説明

画像配信システムおよび方法

【課題】通信ネットワークを介して画像情報を配信する際の第三者による不正な取得を有効に防止することができる画像配信システムおよび方法を提供する。
【解決手段】送信側装置100は、配信画像に含まれる複数の分割画像のそれぞれに対応する構成情報と要素情報を格納する送信情報格納部130と、送信情報格納部130に格納された構成情報を読み出して電子メールで送信する構成情報送受信処理部140と、送信情報格納部130に格納された要素情報を読み出してFTPサーバ320を介して送信する要素情報送信処理部150とを備える。受信側装置200は、電子メールによって送信された構成情報を受信する構成情報送受信処理部210と、FTPサーバ320からダウンロードして要素情報を受信する要素情報受信処理部220と、受信した構成情報と要素情報とに基づいて、複数の分割画像によって構成される配信画像を復元する画像復元部240とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等の通信ネットワークを介して画像を配信する画像配信システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディア技術の進展により、漫画や絵画、映像などの画像情報をインターネットを介して配信し、受信者がその画像情報を購入するビジネス手法が拡大しつつある。また、企業内や企業間においては、図面や技術情報、企業情報がインターネットを介して送受信されている。インターネットを介して送受信されるこれらの情報は、情報を取得する特定の人やグループが限定されるものであるが、最近ではこれらの情報を第三者が無断で取得する犯罪行為が増加しており、社会問題となっている。このため、第三者による無断の情報取得を防止するために、ユーザIDやパスワードなどによる情報受信者の特定化や暗号キーを用いた情報の暗号化などが行われている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2002−73483号公報(第5−7頁、図1−11)
【特許文献2】特開2002−281022号公報(第2−5頁、図1−16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1や特許文献2に開示された方式を用いて情報を送受信した場合であっても、この情報がインターネット上で盗まれてしまった場合に、この情報に対応して設定されたユーザIDや暗号キーの解読を完全に防ぐことは難しい。このため、ユーザID等や暗号化等を用いた従来方式に代わる、あるいはこれらの従来手法と組み合わせて第三者による情報取得を有効に防止することができる通信手法が望まれている。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、通信ネットワークを介して画像情報を配信する際の第三者による不正な取得を有効に防止することができる画像配信システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の画像配信システムは、送信側装置から受信側装置に対して配信画像を送信する。送信側装置は、配信画像に含まれる複数の分割画像のそれぞれに対応する構成情報と要素情報とを格納する送信情報格納手段と、送信情報格納手段に格納された構成情報を読み出して第1の通信手段を用いて送信する第1の送信処理手段と、送信情報格納手段に格納された要素情報を読み出して第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を用いて送信する第2の送信処理手段とを備えている。受信側装置は、第1の通信手段を用いて構成情報を受信する第1の受信処理手段と、第2の通信手段を用いて要素情報を受信する第2の受信処理手段と、第1および第2の受信処理手段によって受信された構成情報と要素情報とに基づいて、複数の分割画像によって構成される配信画像を復元する画像復元手段とを備えている。配信画像を構成情報と要素情報に分離して異なる通信手段を介して配信しているため、一方の情報のみを不正に取得しても配信画像全体の復元を防止することができ、第三者による配信画像全体の不正な取得を有効に防止することができる。
【0006】
また、上述した構成情報は、配信画像における複数の分割画像のそれぞれの配置情報を含んでいることが望ましい。配信画像に含まれる複数の分割画像の配置情報と要素情報とを分けることにより、配置だけがわかったとしても各分割画像そのものが分からなければ配信画像全体を復元することができず、反対に配置が分からなければ各分割画像の並びが分からないため配信画像全体の把握が困難になる。
【0007】
また、上述した要素情報は、複数の分割画像のそれぞれを復元可能な符号化情報を含んでおり、符号化情報は、分割画像に含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を一あるいは複数の関数で近似した際の関数の内容を特定する近似関数情報であることが望ましい。各分割画像の形状を関数化近似することにより、要素情報のデータ量を少なくするとともに、受信側装置において配信画像を任意の大きさ(倍率)で表示、印刷した際の画像品質を向上させることができる。
【0008】
また、上述した構成情報に分割画像の大きさを示すスケール情報を含ませることが望ましい。これにより、要素情報のみを取得しても各分割画像を正しい大きさで再現することができないため、配信画像の内容を把握することがより困難になる。
【0009】
また、上述した第1の通信手段と第2の通信手段は、インターネット上の異なるサーバを介した通信によって行われることが望ましい。あるいは、上述した第1の通信手段は、メールサーバを介した通信によって行われ、第2の通信手段は、FTPサーバあるいはWWWサーバを介した通信によって行われることが望ましい。このように、同じインターネットを介した場合であっても異なるサーバを経由して構成情報と要素情報を配信することにより、2つの情報が同時に漏洩する危険性をより少なくすることができる。
【0010】
また、上述した構成情報は、第1の暗号キーに対応する暗号化がなされており、第1の受信処理手段は、第1の暗号キーに基づいて構成情報を解読することが望ましい。あるいは、上述した要素情報は、第2の暗号キーに対応する暗号化がなされており、構成情報には、第2の暗号キーが付加されており、第2の受信処理手段は、第2の暗号キーに基づいて要素情報を解読することが望ましい。構成情報と要素情報を異なる通信手段で配信することに加えて、それぞれの情報を暗号化して送受信することにより、さらに第三者による配信画像の不正取得を防止することができる。
【0011】
また、上述した送信側装置は、配信画像を格納する配信画像格納手段と、配信画像格納手段から配信画像を読み出し、構成情報と要素情報を作成して送信情報格納手段に格納する送信情報生成手段とをさらに備えることが望ましい。あるいは、上述した送信側装置は、配信画像を格納する配信画像格納手段と、配信画像格納手段から配信画像を読み出し、構成情報と要素情報を作成して送信情報格納手段に格納する送信情報生成手段とをさらに備え、送信情報生成手段は、配信画像に基づいて複数の分割画像を抽出する分割画像抽出手段と、分割画像抽出手段によって抽出された複数の分割画像のそれぞれに含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、特徴量抽出手段によって抽出された特徴量を一あるいは複数の関数で近似する関数近似手段とを有することが望ましい。これにより、構成情報と要素情報に分離されていない配信画像からこれら構成情報と要素情報とを抽出して配信することが可能になり、汎用の配信画像を本発明の手法によって簡単に配信することができる。
【0012】
また、本発明の画像配信方法は、送信側装置から受信側装置に向けて、配信画像に含まれる複数の分割画像のそれぞれに対応する構成情報を第1の通信手段を用いて送信する第1のステップと、送信側装置から受信側装置に向けて、複数の分割画像のそれぞれ毎の要素情報を、第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を用いて送信する第2のステップと、受信側装置において、受信した構成情報と要素情報とに基づいて、複数の分割画像によって構成される配信画像を復元する第3のステップとを有している。配信画像を構成情報と要素情報に分離して異なる通信手段を介して配信しているため、一方の情報のみを不正に取得しても配信画像全体の復元を防止することができ、第三者による配信画像全体の不正な取得を有効に防止することができる。
【0013】
また、上述した構成情報は、配信画像における複数の分割画像のそれぞれの配置情報を含んでおり、要素情報は、複数の分割画像のそれぞれを復元可能な符号化情報を含んでおり、符号化情報は、分割画像に含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を一あるいは複数の関数で近似した際の関数の内容を特定する近似関数情報であることが望ましい。配信画像に含まれる複数の分割画像の配置情報と要素情報とを分けることにより、配置だけがわかったとしても各分割画像そのものが分からなければ配信画像全体を復元することができず、反対に配置が分からなければ各分割画像の並びが分からないため配信画像全体の把握が困難になる。また、各分割画像の形状を関数化近似することにより、要素情報のデータ量を少なくするとともに、受信側装置において配信画像を任意の大きさ(倍率)で表示、印刷した際の画像品質を向上させることができる。
【0014】
また、上述した構成情報に分割画像の大きさを示すスケール情報を含ませることが望ましい。これにより、要素情報のみを取得しても各分割画像を正しい大きさで再現することができないため、配信画像の内容を把握することがより困難になる。
【0015】
また、上述した第1の通信手段は、インターネット上のメールサーバを介した通信によって行われ、第2の通信手段は、インターネット上のFTPサーバあるいはWWWサーバを介した通信によって行われることが望ましい。このように、同じインターネットを介した場合であっても異なるサーバを経由して構成情報と要素情報を配信することにより、2つの情報が同時に漏洩する危険性をより少なくすることができる。
【0016】
また、上述した配信画像に基づいて複数の分割画像を抽出する第4のステップと、第4のステップにおいて抽出された複数の分割画像のそれぞれに含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を抽出する第5のステップと、第5のステップにおいて抽出された特徴量を一あるいは複数の関数で近似する第6のステップとをさらに有し、第4のステップにおける複数の分割画像の抽出結果に基づいて構成情報が作成され、第6のステップにおける関数近似の結果に基づいて符号化情報が作成されることが望ましい。これにより、構成情報と要素情報に分離されていない配信画像からこれら構成情報と要素情報とを抽出して配信することが可能になり、汎用の配信画像を本発明の手法によって簡単に配信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した一実施形態の画像配信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
〔画像配信システムの全体構成〕
図1は、一実施形態の画像配信システムの全体構成を示す図である。本実施形態の画像配信システムは、インターネット300に接続可能な送信側装置100と受信側装置200を含んで構成されている。この画像配信システムは、送信側装置100に蓄積されている画像情報を受信側装置200に向けて配信するためのものであり、配信画像が構成情報と要素情報に分離され、それぞれの情報が異なる通信手段を用いて受信側装置200に向けて送信される。
【0019】
〔送信側装置の詳細構成〕
送信側装置100は、配信画像取込部110、配信画像格納部112、送信情報生成部120、送信情報格納部130、構成情報送受信処理部140、要素情報送信処理部150を含んで構成されている。配信画像取込部110は、配信画像として漫画画像データを取り込む処理を行う。この漫画画像データは、2値(白黒)のビットマップデータであり、例えば外付された光学式スキャナ190によって紙原稿の漫画画像を読み込んで生成したり、光ディスク192に記録されている漫画画像データを専用のディスクドライブ装置(図示せず)で読み取って取り込むようにしてもよい。なお、この漫画画像データは、通信によって取得するなどのその他の方法で取り込むようにしてもよい。取り込まれた漫画画像データは配信画像格納部112に格納される。
【0020】
送信情報生成部120は、配信画像格納部112に格納された漫画画像データを読み出して構成情報と要素情報を作成する。このために、送信情報生成部120は、分割画像抽出部122、特徴量抽出部124、関数近似部126を有する。分割画像抽出部122は、読み出した漫画画像データに含まれる複数の分割画像を抽出する。例えば、各分割画像を背景から区画する閉じた輪郭線を検出することにより各分割画像の抽出を行う。なお、分割画像が必ずしも複数含まれるとは限らず、一つであってもよい。また、コマ割りされた漫画画像を考えた場合には、各コマに対応する漫画画像データを分割画像抽出の対象としてもよいし、複数コマからなる紙面1ページ分の漫画画像データを分割画像抽出の対象としてもよい。後者の場合には、各コマの漫画画像を分割画像として取り扱うことができ、この場合には分割画像の抽出処理が容易となる。また、閉じた輪郭線を有するひとまとまりの漫画画像を分割画像として抽出するだけでなく、所定の面積等で区画した各領域に含まれる漫画画像を分割画像として抽出するようにしてもよい。また、分割画像抽出部122は、抽出した各分割画像の配置と大きさとを含む構成情報を作成して、送信情報格納部130に格納する。
【0021】
図2は、分割画像と構成情報との関係を示す図である。例えば、図2に示す矩形枠で囲まれた全体が配信画像であり、その中には背景に対して輪郭線で区画される4つの分割画像A、B、C、Dが含まれているものとする。分割画像抽出部122は、左上の角部から水平方向に順番に走査して最初の分割画像Aを検出した後、この分割画像Aの外形部分の輪郭線を構成する輪郭点列を抽出する。このとき、分割画像Aの配置を示す代表座標と大きさを示すスケールとが特定される。代表座標としては、例えば中心座標や、分割画像Aが内接する矩形の一の頂点座標などが用いられる。また、スケールとしては、この内接矩形の短辺(あるいは長辺)の画素数などが用いられる。このようにして最初に抽出された分割画像Aの抽出が終了すると、この分割画像A全体が背景と同じ2値データを用いて塗りつぶされた後、分割画像抽出部122は、走査を継続して、同様にして分割画像C、B、Dを順番に抽出するとともに、それぞれの分割画像に対応する代表座標とスケールを特定する。
【0022】
図3は、分割画像抽出部122によって作成された構成情報の内容を示す図である。上述したように、4つの分割画像A、C、B、Dが順番に抽出されると、それぞれの分割画像に対応する代表座標とスケールが特定されて構成情報が作成され、送信情報格納部130に格納される。
【0023】
特徴量抽出部124は、分割画像抽出部122によって抽出された各分割画像に含まれる特徴量を抽出する。本実施形態では、関数化近似処理の対象となる特徴量として、各分割画像に含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などが抽出される。なお、2値のビットマップデータからなる漫画画像の場合には、濃度や色に関する情報が含まれていないため、外形部分および内部に含まれる輪郭形状を特定する輪郭点列が特徴量として抽出される。
【0024】
関数近似部126は、特徴量抽出部124によって抽出された各分割画像毎の特徴量に対して関数近似処理を行う。まず最初に、一の輪郭形状に対応する輪郭点列に基づいて、輪郭線の傾向が変化する接合点が抽出される。次に、隣接する2つの接合点で区分される部分的な領域(区分領域)を、直線、円弧、自由曲線のいずれかの関数を用いて近似し、この近似処理に関連する特徴情報が作成される。例えば、区分領域が直線で近似可能な場合には近似関数として直線が用いられ、直線で近似不可能であって円弧で近似可能な場合には近似関数として円弧が用いられる。円弧でも近似不可能な場合には近似関数として自由曲線が用いられる。近似関数として直線を用いた場合には、用いた関数が直線であることを示す符号と、直線で近似される区分領域の形状を示すパラメータとが、この区分領域に対応する近似関数に関する特徴情報として作成される。同様に、近似関数として円弧を用いた場合には、用いた関数が円弧であることを示す符号と、円弧で近似される区分領域の形状を示すパラメータとが、この区分領域に対応する近似関数に関する特徴情報として作成される。近似関数として自由曲線を用いた場合には、用いた関数が自由曲線であることを示す符号と、自由曲線で近似される区分領域の形状を示すパラメータとが、この区分領域に対応する近似関数に関する特徴情報として作成される。
【0025】
なお、着目している区分領域がどの関数で近似可能であるか否かの判定は、区分領域と近似関数との間の誤差(最小二乗法で求めた誤差)が所定値以下であるか否かを調べることにより行われる。また、区分領域の形状を示すパラメータは、この区分領域の形状を特定することが可能であればよいが、例えば、特許第2646475号公報に開示されているように、以下に示すものを用いるようにしてもよい。
(1)直線の場合:直線を示すフラグ、区分領域の始点の座標
(2)円弧の場合:円弧を示すフラグ、円弧の始点の座標、接合点間の中心角の係数、接合点間に存在する輪郭点数、近似関数の係数(円弧を例えば三角関数の線形結合の式で表現した場合の各係数)
(3)自由曲線の場合:接合点間の自由曲線を示す近似関数の次元数(≧3)、接合点間に存在する輪郭点数、接合点間における輪郭点列の変動の中心、近似関数の係数。
【0026】
このようにして、各分割画像毎に、各分割画像に含まれる一あるいは複数の輪郭点列に対応する関数近似処理が行われ、各分割画像毎に作成された要素情報が送信情報格納部130に格納される。
【0027】
図4は、各分割画像毎に作成された要素情報の内容を示す図である。各分割画像には、一あるいは複数の輪郭線が含まれており、各輪郭線には一あるいは複数の区分領域が含まれている。図4において、「輪郭線」は着目している分割画像に含まれる輪郭線を特定するためのものであり、輪郭線の数に応じた識別番号が付されている。「区分領域」は、一の輪郭線に含まれる区分領域を特定するためのものであり、区分領域の数に応じた識別番号が付されている。「関数」は各区分領域に対応する近似関数を示している。「始点座標」は区分領域の一方の端部の座標を示している。なお、区分領域の他方の端部は、隣接する区分領域の一方の端部と一致するため、省略されている。「パラメータ」は近似関数の形状を特定するために必要な特性値であり、上述した(1)〜(3)に示すような関数の種類毎に異なる内容を有している。
【0028】
構成情報送受信処理部140は、送信情報格納部130に格納された構成情報をインターネット300を経由して受信側装置200に向けて配信する処理を行う。本実施形態では、この構成情報の配信は電子メールによって、すなわち、インターネット300上のメールサーバ310に電子メールを送信することにより行われる。例えば、構成情報を内容とするファイルが電子メールに添付されて送信される。また、構成情報送受信処理部140は、受信側装置200から送られてくる構成情報の送信要求を受信する処理を行う。本実施形態では、この送信要求も電子メールを用いて行われる。例えば、構成情報送受信処理部140は、定期的にメールサーバ310に構成情報の送信要求の電子メールの有無を問い合わせており、届いている場合にはその内容に基づいて送信要求元となるユーザ情報等を抽出する処理を行う。
【0029】
要素情報送信処理部150は、送信情報格納部130に格納された要素情報をインターネット300を経由して受信側装置に向けて配信する処理を行う。本実施形態では、この要素情報の配信はインターネット300上のFTPサーバ320を経由して行われる。すなわち、要素情報送信処理部150は、送信要求のあった構成情報に対応する要素情報をFTPサーバ320に送って蓄積する。その後、受信側装置200からFTPサーバ320に対して行われるダウンロード指示にしたがってこの蓄積された要素情報が読み出される。
【0030】
〔受信側装置の詳細構成〕
受信側装置200は、構成情報送受信処理部210、要素情報受信処理部220、受信情報格納部230、画像復元部240、操作部250、表示部252、プリンタ254を含んで構成されている。構成情報送受信処理部210は、インターネット300を経由して構成情報の送信要求を送信側装置100に向けて送信するとともに、この送信要求に応じて配信される構成情報を受信する処理を行う。上述したように、構成情報の送信要求の送信や、この送信要求に応じて配信される構成情報の受信は、インターネット300上のメールサーバ310を介した電子メールを用いて行われる。したがって、構成情報送受信処理部210は、構成情報の送信要求を電子メールで送信側装置100に向けて送信した後に、この送信要求に対応する構成情報が含まれる電子メールが届いているか否かをメールサーバ310に問い合わせ、届いている場合にはこの電子メールを受信し、この電子メールに添付されている構成情報を抽出する。抽出された構成情報は受信情報格納部230に格納される。要素情報受信処理部220は、インターネット300上のFTPサーバ320から要素情報をダウンロードする処理を行う。ダウンロードされた要素情報は受信情報格納部230に格納される。
【0031】
画像復元部240は、受信情報格納部230に格納された構成情報と要素情報に基づいて配信画像(漫画画像データ)を復元する。図4に示した要素情報を用いることにより、各区分領域の両端の位置とその間の輪郭線の形状を復元する処理を行うことができるため、この復元処理を全ての区分領域および全ての輪郭線について行うことにより、一つの分割画像を復元することが可能になる。同様にして、全ての分割画像が復元される。また、各分割画像の配置や大きさが図3に示した構成情報によってわかるため、結局、図2に示した配信画像全体を復元することができる。復元された配信画像は、表示部252に表示したり、プリンタ254を用いて紙媒体に印刷することができる。また、操作部250は、構成情報の送信要求を送る指示や、表示部252やプリンタ254を用いた配信画像の出力(表示、印刷)指示を行うためのものである。なお、上述した送信側装置100や受信側装置200は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置や通信機能を有するコンピュータによって実現される。例えば、受信側装置200では、購入した専用の画像配信ソフトウエアがあらかじめハードディスク装置にインストールされており、この画像配信ソフトウエアを実行することにより、送信側装置100との間の送信要求指示や構成情報等の送受信処理が行われる。また、この画像配信ソフトウエアには、暗号化された構成情報の解読に必要な第1の暗号キーが含まれている。
【0032】
上述した送信情報格納部130が送信情報格納手段に、構成情報送受信処理部140が第1の送信処理手段に、要素情報送信処理部150が第2の送信処理手段に、構成情報送受信処理部210が第1の受信処理手段に、要素情報受信処理部220が第2の受信処理手段に、画像復元部240が画像復元手段にそれぞれ対応する。また、配信画像格納部112が配信画像格納手段に、送信情報生成部120が送信情報生成手段に、分割画像抽出部122が分割画像抽出手段に、特徴量抽出部124が特徴量抽出手段に、関数近似部126が関数近似手段にそれぞれ対応する。また、メールサーバ310を介して行われる電子メールが第1の通信手段に、FTPサーバ320との間で行われる要素情報の送信、蓄積やダウンロードが第2の通信手段にそれぞれ対応する。また、図4に示した要素情報に含まれる関数、始点座標、パラメータが各分割画像を復元可能な符号化情報に対応する。
【0033】
本実施形態の画像配信システムはこのような構成を有しており、次に、この画像配信システムを用いて送信情報を作成する動作とこの送信情報を配信する動作について説明する。
【0034】
〔送信情報の作成動作〕
図5は、送信側装置100を用いて行われる送信情報作成の動作手順を示す流れ図である。まず、配信画像取込部110は、配信画像を取り込んで配信画像格納部112に格納する(ステップ100)。次に、送信情報生成部120内の分割画像抽出部122は、この配信画像に含まれる分割画像を抽出し(ステップ101)、構成情報を作成する(ステップ102)。作成された構成情報は送信情報格納部130に格納される。また、送信情報生成部120内の特徴量抽出部124は、各分割画像に対応する特徴量(輪郭線を構成する輪郭点列)を抽出し(ステップ103)、関数近似部126は抽出された特徴量を一あるいは複数の区分領域に分解した後に各区分領域を関数近似して要素情報を作成する(ステップ104)。作成された要素情報は送信情報格納部130に格納される。このようにして、取り込まれた配信画像が構成情報と要素情報とに分けられて送信情報が作成される。
【0035】
〔送信情報の配信動作〕
図6は、受信側装置200からの送信側装置100に送られてくる送信要求に応じて行われる送信情報配信の動作手順を示す流れ図である。まず、受信側装置200内の構成情報送受信処理部210から送信側装置100に向けて、電子メールで構成情報の送信要求を送る(ステップa1)。この送信要求は、メールサーバ310を経由して転送され(ステップb1)、送信側装置100内の構成情報送受信処理部140によって受信される(ステップc1)。
【0036】
構成情報送受信処理部140は、送信対象となる構成情報を送信情報格納部130から読み出して第1の暗号キーに対応する暗号化処理を行った後に(ステップc2)、この暗号化された構成情報を受信側装置に向けて電子メールで送信する(ステップc3)。この構成情報には、要素情報の解読に必要な第2の暗号キーが付加されている。この構成情報は、メールサーバ310を経由して転送され(ステップb2)、受信側装置200内の構成情報送受信処理部210によって受信される(ステップa2)。受信された構成情報は受信情報格納部230に格納される。
【0037】
送信側装置100内の要素情報送信処理部150は、送信した構成情報に対応する要素情報を送信情報格納部130から読み出して第2の暗号キーに対応する暗号化処理を行った後に(ステップc4)、この暗号化された要素情報をFTPサーバ320に向けて送信する(ステップc5)。FTPサーバ320は、この要素情報を受信して格納する(ステップb3)。
【0038】
受信側装置200内の要素情報受信処理部220は、構成情報が受信された後に、要素情報の送信指示(ダウンロード指示)をFTPサーバ320に対して行う(ステップa3)。FTPサーバ320は、このダウンロード指示を受け取ると(ステップb4)、要素情報を送信する(ステップb5)。
【0039】
受信側装置200内の要素情報受信処理部220は、このようなダウンロード手順にしたがって要素情報を受信し(ステップa4)、構成情報から抽出した第2の暗号キーを用いて解読する(ステップa5)。解読された要素情報は受信情報格納部230に格納される。その後、画像復元部240は、受信情報格納部230に格納された構成情報と要素情報を用いて配信画像を復元する(ステップa6)。
【0040】
このように、本実施形態の画像配信システムでは、配信画像を構成情報と要素情報に分離して異なる通信手段を介して配信しているため、一方の情報のみを不正に取得しても配信画像全体の復元を防止することができ、第三者による配信画像全体の不正な取得を有効に防止することができる。
【0041】
この構成情報には、配信画像における複数の分割画像のそれぞれの配置情報が含まれており、配信画像に含まれる複数の分割画像の配置情報と要素情報とを分けることにより、配置だけがわかったとしても各分割画像そのものが分からなければ配信画像全体を復元することができず、反対に配置が分からなければ各分割画像の並びが分からないため配信画像全体の把握が困難になる。
【0042】
また、各分割画像の形状を関数化近似して要素情報を作成することにより、要素情報のデータ量を少なくするとともに、受信側装置において配信画像を任意の大きさ(倍率)で表示、印刷した際の画像品質を向上させることができる。
【0043】
また、構成情報に分割画像の大きさを示すスケール情報を含ませることにより、要素情報のみを取得しても各分割画像を正しい大きさで再現することができないため、配信画像の内容を把握することがより困難になる。
【0044】
また、同じインターネット300を介して構成情報と要素情報を配信した場合であっても、異なるサーバを経由して配信することにより、2つの情報が同時に漏洩する危険性をより少なくすることができる。
【0045】
また、構成情報と要素情報を異なる通信手段で配信することに加えて、それぞれの情報を暗号化して送受信することにより、さらに第三者による配信画像の不正取得を防止することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、構成情報を電子メールで送信し、要素情報をFTPサーバ320を経由したダウンロードによって送信したが、通信手段はこれら以外を用いるようにしてもよい。例えば、FTPサーバの代わりにWWWサーバを経由するようにしてもよい。また、少なくとも一方の情報をインターネット300を介さない直接通信(例えば、専用回線を使ったり、特定の電話回線を介してピア・ツー・ピア通信を行う場合が考えられる)によって送信するようにしてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、画像配信に付随する課金方法については特に言及していないが、画像配信が有料の場合には要素情報を送受信する前に課金処理を実施することが望ましい。例えば、送信側装置100では図6に示したステップc3(あるいはc4)の動作が終了した後に、受信側装置200では図6に示したステップa2の動作が終了した後に課金処理が実施される。この課金処理は、受信側装置200では、課金処理用の画面を表示し(例えばクレジットカード情報の入力画面)、ユーザが必要な情報を入力することにより行われる。また、この課金処理は、送信側装置100では、受信側装置200から送信されてくる情報に基づく処理(例えばクレジットカード会社のサーバに対する照合、引き落とし依頼等の処理)を実施することにより行われる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一実施形態の画像配信システムの全体構成を示す図である。
【図2】分割画像と構成情報との関係を示す図である。
【図3】分割画像抽出部によって作成された構成情報の内容を示す図である。
【図4】各分割画像毎に作成された要素情報の内容を示す図である。
【図5】送信側装置を用いて行われる送信情報作成の動作手順を示す流れ図である。
【図6】受信側装置からの送信側装置に送られてくる送信要求に応じて行われる送信情報配信の動作手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0049】
100 送信側装置
110 配信画像取込部
112 配信画像格納部
120 送信情報生成部
122 分割画像抽出部
124 特徴量抽出部
126 関数近似部
130 送信情報格納部
140、210 構成情報送受信処理部
150 要素情報送信処理部
200 受信側装置
220 要素情報受信処理部
230 受信情報格納部
240 画像復元部
250 操作部
252 表示部
254 プリンタ
300 インターネット
310 メールサーバ
320 FTPサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側装置から受信側装置に対して配信画像を送信する画像配信システムであって、
前記送信側装置は、
前記配信画像に含まれる複数の分割画像のそれぞれに対応する構成情報と要素情報とを格納する送信情報格納手段と、
前記送信情報格納手段に格納された前記構成情報を読み出して第1の通信手段を用いて送信する第1の送信処理手段と、
前記送信情報格納手段に格納された前記要素情報を読み出して前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を用いて送信する第2の送信処理手段とを備え、
前記受信側装置は、
前記第1の通信手段を用いて前記構成情報を受信する第1の受信処理手段と、
前記第2の通信手段を用いて前記要素情報を受信する第2の受信処理手段と、
前記第1および第2の受信処理手段によって受信された前記構成情報と前記要素情報とに基づいて、前記複数の分割画像によって構成される前記配信画像を復元する画像復元手段とを備えることを特徴とする画像配信システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記構成情報は、前記配信画像における前記複数の分割画像のそれぞれの配置情報を含んでいることを特徴とする画像配信システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記要素情報は、前記複数の分割画像のそれぞれを復元可能な符号化情報を含んでおり、
前記符号化情報は、前記分割画像に含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を一あるいは複数の関数で近似した際の関数の内容を特定する近似関数情報であることを特徴とする画像配信システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記構成情報に前記分割画像の大きさを示すスケール情報を含ませることを特徴とする画像配信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段は、インターネット上の異なるサーバを介した通信によって行われることを特徴とする画像配信システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の通信手段は、メールサーバを介した通信によって行われ、
前記第2の通信手段は、FTPサーバあるいはWWWサーバを介した通信によって行われることを特徴とする画像配信システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記構成情報は、第1の暗号キーに対応する暗号化がなされており、
前記第1の受信処理手段は、前記第1の暗号キーに基づいて前記構成情報を解読することを特徴とする画像配信システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記要素情報は、第2の暗号キーに対応する暗号化がなされており、
前記構成情報には、前記第2の暗号キーが付加されており、
前記第2の受信処理手段は、前記第2の暗号キーに基づいて前記要素情報を解読することを特徴とする画像配信システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記送信側装置は、
前記配信画像を格納する配信画像格納手段と、
前記配信画像格納手段から前記配信画像を読み出し、前記構成情報と前記要素情報を作成して前記送信情報格納手段に格納する送信情報生成手段と、
をさらに備えることを特徴とする画像配信システム。
【請求項10】
請求項3または4において、
前記送信側装置は、前記配信画像を格納する配信画像格納手段と、前記配信画像格納手段から前記配信画像を読み出し、前記構成情報と前記要素情報を作成して前記送信情報格納手段に格納する送信情報生成手段とをさらに備え、
前記送信情報生成手段は、
前記配信画像に基づいて前記複数の分割画像を抽出する分割画像抽出手段と、
前記分割画像抽出手段によって抽出された前記複数の分割画像のそれぞれに含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特徴量を一あるいは複数の関数で近似する関数近似手段と、
を有することを特徴とする画像配信システム。
【請求項11】
送信側装置から受信側装置に対して配信画像を送信する画像配信方法であって、
前記送信側装置から前記受信側装置に向けて、前記配信画像に含まれる複数の分割画像のそれぞれに対応する構成情報を第1の通信手段を用いて送信する第1のステップと、
前記送信側装置から前記受信側装置に向けて、前記複数の分割画像のそれぞれ毎の要素情報を、前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を用いて送信する第2のステップと、
前記受信側装置において、受信した前記構成情報と前記要素情報とに基づいて、前記複数の分割画像によって構成される前記配信画像を復元する第3のステップと、
を有することを特徴とする画像配信方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記構成情報は、前記配信画像における前記複数の分割画像のそれぞれの配置情報を含んでおり、
前記要素情報は、前記複数の分割画像のそれぞれを復元可能な符号化情報を含んでおり、
前記符号化情報は、前記分割画像に含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を一あるいは複数の関数で近似した際の関数の内容を特定する近似関数情報であることを特徴とする画像配信方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記構成情報に前記分割画像の大きさを示すスケール情報を含ませることを特徴とする画像配信方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかにおいて、
前記第1の通信手段は、インターネット上のメールサーバを介した通信によって行われ、
前記第2の通信手段は、インターネット上のFTPサーバあるいはWWWサーバを介した通信によって行われることを特徴とする画像配信方法。
【請求項15】
請求項12または13において、
前記配信画像に基づいて前記複数の分割画像を抽出する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて抽出された前記複数の分割画像のそれぞれに含まれる輪郭形状、濃度変化、色変化などの特徴量を抽出する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて抽出された前記特徴量を一あるいは複数の関数で近似する第6のステップと、
をさらに有し、前記第4のステップにおける前記複数の分割画像の抽出結果に基づいて前記構成情報が作成され、前記第6のステップにおける関数近似の結果に基づいて前記符号化情報が作成されることを特徴とする画像配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−332822(P2006−332822A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150404(P2005−150404)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】