説明

画像読取装置

【課題】製品状態において取り外してスキャナ筐体内を清掃することが困難な場合に、スキャナ筐体内に入り込んで読取モジュールのカバーガラス上に乗ったゴミ、埃等の異物の除去を、ユーザが清掃を意識することなく行える、さらにはカバーガラス上に異物が乗りにくい画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置1には画像の読取りのための読取モジュール33が備えられ、ホームポジションに位置する状態の読取モジュール33及びブラケット34は、回動軸35を中心にして90度回動可能とされている。カバー面が鉛直方向と平行となる姿勢になるまで傾けることにより、画像読取装置1の外部から混入してカバー面上に乗ったゴミや埃等の異物を落とすことができ、カバー面上に乗った異物が画像の読取りの精度を劣化させることが抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、またはコピアにおいて、原稿自動送り装置(ADF:Automatic Document Feeder)におけるADFコンタクトガラスの表面(原稿搬送面)や裏面、さらには読取モジュールのカバーガラス面、ミラー面などの光学系にゴミ、埃等の異物が付着する場合がある。
【0003】
これらのゴミ、埃等の異物がCCD読取ライン上にある場合、原稿の読取りの際に、原稿搬送方向へのいわゆる「縦すじ」になることが知られている。縦すじは本来の原稿上の画像には存在しないものであり、したがって、縦すじのあるスキャン出力画像もしくはコピー画像はユーザにとっては異常画像である。
【0004】
この異常を解消するため電気的・ソフト的には、ゴミ、埃を検出しデータに逆補正を掛けることにより、すじの程度を軽減しようと言う従来例が知られている。しかしながらそれらは読み取ったデータの補正であり、完全には除去しきれない。また、ゴミ、埃の検出が不完全な場合には効果が無い。
【0005】
また下記特許文献のように、ガラスの清掃、もしくはゴミ、埃の溜めを作るという技術によって、異常の原因となるゴミ、埃を除去するという直接的な解決方法がある。下記特許文献1では、ADFユニット内基準反射板の上部に、フェルト状のクリーナを装着した塵埃除去装置を、原稿一枚搬送するごとに回転させ、光路経路上にある読み取りガラスを清掃する。しかしながらこれは、ガラスの原稿通過面側の清掃技術である。
【0006】
また下記特許文献2では、紙粉等の異物を収容しておき、任意の時期にADF用プラテンガラスを外して清掃できるようにする。これは原稿通紙により運ばれてくるゴミを溜めるゴミ箱を通紙経路に設けある時期にガラスを取り外し清掃するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−164863号公報
【特許文献2】特開2002−165059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしこれらはADFコンタクトガラス表面(原稿通過面)のゴミ、埃対策である。従来の中級スキャナ、コピアでは、ADFコンタクトガラスを取り外せる構造となっているものが大多数であり、ADFコンタクトガラス裏面にゴミ、埃が付着した場合は、ADFコンタクトガラスを取り外し清掃することで対応されている。
【0009】
しかし最近の低価格層のスキャナ、スキャナプリンタ一体型においては、ADFコンタクトガラスが取り外しできない構造が多い。このような装置においては、スキャナ筐体内に入り込んで読取モジュールのカバーガラス上にゴミ、埃が付着すると、簡単な手順で清掃のしようが無く、市場ユーザでは対応方法が無かった。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、製品状態において取り外してスキャナ筐体内を清掃することが困難な場合に、スキャナ筐体内に入り込んで読取モジュールのカバーガラス上に乗ったゴミ、埃等の異物の除去を、ユーザが清掃を意識することなく行える、さらにはカバーガラス上に異物が乗りにくい画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、上方に配置されたシートの表面に形成された画像を読み取る読取部と、前記読取部が読取処理を実行する状態において前記読取部と前記シートとの間の第1位置に位置して上面をカバー面として上方から前記読取部を覆うように配置され、前記読取部が前記シート上に形成された前記画像を読み取ることが可能なように透光性の材料で形成されたカバー部材と、前記カバー部材を、前記カバー面が前記シートに対向する前記第1位置から、前記カバー面が倒立またはその倒立状態付近まで傾斜した第2位置まで回動可能に支持する回動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより本発明に係る画像読取装置では、読取部を上方から覆うカバー部材を、カバー面上に異物が乗ることが抑制される角度へカバー部材を回動させることが可能であるので、カバー部材を回動させるという簡易な方法で、カバー面上にごみや埃などの異物が乗ることを抑制し、またカバー面上にごみや埃などの異物が乗った場合はそれらを落とすことができる。さらにカバー部材を回動させることは簡素な構造で達成できるので、簡易な構造を構築するのみでカバー面上に異物が乗らないようにして読取画像が異常となる事態を抑制できる。
【0013】
また前記カバー部材が回動するように前記回動機構を駆動する駆動部と、前記読取部が読取処理を実行していない期間に、前記駆動部に前記回動機構を駆動させて、前記カバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動させる制御部を備えたとしてもよい。
【0014】
これにより本発明に係る画像読取装置では、読取部を上方から覆うカバー部材を、読取部が読取処理を実行していない期間に、駆動部により駆動して、カバー面上に乗った異物が落ちることが可能な角度へカバー部材を回動するように制御するので、自動的にカバー面上に乗った異物を落とすことが可能となる。したがって、使用者に清掃行為をさせる必要がなく、使用者にとって利便性が高い。さらに読取部が読取処理を実行していない期間に行うので、カバー部材の回動が読取処理に影響を与えず、かつ読取部が読取処理を実行していない期間を有効に利用することともなる。
【0015】
また前記シートを自動的に給送する給送部が着脱可能に装備されており、前記制御部は、前記給送部が装着されており、前記読取部による画像の読取りのために待機している状態において、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように制御する第1制御手段を備えたとしてもよい。
【0016】
これにより給送部が装着されている場合に待機状態の読取部を回動させるシステムが構築できる。したがって給送部が装着されている場合には給送部を使用した画像読取中に紙粉などが装置内に混入する可能性があることが指摘されているが、これを原因としてカバー面に異物が乗ることが抑制できる。
【0017】
また前記読取部による画像の読取りを複写処理の一部として用いる複写部を備え、前記制御部は、前記複写部が複写処理を実行し、前記読取部が画像の読取りのために待機している状態において、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように制御する第2制御手段を備えたとしてもよい。
【0018】
これにより複写処理を実行する状態において、待機状態の読取部を回動させるシステムが構築できる。したがって複写処理の場合には、例えばスキャナ処理などのように画像データを保存しておいて後で同データを修正することが不可能なので、カバー面上に異物が乗らないようにすることが極めて重要であるが、この課題に好適なシステムが構築できる。
【0019】
また前記カバー部材の位置を前記第2位置で固定するロック部を備えたとしてもよい。
【0020】
これにより画像読取装置を移動させている間にロック部によって読取部を固定すれば、画像読取装置を移動中に読取部が動いて破損する等の不具合が回避できるとともに、移動中にカバー面に異物が乗らないようにすることもできる。
【0021】
また前記制御部によって、前記カバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動するように制御するか否かを選択する入力を受け付ける入力部を備えたとしてもよい。
【0022】
これによりカバー部材の回動を実行するか否かを選択することができるシステムが構築できる。したがって例えば迅速な読取開始が求められ、カバー面上の異物を落とす位置から読取りのときの位置への位置の回復のために若干の時間がかかることが望ましくない場合等に、回動しないことを選択して迅速な読取開始が可能なシステムを構築できる。
【0023】
また前記読取部と対向する位置に配置されて、前記シートを前記読取部の方向へと押圧する機能を有し、表面が単一色で形成されたプラテン部と、前記シートを給送せずに前記読取部に前記プラテン部の前記表面を読み取らせるプラテン読取手段と、そのプラテン読取手段によって前記読取部に前記プラテン部の表面を読み取らせて得られた画像における色情報を解析して、前記画像に前記単一色とは異なる領域があることを検出する検出手段と、その検出手段によって前記画像に前記単一色とは異なる領域があることが検出された場合に、前記制御部に対して、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように指令を出す指令手段と、を備えたとしてもよい。
【0024】
これによりシートではなくプラテン部を読み取って色情報を解析して異物がカバー面に乗っていると判断される場合にカバー面を回動させるので、カバー面に異物が乗っているか否かを精度よく検出して、カバー面に異物が乗っている場合にカバー面を回動させるシステムが構築できる。
【0025】
また前記読取部にはCCDセンサ、及びそのCCDセンサによる画像の読取りのための光学部材の系列が装備されたとしてもよい。
【0026】
これにより広く普及しているCCDセンサ、及び光学部材の系列によって読取部が構成されている画像読取装置に対して、読取部を覆うカバー面を回動させてカバー面に乗った異物を除去するシステムが構築できる。
【0027】
また前記読取部には密着型画像センサが装備されたとしてもよい。
【0028】
これにより広く普及している密着型画像センサによって読取部が構成されている画像読取装置に対して、読取部を覆うカバー部材を回動させてカバー面に乗った異物を除去するシステムが構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態における画像読取装置の構成図。
【図2】回動軸を示す図。
【図3】読取モジュールの例を示す図。
【図4】読取モジュールの別の例を示す図。
【図5】異物検出及びカバー面回動処理を示すフローチャート。
【図6】白出力の波形の例を示す図。
【図7】制御部の詳細を示す図。
【図8】読取モジュールの回動を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明の一実施形態における画像読取装置1(スキャナ、コピア等)の構成図である。
【0031】
画像読取装置1は、いわゆる複数の機能を有する複合機(MFP:Multi−Function Peripheral、あるいはAll In One Peripheral)であるとする。画像読取装置1の図示最上部にADF2が配置され、ADF2よりも図示下方には画像読取部3が、さらに下方にはプリンタ部4が配置されている。
【0032】
ADF2は着脱可能であるとする。図1における図示上方、下方はそれぞれ鉛直方向上方、下方に対応する。ユーザは、後述する入力部390、又は51を用いて、プリンタモードやコピーモード、スキャナモード、FAXモード等、画像読取装置1の各種モードを設定できるとする。
【0033】
図1のとおり、ADF2は給紙トレイ20、排紙トレイ21、白プラテンローラ23を備えており、画像読取部3には、ADFコンタクトガラス31が備えられている。そして給紙トレイ20から、白プラテンローラ23とADFコンタクトガラス31とに挟まれた部位を通って排紙トレイ21まで原稿搬送路22が形成されている。図示しない搬送ローラが原稿搬送路の各所に配置されているとすればよい。
【0034】
給紙トレイ20上に載置された通常複数の原稿から順次1枚ずつ原稿Pが搬送されていき、図示しないモータ等によって駆動される各所に配置された搬送ローラによって、原稿搬送路22に沿って、白プラテンローラ23とADFコンタクトガラス31とに挟まれた部位へ搬送されて、さらに排紙トレイ21へ搬送されて排紙される。
【0035】
白プラテンローラ23とADFコンタクトガラス31とに挟まれた部位においては、原稿Pは白プラテンローラ23の回動によって搬送されつつ、白プラテンローラ23が図示下方へ押圧することによって原稿PがADFコンタクトガラス31へ押し付けられる。
【0036】
画像読取部3は、ADFコンタクトガラス31の他に、フラットベッドコンタクトガラス32、読取モジュール33、ブラケット34、回動軸35、レール36、モータ37、ロック部38、制御部39を備える。フラットベッドコンタクトガラス32は、ADF2を用いずにフラットベッドコンタクトガラス32上に原稿等を載置して読取モジュール33を移動させて画像を読み取るために装備されている。
【0037】
読取モジュール33はブラケット34上に固定されており、モータ37が駆動されることによってブラケット34がレール36上を移動することによって、ブラケット34とともに水平に平行移動する。図1に実線で示された読取モジュール33の位置が、読取モジュール33が位置する最左端の位置とし、この位置を読取モジュール33のホームポジション(待機位置)とする。
【0038】
読取モジュール33は、ADFコンタクトガラス31越しに画像を読み取る場合にホームポジションに位置する。また読取モジュール33は、フラットベッドコンタクトガラス32における画像の読取りが終了するとホームポジションに戻って待機するとする。
【0039】
図7には制御部39の構造が示されている。制御部39は通常のコンピュータと同様の構造で情報処理機能を有するとし、各種演算を実行するCPU391や、そのための作業領域としてのRAM392、記憶部としてのROM393等を備え、これらがバスによって接続されて情報の受け渡しが行われる。モータ37の駆動は制御部39によって指令、制御されるとする。
【0040】
原稿Pの表面(ADFコンタクトガラス31に接する面)の画像がADFコンタクトガラス30の下方に位置する読取モジュール33によって読み取られる。読取モジュール33の例が図3、4に示されている。図3の例では、読取モジュール33はCCD(Charge Coupled Device(電荷結合素子))センサ332を備えている。図4の例では、読取モジュール33は密着型画像センサ337(CIS:Contact Image Sensor)を備えている。
【0041】
図3では、CCDセンサ332、及び複数のミラー330、レンズ331、光源335が筐体333の中に収容されている。光源335は例えば白色蛍光ランプとすればよい。筐体333の図示上部はカバーガラス334とされ、カバーガラス334の図示上部の面がカバー面334aである。カバーガラス334を通じて読取モジュール33による読取りがなされる。この目的のためにカバーガラス334はガラスにより形成されて透光性を有する。ここでは特に無色透明とすればよい。
【0042】
光源335が原稿Pを照射することにより得られた原稿Pの画像情報を含む光Lは、カバーガラス334を通って、複数のミラー330に反射した後にレンズ331で縮小されてCCDセンサ332上に結像する。結像した光LはCCDセンサ332で電気信号に変換されて画像データとなる。
【0043】
一方図4では、筐体333内には、光源335、レンズ336、CIS337が収容されている。光源335は例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のLED(発光ダイオード)が高速に交替で照射するタイプとすればよい。
【0044】
こうした光源335が原稿Pを照射することにより得られた原稿Pの画像を含む光Lは、カバーガラス334を通って、さらにレンズ336を通ってCIS337上に結像する。結像した光LはCIS337で電気信号に変換されて画像データとなる。
【0045】
本発明の主要な特徴は、ホームポジションに位置する状態の読取モジュール33及びブラケット34が、回動軸35を中心にして回動可能とされていることである。この回動では読取モジュール33のカバー面334aが鉛直方向と平行となる位置にまで、つまり90度回動できるとする。回動軸35(の軸方向)はレール36の方向及び鉛直方向と垂直な方向とすればよい。
【0046】
図8に、読取モジュール33及びブラケット34の回動の詳細が示されている。図8(a)が読取モジュール33が読取処理を実行するときの位置であり、図8(b)が読取モジュール33及びブラケット34が回動軸35回りに90度回動した位置である。図8(a)における読取モジュール33(及びブラケット34)の位置を第1位置とし、図8(b)における読取モジュール33(及びブラケット34)の位置を第2位置とする。第1位置ではカバー面334aは水平面と平行であり、第2位置ではカバー面334aは鉛直方向と平行である。
【0047】
読取モジュール33(及びブラケット34)を第2位置に回動して、カバー面334aを鉛直方向と平行な姿勢にすることにより、画像読取装置1の外部から混入してカバー面334a上に乗ったゴミや埃等の異物を落とすことができる。したがってカバー面334a上に乗った異物が画像の読取りの精度を劣化させることが抑制できる。読取モジュール33はモータ37によって駆動されて回動軸35周りに回動する。この回動は制御部39によって指令、制御されるとする。
【0048】
読取モジュール33を90度回動する期間は、読取モジュール33が画像の読取りを実行していない期間とすればよい。また読取モジュール33の回動は、読取モジュール33がホームポジションにあるときのみ実行するとすればよい。レール36は読取モジュール33が90度回動したときに障害とならない位置に配置する。
【0049】
また図1から容易に理解できるように、読取モジュール33が90度回動したときにADFコンタクトガラス31と接触しないようにするためには、回動軸35をブラケット35の中心からずらした位置になるように配置するのが好適である。ここで中心とはレール36と平行な方向における位置である。
【0050】
制御部39は、ADF2が装着されている場合は、読取モジュール33がホームポジションに位置している状態、すなわち待機状態で常に読取モジュール33を90度回動させて、カバー面334aが鉛直方向と平行となる姿勢になるように制御してもよい。この制御はプログラム化して、図7のとおりプログラム394としてROM393に記憶しておき、CPU391が自動的に実行すればよい。ADF2での読取中に画像読取装置1内に紙粉などのゴミや埃が混入する可能性があることが指摘されているので、上記制御によってそれらがカバー面334a上に乗る不具合が抑制できる。
【0051】
また制御部39は、コピーモードに設定されている間、読取モジュール33がホームポジションに位置した待機状態では、常に読取モジュール33を90度回動させてカバー面334aが鉛直方向と平行となる姿勢になるように制御してもよい。この制御はプログラム化して、図7のとおりプログラム395としてROM393に記憶しておき、CPU391が自動的に実行すればよい。
【0052】
コピーモードにおいては画像読取部3による画像の読取り後に直ちにプリンタ部4で印刷するので、スキャナ動作のように画像データを保存しておいて後で同データを修正することが不可能である。したがってコピーモードではカバー面334a上に異物が乗らないようにすることが極めて重要である。上記制御によって、コピーモードにおいてカバー面334a上に異物が乗ることが抑制される。
【0053】
図2は回動軸35の拡大図である。回動軸35は軸受351によって支持されており、軸受351はブラケット34に固定されている。これによりブラケット34は回動軸35回りを回動可能となる。回動軸35には図2に示すような凸部352が形成されており、軸受351には2ヶ所の凹部353、354が形成されている。
【0054】
凹部353、354の間の間隔(中心角)は90度とすればよい。ブラケット34が回動する際に、凸部352が凹部353か凹部354に係合することによって、ブラケット34の位置が固定できる。これにより、カバー面334aが水平方向と平行となる姿勢(第1位置)と、鉛直方向と平行となる姿勢(第2位置)とが簡易な方法で安定的に固定できる。
【0055】
さらに画像読取部3には、図1のとおりロック部38が装備されている。ロック部38は上下方向に平行移動可能となっており、画像読取部3の外部に突出したつまみ部を持ってユーザが上下に動かすことができる。カバー面334aが水平方向と平行の姿勢にあるときにユーザが上方にロック部38を押し上げると、ロック部38の凸部がブラケット34の凹部(図示なし)に係合して、カバー面334aをその位置で固定できる。同様にカバー面334aが鉛直方向と平行の姿勢にあるときにユーザが上方にロック部38を押し上げると、ロック部38の凸部が筐体33の凹部(図示なし)に係合して、カバー面334aをその位置で固定できる。
【0056】
これにより画像読取装置1を移動させている間はロック部によって読取モジュール33の姿勢を固定すれば、移動中に読取モジュール33が動いて破損する等の不具合が回避できるとともに、移動中にカバー面334aに異物が乗らないようにすることも可能となる。
【0057】
また図1のとおり制御部39は入力部390を備える。さらに制御部39は外部のパーソナルコンピュータ5(PC)とも接続可能である。入力部390、あるいはPC5の入力部51を用いることによってユーザが、上述したADF2装着時、あるいはコピーモード時にホームポジションで待機状態にある読取モジュール33を常に90度回動させるか否かを選択することができるとしてもよい。
【0058】
このように選択できるようにする理由は、読取モジュール33を90度回動させたくない場合があり得るからである。90度回動させたくない場合の例としては、迅速な読取開始が求められる場合があげられる。待機状態で90度回動させるとすると、その姿勢から読取りを開始するまでに姿勢回復のために若干の時間がかかるからである。
【0059】
本実施形態では、カバー面334a上に異物があるかどうかを、白プラテンローラ23を読み取って解析することで判定する機能を付加してもよい。この処理は具体的には図5のように実行される。図5の処理手順ではまず手順S10で、ユーザが入力部390あるいは51を用いて白プラテンローラ読取実行を指令する。これを受けて、原稿Pを給紙せずに読取モジュール33で白プラテンローラ23の表面を読み取る。
【0060】
次にS20で、読み取って得られた画像データが制御部39に送られて色情報が解析される。この解析によって例えば図6に示された白出力の波形が得られる。図6の縦軸はセンサ332又は337の画素における白色の検出値である。白プラテンローラ23の表面は白の単一色とされており、読取モジュール33のカバー面334a上に異物があると、図6のとおり白出力の波形に出力低下部が発生する。
【0061】
制御部39は、この出力低下分Vcの数値を測定し、この数値が所定の閾値を越えたら、S30で読取モジュール33のカバー面334a上に異物があると判定する。カバー面334a上に異物があると判定された場合(S30:YES)はS40に進み、異物がないと判定された場合(S30:NO)は図5の処理を終了する。S40では読取モジュール33を90度回動させて、カバー面334aを鉛直方向と平行な姿勢にしてカバー面334a上の異物を落とす。以上が図5の処理手順である。
【0062】
なお上記実施形態で90度とした回動角度は、90度に限定はされず、カバー面334a上に乗った異物が落ちることが可能な角度であればよい。この目的のためには、例えば60度、70度、あるいは80度から90度、100度、あるいは110度までの範囲内の角度でも好適である。
【0063】
上記実施形態で、図3におけるミラー330、レンズ331、CCDセンサ332、光源335、筐体333が、図4におけるレンズ336、CIS337、光源335、筐体333が読取部を構成する。ブラケット34と回動軸35と筐体333とが回動機構を構成する。画像読取部3とプリンタ部4とが複写部を構成する。S10の手順がプラテン読取手段を構成する。S20の手順が検出手段を構成する。S40が指令手段を構成する。ミラー330、レンズ331が光学部材を構成する。
【符号の説明】
【0064】
1 画像読取装置
2 ADF(給送部)
3 画像読取部
4 プリンタ部
23 白プラテンローラ(プラテン部)
31 ADFコンタクトガラス
33 読取モジュール
34 ブラケット
35 回動軸
37 モータ(駆動部)
38 ロック部
39 制御部
332 CCDセンサ
334 カバーガラス(カバー部材)
334a カバー面
337 密着型画像センサ
394 プログラム(第1制御手段)
395 プログラム(第2制御手段)
P 原稿(シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に配置されたシートの表面に形成された画像を読み取る読取部と、
前記読取部が読取処理を実行する状態において前記読取部と前記シートとの間の第1位置に位置して上面をカバー面として上方から前記読取部を覆うように配置され、前記読取部が前記シート上に形成された前記画像を読み取ることが可能なように透光性の材料で形成されたカバー部材と、
前記カバー部材を、前記カバー面が前記シートに対向する前記第1位置から、前記カバー面が倒立またはその倒立状態付近まで傾斜した第2位置まで回動可能に支持する回動機構と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記カバー部材が回動するように前記回動機構を駆動する駆動部と、
前記読取部が読取処理を実行していない期間に、前記駆動部に前記回動機構を駆動させて、前記カバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動させる制御部を備えた請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記シートを自動的に給送する給送部が着脱可能に装備されており、
前記制御部は、前記給送部が装着されており、前記読取部による画像の読取りのために待機している状態において、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように制御する第1制御手段を備えた請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取部による画像の読取りを複写処理の一部として用いる複写部を備え、
前記制御部は、前記複写部が複写処理を実行し、前記読取部が画像の読取りのために待機している状態において、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように制御する第2制御手段を備えた請求項2又は3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記カバー部材の位置を前記第2位置で固定するロック部を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部によって、前記カバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動するように制御するか否かを選択する入力を受け付ける入力部を備えた請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取部と対向する位置に配置されて、前記シートを前記読取部の方向へと押圧する機能を有し、表面が単一色で形成されたプラテン部と、
前記シートを給送せずに前記読取部に前記プラテン部の前記表面を読み取らせるプラテン読取手段と、
そのプラテン読取手段によって前記読取部に前記プラテン部の表面を読み取らせて得られた画像における色情報を解析して、前記画像に前記単一色とは異なる領域があることを検出する検出手段と、
その検出手段によって前記画像に前記単一色とは異なる領域があることが検出された場合に、前記制御部に対して、前記カバー部材の位置が前記第2位置になるように指令を出す指令手段と、
を備えた請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記読取部にはCCDセンサ、及びそのCCDセンサによる画像の読取りのための光学部材の系列が装備された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記読取部には密着型画像センサが装備された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−161700(P2010−161700A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3432(P2009−3432)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】