説明

画像記録装置

【課題】トレイの脱抜に伴ってフラップが搬送路を開放する構成において、トレイの装着時に、フラップを確実に元の位置に導くことができる画像記録装置を提供する。
【解決手段】トレイ20が複合機10に装着されているとき、ガイドフラップ91は、第1位置においてトレイ20に支持されており、搬送路65の下面の一部を形成している。支持を失ったガイドフラップ91は、搬送路65を開放する第2位置まで回動可能である。ガイドフラップ91の自重による第2位置側への回動は、規制部が付与する第1の抵抗力によって第3位置において停止させられる。第1の抵抗力は、ガイドフラップ91の自重に基づく第1の力よりも大きな第2の力が与えられた際には、第2位置側への回動を可能とする。ガイドフラップ91は、第3位置にあるときに、複合機10に装着されるトレイ20と当接し、トレイ20に押圧されて第1位置側へ回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に設けられた搬送路を搬送されるシートに画像を記録可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を記録可能な画像記録装置の多くは、内部にシートの搬送路を備えている。画像記録装置は、シートをローラ対に挟持させることによって、シートを搬送路に沿って搬送させる。また、画像記録装置は、搬送路においてシートに画像を記録する記録部を備えている。特許文献1には、内部に設けられた搬送路を搬送される記録媒体に対して、インクを吐出して記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置が開示されている。
【0003】
また、画像記録装置は、記録部を通過したシートが案内される搬送路に、シートを搬送して、装置に設けられた開口を介して装置外部に排出する排出ローラと、画像記録後のシートが反って上方に浮くことを防止するための機構とを備えている。上記機構は、例えばローラや拍車などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録部を通過したシートが案内される搬送路は、シートを搬送するための必要最小限の空間で構成されており、狭い。また、当該搬送路には、上述したように排出ローラと、拍車などの機構とが設けられている。よって、当該搬送路においてシートが詰まった場合、ユーザが、上記開口を介して詰まったシートにアクセスすることは困難である。また、このような状態において、シートを無理に引っ張った場合、シートが破れるおそれがある。
【0006】
また、当該搬送路は狭いため、外部から光が届きにくく、ユーザが、開口を介して当該搬送路に詰まったシートを視認することは困難である。特に、上述のように当該搬送路の内部でシートが破れた場合、破れたシートの欠片を見つけることは困難である。そして、破れたシートの欠片が当該搬送路に残存した状態において、別のシートが当該搬送路を搬送されると、更なるシート詰まりを生じるおそれがある。
【0007】
内部に詰まったシートを容易に取り出すために、搬送路を区画する壁面の一部が開閉可能に構成された画像記録装置が知られている。その一例として、例えば、シートが積載されたトレイが画像記録装置から脱抜された際に、搬送路を区画する下面の一部が開放されるものがある。
【0008】
上述された構成の一例では、搬送路を区画する下面の一部がフラップ状の部材(以下、単にフラップとする。)によって形成されている。フラップは、一端側が回動自在に軸支されて搬送路の下側に取り付けられている。トレイが画像記録装置に装着された状態では、フラップはトレイによって下方から支持されている。そのとき、フラップは、搬送路を区画する下面の一部を形成している。トレイが画像記録装置に装着されていない状態では、下方からの支持を失ったフラップは、先端側が下方に垂下された状態になっている。つまり、搬送路を区画する下面の一部が開放される。
【0009】
搬送路からシートを取り除く際、ユーザは、トレイを画像記録装置から脱抜する。続けて、ユーザは、トレイが装着されていた開口から画像記録装置の内部に手を入れて、フラップの先端側を手前側に向けて回動させる。こうして、外部から開口を通じて搬送路にアクセスするための通路が形成される。ユーザは、搬送路からシートを取り除いた後、再びトレイを画像記録装置に装着する。その際、フラップはトレイに押されて、機器の奥側に回動する。トレイがフラップを押し上げて、フラップは、再び下方から支持された状態に復帰する。
【0010】
上述された構成では、トレイによる支持を失ったフラップは、振動等によって振り子のように揺動することがある。フラップがユーザから見て手前側に位置する瞬間にトレイが挿入されると、フラップが本来支持されるべき面とは反対側の面(搬送路の下面となる側の面)を支持されて、トレイに乗り上がってしまう。その状態で、再度シートを搬送しても搬送路が区画されていないので、正常な搬送を行うことができないおそれがある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トレイの脱抜に伴ってフラップが搬送路を開放する構成において、トレイの装着時に、フラップを確実に元の位置に導くことができる画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、シートを案内する搬送路と、上記搬送路に設けられ、シートを搬送する搬送部と、シートを載置可能であり、当該装置に対して装着及び脱抜可能なトレイと、一端側が軸支されており、当該軸を中心として、上記搬送路を区画する下面の一部を形成する第1位置から、上記搬送路を開放し、且つ、上記一端側とは反対の他端側が上記トレイよりも上方に位置する第2位置までの範囲を回動自在なフラップ部材と、上記フラップ部材の自重に基づく第1の力によって上記第1位置から上記第2位置側へ回動する上記フラップ部材を上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置において当該回動を停止させ、且つ、上記第3位置において停止している上記フラップ部材に対しては、当該第1の力よりも大きな第2の力によって上記第2位置側へ回動可能とする第1の抵抗力を上記フラップ部材に付与する規制部と、を備えている。上記トレイは、当該装置に装着された状態において、上記フラップ部材を下方から支持して、上記第1位置に維持するフラップ支持部を有している。上記フラップ部材は、上記第3位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する。
【0013】
ここで、「自重に基づく第1の力」とは、重力がフラップ部材を第3位置側へ回動させようとする力であり、「当該回動を停止させ」るとは、第1の力による加速も含めて、フラップ部材の回動を停止させることである。
【0014】
トレイが画像記録装置に装着されているとき、フラップ部材は、第1位置において、搬送路を区画する下面の一部を形成している。トレイが脱抜されると、フラップ支持部による支持を失ったフラップ部材は、自重に基づく第1の力によって第2位置側へ回動する。この回動は、規制部が発生させる第1の抵抗力によって、第3位置で停止させられる。フラップ部材は、ユーザの手による第2の力によって、第3位置からさらに第2位置まで回動する。こうして、搬送路に通じる通路が確保される。ユーザは、この通路を通じて、搬送路に詰まったシートを取り除くことができる。
【0015】
フラップ部材の第2位置側への回動が第3位置で停止させられるため、装置に装着されるトレイは、第3位置において確実にフラップ部材と当接する。トレイに押されたフラップ部材は、第1位置まで復帰することができる。ユーザの手によって回動させない限り、フラップ部材が第3位置よりも第2位置側に位置することはないため、フラップ部材が本来支持されるべき面とは反対側の面を支持されて、トレイに乗り上がってしまうことが回避される。
【0016】
(2) 上記搬送部は、上記搬送路において、上下に対向配置されたローラ対を有していてもよい。上記フラップ部材は、上記ローラ対を構成するローラのうち、下側の下側ローラの軸に支持されていてもよい。上記規制部は、上記ローラ対を構成するローラのうち、上側の上側ローラを支持する支持部材の一部と、上記フラップ部材の一部との当接に基づき、上記第1の抵抗力を発生させる。
【0017】
このような構成によると、規制部を実現するために新たな部材を設ける必要がなく、フラップ部材周辺の構造を簡単にすることができる。
【0018】
(3) 上記規制部は、上記フラップ部材の自重に基づく第3の力によって上記第2位置から上記第3位置側へ回動する上記フラップ部材を上記第3位置と上記第2位置との間の第4位置において当該回動を停止させ、且つ、上記第4位置において停止している上記フラップ部材に対しては、当該第3の力よりも大きな第4の力によって上記第1位置側へ回動可能とする第2の抵抗力を上記フラップ部材に付与してもよい。上記フラップ部材は、上記第4位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する。
【0019】
ここで、「自重に基づく第3の力」とは、重力がフラップ部材を第1位置側へ回動させようとする力であり、「当該回動を停止させ」るとは、第3の力による加速も含めて、フラップ部材の回動を停止させることである。
【0020】
搬送路からシートを取り除く作業中にユーザが通路から手を抜いた場合、フラップ部材の自重に基づく第3の力によって、フラップ部材は第1位置側へ回動する。フラップ部材の第1位置側への回動は、規制部が発生させる第2の抵抗力によって、第4位置で停止させられる。第4位置は、第3位置と第2位置との間に位置しているため、ユーザが搬送路から記録用紙を取り除く作業を再開する際に、フラップ部材を再び第1位置側へ回動させることが容易である。また、作業の後に装置に装着されるトレイは、第4位置において確実にフラップ部材と当接する。第4の力によってトレイに押されたフラップ部材は、第1位置まで復帰することができる。
【0021】
(4) 上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有しており、上記規制部は、上記軸受部の外周面から突出された係止片と、上記支持部材に形成された第1当接面と、を有していてもよい。上記係止片は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接する。
【0022】
(5) 上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有しており、上記規制部は、上記軸受部の外周面から突出された係止片と、上記支持部材に形成された第1当接面及び第2当接面と、を有していてもよい。上記係止片は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接し、且つ、上記フラップ部材が上記第4位置にあるときに、上記第2当接面と当接する。
【0023】
(6) 上記係止片は、第1係止面と、上記第1係止面と鋭角を為して交差しており、上記周面から突出する向きに沿って形成された第2係止面と、を有していてもよい。上記第1当接面と上記第2当接面とは、それぞれ上記フラップ部材側を向けられて互いに交差している。上記第1係止面は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接する。上記第2係止面は、上記フラップ部材が上記第4位置にあるときに、上記第2当接面と当接する。
【0024】
(7) 上記軸は、上記フラップ部材が上記支持部材と離間する向きへと弾性変形可能なものである。
【0025】
(8) 本発明に係る画像記録装置は、シートを案内する搬送路と、上記搬送路に設けられ、上下に対向配置されたローラ対によってシートを搬送する搬送部と、シートを載置可能であり、当該装置に対して装着及び脱抜可能なトレイと、上記ローラ対を構成するローラのうち、上側の上側ローラを支持する支持部材と、上記ローラ対を構成するローラのうち、下側の下側ローラの軸に一端側が軸支されており、当該軸を中心として、上記搬送路を区画する下面の一部を形成する第1位置から、上記第1搬送路を開放し、且つ、上記一端側とは反対の他端側が上記トレイよりも上方に位置する第2位置までの範囲を回動自在なフラップ部材と、を備えている。上記トレイは、当該装置に装着された状態において、上記フラップ部材を下方から支持して、上記第1位置に維持するフラップ支持部を有している。上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有している。上記軸受部は、上記軸の中心からその外周までの距離が第1距離である第1外周部と、当該第1外周部の周面から突出されており、上記軸の中心から先端までの距離が上記第1距離よりも長い第2距離である第2外周部と、を有している。上記軸の中心と上記支持部材とは、上記第1距離よりも長く、上記第2距離よりも短い第3距離だけ離れている。上記支持部材と上記フラップ部材とは、少なくともどちらか一方が他方に対して上記第2距離と上記第3距離との差である第4距離以上の距離分だけ弾性的に離間可能である。上記支持部材と上記フラップ部材とが離間されていない状態において、上記第2外周部は、上記フラップ部材が上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置にあるときに上記支持部材と当接し、上記フラップ部材の自重による上記第2位置側への回動を停止させる。上記フラップ部材は、上記第3位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する。
【0026】
軸の中心と第2外周部の先端との距離が第2距離であり、軸の中心と支持部材との距離が第2距離よりも短い第3距離であるため、フラップ部材の自重による第2位置側への回動は、第2外周部と支持部材との当接によって第3位置で制止される。また、支持部材とフラップ部材とは、少なくともどちらか一方が他方に対して第2距離と第3距離との差である第4距離よりも長い距離分だけ弾性的に離間可能であるため、支持部材とフラップ部材が離間した状態では、軸の中心と支持部材との距離が第2距離よりも長くなり、第2外周部と支持部材との当接が解除されて、フラップ部材は第3位置からさらに第2位置側へ回動することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、トレイの装着時に、フラップ部材を確実に元の位置に導くことができる。特に、フラップ部材が本来支持されるべき面とは反対側の面を支持されて、トレイに乗り上がってしまうことが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、トレイ20の側面図である。
【図4】図4は、第1位置にあるガイドフラップ91周辺の斜視図である。なお、トレイ20、支軸58、第3搬送ローラ45、上側第2ガイド部材90、及びガイドフラップ91以外の構成要素は省略されている。トレイ20は、一部のみが示されている。
【図5】図5は、図4の要部拡大図である。
【図6】図6は、図4に対応する側面図である
【図7】図7は、ガイドフラップ91の位置が変化する様子を示す図である。(A)は、トレイ20が装着されて、ガイドフラップ91が第1位置にある状態を示している。(B)は、トレイ20が脱抜される瞬間であって、ガイドフラップ91が第2位置にある状態を示している。
【図8】図8は、ガイドフラップ91の位置が変化する様子を示す図である。(A)は、ガイドフラップ91が第2位置にある状態を示している。(B)は、トレイ20が装着される瞬間であって、ガイドフラップ91が第4位置にある状態を示している。
【図9】図9は、ガイドフラップ91が第2位置にあり、通路111が形成された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0030】
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。プリント機能としては、記録用紙の両面に画像を記録する両面画像記録機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。プリンタ部11は、正面に開口13が形成されたケーシング(筐体)14を有し、各種サイズの記録用紙(本発明のシートの一例)を載置可能なトレイ20(図2,3参照,本発明のトレイの一例)が、開口13から前後方向8に挿抜可能である。つまり、トレイ20は、複合機10に装着及び脱抜可能である。トレイ20のより詳細な構成については後述される。
【0031】
[プリンタ部11の構成]
図2に示されるように、プリンタ部11は、トレイ20から記録用紙をピックアップして給送する給紙部15と、トレイ20の上方に設けられており、給紙部15によって給紙された記録用紙にインク滴を吐出して記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24と、ガイド板41などを備えている。なお、記録部24はインクジェット方式に限られず、電子写真方式などの種々の記録方式のものが適用可能である。
【0032】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26、及び駆動伝達機構27とを備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端部で軸支されている。給紙アーム26は、基端部に設けられた支軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25はトレイ20に当接及び離間が可能である。つまり、給紙ローラ25は、トレイ20に載置された記録用紙に当接可能である。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、トレイ20上に積載された記録用紙のうち、一番上側の記録用紙に当接された状態で、当該記録用紙を他の記録用紙から分離して以下で説明する湾曲路65Aに供給する。
【0033】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65(本発明の搬送路の一例)が形成されている。搬送路65は、トレイ20の先端から記録部24に至る間に形成された湾曲路65Aと、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された排紙路65Bとに区分される。
【0034】
湾曲路65Aは、トレイ20に設けられた分離傾斜板22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。トレイ20から給送される記録用紙は、湾曲路65Aを搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って第1搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き)に湾曲されて、記録部24の直下へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19によって区画されている。なお、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19、更に後述する各ガイド部材82、83、31、32は、いずれも、図2の紙面垂直方向(図1の左右方向9)へ延出されている。
【0035】
排紙路65Bは、記録部24の直下から排紙保持部79に渡って延設された直線状の通路である。記録用紙は、排紙路65Bを第1搬送向きに案内される。排紙路65Bは、記録部24が設けられている箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42によって形成されており、記録部24が設けられていない箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する上側第1ガイド部材82及び上側第2ガイド部材90(本発明の支持部材の一例)と、下側ガイド部材83及び後述されるガイドフラップ91(本発明のフラップ部材の一例)とによって区画されている。上側第2ガイド部材90のより詳細な構成については後述される。
【0036】
記録部24よりも第1搬送向きの下流側であって、ガイドフラップ91の上方に分岐位置36が存在する。両面画像記録の際には、排紙路65Bを搬送される記録用紙は、分岐位置36の下流側でスイッチバックされ、後述する反転搬送路67へ向けて搬送される。
【0037】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、トレイ20の上方に配置されている。記録部24は、左右方向9(図2において紙面と垂直な方向)に往復動する。記録部24の下方であって搬送路65を挟んで記録部24と対向する位置には、記録用紙を水平に保持、つまり支持するためのプラテン42が設けられている。記録部24は、左右方向9への往復移動過程において、図示しないインクカートリッジから供給されたインクをノズル39からプラテン42上を搬送される記録用紙に吐出する。これにより、搬送路65において記録用紙に画像が記録される。
【0038】
[搬送ローラ45、60、62]
図2に示されるように、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19の第1搬送向きの下流端と記録部24との間には、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の下方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61は、湾曲路65Aを搬送してきた記録用紙を狭持してプラテン42上へ送る。
【0039】
プラテン42と上側第1ガイド部材82及び下側ガイド部材83との間、つまりプラテン42よりも第1搬送向きの下流側には、第2搬送ローラ62及び拍車63よりなる第1ローラ対59が設けられている。拍車63は、第2搬送ローラ62の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2搬送ローラ62及び拍車63は、記録部24で画像を記録された記録用紙を狭持して第1搬送向きの下流側へ搬送する。
【0040】
各搬送ローラ60、62は、搬送用モータ(不図示)から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転される。前記の駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータが正回転及び逆回転方向のいずれに回転されても、各搬送ローラ60、62を一回転方向へ回転させる。これにより、記録用紙は第1搬送向きへ搬送される。
【0041】
分岐位置36よりも第1搬送向きの下流側に、第3搬送ローラ45(本発明の下側ローラの一例)と拍車46(本発明の上側ローラの一例)よりなる第2ローラ対44(本発明のローラ対の一例)が設けられている。拍車46は、軸を介して上側第2ガイド部材90に取り付けられている。拍車46は、第3搬送ローラ45の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第3搬送ローラ45のローラ面に圧接されている。
【0042】
第3搬送ローラ45は、支軸58(本発明の軸の一例)に軸支されている。左右方向9、つまり支軸58の軸方向に沿って、合計6つの第3搬送ローラ45(図2,図4)が設けられている。図4では省略されているが、第3搬送ローラ45の上方の対応する位置にはそれぞれ拍車46(図2)が設けられている。つまり、左右方向9に沿って、合計6つの第2ローラ対44(図2)が設けられている。
【0043】
支軸58は、バネなどの弾性部材によって上側第2ガイド部材90側に付勢されている。支軸58は、当該付勢力を上回る下方への力を受けた際、弾性的に下方へ移動して、上側第2ガイド部材90から離間する。これによって、第3搬送ローラ45と拍車46との当接が解除される。
【0044】
搬送用モータから支軸58へ正逆回転方向の駆動力が伝達されて、第3搬送ローラ45は正転又は逆転される。例えば、片面記録が行われる場合は、第3搬送ローラ45は正転される。これにより、記録用紙は第3搬送ローラ45及び拍車46に挟持されて第1搬送向きの下流側へ搬送され、排紙保持部79に排紙される。一方、両面記録が行われる場合は、第3搬送ローラ45及び拍車46が記録用紙の後端部を挟持した状態で、第3搬送ローラ45の回転方向が正転から逆転へ切り換えられる。これにより、記録用紙は、第1搬送向きと逆向き、つまり後述する第2搬送向きに搬送され、以下で説明するガイド板41によって後述する反転搬送路67へ向けて搬送される。
【0045】
また、詳細は後述されるが、支軸58には、搬送路65の一部を区画するガイドフラップ91が取り付けられている。ここで、上述された第1搬送ローラ60、ピンチローラ61、第2搬送ローラ62、拍車63、第3搬送ローラ45、拍車46、及び後述される第4搬送ローラ68、従動ローラ69が、それぞれ本発明の搬送部の一部を構成するものである。
【0046】
[ガイド板41]
図2に示されるように、ガイド板41は、第2搬送ローラ62よりも第1搬送向きの下流側、かつ分岐位置36よりも第1搬送向きの上流側に配置されている。つまり、上述した第2ローラ対44は、ガイド板41より第1搬送向きの下流側に設けられている。ガイド板41は、補助ローラ47、48、フラップ49及び支軸87で構成されている。
【0047】
プリンタ部11のフレームなどに、図2の紙面垂直方向(図1の左右方向9)へ延びる支軸87が設けられている。支軸87は、排紙路65Bよりも上方に設けられている。フラップ49は、支軸87から概ね第1搬送向きの下流側へ延出されており、支軸87に回動可能に軸支されている。つまり、ガイド板41は、排紙路65Bの上方に設けられている。フラップ49には、補助ローラ47及び補助ローラ48が軸支されている。補助ローラ47,48のローラ面は、記録用紙の記録面に当接されるので、拍車63及び拍車46と同様に拍車状に形成されている。
【0048】
フラップ49は、姿勢変化可能に構成されており、下側ガイド部材83よりも上方に位置する排出姿勢(図2に一点鎖線で示される姿勢)と、延出端部49Aが分岐位置36よりも下方へ進入する反転姿勢(図2に実線で示される姿勢)との間で回動する。
【0049】
ガイド板41は、通常状態において、自重によって反転姿勢を保持している。この状態において、記録部24の下側を通過した記録用紙の先端がガイド板41に到達すると、ガイド板41は記録用紙の上面に押され、反転姿勢から排出姿勢に姿勢変化される。この状態において、継続して搬送された記録用紙は、第2ローラ対44に挟持される。ガイド板41が排出姿勢に維持された状態で第3搬送ローラ45が正転しているため、記録用紙は排紙トレイ21側へ搬送される。その後、記録用紙の後端部が補助ローラ48よりも上流側である規定位置に到達したときに、記録用紙がガイド板41を押し上げる力よりも、ガイド板41が自重によって反転姿勢側へ回動する力が強くなる。これにより、ガイド板41が排出姿勢から反転姿勢へ姿勢変化される。これにより、記録用紙の後端部は、補助ローラ48によって下側へ押圧され、反転搬送路67側へ向けられる。
【0050】
片面記録が行われる場合、第3搬送ローラ45は正転を維持するため、第2ローラ対44は記録用紙を排紙保持部79へ排出する。一方、両面記録が行われる場合、記録用紙の後端部が反転搬送路67側へ向けられた状態において、第3搬送ローラ45は正転から逆転へ切り換えられる。これにより、第2ローラ対44は記録用紙を反転搬送路67へスイッチバック搬送する。
【0051】
[反転搬送路67]
図2に示されるように、反転搬送路67(本発明の搬送路の一例)は、分岐位置36で排紙路65Bから分岐され、記録部24の下側且つ給紙アーム26の上側を通って、プラテン42よりも第1搬送向きの上流側の合流位置37で湾曲路65Aと合流する。記録用紙は、反転搬送路67を第2搬送向きに搬送される。ここで、第2搬送向きとは、反転搬送路67を分岐位置36から合流向き37に向かう向きで、図2における矢印付きの二点鎖線で示される向きを指す。
【0052】
反転搬送路67は、所定間隔を隔てて互いに対向する第1ガイド部材31及び第2ガイド部材32によって区画されている。
【0053】
[第4搬送ローラ68]
図2に示されるように、反転搬送路67には、第4搬送ローラ68及び従動ローラ69が設けられている。従動ローラ69は、記録部24よりも下方であって第4搬送ローラ68よりも上方に配置されている。
【0054】
第4搬送ローラ68は、反転搬送路67において、従動ローラ69の下方且つ対向する位置に配置されている。第4搬送ローラ68は、搬送用モータから正逆回転方向の駆動力が伝達されて、正転又は逆転される。本実施形態においては、搬送ローラ対70は、搬送用モータが逆転の向きに回転された場合に、第4搬送ローラ68と従動ローラ69との間に記録用紙を挟持することによって、反転搬送路67に搬送されてきた記録用紙を第2搬送向きに搬送する。
【0055】
[トレイ20]
上述されたように、図3に示されるトレイ20は、プリンタ部11の開口13から前後方向8に挿抜可能に構成されている。図3においては一方のみが示されているが、トレイ20の左右方向9(紙面と垂直な方向)の両端に、側壁92がそれぞれ形成されている。トレイ20は、2つの側壁92の間に記録用紙が積載される載置部93を有している。また、トレイ20の前後方向8の前端部には、ユーザが開口13からトレイ20を脱抜するための把手94が設けられている。
【0056】
各側壁92には、上方に向かって凸状に形成されたフラップ支持部95(本発明のフラップ支持部の一例)が設けられている。フラップ支持部95によって、各側壁92の上端が数cm程度隆起されている。各側壁92のフラップ支持部95は、左右方向9から見て重なる位置に形成されている。詳細には、フラップ支持部95は、それぞれ、前後方向8の前端付近に形成されている。詳細は後述されるが、フラップ支持部95は、トレイ20が複合機10に装着された状態において、後述されるガイドフラップ91を下方から支持するものである。
【0057】
[ガイドフラップ91]
図4,5,6に示されるガイドフラップ91は、第1面96(図5,6)及び第2面97(図5,6)を表裏面とする概ね平板形状を呈している。ガイドフラップ91は、軸受部98(本発明の軸受部の一例)を介して支軸58に取り付けられている。つまり、ガイドフラップ91は、6つの第3搬送ローラ45と同軸に取り付けられている。軸受部98は、ガイドフラップ91の短手方向の一端である基端部112に形成されている。また、軸受部98は、左右方向9の両端に形成されており、6つの第3搬送ローラ45よりも左右方向9の両外側において支軸58に取り付けられている。
【0058】
図4,5,6からは確認できないが、ガイドフラップ91の第2面97は、板状に形成された連続した平面である。一方、第1面96は、第2面97とは反対側に立設された網目状の補強壁113によって形成されている。つまり、補強壁113の先端に沿って、第1面96が形成されている。
【0059】
ガイドフラップ91の基端部112と第1面96との境界部分から、第1面96と直交する向きに突起99が突出されている。突起99は、左右方向9の概ね両外側において、2つが設けられている。詳細は後述されるが、突起99は、第2位置(本発明の第2位置の一例、図8(A))において上側第2ガイド部材90と当接することで、ガイドフラップ91の第1向き109(図7(A))への回動を制止するものである。
【0060】
基端部112から左右方向9に沿って計14個の上側片114と、1個の下側片115とが延出されている。上側片114及び下側片115は、概ね円弧状に形成された切片であり、それぞれが支軸58を部分的に囲繞している。図4,5,6,7(A)に示される第1位置(本発明の第1位置の一例)において、上側片114は、支軸58の概ね上半部を囲繞しており、下側片115は、支軸58の概ね下半部を囲繞している。上側片114及び下側片115は、軸受部98と共にガイドフラップ91を支軸58に対して支持するものである。また、上側片114及び下側片115は、ガイドフラップ91の回動時に軸受部98の周面を摺動することで、当該回動をスムースにする役割を果たす。
【0061】
左右方向9におけるガイドフラップ91の両外側は、基端部112から回動先端までの距離が、部分的に他の部分よりも長く形成されている。つまり、回動先端が、他の部分よりも外周側に位置している。ガイドフラップ91が第1位置にあるとき、この回動先端付近にフラップ支持部95が位置している。フラップ支持部95は、第1面96側からガイドフラップ91を支持している。
【0062】
図4に示されるように、2つの軸受部98は、左右方向9の両端において、基端部112から延出するように設けられている。図5,6に示されるように、軸受部98の外周面100(本発明の外周面の一例)は、第2面97から連続して形成されており、支軸58の周面に沿って湾曲されている。外周面100には左右方向9に向かって段差が形成されている。その段差によって、左右方向9の外側が内側よりも外周側に位置している。
【0063】
軸受部98の内周面116は、外周面100と同様に、支軸58の周面に沿って湾曲されている。内周面116に沿って、ガイドフラップ91にC字状の溝101が形成されている。溝101は、第1面96側に開口されており、左右方向9に沿って外周面100の幅と同じ長さだけ延出している。
【0064】
溝101の内側に支軸58が保持されることで、ガイドフラップ91が支軸58に取り付けられている。ガイドフラップ91は、第1位置においてフラップ支持部95に支持されて、溝101が下方を向けられている。
【0065】
図5,6に示されるように、溝101と外周面100及び第1面96との境界である縁102の周辺からそれぞれ爪103(図5)が突出されている。爪103は、溝101の中央に向かって先端が互いに対向するように突出されている。爪103は、左右方向9から見て、概ね二等辺三角形の形状を呈しており、左右方向9に一定の厚みを有している。一対の爪103の先端間の距離は、支軸58の外径よりも僅かに短い。そのため、支軸58は、爪103によって軸受部98の内側に保持されている。
【0066】
ガイドフラップ91は、例えば、以下のような方法で支軸58に取り付けられる。まず、支軸58が溝101にあてがわれて、一対の爪103の間に押し込まれる。一対の爪103の先端同士の距離は、支軸58の外径よりも短いため、軸受部98は、爪103同士が互いに離間する向きに弾性変形する。支軸58が爪103の間を通過すると、軸受部98の形状は弾性的に復帰する。こうして、支軸58が溝101に保持された状態となる。溝101の内径が支軸58の外径よりも僅かに大きいため、ガイドフラップ91は、支軸58を中心として、軸受部98と反対の先端側が回動自在となっている。
【0067】
左右方向9の右側の軸受部98の外周面100から係止片104(本発明の係止片の一例)が突出されている。係止片104は、外周面100の中でも左右方向9の最も外側から突出されている。左右方向9における係止片104の幅は、外周面100の幅の約半分程度である。
【0068】
係止片104は、第1係止面105(本発明の第1係止面の一例)及び第2係止面106(本発明の第2係止面の一例)を有している。第2係止面106は、概ね第1面96と同じ側を向けられており、第1面96に平行な面として形成されている。第1係止面105は、係止片104の先端において、第2係止面106と約30度程度の鋭角を為して交差する面である。つまり、第1係止面105と第2係止面106とは、概ね相反する側を向けられている。第1係止面105及び第2係止面106は、左右方向9においては傾斜されていない。つまり、2つの面は、それぞれ支軸58の軸線と平行な平面である。ここで、軸受部98の外周面100に対応する部分が、本発明の第1外周部の一例であり、係止片104の先端(第1係止面105と第2係止面106との交差位置)に対応する部分が本発明の第2外周部の一例である。
【0069】
[上側第2ガイド部材90]
図4,5,6に示される上側第2ガイド部材90は、左右方向9を長手方向とする概ね平板形状を呈している。上述されたように、上側第2ガイド部材90は、支軸58の上方に設けられており、搬送路65の一部を区画している。各第3搬送ローラ45の上方にはそれぞれ図示されない拍車46が上側第2ガイド部材90によって軸支されている。拍車46は、第3搬送ローラ45に圧接されている。
【0070】
上側第2ガイド部材90における軸受部98の上方には、概ね下方を向けられた第1当接面107(図5,6、本発明の第1当接面の一例)及び第2当接面108(図5,6、本発明の第2当接面の一例)が形成されている。第1当接面107は、前後方向8の後方ほど下方に位置する様に傾斜されており、第2当接面108は、前後方向8の前方ほど下方に位置する様に傾斜されている。第1当接面107と第2当接面108とは、最も下方の位置において、130度程度の鈍角を為して交差している。第1当接面107及び第2当接面108は、左右方向9においては傾斜されていない。つまり、2つの面は、それぞれ支軸58の軸線と平行である。ここで、第1当接面107、第2当接面108、及び上述された軸受部98の係止片104が、それぞれ本発明の規制部の一部として機能するものである。
【0071】
[ガイドフラップ91及び上側第2ガイド部材90の位置関係]
図6には、距離L1,L2,L3がそれぞれ示されている。距離L1(本発明の第1距離の一例)は、支軸58の中心から軸受部98の外周面100までの最大の距離である。距離L2(本発明の第2距離の一例)は、支軸58の中心から係止片104の先端、つまり、第1係止面105と第1係止面106との交差部分までの距離である。距離L3(本発明の第3距離の一例)は、支軸58の中心から上側第2ガイド部材90までの最短距離、つまり、第1当接面107と第2当接面108との交差位置までの距離である。ここで、L2>L3>L1の関係が成立している。
【0072】
L3>L1であるため、外周面100は上側第2ガイド部材90とは当接せず、両者の間には一定の隙間が介在されている。また、L2>L3であるため、回動角範囲中のガイドフラップ91の所定の位置において、係止片104は、上側第2ガイド部材90と当接する関係にある。詳細は後述されるが、ガイドフラップ91が第3位置(図7(B)の位置、本発明の第3位置の一例)にあるときに、係止片104の第1係止面105が、上側第2ガイド部材90の第1当接面107と当接する。また、ガイドフラップ91が第4位置(図8(B)の位置、本発明の第4位置の一例)にあるときに、係止片104の第2係止面106が、上側第2ガイド部材90の第2当接面108と当接する。
【0073】
[ガイドフラップ91の動作]
図4,5,6に示されるように、トレイ20が複合機10に装着された状態では、フラップ支持部95は、ガイドフラップ91の直下に位置する。ガイドフラップ91は、第1面96がフラップ支持部95によって下方から支持されて第1位置(図7(A)に示される位置)に維持されている。つまり、トレイ20は、記録用紙を搬送路65に供給可能な状態にあり、ガイドフラップ91は、第2面97が搬送路65の下面の一部を区画している。この状態が、プリンタ部11が画像記録可能な状態である。
【0074】
まずは、ユーザが記録用紙を補充する際の手順について説明する。トレイ20が複合機10から脱抜されると、フラップ支持部95による支持を失ったガイドフラップ91は、自重によって図7(A)に示される第1向き109へ回動する。その際、係止片104の第1係止面105が、上側第2ガイド部材90の第1当接面107と当接することで、ガイドフラップ91の回動は図7(B)に示される第3位置で制止される。第3位置は、ガイドフラップ91の回動先端が、上下方向7の下方よりもやや前後方向8の後方を向く位置である。つまりガイドフラップ91の回動先端は、開口13のやや奥側を向けられる。ここで、ガイドフラップ91が自重によって第1向き109へ回動しようとする力が、本発明の第1の力に相当する。また、第1係止面105と第1当接面107との当接によってガイドフラップ91の回動を制止する力が本発明の第1の抵抗力に相当する。
【0075】
ユーザは、トレイ20を部分的に又は完全に脱抜して記録用紙を補充した後、再びトレイ20を複合機10に装着する。トレイ20が挿入される過程において、フラップ支持部95が、第3位置で停止しているガイドフラップ91の第1面96と当接する。その状態でトレイ20が更に挿入されると、ガイドフラップ91は、フラップ支持部95に押圧されて、図7(B)に示される第2向き110へ回動する。トレイ20が最後まで挿入されると、フラップ支持部95がガイドフラップ91を押し上げて、ガイドフラップ91は再び第1位置に復帰する。つまり、プリンタ部11が画像記録可能な状態となる。
【0076】
続けて、ユーザが搬送路65に詰まった記録用紙を取り除く際の手順について説明する。最初に、ユーザは、トレイ20を複合機10から完全に脱抜する。その際、ガイドフラップ91が第1向き109へ回動して第3位置で制止される点は、上述された記録用紙を補充する際の手順と同様である。
【0077】
ユーザは、開口13に手を入れて、第3位置で停止しているガイドフラップ91を、手前側、つまり第1向き109に引く。このとき、係止片104の第1係止面105が上側第2ガイド部材90の第1当接面107を押圧して、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とは、互いに離間する向きの力を受ける。この力が所定値よりも大きい場合、支軸58が弾性的に下方に移動することで、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とは、それぞれ相対的に離間される。
【0078】
ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とが離間可能な距離は、少なくとも距離L2と距離L3の差(本発明の第4距離の一例)以上の距離である。したがって、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とが離間された状態では、係止片104が第1当接面107を摺動して第2当接面108側に移動するための隙間が、両者の間に発生する。それにより、ガイドフラップ91は、第3位置を越えて更に第1向き109へ回動することができる。ここで、ユーザがガイドフラップ91を第1向き109に引く力が本発明の第2の力に相当する。
【0079】
ユーザは、ガイドフラップ91を第1向き109へ、図8(A)に示される第2位置まで回動させる。第2位置は、ガイドフラップ91の突起99が上側第2ガイド部材90に当接して、第1向き109の回動が制止される位置である。このとき、ガイドフラップ91の回動先端は、支軸58よりも上方に位置している。
【0080】
図9に示されるように、ガイドフラップ91が第2位置まで回動することで、開口13(図1)からガイドフラップ91の下方を経由して、搬送路65に通じる通路111が形成される。ユーザは、通路111から搬送路65に手を入れて、搬送路65に詰まった記録用紙を取り出すことができる。
【0081】
ユーザは、記録用紙を取り出す作業を終了したとき、あるいは作業を一旦中断するときに、通路111から手を抜く。ユーザの手による支えを失ったガイドフラップ91は、自重によって第2向き110へ回動する。その際、係止片104の第2係止面106が、上側第2ガイド部材90の第2当接面108と当接することで、ガイドフラップ91の回動は図8(B)に示される第4位置で制止される。第4位置は、第3位置と第2位置の間であって、ガイドフラップ91の回動先端が、上下方向7の下方よりもやや前後方向8の前方を向く位置である。つまりガイドフラップ91の回動先端は、開口13のやや手前側を向けられる。ここで、ガイドフラップ91が自重によって第2向き110へ回動しようとする力が、本発明の第3の力に相当する。また、第2係止面106と第2当接面108との当接によってガイドフラップ91の回動を制止する力が本発明の第2の抵抗力に相当する。
【0082】
ユーザは、中断した記録用紙を取り出す作業を再開する場合、第4位置にあるガイドフラップ91を再び第1向き109へ第2位置まで回動させて通路111を確保する。一方、ユーザは、記録用紙を取り出す作業を終了した場合、トレイ20を複合機10に装着し、プリンタ部11が画像記録可能な状態とする。
【0083】
トレイ20が挿入される過程において、フラップ支持部95が、第4位置で停止しているガイドフラップ91の第1面96と当接する。このとき、トレイ20を挿入する力によって、係止片104の第2係止面106が上側第2ガイド部材90の第2当接面108を押圧して、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とは、互いに離間する向きの力を受ける。この力が所定値よりも大きい場合、上述された第1向きの回動と同様に、支軸58が弾性的に下方に移動し、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90とが離間する。それにより、係止片104が第2当接面108を摺動して第1当接面107側に移動するための隙間が、ガイドフラップ91と上側第2ガイド部材90との間に発生する。ガイドフラップ91は、第4位置を越えて第2向き110へ回動することができる。ここで、フラップ支持部95からの押圧によってガイドフラップ91に作用する力が、本発明の第4の力に相当する。
【0084】
そこから更にトレイ20が挿入されると、ガイドフラップ91はフラップ支持部95に押圧されて、第2向き110へ回動する。トレイ20が最後まで挿入されると、フラップ支持部95がガイドフラップ91を押し上げて、ガイドフラップ91は再び第1位置に復帰する。つまり、プリンタ部11が画像記録可能な状態となる。
【0085】
[実施形態の作用効果]
ガイドフラップ91の自重による第1向きへの回動は、第3位置で制止されるため、ユーザの手によって回動させない限り、ガイドフラップ91が第3位置よりも第2位置側に位置することはない。つまり、ガイドフラップ91が本来支持されるべき第1面96とは反対側の第2面97を支持されて、トレイに乗り上がってしまうことが回避される。
【0086】
また、第3位置で停止しているガイドフラップ91は、ユーザの手によって第3位置を越えて第2位置まで回動することができるため、ユーザは、通路111を通じて搬送路65に詰まった記録用紙を容易に取り出すことができる。
【0087】
また、第3位置で停止しているガイドフラップ91は、開口13に挿入されるトレイ20のフラップ支持部95に押圧されて、第2向きへ第1位置まで回動することができるため、ガイドフラップ91を確実に第1位置まで導くことができる。
【0088】
また、ガイドフラップ91の係止片104と上側第2ガイド部材90との当接によって、ガイドフラップ91の回動が制止されるため、ガイドフラップ91の回動を制止する機構のために新たな部材を設ける必要がなく、ガイドフラップ91周辺の構造を簡単にすることができる。
【0089】
また、ガイドフラップ91の自重による第2向きへの回動は、第3位置よりも手前側の第4位置で制止されるため、ユーザが、搬送路65から記録用紙を取り出す作業を再開する際に、ガイドフラップ91を再び第2位置まで回動させることが容易となる。
【0090】
また、第4位置で停止しているガイドフラップ91は、開口13に挿入されるトレイ20のフラップ支持部95に押圧されて、第4位置を越えて第1位置まで回動することができるため、ガイドフラップ91を確実に第1位置まで導くことができる。
【0091】
[変形例]
上述された実施形態において、係止片104は、左右方向9の右側の軸受部98に設けられていたが、係止片104は、左右方向9の左側の軸受部98に設けられていてもよいし、左右両側の軸受部98にそれぞれ設けられていてもよい。また、更に多くの軸受部98が支軸58の軸方向に沿って設けられて、そのうちの任意の軸受部98に係止片104が設けられていてもよい。その場合、上側第2ガイド部材90における各係止片104と対応する位置に第1当接面107及び第2当接面108がそれぞれ形成される。ガイドフラップ91に設けられる係止片104の数は、第3位置及び第4位置においてガイドフラップ91の回動を制止するために必要な力に基づいて、適宜決定することができる。
【0092】
また、上述された実施形態において、支軸58が弾性的に下方へ移動することで、上側第2ガイド部材90とガイドフラップ91とが離間されたが、上側第2ガイド部材90とガイドフラップ91とが離間するために異なる構成が採用されてもよい。例えば、支軸58が弾性的に撓むことで、上側第2ガイド部材90とガイドフラップ91とが離間されてもよい。また、軸受部98と支軸58との間に弾性部材が介在されており、ガイドフラップ91が支軸58に対して弾性的に移動してもよい。また、上側第2ガイド部材90が上方に向かって移動可能であるように弾性的に支持されていてもよい。また、上側第2ガイド部材90及びガイドフラップ91の少なくとも一方が撓んだり形状変化することで、上側第2ガイド部材90とガイドフラップ91との間の隙間が確保されてもよい。あるいは、これらのうちの複数の方法が組み合わせられて使用されてもよい。
【0093】
また、ガイドフラップ91を支持する軸は、支軸58である必要はなく、異なる軸であってもよい。例えば、ガイドフラップ91は、記録用紙を搬送するための異なるローラの軸に軸支されてもよいし、あるいは、ガイドフラップ91を支持するための専用の軸が設けられてもよい。
【0094】
また、ガイドフラップ91を第3位置及び第4位置で制止するために、上述した構成とは異なる構成が使用されてもよい。例えば、係止片104は、軸受部98の外周面100に取り付けられた異なる部材であってもよく、荷重によって上側第2ガイド部材90との当接が解除されるように姿勢変化されてもよい。
【0095】
また、軸受部98の外周面100に窪みが形成されており、上側第2ガイド部材90から突起が突出されていてもよい。その場合、当該突起は、第3位置及び第4位置において当該窪みと嵌合する。あるいは、このような嵌合が、支軸58と軸受部98との間で行われてもよい。つまり支軸58の外周面に突起が形成され、軸受部98の内周面116に窪みが形成されていてもよい。あるいは、支軸58の外周面に窪みが形成され、軸受部98の内周面116に突起が形成されていてもよい。
【0096】
上述された方法の他にも、モータの駆動力を使用する方法など、ガイドフラップ91を第3位置及び第4位置で制止可能の方法であれば、あらゆる方法が用いられてもよい。また、ガイドフラップ91は、必ずしも第3位置及び第4位置において制止される必要はなく、ガイドフラップ91周辺の構成を簡単にするために、第3位置においてのみ制止されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10・・・複合機(画像記録装置)
20・・・トレイ
44・・・第2ローラ対(ローラ対)
45・・・第3搬送ローラ(下側ローラ,搬送部)
46・・・拍車(上側ローラ,搬送部)
58・・・支軸(軸)
60・・・第1搬送ローラ(搬送部)
61・・・ピンチローラ(搬送部)
62・・・第2搬送ローラ(搬送部)
63・・・拍車(搬送部)
65・・・搬送路
67・・・反転搬送路(搬送路)
68・・・第4搬送ローラ(搬送部)
69・・・従動ローラ(搬送部)
90・・・上側第2ガイド部材(支持部材)
91・・・ガイドフラップ(フラップ部材)
95・・・フラップ支持部
98・・・軸受部
100・・・外周面(外周面,第1外周部)
104・・・係止片(係止片,規制部,第2外周部)
105・・・第1係止面
106・・・第2係止面
107・・・第1当接面(第1当接面,規制部)
108・・・第2当接面(第2当接面,規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを案内する搬送路と、
上記搬送路に設けられ、シートを搬送する搬送部と、
シートを載置可能であり、当該装置に対して装着及び脱抜可能なトレイと、
一端側が軸支されており、当該軸を中心として、上記搬送路を区画する下面の一部を形成する第1位置から、上記搬送路を開放し、且つ、上記一端側とは反対の他端側が上記トレイよりも上方に位置する第2位置までの範囲を回動自在なフラップ部材と、
上記フラップ部材の自重に基づく第1の力によって上記第1位置から上記第2位置側へ回動する上記フラップ部材を上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置において当該回動を停止させ、且つ、上記第3位置において停止している上記フラップ部材に対しては、当該第1の力よりも大きな第2の力によって上記第2位置側へ回動可能とする第1の抵抗力を上記フラップ部材に付与する規制部と、を備え、
上記トレイは、当該装置に装着された状態において、上記フラップ部材を下方から支持して、上記第1位置に維持するフラップ支持部を有しており、
上記フラップ部材は、上記第3位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する画像記録装置。
【請求項2】
上記搬送部は、上記搬送路において、上下に対向配置されたローラ対を有しており、
上記フラップ部材は、上記ローラ対を構成するローラのうち、下側の下側ローラの軸に支持されており、
上記規制部は、上記ローラ対を構成するローラのうち、上側の上側ローラを支持する支持部材の一部と、上記フラップ部材の一部との当接に基づき、上記第1の抵抗力を発生させる請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記規制部は、上記フラップ部材の自重に基づく第3の力によって上記第2位置から上記第3位置側へ回動する上記フラップ部材を上記第3位置と上記第2位置との間の第4位置において当該回動を停止させ、且つ、上記第4位置において停止している上記フラップ部材に対しては、当該第3の力よりも大きな第4の力によって上記第1位置側へ回動可能とする第2の抵抗力を上記フラップ部材に付与し、
上記フラップ部材は、上記第4位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有しており、
上記規制部は、
上記軸受部の外周面から突出された係止片と、
上記支持部材に形成された第1当接面と、を有しており、
上記係止片は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接する請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有しており、
上記規制部は、
上記軸受部の外周面から突出された係止片と、
上記支持部材に形成された第1当接面及び第2当接面と、を有しており、
上記係止片は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接し、且つ、上記フラップ部材が上記第4位置にあるときに、上記第2当接面と当接する請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記係止片は、
第1係止面と、
上記第1係止面と鋭角を為して交差しており、上記周面から突出する向きに沿って形成された第2係止面と、を有しており、
上記第1当接面と上記第2当接面とは、それぞれ上記フラップ部材側を向けられて互いに交差しており、
上記第1係止面は、上記フラップ部材が上記第3位置にあるときに、上記第1当接面と当接し、
上記第2係止面は、上記フラップ部材が上記第4位置にあるときに、上記第2当接面と当接する請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記軸は、上記フラップ部材が上記支持部材と離間する向きへと弾性変形可能なものである請求項1から6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
シートを案内する搬送路と、
上記搬送路に設けられ、上下に対向配置されたローラ対によってシートを搬送する搬送部と、
シートを載置可能であり、当該装置に対して装着及び脱抜可能なトレイと、
上記ローラ対を構成するローラのうち、上側の上側ローラを支持する支持部材と、
上記ローラ対を構成するローラのうち、下側の下側ローラの軸に一端側が軸支されており、当該軸を中心として、上記搬送路を区画する下面の一部を形成する第1位置から、上記第1搬送路を開放し、且つ、上記一端側とは反対の他端側が上記トレイよりも上方に位置する第2位置までの範囲を回動自在なフラップ部材と、を備え
上記トレイは、当該装置に装着された状態において、上記フラップ部材を下方から支持して、上記第1位置に維持するフラップ支持部を有しており、
上記フラップ部材は、上記軸に軸支される軸受部を有しており、
上記軸受部は、上記軸の中心からその外周までの距離が第1距離である第1外周部と、当該第1外周部の周面から突出されており、上記軸の中心から先端までの距離が上記第1距離よりも長い第2距離である第2外周部と、を有しており、
上記軸の中心と上記支持部材とは、上記第1距離よりも長く、上記第2距離よりも短い第3距離だけ離れており、
上記支持部材と上記フラップ部材とは、少なくともどちらか一方が他方に対して上記第2距離と上記第3距離との差である第4距離以上の距離分だけ弾性的に離間可能であり、
上記支持部材と上記フラップ部材とが離間されていない状態において、上記第2外周部は、上記フラップ部材が上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置にあるときに上記支持部材と当接し、上記フラップ部材の自重による上記第2位置側への回動を停止させ、
上記フラップ部材は、上記第3位置にあるときに、当該装置に装着される上記トレイと当接し、上記トレイに押圧されることで上記第1位置側へ回動する画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−32210(P2013−32210A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169562(P2011−169562)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】