説明

画期的新薬開発のためのターゲットタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する新薬候補物質のスクリーニング方法

本発明は、タンパク質−タンパク質相互作用阻害物質のスクリーニング方法に関し、より詳しくはゾル−ゲル物質とタンパク質が混合されたスポットが固定化されているタンパク質チップを利用して、タンパク質−タンパク質相互作用阻害物質をスクリーニングする方法に関する。本発明によると、ゾル−ゲル物質を用いて、96ウェルプレートで簡便にタンパク質チップを作製でき、天然物質ライブラリーから簡単にタンパク質−タンパク質相互作用阻害物質をスクリーニングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質−タンパク質相互作用阻害物質のスクリーニング方法に関し、より詳しくは、ゾル−ゲル物質とタンパク質が混合されたスポットが固定化されているタンパク質チップを利用して、タンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質−タンパク質相互作用を阻害する低分子阻害剤の開発には多くの問題点があることが知られているが、その重要性のためにタンパク質−タンパク質相互作用を阻害できる低分子物質を開発しようとする試みが継続的に進行し、いくつかの成功例がある(Nature Reviews Drug Discovery, 3:853, 2004)。
【0003】
新薬開発の方法は、主に特定の分析システムを構築し、これに対して保有している数十〜数百万種の化合物ライブラリーを高速でスクリーンする方法を取っており、このような方法は、化合物の保有量や高速スクリーンシステムの構築等の様々な制約のため、主に多国籍製薬企業等で行われているが、小規模の実験室では適用するには困難であった。さらに従来構築されていなかった天然物ライブラリーのような数万個程度の比較的小さい大きさのライブラリーを利用した新規高速スクリーンシステムを構築するためには、少ない費用で短い時間に概念を立証することが必要である。また学校及び研究所のような中、小規模の実験室では新しい概念の分析システム及びスクリーニングシステムを用いてリード化合物を確保する戦略が必要である。
【0004】
そのためには、少ないサンプルに適用できるチップベースのスクリーニング(chip-based screening)が適当であり、かつ既に構築された安価な高分子を利用したチップシステムを利用して、新しい新薬探索方法を確立して、オリジナル技術を確保することが新薬開発産業のインフラの向上に寄与すると予想される。
【0005】
そこで、本発明者等は、実験室ベースの小規模実験でも有用に使用できるチップベースのタンパク質−タンパク質相互作用の阻害剤をスクリーニングする方法を開発しようと鋭意努力した結果、ゾル−ゲル物質とタンパク質を混合してスポッティングしたタンパク質チップを利用する場合、既存の抗体分析方法を利用して、簡便に阻害剤をスクリーニングできることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、タンパク質−タンパク質相互作用を簡便に分析できるチップベースのタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供することである。
【0007】
本発明は(a)ゾル−ゲル物質とタンパク質が混合されたスポットが固定化されているタンパク質チップを作製する工程;(b)前記タンパク質チップと前記チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質を前記結合を阻害する候補物質の存在下において反応させる工程;及び(c)前記チップに固定化されたタンパク質と前記固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質の間の結合を測定して、前記候補物質がない場合のタンパク質−タンパク質相互作用に比べて、タンパク質−タンパク質相互作用が阻害される場合の候補物質をタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質として選定する工程を含むタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質のスクリーニング方法を提供する。
【0008】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】サイクリンTタンパク質の構造の相同性を示した図である。
【図2】組み換えCDK9及びサイクリンTのE.coli BL21での発現を確認したSDS−PAGEの結果を示した図である。
【図3】組み換えヒトCDK9の発現パターン及び精製過程を確認した図である。
【図4】組み換えヒトサイクリンTの発現パターン及び精製過程を確認した図である。
【図5】ゾル−ゲルチップでCDK9とヒトサイクリンT1の相互作用をタンパク質チップ上で確認する方法を示した模式図である。
【図6】ゾル−ゲルチップでタンパク質間結合を確認した結果を示した図である。
【図7】ゾル−ゲルチップで天然物4つを利用した予備実験の結果を示した図である。
【図8】ゾル−ゲルチップでの分析条件確立のための結果を示した図である。
【図9】ゾル−ゲル物質の組成による分析結果を示した図である。
【図10】ゾル−ゲル物質の組成による分析結果を示した図である。
【図11】天然物ライブラリーを利用したCDK9とヒトサイクリンT1の相互作用阻害効果を確認した結果を示した図である。
【図12】ゾル−ゲル物質の組成によるBSAシグナルを確認した結果を示した図である。
【図13】ゾル−ゲル物質の組成によるBSAシグナルを確認した結果を示した図である。
【図14】天然物fullスクリーニング用タンパク質−タンパク質阻害分析システムの作製過程を示した図である。
【図15】三つの天然物を利用した低密度(low density)チップでのDK9とヒトサイクリンT1の相互作用阻害効果を分析した図である。
【図16】サイクリンT1とCDK9の相互作用機構を示した模式図である。
【図17】サイクリンT1のアプタマー作製のためSELEX方法を示した模式図である。
【図18】サイクリンT1アプタマーの作用機構を示した模式図である。
【図19】ゾル−ゲルチップでのアプタマーとサイクリンT1の結合を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0011】
一観点において、本発明は、(a)ゾル−ゲル物質とタンパク質が混合されたスポットが固定化されているタンパク質チップを作製する工程;(b)前記タンパク質チップと前記チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質を、前記結合を阻害する候補物質の存在下において反応させる工程;及び(c)前記チップに固定化されたタンパク質と前記固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質の間の結合を測定して、前記候補物質がない場合のタンパク質−タンパク質相互作用に比べて、タンパク質−タンパク質相互作用が阻害される場合の候補物質をタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質として選定する工程を含むタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質のスクリーニング方法に関する。
【0012】
本発明において、前記候補物質は、天然物、化合物及びアプタマーからなる群から選択されることを特徴とし、前記工程(c)におけるタンパク質間の結合は、タンパク質チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質に対する抗体を利用して確認することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記スポットは、96ウェルプレートに固定されていることを特徴とする。本発明において、前記タンパク質チップに固定化されたタンパク質は、サイクリンT1で、タンパク質チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質はCDK9であることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記工程(c)において候補物質をタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質として選定することは、候補物質がチップに固定化されたタンパク質と結合して、タンパク質チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質がタンパク質チップに固定化されたタンパク質と結合できないようにする場合、前記候補物質を阻害物質として選定する。
【0015】
例えば、サイクリンT1は、CDK9と相互作用するタンパク質であり、サイクリンT1が固定されたタンパク質チップに候補物質とCDK9を反応させた際に、候補物質がサイクリンT1と結合して、CDK9がサイクリンT1に結合することを抑制する場合、候補物質をサイクリンT1とCDK9の相互作用を阻害する物質として選定でき、前記阻害はCDK9に対する抗体をタンパク質チップで処理し、Cy3等の蛍光物質で標識されたCDK9抗体に対する二次抗体を処理して確認できる。即ち、前記候補物質がない場合におけるCDK9抗体シグナルに比べて、候補物質を処理した際のCDK9抗体シグナルが減少する場合、前記候補物質をサイクリンT1−CDK9相互作用に対する阻害物質として選定することができる。
【0016】
本発明において、前記ゾル−ゲル物質は、TMOS 17.5重量部、MTMS 5〜15重量部及びGPTMOS 0〜15重量部を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明では新しい医薬探索技術を確立して、これから出てきた候補群を検証して新しいタンパク質−タンパク質相互作用阻害天然物質を発掘するため、タンパク質−タンパク質相互作用に対するチップベースの天然物スクリーニングシステムを構築した。
【0018】
本発明の一実施例においては、サイクリンT/Cdk9の相互作用を分析できるチップベースのシステムを確立して、サイクリンT/Cdk9阻害剤候補をスクリーニングした。即ち、図5に示したように、ゾル−ゲル物質と混合されたサイクリンTタンパク質を基板上にスポッティングして、タンパク質チップを作製し、前記タンパク質チップを放線菌培養抽出液、カビ培養抽出液、植物抽出液及びアプタマー等のサイクリンT/Cdk9の相互作用阻害物質候補及びCdk9と反応させた後、Cdk9抗体及びCy3で標識された二次抗体を順に反応させた後、スキャニングし、シグナルの有無を確認して、シグナルが確認されないスポットに反応させた物質を、阻害物質として確認した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0020】
《実施例1:サイクリンT遺伝子及びCDK9遺伝子のクローニング及びサイクリンT及びCDK9の精製》
サイクリンTは、相同性が大きいタンパク質であり、特に、サイクリンボックスという共通部分が存在し、この部分がCDK9との結合を左右すると知られており、ヒトサイクリンT(GenBank #NM_001240)のサイクリンボックスは、266個のアミノ酸で形成されて、配列番号1の塩基配列として表した(図1)。
ヒトCDK9(GenBank#BC001968)は、配列番号2で表した。
CDK9を増幅するための鋳型として、ヒトcDNA mixtureを用い、ヒトサイクリンT1を増幅するための鋳型としては、HEK293細胞とHeLa細胞の1:1混合物を用いた。
【0021】
PCRに用いられたプライマーは、下記に示す。
配列番号3:GAATTCATGGCGAAGCAGTACGACTC(ヒトCDK9フォワードプライマー、EcoRI site含む)
配列番号4:CTCGAGGAAGACGCGCTCAAACTCC(ヒトCDK9リバースプライマー、XhoI site含む)
配列番号5:GAATTCATGGAGGGAGAGAGGAAGAACA(ヒトサイクリンT1フォワードプライマー、EcoRI site含む)
配列番号6:GTCGACAGCCTCGCATGCCCTCCAA(ヒトサイクリンT1リバースプライマー、SalI site含む)
【0022】
ヒトCDK9とヒトサイクリンT1の遺伝子を増幅した後、Tベクター(Promega,USA)にライゲーションしてTAクローニングし、大腸菌DH5αに形質転換させた。形質転換されたコロニーからプラスミドを精製し、電気永動でクローニングされた遺伝子を確認し、シークエンスを行い、塩基配列を確認し、クローニングされた遺伝子をpET28aベクター(Novagen,USA)でクローニングし、E.coli BL21 cellに形質転換させた。
【0023】
前記製造されたヒトCDK9遺伝子とヒトサイクリンT1遺伝子により形質転換されたE.coli BL21を各々培養し、IPTGで各遺伝子の発現を誘導した後、追加培養してから、菌体を回収して、タンパク質発現の程度をSDS−PAGEで確認した(図2)。
【0024】
回収された各々の菌体にPMSFが含まれているHis−Tag結合バッファー10mLを添加して懸濁させて、超音波破砕して、菌体を破った溶液をHis tag resinに適用させて、ヒトCDK9遺伝子及びヒトサイクリンT1を各々精製して、SDS−PAGEでヒトCDK9タンパク質及びヒトサイクリンT1タンパク質が十分に発現したかを確認した(図3及び図4)。
【0025】
《実施例2:チップ上でのタンパク質と阻害剤の相互作用確認》
ゾル−ゲルチップで、CDK9とヒトサイクリンT1の相互作用を確認するため、図5に示した方法でタンパク質間の結合をチップ上で確認した。
ヒトサイクリンT1及びCDK9を各々50ngずつゾル−ゲル物質組成1(25.0% TMOS、7.5% MTMS、5% GPTMOS)に混ぜてArrayerで96−ウェルプレートにスポッティングして固定化した。アフィニティーのない物質がチップに付着することを防止するため、スキムミルクが入っている結合バッファーでブロッキングした後、CDK9に結合する抗体のAnti−CDK9を1/500濃度で、常温で1時間反応させた。スキャナーでシグナルを確認するため、cy3で標識された二次抗体を1/1000濃度で、常温で1時間反応させた後、スキャンしてシグナルを確認した(図6)。
【0026】
その結果、図6に示したように、弱いもののCDK9にAnti−CDK9が結合してシグナルが見られることが分かった。
天然物ライブラリーを本格的にスクリーニングする前に4種類の天然物を選定してチップベースのアッセイシステムの条件を確立した。前記結果からCDK9のシグナルが弱かったため、チップに固定化するヒトサイクリンT1とCDK9の量を50ngの3倍の150ngに増やして、ゾル−ゲル物質組成2(25.0% TMOS、7.5% MTMS、15% GPTMOS)に混ぜて、96−ウェルプレートに固定化した。
【0027】
スキムミルクが入っている結合バッファーでブロッキングした後、CDK9(50ng/rxn vol.50μL)を反応させて、洗浄した後、Anti−CDK9を1/500濃度で、常温で1時間反応させた後、洗浄してcy3で標識された二次抗体を1/1000濃度で、常温で1時間反応させて、洗浄した後、スキャニングしてシグナルを確認した。
【0028】
その結果、図7に示したように、Anti−CDK9のみを反応させたウェルでは、CDK9スポットのシグナルが確認されたのに対して、CDK9とAnti−CDK9を反応させたウェルではシグナルが現れなかった。従って、天然物ライブラリースクリーニングの前にCDK9とヒトサイクリンT1の結合をチップ上で確認する実験を優先的に実施することにした。
【0029】
ヒトサイクリンT1の180ngとCDK9の150ngを各々ゾル−ゲル物質組成1(25.0% TMOS、7.5% MTMS、5% GPTMOS)に混ぜて、96−ウェルプレートにスポッティングした。スキムミルクが入っている結合バッファーでブロッキングした後、CDK9(50ng/rxn vol.50μL)を反応させて、洗浄した後、Anti−CDK9を1/500濃度で、常温で1時間反応させた後、洗浄してcy3で標識された二次抗体を1/1000濃度で、常温で1時間反応した後、洗浄してスキャニングでシグナルを確認した。
【0030】
その結果、図8に示したように、CDK9とAnti−CDK9、二次抗体を全て反応させた2番ウェルでは何も固定化しない陰性スポットでもシグナルが見られるのに対して、Anti−CDK9、二次抗体を反応させた1番、4番ウェルではシグナルがほとんど見られず、同様の実験を繰り返すと、陽性スポットを除いた全てのスポットでシグナルが見られなかった。
【0031】
前記二つの実験と先の図4の結果からゾル−ゲル物質の組成がタンパク質に合わなかったため、実験結果が一定に出なかったと判断して、先に適切なゾル−ゲル物質組成を選定することにした。また、陰性スポットでシグナルが出ることからブロッキングが正しくできでいないと考えられ、以後の実験からブロッキングする時間を1時間から2時間に増やした。
【0032】
《実施例3:ゾル−ゲル物質選定》
タンパク質を固定化してアッセイするのに適切なゾル−ゲル物質を選定するため、実施例2で用いた組成1(25.0% TMOS、7.5% MTMS、5% GPTMOS)とポアサイズが組成2−9より大きかったため、大きいタンパク質分子をアッセイするのに良い組成である組成2(25.0% TMOS、7.5% MTMS、15% GPTMOS)の2種類ゾル材料に図9のように、CDK9(150ng/ゾル−ゲル物質11μL)とヒトサイクリンT1(180ng/ゾル−ゲル物質11μL)、陽性対照群及び陰性対照群を各々固定化した後、実施例2と同様な方法で、抗体を処理した後、スキャニングした。
【0033】
その結果、図9に示したように、組成2でCDK9とAnti−CDK9がよく結合してシグナルが見られ、Anti−CDK9はヒトサイクリンT1には結合しないことを確認した。従って、以後の実施例ではゾル−ゲル物質組成2を利用した。
【0034】
また、ゾル−ゲルチップにCDK9を反応させてチップ上でヒトサイクリンT1と結合できるかを確認した。図9のようなゾル−ゲルチップをスキムミルクバッファーでブロッキングした後、CDK9(60ng/rxn vol.60μL)を反応させて洗浄した後、CDK9に結合する抗体であるAnti−CDK9を1/500濃度で、常温で1時間反応させて、洗浄した後、Cy3で標識された二次抗体を1/1000濃度で、常温で1時間反応させて、スキャニングした。
【0035】
その結果、図10に示したように、組成1では陰性スポットでもシグナルが見られるが、組成2ではヒトサイクリンT1とCDK9が結合したスポットでシグナルが見られ、またCDK9を反応させないウェルでヒトサイクリンT1にAnti−CDK9が結合しないことも確認した。
【0036】
前記結果から、タンパク質の相互結合を分析するには組成1が適していることを確認し、チップベースの分析システムを介して、チップ上でCDK9とヒトサイクリンT1の結合を確認した。
【0037】
《実施例4:チップベースの分析システムを利用した天然物ライブラリースクリーニング》
実施例2及び3で確立されたタンパク質相互作用に対するチップベースのアッセイシステムを利用して、天然物ライブラリーをスクリーニングした。天然物ライブラリーは韓国生命工学研究院から放線菌培養抽出液21種、カビ培養抽出液40種及び植物抽出液19種を分譲して用いて、放線菌培養抽出液はアセトン:水=1:1溶媒に溶解し、植物抽出液は5mmg/mL濃度で水に溶解した。
【0038】
一次的に放線菌培養抽出液#15、カビ培養抽出液(バッチA)#25、カビ培養抽出液(バッチB)中#55、植物抽出液#411を選定して、チップベースのアッセイに適用した。前記天然物抽出液は、1/100の濃度で1μLずつ、ヒトサイクリンT1とCDK9(control)は、150ngずつゾル−ゲル物質組成2と混ぜて、11μLで準備した後、96−ウェルプレートに固定化した。
【0039】
スキムミルクバッファーでブロッキングした後、CDK9(60ng/rxn vol.60μL)を反応させて、洗浄した後、CDK9に結合する抗体であるAnti−CDK9を1/500濃度で、常温で1時間反応させて洗浄した後、その上にcy3で標識された二次抗体を1/1000濃度で、常温で1時間反応させた。
【0040】
その結果、図11に示したように、CDK9を反応させないウェルでもヒトサイクリンT1にシグナルが現れた。しかしながら、これはゾル−ゲルスポットの乾燥時間が長すぎ、その後スキャニングしたために、バックグラウンドがシグナルのように見られたと考えられた。従って、スキャニング時にスポットを乾燥させる時間を一定にして、分析を行うようにした。
【0041】
《実施例5:チップベースの分析システムのゾル−ゲル物質改良》
ゾル−ゲルの処方(formulation)を変化させて、CDK9とサイクリンT1の相互作用が最もよく行われる組成を探すため、組成1で三つのシリケートモノマーとバッファーの組成を変化させて、組成1とは異なったポアサイズを有するように新しい組成を製造した。
【0042】
各々の組成でのタンパク質相互作用を確認するため、まずBSAを各々の組成のゾル−ゲル物質で固定化して、96ウェルプレートにスポッティングした。500ng/μLのBSAを各組成のゾル−ゲルに混ぜてスポッティングし、シグナルを確認するため、Cy3−anti−BSAを1/500に希釈して1時間反応させた後、洗浄して、スキャニングした。
【0043】
その結果、図12に示したように、元の組成である組成1(2−9)より組成T、組成3(25.0% TMOS、7.5% MTMS、0% GPTMOS、2−9C)でさらに濃いシグナルを確認し、残りの組成のゾル−ゲルスポットは、ウェル表面で分析途中に落ちたことを確認することができた。
【0044】
組成3(2−9C)及び組成1(2−9)を利用してBSAを固定化して、前記と同じ方法で分析を行った後、シグナルを確認した結果、組成1より組成3のシグナルがさらに鮮明であることを確認することができた(図13)。
【0045】
《実施例6:チップベースの分析を利用した天然物スクリーニング》
実施例5で確認された組成を利用して、図14に示したように、天然物fullスクリーニング用タンパク質−タンパク質阻害分析システムを作製した。選ばれた三つの天然物を基に、再び低密度チップを作製した時、図15に示したように、Anti−CDK9と二次抗体だけ反応させた場合には、CDK9と天然物を固定したスポットだけでシグナルが見られ、CDK9、Anti−CDK9と二次抗体を反応させた場合にはCDK9と天然物、ヒトサイクリンT1と天然物を固定化したスポット全部からシグナルが見られたが、シグナルが弱く減少することも観察された。
【0046】
従って、天然物中、放線菌培養抽出液#15、かび培養抽出液(バッチA)#25、カビ培養抽出液(バッチB)#55、植物抽出液#411は、CDK9とヒトサイクリンT1の結合に弱く作用していることが分かった。
【0047】
《実施例7:CDK9とサイクリンT1の相互作用を阻害する核酸マーカー開発》
本発明のチップベースのシステムがタンパク質相互作用に対する阻害剤開発に適用作用するかを検証するため、アプタマーを作製して、検証を行った。
【0048】
In vivoでCDK9とサイクリンT1が結合すると、Tatタンパク質がサイクリンT1のC−ターミナルに結合して、RNAポリメラーゼが結合しながら細胞分裂に対する機構が作用するようになる(図16)。
【0049】
CdK9と結合する部分であるサイクリンTのサイクリンボックスに対してC−ターミナル部位がない新しいタンパク質を作製し、SELEX法でこれに対するRNAアプタマー(aptamer)を開発した。
鋳型:GGTAATACGACTCACTATAGGGAGATACCAGCTTATTCAATT−N40−AGATAGTAAGTGCAATCT
【0050】
40bpのランダム配列を有した1本鎖を注文作製して、PCR後、逆転写して、1015のcomplexityを有するRNAライブラリーを作製した。
【0051】
タンパク質はよく結合するが、DNA及びRNAは結合しないニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)を利用してフィルター結合アッセイ技法を導入してサイクリンT1を固定化した。
【0052】
RNAライブラリーとターゲットタンパク質であるサイクリンTを1:1の割合で2時間反応させた後、ニトロセルロースメンブレンに移してフィルタリングし、タンパク質に結合しないRNA分子を洗浄した。メンブレンでタンパク質−RNAを溶出させて、PCI処理後、エタノール沈殿過程を介してRNAを取得した。前記取得されたRNAをPCRで増幅させ、逆転写して、SELEXを行う新しいライブラリーを作製した。前記過程を8回繰り返しサイクリンTに対するアプタマーを取得した(図17)。
【0053】
前記アプタマーをTA cloning後、任意のコロニーを採取してシーケンシングして、アプタマーシーケンス(配列番号7〜10)を確認して、m−foldプログラムを利用して、二次構造を確認した。
配列番号7:UUACAGAACAACCAACGUCGCUCCGGGUACUUCUUCAUCG
配列番号8:ACCATCGCGGAAGTCCAGTCTGCCATCAAAATCCGAAGTG
配列番号9:AATTCTCTCTCTTCATAATATTCCGGCGTCTACATCCACT
配列番号10:CACGCGTTCAACCCCCGGAATTTAGCAATAGCAGATTACG
【0054】
前記アプタマーは、サイクリンI1のN−ターミナルの部分に結合して、CDK9との相互作用を阻害することによって、RNAポリメラーゼが結合できないようにして、細胞の増殖と予想した(図18)。
【0055】
ゾル−ゲル2−9C組成を利用して、サイクリンT1を固定化させて、アプタマーとの結合の程度を確認した。サイクリンT1が固定化されているウェル中に4個のCy3 labeled aptamerを各々2時間ずつ反応させた後、洗浄してスキャニングして、サイクリンT1と結合するアプタマーとサイクリンT1と結合しないアプタマーを確認した(図19)。
【0056】
サイクリンT1(1mg/1mL)をゾル−ゲル組成3によく混ぜて、96ウェルプレートにスポッティングして、サイクリンT1が固定化されているチップを作製した。各ウェルにアプタマー、CDK9、anti−CDK9とCy3−標識二次抗体を順に1時間ずつ反応させた後、洗浄した。
【0057】
前の結果から、サイクリンT1と結合しないアプタマーを反応させたウェルにはゾル−ゲルの中のサイクリンT1とCDK9が結合してシグナルが確認され、サイクリンT1と結合したアプタマーを反応させたウェルにはシグナルが確認されなかった。
この結果から、本発明に係るチップベースのタンパク質−タンパク質阻害剤スクリーニングシステムが作用することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明によると、ゾル−ゲル物質を用いて、96ウェルプレートで簡便にタンパク質チップを作製でき、天然物質ライブラリーから簡単にタンパク質−タンパク質相互作用阻害物質をスクリーニングすることができる。
【0059】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質のスクリーニング方法:
(a)ゾル−ゲル物質とタンパク質とが混合されたスポットが固定化されているタンパク質チップを作製する工程;
(b)前記タンパク質チップと、前記チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質とを、前記結合を阻害する候補物質の存在下において反応させる工程;及び
(c)前記チップに固定化されたタンパク質と、前記固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質との間の結合を測定して、前記候補物質がない場合のタンパク質−タンパク質相互作用に比べて、タンパク質−タンパク質相互作用が阻害される場合の候補物質をタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する物質として選定する工程。
【請求項2】
前記候補物質は、天然物、化合物及びアプタマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)におけるタンパク質間の結合は、タンパク質チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質に対する抗体を利用して確認することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スポットは、96ウェルプレートに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質チップに固定化されたタンパク質は、サイクリンT1で、タンパク質チップに固定化されたタンパク質に結合能を有するタンパク質はCDK9であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ゾル−ゲル物質は、TMOS 17.5重量部、MTMS 5〜15重量部及びGPTMOS 0〜15重量部を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−528323(P2012−528323A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512976(P2012−512976)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003393
【国際公開番号】WO2010/137903
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(508290127)トングク ユニバーシティー インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション (4)
【氏名又は名称原語表記】DONGGUK UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】26,Pil−dong 3−ga,Jung−gu,Seoul 100−715,Republic of Korea
【Fターム(参考)】