する記録方向決定手段と、前記記録ヘッドの前記走査方向、または、前記被記録媒体の向きを変更して、前記記録方向決定手段により決定した前記記録面の前記記録方向と前記記録ヘッドの前記走査方向を一致させる切換手段と、を備えており、前記記録方向決定手段は、前記被記録媒体の前記記録面に記録される画像に係る画像データに基づき、前記記録面の前記第1方向を前記記録方向としたときの第1記録時間と、前記記録面の前記第2方向を前記記録方向としたときの第2記録時間を算出し、前記第1記録時間と前記第2記録時間のうち記録時間が短い方向を前記記録方向と決定する。
【0008】
本発明の画像記録装置によると、画像に係る画像データに基づき、記録面の第1方向を記録方向としたときの第1記録時間と第2方向を記録方向としたときの第2記録時間のうち記録時間が短い方向を記録方向とし、記録時間が短い方向の記録方向と記録ヘッドの走査方向を一致させて、記録ヘッドを走査方向に走査することで、被記録媒体の記録面に画像を記録する。これにより、画像データに応じて最適な記録面の記録方向に記録ヘッドを走査させることができ、どのような画像データに対しても、高速で被記録媒体の記録面に画像を記録することができる。
【0009】
また、前記記録方向決定手段は、前記記録面の前記第1方向を前記記録方向としたときに前記記録ヘッドを走査させるパス数と1パスにかかる時間、及び、前記記録面の前記第2方向を前記記録方向としたときに前記記録ヘッドを走査させるパス数と1パスにかかる時間から、前記第1記録時間、及び、前記第2記録時間を算出することが好ましい。これによると、記録ヘッドを走査させるパス数と1パスにかかる時間から画像の記録時間を容易に算出することができる。
【0010】
さらに、収容された前記被記録媒体の向きが互いに異なる2つの供給トレイと、前記供給トレイから前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体を供給する供給手段と、をさらに備えており、前記切換手段は、前記記録方向決定手段により決定した前記記録方向に応じて、前記2つの供給トレイから前記記録ヘッドに対して供給すべき前記被記録媒体が収容された供給トレイを選択し、前記供給手段は、前記切換手段により選択された前記供給トレイから前記被記録媒体を供給することが好ましい。これによると、2つの供給トレイから記録面に対する記録方向に応じた供給トレイを選択し、その供給トレイから記録面の記録時間が短い方向を記録ヘッドの走査方向と平行にした被記録媒体を記録ヘッドに対して供給しているため、記録ヘッドの走査方向を所定の一方向に固定することができる。また、被記録媒体の向きを変更する複雑な機構を必要とせず、記録ヘッドに対して供給される被記録媒体の向きを変更することができる。
【0011】
また、前記被記録媒体が収容された1つの供給トレイと、前記供給トレイから前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体を供給する供給手段と、をさらに備えており、前記切換手段は、前記記録方向決定手段により決定した前記記録方向に応じて、前記記録ヘッドに対する前記被記録媒体の給紙の向きを変えてもよい。これによると、1つの供給トレイから供給される被記録媒体の向きを切換手段により変えて、記録面の記録時間が短い方向を記録ヘッドの走査方向と平行にした被記録媒体を記録ヘッドに対して供給しているため、記録ヘッドの走査方向を所定の一方向に固定することができる。また、互いに異なる向きで被記録媒体を収容する供給トレイを2つ設けて、被記録媒体を供給する供給トレイによって、記録ヘッドに対して供給される被記録媒体の向きを変更する機構を有する場合に比べて、装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0012】
画像に係る画像データに基づき、記録面の第1方向と第2方向のうち記録時間が短い方向を記録方向とし、この記録方向に記録ヘッドを走査して、被記録媒体の記録面に画像を記録することにより、どのような画像データに対しても、高速で被記録媒体の記録面に画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1のプリンタの平面図であり、(a)は長手方向に平行に記録用紙が搬送される時であり、(b)は短手方向に記録用紙が搬送される時である。
【図3】インクジェットヘッドの平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】記録用紙の説明図であり、(a)は長手方向に平行に搬送される記録用紙の平面図であり、(b)は短手方向に平行に搬送される記録用紙の平面図である。
【図7】インクジェットヘッドの走査方向に対する記録用紙の方向についての説明図であり、(a)は記録用紙の短手方向にインクジェットヘッドが走査される場合の記録用紙の平面図であり、(b)は記録用紙の長手方向にインクジェットヘッド走査される記録用紙の平面図である。
【図8】第2実施形態に係るプリンタの説明図であり、(a)はプリンタの概略構成を示す側面図であり、(b)は用紙向き変更機構の斜視図である。
【図9】変形例におけるプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図10】変形例における記録用紙の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、インクジェットヘッドから記録用紙に対してインクを噴射することにより、記録用紙に所望の画像を記録するインクジェットプリンタに本発明を適用したものである。
【0015】
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタの概略側面図である。図2は、図1のインクジェットプリンタの平面図であり、(a)は長手方向に記録用紙が搬送される時であり、(b)は短手方向に記録用紙が搬送される時である。なお、図2(a)においては、図1に示されているローラ11及びそのローラ11によって供給される記録用紙Pを図示しており、各種のローラ12〜15及びローラ12によって供給される記録用紙Pなどの図示は省略している。また、図2(b)においては、図1に示されているローラ12及びそのローラ12によって供給される記録用紙Pを図示しており、各種のローラ11、13〜15及びローラ11によって供給される記録用紙Pの図示は省略している。
【0016】
図1及び図2(a)、(b)に示すように、インクジェットプリンタ1(画像記録装置:以下では、単に、プリンタ1と称する)は、キャリッジ2(走査手段)と、インクジェットヘッド3(記録ヘッド)と、搬送機構5と、給紙機構9と、プリンタ1の全体制御を司る制御装置50(図5参照)などを備えている。
【0017】
キャリッジ2は、2本のガイド軸18、19に沿って図2の左右方向(走査方向)に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に取り付けられており、キャリッジ2と一体的に走査方向に往復移動するとともに、その下面に形成されたノズル35(図4参照)からインクを噴射する。
【0018】
図3は、インクジェットヘッドの平面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図3及び図4に示すように、インクジェットヘッド3は、インク流路が形成された流路ユニット30と、インク流路内のインクに噴射圧力を付与する圧電式のアクチュエータユニット31とを備えている。
【0019】
流路ユニット30には、図示しないインクカートリッジと接続されるインク供給口32と、このインク供給口32から分岐して走査方向と直交する図3の上下方向(搬送方向)に沿って延びるマニホールド33と、マニホールド33に連通した複数の圧力室34と、複数の圧力室34にそれぞれ連通する複数のノズル35が形成されている。なお、図3に示すように、マニホールド33は2本設けられ、複数の圧力室34及び複数のノズル35は、2本のマニホールド33に対応し、千鳥状に配置された2列の圧力室列及び2列のノズル列を構成している。
【0020】
アクチュエータユニット31は、複数の圧力室34を覆うように流路ユニット30に接合された振動板40と、振動板40の上面に配置された圧電層41と、圧電層41の上面に複数の圧力室34と対応して設けられた複数の個別電極42とを備えている。そして、このアクチュエータユニット31は、ヘッドドライバ60(図5参照)から個別電極42に所定の駆動パルス信号が供給されたときに、圧電層41に生じる圧電歪みを利用して、振動板40に撓み変形を生じさせるようになっている。この振動板40の撓み変形により圧力室34の容積が変動することで、圧力室34内のインクに圧力が付与され、圧力室34に連通するノズル35からインクが噴射される。
【0021】
図1及び図2(a)、(b)に戻って、搬送機構5は、搬送方向に関してインクジェットヘッド3を挟んで配置されたメインローラ13及び拍車ローラ14と、これらのローラ13、14をそれぞれ駆動する駆動モータ64、65(図5参照)などを備えており、用紙搬送経路8(図1に一点鎖線で示す)に沿って記録用紙P(被記録媒体)を搬送する。そして、この搬送機構5は、メインローラ13と押さえローラ15との協働により記録用紙Pを図1の右方からインクジェットヘッド3に向けて搬送方向に沿って搬送するとともに、拍車ローラ14により、インクジェットヘッド3によって画像や文字などが記録された記録用紙Pを図1の左方へ排出する。
【0022】
給紙機構9は、搬送機構5の下方に配置されており、積層された複数の記録用紙Pを収容可能な第1の給紙トレイ16と、第1の給紙トレイ16から記録用紙Pを送り出す第1の給紙ローラ11と、第1の給紙トレイ16の下方に配置され、積層された複数の記録用紙Pを収容可能な第2の給紙トレイ17と、第1の給紙ローラ11の軸芯と平行な軸芯であり、第2の給紙トレイ17から記録用紙Pを送り出す第2の給紙ローラ12と、これらのローラ11、12をそれぞれ駆動する駆動モータ62、63(図5参照)などを備えており、用紙搬送経路8に記録用紙Pを給紙する。なお、本実施形態における2つの給紙ローラ11、12、及び、これらのローラ11、12をそれぞれ駆動する駆動モータ62、63が本発明における供給手段に相当する。
【0023】
第1の給紙トレイ16には、その短手方向を第1の給紙ローラ11の軸芯と平行にした複数の記録用紙Pが収容されている。第1の給紙ローラ11は、第1の給紙トレイ16内に収容された複数の記録用紙Pのうち、最も上方にある記録用紙Pと回転しながら接触することで、当該記録用紙Pを用紙搬送経路8に給紙する。給紙された記録用紙Pは、その長手方向が搬送方向と平行に縦向きに用紙搬送経路8に沿って搬送され、インクジェットヘッド3により短手方向に走査されることとなる。
【0024】
第2の給紙トレイ17には、第1の給紙トレイ16に収容された記録用紙Pと面方向に関する向きが90度異なり、その長手方向を第2の給紙ローラ12の軸芯と平行にした複数の記録用紙Pが収容されている。第2の給紙ローラ12は、第2の給紙トレイ17内に収容された複数の記録用紙Pのうち、最も上方にある記録用紙Pと回転しながら接触することで、当該記録用紙Pを用紙搬送経路8に給紙する。給紙された記録用紙Pは、その短手方向が搬送方向と平行に横向きに用紙搬送経路8に沿って搬送され、インクジェットヘッド3により長手方向に走査されることとなる。
【0025】
このように、用紙搬送経路8には、給紙する給紙トレイの違いによって、同じ記録用紙Pではあるが、搬送方向に対して向きが90度異なる2種類の記録用紙Pが給紙される。そして、用紙搬送経路8に給紙される記録用紙Pの向きに応じて、インクジェットヘッド3が走査される方向が、記録用紙Pの記録面Paの短手方向または長手方向と一致する方向になり、すなわち記録面Paにおいてインクジェットヘッド3が走査され画像が記録される記録方向が切り換わることになる。
【0026】
次に、制御装置50を中心とするプリンタ1の電気的構成について、図5のブロック図を参照して説明する。図5に示されるプリンタ1の制御装置50は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の全体動作を制御するための各種プログラムやデータなどが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などで構成されている。
【0027】
また、図5に示すように、制御装置50は、ヘッド制御部51と、給紙制御部52と、搬送制御部53と、記録方向決定部54と、給紙ローラ選択部55(切換手段)とを有している。なお、ヘッド制御部51、給紙制御部52、搬送制御部53、記録方向決定部54及び給紙ローラ選択部55の機能は、制御装置50のROMに記憶された各種制御プログラムがCPUによって実行されることにより実現される。
【0028】
ヘッド制御部51は、PC70から入力された画像データ及び記録方向決定部54から入力された後述する記録方向に関する信号に基づいて、インクジェットヘッド3のアクチュエータユニット31を駆動するヘッドドライバ60、及び、キャリッジ2を駆動するキャリッジ駆動モータ61に制御信号を送り、インクジェットヘッド3の往復走査を制御する。
【0029】
給紙制御部52は、PC70から入力された画像の記録を開始する信号及び給紙ローラ選択部55から入力された後述する給紙ローラの選択信号に基づいて、給紙機構9の駆動モータ62、63に制御信号を送り、第1の給紙ローラ11及び第2の給紙ローラ12による用紙搬送経路8への記録用紙Pの供給を制御する。
【0030】
搬送制御部53は、PC70から入力された画像データ及び記録方向決定部54から入力された後述する記録方向に関する信号に基づいて、搬送機構5の駆動モータ64、65に制御信号を送り、メインローラ13及び拍車ローラ14による記録用紙Pの搬送を制御する。
【0031】
本実施形態のプリンタ1は、画像記録時には、まず、ヘッド制御部51がキャリッジ駆動モータ61を制御して、インクジェットヘッド3を走査方向一方に走査させつつ、インクジェットヘッド3のヘッドドライバ60を制御して、ノズル35から記録用紙Pの記録面Paへインクを噴射させる。次に、インクジェットヘッド3の走査方向が右方から左方に反転する際に、搬送制御部53が搬送機構5を制御して、記録用紙Pを搬送方向へ所定量搬送する。インクジェットヘッド3の走査方向が反転したら、今度は、インクジェットヘッド3を走査方向他方に走査させつつ、ノズル35から記録用紙Pの記録面Paへインクを噴射させる。そして、プリンタ1は、インクジェットヘッド3を走査方向に移動させながら記録用紙Pの記録面Paへインクを噴射させる動作と、記録用紙Pを搬送方向に所定量搬送する動作を、交互に繰り返すことにより、記録用紙Pの記録面Paに所望の画像を記録する双方向印字を行っている。なお、本実施形態は、双方向印字に限らず、走査方向の一方の方向への走査時に画像を記録する片方向印字にも適用可能である。
【0032】
ここで、第1の給紙トレイ16から記録用紙Pが給紙されると、この記録用紙Pは、記録面Paの長手方向が搬送方向と平行に縦向きに搬送される。そして、図6(a)に示すように、インクジェットヘッド3は、記録用紙Pの記録面Paの短手方向に沿って走査される。このとき、インクジェットヘッド3の1回の走査(1パス)にかかる時間は、記録用紙Pの幅を等速で走査するのにかかる時間T1と、記録用紙Pの外側の領域で加減速して等速で移動するインクジェットヘッド3の走査方向を反転させるのにかかる時間T2の合計の時間である。なお、等速時の速度は、画像の解像度とインクジェットヘッド3から噴射されるインクの噴射周期によって決まり、例えば、噴射周期が一定の場合には、解像度が高くなるにつれて遅くなり、1パスにかかる時間は長くなる。
【0033】
一方、第2の給紙トレイ17から記録用紙Pが給紙されると、この記録用紙Pは、記録面Paの短手方向が搬送方向と平行に横向きに記録用紙Pが搬送される。そして、図6(b)に示すように、インクジェットヘッド3は、記録用紙Pの記録面Paの長手方向に沿って走査される。このとき、インクジェットヘッド3の1パスにかかる時間は、記録用紙Pの幅を等速で走査するのにかかる時間T3と、記録用紙Pの外側の領域で加減速して等速で移動するインクジェットヘッド3の走査方向を反転させるのにかかる時間T4の合計の時間である。このとき、等速で走査するのにかかる時間は、記録用紙Pの幅に比例し、加減速してインクジェットヘッド3の走査方向を反転させるのにかかる時間は等速時の速度と加速度によって決まる。したがって、等速時の速度が同じであれば、インクジェットヘッド3が記録面Paの短手方向を等速で走査するのにかかる時間T1は、記録面Paの長手方向を等速で走査するのにかかる時間T3よりも短い。さらに、等速時の速度と加減速時の加速度が同じであれば、用紙幅によらず、時間T2と時間T4は同じ時間である。これらより、インクジェットヘッド3を記録面Paの短手方向に走査させるときの1パスにかかる時間は、インクジェットヘッド3を記録面Paの長手方向に走査させるときの1パスにかかる時間よりも短い。
【0034】
また、図6(a)に示すように、例えば、記録面Paの短手方向の全域にわたって記録する画像のない領域が長手方向の略中央に空白S1として形成されていると、インクジェットヘッド3を記録面Paの短手方向に走査させる場合には、インクジェットヘッド3からインクを噴射させるドットが1つもない領域が存在することになる。このような領域に対しては、パスを行わずにインクジェットヘッド3の走査を省略し、記録用紙Pを搬送方向に所定量搬送する。すなわち、走査方向全域にインクを噴射させるドットがある領域においてだけパスを行って、インクジェットヘッド3を走査させる。これにより、インクジェットヘッド3を走査させるパス数が減り、画像を記録するのにかかる時間が短くなる。
【0035】
一般的に、記録用紙Pのような矩形状の記録面Paに対して、全ての領域においてインクジェットヘッド3を走査させるような画像を記録するときには、記録面Paの短手方向を搬送方向と平行にして記録用紙Pを搬送し、インクジェットヘッド3を記録面Paの長手方向に走査させた方が、1パスにかかる時間は長くなっても、パス数が少ないため、時間のかかるインクジェットヘッド3の反転動作(走査方向の反転動作)が少なくなり、画像を記録するのにかかる時間は短い。しかしながら、画像に空白があると、インクジェットヘッド3を走査させるパス数が変動するため、記録用紙Pの記録面Paの長手方向と短手方向のいずれの方向にインクジェットヘッド3を走査させたときの記録時間が短いかは画像によって異なる。
【0036】
そこで、本実施形態においては、制御装置50は、ヘッド制御部51、給紙制御部52及び搬送制御部53に加えて記録方向決定部54及び給紙ローラ選択部55を有している。記録方向決定部54は、PC70から入力された画像データに基づいて、記録用紙Pの記録面Paの長手方向(第1方向)を記録方向としたときのインクジェットヘッド3を走査させるパス数と1パスにかかる時間から画像を記録するのにかかる第1記録時間を算出するとともに、記録面Paの短手方向(第2方向)を記録方向としたときのインクジェットヘッド3を走査させるパス数と1パスにかかる時間から画像を記録するのにかかる第2記録時間を算出する。そして、記録方向決定部54は、記録面Paの長手方向と短手方向のそれぞれについて算出した記録時間のうちどちらか記録時間が短い方向を記録方向と決定し、この記録方向に関する信号をヘッド制御部51、給紙制御部52及び給紙ローラ選択部55に出力する。このとき、ヘッド制御部51は、記録方向決定部54により決定された記録方向と入力された画像データを比較し、画像データを回転させるか否かを選択し、供給される記録用紙Pの長手方向(短手方向)に画像データの長手方向(短手方向)を一致させて、画像データをヘッドドライバ50に出力する。
【0037】
給紙ローラ選択部55は、記録方向決定部54により決定した記録方向に応じて、第1の給紙トレイ16及び第2の給紙トレイ17のうち用紙搬送経路8に搬送すべき記録用紙Pが収容された給紙トレイを選択し、その給紙トレイに対応する給紙ローラを駆動する旨の選択信号を給紙制御部52に入力する。すると、選択された給紙ローラの駆動により給紙された記録用紙Pは、その記録面Paの記録方向がインクジェットヘッド3の走査方向と平行にインクジェットヘッド3に対して搬送されることになり、記録方向と走査方向が一致することとなる。
【0038】
例えば、図7(a)に示すような画像が記録用紙Pに記録される場合には、記録用紙Pに短手方向の全域にわたって記録する画像のない空白S1が長手方向に長く形成されており、プリンタ1において、記録方向決定部54が、記録面Paの長手方向に比べて短手方向を記録方向としたときの方が記録時間が短くなり、短手方向を記録方向と決定したとする。すると、記録方向決定部54が決定した記録方向に応じて給紙ローラ選択部55から第1の給紙ローラ11を駆動する旨の選択信号が給紙制御部52に送られる。
【0039】
そして、給紙制御部52が駆動モータ62を駆動して、第1の給紙ローラ11を回転させて、第1の給紙トレイ16から用紙搬送経路8に記録用紙Pを給紙するとともに、搬送制御部53が駆動モータ64を駆動して、メインローラ13を回転させて、用紙搬送経路8に沿って搬送される記録用紙Pをインクジェットヘッド3の下方に搬送する。このとき、第1の給紙トレイ16から給紙された記録用紙Pは、記録面Paの長手方向が搬送方向と平行に搬送される。
【0040】
そして、ヘッド制御部51がヘッドドライバ60及びキャリッジ駆動モータ61に画像データの記録面Paの記録方向に応じた制御信号を送り、記録面Paの短手方向にインクジェットヘッド3を走査させる動作と、搬送制御部53が駆動モータ64に画像データの記録面Paの記録方向に応じた制御信号を送り、記録用紙Pを搬送方向に所定量搬送する動作を交互に繰り返すことにより、記録面Paに所望の画像が記録される。
【0041】
また、図7(b)に示すような画像が記録用紙Pに記録される場合には、記録用紙Pに長手方向の全域にわたって記録する画像のない空白S2が短手方向に長く形成されていることもあり、プリンタ1において、記録方向決定部54が、記録面Paの短手方向に比べて長手方向を記録方向としたときの方が記録時間が短くなり、長手方向を記録方向と決定したとする。すると、記録方向決定部54が決定した記録方向に応じて給紙ローラ選択部55から第2の給紙ローラ12を駆動する旨の選択信号が給紙制御部52に送られる。
【0042】
そして、給紙制御部52が駆動モータ62を駆動して、第2の給紙ローラ12を回転させて、第2の給紙トレイ17から用紙搬送経路8に記録用紙Pが給紙するとともに、搬送制御部53が駆動モータ64を駆動して、メインローラ13を回転させて、用紙搬送経路8に沿って搬送される記録用紙Pをインクジェットヘッド3の下方に搬送する。このとき、第2の給紙トレイ17から給紙された記録用紙Pは、記録面Paの短手方向が搬送方向と平行に搬送される。
【0043】
そして、ヘッド制御部51がヘッドドライバ60及びキャリッジ駆動モータ61に画像データの記録面Paの記録方向に応じた制御信号を送り、記録面Paの長手方向にインクジェットヘッド3を往復走査させる動作と、搬送制御部53が駆動モータ64に画像データの記録面Paの記録方向に応じた制御信号を送り、記録用紙Pを搬送方向に所定量搬送する動作を交互に繰り返すことにより、記録面Paに所望の画像が記録される。
【0044】
本発明のプリンタ1によると、入力される画像データに基づき、記録用紙Pの記録面Paの長手方向を記録方向としたときの第1記録時間と短手方向を記録方向としたときの第2記録時間のうち記録時間が短い方向を記録方向としている。そして、記録用紙Pの向きが異なる2つの給紙トレイ16、17から用紙搬送経路8に搬送すべき記録用紙Pが収容された給紙トレイを選択し、この選択された給紙トレイから用紙搬送経路8に記録用紙Pを給紙して、記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させて、記録用紙Pの記録面Paに画像を記録している。これにより、画像データに応じて記録時間が短くなる最適な記録方向にインクジェットヘッド3を走査させることができ、どのような画像データに対しても、高速で記録用紙Pの記録面Paに画像を記録することができる。また、この画像の記録にかかる記録時間は、1パスにかかる時間とインクジェットヘッド3を走査させるパス数から容易に算出することができる。
【0045】
また、2つの給紙トレイ16、17から記録面Paに対して記録時間が短い方の記録方向に応じた給紙トレイを選択し、その給紙トレイから記録用紙Pをインクジェットヘッド3に対して供給しているため、インクジェットヘッド3の走査方向を所定の一方向に固定することができる。また、記録用紙Pの向きを変更する複雑な機構を必要とせず、インクジェットヘッド3に対して供給される記録用紙Pの向きを変更することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図8を参照して説明する。第1実施形態では、第1の給紙トレイ16または第2の給紙トレイ17のいずれの給紙トレイから記録用紙Pを給紙するかによって、インクジェットヘッド3の下方の用紙搬送経路8に搬送される記録用紙Pの向きを変えていたが、第2実施形態では、記録用紙Pが収容された給紙トレイは1つであり、インクジェットヘッド3の下方に搬送されるまでの用紙搬送経路8において記録用紙Pの向きを変更する構成となっている。本実施形態では、インクジェットヘッド3の下方の用紙搬送経路8に搬送される記録用紙Pの向きを変える構成について詳細に説明し、その他の構成については第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
【0047】
図8は、第2実施形態に係るプリンタの説明図であり、(a)はプリンタの概略構成を示す側面図であり、(b)は用紙向き変更機構の斜視図である。図8(a)に示すように、本実施形態に係るプリンタ70は、第1実施形態の給紙機構9に換わって給紙機構71を備えているとともに、新たな構成として用紙向き変更機構73を備えている。
【0048】
給紙機構71は、搬送機構5の下方に配置されており、積層された複数の記録用紙Pを収容可能な給紙トレイ16と、給紙トレイ16から記録用紙Pを送り出す給紙ローラ11と、このローラ11を駆動する図示しない駆動モータと、記録用紙Pの案内方向を切り換える揺動機構72などを備えており、用紙搬送経路8に記録用紙Pを給紙する。
【0049】
給紙トレイ16には、短手方向を給紙ローラ11の軸芯と平行にした複数の記録用紙Pが収容されており、第1の給紙ローラ11が、給紙トレイ16内に収容された複数の記録用紙Pのうち、最も上方にある記録用紙Pと回転しながら接触することで、当該記録用紙Pを用紙搬送経路8に給紙する。このとき、揺動機構72が図示しない駆動モータの駆動により揺動して実線位置に位置するときには、給紙された記録用紙Pは、長手方向が搬送方向と平行に用紙搬送経路8に沿って搬送されることで、記録用紙Pの短手方向が記録方向となる。また、揺動機構72が揺動して破線位置に位置するときには、給紙された記録用紙Pは、長手方向が搬送方向と平行に用紙搬送経路8に沿って用紙向き変更機構73に搬送される。
【0050】
用紙向き変更機構73は、同軸線上に配置された2つのローラ74、75と、2つのローラ74、75をそれぞれ駆動する駆動モータ77、78と、ガイド部材79などを備えており、搬送された記録用紙Pの向きを90度変えて用紙搬送経路8に搬送する。
【0051】
2つのローラ74、75は、それぞれ異なる軸に回転支持されており、駆動モータ77、78の駆動により、異なる回転速度で回転する。2つのローラ74、75には、同じ軸に回転自在に支持された2つの従動ローラ76a、76bが用紙搬送経路8を挟んで当接している。
【0052】
本実施形態では、ローラ74の回転速度が、ローラ75の回転速度よりも速くなるように駆動モータ77、78を制御している。これにより、用紙向き変更機構73に搬送された記録用紙Pは、ガイド部材79に沿って2つのローラ74、75に向かい、ローラ74に比べてローラ75により大きく繰り出されるため、搬送されながら揺動し、90度向きを変えることとなる。そして、用紙向き変更機構73から搬送された記録用紙Pは、短手方向が搬送方向と平行に用紙搬送経路8に沿って搬送されることで、記録用紙Pの長手方向が記録方向となる。
【0053】
このように、給紙トレイ16から用紙向き変更機構73を介さずに、直接インクジェットヘッド3の下方まで搬送された記録用紙Pは、長手方向が搬送方向と平行に搬送され、インクジェットヘッド3の走査方向と記録用紙Pの短手方向が一致されて記録面Paに画像が記録される。また、給紙トレイ16から用紙向き変更機構73を介して、インクジェットヘッド3の下方まで搬送された記録用紙Pは、用紙向き変更機構73により90度向きを変更され、短手方向が搬送方向と平行に搬送され、インクジェットヘッド3の走査方向と記録用紙Pの長手方向が一致されて記録面Paに画像が記録される。なお、用紙向き変更機構73による記録用紙Pの向きを90度変更する構成については、例えば特開平5−330699号公報などに記載された従来公知の構成であるため、より詳細な説明については上記公報を参照されたい。
【0054】
この第2実施形態におけるプリンタ70においても、揺動機構72及び用紙向き変更機構73を用いることで、インクジェットヘッド3の走査方向を所定の一方向に固定した上で、記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させることができ、第1実施形態におけるプリンタ1と同様の効果を奏することができる。また、供給トレイが1つで済むため、プリンタ70を小型化することができる。なお、本実施形態における揺動機構72及び用紙向き変更機構73が、本発明における切換手段に相当する。
【0055】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。上述した実施形態においては、所定の一方向にのみ走査可能なインクジェットヘッド3に対して、記録用紙Pの向きを変えて、記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させた記録用紙Pを搬送していたが、記録用紙Pの向きを変更せずに、記録用紙Pに対してインクジェットヘッド3が2方向に移動可能な構成にすることで、記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させてもよい。例えば、図9に示すように、プリンタ81は、インクジェットヘッド83を所定のX方向とX方向に直交するY方向にそれぞれ移動させるヘッド移動機構82と、ヘッド移動機構82の下方に配置され、記録用紙Pの長手方向をY方向と平行にした記録用紙Pを搬送する図示しない搬送機構などを備えている。
【0056】
ヘッド移動機構82は、インクジェットヘッド83をX方向に駆動するX方向移動機構84と、インクジェットヘッド83をY方向に駆動するY方向移動機構85を有している。X方向移動機構84は、下面にインクジェットヘッド83が実装されたX方向可動体86と、このX方向可動体86をX方向にガイドするガイド部材87とを備えており、図示しないモータなどによってX方向可動体86をガイド部材87に沿って駆動することにより、インクジェットヘッド83をX方向可動体86と一体的にX方向に移動させる。また、Y方向移動機構85は、X方向移動機構84のガイド部材87に連結されたY方向可動体88と、このY方向可動体88をY方向にガイドするガイド部材87とを備えており、図示しないモータなどによってY方向可動体88をガイド部材87に沿って駆動することにより、インクジェットヘッド83をX方向移動機構84(X方向可動体86及びガイド部材87)とともにY方向に移動させる。さらに、インクジェットヘッド3をノズル35が形成されているノズルプレートの面方向と平行に回転させる図示しないヘッド回転機構を備えている。
【0057】
これにより、搬送機構によって長手方向を搬送方向(Y方向)と平行に搬送された記録用紙Pをヘッド移動機構82の下方で停止させた状態で、Y方向可動体88の移動を停止させて、X方向可動体86をX方向に移動させることで、記録用紙Pの記録面Paの短手方向にインクジェットヘッド83を走査させることが可能となり、また、X方向可動体86の移動を停止させて、Y方向可動体88をY方向に移動させることで、記録用紙Pの記録面Paの長手方向にインクジェットヘッド83を走査させることが可能となる。このように、ヘッド移動機構82を用いることで、記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド83の走査方向を一致させることができる。このとき、X方向可動体86をX方向に移動させて記録用紙Pの記録面Paの短手方向にインクジェットヘッド83を走査させる場合には、ヘッド回転機構が、ノズル35が配列されたノズル列の方向をX方向と直交するようにインクジェットヘッド3を回転させ、Y方向可動体88をY方向に移動させて記録用紙Pの記録面Paの長手方向にインクジェットヘッド83を走査させる場合には、ヘッド回転機構が、上記ノズル列の方向をY方向と直交するようにインクジェットヘッド3を回転させる。
【0058】
また、上述した第2実施形態においては、用紙搬送経路8において、揺動機構72及び用紙向き変更機構73を用いることで、給紙トレイ16から給紙された記録用紙Pの向きを変更させて、記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させていたが、給紙トレイ16が面方向と平行に回転可能に構成され、記録方向決定部54により決定された記録方向に応じて給紙トレイ16を回転させて、記録用紙Pを用紙搬送経路8に給紙する段階で記録用紙Pの記録面Paの記録方向とインクジェットヘッド3の走査方向を一致させてもよい。また、供給トレイ16を回転させることなく、収容されている記録用紙のみを供給トレイ内でその面方向と平行に回転させてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態においては、画像が記録される記録用紙Pの記録面Paは、矩形状であったが、矩形状以外の平面形状の記録面に対しても本発明を適用することができる。ただし、画像の記録にかかる記録時間を算出するときに、走査する領域によってパスにかかる時間が変動するため、それぞれの領域ごとに1パスにかかる時間を算出する必要がある。
【0060】
また、本実施形態においては、記録時間が記録方向によって異なる要因として、記録面Paのインクジェットヘッド3を走査させる方向の全域にわたって記録する画像のない領域が空白として形成されている、すなわちインクジェットヘッド3からインクを噴射させるドットが1つもない領域が存在する場合に、その領域においてパスを行わずにインクジェットヘッド3の走査を省略しすることを例にあげて説明したが、その他にも以下のような場合にも記録面Paの記録方向によって記録時間は変動する。記録用紙Pの一端に偏って画像が形成される場合には、インクジェットヘッド3を記録用紙Pの幅全域にわたって走査させずに、その走査方向においてインクを噴射させるドットが存在しなくなったときにインクジェットヘッド3の走査方向を反転させて1パスにかかる時間を短くする。このとき、1パスにかかる時間が変動し、画像の記録にかかる記録時間は変動する。
【0061】
また、上述したように、インクジェットヘッド3の等速時の速度は、画像の解像度とインクジェットヘッド3から噴射されるインクの噴射周期によって決まり、例えば、噴射周期が一定の場合には、解像度が高くなるにつれて遅くなり、1パスにかかる時間は長くなる。また、1つのパスでインクジェットヘッド3の走査速度を変えると、速度の変化した地点において、印字品質の連続性を保つことが困難であるため、1つのパスではインクジェットヘッド3の走査速度は一定である。そこで、例えば、図10に示すように、記録用紙Pの記録面Paには、短手方向全域について同じ解像度の画像領域91と、画像領域91と長手方向に並んでおり、短手方向全域について同じ解像度であり、画像領域91よりも低い解像度の画像領域92が記録されるものとする。このとき、インクジェットヘッド3をY方向に走査させると、等速時の速度は、高い解像度の画像領域91の速度に合わせることになり、1パスにかかる時間は長くなる。一方、インクジェットヘッド3をX方向に走査させると、短手方向全域について低い解像度の画像領域92のみを記録する領域では、等速時の速度を低い解像度の画像領域92の速度にすることができ、この領域において1パスにかかる時間を短くすることができる。したがって、上述したような長手方向に異なる解像度の画像領域が並んでいる場合には、インクジェットヘッド3を長手方向に走査させるのに比べて、短手方向に走査させた方が記録時間を短く、高速で画像を記録することができることがある。このように、高速で画像を記録することができる記録方向は、画像の局所的な解像度によっても異なる。
【0062】
また、本実施形態においては、記録面Paの短手方向を記録方向としたときの記録時間と長手方向を記録方向としたときの記録時間のうち、記録時間が短い方向を記録方向としていたが、記録時間を算出する2つの方向は記録面Paの面方向に関して直交している必要はなく、交差しているものであればよい。このとき、この記録面Paの交差している2つの方向と、インクジェットヘッド3の走査方向及び搬送機構5の搬送方向とを一致させておけば、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0063】
以上では、入力される画像データにドットが形成されない空白領域がある形態について説明したが、記録用紙Pの記録面Paに対して画像データにより記録される画像記録領域が小さいために、画像を記録した結果、画像記録領域以外の領域が余白としてドットが形成されない空白領域となる場合にも適用できる。
【0064】
以上説明した実施形態及びその変更形態は、走査方向に往復走査するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、走査方向に往復走査する記録ヘッドを備えたプリンタであれば、他の記録方式における画像記録装置にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 プリンタ
2 キャリッジ
3 インクジェットヘッド
11 第1の給紙ローラ
12 第2の給紙ローラ
50 制御装置
54 記録方向決定部
55 給紙ローラ選択部
62、63 駆動モータ
P 記録用紙
Pa 記録面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体の記録面に画像を記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを走査方向に往復走査する走査手段と、
前記被記録媒体の前記記録面に平行な第1方向、または、前記第1方向と交差し前記記録面に平行な第2方向のうちいずれかの方向に、前記記録ヘッドが走査され画像が記録される記録方向を決定する記録方向決定手段と、
前記記録ヘッドの前記走査方向、または、前記被記録媒体の向きを変更して、前記記録方向決定手段により決定した前記記録面の前記記録方向と前記記録ヘッドの前記走査方向を一致させる切換手段と、を備えており、
前記記録方向決定手段は、
前記被記録媒体の前記記録面に記録される画像に係る画像データに基づき、前記記録面の前記第1方向を前記記録方向としたときの第1記録時間と、前記記録面の前記第2方向を前記記録方向としたときの第2記録時間を算出し、前記第1記録時間と前記第2記録時間のうち記録時間が短い方向を前記記録方向と決定することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録方向決定手段は、
前記記録面の前記第1方向を前記記録方向としたときに前記記録ヘッドを走査させるパス数と1パスにかかる時間、及び、前記記録面の前記第2方向を前記記録方向としたときに前記記録ヘッドを走査させるパス数と1パスにかかる時間から、前記第1記録時間、及び、前記第2記録時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
収容された前記被記録媒体の向きが互いに異なる2つの供給トレイと、
前記供給トレイから前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体を供給する供給手段と、をさらに備えており、
前記切換手段は、
前記記録方向決定手段により決定した前記記録方向に応じて、前記2つの供給トレイから前記記録ヘッドに対して供給すべき前記被記録媒体が収容された供給トレイを選択し、
前記供給手段は、
前記切換手段により選択された前記供給トレイから前記被記録媒体を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記被記録媒体が収容された1つの供給トレイと、
前記供給トレイから前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体を供給する供給手段と、をさらに備えており、
前記切換手段は、
前記記録方向決定手段により決定した前記記録方向に応じて、前記記録ヘッドに対する前記被記録媒体の給紙の向きを変えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173374(P2011−173374A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40361(P2010−40361)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】