説明

画像記録装置

【課題】液滴吐出ヘッドが乾燥部から受ける熱の影響を抑制する。
【解決手段】インクを吐出する記録ヘッド78と、記録ヘッド78の吐出領域へ印刷用紙Pを横方向に搬送するテーブル移動機構14と、記録ヘッド78の上方に設けられ、インクが着滴した印刷用紙Pの記録面を乾燥する乾燥部24と、テーブル移動機構14から搬送された印刷用紙Pの後端を先端として、その記録面を上に向けて乾燥部24へ搬送するスイッチバック搬送機構20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備える画像記録装置は、液滴吐出ヘッドの吐出領域へ記録媒体を搬送しながら、入力された印刷情報に含まれる吐出パターンに応じて液滴吐出ヘッドの各ノズルから記録媒体に向かってインク液滴を各々吐出することによって、記録媒体上に画像を記録するものである。
【0003】
このような画像記録装置は、低騒音性にすぐれ、ランニングコストも安く、多種多様な記録媒体に記録可能で、様々な分野で広く利用されており、近年では、画像記録装置の高画質化や高速記録化が進んでいる。しかしながら、記録速度が高速化されると、記録媒体上の液滴の未乾燥が発生しやすくなり、ヒータ等の乾燥部を用いてインクを速やかに乾燥させる必要がある。
【0004】
特許文献1には、液滴吐出ヘッドの横方向に隣接して設けられ、記録媒体に向けて熱風を吹き付けて記録媒体上のインクを乾燥させる乾燥部を備えた画像記録装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、液滴吐出ヘッドの下方に設けられ、スイッチバック搬送手段で搬送中の記録媒体に空気を送風する吸引ファンを備えた画像記録装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、液滴吐出ヘッドの横方向に隣接して設けられ、記録媒体上のインクを乾燥させる乾燥部を備えた画像記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−279900号公報
【特許文献2】特開2010−83036号公報
【特許文献3】特開2001−301151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、乾燥部を液滴吐出ヘッドの横方向に隣接配置するので、画像記録装置を横方向に小型化することを考慮すると、乾燥部を設けるスペースを広く確保することは困難である。さらに、乾燥部の熱は当該乾燥部を回避するように横方向に伝わった後上方に伝わるので、乾燥部の横方向に位置する液滴吐出ヘッドに熱が伝わり易い。
【0009】
また、特許文献2では、吸引ファンが液滴吐出ヘッドの下方に設けられているので、横方向に画像記録装置が大型化することなく、乾燥部を設けるスペースを広く確保することができるが、乾燥部の熱は当該乾燥部から上方に伝わるので、乾燥部の上方に位置する液滴吐出ヘッドに熱が伝わり易い。
【0010】
また、特許文献3では、液滴吐出ヘッドの横方向に設けられた箱体に乾燥部が配置されており、画像記録装置を横方向に小型化することができない。さらに、乾燥部の熱は当該乾燥部を回避するように横方向に伝わった後上方に伝わるので、乾燥部の横方向に位置する液滴吐出ヘッドに熱が伝わり易い。
【0011】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、液滴吐出ヘッドが乾燥部から受ける熱の影響を抑制する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1態様に係る画像記録装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ記録媒体を横方向に搬送する第1搬送手段と、前記液滴吐出ヘッドの上方に設けられ、前記液滴が着滴した前記記録媒体の記録面を乾燥する乾燥部と、前記第1搬送手段から搬送された記録媒体の後端を先端として、前記記録面を上に向けて前記乾燥部へ搬送する第2搬送手段と、を備える。
【0013】
この構成によれば、乾燥部の熱は一般的に当該乾燥部から上方に伝わり易いので、当該乾燥部よりも下方にある液滴吐出ヘッドに熱が伝わり難い。
また、第2搬送手段が記録媒体の記録面を上に向けて搬送し、乾燥部がその記録面を乾燥するので、乾燥部と液滴吐出ヘッドとの間には第2搬送手段が位置することとなり、乾燥部から液滴吐出ヘッドに向かう熱は、第2搬送手段により搬送される記録媒体によって遮断され得る。
したがって、液滴吐出ヘッドが乾燥部から受ける熱の影響を抑制することができる。
また、第2搬送手段の上方は、液滴吐出ヘッドが無い分、横方向に画像記録装置の小型化を図りつつ、液滴吐出ヘッドがある第1搬送手段の上方よりもより多くの乾燥スペースを確保することができる。
【0014】
本発明の第2態様に係る画像記録装置では、第1態様において、前記乾燥部の記録媒体搬送方向下流側には、前記記録面を押圧する定着部が設けられており、前記定着部を通過した前記記録媒体は、前記第1搬送手段で前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送され、前記記録面の裏側に前記液滴が吐出される。
【0015】
この構成によれば、記録媒体は、定着部によりその記録面が押圧されて、当該記録面上の液滴の膜面強度を上げた後、第1搬送手段で搬送されるので、その搬送の際、記録面上の液滴が滲むことを抑制できる。
【0016】
本発明の第3態様に係る画像記録装置では、第1又は第2態様において、前記第1搬送手段と前記第2搬送手段との間には、搬送路切替部材が設けられており、前記搬送路切替部材を切り替えることで、前記記録媒体は、前記第2搬送手段又は記録媒体が排出される排出部へ搬送される。
【0017】
この構成によれば、例えば、記録媒体を、第1搬送手段で液滴吐出ヘッドの吐出領域へ横方向に搬送し、液滴吐出ヘッドでその記録面に液滴を吐出した後、搬送路切替部材により第2搬送手段へ搬送し、そして、乾燥部にてその記録面を乾燥した後、第1搬送手段で搬送し、送路切替部材により排出部へ搬送することができる。
【0018】
本発明の第4態様に係る画像記録装置では、第2態様において、前記定着部の記録媒体搬送方向下流側に前記記録媒体が排出される排出部を設け、前記排出部の下方に前記第1搬送手段へ前記記録媒体を給紙する給紙部を設けた。
【0019】
この構成によれば、例えば、給紙部から記録媒体を、第1搬送手段で液滴吐出ヘッドの吐出領域へ横方向に搬送し、液滴吐出ヘッドでその記録面に液滴を吐出した後、第2搬送手段で搬送し、そして、乾燥部にてその記録面を乾燥した後、排出部へ搬送することができる。このため、排出部が第1搬送手段の記録媒体搬送方向下流側に設けられている場合に比べ、乾燥部にてその記録面を乾燥した後、第1搬送手段で搬送しない分、排出部までの搬送距離を短くすることができる。
【0020】
本発明の第5態様に係る画像記録装置では、第1〜第4態様のいずれか1つの態様において、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部の間には、断熱材が設けられている。
【0021】
この構成によれば、乾燥部から液滴吐出ヘッドへ伝わる熱を遮断し、熱の影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
本発明の第6態様に係る画像記録装置では、第1〜第5態様のいずれか1つの態様において、前記乾燥部は、ヒータと、前記ヒータよりも記録媒体搬送方向下流側に設けられ、前記記録面に風を吹き付ける送風部と、を備える。
【0023】
この構成によれば、ヒータの熱により記録面上の液滴の水分を蒸発させ、送風部により記録面上の蒸発した水分を吹き飛ばすことによって、記録面を十分に乾燥することができる。
【0024】
本発明の第7態様に係る画像記録装置は、第1〜第6態様のいずれか1つの態様において、前記第2搬送手段によって前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、入力された印刷情報に基づいて変化させる速度制御手段、を備える。
【0025】
第1態様では、第1搬送手段と第2搬送手段がそれぞれ独立した搬送手段なので、第2搬送手段の搬送速度を第1搬送手段と異なる搬送速度にすることが可能となる。
したがって、第7態様の構成によれば、速度制御手段が、第1搬送手段の搬送速度を変えないまま、第2搬送手段によって乾燥部を通過する記録媒体の搬送速度を、入力された印刷情報に基づいて変化させることができる。このように、乾燥部を通過する記録媒体の搬送速度を印刷情報に基づいて変化させることで、例えば記録媒体の種類等によって記録媒体の乾燥時間を自在にコントロールすることができる。
【0026】
本発明の第8態様に係る画像記録装置は、第7態様において、前記速度制御手段は、前記印刷情報に含まれる吐出パターンと前記記録媒体の種類によって、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を変化させる。
【0027】
この構成によれば、印刷情報に含まれる2つの情報から、乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を変化させるので、1つの情報からその搬送速度を変化させる場合よりも、より適切に記録媒体の乾燥時間をコントロールすることができる。
【0028】
本発明の第9態様に係る画像記録装置は、第8態様において、前記速度制御手段は、前記吐出パターンがベタ画像であり、かつ、前記記録媒体の種類が厚手であるとき、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、前記第1搬送手段における前記記録媒体の搬送速度よりも遅くし、前記吐出パターンが線画像であり、かつ、前記記録媒体の種類が前記厚手よりも薄い薄手であるとき、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、前記第1搬送手段における前記記録媒体の搬送速度よりも速くする。
【0029】
この構成によれば、印刷情報に含まれる吐出パターンがベタ画像であり、かつ、記録媒体の種類が厚手であるとき、ベタ画像は記録媒体に着滴した液滴の量が多く、また厚手は熱伝導が悪いので、乾燥に時間が掛かる。したがって、このような場合は、乾燥部を通過する記録媒体の搬送速度を、第1搬送手段における記録媒体の搬送速度よりも遅くすることにより、乾燥時間を長くすることができる。
また、印刷情報に含まれる吐出パターンが線画像であり、かつ、記録媒体の種類が厚手よりも薄い薄手であるとき、線画像は記録媒体に着滴した液滴の量がベタ画像よりも少なく、また薄手は厚手よりも熱伝導が良いので、乾燥に時間を要しない。したがって、このような場合は、乾燥部を通過する記録媒体の搬送速度を、第1搬送手段における記録媒体の搬送速度よりも速くすることにより、乾燥時間を短くすることができる。
【0030】
本発明の第10態様に係る画像記録装置は、第7〜第9態様のいずれか1つの態様において、前記乾燥部の乾燥強度を、前記印刷情報に基づいて変化させる乾燥制御手段、を備える。
【0031】
この構成によれば、例えば、十分に乾燥させる必要があるときには、乾燥強度を高くし、十分に乾燥させる必要がない(すぐに乾燥する)ときには、乾燥強度を低くすることができる。この際、乾燥部は、液滴吐出ヘッドの上方に設けられているので、液滴吐出ヘッドのノズル面は、乾燥部と対向せず下向きとされる。したがって、乾燥部の熱はまず乾燥部と対向する液滴吐出ヘッドのハウジングに伝わるのでノズル面には伝わり難く、効率の良い断熱構造をとる。したがって、乾燥部が液滴吐出ヘッドの横方向や下方向に設けられている場合に比べ、適宜乾燥強度をより高めることが可能となる。
【0032】
本発明の第11態様に係る画像記録装置は、第10態様において、前記乾燥制御手段は、前記印刷情報に含まれる吐出パターンと前記記録媒体の種類によって、前記乾燥部の乾燥強度を変化させる。
【0033】
この構成によれば、印刷情報に含まれる2つの情報から、乾燥部の乾燥強度を変化させるので、1つの情報からその乾燥強度を変化させる場合よりも、より適切に記録媒体を乾燥することができる。
【0034】
本発明の第12態様に係る画像記録装置は、第7〜第11態様のいずれか1つの態様において、前記記録媒体の搬送速度を示す複数のモードから1つのモードをユーザに選択させるモード選択部を備え、前記速度制御手段は、前記モード選択部にて選択された前記モードに基づいて、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を変化させる。
【0035】
この構成によれば、ユーザの都合に合わせて、乾燥時間をコントロールすることができ、例えば早く記録媒体を取得したいときには、複数のモードから記録媒体の搬送速度が早い1つのモードを選択し、しっかりと記録媒体の記録面を乾燥させたいときは、複数のモードから記録媒体の搬送速度が遅い1つのモードを選択することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドが乾燥部から受ける熱の影響を抑制する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像記録装置の概略を示す側面図である。
【図2】図1に示す画像記録装置の画像記録部及び当該画像記録部の上方を取り除いて示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る画像記録装置の概略を示す側面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る画像記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図5】印刷情報入力部に印刷情報が入力されたときに行う全体制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像記録装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0039】
−画像記録装置の構成−
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像記録装置10の概略を示す側面図である。また、図2は、図1に示す画像記録装置10の画像記録部18及び当該画像記録部18の上方を取り除いて示す斜視図である。
【0040】
なお、図1及び図2では、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。また、図2においては、説明の都合上、カバー部材25を破線で示している。
【0041】
本発明の第1実施形態に係る画像記録装置10は、平面状の主面(表面)を有する複数(ここでは10個)のテーブル12を所定の間隔を設けつつ周回軌道に沿って移動させる第1搬送手段としてのテーブル移動機構14と、印刷用紙Pをテーブル12に供給する給紙部16と、移動するテーブル12の表面に保持された印刷用紙Pに画像を記録する画像記録部18と、テーブル移動機構14から搬送された画像記録済の印刷用紙Pの後端を先端にしてテーブル移動機構14に再供給する第2搬送手段としてのスイッチバック搬送機構20と、画像が記録された印刷用紙Pを排紙する排出部22と、テーブル移動機構14から搬送された画像記録済の印刷用紙Pをテーブル12から分離して、その行き先をスイッチバック搬送機構20又は排出部22に切替える分離切替機構23と、後述する本発明の第1実施形態に係る乾燥部24と、から主に構成される。また、各テーブル12の間には、それらのテーブル12で形成される間隙範囲の全体を覆うように、カバー部材25がそれぞれ連結されている。
【0042】
このような構成を備えた画像記録装置10では、まず給紙部16から送り出された印刷用紙Pがテーブル12上に供給される。印刷用紙Pが供給される段階のテーブル12は、テーブル移動機構14に含まれる無端状搬送機構26の駆動力によって移動している。そして、印刷用紙Pを搭載したテーブル12の走行経路(周回軌道の往路)中には、画像記録のための特定区間(「画像記録区間」又は「吐出領域」とも称する。)が設定されている。
【0043】
テーブル12の搬送は、この画像記録区間に進入する段階で、無端状搬送機構26とテーブル12との係合が解除されて、無端状搬送機構26による駆動からリニアモータ機構28による駆動へと切り替わる。この画像記録区間においては、リニアモータ機構28を用いてテーブル12を走行させつつ、画像記録部18によりテーブル12上の印刷用紙Pへの画像の記録が実行される。そしてテーブル12がさらに走行して画像記録区間を離脱する段階で、テーブル12の搬送がリニアモータ機構28による駆動から無端状搬送機構26による駆動へと切り替わり、その後にテーブル12上の印刷用紙Pが分離切替機構23により分離されて排出部22に排出される。
【0044】
すなわち、この装置においては、無端状搬送機構26とテーブル12との連結を解くことができるように構成し、リニアモータ機構28による画像記録区間での精密なテーブル12の搬送が、無端状搬送機構26による他のテーブル12の駆動とは実質的に独立して実行できるように構成されている。このようにして、本発明の第1実施形態に係る画像記録装置10では、高速な画像の記録を高精度に実行することが可能となっている。
【0045】
−テーブル移動機構14−
テーブル移動機構14は、無端状搬送機構26により複数(ここでは、10個)のテーブル12を周回軌道に沿って高速で移動させる。この周回軌道は、上側の往路と下側の復路との直線部分が、両端の略円弧部分でつながった軌道である。また、画像の記録時には、これらのテーブル12を無端状搬送機構26から切り離して、リニアモータ機構28により精度よく一方向に移動させる。なお、テーブル12は、無端状の形状を有するレール30により案内されて、所定の周回軌道に沿って移動可能となっている。
【0046】
無端状搬送機構26は、回転可能な一対のスプロケット32を備えている。一対のスプロケット32は、無端状搬送機構26におけるローラ部材を構成している。このスプロケット32には、チェーン34が巻回されている。
【0047】
このチェーン34は、無端状搬送機構26の索体を構成し、レール30の形状と対応する形状を有している。また、チェーン34は、二対のスプロケット36,38の作用により、途中でその配置の高さ位置が変更されている。すなわち、チェーン34は、テーブル12が画像記録部18と対向する位置において、その位置が相対的に低くなり、その両端側(+X側および−X側)部分においては、位置が相対的に高くなっている。
【0048】
また、一方(図1では+X側)のスプロケット32の側方には、スプロケット40が付設されており、このスプロケット40と、モータの駆動により回転する駆動スプロケット42と、従動スプロケット44とは、チェーン46により連結されている。つまり、チェーン34は、駆動スプロケット42の駆動によって、一対のスプロケット32に巻回された状態で回動する。
【0049】
−リニアモータ機構28−
リニアモータ機構28は、画像記録装置10の下部に配設されている。このリニアモータ機構28では、テーブル12の移動方向に配設された不図示のリニアモータの固定子を磁極変化させることによって、テーブル12と連結可能な不図示のリニアモータの可動子をテーブル12の移動方向およびその逆方向(X軸方向)へ所望の速度で移動させることができる。
【0050】
チェーン34とテーブル12とは、画像の記録前にチェーン34の位置が低くなり、その連結状態が一旦解除され、画像の記録後にチェーン34の位置が高くなり再び連結状態となる。一方、リニアモータ機構28の可動子とテーブル12とは、画像の記録前には開放状態から連結状態となり、画像の記録後には、連結状態から開放状態となる。
【0051】
なお、テーブル12の走行経路の下方には、吸着ファン48が付設されている。また、図示を省略するが、テーブル12は、中空状の構造を有しており、図2に示すように、テーブル12の表面には、テーブル12の中空部と連通する吸着孔60が形成されている。そして、この吸着孔60を介して吸着ファン48から排気を行うことにより、テーブル12の表面に供給された印刷用紙Pをテーブル12上に吸着保持することが可能となっている。
【0052】
−カバー部材25−
カバー部材25は、複数のテーブル12の各テーブル12間の位置に配置されており、各テーブル12間を連結して覆う。カバー部材25は、例えばステンレス材などの液密材料からなる複数の板状部材により構成される。
【0053】
本第1実施形態に係る画像記録装置10では、各テーブル12間の距離は、テーブル12が水平方向に移動する間では、ほぼ一定である。しかし、テーブル12が方向転換する間(垂直方向に移動する間)では、当該距離が一時的に長くなったり、短くなったりする。カバー部材25は、この変化するテーブル12間の距離に応じて、移動方向の長さ幅を2倍以上に変化(伸縮)させることができるように構成されている。
【0054】
−給紙部16−
給紙部16は、主にストッカー部70と供給部72とで構成される。ストッカー部70は、印刷用紙Pを備蓄する機能を有しており、所定の給紙機構によって備蓄した印刷用紙Pを1枚ずつ供給部72のコンベア74上に搬送する。
【0055】
供給部72は、ストッカー部70から供給された印刷用紙Pを、図1中−X方向へ順次送り搬送されるテーブル12上に1枚ずつ供給する。なお、詳細は省略するが、供給部72は、印刷用紙Pをコンベア74により搬送し、テーブル12の移動方向の前方端に設けられた図示しないテーブル爪まで印刷用紙Pが到達すると、所定のカム機構によりテーブル爪が閉じてテーブル12に対して固定される。
【0056】
なお、リニアモータ機構28の駆動によりテーブル12がさらに−X方向へ移動すると、テーブル12上の印刷用紙Pは、図示しないスクイジローラによりテーブル12に圧着されるとともに、テーブル12の下方に設けられた吸着ファン48の作用により吸着される。この状態で、印刷用紙Pは、画像記録部18の領域に搬送される。
【0057】
−画像記録部18−
画像記録部18は、前処理剤塗布ヘッド76と、4個の記録ヘッド78と、スキャナ80とを主に備える。画像記録部18は、テーブル移動機構14により一方向に走行移動するテーブル12の上面に吸着保持させた印刷用紙Pに対し、インクジェット方式で画像を記録する。
【0058】
前処理剤塗布ヘッド76は、記録ヘッド78により画像を記録する前に、あらかじめ印刷用紙Pに透明な所定の前処理剤を塗布する。
【0059】
記録ヘッド78は、ブラック(K)インクを吐出する記録ヘッド78Kと、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッド78Cと、マゼンダ(M)インクを吐出する記録ヘッド78Mと、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッド78Yと、で構成される。これらの記録ヘッド78は、横方向に移動するテーブル12の上方にそれぞれ配設される。なお、記録ヘッド78は、テーブル12の移動方向と直交する方向(図1中、Y軸方向)に列設された多数のインクジェットノズルを備え、これらのインクジェットノズルから印刷用紙P上にインクを吐出して、画像を記録する。
【0060】
スキャナ80は、ライン状のCCDカメラを備え、記録された画像全体(またはその一部)を撮像する。撮像して得た画像データは、図示しないコンピュータなどからなる制御部に送られ、パッチの濃度測定などが実行される。
【0061】
−分離切替機構23−
分離切替機構23は、画像記録部18よりも用紙搬送方向下流側に設けられ、所定の挟持機構により挟持されて搬送される印刷用紙Pをその外周部に巻回してテーブル12から分離する排紙胴82を備える。
【0062】
この排紙胴82は、円筒形の一部から構成され、軸84を中心に回転する。テーブル12の前方端が、排紙胴82の下方の位置まで移動すると、図示しないカム機構により、テーブル爪が開放状態となる。さらに、テーブル12の移動と同期して排紙胴82が回転し、図示しないリンク機構により、排紙胴82の挟持機構にて印刷用紙Pが挟持される。これにより、排紙胴82に印刷用紙Pが巻回され、テーブル12から印刷用紙Pが分離される。
【0063】
なお、吸着ファン48による排気量は、テーブル12が排出部22付近に配置されたときには小さくなるように設定されている。このため、印刷用紙Pの先端をテーブル12から剥離するときには、吸着孔60による印刷用紙Pの吸着保持力が、適切に弱められるよう構成されている。
【0064】
また、分離切替機構23は、画像記録済の印刷用紙Pを排紙胴82から受け取って搬送する第1コンベア86を備える。この第1コンベア86は、一対の軸に巻回された複数のベルトを備える。この第1コンベア86では、排紙胴82から搬送された印刷用紙Pがベルト上に載置されて搬送される。第1コンベア86におけるベルトの傾斜部分と対向する位置には、第1コンベア86により搬送される印刷用紙Pに向けて空気を吹き付ける図示しないファンが配置されており、印刷用紙Pを第1コンベア86のベルトにより確実に搬送することができる。
【0065】
さらに、分離切替機構23は、第1コンベア86のベルトにより搬送される印刷用紙Pの行き先を、スイッチバック搬送機構20、又は排出部22に切替える搬送路の切替部材88を備える。この切替部材88は、軸90を中心に揺動する案内板92を備え、案内板92が、上側の位置に配置された場合、第1コンベア86のベルトにより搬送される印刷用紙Pは、排出部22に搬送される。一方、案内板92が下側の位置に配置された場合、第1コンベア86のベルトにより搬送される印刷用紙Pは、スイッチバック搬送機構20に搬送される。
【0066】
−排出部22−
排出部22は、第1コンベア86のベルト上に載置されて搬送された印刷用紙Pを受け取って搬送する第2コンベア94を備える。
【0067】
この第2コンベア94は、一対の軸に巻回された複数のベルトを備える。この第2コンベア94においては、第2コンベア94のベルト上に載置されて搬送された印刷用紙Pが、ベルト上に載置されて搬送される。第2コンベア94におけるベルトと対向する上方の位置には、第2コンベア94により搬送される印刷用紙Pに向けて空気を吹き付ける図示しないファンが配設されており、印刷用紙Pを第2コンベア94のベルトによって、確実に搬送することができる。
【0068】
また、排出部22は、第2コンベア94から搬送される印刷用紙Pを載置する排紙テーブル96を備える。
【0069】
−スイッチバック搬送機構20−
第2搬送手段としてのスイッチバック搬送機構20は、切替部材88の案内板92が下側の位置に配置されて、第1コンベア86のベルトから搬送される印刷用紙Pを、分岐路100を介して記録ヘッド78よりも上方(図1中+Z軸方向)に搬送する搬送ローラ対102を備えている。
また、スイッチバック搬送機構20は、搬送ローラ対102により搬送された印刷用紙Pを、搬送ローラ対102と同一の方向に向かって回転することにより載置部104に送り出した後、先の方向とは逆方向に向かって回転することにより印刷用紙Pの後端を先端としてその搬送方向を逆方向に切替えて、その記録面を上に向けつつスイッチバック搬送路106へ搬送するスイッチバックローラ対108と、スイッチバック搬送路106上の印刷用紙Pを搬送して乾燥部24を介した後、第1搬送手段としてのテーブル移動機構14に再供給する複数の搬送ローラ対110と、を備えている。
【0070】
−乾燥部24−
乾燥部24は、液滴吐出ヘッドの上方に設けられ、スイッチバック搬送路106を搬送中の印刷用紙Pの記録面を乾燥するものである。
【0071】
具体的には、乾燥部24には、当該乾燥部24を暖めて印刷用紙Pの記録面に着滴しているインク中の水分を蒸発させる3つのヒータ112と、3つのうち少なくとも先頭(用紙搬送方向上流側)のヒータ112よりも用紙搬送方向下流側に設けられ、その記録面に風を吹き付けて蒸発した水分を吹き飛ばす2つのファン114と、が設けられている。
【0072】
この乾燥部24の用紙搬送方向下流側には、印刷用紙Pの記録面を押圧する定着ローラ対116が設けられており、この定着ローラ対116の押圧により、印刷用紙Pの記録面に着滴しているインクの膜面強度が上げられる。
【0073】
−作用−
以上のような構成を備えた画像記録装置10において、例えば、片面印刷を行う場合、印刷用紙Pは、給紙部16からテーブル移動機構14に給紙された後、当該テーブル移動機構14により記録ヘッド78の画像記録区間(吐出領域)へ横方向(−X軸方向)に搬送される。そして、印刷用紙Pは、画像記録区間(吐出領域)を通過する際に、記録ヘッド78によりその上面(記録面)にインクが吐出されて画像が記録される。インクが着滴した記録済の印刷用紙Pは、分離切替機構23によりテーブル移動機構14から分離されて第1コンベア86に搬送され、その行き先がスイッチバック搬送機構20の分岐路100へ切替えられる。
【0074】
次に、分岐路100へ搬送された印刷用紙Pは、搬送ローラ対102及びスイッチバックローラ対108により分岐路100を介して載置部104に搬送された後、スイッチバックローラ対108により後端を先端としてその搬送方向を逆方向に切替えられ、記録面が上に向きながらスイッチバック搬送路106へ搬送される。
【0075】
そして、スイッチバック搬送路106に搬送された印刷用紙Pは、複数の搬送ローラ対110により乾燥部24方向へ搬送され、当該乾燥部24にてその記録面が乾燥された後、その記録面が反転されてテーブル移動機構14に再供給される。テーブル移動機構14に再供給された印刷用紙Pは、記録ヘッド78によりその上面(反転面又は記録面)にインクが吐出されないまま搬送され、分離切替機構23によりテーブル移動機構14から分離されて第1コンベア86に搬送される。
【0076】
最後に、記録済及び乾燥済の印刷用紙Pは、分離切替機構23により、その行き先が排出部22へ切替えられ、第1コンベア86から第2コンベア94に搬送されて、第2コンベア94から排紙テーブル96へ排紙される。
【0077】
なお、両面印刷の場合では、印刷用紙Pは、上記片面印刷の工程の中で、テーブル移動機構14に反転されて再供給された際に、その反転面に記録ヘッド78によりインクが吐出されて画像が記録される。そして、記録済の印刷用紙Pは、上記片面印刷の工程と同様、スイッチバック搬送機構20により搬送され、乾燥部24にて乾燥された後、テーブル移動機構14に再々供給される。テーブル移動機構14に再々供給された印刷用紙Pは、記録ヘッド78によりその上面にインクが吐出されないまま搬送され、分離切替機構23によりテーブル移動機構14から分離されて第1コンベア86及び第2コンベア94を介して排紙テーブル96へ排紙される。
【0078】
以上、本発明の第1実施形態に係る画像記録装置10によれば、インクが着滴した印刷用紙Pの記録面を乾燥する乾燥部24が記録ヘッド78の上方(図1中+Z軸方向)に設けられているため、一般的に当該乾燥部24から上方に伝わり易い乾燥部24の熱は、当該乾燥部24よりも下方(図1中−Z軸方向)にある記録ヘッド78に伝わり難い。
また、乾燥部24のヒータ112やファン114と記録ヘッド78との間に、スイッチバック搬送機構20のスイッチバック搬送路106が位置しているため、乾燥部24から記録ヘッド78に向かう熱は、スイッチバック搬送路106中の記録媒体によって遮断され得る。
したがって、記録ヘッド78が乾燥部24から受ける熱の影響を抑制することができる。
また、スイッチバック搬送機構20の上方は、画像記録部18が無い分、横方向に画像記録装置10の小型化を図りつつ、画像記録部18があるテーブル移動機構14の上方よりもより多くの乾燥スペースを確保することができる。
【0079】
また、乾燥部24にて記録面が乾燥された後の印刷用紙Pは、その記録面が定着ローラ対116により押圧されるので、インクの膜面強度が上げられた後、テーブル移動機構14で搬送される。したがって、その搬送の際、記録面上のインクが滲むことを抑制できる。
【0080】
また、乾燥部24では、ヒータ112とファン114を組み合わせて、まずヒータ112の熱により印刷用紙Pの記録面上のインクの水分を蒸発させ、次にファン114の風により記録面上の蒸発した水分を吹き飛ばすので、記録面を十分に乾燥することができる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る画像記録装置について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る画像記録装置150の概略を示す側面図である。
【0082】
−構成−
本発明の第2実施形態に係る画像記録装置150では、第1実施形態に比べて、排出部の場所が異なる。
【0083】
具体的には、第2実施形態に係る排出部152は、定着ローラ対116の用紙搬送方向下流側(+X軸方向)で、且つ、給紙部16の上方に設けられている。
また、スイッチバック搬送路106には、切替部材154が設けられ、この切替部材154によりスイッチバック搬送路106を通過中の印刷用紙Pの行き先が、排出部152又はテーブル移動機構14に切替えられる。
さらに、これらスイッチバック搬送路106と排出部152の間の排紙路156には、切替部材154により排紙路156を介して排出部152側に向かう印刷用紙Pを、排紙する排紙ローラ対158が設けられている。
【0084】
−作用−
以上、本発明の第2実施形態に係る画像記録装置150において、例えば、片面印刷をする場合、印刷用紙Pは、給紙部16からテーブル移動機構14で記録ヘッド78の画像記録区間(吐出領域)へ横方向(−X軸方向)に搬送され、記録ヘッド78でその記録面にインクが吐出される。そして、記録済の印刷用紙Pは、スイッチバック搬送機構20で搬送され、乾燥部24にてその記録面が乾燥された後、切替部材154により行き先が排出部152に切替えられ、当該排出部152へ排紙される。このため、排出部152がテーブル移動機構14の用紙搬送方向下流側(−X軸方向)に設けられている場合に比べ、乾燥部24にてその記録面を乾燥した後、テーブル移動機構14で搬送しない分、排出部152までの搬送距離を短くすることができる。
なお、両面印刷の場合も同様に、テーブル移動機構14の搬送を一回分省略することができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置について説明する。
図4は、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0086】
−構成−
本発明の第3実施形態に係る画像記録装置200は、上述した第1実施形態に係る画像記録装置10と同一の構成を備えている。
【0087】
そして、この画像記録装置200は、全体制御部202と、印刷情報入力部204と、上述したテーブル移動機構14と、給紙部16と、画像記録部18と、スイッチバック搬送機構20と、排出部22と、分離切替機構23と、乾燥部24と、を備えている。なお、これら各部構成はデータバス等のバスBUSにより、データ等の授受が可能に接続されている。
【0088】
全体制御部202は、画像記録装置10全体を制御するものであり、CPU206、ROM208、RAM210、及びHDD212を含んで構成されている。CPU206では、詳細を後述するスイッチバック搬送機構20の搬送速度の制御処理等が実行される。ROM208は、各種プログラムやパラメータ等が記憶されており、RAM210は、CPU20による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。
【0089】
印刷情報入力部204は、画像を形成する(印字する)印刷情報が入力されるためのものである。
なお、上記「印刷情報」とは、印刷コマンドや印刷データ等を含むものであって、この印刷情報の中には、画像データだけでなく、印刷する印刷用紙Pの厚みの種類(薄手や厚手等)、及び用紙サイズの設定情報等が含まれている。また、このような情報は、印刷データのヘッダ情報に含まれている場合や、画像データ内に含まれる場合もある。
【0090】
ここで、上記第1実施形態の構成では、第1搬送手段としてのテーブル移動機構14(特に、画像記録区間を搬送するリニアモータ機構28)と、第2搬送手段としてのスイッチバック搬送機構20がそれぞれ独立した搬送機構なので、スイッチバック搬送機構20の搬送速度をテーブル移動機構14と異なる搬送速度にすることが可能となる。
したがって、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置200では、印刷情報入力部204に印刷情報が入力されたときに全体制御部202が以下の処理を行う。
【0091】
図5は、印刷情報入力部204に印刷情報が入力されたときに行う全体制御部202の処理の流れを示すフローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
【0092】
(S1000)入力された印刷情報を参照する。
(S1002)印刷情報の中に含まれる画像パターンと、用紙種類を取得する。
なお、取得する画像パターンは、実際には印刷情報の中に含まれる画像データに基づいて判断した、「全面ベタ」、「サイドベタ」、「一般画像」又は「線画像」という情報である。
なお、上記「線画像」とは、文字や図形等の線のみによって構成される画像であり、一般的にインク使用量が少量の画像である。また、上記「サイドベタ」とは、記録面のうち約半分の面積が線画像よりもインクが多量に使用されている画像である。さらに、上記「全面ベタ」とは、記録面のうち約全体が線画像よりもインクが多量に使用されている画像である。さらにまた、上記「一般画像」とは、「全面ベタ」、「サイドベタ」及び「線画像」を除く画像であって、文字や写真などを組み合わせ等から構成される画像である。
(S1004)以下の表1のような対照テーブルを参照する。この対象テーブルは、ROM208に格納されている。
なお、表1中の搬送スピードの「遅い」や「速い」とは、例えばテーブル移動機構14(特にリニアモータ機構28)の搬送速度を基準(通常)としたものである。また、乾燥温度の「低い」や「高い」とは、例えば「通常」を50℃付近としたときに、当該「通常」と比較した場合の温度であり、例えば「高い」は80℃付近であり、「低い」は、30℃〜40℃付近である。
【0093】
【表1】

【0094】
(S1006)対照テーブルから、先に取得した画像パターンと用紙種類に対応する搬送スピードの設定情報と、乾燥温度の設定情報を取得する。
【0095】
(S1008)テーブル移動機構14や画像記録部18等の各種制御をして、印刷用紙Pに対する印刷を開始する。
【0096】
(S1010)画像記録済の印刷用紙Pをスイッチバック搬送機構20に搬送した際、スイッチバック搬送機構20の搬送速度(複数の搬送ローラ対110の回転速度であり、特に、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度)を、先に取得した搬送スピードの設定情報に基づく搬送速度に設定して(変化させて)、その設定した搬送速度でスイッチバック搬送機構20による印刷用紙Pの搬送を開始する。
なお、この際、このスイッチバック搬送機構20とテーブル移動機構14とは独立した機構なので、テーブル移動機構14の搬送速度を変えなくて済む。
【0097】
(S1012)乾燥部24におけるヒータ112の加熱温度を、先に取得した乾燥温度の設定情報に基づく温度に設定し(変化させて)、その設定した加熱温度でヒータ112による加熱を開始する。
その他、ファン114や定着ローラ対116、テーブル移動機構14等を制御した後、記録済且つ乾燥済の印刷用紙Pを、排出部96へ排出する。
【0098】
−作用−
以上、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置200によれば、全体制御部202が、テーブル移動機構14の搬送速度を変えないまま、スイッチバック搬送機構20によって乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を、入力された印刷情報(印刷用紙Pの種類等)に基づいて変化させることができる。このように、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を印刷情報に基づいて変化させることで、印刷用紙Pの乾燥時間を自在にコントロールすることができる。
【0099】
また、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置200では、全体制御部202が印刷情報に含まれる画像パターンと印刷用紙Pの種類の2つの情報によって、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度や乾燥部24のヒータ112の加熱温度を変化させるので、1つの情報からその搬送速度や加熱温度を変化させる場合よりも、より適切に乾燥することができる。
【0100】
また、全体制御部202は、上記処理により、例えば表1に示すように、画像パターンがベタ画像であり、かつ、印刷用紙Pの種類が厚手であるとき、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を、テーブル移動機構14における印刷用紙Pの搬送速度よりも遅くし、画像パターンが線画像であり、かつ、印刷用紙Pの種類が厚手よりも薄い薄手であるとき、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を、テーブル移動機構14における印刷用紙Pの搬送速度よりも速くすることになる。
【0101】
ここで、印刷情報に含まれる画像パターンがベタ画像であり、かつ、印刷用紙Pの種類が厚手であるとき、ベタ画像は印刷用紙Pに着滴したインクの量が多く、また厚手は熱伝導が悪いので、乾燥に時間が掛かる。したがって、このような場合は、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を、テーブル移動機構14における印刷用紙Pの搬送速度よりも遅くすることにより、乾燥時間を長くすることができる。
また、印刷情報に含まれる画像パターンが線画像であり、かつ、印刷用紙Pの種類が厚手よりも薄い薄手であるとき、線画像は印刷用紙Pに着滴した液滴の量がベタ画像よりも少なく、また薄手は厚手よりも熱伝導が良いので、乾燥に時間を要しない。したがって、このような場合は、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を、テーブル移動機構14における印刷用紙Pの搬送速度よりも速くすることにより、乾燥時間を短くすることができる。
【0102】
また、印刷情報の画像パターンや印刷用紙Pの種類に基づいて乾燥温度を変化させることができるので、例えば、表1に示すように、十分に乾燥させる必要があるときには、乾燥温度を高くし、十分に乾燥させる必要がない(すぐに乾燥する)ときには、乾燥温度を低くすることができる。この際、乾燥部24は、記録ヘッド78の上方に設けられているので、記録ヘッド78のノズル面は、乾燥部24と対向せず下向き(−Z軸方向)とされる。したがって、乾燥部24の熱はまず乾燥部24と対向する記録ヘッド78のハウジングに伝わるのでノズル面には伝わり難く、効率の良い断熱構造をとる。したがって、乾燥部24が記録ヘッド78の横方向や下方向に設けられている場合に比べ、適宜乾燥強度をより高めることが可能となる。
【0103】
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例同士を、適宜、組み合わせてもよい。
【0104】
例えば、第1実施形態では、記録ヘッド78と乾燥部24の間には、断熱材が設けられていてもよい。この構成によれば、乾燥部24から記録ヘッド78へ伝わる熱を遮断し、熱の影響を最小限に抑えることができるからである。
【0105】
また、第2実施形態では、スイッチバック搬送路106には、切替部材154が設けられ、この切替部材154によりスイッチバック搬送路106を通過中の印刷用紙Pの行き先が、排出部152又はテーブル移動機構14に切替えられる場合を説明したが、切替部材154が設けられておらず、スイッチバック搬送路106を通過中の印刷用紙Pの行き先は必ず排出部152にするようにしてもよい。すなわち、第2実施形態の画像記録装置150は、片面印刷のみできる画像記録装置であってもよい。
【0106】
また、第3実施形態では、さらに印刷用紙Pの搬送速度を示す複数のモードから1つのモードをユーザに選択させるモード選択部を備え、全体制御部202は、モード選択部にて選択されたモードに基づいて、乾燥部24を通過する印刷用紙Pの搬送速度を変化するようにしてもよい。なお、上記「モード」には、搬送速度が「遅い」モード、「通常」モード及び「速い」モード等が含まれる。また、「モード選択部」には、タッチパネル等が含まれる。
この構成によれば、例えば、ユーザの都合に合わせて、乾燥時間をコントロールすることができ、例えば早く印刷用紙Pを取得したいときには、複数のモードから印刷用紙Pの搬送速度が早い1つのモードを選択し、しっかりと印刷用紙Pの記録面を乾燥させたいときは、複数のモードから印刷用紙Pの搬送速度が遅い1つのモードを選択することができる。
【0107】
また、第3実施形態では、印刷情報に含まれる画像パターンと印刷用紙Pの厚みの種類という2つの情報で、印刷用紙Pの搬送速度や乾燥温度を変化させる場合を説明したが、これらの情報のうち1つの情報で、印刷用紙Pの搬送速度や乾燥温度を変化させるようにしてもよい。さらに、印刷情報に含まれるその他の情報(用紙サイズ等)に基づいて、印刷用紙Pの搬送速度や乾燥温度を変化させるようにしてもよい。
【0108】
また、乾燥部24の加熱手段は、ヒータ112である場合を説明したが、赤外線装置も含む等加熱方法、伝熱方法はこの限りではなく、伝熱方法は、伝導伝熱、対流伝熱、放射伝熱いずれでもよく、また、発熱方式はマイクロウェーブ加熱、電磁誘導加熱、放射加熱、抵抗加熱等いずれでもよい。
また、画像パターン等によってヒータ112の設定温度を変えて乾燥温度(乾燥強度)を変化させる場合を説明したが、画像パターン等によって赤外線装置をオンさせる数を増やして乾燥強度を変化させてもよい。
【0109】
また、乾燥部24は、ヒータ112とファン114の組み合わせで構成される場合を説明したが、ファン114は省略することもできる。
【0110】
第2搬送手段としてのスイッチバック搬送機構20は、複数の搬送ローラ対110により印刷用紙Pを搬送する場合を説明したが、ベルト搬送であってもよい。同様に、第1搬送手段としてのテーブル移動機構14も、ローラ搬送やベルト搬送の機構に置き換えることができる。
【0111】
また、上記実施の形態では、リニアモータ機構28によって、テーブル12を搬送した状態で、印刷用紙Pに画像記録を行うとしているが、リニアモータ機構28の代わりに、ボールネジを利用した直動機構を設けることによって、テーブル12の搬送を行う構成としてもよい。
【0112】
なお、本願において、「画像記録装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラス
チック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意
味し、また、「画像記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与する
ことだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒
体に着弾させること)をも意味する。また、「液滴」とは、インクと称されるものに限
るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0113】
また、「記録媒体」は、印刷用紙Pに限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものも含まれる。
【符号の説明】
【0114】
10 画像記録装置
14 テーブル移動機構(第1搬送手段)
16 給紙部
20 スイッチバック搬送機構(第2搬送手段)
22 排出部
24 乾燥部
78 記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
88 切替部材
96 排出部
114 ファン(送風部)
116 定着ローラ対(定着部)
150 画像記録装置
152 排出部
154 切替部材
200 画像記録装置
202 全体制御部(第1搬送手段、第2搬送手段等の一部)
P 印刷用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ記録媒体を横方向に搬送する第1搬送手段と、
前記液滴吐出ヘッドの上方に設けられ、前記液滴が着滴した前記記録媒体の記録面を乾燥する乾燥部と、
前記第1搬送手段から搬送された記録媒体の後端を先端として、前記記録面を上に向けて前記乾燥部へ搬送する第2搬送手段と、
を備える画像記録装置。
【請求項2】
前記乾燥部の記録媒体搬送方向下流側には、前記記録面を押圧する定着部が設けられており、
前記定着部を通過した前記記録媒体は、前記第1搬送手段で前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送され、前記記録面の裏側に前記液滴が吐出される、
請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記第1搬送手段と前記第2搬送手段との間には、搬送路切替部材が設けられており、前記搬送路切替部材を切り替えることで、前記記録媒体は、前記第2搬送手段又は記録媒体が排出される排出部へ搬送される、
請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記定着部の記録媒体搬送方向下流側に前記記録媒体が排出される排出部を設け、前記排出部の下方に前記第1搬送手段へ前記記録媒体を給紙する給紙部を設けた、
請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部の間には、断熱材が設けられている、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記乾燥部は、
ヒータと、
前記ヒータよりも記録媒体搬送方向下流側に設けられ、前記記録面に風を吹き付ける送風部と、
を備える請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記第2搬送手段によって前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、入力された印刷情報に基づいて変化させる速度制御手段、
を備える請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記速度制御手段は、前記印刷情報に含まれる吐出パターンと前記記録媒体の種類によって、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を変化させる、
請求項7に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記速度制御手段は、
前記吐出パターンがベタ画像であり、かつ、前記記録媒体の種類が厚手であると判断したとき、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、前記第1搬送手段における前記記録媒体の搬送速度よりも遅くし、
前記吐出パターンが線画像であり、かつ、前記記録媒体の種類が前記厚手よりも薄い薄手であると判断したとき、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を、前記第1搬送手段における前記記録媒体の搬送速度よりも速くする、
請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記乾燥部の乾燥強度を、前記印刷情報に基づいて変化させる乾燥制御手段、
を備える請求項7〜請求項9の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記乾燥制御手段は、前記印刷情報に含まれる吐出パターンと前記記録媒体の種類によって、前記乾燥部の乾燥強度を変化させる、
請求項10に記載の画像記録装置。
【請求項12】
前記記録媒体の搬送速度を示す複数のモードから1つのモードをユーザに選択させるモード選択部を備え、
前記速度制御手段は、前記モード選択部にて選択された前記モードに基づいて、前記乾燥部を通過する前記記録媒体の搬送速度を変化させる、
請求項7〜請求項11の何れか1項に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45763(P2012−45763A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188358(P2010−188358)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】