説明

画像読取装置

【課題】搬送トルクを変更して原稿を搬送する画像読取装置において、装置の消費電力及び発熱量の増大を抑制すること。
【解決手段】画像読取装置1は、CIS24とRセンサ26を備えており、給紙トレイ2に載置された原稿Gを搬送経路22に沿って第1速度で搬送する。画像読取装置1では、原稿Gの搬送を開始してから、原稿Gを第1速度で給紙トレイからRセンサ26の検出位置L2まで搬送するのに要する第1規定時間以上経過しても、Rセンサ26が原稿Gを検出しない場合、第1速度よりも遅い第2速度に切り替えて原稿Gを搬送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の種類に応じて搬送トルクを変更して原稿を搬送しながら読み取る画像読取装置に用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿を搬送しながら読み取る画像読取装置が知られている(例えば、特許文献1)。この装置では、原稿として、プラスチックカードのような厚みがあり、硬いシートを読み取ることが要求されることがある。このような原稿は、通常の用紙に比べ、搬送に必要とされるトルク(以下、搬送トルク)が大きい。従来技術には、搬送用モータが出力するトルクを増大させる際に、当該搬送用モータに印加する電流を増大させ、搬送用モータが出力するトルクを減少させる際に、当該搬送用モータに印加する電流を減少させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−116094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、原稿に印加する搬送トルクを増大させる際に、搬送用モータに印加する電流を増大させると、装置の消費電力及び発熱量が増大してしまう。そのため、搬送用モータとして定格電流や耐熱性の比較的高いモータを選択する必要があり、装置のコストが増大する等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、搬送トルクを変更して原稿を搬送する画像読取装置において、装置の消費電力及び発熱量の増大を抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿が載置される給紙部と、前記給紙部に載置された前記原稿を搬送経路に沿って第1速度で搬送する搬送部と、前記搬送経路上に設けられ、前記搬送部によって搬送される前記原稿を読み取る読取部と、前記読取部より前記搬送経路上の上流側の位置を通過する前記原稿を検出する検出部と、前記搬送部に対して前記原稿の搬送を開始させ、かつ、前記検出部の検出タイミングに応じて前記読取部に対して前記原稿を読み取らせる制御部と、を備え、前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから、前記搬送部が前記原稿を前記第1速度で前記給紙部から前記検出部の検出位置まで搬送するのに要する規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記搬送部に対して前記第1速度よりも遅い第2速度に切り替えて前記原稿を搬送させる。
【0007】
また、上記の画像読取装置では、更に、前記読取部の読取位置を通過する前記原稿を第1圧力で前記読取部へと押付る押付部を備え、前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記押付部に対して前記第1圧力よりも低い第2圧力に切り替えて前記原稿を押付させる構成としても良い。
【0008】
また、上記の画像読取装置では、前記搬送部は、前記検出位置と前記読取位置とを共通する2つの前記搬送経路である第1搬送経路及び前記第1搬送経路よりも曲率半径の小さい湾曲部を有する第2搬送経路と、前記搬送部によって搬送される前記原稿がいずれの搬送経路に搬送されるかを切り替える切替部と、を有し、前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記切替部に対して前記原稿が搬送される前記搬送経路を前記第1搬送経路に切り替えさせる構成としても良い。
【0009】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記原稿の搬送方向の長さを検知し、更に、前記原稿の長さが基準長さよりも長い場合、前記搬送部に対して前記原稿の搬送を停止させる構成としても良い。
【0010】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記検出部の検出結果から前記原稿の長さを検知する構成としても良い。
【0011】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記原稿の搬送方向と直交する方向における幅を算出し、更に、前記原稿の幅が基準幅よりも広い場合、前記搬送部に対して前記原稿の搬送を停止させる構成としても良い。
【0012】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記読取部が前記原稿を読み取った読取結果から前記原稿の幅を算出する構成としても良い。
【発明の効果】
【0013】
本明細書によって開示される画像読取装置では、搬送に時間がかかる原稿を搬送する場合に、搬送速度を低下させ、原稿に印加することができる搬送トルクを上昇させるので、このような原稿でも確実に搬送することができる。また、この画像読取装置では、原稿の搬送に必要な搬送トルクを上昇させる際に、従来技術のように、搬送に用いられる電流量を増加させる必要がなく、搬送時における装置の消費電力及び発熱量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像読取装置1の概略的な断面図
【図2】画像読取装置1のブロック図
【図3】実施形態1の読取処理を示すフローチャート
【図4】実施形態2の読取処理を示すフローチャート
【図5】実施形態2の読取処理を示すフローチャート
【図6】原稿のエッジデータを示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を、図1ないし図3を用いて説明する。
【0016】
1.画像読取装置の機械的構成
図1は、本実施形態の画像読取装置1の概略的な断面図である。画像読取装置1は、ユーザにより給紙トレイ2に載置された複数の原稿Gを排紙トレイ4A、4Bに搬送するとともに、搬送中の原稿Gを本体部3に含まれるCIS24を用いて読み取るシートフィードスキャナである。
【0017】
本体部3には、給紙トレイ2と排紙トレイ4を接続する搬送経路22が設けられており、この搬送経路22の周辺に、給紙ローラ20と、分離パッド21と、搬送ローラ23と、CIS24と、フロントセンサ(以下、Fセンサ)25と、リアセンサ(以下、Rセンサ)26と、押圧部材27と、排紙ローラ28と、切替板29と、を備える。CIS24は、読取部の一例であり、Rセンサ26は、検出部の一例である。また、押圧部材27は、押付部の一例であり、切替板29は、切替部の一例である。
【0018】
給紙ローラ20は、給紙トレイ2に載置された原稿Gに当接しており、摩擦力により、給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gを本体部3の内部へと引き込む。分離パッド21は、摩擦力により、複数枚の原稿Gを1枚の原稿Gに分離する。給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gは、これらによって、1枚の原稿Gに分離されて本体部3の内部へと引き込まれる。
【0019】
搬送ローラ23は、モータM(図2参照)により駆動され、本体部3の内部へと引き込まれた原稿Gを搬送経路22上に搬送する。CIS24は、その読取方向である主走査方向D1が搬送経路22に沿った搬送方向D2に直交する姿勢で搬送経路22上に位置し、読取位置L1を通過する原稿Gを読み取る。CIS24の搬送経路22を挟んで対向する位置に、押圧部材27が配置されている。押圧部材27は、ソレノイド31(図2参照)によりCIS24側へ押圧され、これにより読取位置L1を通過する原稿GがCIS24から浮かないように、当該原稿GをCIS24側へと押付る。
【0020】
排紙ローラ28は、搬送ローラ23と同様にモータMにより駆動され、搬送経路22上に搬送された原稿Gを排紙トレイ4に送り出す。排紙ローラ28の搬送経路22を挟んで対向する位置に、切替板29が配置されている。切替板29は、ソレノイド32(図2参照)により制御されており、排紙トレイ4Aへと続く第1搬送経路22Aに沿った第1姿勢F1と、排紙トレイ4Bへと続く第2搬送経路22Bに沿った第2姿勢F2と、のいずれか一方の姿勢となるように制御される。
【0021】
第1搬送経路22Aと第2搬送経路22Bは、給紙トレイ2から排紙ローラ28に至る範囲において共通しており、つまり、読取位置L1を共通するとともに、後述する検出位置L2を共通する。
【0022】
その一方、第1搬送経路22Aと第2搬送経路22Bは、排紙ローラ28から排紙トレイ4A、4Bに至る範囲において異なる。この範囲において、第1搬送経路22Aは、略直線状に設けられており、第2搬送経路22Bは、その一部が排紙ローラ28に沿って曲線状に設けられいる。そのため、第2搬送経路22Bでは、排紙ローラ28に沿った部分Xにおいて、第1搬送経路22Aよりも曲率半径が小さくなる。第2搬送経路22Bの排紙ローラ28に沿った部分Xが、湾曲部の一例である。
【0023】
切替板29が図1に実線で示す第1姿勢F1である場合、原稿Gは第1搬送経路22Aに沿って搬送され、排紙トレイ4Aに排紙される。一方、切替板29が図1に点線で示す第2姿勢F2である場合、原稿Gは第2搬送経路22Bに沿って搬送され、排紙トレイ4Bに排紙される。つまり、給紙ローラ20と搬送ローラ23と排紙ローラ28とによって、給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gを搬送経路22に沿って搬送する搬送部30が形成されている。
【0024】
Fセンサ25は、給紙トレイ2に配置され、給紙トレイ2に原稿Gが載置された場合にオンし、給紙トレイ2に原稿Gが載置されていない場合にオフするように設定されている。Rセンサ25は、搬送経路22上のCIS24よりも上流側に配置され、原稿Gが搬送経路22上の検出位置L2を通過する場合にオンし、原稿Gが検出位置L2を通過していない場合にオフするように設定されている。Rセンサ25のオン状態及びオフ状態は、検出部の検出結果の一例である。また、本体部3には、この他に、電源スイッチや各種設定ボタンからなり、ユーザからの操作指令等を受け付ける入力部5(図2参照)や、LEDからなり画像読取装置1の状況を表示する出力部6(図2参照)、及び出力装置9等が含まれる。なお、出力装置9は、例えば、USBメモリの接続部等からなり、CIS24を用いて原稿Gを読み取った画像を画像読取装置1外に持ち出すためのものである。
【0025】
2.画像読取装置の電気的構成
図2は、画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、画像読取装置1は、画像読取装置1の各部を制御するASIC(特定用途向け集積回路)10を含む。ASIC10は、中央処理装置(以下、CPU)11と、ROM12と、RAM13と、デバイス制御部14と、アナログフロントエンド(以下、AFE)15と、駆動回路16、画像処理回路17と、を備え、これらにバス18を介して、ソレノイド31、ソレノイド32などが接続されている。CPU11は、制御部の一例である。
【0026】
ROM12には、画像読取装置1の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU11は、ROM26から読み出したプログラムに従って各部の制御を行う。デバイス制御部14は、CIS24に接続されており、CPU11からの命令に基づいて読み取りを制御する信号をCIS24に送信する。CIS24は、デバイス制御部14からの信号に基づいて原稿Gを読み取り、読み取った読取データをAFE15に出力する。
【0027】
AFE15は、CIS24に接続されており、CPU11からの命令に基づいて、CIS24から出力されるアナログ信号である読取データをデジタル信号である階調データに変換する。読取データ及び階調データは、読取結果の一例である。AFE15は、CIS24から出力される読取データを、画像読取装置1内に保存、又は画像読取装置1外に持ち出すことを目的とした画像データに変換するとともに、読取データのうち、原稿Gを読み取った原稿画像範囲を特定するためのエッジデータに変換する。画像データ及びエッジデータは、バス18を介してRAM13に記憶される。画像処理回路17は、RAM13に記憶されたエッジデータに基づいて原稿画像範囲のエッジを検出し、原稿Gの主走査方向D1における幅を算出する。
【0028】
駆動回路16は、モータMに接続されており、CPU11からの命令に基づいてパルス信号をモータMに送信する。駆動回路16から入力されるパルス信号に応じてモータMが回転すると、これに従って搬送部30が駆動し、搬送経路22に沿って原稿Gをステップ搬送する。つまり、CPU11は、原稿Gを搬送する際に、駆動回路16を介してパルス信号をモータMに送信し、これに従って搬送部30は原稿Gを搬送する。駆動回路16は、単位時間当たりにモータMに送信するパルス信号の数を変更することで、モータMの駆動速度を変更することができ、原稿Gの搬送速度を変更することができる。駆動回路16は、原稿Gの搬送速度を、少なくとも第1速度V1と、第1速度V1よりも遅い第2速度V2と、で変更することができる。以後、駆動回路16がモータMに送信するパルス信号のパルスの数を、ステップ数と呼ぶ。
【0029】
ソレノイド31は、押圧部材27に接続されており、CPU11からの命令に基づいて押圧部材27をCIS24側へ押圧する。ソレノイド31は、押圧部材27が搬送経路22を搬送される原稿GをCIS24側へ押圧する圧力を変更することができる。ソレノイド31は、原稿Gを押圧する圧力を、少なくとも第1圧力P1と、第1圧力P1よりも低い第2圧力P2と、で変更することができる。ソレノイド32は、切替板29に接続されており、CPU11からの命令に基づいて、切替板29を第1姿勢F1と第2姿勢F2とで変更することができる。
【0030】
3.読取処理
次に、図3を参照して、CIS24を用いて原稿Gを読み取る場合の、CPU11における処理について説明する。本実施形態では、給紙トレイ2に載置された1枚の原稿Gを搬送する場合の、CPU11における処理について説明する。
【0031】
図3は、CPU11が所定のプログラムに従って実行する処理のフローチャートを示す。CPU11は、Fセンサ25を用いて給紙トレイ2に原稿Gが載置されたことが確認され、入力部5を介して原稿Gの読取指示が入力されると、処理を開始する。
【0032】
CPU11は、処理を開始すると、搬送モードを普通紙搬送モードに設定する(S2)。CPU11は、上記搬送モードの設定において、原稿Gの搬送速度を第1速度V1に設定し、ソレノイド31により押圧部材27の圧力を第1圧力P1に設定し、ソレノイド32により切替板29を第2姿勢F2に設定する。
【0033】
搬送モードの設定後、CPU11は、原稿Gの搬送を開始する(S4)とともに、搬送開始からの経過時間Tを計測する。搬送開始後、CPU11は、Rセンサ26がオンするのを監視する(S6)とともに、経過時間Tが第1規定時間経過したか否かを監視する(S8)。第1規定時間は、搬送方向D2における給紙トレイ2と検出位置L2との間の距離を第1速度V1で除した時間に少しマージンを追加した値として設定されている。CPU11は、経過時間Tが第1規定時間を経過する前にRセンサ26がオンした場合(S6:YES、S8:NO)、原稿Gが用紙等の比較的搬送しやすいものであると判断し、搬送モードを普通紙搬送モードに維持したまま、原稿Gを読み取る。
【0034】
CPU11は、Rセンサ26がオンしてから第1ステップ数ST1がカウントされると原稿Gの読み取りを開始し(S10)、原稿Gを搬送しながら原稿Gを読み取る(S12)。CPU11は、Rセンサ26がオフするまで上記の動作を継続し(S14:NO)、Rセンサ26がオフする(S14:YES)と、第2ステップ数ST2がカウントされた後に原稿Gの読み取りを終了する(S16)。CPU11は、更に第3ステップ数ST3がカウントされ、原稿Gが排紙トレイ4Bに搬送されると、原稿Gの搬送を終了し(S18)、処理を終了する。第1ステップ数ST1及び第2ステップ数ST2は、搬送方向D2における検出位置L2と読取位置L1との間の距離及び原稿Gの読取範囲Hに基づいて決定される。また、第3ステップ数ST3は、搬送経路22Bに沿った読取位置L1と排紙トレイ4Bの間の距離及び原稿Gの読取範囲Hに基づいて決定される。
【0035】
一方、CPU11は、Rセンサ26がオンする前に経過時間Tが第1規定時間を経過した場合(S6:NO、S8:YES)、原稿Gがプラスチックカード等の比較的搬送しづらいものであると判断し、搬送モードをカード搬送モードに変更し(S20)、原稿Gの搬送を継続する。CPU11は、上記搬送モードの変更において、原稿Gの搬送速度を第2速度V2に切り替え、ソレノイド31を駆動して押圧部材27の圧力を第2圧力P2に切り替え、またソレノイド32を駆動して切替板29を第1姿勢F1に切り替える。
【0036】
搬送モードの変更後、CPU11は、Rセンサ26がオンするのを監視する(S22)とともに、経過時間Tが第1規定時間よりも長い第2規定時間経過したか否かを監視する(S24)。第2規定時間は、第1規定時間に搬送方向D2における給紙トレイ2と検出位置L2との間の距離を第2速度V2で除した時間を加え、さらに少しマージンを加えた値として設定されている。CPU11は、経過時間Tが第2規定時間を経過する前にRセンサ26がオンした場合(S22:YES、S24:NO)、搬送モードをカード搬送モードに変更した状態で、原稿Gを読み取る。カード搬送モードにおける原稿Gの読み取り(S26〜S30、S16)は、普通紙搬送モードにおける原稿Gの読み取り(S10〜S16)と同一であり、重複した説明を省略する。CPU11は、原稿Gの読取終了後、更に第3ステップ数ST3がカウントされ、原稿Gが排紙トレイ4Bに搬送されると、原稿Gの搬送を終了し(S18)、処理を終了する。
【0037】
一方、CPU11は、Rセンサ26がオンする前に経過時間Tが第2規定時間を経過した場合(S22:NO、S24:YES)、搬送経路22において原稿Gのジャム等の異常が発生したと判断し、出力部6を用いてユーザに異常の発生を知らせるエラー表示を出力する(S32)とともに、原稿Gの搬送を停止し(S34)、処理を終了する。
【0038】
4.本実施形態の効果
(1)画像読取装置1では、現在搬送している原稿Gがプラスチックカード等の比較的搬送しづらいものである場合に、搬送速度を低下させ、原稿に印加することができる搬送トルクを上昇させるので、搬送しづらい原稿Gでも確実に搬送することができる。また、この画像読取装置1では、従来技術のように、原稿Gの搬送に必要な搬送トルクを上昇させる際に、搬送に用いられる電流量を増加させる必要がなく、搬送時における装置の消費電力及び発熱量の増大を抑制することができる。
【0039】
(2)画像読取装置1では、搬送しづらい原稿Gを搬送する場合に、押圧部材27が搬送中の原稿Gに加える圧力を低下させ、原稿Gの搬送に必要とされる搬送トルクを低下させるので、搬送しづらい原稿Gでも確実に搬送することができる。
【0040】
(3)画像読取装置1では、搬送しづらい原稿Gを搬送する場合に、切替板29の姿勢を切り替え、湾曲部が存在しない第1搬送経路22Aで原稿を搬送させ、原稿Gの搬送に必要とされる搬送トルクを低下させるので、搬送しづらい原稿Gでも確実に搬送することができる。
【0041】
<実施形態2>
実施形態2を、図4、5を用いて説明する。本実施形態では、給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gを連続して搬送しながら読み取る点で、実施形態1の画像読取装置1と異なる。複数枚の原稿Gには、複数種類の原稿が含まれていることがあり、その複数種類の原稿には搬送経路22を搬送不能な原稿Gが含まれることがある。そのため、複数枚の原稿Gを連続して搬送する場合には、実施形態1の画像読取装置1と異なり、当該原稿Gが搬送可能か否かを判断する処理が必要となる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0042】
1.読取処理
CPU11は、処理を開始して原稿Gの搬送を開始する(S4)と、給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gのうち、最も給紙トレイ2側に配置された原稿Gの搬送を開始する。給紙ローラ20にワンウェイクラッチを用いる事で原稿間に隙間を設ける事が可能になり、搬送する原稿Gの搬送方向D2における長さである原稿サイズに基づいて次の原稿Gの搬送を開始する時間、つまり次の原稿Gに搬送力を与え始める時間が設計値として決められる。原稿Gの搬送方向D2の長さは搬送速度(第1速度V1もしくは第2速度V2)とRセンサ26がオンされていた時間を乗算する事で求められるので、この長さから次の原稿Gの搬送を開始する時間を求める事が可能になる。そのため、CPU11は、搬送開始からの経過時間Tを計測することで、各原稿Gの搬送開始からの経過時間TNを計測することができる。
【0043】
CPU11は、各原稿Gの読み取りにおいて、経過時間TNが第1規定時間を経過する前にRセンサ26がオンした場合(S6:YES、S8:NO)、普通紙搬送モードにおいて原稿Gの読み取りを実行する(S10〜S16)。原稿Gの読取終了後、CPU11は、Fセンサ25がオンしているか否かを確認する(S42)。CPU11は、Fセンサ25がオフしている場合(S42:YES)、更に第3ステップ数ST3がカウントされた後に原稿Gの搬送を終了し(S18)、処理を終了する。また、CPU11は、Fセンサ25がオンしている場合(S42:NO)、S6からの処理を繰り返す。
【0044】
一方、CPU11は、Rセンサ26がオンする前に経過時間TNが第1規定時間を経過した場合(S6:NO、S8:YES)、カード搬送モードに変更する(S20)。そして、CPU11は、搬送モードの変更後、CPU11は、経過時間TNが第2規定時間を経過する前にRセンサ26がオンした場合(S22:YES、S24:NO)、搬送モードをカード搬送モードに変更した状態で、原稿Gを読み取るとともに、原稿Gが搬送経路22を搬送可能な原稿であるかを判断する。
【0045】
CPU11は、Rセンサ26がオンしてから第1ステップ数ST1がカウントされると原稿Gの読み取りを開始する(S26)。CPU11は、まず、駆動回路16を用いて読取範囲Hの先端範囲SH(図6参照)を読み取り、画像処理回路17を用いて、先端範囲SHのエッジデータにエッジ検出処理を実行する(S44)。
【0046】
図6に示すように、原稿Gの読取範囲Hは、搬送中に原稿Gが傾いた場合でも、画像欠落が生じることなく原稿Gを読み取るため、原稿Gのサイズよりも広く設定されている。そのため、原稿Gの読取範囲Hには、実際に原稿Gを読み取った原稿読取範囲GHが含まれる。CPU11は、先端範囲SHのエッジデータにエッジ検出処理を実行し、当該エッジデータに含まれる原稿読取範囲GHの主走査方向D1における端辺を検出する。エッジデータから原稿読取範囲GHの主走査方向D1の端辺を検出する際には、従来から用いられている画像処理等の技術を用いて実行をすることができ、詳細な説明を省略する。
【0047】
次に、CPU11は、原稿Gの原稿幅Wを検出する(S46)。CPU11は、エッジ検出処理において検出された原稿読取範囲GHの主走査方向D1における距離を検出し、この距離を原稿Gの原稿幅Wとする。エッジデータを用いた傾き検出処理が実行されており、原稿Gの傾きが検出されている場合には、当該距離と原稿Gの傾きから原稿Gの原稿幅Wを算出してもよい。
【0048】
CPU11は、検出した原稿幅Wを限界原稿幅KWと比較する(S48)。ここで、限界原稿幅KWは、基準幅の一例であり、搬送経路22Aに搬送可能な原稿Gの最大原稿幅を意味する。CPU11は、検出した原稿幅Wが限界原稿幅KW以上である場合、原稿Gの読み取りを停止し(S64)、出力部6を用いてユーザに原稿Gの取り出しを促すエラー表示を出力する(S66)とともに、原稿Gの搬送を停止し(S68)、処理を終了する。
【0049】
一方、CPU11は、検出した原稿幅Wが限界原稿幅KW未満である場合、原稿Gを搬送しながら原稿Gの読み取りを継続するとともに、以下の2つの事象の監視を継続する。
(1)Rセンサ26がオフしたか否か(S50)。
(2)原稿Gの読み取りを開始してから限界原稿サイズに相当する第4ステップ数ST4がカウントされたか否か(S52)。
ここで、限界原稿サイズは、搬送経路22Aに搬送可能な原稿Gの搬送方向D2における最大サイズであり、第4ステップ数ST4は、限界原稿サイズに基づいて決定される。
【0050】
CPU11は、第4ステップ数ST4がカウントされる前にRセンサ26がオフした場合(S50:YES、S52:NO)、さらに第2ステップ数ST2がカウントされた後に原稿Gの読み取りを終了する(S56)。原稿Gの読取終了後、CPU11は、Fセンサ25がオンしているか否かを確認し(S58)、Fセンサ25がオフしている場合(S42:YES)、更に第3ステップ数ST3がカウントされた後に原稿Gの搬送を終了し(S18)、処理を終了する。
【0051】
また、CPU11は、Fセンサ25がオンしている場合(S58:NO)、更に第5ステップ数ST5がカウントされ、原稿Gが切替板29を通過すると、搬送モードを普通紙搬送モードに変更し(S62)、S6からの処理を繰り返す。
【0052】
一方、CPU11は、Rセンサ26がオフする前に第4ステップ数ST4がカウントされた場合(S50:NO、S52:YES)、原稿Gが限界原稿サイズ以上の原稿サイズを有していると判断する。CPU11は、原稿Gの読み取りを停止し(S64)、出力部6を用いてユーザに原稿Gの取り出しを促すエラー表示を出力する(S66)とともに、原稿Gの搬送を停止し(S68)、処理を終了する。
【0053】
2.本実施形態の効果
画像読取装置1では、搬送に時間がかかる原稿Gを搬送する場合に、カード搬送モードに変更して搬送を行う。複数の原稿Gを連続して搬送する場合、その原稿Gの中に当該画像読取装置1の搬送経路22では搬送できない規格外の原稿Gが含まれていることがある。このような原稿Gを搬送すると、原稿Gのジャム等の異常が発生するばかりでなく、例えば規格外のプラスチックカードが搬送経路22に挟まり、画像読取装置1の故障の原因となる。
【0054】
画像読取装置1では、搬送に時間がかかる原稿Gを搬送する場合に、原稿Gの原稿幅Wを検出し、その原稿幅Wが限界原稿幅KW以上である場合には、原稿Gの搬送を停止させる。そのため、原稿Gのジャム等の異常や画像読取装置1の故障の発生が抑制される。
【0055】
また、画像読取装置1では、搬送に時間がかかる原稿Gを搬送する場合に、原稿Gのサイズ、つまり、搬送方向D2における長さを検出し、そのサイズが限界原稿サイズ以上である場合には、原稿Gの搬送を停止させる。そのため、原稿Gのジャム等の異常や画像読取装置1の故障の発生が抑制される。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、画像読取装置1を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、画像の形成を行うプリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等の少なくとも1つの機能をスキャナ機能と共に有する複合機であっても良い。
【0057】
(2)上記実施形態では、画像読取装置1が1つのASIC10を有し、制御部として機能する1つのCPU11によって読取処理を実行する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、複数のASIC、CPUなどによって読取処理を実行を実行しても良い。
【0058】
(3)上記実施形態では、搬送モードを設定/変更する際に、原稿Gの搬送速度、押圧部材27の圧力、切替板29の姿勢の3つの項目を設定/変更する例を用いて説明を行ったが、これらのうちの1つの項目や2つの項目を設定/変更する場合でも本実施形態の効果を得ることができる。また、各項目について、設定可能な内容が2つだけでなく、3つ以上設けられており、適宜選択して用いられても良い。
【0059】
(4)上記実施形態では、第1搬送経路22Aは略直線状に設けられている例を用いて説明を行ったが、排紙トレイ4Aに向かって僅かに湾曲していても良い。これによって、排紙トレイ4Aに排紙された原稿Gの位置が安定する。また、第1搬送経路22Aが僅かに湾曲している場合、この湾曲に基づいて限界原稿サイズが決定されても良い。
【符号の説明】
【0060】
1:画像読取装置、2:給紙トレイ、4A、4B:排紙トレイ、11:CPU、14:デバイス制御部、15:AFE、17:画像処理回路、22A、22B:搬送経路、26:Rセンサ、27:押圧部材、29:切替板、31:ソレノイド、32:ソレノイド、F1:第1姿勢、F2:第2姿勢、KW:限界原稿幅、P1:第1圧力、P2:第2圧力、V1:第1速度、V2:第2速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される給紙部と、
前記給紙部に載置された前記原稿を搬送経路に沿って第1速度で搬送する搬送部と、
前記搬送経路上に設けられ、前記搬送部によって搬送される前記原稿を読み取る読取部と、
前記読取部より前記搬送経路上の上流側の位置を通過する前記原稿を検出する検出部と、
前記搬送部に対して前記原稿の搬送を開始させ、かつ、前記検出部の検出タイミングに応じて前記読取部に対して前記原稿を読み取らせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから、前記搬送部が前記原稿を前記第1速度で前記給紙部から前記検出部の検出位置まで搬送するのに要する規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記搬送部に対して前記第1速度よりも遅い第2速度に切り替えて前記原稿を搬送させる、画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
更に、
前記読取部の読取位置を通過する前記原稿を第1圧力で前記読取部へと押付る押付部を備え、
前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記押付部に対して前記第1圧力よりも低い第2圧力に切り替えて前記原稿を押付させる、画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記搬送部は、
前記検出位置と前記読取位置とを共通する2つの前記搬送経路である第1搬送経路及び前記第1搬送経路よりも曲率半径の小さい湾曲部を有する第2搬送経路と、
前記搬送部によって搬送される前記原稿がいずれの搬送経路に搬送されるかを切り替える切替部と、
を有し、
前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記切替部に対して前記原稿が搬送される前記搬送経路を前記第1搬送経路に切り替えさせる、画像読取装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記原稿の搬送方向の長さを検知し、
更に、
前記原稿の長さが基準長さよりも長い場合、前記搬送部に対して前記原稿の搬送を停止させる、画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記検出部の検出結果から前記原稿の長さを検知する、画像読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記原稿の搬送を開始してから前記規定時間以上経過しても、前記検出部が前記原稿を検出しない場合、前記原稿の搬送方向と直交する方向における幅を算出し、
更に、
前記原稿の幅が基準幅よりも広い場合、前記搬送部に対して前記原稿の搬送を停止させる、画像読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記読取部が前記原稿を読み取った読取結果から前記原稿の幅を算出する、画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77932(P2013−77932A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215841(P2011−215841)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】