説明

画像読取装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】キャリッジを安定して、正確に移動させることができる画像読取装置とそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置5は、走査方向に移動可能に支持された第1及び第2キャリッジ71、72と、これらのキャリッジ71、72を接続した一対の駆動ワイヤ26aと、各駆動ワイヤ26aが巻回された一対の駆動プーリ25と、この一対の駆動プーリ25を両側で固定する駆動軸231とを備え、一対の駆動プーリ25の回転により各駆動ワイヤ26aを駆動し、第1及び第2キャリッジ71、72を移動させて、原稿面を走査しつつ該原稿面からの反射光をイメージセンサに入光させることにより原稿画像を読み取る。一対の駆動プーリ25は、駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、一対の駆動ワイヤ26aは、各駆動プーリ25に同じ方向に巻回される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動プーリに巻回されて駆動されるワイヤによりキャリッジを駆動する画像読取装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタなどには、移動する光学系により原稿を露光走査することによって、原稿の画像を読み取る画像読取装置が設けられている。この場合、光学系は、例えば光源であるランプと第1ミラーとを搭載した第1キャリッジと、第2および第3ミラーとを搭載した第2キャリッジを移動可能に設け、原稿の走査時には第1キャリッジと第2キャリッジとを所定の関係をもって同一方向に移動させ、光路長を一定に保って原稿画像をメージセンサに結像させるようになっている。第1および第2キャリッジの移動は、駆動プーリに巻回された駆動ワイヤに第1および第2キャリッジをそれぞれ接続し、駆動プーリの回転を制御することによって行っている。
【0003】
このように光学系を駆動ワイヤによって駆動する画像読取装置においては、原稿の倍率を一定に保つため、原稿の読み取り範囲でキャリッジを一定の速度で駆動させることになる。そのために、駆動プーリの駆動ワイヤを巻回する周面の直径の大きさが軸方向に異なることを極力小さくしなくてはならない。しかし、駆動プーリの構成や加工法により、その周面部のスミに丸みや凹みがついたり、その周面部が円錐形になったりして、周面部の直径の大きさが微妙にバラツクつくことがある。その周面部の直径の大きさが軸方向に異なると、例えば、走査駆動開始時においては、駆動プーリから繰り出されている駆動ワイヤが長くなり、一方、走査駆動の終了直近時においては、駆動プーリから繰り出されている駆動ワイヤは短くなったりする。このように駆動プーリに巻かれる駆動ワイヤの長さが周面部の軸方向中心部と端部とで異なると、キャリッジを走査する駆動速度が変化し、原稿画像を読み取る倍率誤差が生じるという不具合がある。また、繰り出された駆動ワイヤの長さが変化することにより、ワイヤ張力が変化し、負荷変動、速度変動の原因となり、さらにワイヤテンションが全くかからなくなると、ワイヤの脱落、駆動のバックラッシが生ずることとなる。
【0004】
そこで、特許文献1では、駆動ワイヤを巻回する周面部の両側にフランジを設け、そのフランジに設けた切欠きから駆動ワイヤを周面部の軸方向両端から中心部に向かって巻き付けている。このことにより、駆動プーリに巻かれている駆動ワイヤの長さが一定であるため、繰り出されている駆動ワイヤの長さも変わることがないようにしている。また、丸みや凹みのある周面部の端部に巻き付けた駆動ワイヤは使用しなくても良いように、少なくとも1巻(360度)以上は余分に駆動ワイヤを巻き付けることにより、周面部の直径の異なる部分を使用不可にできるので、繰り出されているワイヤの長さも変わることがないようにしている。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、2つの駆動プーリは、駆動軸の両側にそれぞれネジ等により固定され、走査方向に対して対称に配設されている。各駆動プーリが対称に配設されているために、例えば、各駆動プーリの周面部において、装置の外側の各端部が凹み、装置内側の各端部が丸みを有するとすると、装置外側の直径がともに小さく、装置内側の直径がともに大きくなる。このような各駆動プーリを組み付けられた装置において、駆動軸が回転して、一方の駆動プーリが装置外側の端部に巻き付けた駆動ワイヤから装置内側に巻き付けた駆動ワイヤを順次繰り出し、同時に、他方の駆動プーリが周面部の装置内側の端部に巻き付けた駆動ワイヤから装置外側に巻き付けた駆動ワイヤを順次繰り出す場合には、一方の駆動ローラから繰り出される駆動ワイヤは短く、他方の駆動ローラから繰り出される駆動ワイヤは長くなる。このように2つの駆動プーリから繰り出される駆動ワイヤの長さが異なると、キャリッジの両側において、走査する駆動速度が異なり、読み取る原稿画像が台形型や平行四辺形型等に歪曲するという不具合がある。また、2つの駆動プーリにより繰り出された駆動ワイヤの長さが変化してしまうことにより、2つのワイヤ張力が異なり、負荷が変動し、キャリッジが滑らかに移動しないおそれがある。
【特許文献1】特開2003−167301号公報(段落[0025]、[0026]、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、キャリッジを安定して、正確に移動させることができる画像読取装置とそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、走査方向に移動可能に支持されたキャリッジと、前記キャリッジを接続した一対の駆動ワイヤと、前記各駆動ワイヤが巻回された一対の駆動プーリと、前記一対の駆動プーリを両側で固定する駆動軸とを備え、前記一対の駆動プーリの回転により前記各駆動ワイヤを駆動し、前記キャリッジを移動させて、原稿面を走査しつつ該原稿面からの反射光をイメージセンサに入光させることにより原稿画像を読み取る画像読取装置において、前記一対の駆動プーリは、前記駆動軸上で同じ方向を向けて固定され、前記一対の駆動ワイヤは、前記各駆動プーリに同じ方向に巻回されることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、各駆動プーリの駆動ワイヤを巻回する部分の直径が駆動軸方向に異なっていても、各駆動プーリは駆動軸上で同じ方向を向けて固定され、各駆動ワイヤは各駆動プーリに同じ方向に巻回されていることによって、各駆動ワイヤは駆動軸方向の同じ位置から同じ方向にて、各駆動プーリから繰り出されるので、各駆動プーリから繰り出される駆動ワイヤの長さは同じになる。
【0009】
また、請求項2の発明において、前記一対の駆動ワイヤは同じ撚り方向で形成されることを特徴としている。この構成によれば、各駆動プーリから繰り出される各駆動ワイヤに同じ弾力、伸度を持たせることができる。
【0010】
また、請求項3の発明において、上記の構成の画像読取装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、各駆動プーリの駆動ワイヤを巻回する部分の直径が駆動軸方向に異なっていても、各駆動プーリは駆動軸上で同じ方向を向けて固定され、各駆動ワイヤは各駆動プーリに同じ方向に巻回されていることによって、各駆動ワイヤは駆動軸方向の同じ位置から同じ方向にて、各駆動プーリから繰り出されるので、各駆動プーリから繰り出される駆動ワイヤの長さは同じになる。よって、キャリッジを正確に移動させることができるために、読み取る原稿画像が台形型や平行四辺形型等に歪曲するおそれがなく、また、各駆動ワイヤの張力が略同じであり、キャリッジを安定して移動させることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、各駆動プーリから繰り出される各駆動ワイヤに同じ弾力、伸度を持たせることができるので、各駆動ワイヤの張力が略同じになり、キャリッジを安定して移動させることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、上記の画像読取装置を備えるようにすれば、キャリッジを安定して、正確に移動させて、歪のない読み取り原稿画像を得る画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置を示す断面図である。画像形成装置100は、装置本体の下部に配設された給紙部1と、この給紙部1の右方および上方に配設された用紙搬送部2と、この用紙搬送部2の上方に配設された画像形成部3と、この画像形成部3よりも用紙搬送方向下流側に配設された定着部4と、これらの画像形成部3および定着部4の上方に配設された画像読取部5と、この画像読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを備えている。なお、画像読取部5は、本発明の画像読取装置の一例である。
【0016】
給紙部1は、装置本体に対して挿脱自在に装着された給紙カセット11に積層載置された用紙の束を、円弧外周部を有する給紙ローラ12の回転動作によって給紙カセット11の出口側(図1では右側)に送り出すとともに、各給紙カセット11の右端上部に設けられた捌き部13によって捌くことにより、最上位置の用紙から1枚ずつ確実に用紙搬送部2に給紙するようになっている。
【0017】
用紙搬送部2は、給紙部1から給紙された用紙を、搬送ローラ対21およびレジストローラ対22によって画像形成部3に向けて搬送し、さらに、画像形成部3から定着部4において画像形成が施された用紙を排出ローラ対23によって排出トレイ24上に排出するようになっている。
【0018】
画像形成部3は、電子写真プロセスによって、用紙に所定のトナー像を形成するものであり、回転可能に軸支された光導電性を有する感光体ドラム31と、この感光体ドラム31の周囲に配設される帯電ユニット32、露光ユニット33、現像ユニット34、転写ユニット35、クリーナ36および除電ユニット37とを備えている。
【0019】
帯電ユニット32は、高電圧が印加される帯電ワイヤを備え、この帯電ワイヤからのコロナ放電によって感光体ドラム31の表面に所定電位を与えるものである。露光ユニット33は、後述する画像読取部5によって読み取られた原稿の画像データに基づいてレーザ発光器から出力されるレーザ光を、ポリゴンミラーおよび反射鏡を介して感光体ドラム31に照射することにより、感光体ドラム31表面の電位を選択的に減衰させて、この感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成するものである。現像ユニット34は、上記静電潜像をトナーにより現像して、感光体ドラム31の表面にトナー像を形成するものである。転写ユニット35は、感光体ドラム31の表面のトナー像を用紙に転写するものである。クリーナ36は、転写後の感光体ドラム31の表面に残留しているトナーを除去するものである。除電ユニット37は、感光体ドラム31の表面の残留電荷を除去するものである。
【0020】
定着部4は、画像形成部3においてトナー像が転写された用紙を、加熱ローラ41と加圧ローラ42とによって挟んで加熱し、用紙上にトナー像を定着させるものである。
【0021】
原稿給送部6は、コピー(複写)開始の指示入力などに応答して、原稿トレイ61上に載置された原稿を自動的に1枚ずつ搬送するとともに、原稿の露光走査後に原稿排出トレイ(図示略)上へ排出させる、いわゆるシートスルータイプの原稿読み取りを行うものである。
【0022】
画像読取部5は、原稿給送部6によって移送される原稿やコンタクトガラス上に載置された原稿に光を照射して、その反射光を電気信号に変換することにより原稿の画像情報を読み取るとともに、その原稿画像に対応する画像データを生成するものである。
【0023】
図2は、画像形成装置の画像読取部を示す概略断面図である。画像読取部5は、原稿Pを載置させるコンタクトガラス8と、原稿Pの画像情報を読み取り、読み取った原稿Pの画像から画像データを生成するスキャナ部7等で構成される。
【0024】
スキャナ部7は、このスキャナ部7の上部に配設された第1キャリッジ71と、第1キャリッジ71の左方に配設された第2キャリッジ72と、スキャナ部7の下部の適所に配設された撮像ユニット80等で構成される。
【0025】
第1キャリッジ71および第2キャリッジ72は、後述する走査機構部に接続されており、この走査機構部が所定の速度で図2示す矢印方向(左右方向)に移動することにより、コンタクトガラス8上に載置された原稿Pの全面を走査し、原稿全面の画像情報を読み取ることが可能なようになっている。
【0026】
第1キャリッジ71は、走査機構部に接続された枠体75と、コンタクトガラス8上に載置された原稿Pに光を照射する露光ランプ等の光源76と、コンタクトガラス8からの光を第2キャリッジ72に向けて反射するミラー78とを含んでいる。
【0027】
第2キャリッジ72は、上下方向に対向して配設された一対のミラー72a、72bを備えており、第1キャリッジ71のミラー78からの光をミラー72a、72bで順次反射させて撮像ユニット80へと導く。
【0028】
撮像ユニット80は、結像レンズ73と、結像レンズ73の右方に配設されたイメージセンサ74等で構成される。
【0029】
結像レンズ73は、第2キャリッジ72のミラー72bを介して入射した原稿Pからの反射光を結像させるために、複数のレンズを有しており、撮像ユニット80の所定の位置に固定される。
【0030】
イメージセンサ74は、結像レンズ73の光軸Z上に長手方向(図2では紙面奥行き方向)に配列されたCCD等の撮像素子を有し、結像レンズ73により撮像素子上に結像された原稿Pの光学像を電気信号に変換する。
【0031】
以上のように構成された画像読取部5では、光源76によって光がコンタクトガラス8に照射され、コンタクトガラス8上の原稿Pからの反射光が第1キャリッジ71のミラー78で反射され、その反射光が第2キャリッジ72のミラー72a、72bで順次反射され、結像レンズ73を介して原稿Pの光学像がイメージセンサ74上に結像される。これにより、原稿Pの一部が読み取られる。そして、走査機構部により、第1キャリッジ71および第2キャリッジ72が所定の速度で移動することにより、原稿Pの全面を走査し、原稿P全面が読み取られて、読取画像が形成される。
【0032】
図3は、図2に示した第1および第2キャリッジを駆動させる走査機構部を示す斜視図である。この例の場合、駆動プーリ25と駆動ワイヤ26により駆動されるプーリとしては、画像読取部本体に固定配置される第1従動プーリ271および第2従動プーリ273と、第2キャリッジ72に取り付けられた移動プーリ272とが採用されている。これらのプーリ271〜273と駆動プーリ25との間には駆動ワイヤ26が巻回張架されている。駆動プーリ25は、駆動軸231の両側に固定保持され、プーリ271〜273と駆動ワイヤ26も第1および第2キャリッジ71、72の両側に配設される。
【0033】
各駆動ワイヤ26は、第1駆動ワイヤ26aと第2駆動ワイヤ26bとで構成されている。各第1駆動ワイヤ26aは、駆動プーリ25を起点として、まず第1従動プーリ271に対してその下側から架け渡されてから180度反転され、次いで移動プーリ272の内側溝に上側から架け渡されている。第1駆動ワイヤ26aの先端には丸型端子281が固着されており、第1駆動ワイヤ26aは移動プーリ272の位置でさらに180度反転されて、丸型端子281が本体フレームに設けられている掛止部221に引っ掛けられている。また各第2駆動ワイヤ26bは、同様に駆動プーリ25を起点として、まず第2従動プーリ273に対してその下側から架け渡されてから180度反転され、次いで移動プーリ272の外側溝に下側から架け渡されている。各第2駆動ワイヤ26bの先端にも丸型端子282が固着されており、第2駆動ワイヤ26bは移動プーリ272の位置でさらに180度反転されて、さらにワイヤーガイド274で90度内側に曲げられた状態で、丸型端子282が本体に固定されているテンションバネ275に引っ掛けられている。
【0034】
このようなワイヤの走査機構部において、図中点線で略記している第1キャリッジ71は、第1従動プーリ271と移動プーリ272との間において、そこに架け渡されている第1駆動ワイヤ26aに固定されている。また、同様に図中点線で略記している第2キャリッジ72には、前述の通り移動プーリ272が取り付けられており、この移動プーリ272が図3の矢印方向Sに移動することで原稿走査が可能とされている。ここで駆動プーリ25が回転すると、駆動ワイヤ26の張架方向、すなわち駆動ワイヤ26の繰り出し方向又は巻き取り方向に移動力が発生し、この移動力により第1駆動ワイヤ26aに固定されている第1キャリッジ71が図3の矢印方向Sに移動することになる。また移動プーリ272には回転移動力が作用し、第2キャリッジ72も図3の矢印方向Sに移動する。通常、第1キャリッジ71の移動速度は第2キャリッジ72の2倍となるよう設定され、この速度差により結像レンズ73(図2参照)の光路長を一定に保ちながら原稿Pの全体を走査する。
【0035】
図4は、駆動軸に固定した駆動プーリの構成を示す平面図である。駆動軸231は第1及び第2キャリッジ71、72の移動方向Sに直交するように配設される。駆動軸231には、2つの駆動プーリ25が間隔をおいて図4の左右側に設けられ、その一端にモータプーリ82が設けられる。このモータプーリ82は、駆動源としての正逆転可能なステップモータなどで構成されたモータ29によって回転駆動されるように、モータ29のモータ軸29aに設けたモータプーリ81との間に駆動ベルト83が張架されている。
【0036】
各駆動プーリ25は、周面部25a、フランジ部25b、25c、軸受け部25dを有する。
【0037】
周面部25aは、第1及び第2駆動ワイヤ26a、26b(図3参照)を巻回するところであり、その両側には、フランジ部25b、25cが設けられる。これらのフランジ部25b、25c間で第1及び第2駆動ワイヤ26a、26bが周面部25aに巻回される。
【0038】
軸受け部25dは、駆動プーリ25の中心部でスリーブ状に形成され、駆動軸231を挿通させる。この軸受け部25dには、挿通された駆動軸231を所定位置で固定するネジ等を嵌装させる孔が形成される。
【0039】
各駆動プーリ25は、プラスチックで形成され、ともに同じ形状であるので、同じ金型で成型加工されることになる。駆動プーリ25を成型加工する場合、周面部25aとフランジ部25b、25cとの角が直角にならず丸みがつきやすい。また、その丸みの大きさがフランジ部25b、25cで異なることがある。また、周面部25aの直径が駆動軸231の軸方向に差異があることがある。尚、金属板に絞り等の板金加工を施して、駆動プーリ25が形成されても、上記同様に、周面部25aの直径の大きさが駆動軸231の軸方向に差異があることがある。このように加工した各駆動プーリ25を移動方向Sに対し対称にして駆動軸231に取り付けると、各駆動プーリ25から繰り出されるワイヤの長さが異なることになる。2つの駆動プーリから繰り出される駆動ワイヤの長さが異なると、キャリッジの両側において、走査する駆動速度が異なり、読み取る原稿画像が台形型や平行四辺形型等に歪曲するという不具合がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、各駆動プーリ25が駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、各駆動プーリ25に巻回された駆動ワイヤの周面部25aから繰り出される駆動軸方向位置が互いに同じになるようにしている。つまり、各周面部25aに対して各フランジ部25cがモータプーリ82側になるように、各軸受け部25dがネジにより駆動軸231に固定されることにより、各周面部25aの角の丸みや直径の差異があっても、各フランジ部25cから軸方向の同じ位置では、各周面部25aの直径が同じになる。この同じ位置で、軸方向の同じ方向に、各駆動ワイヤが繰り出されると、2つの駆動プーリ25から繰り出される駆動ワイヤの長さが同じになる。
【0041】
各駆動プーリ25への駆動ワイヤの巻回の構成とその繰り出し動作を詳しく説明する。図5は、駆動プーリに駆動ワイヤを巻回した状態を示す平面図である。
【0042】
各駆動プーリ25には、第1駆動ワイヤ26a、第2駆動ワイヤ26bがそれぞれ巻回され、各第1駆動ワイヤ26aが第1従動プーリ271(図3参照)に架け渡され、各第2駆動ワイヤ26bが第2従動プーリ273(図3参照)に架け渡される。
【0043】
図5の右側の駆動プーリ25において、第1駆動ワイヤ26aは、フランジ部25cに設けた切り欠き41に固定され、フランジ部25cから周面部25aの軸方向の中央に向かってS巻で巻回され、一方、第2駆動ワイヤ26bは、フランジ部25bに設けた切り欠き42に固定され、フランジ部25bから周面部25aの軸方向の中央に向かってS巻で巻回される。第1駆動ワイヤ26aと第2駆動ワイヤ26bは、第1及び第2従動プーリ271、273へ繰り出す位置において隣接し、駆動軸231が回転すると、第1及び第2駆動ワイヤ26a、26bが隣接した状態で、一方の駆動ワイヤが周面部25aに巻き取られ、他方の駆動ワイヤが周面部25aから繰り出されながら駆動軸方向に移動することになる。
【0044】
図5の左側の駆動プーリ25においても、上記と同様に、第1駆動ワイヤ26aは、フランジ部25cに設けた切り欠き41に固定され、フランジ部25cから周面部25aの軸方向の中央に向かってS巻で巻回され、一方、第2駆動ワイヤ26bは、フランジ部25bに設けた切り欠き42に固定され、フランジ部25bから周面部25aの軸方向の中央に向かってS巻で巻回される。第1駆動ワイヤ26aと第2駆動ワイヤ26bは、第1及び第2従動プーリ271、273へ繰り出す位置において隣接し、駆動軸231が回転すると、第1及び第2駆動ワイヤ26a、26bが隣接した状態で、一方の駆動ワイヤが周面部25aに巻き取られ、他方の駆動ワイヤが周面部25aから繰り出されながら駆動軸方向に移動することになる。
【0045】
駆動軸231が回転して、各第1駆動ワイヤ26aが各駆動プーリ25から繰り出されると、各第2駆動ワイヤ26bが各駆動プーリ25に巻き取られるとともに、第1及び第2駆動ワイヤ26a、26bの隣接位置がともにフランジ部25c側に移動する。駆動軸231が逆回転して、各第2駆動ワイヤ26bが各駆動プーリ25から繰り出されると、各第2駆動ワイヤ26aが各駆動プーリ25に巻き取られるとともに、第1及び第2駆動ワイヤ26a、26bの隣接位置がともにフランジ部25b側に移動する。
【0046】
各第1駆動ワイヤ26aは、同じ材質の同じ太さのものを用いて、撚り方向はともにZ撚りとしている。また、各第2駆動ワイヤ26bは、同じ材質の同じ太さのものを用いて、撚り方向はともにZ撚りとしている。尚、第1駆動ワイヤ26aと第2駆動ワイヤ26bの巻き方向は、S巻に限らず、ともに同じ巻方向ならば、Z巻にしてもよい。この場合にはS撚りのワイヤにするとよい。
【0047】
上記実施形態によれば、画像読取装置5は、走査方向に移動可能に支持された第1及び第2キャリッジ71、72と、これらのキャリッジ71、72を接続した一対の駆動ワイヤ26aと、各駆動ワイヤ26aが巻回された一対の駆動プーリ25と、この一対の駆動プーリ25を両側で固定する駆動軸231とを備え、一対の駆動プーリ25の回転により各駆動ワイヤ26aを駆動し、第1及び第2キャリッジ71、72を移動させて、原稿面を走査しつつ該原稿面からの反射光をイメージセンサ74に入光させることにより原稿画像を読み取る。一対の駆動プーリ25は、駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、一対の駆動ワイヤ26aは、各駆動プーリ25に同じ方向に巻回される。
【0048】
この構成によれば、各駆動プーリ25の駆動ワイヤ26aを巻回する周面部の直径が駆動軸方向に異なっていても、各駆動プーリ25は、駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、各駆動ワイヤ26aは、各駆動プーリ25に同じ方向に巻回されていることによって、各駆動ワイヤ26aは、各駆動プーリ25の軸方向の同じ位置から同じ方向に繰り出されるので、各駆動プーリ25から繰り出される駆動ワイヤ26aの長さが同じになる。よって、第1及び第2キャリッジ71、72を正確に移動させることができるために、読み取る原稿画像が台形型や平行四辺形型等に歪曲するおそれがなく、また、各駆動ワイヤ26aの張力が略同じであり、第1及び第2キャリッジ71、72を滑らかに安定させて移動させることができる。
【0049】
また、上記実施形態によれば、画像読取装置5は、走査方向に移動可能に支持された第2キャリッジ72と、このキャリッジ72を接続した一対の駆動ワイヤ26bと、各駆動ワイヤ26bが巻回された一対の駆動プーリ25と、この一対の駆動プーリ25を両側で固定する駆動軸231とを備え、一対の駆動プーリ25の回転により各駆動ワイヤ26bを駆動し、第2キャリッジ72を移動させて、原稿面を走査しつつ該原稿面からの反射光をイメージセンサ74に入光させることにより原稿画像を読み取る。一対の駆動プーリ25は、駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、一対の駆動ワイヤ26bは、各駆動プーリ25に同じ方向に巻回される。
【0050】
この構成によれば、各駆動プーリ25の駆動ワイヤ26bを巻回する周面部の直径が駆動軸方向に異なっていても、各駆動プーリ25は、駆動軸231上で同じ方向を向けて固定され、各駆動ワイヤ26bは、各駆動プーリ25に同じ方向に巻回されていることによって、各駆動ワイヤ26bは、各駆動プーリ25の軸方向の同じ位置から同じ方向に繰り出されるので、各駆動プーリ25から繰り出される駆動ワイヤ26bの長さが同じになる。よって、第2キャリッジ72を正確に移動させることができるために、読み取る原稿画像が台形型や平行四辺形型に歪曲するおそれがなく、また、各駆動ワイヤ26bの張力が略同じであり、第2キャリッジ72を滑らかに安定させて移動させることができる。
【0051】
また、上記実施形態によれば、一対の駆動ワイヤ26aまたは26bは同じ撚り方向で形成されことによって、各駆動プーリ25から繰り出される各駆動ワイヤ26aまたは26bに同じ弾力、伸度を持たせることができるので、各駆動ワイヤ26aまたは26bの張力が略同じになり、第1及び第2キャリッジ71、72を滑らかに安定させて移動させることができる。
【0052】
また、上記実施形態によると、画像形成装置100において、上記の画像読取装置5を備えるようにすれば、第1及び第2キャリッジ71、72を安定して、正確に移動させ、歪のない読み取り原稿画像を得る画像形成装置100を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、駆動プーリに巻回されて駆動されるワイヤによりキャリッジを駆動する画像読取装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】は、本発明の実施形態である画像形成装置を示す断面図である。
【図2】は、本発明の実施形態である画像形成装置の画像読取部を示す概略断面図である。
【図3】は、本発明の実施形態である画像読取部の走査機構部を示す斜視図である。
【図4】は、本発明の実施形態である画像読取部の駆動軸に固定した駆動プーリの構成を示す平面図である。
【図5】は、本発明の実施形態である画像読取部の駆動プーリにワイヤを巻回した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
5 画像読取部(画像読取装置)
25 駆動プーリ
25a 周面部
25b、25c フランジ部
25d 軸受け部
26 駆動ワイヤ
26a 第1駆動ワイヤ
26b 第2駆動ワイヤ
29 駆動モータ
71 第1キャリッジ
72 第2キャリッジ
73 結像レンズ
74 イメージセンサ
80 撮像ユニット
81、82 モータプーリ
83 駆動ベルト
100 画像形成装置
221 掛止部
231 駆動軸
271 第1従動プーリ
272 移動プーリ
273 第2従動プーリ
274 ワイヤーガイド
275 テンションバネ
281、282 丸型端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に移動可能に支持されたキャリッジと、前記キャリッジを接続した一対の駆動ワイヤと、前記各駆動ワイヤが巻回された一対の駆動プーリと、前記一対の駆動プーリを両側で固定する駆動軸とを備え、前記一対の駆動プーリの回転により前記各駆動ワイヤを駆動し、前記キャリッジを移動させて、原稿面を走査しつつ該原稿面からの反射光をイメージセンサに入光させることにより原稿画像を読み取る画像読取装置において、
前記一対の駆動プーリは、前記駆動軸上で同じ方向を向けて固定され、前記一対の駆動ワイヤは、前記各駆動プーリに同じ方向に巻回されることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記一対の駆動ワイヤは同じ撚り方向で形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像読取装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−97634(P2009−97634A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270069(P2007−270069)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】