説明

画像読取装置

【課題】装置を小型化し、また、複雑な信号処理を用いずとも歪みの少ない良質な画像を取得可能として低価格化を図る。
【解決手段】表面に指6が載置されるとともに、指6によって押圧される押圧位置を副走査方向の座標情報で出力するタッチパネル5と、タッチパネル5上に載置された指6をタッチパネル5の裏面側から主走査方向に撮影し、画像信号を出力するCCD12と、タッチパネル5から出力される座標情報に基づき、タッチパネル5上での指6の押圧位置の移動量を検出する移動検出手段22と、移動検出手段22で検出される移動量に基づき、CCD12から出力される画像信号を選択的に有効化する画像選別手段26と、画像選別手段26で有効化された画像信号を記憶するメモリ27と、移動検出手段22で検出される移動量に基づき、指6の転動に追従させてCCD12を副走査方向に移動させるモータ28とを備えた画像読取装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知台の表面上で被写体を転動させながら、検知台の裏面側から被写体を撮影し、被写体の表面像を読み取る画像読取装置に関し、特に、指の回転指紋を読み取るのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人を特定する方法の1つとして、指紋を利用するものがあり、この方法では、指紋の画像を装置に入力し、その入力された画像と予め登録された指紋の画像とを照合するのが一般的である。指紋画像の入力方法としては、インクを付着させた指を紙面に押し付けて指紋を転写させ、その後、指紋を転写させた紙面をイメージスキャナで読み取る方法が採られる。また、指の側面まで含む広い範囲の指紋が必要な場合は、インクを付着させた指を紙面上で転がすように回転移動させ、指全体の指紋(回転指紋)を紙面に転写させる。
【0003】
しかし、上記の方法では、指がインクで汚れたり、紙が必要になるといった問題があり、特に、指を転動させて指紋を転写させる場合には、紙面上で適切に指を転動させないと何度でもやり直しになるため、その都度、指に付着したインクを拭き取ったり、新たな紙が必要になる。これに加え、上記の方法では、指紋を転写させた紙を逐一イメージスキャナで読み取ってデータ化する必要もあるため、全体として手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1〜3には、図20に示すように、三角プリズム(光学プリズム)81の検知面82に指83を載置させるとともに、光源84によって下方から指83に光を照射し、CCD(固体撮像素子)等の2次元センサを搭載したデジタルカメラ85によって回転指紋像を撮影する画像読取装置80が提案されている。
【0005】
回転指紋像の取得にあたっては、例えば、30fps〜60fpsのフレームレートでデジタルカメラ85を連続駆動し、その間に、被検者に指83を検知面82上で転動させ、指83の一方の側面から他方の側面までの全体像を動画として撮影する。その後、動画撮影で得られた複数フレームの画像を合成処理部86によって合成し、1枚の静止画像を生成する。これにより、指83の一方の側面から他方の側面までを1画像化した回転指紋の画像データを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3353878号公報
【特許文献2】特開2000−268162号公報
【特許文献3】特開2000−67208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に記載の画像読取装置80においては、構造的に大きなデジタルカメラを固定配置する必要があるため、デジタルカメラを配置するスペースを装置の内部に確保する必要が生じ、装置全体の大型化を招くという問題がある。
【0008】
また、上記の画像読取装置80では、複数フレームの画像から1枚の静止画像を生成するため、撮影時に指83を均一速度で転動させないと、合成後の静止画像において、画像間の繋ぎ目に歪みが生じるようになる。しかし、均一速度で指83を転動させるのは困難であり、装置側において、画像の合成時に歪みを補正したり、合成後の画像から歪みを取り除く構成を予め備えておく必要がある。このため、高度な画像補正機能が不可欠となり、信号処理用の回路やソフトウェアが複雑化して装置の高額化を招くという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、装置を小型化することができ、また、複雑な信号処理を用いずとも歪みの少ない良質な画像を取得することができ、低価格化を図ることが可能な画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、被写体を副走査方向に転動させながら該被写体の表面像を読み取る画像読取装置であって、表面に前記被写体が載置されるとともに、該載置された被写体によって押圧される押圧位置を前記副走査方向の座標情報で出力するタッチパネルと、該タッチパネル上に載置された被写体を該タッチパネルの裏面側から主走査方向に撮影し、画像信号を出力するラインセンサと、前記タッチパネルから出力される座標情報に基づき、該タッチパネル上での前記被写体の押圧位置の前記副走査方向への移動量を検出する検出手段と、該検出手段で検出される移動量に基づき、前記被写体の転動に追従させて前記ラインセンサを前記副走査方向に移動させるセンサ搬送手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、ラインセンサによってライン単位で画像信号を出力しつつ、被写体の動きに追従させてラインセンサを移動させるように構成し、被写体の表面像の読取部に追跡型のスキャナ構造を採用したため、構造的に大きなデジタルカメラを装置内に搭載する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることが可能になる。また、被写体の動きに追従させてラインセンサを移動させながら、ライン単位で被写体の表面像を読み取る構成としたため、フレーム画像(エリア画像)を合成する場合に比べて画像の繋ぎ目に歪みが生じ難く、歪みの少ない良質な画像を取得することができ、装置の低価格化を図ることが可能になる。
【0012】
上記画像読取装置において、前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから出力される画像信号を選択的に有効化する画像選別手段と、該画像選別手段で有効化された画像信号を記憶する記憶手段とを備えることができる。
【0013】
上記画像読取装置において、前記検出手段が、前記タッチパネルから出力される座標情報を定期的に参照し、前記被写体の押圧位置の副走査方向への移動量が前記ラインセンサのライン幅に相当する長さに達したことを検出する移動量検出部を備え、前記画像選別手段が、前記被写体の押圧位置の副走査方向への移動量が前記ラインセンサのライン幅に相当する長さに達したときに、前記ラインセンサから出力される画像信号を有効化することができる。
【0014】
上記構成によれば、画像の重複を回避しながら、ライン単位で順番に指紋像を得ることができる。そして、そのようにして得たライン単位の複数の画像信号を繋ぎ合わせて全体像を生成すれば、フレーム画像(エリア画像)を合成する場合に比べて画像の繋ぎ目に歪みが生じ難くなり、従来のような歪み補正処理を用いずとも、歪みの少ない良質な画像を取得することが可能になる。
【0015】
上記画像読取装置において、前記センサ搬送手段が、前記ラインセンサを前記副走査方向に搬送するモータと、前記移動量検出部の検出結果に基づいて該モータを駆動し、前記ラインセンサをライン単位で搬送させるモータドライバとを備えることができる。
【0016】
上記構成によれば、被写体の転動に合わせてラインセンサをライン単位で移動させることができ、被写体の転動に追従させてラインセンサの位置を適切に変えることが可能になる。
【0017】
上記画像読取装置において、前記検出手段が、前記タッチパネルから出力される座標情報に基づいて、前記被写体の転動方向を検出する移動方向検出部と、該移動方向検出部によって検出される転動方向及び前記タッチパネルから出力される座標情報に基づいて、前記被写体の転動方向が反転している反転期間、及び、その後の再反転で該被写体が元の位置に戻ってくるまでの復帰期間を検出する反転検出部とを備え、前記画像選別手段が、前記反転検出部が前記反転期間又は前記復帰期間を検出する期間において、前記ラインセンサから出力される全ての画像信号を無効化し、前記反転検出部が前記反転期間及び前記復帰期間のいずれも検出しない期間において、前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから出力される画像信号を選択的に有効化することができる。
【0018】
上記構成によれば、被写体の転動方向が反転している反転期間、及び、その後の再反転で被写体が元の位置に戻ってくるまでの復帰期間を検出し、これらの間において、画像信号を無効化するようにしたため、被写体を正しく転動させなかった期間に生成された画像信号を適宜廃棄することができ、繋ぎ合わせ後の画像が乱れるのを回避することが可能になる。
【0019】
上記画像読取装置において、前記ラインセンサが、前記画像信号を定期的に出力し、前記画像選別手段が、前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから定期的に出力される画像信号を、該ラインセンサの画像信号出力周期に同期して選択的に有効化することができる。
【0020】
上記構成によれば、ラインセンサを一定周期で連続駆動させておき、その出力画像信号の中から必要なものを適宜抽出する構成となるため、ラインセンサの駆動タイミングを複雑に制御(例えば、被写体の移動量を監視しながら必要なときだけラインセンサを駆動させるなど)する必要がなくなり、制御シーケンスの複雑化を回避することが可能になる。また、ラインセンサの信号出力タイミングに合わせて画像信号の有効化/無効化を切り替えることができるため、画像信号の有効化時に適正な画像信号を得ることが可能になる。
【0021】
上記画像読取装置において、前記被写体を指とし、前記表面像を該指の一方の側面から他方の側面までの回転指紋像とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、装置を小型化することができ、また、複雑な信号処理を用いずとも歪みの少ない良質な画像を取得することができ、低価格化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる画像読取装置の一実施の形態を示す外観図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【図2】図1の画像読取装置の断面図である。
【図3】図2のCCDの平面図(図2のA線矢視方向で見た図)である。
【図4】図1の画像読取装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4の座標検出手段及び移動検出手段の構成を示す図である。
【図6】押圧位置の検出方法を示す図である。
【図7】読取開始位置までの移動量の算出方法を示す図である。
【図8】指の移動量の検出方法を示す図である。
【図9】画像データの有効化/無効化の選別方法を示すタイミング図である。
【図10】図1の画像選別手段の構成を示す図である。
【図11】図1のモータ制御手段の構成を示す図である。
【図12】図1の画像読取装置の動作手順を示すメインフローチャートである。
【図13】読取ユニットの位置補正を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後の状態を示す図である。
【図14】図12の読取終了処理の動作手順を示すサブフローチャートである。
【図15】指の転動とCCDの移動との関係を示す図である。
【図16】図1の画像読取装置の動作を示すタイミング図であり、タッチパネル上に載置した指を正転方向にのみ転動させた場合の動作を示す図である。
【図17】図1の画像読取装置の動作を示すタイミング図であり、タッチパネル上に載置した指の転動方向を反転させた場合の動作を示す図である。
【図18】指の反転転動とCCDの移動との関係を示す図である。
【図19】指の押圧位置の移動量がライン幅に達したか否かを判定する方法の他の例を示す図である。
【図20】従来の画像読取装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明にかかる画像読取装置の一実施の形態を示し、同図(a)に示すように、この画像読取装置1は、スキャナ筐体2と、スキャナ筐体2内に収容され、モータ駆動により副走査方向に移動可能に構成された読取ユニット3と、スキャナ筐体2上に配置された透明のプラテンガラス4と、プラテンガラス4上に貼着された透明のタッチパネル5とから構成される。尚、図示を省略しているが、スキャナ筐体2の内側には、スライドレールが搭載され、また、読取ユニット3には、スライドレールと噛合する歯車、及び歯車を回転させるモータが搭載される。
【0026】
タッチパネル5は、図1(b)に示すように、例えば、上面視長方形状に形成され、図2に示すように、指6を載置する載置台として使用される。タッチパネル5では、図1(b)に示すように、短手方向(主走査方向)をY座標、長手方向(副走査方向)をX座標とし、指6が載置された位置を座標情報で出力する。尚、タッチパネル5のタイプには、抵抗膜方式、静電容量方式及び光学方式等があるが、いずれのものを用いてもよい。
【0027】
プラテンガラス4は、タッチパネル5上に指6が載置されるときの支持台として機能するものであり、タッチパネル5よりも強度が高い透明ガラスによって構成される。
【0028】
読取ユニット3は、図2に示すように、タッチパネル5上に載置された指6に光を照射する光源11と、画像を撮影するCCD12と、指6の指紋像をCCD12の受光面に導くミラー13及び光学レンズ14と、これら光源11、CCD12、ミラー13及び光学レンズ14を収容するユニット筐体15から構成される。
【0029】
CCD12は、1ライン単位で画像を撮影する1次元CCD(ラインセンサ)であり、図3に示すように、主走査方向に延びるように配置される。尚、CCD12の受光面の幅(ライン幅)LWは、タッチパネル5のX座標の1目盛り分の幅よりも大きい。
【0030】
図4は、画像読取装置1の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像読取装置1は、タッチパネル5上の指6の位置を検出する座標検出手段21と、座標検出手段21の検出結果に基づいて指6の移動量を検出し、移動検出信号DSを出力する移動検出手段22と、光源11と、CCD12と、画像出力信号φTGを供給してCCD12を駆動し、CCD12から定期的に画像信号(アナログ信号)ISを出力させるCCDドライバ23と、外部からの読取コマンド(読取指令)に応じて、CCDドライバ23に指示を与えるとともに、光源11を点灯させるコマンド受信部24と、CCD12から出力される画像信号ISに対してA/D変換等の所定の信号処理を施す画像信号処理部25と、座標検出手段21の移動検出信号DS及びCCDドライバ23の画像出力信号φTGに基づき、画像信号処理部25から出力される画像データ(デジタル信号)IDを有効画像データと無効画像データに選別する画像選別手段26と、画像選別手段26から出力される有効画像データを記憶するメモリ27と、読取ユニット3(図1参照)を副走査方向に移動させるステッピングモータ(以下、「モータ」という)28と、モータ28を制御するモータ制御手段29等から構成される。尚、これらの座標検出手段21〜モータ制御手段29は、いずれも図1の読取ユニット3内に搭載される。
【0031】
図5に示すように、座標検出手段21は、タッチパネル5の出力に応じて、指6がタッチパネル5上に載置されたか否かを検出し、タッチ検出信号TDを出力するタッチ検出部31と、タッチパネル5から出力されるX座標信号(指6がタッチパネル5を押圧した領域のうち、X座標方向の領域を示す信号)をA/D変換してX座標データXDを生成するX座標データ生成部32とを備える。
【0032】
また、移動検出手段22は、初期位置検出部41、開始位置算出部42、現在位置検出部43、移動量検出部44及び反転検出部45を備える。
【0033】
初期位置検出部41は、タッチ検出部31のタッチ検出信号TD及びX座標データ生成部32のX座標データXDに基づいて、指6がタッチパネル5を最初に押圧した位置(被検者が最初に指6を置いた位置)を検出し、検出した位置のX座標データを示す初期位置データX0を出力する。
【0034】
ここで、図6に示すように、副走査方向(X座標方向)における指6の押圧範囲は、タッチパネル5のX座標の1目盛り分の幅よりもはるかに大きいため、X座標データ生成部32から初期位置検出部41に与えられるX座標データXDは、左端のX座標データXD1から右端のX座標データXD2までの複数目盛り分の値となる。初期位置検出部41では、X座標データXD2から指6の内側に向かう方向へ所定量rだけ減算、又は、X座標データXD1から指6の内側に向かう方向へ所定量rだけ加算して座標値を補正し、この補正した値を指6の押圧位置と認定して初期位置データX0とする。
【0035】
尚、上記の補正機能は、必ずしも初期位置検出部41に搭載する必要はなく、座標検出手段21のX座標データ生成部32に搭載するようにしてもよい。また、タッチパネル5側の仕様により、当初から座標情報が1点に絞られて出力される(例えば、押圧領域の左端のX座標と右端のX座標との中間値が出力される)ような場合には、上記の座標補正は不要である。
【0036】
開始位置算出部42は、図7に示すように、初期位置検出部41の初期位置データX0に基づいて、読取ユニット3のホームポジションから読取開始位置までの移動量Mを算出するとともに、その移動量を示す初期駆動値MVを出力する。開始位置算出部42には、CCD12のライン幅LWがタッチパネル5のX座標の何目盛り分に当たるかの情報が予め記憶される。
【0037】
現在位置検出部43は、X座標データ生成部32のX座標データXDに基づいて、現在の指6の押圧位置を示す現位置X座標データXiを出力する。現在位置検出部43においても、図6に示す初期位置検出部41の場合と同様、X座標データXD1又はXD2から指6の内側に向かう方向へ所定量rだけ減算して座標値を補正し、この補正した値を指6の押圧位置と認定して現位置X座標データXiとする。尚、現位置X座標データXiの検出周期は、一定の周期で、かつ、CCD12の画像信号出力周期VT(図9参照)よりも短い周期に設定される。
【0038】
移動量検出部44は、現在位置検出部43の現位置X座標データXiに基づいて、指6の押圧位置の移動量がCCD12のライン幅LW(図3参照)に達しか否かを判定し、移動検出信号DSを出力する。
【0039】
図8に示すように、移動量検出部44は、後述の移動検出信号DSを立ち上げたときのX座標データXmを保持し、保持したX座標データXmを今回の現位置X座標データXiから減算して指6の移動量(Xi−Xm)を求める。そして、求めた移動量(Xi−Xm)が、CCD12のライン幅LWに相当する長さに達しているか否かを判定し、達していれば、図9に示すように、移動検出信号DSをHiレベルに立ち上げる。尚、移動量検出部44においても、CCD12のライン幅LWがタッチパネル5のX座標の何目盛り分に当たるかが予め記憶される。
【0040】
また、移動量検出部44は、指6の移動方向(副走査方向における正転であるか、逆転であるか)を判別し、移動方向を示す方向信号RDを出力する。この方向信号RDは、指6の移動方向が正転方向であればHiレベルとなり、指6の移動方向が逆転方向であればLowレベルとなる。指6の移動方向の判別は、上述の求めた移動量(Xi−Xm)を用いて行うことができ、移動量(Xi−Xm)が正の値であれば正転と判定し、負の値であれば逆転と判定する。
【0041】
反転検出部45は、指6の移動方向が反転した場合の動作を制御するために備えられる。反転検出部45では、移動量検出部44の方向信号RD及び移動量(Xi−Xm)に基づき、指6の逆転移動量を示す値(逆方向への移動量をライン数換算した値)Lを管理するとともに、この逆転移動量Lに基づいて反転復帰信号BSを生成する。
【0042】
反転復帰信号BSは、指6が逆方向に移動している期間(反転期間)、及び、逆方向に移動した状態から再反転して反転開始位置(指6の転動方向が正転から逆転に変化した位置)まで戻ってくる期間(復帰期間)を示す信号であり、図9に示すように、指6が正転から逆転への反転を開始してから元の位置に戻ってくるまでの間、Hiレベルに立ち上がる。
【0043】
図4に戻り、画像選別手段26は、図10に示すように、移動検出手段22からの移動検出信号DS、反転復帰信号BS及びCCDドライバ23からの画像出力信号φTGを入力し、画像選択信号SSを出力する選別部51と、選別部51の画像選択信号SSに基づき、画像データIDを、有効な画像データと、そうでない画像データとに振り分けるゲート部52とを備える。
【0044】
選別部51は、図9に示すように、反転復帰信号BSがLowレベルとなる期間において、移動検出信号DS及び画像出力信号φTGを参照し、移動検出信号DSがHiレベルに立ち上がった直後の画像出力信号φTGの立ち上がりに応答して、画像選択信号SSをHiレベルに立ち上げ、それをCCD12の画像信号出力周期VTの1周期分の期間にわたって保持する。ここで、画像選択信号SSのHiレベル期間は、画像データIDを有効画像化する期間に対応し、画像選択信号SSのLowレベル期間は、画像データIDを無効画像化する期間に対応する。
【0045】
一方、反転復帰信号BSがHiレベルとなる期間では、移動検出信号DS及び画像出力信号φTGに関係なく、画像選択信号SSをLowレベルに保持する。
【0046】
ゲート部52は、画像選択信号SSがHiレベルの期間において、画像信号処理部25から出力される画像データIDを有効画像として後段のメモリ27に出力し、一方、画像選択信号SSがLowレベルの期間において、画像データIDを無効な画像であるとして破棄する。尚、ゲート部52は、例えば、AND回路によって構成することができる。
【0047】
図3に戻り、モータ制御手段29は、図11に示すように、移動検出手段22からの移動検出信号DSに応答してモータ28を駆動するモータドライバ61と、CCD12(読取ユニット3)の読取開始位置までの移動を制御する開始位置制御部62とを備える。
【0048】
モータドライバ61は、移動量検出部44の移動検出信号DSがHiレベルに立ち上がったときに、モータ28を駆動し、CCD12(読取ユニット3)をライン幅LWだけ副走査方向に移動させる。また、モータドライバ61は、移動量検出部44の方向信号RDが正方向を示すときに、モータ28を正回転(CCD12を正方向移動させる回転方向)させ、方向信号RDが逆方向を示すときに、モータ28を逆回転させる。
【0049】
開始位置制御部62は、CCD12をホームポジションから読取開始位置まで移動させる際(図7参照)に使用するものであり、移動検出手段22からの初期駆動値MV(図5参照)とモータ駆動量(CCD12の移動ライン数)を対比し、両者が合致するまで、モータ28を駆動させるようにモータドライバ61に指示を与える。
【0050】
尚、図4〜図11を参照して説明した上記の構成は、必ずしも、その全てをハードウェアによって構成する必要はなく、一部をソフトウェア化して構成してもよいのは勿論のことである。
【0051】
次に、上記構成を有する画像読取装置1の動作について説明する。ここでは、先ず、指紋読取操作に際しての動作手順について、図12〜図15を中心に参照しながら説明する。
【0052】
外部から読取コマンドを受信すると、図12に示すように、先ず、反転検出部45(図5参照)において、逆転移動量(ライン数)Lを初期化し、L=0とする(ステップS1)。また、選別部51(図10参照)において、画像選択信号SSをLowレベルに立ち下げ、画像データIDの無効化設定を行う(ステップS2)。
【0053】
次いで、CCD12の駆動を開始し(ステップS3)、タッチパネル5上に指6が載置されるのを待機する(ステップS4)。そして、指6がタッチパネル5上に載置され、タッチ検出部31(図5参照)において、その旨が検出されると、これに応答し、初期位置検出部41によって、指6の初期位置を示す初期位置データX0を生成する(ステップS5)。
【0054】
次に、開始位置算出部42(図5参照)によって、読取ユニット3のホームポジションから読取開始位置までの移動量M(図7参照)を算出するとともに、開始位置制御部62(図11参照)によって、読取ユニット3を読取開始位置まで移動させる(ステップS6)。
【0055】
尚、図13(a)に示すように、例えば、読取ユニット3の中央部を位置基準Pとして読取ユニット3の位置制御を行うような場合、ミラー13及び光学レンズ14の配置位置にもよるが、ホームポジションから読取開始位置へ読取ユニット3を移動させた際に、ミラー13及び光学レンズ14の光軸16と指6の初期位置X0との間にズレを生じさせた状態で読取ユニット3が位置決めされることがある。
【0056】
このような場合には、図13(b)に示すように、読取ユニット3を読取開始位置まで移動させた後、光軸16と押圧位置X0のズレ量sの分だけ読取ユニット3を逆方向に微小移動させて読取ユニット3の位置を補正するか、或いは、図7の移動量Mを求めた後に移動量Mからズレ量sを減算し(M−s)、これを基にして初期駆動値MVを求めるようにすればよい。
【0057】
但し、例えば、読取ユニットの位置基準Pを光軸16と揃えて設定する場合のように、当初からズレが生じないような構成を採る場合は、上記の補正処理は不要である。
【0058】
図12に戻り、被検者が指6の転動を開始すると(ステップS7)、現在位置検出部43(図5参照)によって、現在の指6の押圧位置を示す現位置X座標データXiを生成する(ステップ8)。尚、現位置X座標データXiの検出周期は、前述のように、一定の周期で、かつ、CCD12の画像信号出力周期(画像信号ISの出力周期)VT(図9参照)よりも短い周期に設定される。
【0059】
次いで、移動量検出部44(図5参照)によって、指6の移動量(Xi−Xm)を算出するとともに、指6の移動方向を示す方向信号RDを生成する(ステップS9)。次に、指6の移動方向が正転方向であるか否かを判別し(ステップS10)、正転である場合には(ステップS10:Y)、指6の移動量(Xi−Xm)がCCD12のライン幅LW(図3参照)に達しているか否かを判別する(ステップS11)。
【0060】
そして、指6の移動量(Xi−Xm)がライン幅LW以上である場合(移動検出信号DSがHiレベルに立ち上がった場合)には(ステップS11:Y)、指6の押圧位置が正転方向にライン幅LW以上移動したことを示すため、モータドライバ61(図11参照)によって、モータ28を駆動し、ライン幅LWに相当する距離だけ、CCD12(読取ユニット3)を正転方向へ移動させる(ステップS12)。こうして、図15(a)に示すように、指6の動きに追従させながら、CCD12を1ラインずつ正方向移動させる。
【0061】
尚、図12においては、ステップS12の次段にステップS13を設けているが、これについては、便宜上、説明を省略して後述することにする。
【0062】
ステップS12の処理と併行し、選別部51において、画像選択信号SSをHiレベルに立ち上げ、画像信号処理部25から出力される画像データIDを有効化する(ステップS14)。画像選択信号SSの立ち上げは、前述のように、移動検出信号DSがHiレベルに立ち上がった直後の画像出力信号φTGの立ち上がりに応答して行われ、また、画像選択信号SSのHiレベル期間は、CCD12の画像信号出力周期VTの1周期分の期間にわたって保持される(図9参照)。これにより、1ライン分の画像データIDが有効化され、有効化された画像データIDは、ゲート部52(図10参照)を通じてメモリ27に出力される。
【0063】
一方、指6の移動量(Xi−Xm)がライン幅LW未満である場合(移動検出信号DSが立ち上がっていない場合)には(ステップS11:N)、選別部51において、画像データIDを無効化した状態(画像選択信号SSをLowレベルに立ち下げた状態)を維持する(ステップS15)。
【0064】
これらに対し、指6の移動方向が逆転方向である場合には(ステップS10:N)、選別部51において、画像データIDを無効化した状態を維持するとともに(ステップS16)、指6の移動量(Xi−Xm)の絶対値がライン幅LW以上であるか否かを判別する(ステップS17)。
【0065】
指6の移動量(Xi−Xm)の絶対値がライン幅LWよりも小さい場合には(ステップS17:N)、ステップS8に移行し、次の現位置X座標データXiの検出タイミングが到来するのに応じて、ステップS8以降の処理を実行する。
【0066】
一方、指6の移動量(Xi−Xm)の絶対値がライン幅LW以上の場合には(ステップS17:Y)、指6の押圧位置が逆転方向にライン幅LW以上移動したことを示すため、反転検出部45において、逆転移動量Lに1ライン分を加算する(ステップS18)。また、モータ28を逆回転させ、CCD12をライン幅LWに相当する距離だけ、逆転方向へ移動させる(ステップS19)。
【0067】
その後、次の現位置X座標データXiの検出タイミングが到来するのに応じて、ステップS8の処理を実行し、ステップS10において、指6の移動方向が正転方向であるか否かを判別する。この時点で、指6の逆転方向への移動が継続されていれば(ステップS10:N)、再度、ステップS16に処理が移行し、ステップS16〜ステップS19の処理を繰り返す。このため、移動量(Xi−Xm)の絶対値がライン幅LW以上となる都度、逆転移動量Lに「1」が累加算されるとともに、図15(b)に示すように、指6の動きに追従してCCD12が1ラインずつ逆方向移動される。
【0068】
これに対し、ステップS10の処理に際して、指6の移動方向が正転方向に変化していれば(ステップS10:Y)、ステップS11に処理が移行し、指6の移動量(Xi−Xm)がライン幅LW以上であるか否かを判別する。そして、指6の正転方向への移動量(反転開始位置に戻る方向への移動量)がライン幅LW以上である場合には(ステップS11:Y)、モータ28を正回転させ、CCD12を1ライン分だけ正転方向に戻す(ステップS12)。
【0069】
次いで、反転検出部45の逆転移動量Lが「0」であるか否かを判別する(ステップS13)。この処理は、CCD12が指6の反転開始位置まで戻ったかを確認するためのものであり、逆転移動量L=0でない場合(ステップS13:N)、すなわち、反転開始位置まで戻りきっていない場合には、画像データIDの無効化を維持しつつ(ステップS20)、反転検出部45が保持する逆転移動量Lから「1」を減算する(ステップS21)。尚、逆転移動量Lから「1」を減算するのは、ステップS12でCCD12を1ライン分だけ正転方向に戻したことに対応するものである。
【0070】
以後、逆転移動量Lが「0」になるまで上記の処理を繰り返し、図15(c)に示すように、指6が反転開始位置に戻っていくのに追従させながら、CCD12を1ラインずつ正転方向へ移動させていく。そして、逆転移動量L=0、すなわち、指6の反転開始位置までCCD12が戻りきっていれば(ステップS13:Y)、ステップS14に処理を移行し、上記と同様にして、画像データIDを適宜有効化しながら、CCD12を1ラインずつ断続的に正方向移動させる。
【0071】
その後、タッチパネル5から指6が離れるか、或いは、画像データIDの取得ライン数が有効画像指定ライン数に達するまで(ステップS22、S23)、ステップS8〜S20の処理を繰り返し、指6の一方の側面から他方の側面までの回転指紋像を1ラインずつ取得する。尚、有効画像指定ライン数とは、万人の回転指紋像の大凡の大きさを見込んで予め設定するものであり、見込んだ回転指紋像の大きさをCCD12のライン数に換算して数値化したものである。
【0072】
そして、タッチパネル5から指6が離れるか、或いは、画像データIDの取得ライン数が有効画像指定ライン数に達していれば(ステップS22:Y、S23:Y)、読取操作を終了し、図14に示すように、CCD12をホームポジションに戻すとともに、CCD12の駆動を停止する(ステップS24、S25)。
【0073】
次に、図12〜図15に示す手順の下での画像読取装置1の動作例について説明する。ここでは、先ず、タッチパネル5上に載置した指6を正転方向にのみ転動させた場合について、図16を中心に参照しながら説明する。尚、図16において、図示を省略しているが、反転復帰信号BSは、Lowレベルに立ち下がった状態で維持されている。
【0074】
当初、指6の転動速度が遅かった場合、タイミングt1で移動検出信号DSが立ち上がってから、しばらく移動検出信号DSが立ち上がらない状態が続く。この場合、先ず、移動検出信号DSが立ち上がった直後の画像出力信号φTGの立ち上がり(タイミングt2)に応答して、画像選択信号SSが立ち上がり、画像データID(A)を有効化する。また、移動検出信号DSの立ち上がり(タイミングt1)に応答して、モータ駆動信号が立ち上がり、CCD12が正転方向に1ライン分だけ移動される。
【0075】
そして、CCD12の画像信号出力周期VTが経過する(次の画像出力信号φTGが立ち上がる)のに応じて、画像選択信号SSが立ち下がり、画像データIDを無効化するように遷移する(タイミングt3)。その後、画像選択信号SSの次の立ち上がり(タイミングt5)まで、画像データIDの無効化が継続され、その間に出力される画像データID(B)、ID(C)は全て破棄される。
【0076】
タイミングt4において、移動検出信号DSの2度目の立ち上がりがあると、上記の場合と同様にして、画像データID(D)の有効化及びモータ駆動が行われる。この際、指6の転動速度が変化して速くなっていると、タイミングt4以降、短い周期で移動検出信号DSが立ち上がるようになる。それに応答して、画像データIDを有効化する頻度が上がり、画像データID(D)の次の画像データID(E)も有効化される。
【0077】
以後、指6の進み具合に応じて、画像データIDの有効化/無効化を選別するとともに(タイミングt6〜t11)、適宜、CCD12を正方向へ断続的に移動させつつ、読取操作を進める。そして、読取操作が終了した時点で、有効化した画像データ(メモリ27に記憶した画像データ)ID(A)、ID(D)、ID(E)、ID(G)〜ID(I)、ID(K)〜(M)及びID(O)を繋ぎ合わせ、1枚の指紋像を取得する。尚、画像データIDの繋ぎ合わせは、いわゆる画像合成処理のような高度なデータ編集は不要であり、メモリ27に書き込んだ画像データIDを書き込み順序に従って読み出すだけでよい。
【0078】
このように、本実施の形態においては、CCD12から1ライン単位で定期的に画像信号ISを出力させつつ、指6の押圧位置の移動量を検出して、指6の転動に追従させてCCD12を移動させるように構成し、その上で、指6の押圧位置の移動量がライン幅LWに達する都度、画像データIDを選択的に有効化するようにしたため、指紋像の重複(画像の重複)を回避しながら、1ラインずつ順番に指紋像を得ることが可能になる。そして、そのようにして得たライン単位の複数の画像データIDを繋ぎ合わせて回転指紋の全体像を生成するため、フレーム画像(エリア画像)を合成する場合に比べて画像の繋ぎ目に歪みが生じ難く、従来のような歪み補正処理を用いずとも、歪みの少ない良質な画像を取得することが可能になる。
【0079】
次に、タッチパネル5上に載置した指6の転動方向を反転させた場合について、図17を中心に参照しながら説明する。
【0080】
タイミングt21〜t24において、指6が正方向に転動されている間は、方向信号RDがHiレベルに立ち上がり、図16のタイミングt1〜t3の場合と同様に動作する。
【0081】
そして、タイミングt24において、指6の転動方向が反転し、指6の押圧位置が逆方向に移動し始めると、反転復帰信号BSがHiレベルに立ち上がる。反転復帰信号BSは、指6が再反転して反転開始位置(指6の転動方向が正転から逆転に変化した位置)に戻ってくるタイミングt30まで、Hiレベルの状態が維持される。このため、タイミングt24〜t30の間に出力される画像データID(C)〜ID(H)は、全て無効化され、破棄される。
【0082】
また、タイミングt25において、指6の逆方向への移動量がライン幅LWに達すると、モータ駆動信号が立ち上がり(タイミングt26)、モータ28が逆回転駆動され、CCD12が逆方向に移動される。
【0083】
その後、タイミングt27において、指6の転動方向が再反転して指6の押圧位置が正方向に移動し始めると、方向信号RDがHiレベルに立ち上がる。そして、タイミングt28において、指6の正方向への移動量がライン幅LWに達すると、モータ駆動信号が立ち上がり(タイミングt29)、モータ28が正回転駆動されてCCD12が正方向に移動される。
【0084】
指6が反転開始位置まで戻ってきたタイミングt30以後は、図16の場合と同様、指6の進み具合に応じて、画像データIDの有効化/無効化を選別するとともに、適宜、CCD12を正方向に移動させつつ、読取操作を進める。
【0085】
このように、本実施の形態においては、指6の転動方向が反転するタイミング、及び、指6が再反転して反転開始位置に戻ってくるタイミングを検出し、それらの間において、画像データIDを全て無効化するようにしたため、被検者が指6を正しく転動させなかった期間の画像データIDを適宜廃棄することができる。このため、かかる期間の画像データIDが繋ぎ合わせ後の画像に混入することがなく、繋ぎ合わせ後の画像が乱れるのを回避することが可能になる。これにより、読み取りの途中で被検者が指6の転動方向を変えた場合でも、再度の読み取りを強いることがなく、利便性を向上させることが可能になる。
【0086】
以上のように、本実施の形態によれば、1次元構成(ラインセンサ)のCCD12によって指紋像をライン単位で読み取りつつ、指6の転動に追従させてCCD12を移動させるように構成し、指紋像の画像信号を生成する読取部に追跡型のスキャナ構造を採用したため、構造的に大きなデジタルカメラを装置内に搭載する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることが可能になる。
【0087】
また、前述のように、指6の押圧位置の移動量がライン幅LWに達する都度、画像データIDを選択的に有効化するように構成したため、従来のような歪み補正処理を用いずとも、歪みの少ない良質な画像を取得することができる。このため、信号処理用の回路やソフトウェアの複雑化を解消することができ、装置の低価格化を図ることが可能になる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、上記実施の形態においては、本発明にかかる画像読取装置を指紋の読み取りに用いる場合を例示したが、読み取りの対象物(被写体)は、指に限られるものではなく、タッチパネル5上で転動可能な被写体であれば如何なるものであってもよい。すなわち、本発明は、タッチパネル5上を転動させて表面像を読み取るものであれば、広く適用することができ、例えば、飲料用や食料用の缶の表面検査等にも応用することができる。尚、被写体は、円筒状の物体であることが好ましいが、多少歪な形状であってもタッチパネル5上で転動し得るものであれば問題ない。
【0090】
また、上記実施の形態においては、指6の転動方向が反転した場合に、その動きに追従してCCD12を移動させるように構成したが(図15(b)参照)、図18(a)〜(c)に示すように、指6が逆方向に転動しても、CCD12を逆方向へ移動させずに指6の反転開始位置で停止させ、その後、指6が再反転して反転開始位置まで戻ってくるまで待機させるようにしてもよい。尚、指6が反転開始位置まで戻ってきた後は、図16の場合と同様に、指6の押圧位置の移動に追従してCCD12を正方向へ移動させる。
【0091】
さらに、上記実施の形態においては、指6の押圧位置の移動量がライン幅LWに達したか否かを判定するにあたり、移動検出信号DSを立ち上げたときのX座標データXmを保持し、これを今回の現位置X座標データXiから減算して移動量(Xi−Xm)を求め、求めた移動量(Xi−Xm)がライン幅LW以上になるかを判定するように構成したが、図19に示すように、検出周期DT毎のX座標データXi1〜Xi6を累加算して移動量Xaddを求めるとともに、その移動量Xaddがライン幅LWに相当する長さ以上になるか否かを判定するようにしてもよい。この場合、移動量Xaddは、移動検出信号DSが立ち上がる都度、「0」にリセットされる。
【0092】
また、上記実施の形態においては、指6の押圧位置を認定するにあたり、一律に所定量rを加減算して押圧位置を認定するように構成したが(図6参照)、例えば、初期位置検出部41、現在位置検出部43において、XD1+{(XD2−XD1)/2}又はXD2−{(XD2−XD1)/2}の算出処理を行い、常時、X座標データXD1とX座標データXD2の中央座標を求め、これを押圧位置として認定するようにしてもよい。
【0093】
さらに、上記実施の形態においては、画像信号ISを出力するラインセンサとしてCCDを例示したが、必ずしもCCDを用いる必要はなく、例えば、CMOSセンサ等の他の撮像素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 画像読取装置
2 スキャナ筐体
3 読取ユニット
4 プラテンガラス
5 タッチパネル
6 指
11 光源
12 CCD
13 ミラー
14 光学レンズ
15 ユニット筐体
21 座標検出手段
22 移動検出手段
23 CCDドライバ
24 コマンド受信部
25 画像信号処理部
26 画像選別手段
27 メモリ
28 モータ
29 モータ制御手段
31 タッチ検出部
32 X座標データ生成部
41 初期位置検出部
42 開始位置算出部
43 現在位置検出部
44 移動量検出部
45 反転検出部
51 選別部
52 ゲート部
61 モータドライバ
62 開始位置制御部
TD タッチ検出信号
D X座標データ
RD 方向信号
DS 移動検出信号
BS 反転復帰信号
SS 画像選択信号
φTG 画像出力信号
IS 画像信号
ID 画像データ
MV 初期駆動値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を副走査方向に転動させながら該被写体の表面像を読み取る画像読取装置であって、
表面に前記被写体が載置されるとともに、該載置された被写体によって押圧される押圧位置を前記副走査方向の座標情報で出力するタッチパネルと、
該タッチパネル上に載置された被写体を該タッチパネルの裏面側から主走査方向に撮影し、画像信号を出力するラインセンサと、
前記タッチパネルから出力される座標情報に基づき、該タッチパネル上での前記被写体の押圧位置の前記副走査方向への移動量を検出する検出手段と、
該検出手段で検出される移動量に基づき、前記被写体の転動に追従させて前記ラインセンサを前記副走査方向に移動させるセンサ搬送手段とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから出力される画像信号を選択的に有効化する画像選別手段と、
該画像選別手段で有効化された画像信号を記憶する記憶手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記タッチパネルから出力される座標情報を定期的に参照し、前記被写体の押圧位置の副走査方向への移動量が前記ラインセンサのライン幅に相当する長さに達したことを検出する移動量検出部を備え、
前記画像選別手段は、前記被写体の押圧位置の副走査方向への移動量が前記ラインセンサのライン幅に相当する長さに達したときに、前記ラインセンサから出力される画像信号を有効化することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記センサ搬送手段は、前記ラインセンサを前記副走査方向に搬送するモータと、前記移動量検出部の検出結果に基づいて該モータを駆動し、前記ラインセンサをライン単位で搬送させるモータドライバとを備えることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記タッチパネルから出力される座標情報に基づいて、前記被写体の転動方向を検出する移動方向検出部と、該移動方向検出部によって検出される転動方向及び前記タッチパネルから出力される座標情報に基づいて、前記被写体の転動方向が反転している反転期間、及び、その後の再反転で該被写体が元の位置に戻ってくるまでの復帰期間を検出する反転検出部とを備え、
前記画像選別手段は、前記反転検出部が前記反転期間又は前記復帰期間を検出する期間において、前記ラインセンサから出力される全ての画像信号を無効化し、前記反転検出部が前記反転期間及び前記復帰期間のいずれも検出しない期間において、前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから出力される画像信号を選択的に有効化することを特徴とする請求項2、3又は4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記ラインセンサは、前記画像信号を定期的に出力し、
前記画像選別手段は、前記検出手段で検出される移動量に基づき、前記ラインセンサから定期的に出力される画像信号を、該ラインセンサの画像信号出力周期に同期して選択的に有効化することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記被写体が指であり、前記表面像が該指の一方の側面から他方の側面までの回転指紋像であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−73704(P2012−73704A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216406(P2010−216406)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【特許番号】特許第4911395号(P4911395)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】