説明

画像転写体及び画像記録体の製造装置

【課題】画像受像層の加熱を促進させる手段を設けていない画像転写体に比べ、画像受像層がより早く加熱される画像転写体を提供する。
【解決手段】画像転写体22は、基材110と、前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層140と、を有し、前記画像受像層が赤外線吸収剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、画像転写体及び画像記録体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれらが組み合わさったカードなど、特定の情報を納め、外部装置と接触又は非接触に交信する情報記録体が使用されている。
このような情報記録体を製造する方法として、例えば、電子写真方式の画像形成装置を使用し、転写シート(画像転写体)の画像受像層にトナー画像を形成した後、画像受像層とともにトナー画像をプラスチックシート等の記録媒体(画像支持体)に転写させる方法が提案されている(特許文献1参照)。画像受像層の転写を行なうには、画像受像層にトナー画像を形成した画像転写体を、画像支持体に前記画像が対面するように重ね合わせた後、加熱加圧工程により画像転写体と画像記録体を加熱し、画像受像層を軟化させて画像支持体に接着させるとともに画像転写体の基材から分離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像受像層の加熱を促進させる手段を設けていない画像転写体に比べ、画像受像層がより早く加熱される画像転写体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、基材と、前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層と、を有し、前記画像受像層が赤外線吸収剤を含む、画像転写体である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像転写体の前記画像受像層に、画像形成材料で構成された画像を形成する画像形成装置と、前記画像転写体の前記画像が形成された面と画像支持体の片方の面とが対面するように、前記画像転写体と前記画像支持体とを重ね合わせて積層体とする重ね合わせ装置と、前記積層体に含まれる少なくとも前記画像受像層に、前記赤外線吸収剤の吸収域に波長を有する光を照射する光照射装置と、前記積層体に光を照射した後、前記画像転写体の基材から前記画像受像層を分離して、該画像受像層とともに前記画像を構成する前記画像形成材料を前記画像支持体に転写させる剥離装置と、を備える画像記録体の製造装置である。
請求項3の発明は、前記光照射装置が、前記画像が含まれない領域の一部に前記光を照射しないように前記光を選択的に照射する光照射装置である請求項2に記載の画像記録体の製造装置である。
請求項4の発明は、前記積層体を挟み込む一対の回転体を備え、前記光照射装置が前記積層体に前記光を照射するとともに、該積層体を前記一対の回転体の間に通過させる請求項2又は請求項3に記載の画像記録体の製造装置である。
請求項5の発明は、基材と、前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層と、を有し、前記画像受像層が特定の刺激を受けることにより発熱する発熱剤を含む、画像転写体である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、画像受像層の加熱を促進させる手段を設けていない画像転写体に比べ、画像受像層がより早く加熱される画像転写体が提供される。
請求項2に記載の発明によれば、画像受像層の加熱を促進させる手段を設けていない画像転写体を用いて画像記録体を製造する装置に比べ、画像記録体の変形が抑制される画像記録体の製造装置が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、積層体の全面に光を照射する形態に比べ、転写後の剥離が容易に行われる画像記録体の製造装置が提供される。
請求項4に記載の発明によれば、光照射のみによって転写を行う形態に比べ、より確実に転写が行われる画像記録体の製造装置が提供される。
請求項5に記載の発明によれば、画像受像層の加熱を促進させる手段を設けていない画像転写体に比べ、画像受像層がより早く加熱される画像転写体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の画像転写体の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態の画像記録体の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】画像形成領域の一例を示す図である。
【図4】本実施形態の画像転写体と切り込み部を有する画像記録体とを重ね合わせた積層体を示す図である。
【図5】転写の際に積層体に圧力を付与する回転体の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能及び作用を有する部材には、適宜全図面を通じて同じ符合を付与し又は符号を省略し、重複する説明は適宜省略する。また、図面は、本発明の理解を容易なものとするため、形状、大きさ、位置関係を概略的に示しており、これらの形態に限定されるものではない。
【0009】
画像転写体として画像受像層に赤外線吸収剤を含んでいない転写シートを用いて画像受像層にトナー画像を形成し、画像支持体として例えば厚さ760μm程度のプラスチックカードを用いて画像受像層を転写させる場合、転写の際、プラスチックカードをトナーの軟化温度相当まで加熱しなければならず、十分な加熱時間が必要となる。また、加熱されたカードはそのまま機外に排出すると変形してしまうため、冷却するまで平面で保持する機構が必要であり、装置の駆動速度や生産性を高めることの制約となる。
【0010】
<画像転写体>
本実施形態に係る画像転写体は、基材と、前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層と、を有し、前記画像受像層が赤外線吸収剤を含んでいる。画像受像層が赤外線吸収剤を含有することで、赤外線照射によって画像受像層の加熱が選択的に促進され、画像転写体の基材や画像支持体が変形するほどの高温に加熱される前に画像受像層が軟化して画像支持体に転写されることが実現される。
【0011】
図1は、本実施形態の画像転写体の一例を概略的に示している。図1に示す画像転写体22(適宜「転写シート」という。)は、基材110と、画像受像層140とから構成されている。なお、本実施形態の画像転写体22は、基材と、基材の少なくとも片面上に設けられた画像受像層140を有していればよいが、他の層を設けてもよい。例えば、基材110の表面にフッ素樹脂を含む離型層を設けておくことで、転写後、基材110と画像受像層140との分離が容易となる。また、基材110には、画像受像層140とは反対側の面に抵抗調整層が設けられていてもよい。また、基材110の両面に画像受像層140を設けてもよい。
【0012】
−基材−
画像転写体22を構成する基材110は、フィルム状あるいは板状であってもよく、可とう性を有しない程度、又は、転写シートとして一般的に要求される強度を有する程度の厚さを有する形状であってもよい。
基材110としては、プラスチックフィルムが代表的に用いられる。具体的には、OHPフィルムとしてあるいは印刷フィルムとして使用されるようなポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルム、ポリアリレートフィルムなどが挙げられる。
【0013】
基材110は、顔料、染料などが添加されて着色されていてもよい。ただし、本実施形態の転写シート22は、画像記録体への転写を行う際、少なくとも画像受像層140に赤外線を照射する必要があるため、基材110側から赤外線を照射する場合は、基材110は、画像受像層140に含有する赤外線吸収剤が吸収する波長域の光(例えば、波長760nm以上1mm以下)に対して透明性を必要とする。ここで、透明性とは、赤外線吸収剤が吸収する波長域の光の少なくとも一部(望ましくは50%以上)を透過する性質をいう。
【0014】
基材110としては、前述のように、プラスチックフィルム、特にPETフィルムが望ましく用いられる。PETフィルムは、塩素を含まず、可燃物廃棄時の燃焼によって例えばポリ塩化ビニルのようにダイオキシン等の強毒性の物質が発生しないため、環境面からも望ましい。本実施形態においては、前記塩素を含まない基材の使用を考慮し、他の材料として、前記ポリスチレン系樹脂フィルム、ABS樹脂フィルム、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂フィルム、また、PETフィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルムに、ポリエステルやEVA等のホットメルト系接着剤が付加されているフィルム等も望ましく用いられる。
【0015】
基材110の製造方法は任意であるが、共押出し法、貼り合わせ法等、公知の方法を利用して製造される。特に、共押出しによって作製されたものが各々の層間の接着力が強いため望ましい。
なお、基材110としては、既述したプラスチックフィルム以外に、透明性を有する他の樹脂や、透明性を有するセラミックも使用される。
【0016】
−画像受像層−
画像受像層140は、トナー等の画像形成材料によって定着画像が形成され、画像とともに画像支持体に転写される層である。例えば、画像支持体上に転写された画像が正転画像となるように、画像受像層140には電子写真方式によってトナー等の画像形成材料によって反転画像(鏡像)が形成され、画像支持体に転写される前に定着されて定着画像が形成される。
【0017】
本実施形態における画像受像層140は、加熱によって溶融する樹脂(熱溶融性樹脂)を含み、例えばポリエステル樹脂を少なくとも1種含有することが望ましい。一般的に、ポリエステル樹脂は画像形成材料として用いられるものであるため、これと同系統の樹脂を画像受像層140に含有させることにより、画像転写体22の表面(画像受像層140)への画像形成材料の定着性が適性に制御される。なお、画像受像層140に含まれるポリエステル樹脂としては、一般的なポリエステル樹脂の他に、シリコーン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などを用いてもよい。
これらのポリエステル樹脂は単独もしくは2種以上混合して用いてもよい。
【0018】
前記ポリエステル樹脂の合成方法は特に限定されないが、例えば通常2個以上のカルボキシル基を有する多価塩基酸成分とグリコール成分とを縮合反応させて得られた飽和ポリエステルを、有機ジイソシアネート化合物及び鎖延長剤と反応させる方法が挙げられる。
【0019】
前記多価塩基酸としては、例えば、二価塩基酸の芳香族ジカルボン酸類が用いられ、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,5−ナフタル酸などが用いられる。また、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などのトリ及びテトラ芳香族カルボン酸を併用してもよい。
【0020】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその無水物などが挙げられる。
また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸類も用いられ、例えば、α、β−不飽和ジカルボン酸類として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸;不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸;などが用いられる。この内、特に望ましいのは、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及び2,5−ノボルネンジカルボン酸無水物である。
さらに、ヒドロキシピバリン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸類も必要に応じて使用してもよい。
以上の成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0021】
一方、前記グリコール成分としては、例えば、炭素数2以上10以下の脂肪族グリコール類、炭素数6以上12以下の脂環族グリコール類、エーテル結合含有グリコール類から選択される少なくとも1種を用いてもよい。
【0022】
前記炭素数2以上10以下の脂肪族グリコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン等が挙げられる。
【0023】
前記炭素数6以上12以下の脂環族グリコール類としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等が挙げられる。
【0024】
前記エーテル結合含有グリコール類としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の芳香環に結合した2つの水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1モル以上数モル以下付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて使用してもよい。
【0025】
前記有機ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネート−メチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネート−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの内、望ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0026】
前記鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリシクロデカンジメチロール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でもより望ましいのは、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物である。
【0027】
前記ポリエステル樹脂は、公知の方法、例えば溶剤中で20℃以上150℃以下の反応温度でアミン類、有機スズ化合物等の触媒の存在下で、あるいは無触媒下で合成される。このとき使用する溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
【0028】
また、画像受像層140には、画像支持体に重ね合わせて転写される際に照射される光を吸収して熱に変換する赤外線吸収剤が含有される。
赤外線吸収剤としては、望ましくは波長380nm以上760nm以下の可視光領域においては光の吸収特性を有さず、波長760nmを超える非可視光領域の光の吸収特性を有するものが使用される。画像受像層140がこのような非可視光領域の光吸収特性を有する赤外線吸収剤を含有することで、赤外線照射によって画像受像層140の加熱が選択的に促進され、基材110が加熱して変形することが抑制される。なお、赤外線吸収剤は、非可視光領域の光の吸収特性を有していればよく、画像記録体に転写された後の画像の視認性に問題が無ければ、転写後の可視光領域の光(波長380nm以上760nm以下)に対してもある程度吸収性を有するものでもよい。
【0029】
赤外線吸収剤として、具体的には、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等が用いられる。これらの中でも、赤外線の吸収によって効率的に発熱する観点から、スクアリリウム化合物およびジイモニウム化合物が望ましい。
【0030】
画像受像層140に含まれる赤外線吸収剤の含有量は、赤外線吸収剤の種類にもよるが、加熱を促進させる効果を確実に発揮させるとともに、紫外線吸収剤の添加による画像の視認性が低下することを抑制する観点から、望ましくは5mg/m以上500mg/m以上、より望ましくは10mg/m以上100mg/m以上である。
【0031】
画像受像層140は、画像の定着時において、定着部材への付着、巻き付きを防止するために、定着部材への付着性が小さい材料である天然ワックスや合成ワックス、あるいは離型性樹脂、反応性シリコーン化合物、変性シリコーンオイルなどの離型剤を含有していてもよい。
具体的には、カルナバワックス、密ロウ、モンタンワックス、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックスなどの天然ワックスや低分子量ポリエチレンワックス、低分子量酸化型ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、低分子量酸化型ポリプロピレンワックス、高級脂肪酸ワックス、高級脂肪酸エステルワックス、サゾールワックスなどの合成ワックスなどが挙げられ、これらは単独での使用に限らず混合して複数種使用してもよい。
【0032】
また、前記離型性樹脂としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、あるいはシリコーン樹脂と各種樹脂との変性体である変性シリコーン樹脂、例えばポリエステル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、ポリイミド変性シリコーン樹脂、オレフィン変性シリコーン樹脂、エーテル変性シリコーン樹脂、アルコール変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂、メルカプト変性シリコーン樹脂、カルボキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、光硬化性シリコーン樹脂などが添加される。
【0033】
前記変性シリコーン樹脂は、画像形成材料としてのトナー樹脂や熱溶融性樹脂からなる樹脂粒子との親和性が高く、適度に混和、相溶し、溶融混和するため、トナー中に含まれる顔料の発色性に優れ、また同時に、シリコーン樹脂による離型性のため定着部材と転写シート22とが熱溶融時に付着するのを防止すると考えられる。
【0034】
さらに、本実施形態の画像受像層140においては、より低付着性とするため、離型剤として反応性シラン化合物と変性シリコーンオイルとを混入させてもよい。反応性シラン化合物は、画像受像層140に含まれる樹脂と反応すると同時に変性シリコーンオイルと反応することにより、これらがシリコーンオイルの持つ液体潤滑剤以上の離型剤として働き、しかも硬化反応することにより離型剤として画像受像層140中に強固に固定化され、機械的摩耗や溶媒抽出などによっても離型剤が脱落することが抑制される。
【0035】
これらのワックスや離型性樹脂は、前記熱溶融性樹脂からなる樹脂粒子と同様に、粒子状態などで画像受像層140に共存させてもよいが、望ましくは熱溶融性樹脂中に添加し、樹脂中に分散又は相溶した状態で熱溶融性樹脂中に取り込んだ状態で利用することが望ましい。
【0036】
画像受像層140及び画像受像層140以外の層(離型層、抵抗調整層等)は、例えば、以下の方法によって基材110上に形成される。
形成する層に応じて、樹脂及び必要に応じて微粒子等を、有機溶媒もしくは水などに混合し、超音波、ウエーブローター、アトライターやサンドミルなどの装置によって均一に分散させて塗工液を調整する。この塗工液をそのままの状態で、基材110の表面又は既に形成されている層の表面に塗布あるいは含浸させて層を形成する。
塗工液を塗布あるいは含浸させる方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法等の公知の方法を採用すればよい。
例えば基材の両面に塗工層を形成する場合には、どちらの面を先に塗工液を付与してもよいし、両面同時に塗工液を付与してもよい。
【0037】
基材110の表面に塗工液を付与した後、乾燥して塗工層を形成する。この際の乾燥は、風乾でもよいが、熱乾燥を行えば容易に乾燥する。乾燥方法としては、オーブンに入れる方法、オーブンに通す方法、あるいは加熱ローラに接触させる方法など公知の方法を採用すればよい。
基材110上に形成する画像受像層140の厚さは、画像形成材料によって確実に画像が形成されること、画像支持体に確実に転写させること、透明性を確保することなどの観点から、0.1μm以上20μm以下の範囲であることが望ましく、1.0μm以上10μm以下の範囲であることがより望ましい。
【0038】
転写シート22の画像受像層140に形成されたトナー画像は、画像の定着時に、熱や圧力が同時に印加されることで画像受像層140に定着されるが、定着の際、トナーは定着部材と接触するため、トナーが低粘性であったり、定着部材との親和性が高い場合などは、定着部材に一部移行して定着部材に残留するため、定着部材の劣化を招き、結果として定着装置の寿命が短縮するおそれがある。したがって、画像受像層140は、トナー画像の充分な定着性と定着部材との剥離性を有することが必要となる。
【0039】
このため、本実施形態においては、画像転写体22の表面、即ち、画像受像層140に形成されたトナー画像の定着を、該画像転写体22の表面の温度が、トナーの溶融温度以下となるようにして行うことが望ましい。通常のトナーの溶融温度を考慮すると、トナー画像の定着は、前記画像転写体22の表面温度が130℃以下となるようにして行うことが望ましく、110℃以下となるようにして行うことがより望ましい。
【0040】
また、前記条件で定着を行う場合であっても、本実施形態の画像転写体22の場合は、基材110が熱変形を起こす温度領域に入ってしまう場合がある。その場合、特に転写シート22の強度が弱くなり、定着装置の加熱ロールに巻付きやすくなる。このような場合は転写シート22を紙などの支持部材と重ね合わせて搬送し、定着装置での転写シート22の強度を補ったり、転写フィルムの端部にガイドが当たるように定着装置が構成されていることが望ましい。
【0041】
<画像支持体>
本実施形態で用いられる画像支持体は、画像転写体22の画像受像層140に定着画像が形成された後、画像受像層140と対面するように重ね合わされ、加熱によって画像受像層140とともに画像が転写される。画像支持体は製造すべき画像記録体に応じて選択すればよいが、例えば、シート状の金属、プラスチック、セラミックなどが使用される。特に、画像記録体としたときに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが望ましく、白色化したプラスチックシートが代表的に使用される。
【0042】
プラスチックを白色化する方法としては、白色顔料、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化カルシウム等の金属酸化物微粒子、有機の白色顔料、ポリマー粒子等をフィルム中に混入させる方法が挙げられる。また、プラスチックシートの表面に粗面化処理やエンボス加工等を施すことにより、プラスチックシートの表面を凹凸にし、その凹凸による光の散乱によりプラスチックシートを白色化してもよい。
【0043】
前記プラスチックシート用樹脂としては、前記転写シート22の基材110に用いたものと同様なものが用いられ、具体的にはポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルムなどが用いられる。
【0044】
前記の中でも、ポリエステルフィルム、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等が望ましい。
なお、画像支持体は積層構造を有するものでもよいが、画像が転写される側の面は、PETGを含むことが好ましい。
画像支持体の厚さは特に限定されないが、通常は、厚さ75μm以上1000μm以下の範囲である。
【0045】
また、最終的な画像記録体がICカード等として用いられる場合には、画像支持体として、その内部または表面に半導体回路を有するものを用いればよい。
また、画像記録体が磁気カード等として用いられる場合には、必要に応じて画像支持体にアンテナ、磁気ストライプ、外部端子などが埋め込まれる。また、磁気ストライプ、ホログラム等を印刷してもよい。
【0046】
<画像記録体の製造装置>
次に、本実施形態に係る画像記録体の製造装置について説明する。
本実施形態に係る画像記録体の製造装置は、前記した本実施形態の画像転写体22の画像受像層に、画像形成材料で構成された画像を形成する画像形成装置と、前記画像転写体22の前記画像が形成された面と画像支持体の片方の面とが対面するように、前記画像転写体22と前記画像支持体とを重ね合わせて積層体とする重ね合わせ装置と、前記積層体に含まれる少なくとも前記画像受像層に、前記赤外線吸収剤の吸収域に波長を有する光を照射する光照射装置と、前記積層体に光を照射した後、前記画像転写体22の基材から前記画像受像層を分離して、該画像受像層とともに前記画像を構成する前記画像形成材料を前記画像支持体に転写させる剥離装置と、を備える。
【0047】
図2は、本実施形態に係る画像記録体の製造装置の一例を概略的に示している。図2に示す画像記録体の製造装置10は、画像形成装置12と、重ね合わせ装置14と、光照射装置16と、剥離装置17と、から主に構成されている。
【0048】
−画像形成装置−
画像形成装置12は、例えば、転写シート22を収納する収納部(転写シート収納部)18と、画像形成部20と、転写シート収納部18から画像形成部20へ転写シート22を搬送する搬送路24と、画像形成部20から排出口28へ転写シート22を搬送する搬送路26とから構成されている。その他の構成は省略する。
転写シート収納部18には、転写シート22が収納されると共に、一般的な給紙装置に備えられているような送り出しロールや給紙ロールが備えられ、予め定めたタイミングで給紙ロール等が回転し、画像形成部20へ転写シート22を搬送する。
【0049】
画像形成部20は、図示しないが、潜像が形成される潜像保持体と、潜像保持体の表面に形成された潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像器と、潜像保持体の表面に現像されたトナー画像を転写シート22に転写する転写器と、転写シート22に転写されたトナー画像を加熱・加圧して定着する定着器などを含む公知の電子写真方式の画像形成装置で構成される。
【0050】
搬送路24,26は、駆動ローラ対を含む複数のローラ対やガイド(図示せず)から構成されており、さらに搬送路26には、転写シート22の搬送方向を180°反転させる反転路26aが設けられている。搬送路26と反転路26aとの分岐付近には、転写シート22の案内方向を変更するカム32が設けられている。この反転路26aで転写シート22を往復させ、再び搬送路26に戻すと、転写シート22の搬送方向が180°反転されると共に、転写シート22の表裏が反転して搬送される。
【0051】
−重ね合わせ装置−
重ね合わせ装置14は、画像支持体となるプラスチックシート38を収納する収納部(プラスチックシート収納部)34と、重ね合わせトレイ36(重ね合わせ部)、プラスチックシート収納部34から重ね合わせトレイ36へプラスチックシート38を供給する搬送路40と、画像形成装置12の排出口28から排出された転写シート22を、重ね合わせトレイ36へ供給する搬送路42と、から構成されている。
【0052】
プラスチックシート38を重ね合わせトレイ36へ供給する搬送路40の排出部と、転写シート22を重ね合わせトレイ36へ供給する搬送路42の排出部は、高さ方向に並列して設けられている。
搬送路40,42としては、平滑な板状部材と、その表面を転写シート22を搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また、回転するベルト状の搬送体で構成されていてもよい。そして、転写シート22が画像形成装置12から排出されるタイミング又はプラスチックシート38が排出されるタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、転写シート22又はプラスチックシート38を重ね合わせトレイ36に搬送する。
【0053】
プラスチックシート収納部34(画像支持体収納部)には、プラスチックシート38が収納されると共に、一般的な給紙装置に備えられているようなピックアップロールや給紙ロールが備えられ、重ね合わせトレイ36がプラスチックシート収納部34の排出口の位置に移動した直後のタイミングで給紙ロール等が回転し、重ね合わせトレイ36にプラスチックシート38を搬送する。
【0054】
重ね合わせトレイ36は、搬送路40の排出部からプラスチックシート38と、搬送路42の排出部から転写シート22がそれぞれ供給されるように、例えば、その端部の一部が上下(図中上下)に張力がかかった状態で架け渡されたベルトの外壁に連結されており、当該ベルトの回転駆動に伴い昇降するよう構成されている。なお、このような昇降手段に限らず、モーター駆動方式など、公知の昇降手段が適用される。
また、重ね合わせトレイ36に供給されて重なったプラスチックシート38と転写シート22の端部を揃える位置決め手段(図示せず)が設けられている。
【0055】
さらに、重ね合わせトレイ36には、プラスチックシート38と転写シート22とを重ね合わせた積層体を仮止めする仮止め装置44が設けられている。この仮止め装置44は、例えば、ヒータなどによって加熱するように金属からなる一対の突片で構成されており、この加熱された一対の突片により積層体の端部近傍を挟むことで、積層体の端部近傍を熱溶着して仮止する。
【0056】
仮止めの方法としては、熱溶着を用いるのであれば一対の突片による方法に限らず、公知のその他の方式、例えば、加熱した針状の部材をシートの垂直方向に貫通させたり、超音波振動子を搭載した部材でシートを挟み、超音波振動により発生した熱により溶着することも実現される。また、熱を用いずに機械的に互いの動きを拘束する手段、すなわち、ホッチキスの針等を用いて固定したり、あるいは搬送経路に沿ってシートとともに移動する把持部材を設けてもよい。
【0057】
なお、仮止め装置44は、重ね合わせトレイ36から光照射装置16への積層体の搬送路上に設けられる場合には、仮止め時のみ重ね合わせトレイ36の端部に配置され、それ以外のときは前記搬送路から退避するように構成されている。
【0058】
−光照射装置−
光照射装置16は、例えば、半導体レーザアレイ52及びレンズ54から構成されるレーザ方式を採用する。レーザアレイ52及びレンズ54は、レーザアレイ52から照射される近赤外波長の高出力レーザが、搬送ベルト58で構成される搬送路上に所望の面積で結像されるように設置されている。
なお、光照射装置16における光源は、転写シート22の画像受像層140に含まれる赤外線吸収剤の吸収域に波長を有する光を照射するものであれば特に限定されないが、赤外線吸収剤の吸収域に波長を有する非可視光レーザが望ましい。半導体レーザのほか、エキシマレーザ、YAGレーザ、炭酸ガスレーザなどのレーザ照射装置、キセノンフラッシュランプなどの公知の各種光源がいずれも好適に採用される。
【0059】
−剥離装置−
剥離装置17は、例えば、ガス噴出しノズル19とガイド21a,21bを備えており、プラスチックシートの搬送経路の下流側に排出トレイ56が設けられている。
【0060】
<画像記録体の製造方法>
次に、画像記録体の製造装置において画像記録体を製造する方法を説明する。
まず、重ね合わせ装置14では、プラスチックシート38が、プラスチックシート収納部34から搬送路40を経て、重ね合わせトレイ36へと供給される。ここで、搬送路40の排出部を出たプラスチックシート38は、その自重により重ね合わせトレイ36へと供給される。
【0061】
画像形成装置12では、転写シート22が転写シート収納部18から搬送路24を経由して画像形成部20へと供給され、転写シート22の片面に電子写真方式により特定のトナー画像が転写された後、定着部材によって定着され、定着画像が形成される。
転写シート22は、搬送路26を通り、一端、反転路26aを経由して、再び搬送路26に戻り排出口28へ搬送され、重ね合わせ装置14へと送られる。
【0062】
このとき、搬送路26と反転路26aの分岐付近において、カム32はその先端が搬送路26に重なるように駆動され、カム32の先端位置に到達した転写シート22は搬送方向が変更され、反転路26aへと搬送される。そして、転写シート22が反転路26aに到達した後、図示しない駆動ロールを反転させ、転写シート22を反転路26aで往復移動させて、再び搬送路26の排出口28側に戻す。このため、搬送路26に戻った転写シート22は、搬送方向が180°反転される共に、その表裏も反転し、画像面が下側(搬送路26側)を向いて搬送されることとなる。
【0063】
重ね合わせ装置14において、転写シート22は、重ね合わせ装置14の搬送路42を経て、重ね合わせトレイ36へと供給される。ここで、搬送路42の排出部を出た転写シート22は、転写シート22の画像面が下面(重ね合わせトレイ36側)を向いた状態で、その自重により重ね合わせトレイ36へ供給され、プラスチックシート38と重ね合わされる。
このように、重ね合わせトレイ36には、プラスチックシート38に次いで、画像面がプラスチックシートに対面した状態で転写シート22が供給されると共に重ねられて積層体となる。
【0064】
次に、重ね合わせトレイ36上のプラスチックシート38及び転写シート22の端部を、図示しない位置決め手段により揃え、続いて、仮止め装置44により、積層体の端部の仮止めを施した後、光照射装置16へ搬送される。なお、転写シート22及びプラスチックシート38をそれぞれサイズが同等のものを用いれば、積層体の端部を揃えることで位置決めが行なわれる。
【0065】
次いで、光照射装置16において、積層体に対して転写シート22側より例えば近赤外光を照射して転写シート22の画像受像層140を加熱する。
なお、画像受像層140に含まれる赤外線吸収剤の吸収域の波長を含む赤外光を照射すればよい。
また、照射量(光量)は、画像受像層140に含まれている赤外線吸収剤の吸収特性、含有量のほか、画像受像層140とともに赤外線が照射される基材110の種類などにもよるが、赤外線吸収剤を確実に発熱させるとともに、基材110の変形や画像支持体の変形を抑制する観点から、望ましくは0.2J/cm以上2J/cm以下である。
【0066】
ここで、赤外光は、少なくとも画像を含む画像形成領域に照射する。例えば、積層体の全面に赤外光を照射することで、転写シート22の画像受像層全体を加熱してプラスチックシート38に転写させてもよいが、図3に示すように、画像形成領域202には赤外光を照射し、画像200が含まれない領域204の一部には光を照射しないように光を選択的に照射してもよい。光が照射されなかった部分では画像受像層140が加熱されず、プラスチックシート38には転写されないため、非照射部分を起点として転写シート22とプラスチックシート38との剥離が容易となる。本実施形態では、積層体の剥離装置17側の一部に光を当てないようにすれば、剥離装置17に搬送されたときに剥離が容易となる。
【0067】
また、図4に示すように、切り欠き部37を有するプラスチックシート38Aを用いて転写シート22と重ね合わせても良い。このようなプラスチックシート38Aを用いれば、光照射装置16において全面照射が行われても、プラスチックシート38Aの切欠き部37ではプラスチックシート38に接着することはい。この場合は、プラスチックシート38の切り欠き部37が剥離装置17側を向くようにすれば、剥離装置17に搬送されたときに剥離が容易となる。
【0068】
また、本実施形態では、転写の際に積層体を加圧する手段を設けてもよい。例えば、図5に示すように、光照射装置が積層体に光Lを照射するとともに、該積層体を一対の回転体59a,59bの間に通過させて積層体を挟み込む構成が採用される。例えばプラスチックシート38と転写シート22との間に空気が介在していても、矢印A方向に回転する回転体59aと矢印B方向に回転する59bの間を通過させることで空気が排除されて画像受像層140が確実にプラスチックシート38に転写される。なお、回転体59a,59bはいずれか一方を回転駆動させ、それに伴って回転(従動回転)させればよい。
また、このような回転体59a,59bによる加圧は、図5に示すように光照射の後に行ってもよいし、光照射の前に行ってもよい。あるいは、光透過性の回転体を用いて光照射と同時に加圧してもよい。
【0069】
光照射された積層体は、剥離装置17へ搬送される。積層体の先端部がガス噴出しノズル19に差しかかると、ノズル19から圧縮空気が噴射される。これにより、転写シート22の基材110の端部がプラスチックシート38より浮き上がり、ガイド21aの先端が転写シート22の基材110とプラスチックシート38との間に入る。さらに、積層体が搬送されるにつれ、転写シート22はガイド21aに沿ってプラスチックシート38と分離する方向に搬送され、プラスチックシート38から剥がされる。これにより、転写シート22の画像が画像受像層140とともにプラスチックシート38の片面に転写されることになる。
【0070】
なお、プラスチックシート38の両面に別々の画像を記録する場合には、2枚の転写シートをそれぞれプラスチックシートの各面に重ね合わせて積層体として転写を行ってもよい。この場合、画像形成装置12で画像形成を行った第1の転写シートは表裏を反転させずに重ね合わせトレイ36に搬送し、次いでプラスチックシート38を重ね合わせ、さらに画像形成装置12で別の画像を形成した第2の転写シートは表裏を反転させてプラスチックシート38に画像が対面するように重ね合わせて積層体とする。
【0071】
仮止め後、光照射装置16で赤外線照射を行うが、このときプラスチックシート38が赤外線を十分透過するものであれば一方の転写シート側から光照射を行えばよいし、プラスチックシート38が赤外線を透過しないものであれば両面から光照射を行うか、片面ずつ光照射を行えばよい。
光照射後は、2つの転写シートの基材はそれぞれガイド21a,21bに沿ってプラスチックシート38と分離する方向に搬送され、プラスチックシート38から剥がされる。これにより、2つの転写シートの各画像が画像受像層140とともにプラスチックシート38の表裏にそれぞれ転写されることになる。
【0072】
画像が転写されたプラスチックシート38は排出トレイ56に排出され、記録済みプラスチックシート(画像記録シート)が得られる。なお、画像記録シートに個別の画像を複数形成した場合は、画像毎に特定のサイズで裁断して個別の画像を有する画像記録体を得ればよい。
一方、転写シート22は、その後図示しない経路を通って排出トレイ57に排出される。例えば、基材110の両面に画像受像層140を設けた転写シート22であれば、排出された転写シート22は、転写シート収納部18に戻して、残りの画像受像層140側に再度画像形成を行ってもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態の画像記録体の製造装置10では、転写シート22の片面に電子写真方式により画像を形成し、プラスチックシート38を介して、この2つの転写シート22をその画像面を対面させて光照射した後、転写シート22の基材を剥離する。画像受像層140は赤外線吸収剤の含有によって加熱が促進されて高速に加熱されるので、画像転写体22の基材110や画像支持体38が加熱され過ぎて変形されることが抑制される。
また、このような構成の画像記録体の製造装置10であれば、例えば画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用いられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例における「部」は「質量部」を意味する。
【0075】
<実施例1>
画像転写体となる転写シート1を以下のように製造した。
【0076】
(画像受像層塗工液1の調製)
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン200)30部と、架橋型アクリル粒子(綜研化学社製、MX−1000、体積平均粒子径10μm)1部と、帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.6部と、赤外線吸収剤として下記構造式で示されるスクアリリウム色素0.2部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液70部に添加し、十分撹拌して画像受像層塗工液1を調製した。
【0077】
【化1】

【0078】
(抵抗調整層塗工液1の調製)
ポリエステル樹脂(綜研化学社製、フォレット4M、固形分30質量%)10部と、架橋型アクリル粒子(綜研化学社製、MX300、体積平均粒子径3μm)0.6部と、帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.3部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加し、十分撹拌して抵抗調整層塗工液1を調製した。
【0079】
(画像転写体の作製)
基材として片面にフッ素樹脂を含む離型性熱硬化樹脂層(離型層)が付与されたPETフィルム(パナック社製、PET100SG−2、厚さ:101μm)を用意した。
この基材の他方の面(未処理面)に前記抵抗調整層塗工液1をワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で30秒間乾燥させて厚さ0.2μmの抵抗調整層を形成した。
この基材の離型層側の面に前記画像受像層塗工液1をワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で60秒乾燥させ、厚さ7.5μmの画像受像層を形成した。その後A4サイズ(210mm×297mm)に切断して転写シート1を作製した。
【0080】
(転写シートの性能評価)
画像形成装置(富士ゼロックス(株)社製カラー複写機 DocuColor1255CP)を用い、前記転写シート1の画像受像層の面に、顔写真、名前、1ポイント以上5ポイント以下の大きさである数字及び文字、並びにベタ画像を含むカラーの鏡像画像を形成した。
【0081】
(画像記録体(カード1)の作製)
画像支持体として、表裏がPETGで、芯材がA−PETであるA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製、ディアクレールW2012、厚さ:600μm)を用い、この画像支持体の表面に、前記画像が形成された転写シート1の画像面を重ね合わせて積層させた。
得られた積層体に、波長808nm、出力40Wの半導体レーザアレイを、進行方向に1mm、幅方向(進行方向と直交する方向)に60mmの矩形領域に照射するようにレンズで集光し、速度60mm/sで通過させた。
その後、転写シート1を白色シートから引きはがし、白色シート上に顔写真を含む画像が転写されたカード1(画像記録体1)を作製した。
【0082】
(画像記録体の評価)
前記カード1について、以下の評価を行った。
【0083】
−画像の定着性−
トナー画像の定着性の評価は、カード1の表面に転写された画像部に、市販の18mm幅セロハン粘着テープ(ニチバン社製、セロハンテープ)を700g/cmの線圧で貼り付け、10mm/secの速度で剥離したときの、画像の剥がれを評価した。
本評価では、全く問題がなかった場合をA、少しでも画像が剥がれたり、乱れた場合をBとして評価した。結果を表1に示す。
【0084】
−カードの変形−
カードの変形は、画像が転写されたカードを定盤の上に置き、四隅の定盤表面からの浮き上がり量をノギスで測定し、その最大値が0.5mm未満であるものをA、0.5mm以上1.0mm未満であるものをB、1.0mm以上であるものをCとした。結果を表1に示す。
【0085】
<比較例1>
実施例1において、画像支持体と転写シートの積層体をラミネーター(フジプラ(株)社製:ラミパッカーLPD3206 City)を用い、180℃、送り速度60mm/sの条件で貼り合わせ、転写シートを常温まで冷却後、転写シートを白色シートから引きはがし、白色シート上に顔写真を含む画像が転写されたカード2(画像記録体2)を作製した。
実施例1と同様にして、カード2における画像の定着性、及びカード変形に関して評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらに限定されない。
例えば、実施形態及び実施例では、画像受像層が赤外線吸収剤を含む場合について説明したが、特定の刺激を受けることにより発熱する赤外線吸収剤以外の発熱剤を含んでもよい。そのような発熱剤と刺激の組み合わせとして、酸化アルミニウム等の金属酸化物粉末とマイクロ波が挙げられる。転写の際、画像受像層に含ませる発熱剤に応じて画像受像層に刺激を加えることで、当該発熱剤を含まない場合に比べてより早く加熱され、画像記録体の変形が抑制されることになる。
【符号の説明】
【0088】
10 画像記録体製造装置、12 画像形成装置、14 重ね合わせ装置、16 光照射装置、17 剥離装置、22 転写シート(画像転写体)、36 重ね合わせトレイ、37 切り欠き部、38,38A プラスチックシート(画像支持体)、44 仮止め装置、52 レーザアレイ、54 レンズ、59a,59b 回転体、110 基材、140 画像受像層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層と、を有し、
前記画像受像層が赤外線吸収剤を含む、画像転写体。
【請求項2】
請求項1に記載の画像転写体の前記画像受像層に、画像形成材料で構成された画像を形成する画像形成装置と、
前記画像転写体の前記画像が形成された面と画像支持体の片方の面とが対面するように、前記画像転写体と前記画像支持体とを重ね合わせて積層体とする重ね合わせ装置と、
前記積層体に含まれる少なくとも前記画像受像層に、前記赤外線吸収剤の吸収域に波長を有する光を照射する光照射装置と、
前記積層体に光を照射した後、前記画像転写体の基材から前記画像受像層を分離して、該画像受像層とともに前記画像を構成する前記画像形成材料を前記画像支持体に転写させる剥離装置と、
を備える画像記録体の製造装置。
【請求項3】
前記光照射装置が、前記画像が含まれない領域の一部に前記光を照射しないように前記光を選択的に照射する光照射装置である請求項2に記載の画像記録体の製造装置。
【請求項4】
前記積層体を挟み込む一対の回転体を備え、前記光照射装置が前記積層体に前記光を照射するとともに、該積層体を前記一対の回転体の間に通過させる請求項2又は請求項3に記載の画像記録体の製造装置。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に配置され、画像支持体の片面と対面するように重ね合わせた後、前記基材から分離して前記画像支持体に転写される画像受像層と、を有し、
前記画像受像層が特定の刺激を受けることにより発熱する発熱剤を含む、画像転写体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25420(P2011−25420A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170462(P2009−170462)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】