説明

画像読取装置

【課題】冷陰極管を点灯させるインバータと、読取部等を駆動する機構とが共通の電源回路に接続されている画像読取装置において、機構が作動中であっても、冷陰極管の点灯が不必要であれば半点灯させる。
【解決手段】
制御に応じて、作動用電源と、より低電圧の省電力用電源とのいずれかを選択して出力する電圧切換式の電源回路と、電源回路から供給された電源の電圧を、そのまま、あるいは降下させてインバータに供給する電圧調整回路と、電源回路と電圧調整回路とを制御し、前記原稿を読み取るとき以外では、作動用電源の電圧を降下させてインバータに供給するか、あるいは省電力用電源をそのままインバータに供給し、冷陰極管を半点灯させる電源電圧制御部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極管を光源として原稿を読み取る画像読取装置における電源電圧の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷陰極管を光源として原稿を読み取る画像読取装置では、小型のために、管径が小さい冷陰極管を採用する例が増えている。冷陰極管は、管内に水銀を封入しており、フィラメントから放電した電子が水銀蒸気に衝突したときに発生する紫外線を、蛍光塗料によって可視光に変換することで発光する仕組みであるが、管径が小さいと、水銀が充分気化して発光量が安定するまでの時間が長くなる傾向がある。そこで、指令を待機している間も冷陰極管は点灯させておくことが考えられるが、冷陰極管は、点灯中に、徐々に劣化していくため、常に点灯させておくと、早く寿命がくるという問題が生じる。
【0003】
上記のような画像読取装置に関する従来技術の例として、次の特許文献1には、指令を待機している間は電源電圧を降下させて冷陰極管を低輝度で点灯(半点灯)させ、それによって、水銀の気化状態を維持することが記載されている。また、特許文献2には、装置の稼働状態の記録あるいは環境(温度、湿度)に基づき、点灯のデューティ比を可変するランプ制御の方法が記載されている。なお、冷陰極管のインバータとしての例は、特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開2005−184171公報
【特許文献2】特開平10−336390号公報
【特許文献3】特開平11−026181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小型の画像読取装置では、冷陰極管を点灯させるインバータと、読取部等を駆動する機構とが共通の電源回路に接続されていることが多い。この場合、冷陰極管の点灯が不必要な時には、冷陰極管を半点灯させたいところであるが、電源の電圧を降下させ半点灯にすれば、機構部を作動させることができなくなるという問題があった。具体的な例では、複合機等で印刷動作のみを行っているときには、読取部の冷陰極管は半点灯させることが望ましいが、印刷部を正常に作動させるために電源電圧を下げることができなかった。
本発明は、このような問題の解決を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による画像読取装置は、インバータによって点灯される冷陰極管を有し原稿を読み取る読取部と、制御に応じて、前記読取部を作動させる作動用電源と、より低電圧の省電力用電源とのいずれかを選択して出力する電圧切換式の電源回路と、前記電源回路から供給された電源の電圧を、制御に応じてそのまま、あるいは降下させて前記インバータに供給する電圧調整回路と、前記電源回路と前記電圧調整回路とを制御し、前記原稿を読み取るときには、前記作動用電源をそのまま前記インバータに供給することで前記冷陰極管を全点灯させる一方、前記原稿を読み取るとき以外では、前記作動用電源の電圧を降下させて前記インバータに供給するか、あるいは前記省電力用電源をそのまま前記インバータに供給することで、前記冷陰極管を半点灯させる電源電圧制御部とを備えている。
【0006】
前記電圧調整回路は、PWM制御されるスイッチング素子と、平滑回路とで構成してもよい。また、前記電源電圧制御部は、前記電圧調整回路の出力電圧を監視する監視回路を備え、前記電圧調整回路をフィードバック制御してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明による画像読取装置では、電源回路から作動用電源を供給して、読取部等の機構を作動させている間も、冷陰極管を全点灯させる必要がなければ、作動用電源の電圧を降下させてインバータに供給して冷陰極管を半点灯させることで、すぐに全点灯可能な状態を持続させ、かつ冷陰極管の経時的な劣化を抑制できる。
【0008】
また、読取部等を作動させる必要がなければ、電源回路からより低電圧の省電力用電源を供給して消費電力を抑制でき、その場合でも、省電力用電源をそのままインバータに供給して冷陰極管を半点灯させているので、すぐに操作に応じて全点灯できる。
【0009】
電圧調整回路をPWM制御されるスイッチング素子と、平滑回路とで構成したものでは、回路構成が簡単であり、部品点数が少なくて済む。また、電圧調整回路をフィードバック制御するものでは、作動用電源を降下させてインバータに供給する際、最適な電圧まで降下できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図に従って説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した画像読取装置の構成を説明する機能ブロック図で、オペレータの操作により原稿を読み取って、記録紙に印刷する基本機能を有したコピー機として構成している。しかしながら、この図では、本発明に特に関連しない構成要素は省略している。なお、本発明は、コピー機に限定されず、スキャナ、ファクシミリ複合機等、冷陰極管を光源として有し原稿を読み取る機能を有した装置に適用できる。
【0012】
画像読取装置1は、基本構成として、インバータ17によって点灯される冷陰極管11を有し原稿を読み取る読取部12と、記録紙に画像を印刷する印刷部13と、制御に応じて、読取部12および印刷部13を作動させる作動用電源と、より低電圧の省電力用電源とのいずれかを選択して出力する電圧切換式の電源回路14と、電源回路14から供給された電源の電圧をそのまま、あるいは降下させてインバータ17に供給する電圧調整回路16と、電源回路14と電圧調整回路16とを制御する電源電圧制御部18と、電圧調整回路16の出力電圧を監視するための監視回路19と、オペレータの操作を受け付ける図示しない操作部、画像データを記憶する図示しない画像メモリ、図示しない画像処理回路等を備えている。
【0013】
読取部12は、冷陰極管11を光源として、原稿からの反射光を例えばCharge Coupled Device(CCD)等の撮像素子で走査撮影するが、その際、原稿に対して、光源および撮像素子で構成された光学系を相対的に移動させるための機構部を備えている。機構部は、ステッピングモータ等によって駆動するが、その駆動時には、作動用電源を供給する必要がある。なお、撮影によって生成される画像データは、単色、カラーのいずれでもよい。
【0014】
印刷部13は、読取部12で生成された画像データを記録紙に印刷する。印刷方式に制限はなく、例えば、インクジェット方式、トナーによる写真印刷などを採用できる。また、記録紙および印刷ヘッドを移動させるための機構部を備えており、読取部12と同様に、機構部の駆動時には、作動用電源を供給する必要がある。
【0015】
電源回路14は、電源電圧制御部18の制御に応じて、作動用電源と省電力用電源とのいずれかを選択して出力するが、具体例としては、例えば、作動用電源としてDC24Vを出力し、省電力用電源としてDC18Vを出力する。
【0016】
電圧調整回路16は、詳細は後述するが、電源電圧制御部18の制御に応じて、電点回路14から供給された電圧を所望の電圧に降下させてインバータ17に供給し、あるいは電源の供給を停止する。
【0017】
インバータ17は、冷陰極管11を点灯するために、直流電源から交流電圧を発生させるが、本発明では、作動用電源が供給されたときには、冷陰極管11を全点灯させ、省電力用電源が供給されたときには、冷陰極管11を半点灯させる設計とする。ここで、全点灯は、原稿を読み取る光源としての規定の輝度での点灯を意味し、半点灯は、その規定の輝度よりも低いレベルでの点灯を意味する。
【0018】
電源電圧制御部18は、電源回路14と電圧調整回路16とを制御し、原稿を読み取るときには、作動用電源をそのままインバータ17に供給することで冷陰極管11を全点灯させる一方、原稿を読み取るとき以外では、作動用電源の電圧を降下させてインバータ17に供給するか、あるいは省電力用電源をそのままインバータ17に供給して、冷陰極管11を半点灯させる。
【0019】
すなわち、電源回路14から作動用電源を供給して、印刷部13あるいは読取部12の機構を作動させている間も、冷陰極管11を全点灯させる必要がなければ、作動用電源の電圧を降下させてインバータ17に供給して冷陰極管11を半点灯させておき、すぐに全点灯可能な状態を持続させる。また、印刷部13や読取部12を作動させる必要がなければ、電源回路14からより低電圧の省電力用電源を供給して消費電力を抑制すると共に、その省電力用電源をそのままインバータに供給して冷陰極管11を半点灯させておき、すぐに全点灯可能な状態を持続させる。このようにして、冷陰極管11を適宜半点灯させれば、その経時的な劣化が抑制される。
【0020】
図2は、電圧調整回路16の具体的な回路の一例である。この回路は、電界効果トランジスタであるスイッチング素子Qと、コイルLおよびコンデンサCからなる平滑回路とで構成され、電源電圧制御部18がスイッチング素子QをPulse Width Modulation(PWM)によって制御する。つまり、スイッチング素子をオンオフするデューティ比の調整により、電源回路14が供給する電源の電圧VDを所望の電圧VLまで降下させて、インバータ17に供給する。
【0021】
図3は、電源電圧制御部18が、電源調整回路16の出力する電圧VLを監視するための監視回路の構成を説明する図面である。この監視回路19は、抵抗R1、R2からなる分圧回路と、アナログデジタル(A/D)変換器とで構成されている。電源電圧制御部18は、A/D変換器の出力を読み取り、電圧調整回路16のスイッチング素子Qをフィードバック制御して、機用電源が最適な電圧になるよう調整する。
【0022】
図4は、画像読取装置1における電源電圧の制御に関する基本的な状態遷移図である。
【0023】
電源オフ状態(ステート1)では、電源回路14は電源を供給しておらず、ランプは消灯状態である。この状態で電源投入の操作が入力されると、ランプ立ち上げ状態(ステート2)に遷移する。
【0024】
ランプ立ち上げ状態(ステート2)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から作動用電源を出力させ、かつ電圧調整回路16によって作動用電源をそのまま出力させて、インバータ17に供給する。その結果、冷陰極管11の点灯動作が開始される。その後、所定時間、つまり冷陰極管11に封入された水銀が充分に気化して放電が安定すると予測した時間の経過後、状態は、待機状態(ステート3)に自動的に遷移する。なお、冷陰極管11の明るさを計測する照度計を設ける、あるいは読取部12のCCDの出力信号を用いて、全点灯したことを確認してから待機状態(ステート3)に遷移するようにしてもよい。
【0025】
待機状態(ステート3)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から作動用電源を出力させ、かつ、電圧調整回路16によって作動用電源の電圧を省電力用電源と等しい電圧まで降下させてから、インバータ17に供給する。その結果、冷陰極管11は半点灯する。待機状態(ステート3)は、読取ジョブあるいは印刷ジョブの指令を待機している状態であり、読取ジョブが指令されれば直ちに読取ジョブ実行状態(ステート4)に遷移し、印刷ジョブが指令されれば直ちに印刷ジョブ実行状態(ステート5)に遷移する。また、所定時間、読取ジョブも印刷ジョブも指令されなければ、自動的に電力セーブ状態(ステート6)に遷移する。
【0026】
読取ジョブ実行状態(ステート4)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から作動用電源を出力させ、かつ電圧調整回路16から作動用電源をそのまま出力させてインバータ17に供給する。なお、待機状態(ステート3)では、冷陰極管11は半点灯していたので、読取ジョブ実行状態(ステート4)になった時点で直ちに全点灯できる。読取ジョブ実行状態(ステート4)は、ジョブが完了すれば、待機状態(ステート3)に遷移する。
【0027】
印刷ジョブ実行状態(ステート5)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から作動用電源を出力させ、かつ、電圧調整回路16によって作動用電源の電圧を省電力用電源と等しい電圧まで降下させてから、インバータ17に供給する。つまり、電源に対する制御は、待機状態(ステート3)から変化しない。また、印刷ジョブ実行状態(ステート5)は、ジョブが完了すれば、待機状態(ステート3)に遷移する。
【0028】
電力セーブ状態(ステート6)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から省電力用電源を出力させ、かつ、かつ電圧調整回路16によって省電力用電源をそのまま出力させてインバータ17に供給する。待機状態(ステート3)と比較すれば、電源回路14が出力する電源の電圧が降下しているので、電力はセーブされるが、インバータ17には、省電力用電源が供給されているので、冷陰極管11は半点灯する。電力セーブ状態(ステート6)は、操作等によって読取ジョブあるいは印刷ジョブが指令されれば、待機状態(ステート3)を経由して、指令された読取ジョブ実行状態(ステート4)あるいは印刷ジョブ実行状態(ステート5)に遷移する。また、所定時間、操作がなければ、スリープ状態(ステート7)に遷移する。
【0029】
スリープ状態(ステート7)では、電源電圧制御部18は、電源回路14から省電力用電源を出力させ、かつ、電圧調整回路16によってインバータ17に対する電源の供給を停止する。これによって、冷陰極管11は消灯し、電力セーブ状態(ステート6)よりも更に電力がセーブされる。スリープ状態(ステート7)は、操作等によって読取ジョブあるいは印刷ジョブが指令されれば、ランプ立ち上げ状態(ステート2)と、待機状態(ステート3)を経由して、指令された読取ジョブ実行状態(ステート4)あるいは印刷ジョブ実行状態(ステート5)に遷移する。
【0030】
図5は、上記状態遷移図に対応した状態遷移を時系列的に示したタイムチャートで、冷陰極管11の点灯状態と、電源回路14が出力する電源の状態との時間変化を各ステートに対応させて示している。
【0031】
ここで、時刻T1〜T2はランプ立ち上げ状態(ステート2)、時刻T2〜T3は待機状態(ステート3)、時刻T4〜T5は読取ジョブ実行状態(ステート4)、時刻T5〜T6は印刷ジョブ実行状態(ステート5)、時刻T6〜T7は待機状態(ステート3)、時刻T7〜T8は電力セーブ状態(ステート6)、時刻T8〜T9はスリープ状態(ステート7)になっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した画像読取装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】電圧調整回路な回路の一例である。
【図3】監視回路の構成を説明する図面である。
【図4】電源電圧の制御に関する基本的な状態遷移図である。
【図5】状態遷移を時系列的に示したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 画像読取装置
11 冷陰極管
12 読取部
14 電源回路
16 電圧調整回路
17 インバータ
18 電源電圧制御部
19 監視回路
Q スイッチング素子
L コイル
C コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータによって点灯される冷陰極管を有し原稿を読み取る読取部と、
制御に応じて、前記読取部を作動させる作動用電源と、より低電圧の省電力用電源とのいずれかを選択して出力する電圧切換式の電源回路と、
前記電源回路から供給された電源の電圧を、制御に応じてそのまま、あるいは降下させて前記インバータに供給する電圧調整回路と、
前記電源回路と前記電圧調整回路とを制御し、前記原稿を読み取るときには、前記作動用電源をそのまま前記インバータに供給することで前記冷陰極管を全点灯させる一方、前記原稿を読み取るとき以外では、前記作動用電源の電圧を降下させて前記インバータに供給するか、あるいは前記省電力用電源をそのまま前記インバータに供給することで、前記冷陰極管を半点灯させる電源電圧制御部とを備えた画像読取装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電圧調整回路は、PWM制御されるスイッチング素子と、平滑回路とで構成されていることを特徴とした画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電源電圧制御部は、前記電圧調整回路の出力電圧を監視する監視回路を備え、前記電圧調整回路をフィードバック制御することを特徴とした画像読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−42679(P2009−42679A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210240(P2007−210240)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】