説明

画像読取装置、画像形成装置及びラインイメージセンサの制御方法

【課題】広幅の読取装置において、簡易な構成で用紙のバタつきによる濃度差を解消する。
【解決手段】複数のCIS3が、その主走査方向の端部が副走査方向において重なるように千鳥状に配置されて構成される読取部を含む画像読取装置であって、主走査ライン毎にそれぞれのCIS3の重なり部分における読み取り信号の信号レベルを抽出するレベル算出器404と、千鳥状に配置された複数のCIS3のうち隣接して配置された2つのCIS3それぞれの読み取り信号について抽出された重なり部分における信号レベルが同一になるように、2つのCIS3それぞれの読み取り信号の一方を補正するための補正値を算出するゲイン算出器405と、算出された補正値に基づき、2つのCIS3それぞれの読み取り信号の一方を補正する有効領域レベル補正器403とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置及びラインイメージセンサの制御方法に関し、特に、千鳥状に配置されるラインイメージセンサの読み取り信号の境界部分の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置のうち、情報の電子化に用いるスキャナの一態様として、A0サイズのような広幅の画像読み取り装置がある。広幅の画像読取装置においては、低コスト化のため、A4サイズ等のラインイメージセンサ複数個を主走査方向に千鳥状に配置して、広幅読み取りを可能としたものがある。
【0004】
A0サイズのような広幅サイズの用紙においては、紙面上の位置によって紙面が波打つ用紙のバタつきが問題となる。例えば、上述したように、A4サイズ等のラインイメージセンサ複数個を主走査方向に千鳥状に配置した構成の場合、ラインイメージセンサの副走査方向の位置が異なるため、バタつきが生じると、各ラインイメージセンサの読み取り位置における原稿高さに違いが生じる場合がある。その結果、同一の主走査ライン上の読み取りにおいて、主走査方向の位置によって読み取り濃度差が発生し、ラインイメージセンサの境目で濃度差が目立ってしまう。
【0005】
このような問題を解決するため、千鳥状に配置した各ラインイメージセンサの近傍に原稿とラインイメージセンサとの間の距離を検知する原稿高さ検知センサを備え、検知した距離に応じて各ラインイメージセンサの光源点灯時間を制御することで、境界の濃度差を目立たなくする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術の場合、原稿高さ検知センサを設けることによる装置の大型化、高コスト化及び光源点灯時間の制御に伴う制御の複雑化等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、広幅の読取装置において、簡易な構成で用紙のバタつきによる濃度差を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、複数のラインイメージセンサが、その主走査方向の端部が副走査方向において重なるように千鳥状に配置されて構成される読取部と、主走査ライン毎にそれぞれの前記ラインイメージセンサの重なり部分における読み取り信号の信号レベルを抽出するレベル抽出部と、前記千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサのうち隣接して配置された2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが同一になるように、2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、前記算出された補正値に基づき、前記2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正する信号補正部とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様は、画像形成装置であって、上述した画像読取装置を含むことを特長とする。
【0010】
また、本発明の他の態様は、画像読取装置において、主走査方向の端部が副走査方向において重なるように千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサの制御方法であって、主走査ライン毎にそれぞれの前記ラインイメージセンサの重なり部分における読み取り信号の信号レベルを抽出し、前記千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサのうち隣接して配置された2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが同一になるように、2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正するための補正値を算出し、前記算出された補正値に基づき、前記2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、広幅の読取装置において、簡易な構成で用紙のバタつきによる濃度差を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読取装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るCISの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る読み取り信号の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るCISコントローラの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るCISコントローラの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、A0サイズに対応した広幅の画像読取装置を例として説明する。尚、画像読み取り装置に限らず、広幅の画像読取装置を含む複写機、すなわち画像形成装置としても実現可能である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る画像形読取置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像読取装置1は、上カバー1、コンタクトガラス2、CIS(Contact Image Sensor)3、CISコントローラ4及びメインコントローラ5を含む。
【0015】
カバー1は、原稿Sを支持するコンタクトガラス2の上部に配置され、外部の光が原稿Sの読み取りに影響することを防ぐ。原稿Sは、コンタクトガラス2とカバー1との間を、原則としてコンタクトガラス2に接触した状態で搬送される。但し、コンタクトガラス2とカバー1との間には隙間が設けられており、原稿Sの折り目やカールによって、図1に示すように原稿Sが上下にバタつくことがある。このバタつきによる読み取り画像の劣化を回避することが本実施形態に係る要旨である。
【0016】
CIS3は、コンタクトガラス2に密着して搬送される原稿Sを撮像するラインイメージセンサである。CIS3は、原稿搬送方向の上流側と下流側とに交互に千鳥状に配置されることにより主走査方向全体にわたって画像を読み取る読取部が構成される。本実施形態に係る画像読み取り装置1においては、A4サイズ用のCIS3が複数配置されることにより、A0サイズの読取に対応している。
【0017】
上流側に配置されたCIS3と下流側に配置されたCIS3とは、原稿Sの搬送に応じて撮像タイミングを制御することにより、同一の主走査ラインを撮像するが、上流側のCIS3と下流側のCIS3との間で用紙のバタつきが発生すると、上流側のCIS3による読み取りの際の原稿高さと下流側のCIS3による読み取りの際の原稿高さとの間に差異が生じ、照明用光源の照明深度特性による明るさの差異から、異なるCISによる読み取り信号の間に濃度差が発生してしまう。このような不具合を解消することが本実施形態に係る要旨である。
【0018】
CISコントローラ4は、CIS3による原稿の読み取りを制御すると共に、CIS3による読み取り信号を処理して画像情報を出力する。この際、CISコントローラ4は、夫々のCIS3から出力された読み取り信号に基づいて読み取り信号のゲインを調整し、上述したCIS間の濃度差を調整する。CISコントローラ4の詳細については後述する。
【0019】
メインコントローラ5は、CISコントローラ4が出力した画像情報を取得し、装置の用途に応じた処理を実行する。画像読取装置1の場合、メインコントローラ5は、CISコントローラ4が出力した画像情報を記憶媒体に格納する。複写機の場合、メインコントローラ5は、CISコントローラ4から取得した画像情報に基づいて画像形成出力の実行を制御する。
【0020】
次に、図2(a)、(b)を参照して、本実施形態に係るCIS3について説明する。図2(a)、(b)は、本実施形態に係るCIS3を図1の情報から見た状態を示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態に係るCIS3は、第1CIS3a、第2CIS3b、第3CIS3c、第4CIS3d及び第5CIS3eが、互いに副走査方向、即ち原稿搬送方向に重なり部分を持って千鳥状に配置されて構成されている。このように重なり部分を持たせることにより、CISの組み付けバラつきや温度変化で隙間ができた場合に、画像の抜けが発生してしまうことを回避している。
【0021】
図2(b)は、それぞれのCIS3における無効領域を斜線部分で示す図である。第1CIS3aであれば、無効領域3a−1及び3a−2が主走査方向の両端部に設定され、それ以外の部分が有効領域として用いられる。それぞれのCIS3における有効領域をつなぐことにより、主走査方向全体にCIS3が配置され、抜けのない画像を得ることができる。換言すると、CIS3のうち有効領域による読み取り信号が読み取り画像の生成のために用いられる。
【0022】
ここで、図1に示すように用紙のバタつきが発生した場合の、第1CIS3aから第5CIS3eによる読み取り信号の例について、図3(a)に示す。図3(a)においては、第1CIS3aから第5CIS3eまでの一主走査ラインにおける読み取り信号を、それぞれ読み取り信号Saから読み取り信号Seとして示している。
【0023】
図3(a)に示すように、それぞれのCIS3の読取位置において原稿高さが異なる場合、各CISの読み取り信号Saから読み取り信号Seまでの信号レベルは、連続とならない。例えば、読み取り信号Saと読み取り信号Sbとが重なっている部分、即ち、無効領域3a−2及び3b−1によって特定される重複領域Pabは、読み取り対象は同一の部分であるため、本来信号レベルは同一になるはずである。しかしながら、原稿のバタつきにより、読み取り信号レベルに差異が生じている。
【0024】
同様に、それぞれの読み取り信号の主走査方向両端部は、隣接するCIS3による読み取り信号と一致するはずであるが、原稿のバタつきが生じると、図3(a)に示すように信号レベルに差異が生じ、それぞれの読み取り信号の主走査方向両端部の信号レベルが一致しない状態となっている。
【0025】
このような課題に対して、本実施形態に係る画像読取装置100においては、第3CIS3cによる読み取り信号Scを基準とし、図3(b)に示すように、読み取り信号Scの信号レベルに、両側の第2CIS3b及び第4CIS3dの読み取り信号Sb及びSdの信号レベルを合わせる。また、信号レベル補正後の読み取り信号Sbの信号レベルに、第1CIS3aの読み取り信号Saの信号レベルを合わせる。同様に、信号レベル補正後の読み取り信号Sdの信号レベルに、第5CIS3eの読み取り信号Seの信号レベルを合わせる。
【0026】
例えば、読み取り信号Sc及び読み取り信号Sbであれば、図3(a)に示す無効領域3b−2及び3c−1によって示される重複領域Pbcのように、副走査方向において読取範囲が重なっている部分の信号レベルを抽出し、抽出した信号レベルの比率に基づいて読み取り信号Sbの信号レベルを増減する。また、読み取り信号Sb及び読み取り信号Saであれば、図3(a)に示す無効領域3a−2及び3b−1によって示される重複領域Pabのように、副走査方向において読取範囲が重なっている部分の信号レベルを抽出する。この際、読み取り信号Sbについては、増減した結果の読み取り信号Sbの信号レベルを抽出する。そして、上記と同様に、抽出した信号レベルの比率に基づいて読み取り信号Saの信号レベルを増減する。
【0027】
読み取り信号Sd及びSeにおいても同様に処理する。このような処理により、図3(b)に実線で示すように、一の主走査ライン上の画像の読み取り信号が、CIS3の境界部分において信号レベルに差異が生じることなく、連続した状態に補正される。CIS3を制御すると共にCIS3により読み取り信号を処理するCISコントローラ4が、このような処理を実行することが、本実施形態に係る要旨である。
【0028】
次に、本実施形態に係るCISコントローラ4の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係るCISコントローラ4の構成及びCIS3との接続関係を示すブロック図である。図4に示すように、CISコントローラ4は、第1CIS3aから第5CIS3eのそれぞれに対応した処理ブロック400a〜400e(以降、総じて処理ブロック400とする)と、それぞれの処理部ブロック400において処理された読み取り信号を格納するメモリ410と、メモリ410に格納された読み取り信号に画像処理を施して画像情報を出力する画像処理部420とを含む。
【0029】
また、図4に示すように、それぞれの処理ブロック400は、前処理回路401a〜401e(以降、総じて前処理回路401とする)、ライン位置合わせメモリ402a〜402e(以降、総じてライン位置合わせメモリ402とする)及びレベル算出器404a〜404e(以降、総じてレベル算出器404とする)を含む。
【0030】
そして、処理ブロック400c以外の処理ブロック400は、有効領域レベル補正器403a、403b、403d、403e(以降、総じて有効領域レベル補正器403とする)及びゲイン算出器405a、405b、405d、405e(以降、総じてゲイン算出器405とする)を含む。処理ブロック400cは、第3CIS3cに対応した処理ブロックであり、上述したように、第3CIS3cの読み取り信号Scは、基準となる信号であって増減補正されないため、有効領域レベル補正器及びゲイン算出器は設けられていない。
【0031】
前処理回路401は、CISを1個使用した一般的な画像読取装置等で行われる処理を実行する回路であり、黒側のレベルを補正する光源を消灯した時の画信号レベルを均一にする暗時出力補正や、光源の光量ムラやレンズの集光ムラやラインイメージセンサの画素毎の感度バラツキ等を補正するシェーディング補正等を行う。
【0032】
ライン位置合わせメモリ402は、千鳥状に配置された各CISによる読み取り信号において、同一の主走査ラインの読み取り信号が同時に出力されるように、前処理回路401によって処理された読み取り信号を一旦保持する。
【0033】
レベル算出器404は、図3(a)、(b)において説明したように、各CIS3による読み取り信号の信号レベルを一致させるため、隣接するCIS3との重複領域の読み取り信号の信号レベルの平均値を算出することにより、重なり部分の信号レベルを抽出するレベル抽出部である。例えば、第1CIS3aに対応するレベル算出器404aであれば、図3(a)に示す読み取り信号Saの重複領域Pabの信号レベルの平均値を算出する。また、第2CIS3bに対応するレベル算出器404bであれば、図3(a)に示す読み取り信号Sbの重複領域Pab、Pbcの信号レベルの平均値を算出する。
【0034】
尚、本実施形態に係るレベル算出器404のように、重複領域の信号レベルの平均値を算出して信号レベルを抽出することにより、信号のノイズによる誤検知を低減することができる。また、重複領域における読み取り信号のピークレベルを用いることも可能であり、この場合、最も明るい部分で信号レベルを合わせることになるため、最も多い原稿の地肌レベルをあわせることができる。
【0035】
ゲイン算出器405は、レベル算出器404において抽出された各CIS3による読み取り信号の信号レベルの比率に基づき、それぞれの読み取り信号を増減させる補正値を算出する補正値算出部である。例えば、第2CIS3bに対応するゲイン算出器405bの場合、レベル算出器404cによって算出された重複領域Pbcにおける読み取り信号Scの信号レベル平均値をSc−bc、レベル算出器404bによって算出された重複領域Pbcにおける読み取り信号Sbの信号レベル平均値をSb−bcとすると、読み取り信号Sbを増減させるためのゲイン値GSbを、下記の式(1)によって算出する。

【0036】
また、第1CIS3aに対応するゲイン算出器405aの場合、レベル算出器404cによって算出された重複領域Pbcにおける読み取り信号Scの信号レベル平均値をSc−bc、レベル算出器404bによって算出された重複領域Pbc、Pabにおける読み取り信号Sbの信号レベル平均値をSb−bc、Sb−ab、レベル算出器404aによって算出された重複領域Pabにおける読み取り信号Saの信号レベル平均値をSa−abとすると、読み取り信号Saを増減させるためのゲイン値GSaを、下記の式(2)によって算出する。

【0037】
尚、上記式(2)は、上記式(1)の右辺を含む。即ち、式(2)は、読み取り信号Sbについて、増減した結果の読み取り信号Sbの信号レベルを抽出し、そのSbの重複領域Pabの信号レベルと、Saの重複領域Pabの信号レベルとの比率を求めることに等しい。
【0038】
第4CIS3dに対応するゲイン算出器405dの場合、レベル算出器404cによって算出された重複領域Pcdにおける読み取り信号Scの信号レベル平均値をSc−cd、レベル算出器404dによって算出された重複領域Pcdにおける読み取り信号Sdの信号レベル平均値をSd−cdとすると、読み取り信号Sdを増減させるためのゲイン値GSdを、下記の式(2)によって算出する。

【0039】
また、第5CIS3eに対応するゲイン算出器405eの場合、レベル算出器404cによって算出された重複領域Pcdにおける読み取り信号Scの信号レベル平均値をSc−cd、レベル算出器404dによって算出された重複領域Pcd、Pdeにおける読み取り信号Sdの信号レベル平均値をSd−cd、Sd−de、レベル算出器404eによって算出された重複領域Pdeにおける読み取り信号Seの信号レベル平均値をSe−deとすると、読み取り信号Seを増減させるためのゲイン値GSeを、下記の式(4)によって算出する。

【0040】
尚、上記式(4)は、上記式(2)と同様に、上記式(3)の右辺を含む。即ち、式(4)は、読み取り信号Sdについて、増減した結果の読み取り信号Sdの信号レベルを抽出し、そのSdの重複領域Pdeの信号レベルと、Seの重複領域Pdeの信号レベルとの比率を求めることに等しい。
【0041】
有効領域レベル補正器403は、それぞれの処理ブロック400において算出したゲイン値を用いて、それぞれの処理ブロック400のライン位置合わせメモリ402に格納された読み取り信号を増減することにより補正し、メモリ410に格納する信号補正部である。本実施形態においては、上記式(1)〜(4)に示すような態様でゲイン値を求めるため、有効領域レベル補正器403は、メモリ402に格納された読み取り信号の信号レベルに、算出されたゲイン値を乗ずることによって信号レベルの増減を行う。
【0042】
尚、本実施形態位係るメモリ410は、主走査ライン毎に記憶領域が設定されており、各処理ブロック400の有効領域レベル補正器403が信号レベルを増減した後の読み取り信号を格納するメモリ410の記憶領域及びライン位置合わせメモリ402cが読み取り信号を格納するメモリ410の記憶領域は、それぞれの読み取り信号が主走査ライン上に順番に並ぶように予め定められている。これにより、処理ブロック400a〜400eによって処理された読み取り信号が、メモリ410において主走査ライン毎に格納される。
【0043】
画像処理部420は、メモリ410において主走査ライン毎に読み取り信号が格納されることにより生成された画像情報に対して、MTF補正、γ補正、像域分離等々の画像処理から2値化処理までを行い、メインコントローラ5に出力する。
【0044】
次に、本実施形態に係るCISコントローラ4の動作について、図5を参照して説明する。図5においては、第3CIS3c、第4CIS3d及び第5CIS3eに対応する処理ブロック400c、400d、400eの動作について説明するが、処理ブロック400dの動作は処理ブロック400bに対応し、処理ブロック400eの動作は処理ブロック400aに対応する。
【0045】
図5に示すように、第3CIS3cに対応する処理ブロック400cは、前処理回路401cが前処理を実行し(S501)、ライン位置合わせメモリ402cに処理後の読み取り信号Scを格納する(S502)。ライン位置合わせメモリ402cに読み取り信号Scが格納されると、レベル算出器404cが、図3に示す重複領域Pbc、Pcdの信号レベル平均値Sc−bc、Sc−cdを算出する(S503)。レベル算出器404cは、算出した信号レベル平均値のうち、Sc−cdをゲイン算出器405d及びゲイン算出器405eに出力する。また、ライン位置合わせメモリ402cは、格納された読み取り信号Scの有効領域の信号をメモリ410の予め定められた主走査方向アドレスに格納する(S510)。
【0046】
第4CIS3dに対応する処理ブロック400dは、前処理回路401dが前処理を実行し(S504)、ライン位置合わせメモリ402dに処理後の読み取り信号Sdを格納する(S505)。ライン位置合わせメモリ402dに読み取り信号Sdが格納されると、レベル算出器404dが、図3に示す重複領域Pcd、Pdeの信号レベル平均値Sd−cd、Sd−deを算出する(S506)。レベル算出器404dは、算出した信号レベル平均値をゲイン算出器405d及びゲイン算出器405eに出力する。
【0047】
信号レベル算出器404c及び404dから信号レベル平均値を取得したゲイン算出器405dは、上記式(3)に基づき、読み取り信号Sdを増減させるためのゲイン値GSdを算出し(S511)、有効領域レベル補正器403dに入力する。ゲイン値を取得した有効領域レベル補正器403dは、算出されたゲイン値GSdを読み取り信号Sdの信号レベルに乗ずることにより有効領域の読み取り信号レベルを補正し、補正後の読み取り信号をメモリ410の予め定められた主走査方向アドレスに格納する(512)。
【0048】
第5CIS3eに対応する処理ブロック400eは、前処理回路401eが前処理を実行し(S507)、ライン位置合わせメモリ402eに処理後の読み取り信号Seを格納する(S508)。ライン位置合わせメモリ402eに読み取り信号Seが格納されると、レベル算出器404eが、図3に示す重複領域Pdeの信号レベル平均値Se−deを算出する(S509)。レベル算出器404eは、算出した信号レベル平均値をゲイン算出器405eに出力する。
【0049】
信号レベル算出器404c、404d及び404eから信号レベル平均値を取得したゲイン算出器405eは、上記式(4)に基づき、読み取り信号Seを増減させるためのゲイン値GSeを算出し(S513)、有効領域レベル補正器403eに入力する。ゲイン値を取得した有効領域レベル補正器403eは、算出されたゲイン値GSeを読み取り信号Seの信号レベルに乗ずることにより有効領域の読み取り信号レベルを補正し、補正後の読み取り信号をメモリ410の予め定められた主走査方向アドレスに格納する(514)。
【0050】
S514までの処理が完了し、処理ブロック400a及び400bにおいても同様の処理が実行されて一主走査ラインに相当する読み取り信号がメモリ410に格納されると、画像処理部420が、上述したメモリ410に格納された一主走査ライン分の読み取り信号に対して各種の画像処理を施し、画像情報として出力する(S515)。
【0051】
このように、本実施形態に係るCISコントローラ4においては、副走査方向に重複して配置される2つのCIS3の読み取り信号において、読み取り信号の信号レベルが本来一致するべき重複領域の信号レベルを比較することにより、一方の信号レベルを増減補正するためのゲイン値を求める。そのようにして求めたゲイン値を用いて一方の信号レベルを補正することにより、用紙のバタつきによって生じた信号レベルの不一致を修正し、画像の濃度変動を解消することができる。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態においては、原稿高さを検知するためのセンサを設ける必要もなく、広幅の読取装置において、簡易な構成で用紙のバタつきによる濃度差を解消することが可能となる。
【0053】
尚、上記実施形態においては、式(1)〜(4)に示すように、重複領域の信号レベル平均値の比率をゲイン値として求め、そのようにして求めたゲイン値を信号レベルに乗ずる場合を例として説明した。この他、例えば、重複領域の信号レベル平均値の差を補正値として求め、そのようにして求めた補正値を信号レベルに加算することによって信号レベルを補正することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、5つのCIS3が千鳥状に配置され、中央の第3CIS3cの信号レベルを基準として用いる場合、即ち、中央のCIS3を基準ラインイメージセンサとして用いる場合を例として説明した。このため、第2CIS3bの読み取り信号Sb、第4CIS3dの読み取り信号Sdの補正値であるゲイン値は、上記式(1)、(3)のように、読み取り信号Sb、Sdそれぞれの信号レベルと読み取り信号Scの信号レベルとの比率に基づいて計算する。そして、第1CIS3aの読み取り信号Sa、第5CIS3eの読み取り信号Seの補正値であるゲイン値は、上記式(2)、(4)のように、読み取り信号Sb、Sdそれぞれの信号レベルと読み取り信号Scの信号レベルとの比率に加えて、読み取り信号Sb、Sdそれぞれの信号レベルと読み取り信号Sa、Seそれぞれの信号レベルとの比率に基づいて計算する。
【0055】
これに対して、中央以外のCIS3、例えば、第1CIS3aの読み取り信号3aを基準として用いる場合、第2CIS3bの読み取り信号Sbの補正値であるゲイン値は、読み取り信号Saと読み取り信号Sbとの比率に基づいて計算する。第3CIS3cの読み取り信号Scの補正値であるゲイン値は、読み取り信号Saと読み取り信号Sbとの信号レベルの比率に加えて、読み取り信号Sbと読み取り信号Scとの信号レベルの比率に基づいて計算する。
【0056】
そして、第4CIS3dの読み取り信号Sdの補正値であるゲイン値は、読み取り信号Saと読み取り信号Sbとの信号レベルの比率、読み取り信号Sbと読み取り信号Scとの信号レベルの比率、そして読み取り信号Scと読み取り信号Sdとの信号レベルの比率、に基づいて計算する。このように、中央以外のCIS3を基準とすると、中央のCIS3を基準とする場合に比べて、計算量が増えてしまう。従って、千鳥状に配置された複数のCIS3のうち、中央のCIS3の読み取り信号を基準として用いることにより、計算量を最小化することができ、好ましい。
【0057】
また、上記実施形態において、有効領域レベル補正器403は、その名の通り、来院位置合わせメモリ402に格納されたCIS3の読み取り信号のうち、有効領域の読み取り信号の信号レベルを補正してメモリ410に格納する場合を例として説明した。これにより、余計な信号レベルの補正処理を省略し、処理負荷を低減することができる。
【0058】
しかしながら、複数のCIS3が千鳥状に配置された読取部における画像信号のつなぎあわせ方によっては、図2(b)無効領域の画像信号をも用いる場合もあり得る。そのような場合は、有効領域、無効領域に関わらず、全ての読み取り信号の信号レベルを補正する。
【0059】
また、上記実施形態においては、画像読み取りにおける色の違いについて考慮することなく説明を行った。例えばフルカラーの画像読取装置の場合、RGBの各色について、千鳥状に配置されたCIS3がそれぞれ設けられる。このような場合、RGBのいずれか1色について図5に示すような処理を実行してゲイン値を求め、そのゲイン値を他の色にも適用することが好ましい。これにより、全ての色について同一のゲイン値が適用されることとなり、色味を変化させることなく、濃度補正を行うことが可能となる。
【0060】
また、図4に示すようなCISコントローラ4は、例えばチップ化された集積回路によって実現される。この他、ソフトウェアによって実現することも可能である。この場合、図4に示すそれぞれの機能ブロックを実現するためのプログラムがRAM(Random Access Memory)のような記憶媒体にロードされ、CPU(Central Processing Unit)のような演算部が、上記ロードされたプログラムに従って演算を行うことにより、上記と同様に実現可能であり、同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 上カバー
2 コンタクトガラス
3 CIS
4 CISコントローラ
5 メインコントローラ
400 処理ブロック
401 前処理回路
402 ライン位置合わせメモリ
403 有効領域レベル補正器
404 レベル算出器
405 ゲイン算出器
410 メモリ
420 画像処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2008−205726号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラインイメージセンサが、その主走査方向の端部が副走査方向において重なるように千鳥状に配置されて構成される読取部と、
主走査ライン毎にそれぞれの前記ラインイメージセンサの重なり部分における読み取り信号の信号レベルを抽出するレベル抽出部と、
前記千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサのうち隣接して配置された2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが同一になるように、2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、
前記算出された補正値に基づき、前記2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正する信号補正部とを含むことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記信号補正部は、前記ラインイメージセンサの読み取り信号のうち、読み取り画像のために用いられる有効領域の読み取り信号を補正することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記補正値算出部は、前記複数のラインイメージセンサのうち予め定められた一の基準ラインイメージセンサの読み取り信号レベルを基準値とし、
前記基準ラインイメージセンサに隣接して配置された隣接ラインイメージセンサの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが、前記基準ラインイメージセンサの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルと同一になるように、前記隣接ラインイメージセンサの読み取り信号を補正するための補正値を算出し、
前記隣接ラインイメージセンサに更に隣接して配置された2次隣接ラインイメージセンサの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが、前記算出された補正値によって補正された前記隣接ラインイメージセンサの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルと同一になるように、前記2次隣接ラインイメージセンサの読み取り信号を補正するための補正値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記複数のラインイメージセンサのうち、主走査方向の中央に配置されたラインイメージセンサを前記基準ラインイメージセンサとすることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記レベル抽出部は、前記重なり部分における読み取り信号の信号レベルの平均値を抽出することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記レベル抽出部は、前記重なり部分における読み取り信号の信号レベルのピーク値を抽出することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取部は、異なる複数の色毎に前記複数のラインイメージセンサが千鳥状に配置されて構成され、
前記信号補正部は、一色のラインイメージセンサの読み取り信号に基づいて算出された前記補正値を用いて、他の複数の色のラインイメージセンサの読み取り信号を補正することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか1項に記載の画像読取装置を含むことを特長とする画像形成装置。
【請求項9】
画像読取装置において、主走査方向の端部が副走査方向において重なるように千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサの制御方法であって、
主走査ライン毎にそれぞれの前記ラインイメージセンサの重なり部分における読み取り信号の信号レベルを抽出し、
前記千鳥状に配置された複数のラインイメージセンサのうち隣接して配置された2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号について前記抽出された重なり部分における信号レベルが同一になるように、2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正するための補正値を算出し、
前記算出された補正値に基づき、前記2つのラインイメージセンサそれぞれの読み取り信号の一方を補正することを特徴とするラインイメージセンサの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5176(P2013−5176A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133472(P2011−133472)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】