説明

画像読取装置および画像形成装置

【課題】原稿読取部の位置による原稿データの濃度変動を抑えることができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置20は、原稿搬送路36、読取ガラス40、原稿読取部32、ROM410、CPU420、ドライバ430、増幅器440、シェーディング補正部450および1DLUT変換部460を備える。ROM410は、原稿読取部32で読み取る原稿データの濃度を補正する濃度補正値を、原稿読取部32の位置に対応して記憶する。CPU420は、原稿読取部32を移動させて読取ガラス40を読み取り、読取ガラスにおける透過度の高い位置に原稿読取部32を移動させ、原稿読取部32の位置に対応してROM410から濃度補正値を読み出す。ドライバ430、増幅器440、シェーディング補正部450および1DLUT変換部460は、CPU420で読み出された濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿読取部で読み取った読取画像の濃度変更を抑えることが可能な画像読取装置およびこの画像読取装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置は、原稿読取部を停止した状態で原稿を搬送させながら読取ガラスを介して原稿を読み取る原稿搬送読取モード(SPFモード)と、原稿読取部を走査させることで原稿載置台に置いた原稿を読み取る原稿固定読取モード(OCモード)と、がある。また、読取ガラスと原稿載置台は、同じ原稿読取部を使用するため、光路長が同じであり、お互いに平行である。さらに、原稿搬送読取モードでは、原稿は、原稿トレイから曲率をもって搬送され、水平の読取ガラスを介して読取部によって読み取られ、その後排紙トレイへ排出される。
【0003】
しかし、このような画像読取装置においては、読取ガラスや原稿載置台に埃が付着すると、読取画像にスジが入る問題があった。
【0004】
そこで、原稿読取部の位置を変更して搬送される原稿を読み取る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−250977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、原稿読取部の位置を変更する技術であるため、原稿の曲率により原稿読取部の位置によって光路長が変わる構成である。したがって、光路長が変わることによって原稿からの反射光量が変わるため、原稿読取部の位置に応じて、光源からの原稿への照射光量を変更する必要や、読み取った原稿データを変換する必要がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、原稿読取部の位置による原稿データの濃度変動を抑えることができる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像読取装置は、原稿搬送部、読取ガラス、原稿読取部、記憶部、制御部および濃度補正部を備える。
【0009】
原稿搬送部は、原稿が搬送される。読取ガラスは、原稿搬送部の途中に配置される。原稿読取部は、水平方向に移動可能であって、搬送される原稿を読取ガラスの複数の位置で読み取り可能である。記憶部は、原稿読取部で読み取る原稿データの濃度を補正する濃度補正値を、原稿読取部の位置に対応して記憶する。
【0010】
制御部は、原稿読取部を移動させて読取ガラスを読み取り、読取ガラスの位置ごとに透過度を判断し、読取ガラスにおける透過度の高い位置に原稿読取部を移動させ、原稿読取部の位置に対応して記憶部から濃度補正値を読み出す。濃度補正部は、制御部で読み出された濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正する。
【0011】
この構成では、原稿読取部を移動させて読取ガラスを読み取り、読取ガラスの位置ごとに透過度を判断するため、読取ガラス上に付着したインクや紙粉の位置が分かる。したがって、インクや紙粉が付着した位置を回避して原稿読取部を移動させて原稿を読み取ることにより、スジのない良好な読取画像を形成することができる。
【0012】
また、この構成では、原稿読取部の位置を変動させるため、原稿読取部の位置によって光路長の変化が生じる。そこで、原稿読取部の位置に対応して記憶部から濃度補正値を読み出し、この濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正することにより、原稿データの濃度変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における画像読取装置は、原稿読取部の位置による原稿データの濃度変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す正面図である。
【図2】画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図3】画像読取装置の一部の拡大図である。
【図4】読取ガラスおよび原稿載置台の互いの配置関係を示す図である。
【図5】画像読取装置のブロック図である。
【図6】読取ガラスに対する原稿読取部の読取位置を示す図である。
【図7】水平方向に対して傾斜した読取ガラスに対する原稿読取部の読取位置を示す図である。
【図8】濃度補正のフローチャートである。
【図9】読取位置と光量値の対応関係を示す表である。
【図10】読取位置とゲイン値の対応関係を示す表である。
【図11】原稿データをシェーディング補正する際の式である。
【図12】原稿データを1DLUT変換するためのテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る画像読取装置を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、画像読取装置20を備える画像形成装置100の構成を示す正面図である。
【0017】
画像形成装置100は、画像読取装置20および画像形成部10を備えている。画像形成装置100は、外部から伝達された画像データまたは画像読取装置20が生成した画像データに基づいて、シート(記録媒体)に対して多色または単色の画像を形成する。
【0018】
画像読取装置20は、原稿載置台22に載置された原稿の画像を読み取る原稿固定読取モード、および原稿載置トレイ26から原稿を1枚ずつ搬送しながら原稿の画像を読み取る原稿搬送読取モードで読取動作を実行する。
【0019】
画像読取装置20は、原稿搬送読取モードにおいて、搬送される原稿の両面の画像を同時に読み取ることが可能に構成されている。画像読取装置20は、透明ガラスからなる原稿載置台22を備えている。原稿載置台22には、手置きの原稿が載置される。原稿載置台22の上側には、自動原稿処理装置24が取り付けられている。自動原稿処理装置24は、原稿載置トレイ26上の原稿を、原稿搬送路36を介して、厚さが所定の閾値未満である普通紙原稿を排出するための第2原稿排出トレイ28、または厚さが所定の閾値以上である厚手原稿(カード、封筒等)を排出するための第1原稿排出トレイ30へ、順次的に搬送するように構成されている。
【0020】
原稿搬送路36の両側には、搬送される原稿の第1面の画像または原稿載置台22上の原稿の画像を読み取るように構成された原稿読取部32、および搬送される原稿の第2面の画像を読み取るように構成された原稿読取部34が設けられる。なお、画像読取装置20の構成の詳細については後述する。
【0021】
画像読取装置20の下方には画像形成部10が配置される。画像形成部10は、光走査装置202、現像器102、感光体ドラム103、クリーナユニット104、帯電器105、中間転写ベルトユニット106、定着ユニット107、給紙カセット181、排紙部191を備えている。
【0022】
画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像器102、感光体ドラム103、帯電器105、クリーナユニット104は、各色に応じた4種類のトナー像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像形成ステーションが構成されている。
【0023】
帯電器105は、感光体ドラム103の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。
【0024】
光走査装置202は、入力された画像データに基づいて感光体ドラム103の表面に静電潜像を形成するように構成される。
【0025】
現像器102は、それぞれの感光体ドラム103上に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーによって顕像化する。クリーナユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム103上の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0026】
感光体ドラム103の上方に配置されている中間転写ベルトユニット106は、中間転写ベルト161、中間転写ベルト駆動ローラ162、中間転写ベルト従動ローラ163、中間転写ローラ164、および中間転写ベルトクリーニングユニット165を備えている。中間転写ローラ164は、YMCK用の各色に対応して4本設けられている。
【0027】
中間転写ベルト駆動ローラ162、中間転写ベルト従動ローラ163、および中間転写ローラ164は、中間転写ベルト161を張架して回転させる。各中間転写ローラ164は、感光体ドラム103のトナー像を中間転写ベルト161上に転写するための転写バイアスを、感光体ドラム103のトナー像に与える。
【0028】
中間転写ベルト161は、各感光体ドラム103に接触するように設けられている。中間転写ベルト161は、感光体ドラム103に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト161に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト161上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。
【0029】
感光体ドラム103から中間転写ベルト161へのトナー像の転写は、中間転写ベルト161の裏側に接触している中間転写ローラ164によって行われる。中間転写ローラ164には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアスが印加される。
【0030】
上述のように、各感光体ドラム103上で各色相に応じて静電潜像から顕像化されたトナー像は中間転写ベルト161で積層される。積層されたトナー像は中間転写ベルト161の回転によって、後述のシートと中間転写ベルト161との接触位置に配置される転写ローラ110によってシート上に転写される。
【0031】
このとき、中間転写ベルト161と転写ローラ110とは所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ110にはトナーをシートに転写させるための電圧が印加される。
【0032】
また、上述のように、感光体ドラム103に接触することにより中間転写ベルト161に付着したトナー、もしくは転写ローラ110によってシート上に転写されず中間転写ベルト161上に残留したトナーは、次工程におけるトナーの混色を防止するために、中間転写ベルトクリーニングユニット165によって除去・回収される。
【0033】
給紙カセット181には、画像形成に使用されるシートが蓄積される。給紙カセット181は、光走査装置202の下側に配置されている。手差し給紙カセット182にも画像形成に使用されるシートを載置することができる。画像形成部10の上方に設けられている排紙部191には、画像形成済みのシートがフェイスダウンで排出される。
【0034】
画像形成部10には、給紙カセット181および手差し給紙カセット182のシートを転写ローラ110や定着ユニット107を経由させて排紙部191へ送るための、略垂直に配置された用紙搬送路200が設けられている。給紙カセット181または手差し給紙カセット182から排紙部191までの用紙搬送路200の近傍には、ピックアップローラ111A,111B、複数の搬送ローラ112A〜112D,レジストローラ113、転写ローラ110、定着ユニット107が配置されている。
【0035】
搬送ローラ112A〜112Dは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路200に沿って複数設けられている。ピックアップローラ111Aは、給紙カセット181の端部近傍に備えられ、給紙カセット181からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路200に供給する。同様にピックアップローラ111Bは、手差し給紙カセット182の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット182からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路200に供給する。
【0036】
レジストローラ113は、用紙搬送路200を搬送されているシートを一旦保持する。レジストローラ113は、感光体ドラム103上のトナー像の先端とシートの先端を合わせるタイミングでシートを転写ローラ110に搬送する機能を有している。
【0037】
定着ユニット107は、ヒートローラ171および加圧ローラ172を備えており、ヒートローラ171および加圧ローラ172は、シートを挟んで回転する。ヒートローラ171は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ172とともにトナーをシートに熱圧着することにより、シートに転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、シートに対して熱定着させる機能を有している。定着ユニット107は、ヒートローラ171を外部から加熱するための外部加熱ベルト173をさらに備えている。
【0038】
次に、シート搬送経路について説明する。上述のように、画像形成装置100には、予めシートを収納する給紙カセット181、および手差し給紙カセット182が設けられている。
【0039】
各給紙カセット181,182から搬送されるシートは用紙搬送路200の搬送ローラ112Aによってレジストローラ113まで搬送され、シートの先端と中間転写ベルト161上のトナー像の先端を整合するタイミングで転写ローラ110に搬送され、シート上にトナー像が転写される。その後、シートは定着ユニット107を通過することによってシート上の未定着トナーが熱で溶融・固着され、その後に搬送ローラ112Bを経て排紙部191上に排出される。
【0040】
上記のシート搬送経路は、シートに対する片面印刷要求のときのものであるが、これに対して両面印刷要求の時は、上記のように片面印刷が終了し定着ユニット107を通過したシートの後端が最終の搬送ローラ112Bで把持されたときに、搬送ローラ112Bが逆回転することによってシートを搬送ローラ112C,112Dに導く。そしてその後レジストローラ113を経てシート裏面に印刷が行われた後にシートが排紙部191に排出される。
【0041】
図2は、画像読取装置20の概略構成を示す図である。図3は、画像読取装置20の一部の拡大図である。図4は、読取ガラス40,42および原稿載置台22の互いの配置関係を示す図である。図5は、画像読取装置20のブロック図である。
【0042】
画像読取装置20は、原稿搬送路36、読取ガラス40,42、原稿読取部32,34、ROM410、CPU420、ドライバ430、増幅器440、シェーディング補正部450および1DLUT変換部460を備える。
【0043】
原稿搬送路36は、原稿が搬送される原稿搬送部である。読取ガラス40,42は、原稿搬送路36の途中に配置される。原稿読取部32は、水平方向に移動可能であって搬送される原稿の第1面を読取ガラス40の複数の位置で読み取り可能である。原稿読取部34は、搬送される原稿の第2面を読み取り可能である。ROM410は、原稿読取部32で読み取る原稿データの濃度を補正する濃度補正値を、原稿読取部32の位置に対応して記憶する記憶部である。
【0044】
CPU420は、原稿読取部32を移動させて読取ガラス40を読み取り、読取ガラス40,42の位置ごとに透過度を判断し、読取ガラス40における透過度の高い位置に原稿読取部32を移動させ、原稿読取部32,34の位置に対応してROM410から濃度補正値を読み出す制御部である。ドライバ430、増幅器440、シェーディング補正部450および1DLUT変換部460は、CPU420で読み出された濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正する濃度補正部である。
【0045】
次に、画像読取装置20の具体的構成について説明する。
【0046】
原稿載置トレイ26は、原稿載置台22の上方に配置され、第2原稿排出トレイ28は、原稿載置トレイ26の上方に配置されている。
【0047】
原稿載置台22は、水平方向に配置されている。また、原稿載置台22の側方に、読取ガラス40,42が配置されている。
【0048】
原稿搬送路36は、直線状搬送路361、および湾曲搬送路362を含んでいる。直線状搬送路361は、原稿載置トレイ26から下り傾斜しながら第1原稿排出トレイ30へ至る。
【0049】
読取ガラス40,42は、直線状搬送路361の途中に配置され、直線状搬送路361に沿って、原稿載置台22に対して原稿搬送方向91における下流側へ下り傾斜するように配置されている。読取ガラス40,42は、直線状搬送路361を挟んで互いに平行に対向配置されている。読取ガラス40は、原稿読取部32側に配置され、読取ガラス42は、原稿読取部34側に配置されている。この実施形態では、読取ガラス40,42は、直線状搬送路361に対して平行であって、原稿載置台22に対して原稿搬送方向91における下流側へ8度下り傾斜している。読取ガラス40は、上面の一部が原稿載置台22の上面を含む面と交わるように配置されている。
【0050】
読取ガラス40,42は、原稿搬送方向91において、上流側端部であって互いに対向する側の面に、上流側ほど互いに離間する方向に傾斜する傾斜面を有している。これによって、読取ガラス40と読取ガラス42との間に、厚手原稿が導き入れやすくされている。
【0051】
直線状搬送路361には、原稿搬送方向91において上流側から、搬送ローラ50,52,54,56,58が配置されている。搬送ローラ50〜54は、読取ガラス40より上流側に配置され、搬送ローラ56,58は、読取ガラス40より下流側に配置されている。
【0052】
湾曲搬送路362は、横U字状を呈し、読取ガラス40と第1原稿排出トレイ30との間において直線状搬送路361から分岐して、第2原稿排出トレイ28へ至る。
【0053】
直線状搬送路361と湾曲搬送路362との分岐部に、進路切換部材38が配置されている。進路切換部材38は揺動可能に支持されており、搬送される原稿を第2原稿排出トレイ28または第1原稿排出トレイ30のいずれかに案内するように構成されている。この実施形態では、進路切換部材38は、カード等の厚手原稿(例えば、厚さ0.6mm以上)を第1原稿排出トレイ30へ向けて案内し、厚手原稿以外の普通紙原稿(例えば、厚さ0.6mm未満)を第2原稿排出トレイ28へ向けて案内するように構成されている。
【0054】
原稿の厚さは、図示しない入力部によって入力される。CPU420は、入力部から入力された原稿の厚さについての情報に基づいて、進路切換部材38が原稿を第2原稿排出トレイ28または第1原稿排出トレイ30のいずれかへ案内するように制御する。
【0055】
原稿読取部32は、原稿固定読取モードと原稿搬送読取モードとで共用される。原稿固定読取モードにおいては、原稿は、原稿載置台22の上面に配置される。原稿読取部32は、原稿固定読取モードにおける画像読取時には、原稿載置台22に対して平行に移動しながら、原稿載置台22に対して垂直な光軸44の原稿の第1面における反射光を受ける。
【0056】
また、原稿読取部32は、原稿搬送読取モードにおける画像読取時には、読取ガラス40の下方で静止した状態で、読取ガラス40に対して傾斜した光軸46の原稿の第1面における反射光を受ける。
【0057】
原稿読取部34は、読取ガラス42を挟んで原稿読取部32の反対側に配置され、原稿搬送読取モードにおいて原稿の第2面の画像を読み取る。原稿読取部34は、読取ガラス42に対して垂直な光軸48の第2面における反射光を受ける。
【0058】
原稿搬送読取モードにおける画像読取位置は、原稿載置台22の上面を含む面と読取ガラス40の上面とが交わる位置である。原稿固定読取モードと原稿搬送読取モードとで原稿の画像面から原稿読取部32までの光路長が同じになるので、両読取モードにおいてピンボケの発生が防止される。
【0059】
原稿搬送読取モード時に、原稿は、表面が上向きとなり、裏面が下向きとなるように、原稿載置トレイ26に載置されることが好ましい。この場合、原稿の表面は原稿読取部34によって読み取られ、裏面は原稿読取部32によって読み取られる。
【0060】
上述のような画像読取装置20では、原稿搬送読取モードにおいて、厚手原稿は、直線状搬送路361を搬送され、読取ガラス40上を通過する際に第1面の画像を読み取られる。読取ガラス40は、原稿載置台22の側方に配置されるが、直線状搬送路361に沿って原稿載置台22に対して原稿搬送方向91における下流側へ下り傾斜するので、直線状搬送路361は、直線状に配置される。よって、原稿がカード等の厚手原稿である場合でも、原稿の搬送不良が抑制される。
【0061】
また、カードのサイズは小さいので第1原稿排出トレイ30のサイズはコンパクト化でき、第1原稿排出トレイ30が画像読取装置20の側面に配置された場合でも画像読取装置20の大型化が抑制される。一方、厚さが所定の閾値未満である普通紙原稿については湾曲搬送路362を経由させることで、原稿を原稿載置トレイ26の上方へ排出することができ、第2原稿排出トレイ28が大サイズであっても画像読取装置20の大型化が抑制される。
【0062】
原稿読取部32に加えて原稿読取部34を備えることで、原稿の第1面と第2面との両面を同時に読み取ることが可能である。
【0063】
また、上述のように、読取ガラス40,42が水平に対して傾斜していることにより、読取ガラス40,42にインクや紙粉が付着することを防止することができるとともに、読取ガラス40,42に付着したインクや紙粉が搬送される原稿によって取り除かれやすくなる。
【0064】
以降においては、原稿読取部32と読取ガラス40について説明する。
【0065】
図6は、読取ガラス40に対する原稿読取部32の読取位置を示す図である。図7は、水平方向に対して傾斜した読取ガラス40に対する原稿読取部32の読取位置を示す図である。
【0066】
原稿読取部32は、位置210,220,230において、搬送される原稿を読み取り可能である。図6のように、読取ガラス40が水平に配置されている場合は、原稿Pがカールしているため、位置210,220,230で原稿を読み取る際の光路長は、それぞれ異なる。図7のように、読取ガラス40が水平方向に対して傾斜している場合は、原稿Pがカールしていることに加え、原稿読取部32から原稿Pまでの距離が変わるため、位置210,220,230で原稿を読み取る際の光路長は、それぞれ異なる。この実施形態では、位置を3箇所としているが、これに限られるものではない。例えば、連続の位置で読み取ることが可能な構成を採用することもできる。
【0067】
図8は、濃度補正のフローチャートである。
【0068】
CPU420は、原稿読取部32を移動させて読取ガラス40を読み取る(S10)。CPU420は、読取ガラス40の位置ごとに透過度を判断する(S20)。CPU420は、読取ガラス40における透過度の高い位置に原稿読取部32を移動させる(S30)。CPU420は、原稿読取部32の位置に対応してROM410から濃度補正値を読み出す(S40)。
【0069】
その後、CPU420は、原稿の読み取り制御を行う(S50)。CPU420は、ROM410から読み出した濃度補正値に基づいて読み取った原稿データの濃度を濃度補正部に補正させる(S60)。
【0070】
この構成では、原稿読取部32を移動させて読取ガラス40を読み取り、読取ガラス40の位置ごとに透過度を判断するため、読取ガラス40上に付着したインクや紙粉の位置が分かる。したがって、インクや紙粉が付着した位置を回避して原稿読取部32を移動させて原稿を読み取ることにより、スジのない良好な読取画像を形成することができる。
【0071】
また、この構成では、原稿読取部32の位置を変動させるため、原稿読取部32の位置によって光路長の変化が生じる。そこで、原稿読取部32の位置に対応してROM410から濃度補正値を読み出し、この濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正することにより、原稿データの濃度変動を抑えることができる。
【0072】
図9は、読取位置と光量値の対応関係を示す表である。
【0073】
ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32から読取ガラス40に照射される光量値を含む。ドライバ430は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほど光量値を低く補正し、光路長が長くなるほど光量値を高く補正する。
【0074】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、ドライバ430は、光量値を90%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、ドライバ430は、光量値を110%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0075】
図10は、読取位置とゲイン値の対応関係を示す表である。
【0076】
ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32からのアナログ出力値を補正するゲイン値を含む。増幅器440は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほどゲイン値を低く補正し、光路長が長くなるほどゲイン値を高く補正する。
【0077】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、増幅器440は、ゲイン値を90%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、増幅器440は、ゲイン値を110%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0078】
図11は、原稿データをシェーディング補正する際の式である。
【0079】
ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32で読み取った原稿データをシェーディング補正するための白目標値Sを含む。シェーディング補正部450は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほど白目標値Sを低く補正し、光路長が長くなるほど白目標値Sを高く補正する。
【0080】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、シェーディング補正部450は、白目標値Sを例えば90%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、シェーディング補正部450は、白目標値Sを例えば110%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0081】
また、ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32で読み取った原稿データをシェーディング補正するための白シェーディング値Pwを含む。シェーディング補正部450は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほど白シェーディング値Pwを低く補正し、光路長が長くなるほど白シェーディング値Pwを高く補正する。
【0082】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、シェーディング補正部450は、白シェーディング値Pwを例えば90%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、シェーディング補正部450は、白シェーディング値Pwを例えば110%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0083】
さらに、ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32で読み取った原稿データをシェーディング補正するための黒シェーディング値Pbを含む。シェーディング補正部450は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほど黒シェーディング値Pを高く補正し、光路長が長くなるほど黒シェーディング値Pを低く補正する。
【0084】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、シェーディング補正部450は、黒シェーディング値Pbを例えば110%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、シェーディング補正部450は、黒シェーディング値Pbを例えば90%とすることで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0085】
図12は、原稿データを1DLUT変換するためのテーブルである。
【0086】
ROM410に記憶されている濃度補正値は、原稿読取部32で読み取った原稿データを1DLUT(1次元ルックアップテーブル)変換するためのγ値を含む。1DLUT変換部460は、原稿で反射した光が原稿読取部32で読み取られるまでの光路長が短くなるほどγ値を低く補正し、光路長が長くなるほどγ値を高く補正する。
【0087】
位置220を基準位置とすると、原稿読取部32が位置210に位置する場合には、光路長が短くなるため、原稿データの濃度が明るくなる。したがって、1DLUT変換部460は、γ値を矢印240のように低く補正することで、原稿データの濃度を中央部に補正する。また、原稿読取部32が位置230に位置する場合には、光路長が長くなるため、原稿データの濃度が暗くなる。したがって、1DLUT変換部460は、γ値を矢印250のように高く補正することで、原稿データの濃度を中央部に補正する。
【0088】
なお、これまで、原稿データの濃度補正について複数の濃度補正部を挙げたが、これらの濃度補正部の中で少なくとも1つを実行すればよい。
【0089】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
20−画像読取装置
32−原稿読取部
34−原稿読取部
36−原稿搬送路
40−読取ガラス
42−読取ガラス
100−画像形成装置
410−ROM
420−CPU
430−ドライバ
440−増幅器
450−シェーディング補正部
460−1DLUT変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が搬送される原稿搬送部と、
前記原稿搬送部の途中に配置される読取ガラスと、
水平方向に移動可能な原稿読取部であって、搬送される原稿を前記読取ガラスの複数の位置で読み取り可能な原稿読取部と、
前記原稿読取部で読み取る原稿データの濃度を補正する濃度補正値を、前記原稿読取部の位置に対応して記憶する記憶部と、
前記原稿読取部を移動させて前記読取ガラスを読み取り、前記読取ガラスの位置ごとに透過度を判断し、前記読取ガラスにおける透過度の高い位置に前記原稿読取部を移動させ、前記原稿読取部の位置に対応して前記記憶部から前記濃度補正値を読み出す制御部と、
前記制御部で読み出された前記濃度補正値に基づいて原稿データの濃度を補正する濃度補正部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
前記読取ガラスは、前記水平方向に対して傾斜している
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部から前記読取ガラスに照射される光量値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記光量値を低く補正し、前記光路長が長くなるほど前記光量値を高く補正する
請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部からのアナログ出力値を補正するゲイン値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記ゲイン値を低く補正し、前記光路長が長くなるほど前記ゲイン値を高く補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部で読み取った原稿データをシェーディング補正するための白目標値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記白目標値を低く補正し、前記光路長が長くなるほど前記白目標値を高く補正する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部で読み取った原稿データをシェーディング補正するための白シェーディング値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記白シェーディング値を低く補正し、前記光路長が長くなるほど前記白シェーディング値を高く補正する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部で読み取った原稿データをシェーディング補正するための黒シェーディング値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記黒シェーディング値を高く補正し、前記光路長が長くなるほど前記黒シェーディング値を低く補正する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記濃度補正値は、前記原稿読取部で読み取った原稿データを1次元ルックアップテーブル変換するためのγ値を含み、
前記濃度補正部は、原稿で反射した光が前記原稿読取部で読み取られるまでの光路長が短くなるほど前記γ値を低く補正し、前記光路長が長くなるほど前記γ値を高く補正する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取った原稿データに基づいて画像形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−106292(P2013−106292A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250400(P2011−250400)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】