説明

画像読取装置

【課題】無線ICタグを利用してスキャナの特性パラメータの設定を迅速かつ正確に行える画像読取装置を提供することにある。
【解決手段】装置本体に着脱可能なスキャナユニット5と、スキャナの特性パラメータを有し、この特性パラメータを使用して、スキャナごとの特性のばらつきを補償して画像読取を実行する読取部4とを備えている画像読取装置Fであって、スキャナユニット5には、そのスキャナに対応した特性パラメータを記憶保存した無線ICタグ5cを取り付けており、内蔵アンテナを介して、無線ICタグ5cとの間で電波を送受し、ICタグに記憶させた情報を読み取る無線ICタグリーダ6と、無線ICタグリーダ6に特性パラメータを読み取らせ、読み取った特性パラメータを読取部4に対して書き換え設定するパラメータ設定手段1を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能なスキャナユニットを装着した画像読取装置のスキャナ初期設定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置では、消耗品であるトナーカートリッジやドラムカートリッジなどのプロセスユニットを着脱自在に設け、交換が必要な時に、これらのプロセスユニットを新しいものに容易に交換できるような構造となっている。
【0003】
近年、プロセスユニットを装着した際に帯電電圧や転写電圧などの最適プロセス条件を容易に初期設定できるように、あらかじめトナーの物性を記憶させた無線ICタグをトナーに取り付け、そのトナーを装着したのちに装置本体に取り付けた無線ICタグリーダで記憶データを読み出して装置(プリンタ回路等)に設定する技術が開発されている。
【0004】
次の特許文献には、熱転写プリンタに関する、無線ICタグを利用した初期設定技術が開示されている。
【特許文献1】特表2002−535172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、画像読取装置においては、光学系やCCDの特性にばらつきがあるため、各種の補正を行わない限りは均一の画像読取が担保できないが、通常、その特性のばらつきを補償するために、同じ形のスキャナユニットであっても、画像処理等のための補正用パラメータをスキャナごとの特性に対応したデータに設定して、画像読取処理の均一化を図っている。
【0006】
したがって、スキャナユニットを取り替えた時には同時にパラメータを再設定しなければならないが、従来では、このようなスキャナ交換の際には、装置の回路基板を取り出すか、またはパラメータ設定機器を使うなどして、パラメータの設定作業を行っていた。そのため、交換には多くの時間と手間を要していた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、無線ICタグを利用してスキャナの特性パラメータの設定を迅速かつ正確に行える画像読取装置を提供することにある。そして、それにより、スキャナ交換や工場出荷前の装置調整を迅速に行うことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像読取装置は、装置本体に着脱可能なスキャナユニットと、スキャナの特性パラメータを有し、この特性パラメータを使用して、スキャナの特性のばらつきを補償して画像読取処理を行う読取部とを備えている画像読取装置であって、スキャナユニットには、そのスキャナに対応した特性パラメータを記憶保存した無線ICタグを取り付けており、内蔵アンテナを介して、無線ICタグとの間で電波を送受し、ICタグに記憶させた情報を読み取る無線ICタグリーダと、無線ICタグリーダに特性パラメータを読み取らせ、読み取った特性パラメータを上記読取部に対して書き換え設定するパラメータ設定手段とを備えている。
【0009】
請求項2では、請求項1において、無線ICタグがスキャナユニットの適所に貼付されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3では、請求項1または2において、パラメータ設定手段は、スキャナユニットを装置本体に装着した時に、電源立上時に、または/および、所定操作がされた時に稼動することを特徴としている。
【0011】
請求項4では、請求項1〜3のいずれかにおいて、特性パラメータは所定の補正用パラメータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4に記載の画像読取装置は、スキャナユニットの無線ICタグに記憶させた特性パラメータを無線ICタグリーダで読み込んで、読取部に対してパラメータ設定するパラメータ設定手段を設けているので、あらかじめスキャナごとに異なるパラメータを無線ICタグに記憶させておけば、装置に対して間違いなくパラメータを設定することができ、スキャナユニット装着時の初期設定や調整の手間を短縮することができる。また、情報の読み取りから書き込みまで自動で行われるので、調整作業者はスキャナの特性を認識しておく必要がない。
【0013】
その結果、工場出荷前のスキャナユニット取り付け工程や、出荷後のスキャナのアップグレード作業が、きわめて効率的に行える。
【0014】
請求項2では、無線ICタグがスキャナユニットの適所に貼付されているので、取り付け/取り外し等の取り扱いが簡単である。また、パラメータ値が誤っていたことに気付いたときにも、そのICタグを取り外して正しいデータを書き込み、再度スキャナユニットに貼り付けるか、正しいパラメータが記憶された他のICタグを貼り付ければよい。
【0015】
請求項3では、スキャナユニットを装置本体に装着した時に、電源立上時に、または/および、所定操作がされた時に、パラメータ設定手段が作動してパラメータ設定動作を実行するようになっているので、所望のタイミングでスキャナのパラメータを設定することができる。
【0016】
請求項4では、書き換えする特性パラメータはシェーディング補正やガンマ補正などで使用する、スキャナごとの特性に対応した補正用パラメータであり、そのような補正用パラメータがICタグに記憶されているので、交換作業者や製造作業者は、そのようなスキャナごとの特性を意識することなく、スキャナユニットの取り付け調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面とともに説明する。
【0018】
以下の実施例では画像読取装置として複合機を示しているが、これに限定されることはなく、ファクシミリ装置、複写装置などでもよい。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図である。
【0020】
この画像読取装置(複合機)Fは、MPU等で構成された制御手段1と、NCU2と、モデム3と、読取部4と、別体のスキャナユニット5と、無線ICタグリーダ6(図中、RFICタグリーダ)と、操作部7と、表示部8と、ROM9と、RAM10と、画像メモリ11と、CODEC12と、プリンタ13とを備えている。
【0021】
この複合機Fは、スキャナユニット5、読取部4で読み取った画像データを順次符号化したのち、いったん画像メモリ11に蓄積し、モデム3、NCU2を介して、相手先のファクシミリ装置(不図示)に対して送信する一方、画像データを受信したときには、受信した画像データを画像メモリ11に蓄積し、順次読み出し復号して、プリンタ13によって印字出力するファクシミリ送受信基本機能と、読取部4で読み取った画像データをプリンタ13により記録紙に出力する複写機能とを備えている。
【0022】
制御手段1は、これらの各機能を実行するために上記各部を制御するほか、無線ICタグリーダ6に、無線ICタグ5cとの間の電波送受によりICタグに記憶させた情報を読み取らせ、その情報を読取部4に設定するパラメータ設定手段としても動作する。このパラメータ設定動作については後述する。
【0023】
読取部4は、スキャナユニット5に収納された読取機構5aを駆動させる読取機構駆動部4aと、スキャナユニット5で読み取らせた画像を取り込んで各種の処理を行う画像処理部4bとを含んで構成される。また、スキャナユニット5は、読取機構5a、CCD5b、光源(不図示)などを有するほか、ユニット本体の適所に、そのスキャナの特性パラメータを予め保存した無線ICタグ5cが貼付されている。
【0024】
無線ICタグリーダ6は、無線ICタグ5cを貼付したスキャナユニット5を装置本体に装着した場合に、非接触で無線ICタグ5cからの信号を受信できる、規定の交信距離内の適所に設置されている。
【0025】
図2は、画像処理部4bの要部構成を示したブロック図である。
【0026】
画像処理部4bは、シェーディング補正手段41、ガンマ補正手段42、2値化回路43、エッジ強調手段44などを備えている。シェーディング補正手段41は、シェーディング補正データを有し、このデータを用いて、CCD5bから読み取った画像をシェーディング補正する。ガンマ補正手段42は、ガンマ補正データを有し、このデータを用いてガンマ補正する。2値化回路43は、所定のしきい値でガンマ補正手段42の出力値を2値化する。エッジ強調手段44は、強調補正データにより画像の輪郭部を強調処理して、シャープな画像に補正する。
【0027】
上記の各種補正データやしきい値などの補正用パラメータは、使用するスキャナの特性によって異なる値であり、スキャナユニット5を交換すれば、それに応じてこれら補正用パラメータを変更して使用できるように構成されている。また同様に、読取機構駆動部4aも、光源駆動のための特性パラメータを有しており、変更調整が可能となっている。
【0028】
本発明では、スキャナユニット5を装着したときに、これら補正用パラメータを、無線ICタグ内に記憶させたパラメータで書き換え設定できるようにしたことを最大の特徴としたものである。なお、特性パラメータには上記のような補正用パラメータのほか、光量補正データ、制御定数、その他の各種の定数などが含まれる。
【0029】
すなわち、スキャナユニット5を取り付けた際には、パラメータを変更するために、回路基板を取り出したり、メモリに手作業等でデータを書き込んだりすることなく、スキャナユニット単位に簡単、迅速かつ正確にパラメータを設定することができる。
【0030】
つまり、本発明装置は、スキャナユニット5に含まれる光源、CCD5bなど、各構成要素の特性を、予め無線ICタグ5cに登録しておけば、ユニット5を取り付けた時、または、その後の所定タイミングで、いちどにパラメータを自動設定することができるものである。そしてその結果、スキャナユニットを交換しても、スキャナごとの特性のばらつきが補償されて、画像読取の均一化を図ることができる。
【0031】
図3は、パラメータ設定動作を示すフローチャートである。
【0032】
パラメータの設定は、スキャナユニット5を装着した時、電源立上時、操作部7の操作がされた時などの所定タイミングで作動される。所定タイミングを検出したときには、無線ICタグリーダ6に無線ICタグ5cの情報を読み取らせ、読み取った特性パラメータを、読取部4に対して書き換え設定する(以上、ステップ101〜104)。なお、無線ICタグ5cとの電波送受信が正常にできなかったときなど、ICタグ5cから情報を読み取れなかった場合は、異常を報知する(ステップ102、105)。
【0033】
なお、スキャナユニット5を取り付けた際に自動でパラメータ設定させるようにするには、取り付ける際にICタグまでの距離が電波送受可能な距離となったときに自動で書込み設定ができるようにしてもよいし、スキャナユニット5の取り付け部にスイッチ(不図示)を備え、スイッチの検出により無線ICタグリーダ6を駆動させるようにしてもよい。
【0034】
以上のように、無線ICタグ5cに適正な特性パラメータさえ記憶させておけば、ICタグ5cを貼付したスキャナユニット5を装着するだけで、特別な作業をすることなく簡単に特性パラメータを初期設定することができる。それにより、スキャナユニット5を交換する際には簡単、迅速かつ正確に交換作業を行うことができる。また、工場出荷前においても、スキャナユニット5の取り付けタイミング等でパラメータを自動設定できるようにしておけば、大量の装置について個別にパラメータ設定作業をする必要がないので、製造工程を短縮することができる。
【0035】
さらに、情報の読み取りから書き込みまでが自動で行われるので、調整作業者はスキャナの特性を認識しておく必要がない。
【0036】
さらに、無線ICタグ5cはスキャナユニット5に対して、取り外し可能に貼付しているので、取り扱いが簡単である。例えば、パラメータ値が誤っていたときにも、そのICタグを取り外して正しいデータを書き込み、再度スキャナユニットに貼り付けるか、正しいパラメータが記憶された他のICタグを貼り付ければよい。また、ICタグライタ(不図示)は無線でデータ書き込みができるので、ICタグ5cをスキャナユニット5に、データ送受が可能な範囲で埋め込んでしまってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理部の要部構成を示したブロック図である。
【図3】パラメータ設定動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 制御手段(パラメータ設定手段)
4 読取部
4a 読取機構駆動部
4b 画像処理部
5 スキャナユニット
5a 読取機構
5b CCD
5c 無線ICタグ
6 無線ICタグリーダ
7 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に着脱可能なスキャナユニットと、スキャナの特性パラメータを有し、この特性パラメータを使用して、スキャナごとの特性のばらつきを補償して画像読取処理を行う読取部とを備えている画像読取装置であって、
上記スキャナユニットには、そのスキャナに対応した特性パラメータを記憶保存した無線ICタグを取り付けており、
内蔵アンテナを介して、無線ICタグとの間で電波を送受し、ICタグに記憶させた情報を読み取る無線ICタグリーダと、
無線ICタグリーダに特性パラメータを読み取らせ、読み取った特性パラメータを上記読取部に対して書き換え設定するパラメータ設定手段とを備えている画像読取装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記無線ICタグは、上記スキャナユニットの適所に貼付されている画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記パラメータ設定手段は、スキャナユニットを装置本体に装着した時に、電源立上時に、または/および、所定操作がされた時に稼動することを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記特性パラメータは、所定の補正用パラメータであることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−67151(P2006−67151A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246192(P2004−246192)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】