説明

画素補間方法

【課題】画素補間処理における偽色の発生を低減させることを課題とする。
【解決手段】画像処理回路3は、RGBベイヤ配列の画素を入力する。彩度値算出回路31は、注目画素の周辺領域の彩度を評価する彩度係数Kを算出する。相関値算出回路32は、グレー画像用とカラー画像用の相関値を算出する。彩度係数Kが閾値TH1より大きい場合には、カラー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とが選択され、彩度係数Kが閾値TH1以下で閾値TH2より大きい場合には、グレー画像用・カラー画像用の相関値から総合判断して得られた相関値を用いた相関判定方法と、カラー画像用の画素補間方法とが選択され、彩度係数Kが閾値TH2以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とグレー画像用の画素補間方法とが選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等に備えられる画像処理回路で実行される画素補間技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等で利用されるCCD,CMOSなどの撮像素子は、色フィルタを介して受光する光を光電変換して画素信号を出力する。この色フィルタには、RGB系色フィルタやYMCK系色フィルタなどがある。そして、単板式の撮像素子からは1画素について1色の画素信号が出力される。たとえば、RGB系色フィルタを用いた場合、1画素についてR(赤色)、G(緑色)、B(青色)いずれかの色成分の画素信号が出力される。
【0003】
このため、単板式のカラー撮像素子から出力された画素信号については、他の色成分の画素信号を補間処理する必要がある。そして、この補間処理に様々なアルゴリズムが用いられている。たとえば、水平方向と垂直方向の相関度を算出し、相関度の高い方向の画素を用いて画素補間を行う方法が行われている。あるいは、注目画素と周辺画素の距離に応じて重み付けを行った上で画素補間を行う方法などが行われている。
【0004】
下記特許文献1においては、画像の中のグレー領域とカラー領域を判別し、領域の特性に応じた画素補間を適用させるようにしている。特に、グレー領域とカラー領域の境界に位置する領域について偽色の発生を抑える工夫がなされている。具体的には、グレー領域とカラー領域の境界にある領域について、相関方向についてはグレー画像としての判定を行い、画素補間についてはカラー画像用のものを適用させるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−186965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の画素補間方法を用いることで、画素補間による偽色を低減させることが可能である。つまり、グレー領域とカラー領域の境界にある領域では、RGBの各色成分の画素値が近似していることに着目し、RGBを区別することなく、注目画素により近い画素を用いて相関方向を判定する。これに対して、画素補間はRGBを区別して処理することで、より精度の高い補間結果を得るように工夫している。
【0007】
このように、グレー画像とカラー画像の境界にある領域で、特に画素補間の工夫を必要としているのは、この領域において水平あるいは垂直方向の細線など、高周波成分について偽色が発生することがあるためである。
【0008】
そこで、本発明は、グレー画像とカラー画像の境界にある領域において、画素補間による偽色の低減をさらに有効に実現する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の画素補間方法は、a)所定の色空間の画素信号を入力する工程と、b)注目画素及びその周辺画素で構成される領域の彩度評価値を算出する工程と、c)前記彩度評価値に基づいて前記注目画素における相関判定方法と画素補間方法とを選択する工程と、d)選択された画素補間方法を用いて、選択された相関判定方法により決定された相関方向に関して前記注目画素の画素補間処理を実行する工程と、を備え、前記工程c)は、所定の2つの閾値TH1,TH2(ただし、TH1≧TH2とする。)を用いて、前記彩度評価値が閾値TH2以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とグレー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値から選択された相関値を用いた相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH1より大きい場合には、カラー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の画素補間方法において、前記工程c)は、c−1)前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値のうち、前記注目画素における相関をより高く反映していると判定される相関値を用いた相関判定方法を選択する工程、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の画素補間方法は、a)所定の色空間の画素信号を入力する工程と、b)注目画素及びその周辺画素で構成される領域の彩度評価値を算出する工程と、c)前記彩度評価値に基づいて前記注目画素における相関判定方法と画素補間方法とを選択する工程と、d)選択された画素補間方法を用いて、選択された相関判定方法により決定された相関方向に関して前記注目画素の画素補間処理を実行する工程と、を備え、前記工程c)は、所定の3つの閾値TH1,THM,TH2(ただし、TH1≧THM≧TH2とする。)を用いて、前記彩度評価値が閾値TH2以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とグレー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値THM以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値THMより大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値から選択された相関値を用いた相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH1より大きい場合には、カラー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の画素補間方法において、前記工程c)は、c−1)前記彩度評価値が閾値THMより大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値のうち、前記注目画素における相関をより高く反映していると判定される相関値を用いた相関判定方法を選択する工程、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2または請求項4に記載の画素補間方法において、前記工程c−1)は、互いに直交する第1の方向と第2の方向について、グレー画像用の第1の方向に関する相関値とグレー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A1と、カラー画像用の第1の方向に関する相関値とカラー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A2とを算出し、差分絶対値A1と差分絶対値A2との差分絶対値A3が所定の閾値THA以下であるとき、第1の方向および第2の方向については、グレー画像用とカラー画像用の相関値のうち、それぞれ相関の高い方の相関値を用いることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項2または請求項4に記載の画素補間方法において、前記工程c−1)は、互いに直交する第1の方向と第2の方向について、グレー画像用の第1の方向に関する相関値とグレー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A1と、カラー画像用の第1の方向に関する相関値とカラー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A2とを算出し、差分絶対値A1と差分絶対値A2との差分絶対値A3が所定の閾値THAより大きいとき、差分絶対値A1の方が大きい場合には、第1の方向および第2の方向について、グレー画像用の相関値を用い、差分絶対値A2の方が大きい場合には、第1の方向および第2の方向について、カラー画像用の相関値を用いることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の画素補間方法において、前記第1の方向は垂直方向であり、前記第2の方向は水平方向であることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の画素補間方法において、前記第1の方向は水平方向に対して45度の傾きのある方向であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の画素補間方法において、前記工程b)は、b−1)前記注目画素及び前記周辺画素を用いて、色成分ごとの画素平均値に基づく色差成分値から第1色差成分評価値を算出する工程と、b−2)前記注目画素及び前記周辺画素を用いて、所定の方向に関する色差成分値を累積し、第2色差成分評価値を算出する工程と、b−3)前記第1色差成分評価値と前記第2色差成分評価値とを比較して、色差成分のレベルが小さい方を前記彩度評価値として選択する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9に記載の画素補間方法において、前記工程b−2)は、b−2−1)前記注目画素の周辺画素を用いて、垂直方向に関して色差成分値を累積し、垂直色差成分評価値を算出する工程と、b−2−2)前記注目画素の周辺画素を用いて、水平方向に関して色差成分値を累積し、水平色差成分評価値を算出する工程と、を含み、前記工程b−3)は、b−3−1)前記第1色差成分評価値と前記垂直色差成分評価値と前記水平色差成分評価値とを比較して、最も色差成分のレベルが小さい評価値を彩度評価値として選択する工程、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、注目画素の周辺領域の彩度評価値を算出し、彩度評価値に基づいて相関判定方法と画素補間方法とを選択する。具体的には、グレー領域とカラー領域の境界に位置する領域については、グレー画像用とカラー画像用の相関値を総合判断することで得られた相関値を用いて相関判定を行う。また、グレー領域とカラー領域の境界に位置する領域については、カラー画像用の画素補間処理を実行する。これにより、相関方向の判定誤りや誤補間を防止することができ、画素補間処理における偽色の低減を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
{第1の実施の形態}
<1.デジタルカメラの全体概略構成>
図1は、本発明に係るデジタルカメラ10を示すブロック図である。デジタルカメラ10は、撮像素子1、信号処理回路2、画像処理回路3、メモリ5を備えている。撮像素子1は、RGBベイヤ配列の色フィルタアレイを備えた単板式のCCDであり、1画素からはRGBいずれかの色成分の画素信号が出力される。具体的には、たとえば奇数番目の水平ラインがG→R→G→R→・・・とG信号とR信号とが交互に出力されるラインとすると、偶数番目の水平ラインは、B→G→B→G→・・・とB信号とG信号とが交互に出力されるラインである。なお、撮像素子1として、CMOSセンサを用いても良い。
【0022】
撮像素子1から出力される画素信号は、信号処理回路2に入力される。信号処理回路2において、画素信号に対してホワイトバランス処理、黒レベル補正処理などの信号処理が行われる。信号処理回路2から出力された画素信号は、画像処理回路3に入力される。画像処理回路3は、彩度値算出回路31、相関値算出回路32、選択回路33、第1・第2相関判定回路341,342、第1・第2補間回路351,352、第1・第2色空間変換回路361,362を備えている。
【0023】
彩度値算出回路31は、注目画素と注目画素周辺の画素信号を用いて、当該領域の彩度値を算出する。この彩度値は、当該領域がグレー画像であるかカラー画像であるかを判定するための指標となる。
【0024】
相関値算出回路32は、注目画素と注目画素周辺の画素信号を用いて当該領域の相関値を算出する。
【0025】
選択回路33は、彩度値算出回路31により算出された彩度値に基づき、相関判定処理および画素補間処理において、グレー画像用の処理を実行するのか、カラー画像用の処理を実行するのかを選択する。
【0026】
第1相関判定回路341、第2相関判定回路342は、それぞれ、相関値算出回路32で算出され、選択回路33において選択された相関値を利用して、相関方向を判定する。
【0027】
第1補間回路351は、第1相関判定回路341の判定結果に基づいて、注目画素の画素補間処理を実行し、第2補間回路352は、第2相関判定回路342の判定結果に基づいて、注目画素の画素補間処理を実行する。
【0028】
第1色空間変換回路361は、第1補間回路351において補間されたRGBの画素信号を、色空間変換し、Y信号を生成する。第2色空間変換回路362は、第2補間回路352において補間されたRGBの画素信号を、色空間変換し、Cb,Cr信号を生成する。
【0029】
なお、彩度値算出回路31、相関値算出回路32および第1・第2補間回路351,352は、それぞれ注目画素と注目画素周辺の画素信号を用いて演算処理を行うため、M×Nのマトリクス領域の画素信号を蓄積するためのレジスタ群を備えている。なお、各回路31,32,351,352でレジスタを共用するようにしてもよい。
【0030】
第1・第2補間回路351,352において画素補間処理が行われると、各画素はRGB全ての色成分を持つ信号となり、さらに、第1・第2色空間変換回路361,362により、YCbCr信号に変換される。そして、この画素信号がメモリ5に格納される。
【0031】
<2.ベイヤ配列の画素の表記方法>
次に、以下の説明および図面におけるベイヤ配列の画素の表記方法について説明する。まず、5×5のマトリクス領域の画素を図2(a)のように表す。図2(a)における記号Pは、画素がRGBいずれの色成分であるかを考慮しない表記である。これに対して、図2(b)〜(e)においては各画素の色成分を区別して表記している。記号Rは赤色画素、記号Gは緑色画素、記号Bは青色画素であることを示している。また、図2および図5〜図16において、G画素は実線の円で描き、R画素およびB画素は破線の円で描いている。
【0032】
また、記号P,R,G,Bの添え字のうち、1桁目はマトリクス領域の画素の行番号、2桁目はマトリクス領域の画素の列番号を示している。図2(a)〜(e)は、注目画素P22を含む25個の画素P00〜P44からなるマトリクス領域の画素配列を表している。その他の図面における表記方法も同様である。また、実施の形態の説明や各数式において、記号P,R,G,Bは、画素値を表す場合もある。たとえば、記号P11は、1行1列目の画素そのものを表すとともに、1行1列目の画素の画素値をも表すものとする。
【0033】
図2(b)および図2(e)は、注目画素P22がG画素である場合の画素配列である。図2(c)は、注目画素P22がR画素である場合の画素配列である。図2(d)は、注目画素P22がB画素である場合の画素配列である。上述したように、彩度値算出回路31、相関値算出回路32、第1・第2補間回路351,352においては、注目画素とその周辺の画素信号を用いて演算処理を実行するために、レジスタ群にマトリクス領域の画素信号を蓄積する。5×5のマトリクス領域の画素を処理対象とする場合、そのレジスタ群に格納される画素信号のパターンは、図2(b)〜図2(e)の4つのパターンが存在することになる。また、3×3のマトリクス領域の画素を処理対象とする場合には、注目画素P22を中心とした9個の画素P11,P12,P13,P21,P22,P23,P31,P32,P33を利用することになり、画素信号のパターンは、同様に、図2(b)〜図2(e)の4パターンである。
【0034】
<3.彩度値算出処理>
次に、彩度値算出回路31により実行される彩度値算出処理の内容について詳細に説明する。彩度値算出回路31は、注目画素を含むマトリクス領域(これは注目画素及びその周辺画素で構成される)の色差成分を分析し、この領域の彩度評価値を算出する。この彩度評価値は、後工程である選択工程において、処理対象となる領域が彩度の高い画像(以下、カラー画像とする。)であるか、彩度の低い画像(以下、グレー画像とする。)であるかを判定するために利用される。
【0035】
彩度評価値は、注目画素を含むマトリクス領域において、G画素のレベルとR画素のレベルとの色差成分およびG画素のレベルとB画素のレベルとの色差成分に基づいて算出される。そして、本実施の形態においては、彩度評価値を決定するために、2つの色差成分評価値が算出される。すなわち、彩度値算出回路31は、「第1の色差成分評価値」および「第2の色差成分評価値」を算出する。「第1の色差成分評価値」とは、マトリクス領域内にある各画素の位置は考慮することなく、領域内に存在する各画素の色成分別の画素平均値に基づく色差成分値から求めた評価値である。「第2の色差成分評価値」とは、マトリクス領域内にある各画素の位置を考慮し、特定の方向について色差成分値を累積することによって求められる評価値である。
【0036】
このように、2種類の色差成分評価値を算出する理由は、以下の通りである。レトマチャートなどのように、水平あるいは垂直方向に細線が存在するグレー画像において、上記の「第1の色差成分評価値」を彩度値として採用した場合、誤ってカラー画像であると判定される可能性がある。これは、水平あるいは垂直方向に強い相関があるにも関わらず、この相関性を考慮しないで、領域内の画素平均値を用いて色差成分を算出するためである。そこで、本実施の形態においては、以下に示すように、2種類の色差成分評価値を算出し、色差成分のレベルの小さい方を彩度値として採用することにしている。
【0037】
(3−1)第1の色差成分評価値
まず、第1の色差成分評価値の算出方法について説明する。第1の色差成分評価値は、青空や模様のない壁等、平坦部分(低周波領域)の色差成分の評価に適している。ここでいう平坦部分とは、特定の方向について強い相関を持たないような領域である。第1の色差成分評価値を算出するために、まず、注目画素を中心とする3×3のマトリクス領域に含まれるRGB各色の画素値の平均値Rave,Gave,Baveを算出する。平均値Rave,Gave,Baveは、一般的には、数1式のように表される。数1式中、N、N、Nは、それぞれマトリクス領域内に存在するR,G,B画素の数であり、Σの項は、各色成分の累積画素値を示している。
【0038】
【数1】

【0039】
ただし、図2(b)〜(e)で示したように、画素配列には4つのパターンが存在するので、それぞれのパターンで平均値の算出方法が異なる。まず、中心画素がG画素であり、図2(b)の画素配列に対応する場合、数2式により平均値Rave,Gave,Baveを算出する。
【0040】
【数2】

【0041】
中心画素がR画素であり、図2(c)の画素配列に対応する場合、数3式により平均値Rave,Gave,Baveを算出する。
【0042】
【数3】

【0043】
中心画素がB画素であり、図2(d)の画素配列に対応する場合、数4式により平均値Rave,Gave,Baveを算出する。
【0044】
【数4】

【0045】
中心画素がG画素であり、図2(e)の画素配列に対応する場合、数5式により平均値Rave,Gave,Baveを算出する。
【0046】
【数5】

【0047】
彩度値算出回路31は、マトリクス領域の画素配列が、図2(b)〜(e)のいずれのパターンであるかに応じて、数2式から数5式のいずれかの数式に従った演算処理を実行し、平均値Rave,Gave,Baveを算出する。さらに、彩度値算出回路31は、算出した平均値Rave,Gave,Baveを用いて、数6式で表した演算処理を実行することにより、第1の色差成分評価値Lglobalを算出する。つまり、色差成分評価値Lglobalは、マトリクス領域内に存在する色成分ごとの画素値平均値に基づく色差成分値を用いて算出された色差成分の評価値である。
【0048】
【数6】

【0049】
(3−2)第2の色差成分評価値
次に、第2の色差成分評価値の算出処理について説明する。マトリクス領域内に相関の強い方向があり、色差成分値の算出方法次第によっては、彩度値が大きく変化するような領域の色差成分の評価に適している。たとえば、上述したように、レトマチャートなどの高周波成分を含むグレー画像においては、(3−1)で求めた第1の色差成分評価値を彩度評価値として採用した場合、誤ってカラー画像であると判定される場合がある。そこで、このような特定の方向に強い相関を持つ画像に対する色差成分評価値を適切に求めるために、以下の処理を実行する。
【0050】
彩度値算出回路31は、3×3のマトリクス領域の画素信号を用いて、数7式および数8式で表された演算処理を実行する。すなわち、数7式は、垂直方向について色差成分値を累積して、垂直方向の色差成分評価値Lverticalを算出している。また、数8式は、水平方向について色差成分値を累積して、水平方向の色差成分評価値Lhorizontalを算出している。つまり、数7式、数8式で表される演算は、垂直方向あるいは水平方向について、それぞれG画素とR画素との色差成分値及びG画素とB画素との色差成分値を累積するものである。色差成分評価値Lvertical,Lhorizontalはいずれも上述の第2の色差成分評価値である。
【0051】
【数7】

【0052】
【数8】

【0053】
なお、数7式および数8式において、係数2が乗算されている項があるが、これは、G−R画素の色差成分累積数とG−B画素の色差成分累積数とを一致させるためである。なお、この実施例では、異なる色差成分同士の累積数を一致させるための係数2を乗算するようにしているが、この値は適宜設定可能である。
【0054】
また、この実施の形態においては、垂直方向と水平方向の色差成分評価値を算出しているが、これに加えて斜め方向の色差成分評価値を算出し、評価の対象としてもよい。例えば注目画素P22について水平方向から時計回りに45度傾いた斜めA方向、斜めA方向と直交する斜めB方向についての色差成分評価値Ld,Ldは数9式及び数10式で求められる。但し数9式は注目画素P22がG画素である場合に用いられる式であり、数10式は注目画素P22がR画素あるいはB画素である場合に用いられる式である。
【0055】
【数9】

【0056】
【数10】

【0057】
(3−3)彩度係数の計算
彩度値算出回路31は、以上、(3−1),(3−2)で示した演算方法により3つの色差成分評価値Lglobal,Lvertical,Lhorizontalを算出すると、さらに、数11式で表される演算処理を実行することにより、色差成分評価値Lglobal,Lvertical,Lhorizontalの最小値(つまり、色差成分のレベルが最小のもの)を算出する。この最小値が、処理対象であるマトリクス領域の彩度評価値Lとして採用される。言い換えると、この彩度評価値Lは、各注目画素に対応して決定される彩度値である。なお、数11式中、min(x,y,z)は、x,y,zの最小値を表している。また、上述したように、第2の色差成分評価値としてLvertical,Lhorizontalに加えて、斜め方向の色差成分評価値を算出するようにしてもよいが、この場合には、斜め方向の色差成分評価値も含めた評価値の中から最小値となるものを選択するようにすればよい。
【0058】
【数11】

【0059】
彩度値算出回路31において以上の演算処理が実行されることにより、注目画素についての彩度評価値Lが求められると、次に、彩度値算出回路31は、彩度評価値Lを正規化して彩度係数Kを算出する。具体的には、2つの閾値T、Tを用いて、数12式に示すような正規化処理を行う。図3は、彩度評価値Lと彩度係数Kの関係を示す図である。このように、グレー画像とカラー画像とを判定するための彩度係数Kが、グレー画像からカラー画像へと変化する領域の近傍に設けられた閾値T、T間で緩やかに変化するようにし、画像判定が急激に変化することを緩和している。
【0060】
【数12】

【0061】
なお、2つの閾値T、Tはグレー画像とカラー画像の境界近傍に設定される閾値であるので、実験結果や経験に基づいて最適な値を決定するようにすればよいが、入力画像の特性によって決定される可変パラメータとすることが好ましい。入力画像の特性は、たとえば、露光時間、絞り値などの撮影条件により決定される。また、入力画像の特性に、CCDの特性やレンズの光学特性などを考慮するようにしてもよい。このようにして算出された彩度係数Kが、後工程である選択工程において利用される。
【0062】
<4.相関値算出処理>
相関値算出回路32は、注目画素と注目画素周辺の画素信号を用いて、マトリクス領域内における4つの方向の相関値を算出する。ここでは、図4に示すように、水平方向、垂直方向、水平方向から時計回りに45度傾いた斜めA方向、斜めA方向と直交する斜めB方向について、相関値を算出する。具体的には、注目画素とこれら4つの方向に存在する画素との間での画素値の差分である画素差分値を算出し、各方向について画素差分値を累積することによって相関値を求める。
【0063】
また、本実施の形態において、相関値算出回路32は、各マトリクス領域について、彩度の高いカラー画像用の相関値と、彩度の低いグレー画像用の相関値との両方を算出する。そして、最終的には、後工程である選択処理において、カラー画像用あるいはグレー画像用のいずれかの相関値が選択された上で相関方向が決定される。あるいは、カラー画像用とグレー画像用の両方の相関値を総合判断することで選択された相関値を用いて相関方向が決定される。
【0064】
(4−1)彩度の高いカラー画像用の相関値
(4−1−1)中心画素がGの場合
まず、注目画素がG画素である場合のカラー画像用の相関値算出方法について説明する。つまり、マトリクス領域の画素配列が、図2(b)あるいは図2(e)である場合の相関値算出方法である。垂直方向の相関値は、数13式により算出される。また、図5は、垂直方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図5(a)は、G画素に関する相関算出方法、図5(b)は、R画素およびB画素に関する相関算出方法を図示したものである。このように、カラー画像用の相関値は、全ての色成分の画素差分値を考慮するようにしている。なお、図5〜図16において、図中の矢印で結ばれた2つの画素は、画素差分値を算出する対象であることを示している。
【0065】
【数13】

【0066】
水平方向の相関値は、数14式により算出される。また、図6は、水平方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図6(a)は、G画素に関する相関算出方法、図6(b)は、R画素およびB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0067】
【数14】

【0068】
斜めA方向の相関値は、数15式により算出される。また、図7は、斜めA方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図7(a)は、G画素に関する相関算出方法、図7(b)および(c)は、R画素あるいはB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0069】
【数15】

【0070】
なお、図7で表したように、G画素に関する場合とR画素あるいはB画素に関する場合とでは、差分値を算出する際の画素間の距離が異なる。そこで、数15式においては、画素間の距離の狭いG画素に関する差分値には2を乗算するようにしている。これは、G画素についてはR画素あるいはB画素に比べて演算対象となる画素間の距離が1/2となっているため、画素差分値については2倍の変化量に対応するためである。ただし、乗算値の2は一例であり、適宜選択可能である。
【0071】
斜めB方向の相関値は、数16式により算出される。また、図8は、斜めB方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図8(a)は、G画素に関する相関算出方法、図8(b)および(c)は、R画素あるいはB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0072】
【数16】

【0073】
数16式においても、数15式の場合と同様、G画素の差分値については、2を乗算するようにしている。なお、図7(b),(c)および図8(b),(c)における場合の画素間距離と図5および図6における場合の画素間距離も異なるが、ここでは、いずれも1つの画素を挟んだ距離として同じ距離として扱っている。ただし、これらの画素間の距離も考慮して係数を乗算するようにしてもよい。
【0074】
(4−1−2)中心画素がBあるいはRの場合
次に、注目画素がBまたはR画素である場合のカラー画像用相関値の算出方法について説明する。つまり、マトリクス領域の画素配列が図2(c)あるいは図2(d)である場合の相関値算出方法である。垂直方向の相関値は、数17式により算出される。また、図9は、垂直方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図9(a)は、G画素に関する相関算出方法、図9(b)は、R画素およびB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0075】
【数17】

【0076】
水平方向の相関値は、数18式により算出される。また、図10は、水平方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図10(a)は、G画素に関する相関算出方法、図10(b)は、R画素およびB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0077】
【数18】

【0078】
斜めA方向の相関値は、数19式により算出される。また、図11は、斜めA方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図11(a)は、G画素に関する相関算出方法、図11(b)および図11(c)は、R画素あるいはB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0079】
【数19】

【0080】
斜めB方向の相関値は、数20式により算出される。また、図12は、斜めB方向の相関値の算出方法を図示したものであり、図12(a)は、G画素に関する相関算出方法、図12(b)および図12(c)は、R画素あるいはB画素に関する相関算出方法を図示したものである。
【0081】
【数20】

【0082】
なお、数19式および数20式においても、数13式において説明した場合と同様、G画素の差分値については、2を乗算するようにしている。なお、図11(b),(c)および図12(b),(c)における場合の画素間距離と図9および図10における場合の画素間距離も異なるが、ここでは、いずれも1つの画素を挟んだ距離として同じ距離として扱っている。ただし、これらの画素間の距離も考慮して係数を乗算するようにしてもよい。
【0083】
(4−2)彩度の低いグレー画像用の相関値
彩度の低いグレー画像では注目画素がRGBいずれの画素であるかを区別せずに相関値を算出する。つまり、マトリクス領域内の画素配列が図2(b)〜図2(e)のいずれであるかに関わらず、以下の共通の演算方法により相関値を算出する。垂直方向の相関値は、数21式により算出される。また、図13は、垂直方向の相関値の算出方法を図示したものである。
【0084】
【数21】

【0085】
水平方向の相関値は、数22式により算出される。また、図14は、水平方向の相関値の算出方法を図示したものである。
【0086】
【数22】

【0087】
斜めA方向の相関値は、数23式により算出される。また、図15は、斜めA方向の相関値の算出方法を図示したものである。
【0088】
【数23】

【0089】
斜めB方向の相関値は、数24式により算出される。また、図16は、斜めB方向の相関値の算出方法を図示したものである。
【0090】
【数24】

【0091】
なお、図13および図14における場合と図15および図16における場合とでは、差分値演算の対象となる画素間の距離が異なる。しかし、ここでは、数15式で説明した場合のように、画素間の距離を考慮した係数を乗算するようにはしていない。これは、画素間の距離の差があまり大きくないためであるが、たとえば、数21式および数22式における画素差分値については、2の2乗根を乗算するようにしてもよい。
【0092】
また、数21式〜数24式においては、前述したカラー画像用の相関値との比較を容易にするためにスケールを合わせるようにしている。つまり、図13〜図16で示された演算対象の画素間の距離は、隣接する画素間の距離である。したがって、数21式〜数24式においては、各画素差分値に2を乗算してスケールを合わせた結果、各式における最後の乗算値(1/6と1/5)が累積数の逆数の2倍の値となっている。ただし、グレー画像における相関方向は、グレー画像用の相関値のみを用いて判定されるため、必ずしもスケールを合わせる必要はない。
【0093】
<5.相関判定方法と画素補間方法の選択>
選択回路33は、彩度値算出回路31が算出した彩度係数Kと閾値TH1,TH2(TH1≧TH2)との関係に基づいて相関判定方法と画素補間方法とを選択する。具体的には、相関判定方法の選択とは、グレー画像用の相関値を採用して相関方向を判定するのか、カラー画像用の相関値を採用して相関方向を判定するのか、あるいは、グレー画像用とカラー画像用の相関値を総合判断して選択された相関値を用いて相関方向を判定するかの選択である。また、画素補間方法の選択とは、グレー画像用とカラー画像用のうちいずれの画素補間方法を採用するかの選択である。
【0094】
図17は、彩度係数Kと閾値TH1,TH2との関係により選択される相関判定方法および画素補間方法の種別を示している。具体的には、以下の(a)〜(c)の組み合わせに分類される。
【0095】
(a)K>TH1の場合
相関判定方法・・・カラー画像用の相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・カラー画像用の画素補間方法を用いる。
【0096】
(b)TH1≧K>TH2の場合
相関判定方法・・・カラー画像用の相関値とグレー画像用の相関値とを総合判断して選択された相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・カラー画像用の画素補間方法を用いる。
【0097】
(c)TH2≧Kの場合
相関判定方法・・・グレー画像用の相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・グレー画像用の画素補間方法を用いる。
【0098】
数13式から数20式を用いてカラー画像用の4方向の相関値Cv_c,Ch_c,Cd_c,Cd_cを算出した。また、数21式から数24式を用いてグレー画像用の4方向の相関値Cv_m,Ch_m,Cd_m,Cd_mを算出した。選択回路33は、このグレー画像用とカラー画像用の算出された相関値から、次のように、実際に相関方向の判定に用いる判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを選択する。
【0099】
(5−1)(a)K>TH1の場合の判定用相関値
数25式に示すように、カラー画像用の相関値を判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdとして用いる。
【0100】
【数25】

【0101】
(5−2)(c)TH2≧Kの場合の判定用相関値
数26式に示すように、グレー画像用の相関値を判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdとして用いる。
【0102】
【数26】

【0103】
(5−3)(b)TH1≧K>TH2の場合の判定用相関値
グレー画像用の相関値とカラー画像用の相関値を総合判断して、判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを決定する。この判断方法について、以下詳述する。
【0104】
まず、数27式に示すように、カラー画像用の相関値Cv_c,Ch_cの差分絶対値d_Cv_cを求める。
【0105】
【数27】

【0106】
また、数28式に示すように、グレー画像用の相関値Cv_m,Ch_mの差分絶対値d_Cv_mを求める。
【0107】
【数28】

【0108】
さらに、数29式に示すように、差分絶対値d_Cv_cと差分絶対値d_Cv_mの差分絶対値d_Cvと、閾値THvとの大小を比較する。
【0109】
【数29】

【0110】
差分絶対値d_Cvと閾値THvとの関係が、数29式の関係を満たすとき、さらに、数30式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0111】
【数30】

【0112】
もし、数30式の条件を満たすならば、判定用相関値Cvとしてカラー画像用の相関値Cv_cを採用する。つまり、
Cv=Cv_c
となる。
【0113】
もし、数30式の条件を満たさないならば、判定用相関値Cvとしてグレー画像用の相関値Cv_mを採用する。つまり、
Cv=Cv_m
となる。
【0114】
差分絶対値d_Cvと閾値THvとの関係が、数29式の関係を満たすとき、さらに、数31式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0115】
【数31】

【0116】
もし、数31式の条件を満たすならば、判定用相関値Chとしてカラー画像用の相関値Ch_cを採用する。つまり、
Ch=Ch_c
となる。
【0117】
もし、数31式の条件を満たさないならば、判定用相関値Chとしてグレー画像用の相関値Ch_mを採用する。つまり、
Ch=Ch_m
となる。
【0118】
このように、差分絶対値d_Cvが閾値THvより小さい場合とは、差分絶対値d_Cv_cと差分絶対値d_Cv_mとの差が小さいときである。つまり、垂直方向、水平方向のいずれかに強い相関が見られない場合が想定される。このような場合には、垂直方向、水平方向それぞれについて、グレー画像用とカラー画像用の相関値の大小を比較し、相関値の小さい方、つまり、相関の高い方を選択するのである。
【0119】
差分絶対値d_Cvと閾値THvとの関係が、数29式の関係を満たさないとき、さらに、数32式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0120】
【数32】

【0121】
数32式の関係を満たすとき、相関判定用としてカラー画像用の相関値Cv_c,Ch_cを採用する。つまり、
Cv=Cv_c
Ch=Ch_c
となる。
【0122】
数32式の関係を満たさないとき、相関判定用としてグレー画像用の相関値Cv_m,Ch_mを採用する。つまり、
Cv=Cv_m
Ch=Ch_m
となる。
【0123】
このように、差分絶対値d_Cvが閾値THvより大きい場合とは、差分絶対値d_Cv_cと差分絶対値d_Cv_mとの差が大きいときである。つまり、垂直方向、水平方向のいずれかに強い相関が見られる場合が想定される。このような場合には、差分絶対値d_Cv_cと差分絶対値d_Cv_mの大小を比較し、差分絶対値が大きい方の相関値を選択するのである。
【0124】
続いて、数33式に示すように、カラー画像用の相関値Cd_c,Cd_cの差分絶対値d_Cdg_cを求める。
【0125】
【数33】

【0126】
また、数34式に示すように、グレー画像用の相関値Cd_m,Cd_mの差分絶対値d_Cdg_mを求める。
【0127】
【数34】

【0128】
さらに、数35式に示すように、差分絶対値d_Cdg_cと差分絶対値d_Cdg_mの差分絶対値d_Cdgと、閾値THdgとの大小を比較する。
【0129】
【数35】

【0130】
差分絶対値d_Cdgと閾値THdgとの関係が、数35式の関係を満たすとき、さらに、数36式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0131】
【数36】

【0132】
もし、数36式の条件を満たすならば、判定用相関値Cdとしてカラー画像用の相関値Cd_cを採用する。つまり、
Cd=Cd_c
となる。
【0133】
もし、数36式の条件を満たさないならば、判定用相関値Cdとしてグレー画像用の相関値Cd_mを採用する。つまり、
Cd=Cd_m
となる。
【0134】
差分絶対値d_Cdgと閾値THdgとの関係が、数35式の関係を満たすとき、さらに、数37式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0135】
【数37】

【0136】
もし、数37式の条件を満たすならば、判定用相関値Cdとしてカラー画像用の相関値Cd_cを採用する。つまり、
Cd=Cd_c
となる。
【0137】
もし、数37式の条件を満たさないならば、判定用相関値Cdとしてグレー画像用の相関値Cd_mを採用する。つまり、
Cd=Cd_m
となる。
【0138】
このように、差分絶対値d_Cdgが閾値THdgより小さい場合とは、差分絶対値d_Cdg_cと差分絶対値d_Cdg_mとの差が小さいときである。つまり、斜めA方向、斜めB方向のいずれかに強い相関が見られない場合が想定される。このような場合には、斜めA方向、斜めB方向それぞれについて、グレー画像用とカラー画像用の相関値の大小を比較し、相関値の小さい方、つまり、相関の高い方を選択するのである。
【0139】
差分絶対値d_Cdgと閾値THdgとの関係が、数35式の関係を満たさないとき、さらに、数38式の条件を満たすかどうかを判断する。
【0140】
【数38】

【0141】
数38式の関係を満たすとき、相関判定用としてカラー画像用の相関値Cd_c,Cd_cを採用する。つまり、
Cd=Cd_c
Cd=Cd_c
となる。
【0142】
数38式の関係を満たさないとき、相関判定用としてグレー画像用の相関値Cd_m,Cd_mを採用する。つまり、
Cd=Cd_m
Cd=Cd_m
となる。
【0143】
このように、差分絶対値d_Cdgが閾値THdgより大きい場合とは、差分絶対値d_Cdg_cと差分絶対値d_Cdg_mとの差が大きいときである。つまり、斜めA方向、斜めB方向のいずれかに強い相関が見られる場合が想定される。このような場合には、差分絶対値d_Cdg_cと差分絶対値d_Cdg_mの大小を比較し、差分絶対値が大きい方の相関値を選択するのである。
【0144】
以上の処理を実行することで、上記(b)TH1≧K>TH2の場合には、グレー画像用の相関値とカラー画像用の相関値を総合判断して判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを選択する。
【0145】
選択回路33は以上の演算処理を実行することにより、上記(a),(b),(c)それぞれの場合について、判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを選択する。
【0146】
このように、本実施の形態においては、相関判定方法と画素補間方法との組み合わせは、彩度係数Kと閾値TH1,TH2との関係により3パターンに分類される。つまり、1つの閾値を設けて、グレー画像とカラー画像とを判定する方法ではなく、2つの閾値TH1とTH2を設けることにより、グレー画像とカラー画像の境界領域を緩和するようにしているのである。これにより、特に、グレー画像とカラー画像の境界付近に位置する画像については、補間処理後の視覚的違和感を軽減することが可能となっている。
【0147】
つまり、グレー画像とカラー画像の境界付近に位置する画像は、RGBの各成分の値が略等しいが、それらの値に多少のばらつきがある。したがって、相関を判定する場合には、RGB各成分のばらつきが小さいことに着目して、RGBを区別することなく、なるべく近接する画素を用いて相関値を算出する。あるいは、RGB各成分が多少なりともばらついていることに注目して、RGBを区別して相関値を算出する。このような2つの考え方を総合的に判断して、最適な相関値を選択することで、相関方向の判定精度を向上させるのである。これに対して、RGB各成分のばらつきを無視し、グレー画像とみなして画素補間を行った場合、偽色が発生する可能性がある。そこで、画素補間についてはカラー画像用の画素補間処理を行うこととしているのである。
【0148】
なお、この実施の形態においては、彩度評価値Lを正規化した彩度係数Kを用い、彩度係数Kと閾値TH1,TH2との比較によりグレー画像とカラー画像を判定するようにしたが、これは、処理上の便宜のためであり、本質的には、彩度評価値Lと2つの閾値との比較により、グレー画像とカラー画像を判定していることにほかならない。選択回路33は、相関判定方法と画素補間方法とを選択すると、この選択情報を第1相関判定回路341および第2相関判定回路342に与える。選択情報には、相関判定方法および画素補間方法として、グレー画像用・カラー画像用いずれのタイプを用いるのかを示す情報と、選択された判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを示す情報が含まれる。
【0149】
<6.各画素における相関方向の判定>
上述したように、選択回路33において判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdが選択されると、画素信号と、判定用相関値に関する情報を含む選択情報とが、第1相関判定回路341および第2相関判定回路342に出力される。つまり、選択回路33で算出された判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdの値が、第1・第2相関判定回路341,342の両方に出力され、信号処理回路2から入力した画素信号も、第1・第2相関判定回路341,342の両方に出力される。第1相関判定回路341および第2相関判定回路342は、判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdに基づいて、注目画素における相関関係を判定する処理部である。第1相関判定回路341は、注目画素における相関関係を高く評価して相関方向を判定する。第2相関判定回路342は、第1相関判定回路341と比較すると、注目画素における相関関係を低く評価して相関方向を判定する。
【0150】
図18は、第1相関判定回路341が相関方向の判定に利用する相関値の対応関係図である。縦軸が判定用相関値Cvであり、横軸が判定用相関値Chである。
【0151】
判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A1の領域に存在するとき、第1相関判定回路341は、注目画素の相関方向は水平方向であると判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A2の領域に存在するとき、第1相関判定回路341は、注目画素の相関方向は垂直方向であると判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A3の領域に存在するとき、第1相関判定回路341は、注目画素はいずれの方向にも相関がないと判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A4の領域に存在するとき、第1相関判定回路341は、注目画素は垂直、水平両方向について相関が高いと判定する。
【0152】
第1相関判定回路341は、図18で示した対応関係図とあわせて、図19で示す対応関係図を利用する。図19で示す対応関係図は、判定用相関値Cd,Cdと相関方向との対応関係を示す図である。図19の縦軸は判定用相関値Cdであり、横軸は判定用相関値Cdである。領域B1は、相関方向が斜めB方向と判定される領域であり、領域B2は、相関方向が斜めA方向と判定される領域である。また、領域B3は、いずれの方向にも相関がないと判定される領域であり、領域B4は、斜めA方向と斜めB方向の両方向について相関が高いと判定される領域である。
【0153】
第1相関判定回路341は、4つの判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを比較する。そして、判定用相関値Cvあるいは判定用相関値Chの値が最も小さい場合には、図18の関係図を利用する。そして、判定用相関値の対応関係がA1〜A4のいずれの領域に該当するかによって相関方向を決定する。これに対して、判定用相関値Cdあるいは判定用相関値Cdの値が最も小さい場合には、図20の関係図を利用する。そして、相関値の対応関係がB1〜B4のいずれの領域に該当するかによって相関方向を決定する。
【0154】
相関方向が決定すると、後述するように、第1補間回路351において相関方向の画素を用いて画素補間処理が行われる。つまり、判定用相関値の対応関係が領域A1にあれば水平方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域A2にあれば垂直方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域B1にあれば斜めB方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域B2にあれば斜めA方向の画素を用いて画素補間を行う。また、判定用相関値の対応関係がA3またはB3の領域にあれば、たとえばメディアン補間を行い、対応関係がA4またはB4の領域にあれば平均値補間を行う。
【0155】
一方、図20は、第2相関判定回路342が相関方向の判定に利用する判定用相関値の対応関係図である。縦軸が判定用相関値Cvであり、横軸が判定用相関値Chである。
【0156】
判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A5の領域に存在するとき、第2相関判定回路342は、注目画素の相関方向は水平方向であると判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A6の領域に存在するとき、第2相関判定回路342は、注目画素の相関方向は垂直方向であると判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A7の領域に存在するとき、第2相関判定回路342は、注目画素はいずれの方向にも相関がないと判定する。判定用相関値Cvと判定用相関値Chの関係が、A8の領域に存在するとき、第2相関判定回路342は、注目画素は垂直、水平両方向について相関が高いと判定する。
【0157】
また、第2相関判定回路342は、図20で示した対応関係図とあわせて、図21で示す対応関係図を利用する。図21で示す対応関係図は、判定用相関値Cd,Cdと相関方向との対応関係を示す図である。図21の縦軸は判定用相関値Cdであり、横軸は判定用相関値Cdである。領域B5は、相関方向が斜めB方向と判定される領域であり、領域B6は、相関方向が斜めA方向と判定される領域である。また、領域B7は、いずれの方向にも相関がないと判定される領域であり、領域B8は、斜めA方向と斜めB方向の両方向について相関が高いと判定される領域である。
【0158】
第2相関判定回路342は、4つの判定用相関値Cv,Ch,Cd,Cdを比較する。そして、判定用相関値Cvあるいは判定用相関値Chの値が最も小さい場合には、図20の関係図を利用する。そして、判定用相関値の対応関係がA5〜A8のいずれの領域に該当するかによって相関方向を決定する。これに対して、判定用相関値Cdあるいは判定用相関値Cdの値が最も小さい場合には、図21の関係図を利用する。そして、判定用相関値の対応関係がB5〜B8のいずれの領域に該当するかによって相関方向を決定する。
【0159】
相関方向が決定すると、後述するように、第2補間回路352において相関方向の画素を用いて画素補間処理が行われる。つまり、判定用相関値の対応関係が領域A5にあれば水平方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域A6にあれば垂直方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域B5にあれば斜めB方向の画素を用いて画素補間を行い、判定用相関値の対応関係が領域B6にあれば斜めA方向の画素を用いて画素補間を行う。また、判定用相関値の対応関係がA7またはB7の領域にあれば、たとえばメディアン補間を行い、対応関係がA8またはB8の領域にあれば平均値補間を行う。
【0160】
このように、第1相関判定回路341と第2相関判定回路342は、それぞれ図18〜図21で示す判定用相関値の対応関係を利用して相関方向を決定する。この結果、第1相関判定回路341は、注目画素における周辺画素との相関関係をより高く評価して相関方向を判定することになる。つまり、相関方向の画素を積極的に利用して補間を行う。一方、第2相関判定回路342は、第1相関判定回路341に比べると注目画素における周辺画素との相関関係を低く評価して相関方向を決定することになる。言い換えると、第2補間回路352は、積極的に、メディアン補間や平均値補間を採用する補間回路である。
【0161】
図18で示す領域A1と図20で示す領域A5は、ともに水平方向に相関が高いと判定される領域である。そして、図18と図20を比較して分かるように、領域A1を定める直線F1よりも、領域A5を定める直線F4の傾きが大きくなっている。さらに、直線F1が縦軸と交わる点よりも、直線F4が縦軸と交わる点の方が大きな値となっている。つまり、第1相関判定回路341は、判定用相関値Chが判定用相関値Cvよりも少し小さい値をとる関係にある場合には、その関係を積極的に採用して水平方向の相関が高いと判定する。これに対して、第2相関判定回路342は、判定用相関値Chが、判定用相関値Cvよりも十分小さい値をとる関係にある場合に、水平方向の相関が高いと判定する。
【0162】
また、領域A2を定める直線F2よりも、領域A6を定める直線F5の傾きが小さくなっている。さらに、直線F2が横軸と交わる点よりも、直線F5が横軸と交わる点の方が大きな値となっている。つまり、第1相関判定回路341は、判定用相関値Cvが判定用相関値Chよりも少し小さい値をとる関係にある場合には、その関係を積極的に採用して垂直方向の相関が高いと判定する。これに対して、第2相関判定回路342は、判定用相関値Cvが判定用相関値Chよりも十分小さい値をとる関係にある場合に、垂直方向の相関が高いと判定する。
【0163】
なお、領域A3と領域A4との境界を定める直線F3、領域A7と領域A8との境界を定める直線F6については、図18、図20に示した関係は一例である。つまり、直線F6と軸との交点は、直線F3と軸との交点よりも大きな値となっているが、このような関係に限定されるものではない。
【0164】
図19および図21の関係も同様である。領域B1を定める直線F11よりも、領域B5を定める直線F14の傾きが大きくなっている。さらに、直線F11が縦軸と交わる点よりも、直線F14が縦軸と交わる点の方が大きな値となっている。第1相関判定回路341は、判定用相関値Cdが判定用相関値Cdよりも少し小さい値をとる関係にある場合には、その関係を積極的に採用して斜めB方向の相関が高いと判定する。これに対して、第2相関判定回路342は、判定用相関値Cdが、判定用相関値Cdよりも十分小さい値をとる関係にある場合に、斜めB方向の相関が高いと判定する。
【0165】
また、領域B2を定める直線F12よりも、領域B6を定める直線F15の傾きが小さくなっている。さらに、直線F12が横軸と交わる点よりも、直線F15が横軸と交わる点の方が大きな値となっている。つまり、第1相関判定回路341は、判定用相関値Cdが判定用相関値Cdよりも少し小さい値をとる関係にある場合には、その関係を積極的に採用して斜めA方向の相関が高いと判定する。これに対して、第2相関判定回路342は、判定用相関値Cdが判定用相関値Cdよりも十分小さい値をとる関係にある場合に、斜めA方向の相関が高いと判定する。
【0166】
なお、領域B3と領域B4との境界を定める直線F13、領域B7と領域B8との境界を定める直線F16については、図19、図21に示した関係は一例である。つまり、直線F16と軸との交点は、直線F13と軸との交点よりも大きな値となっているが、このような関係に限定されるものではない。
【0167】
<7.画素補間処理>
第1補間回路351および第2補間回路352において実行される画素補間処理について説明する。第1補間回路351および第2補間回路352は、上述したように、第1相関判定回路341・第2相関判定回路342において決定された相関方向について画素補間処理を行う。そして、第1補間回路351および第2補間回路352は、選択回路33から出力された選択情報に基づいてグレー画像用あるいはカラー画像用のいずれの画素補間処理を実行する。つまり、選択回路33において、上記(c)のパターンが選択されている場合には、グレー画像用の画素補間処理を実行し、上記(a)あるいは(b)のパターンが選択されている場合には、カラー画像用の画素補間処理を実行する(<5.相関判定方法と画素補間方法の選択>の項を参照)。
【0168】
(7−1)グレー画像用画素補間
選択回路33において上記(c)のパターンが選択されている場合には、第1相関判定回路341・第2相関判定回路342において決定された相関方向について、グレー画像用の画素補間処理が実行される。グレー画像用の画素補間は注目画素がRGBいずれの色成分の画素であるかを区別せずに、決定された相関方向に存在する画素を用いて画素補間処理を行う。つまり、注目画素がRGBいずれの画素であるか、注目画素の周辺の画素がRGBいずれの画素であるかという点は考慮せず、注目画素をその周辺の画素を用いて補間するのである。
【0169】
具体的には、垂直方向の相関値が高いと判定されている場合、つまり、第1相関判定回路341において相関方向が領域A2に属する判定された場合、第1補間回路351は、数39式に示す演算式により画素補間処理を実行する。あるいは、第2相関判定回路342において、相関方向が領域A6に属すると判定された場合、第2補間回路352は、数39式に示す演算式により画素補間処理を実行する。
【0170】
【数39】

【0171】
また、水平方向の相関値が高いと判定されている場合、つまり、第1相関判定回路341において相関方向が領域A1に属する判定された場合、第1補間回路351は、数40式に示す演算式により画素補間処理を実行する。あるいは、第2相関判定回路342において、相関方向が領域A5に属すると判定された場合、第2補間回路352は、数40式に示す演算式により画素補間処理を実行する。
【0172】
【数40】

【0173】
また、斜めA方向の相関値が高いと判定されている場合、つまり、第1相関判定回路341において相関方向が領域B2に属する判定された場合、第1補間回路351は、数41式に示す演算式により画素補間処理を実行する。あるいは、第2相関判定回路342において、相関方向が領域B6に属すると判定された場合、第2補間回路352は、数41式に示す演算式により画素補間処理を実行する。
【0174】
【数41】

【0175】
また、斜めB方向の相関値が高いと判定されている場合、つまり、第1相関判定回路341において相関方向が領域B1に属する判定された場合、第1補間回路351は、数42式に示す演算式により画素補間処理を実行する。あるいは、第2相関判定回路342において、相関方向が領域B5に属すると判定された場合、第2補間回路352は、数42式に示す演算式により画素補間処理を実行する。
【0176】
【数42】

【0177】
なお、数39式から数42式においては、P22の項に係数2が乗算されているが、これは、注目画素からの距離に応じた重み付けを行うためである。また、いずれの方向にも相関が高いと判定されている場合(領域A4,B4,A8,B8と判定された場合)、たとえば、平均値補間値を行う。また、いずれの方向にも相関がないと判断された場合(領域A3,B3,A7,B7と判定された場合)には、たとえばメディアン補間を用いる。
【0178】
(7−2)カラー画像用画素補間
選択回路33において、上記(a)あるいは(b)のパターンが選択されている場合には、第1補間回路351・第2補間回路352は、第1相関判定回路341・第2相関判定回路342において決定された相関方向について、カラー画像用の画素補間処理を実行する。カラー画像用の画素補間は、注目画素がRGBいずれの色成分の画素であるかによって補間演算方法が異なる。つまり、第1相関判定回路341・第2相関判定回路342において決定された相関方向に存在する補間対象となる画素と同色の画素を用いて画素補間処理を行う。
【0179】
たとえば、注目画素がG画素である場合であって、垂直方向の相関が高いと判定されている場合(領域A2,A6と判定された場合)には、垂直方向に存在するR画素及びB画素を用いて注目画素のそれぞれR色成分及びB色成分を補間する。また、注目画素がG画素である場合であって、水平方向の相関が高いと判定されている場合(領域A1,A5と判定された場合)には、水平方向に存在するB画素及びR画素を用いて注目画素のそれぞれB色成分及びR色成分を補間する。
【0180】
あるいは、注目画素がG画素である場合であって、斜めA方向の相関が高いと判定されている場合(領域B2,B6と判定された場合)には、斜めA方向に存在するR画素及びB画素を用いて注目画素のそれぞれR色成分及びB色成分を補間する。また、注目画素がG画素である場合であって、斜めB方向の相関が高いと判定されている場合(領域B1,B5と判定された場合)には、斜めB方向に存在するB画素及びR画素を用いて注目画素のそれぞれB色成分及びR色成分を補間する。
【0181】
なお、補間したい方向のラインに補間対象となる色成分の画素が存在する場合には、当該ライン上に存在する同色画素の平均値を算出することやリニア補間を行うことで、画素補間処理を実行することができる。しかし、画素配列によっては、補間したい方向のラインに補間対象となる色成分の画素が存在しない場合がある。このような場合には、補間したい方向のラインに直角な方向の変化率(ラプラシアン)から補間対象となる画素の画素値を推測するなどの方法をとればよい。
【0182】
このように、カラー画像用の画素補間処理とは、相関方向に存在する補間対象となる画素と同色の画素を用いて注目画素の補間を行うものである。あるいは、相関方向に補間対象となる画素と同色の画素が存在しない場合には、当該方向における同色画素の画素値として推測された値を用いて注目画素の補間を行うものである。
【0183】
このように、本実施の形態における画像処理回路3は、マトリクス領域の彩度評価値Lを求め、この彩度評価値Lに基づいて、当該領域における着目画素についての相関判定方法と画素補間方法とを選択する。そして、彩度評価値Lに基づいてグレー画像とカラー画像とを判定するために2つの閾値TH1,TH2を用いる。グレー画像とカラー画像の境界に位置する領域に対しては、グレー画像用とカラー画像用の相関値を総合判断して選択された相関値を用いて相関方向を判定し、カラー画像用の画素補間方法を用いることにより、偽色の軽減や解像感の改善を図ることができる。
【0184】
<8.色空間変換処理>
第1補間回路351は、各画素について画素補間処理を実行すると、補間された完全な画素信号を第1色空間変換回路361に出力する。つまり、第1色空間変換回路361が入力する信号は、各画素がRGB全ての色成分の信号を備えている。また、第2補間回路352は、各画素について画素補間処理を実行すると、補間された完全な画素信号を第2色空間変換回路362に出力する。つまり、第2色空間変換回路362が入力する信号は、各画素がRGB全ての色成分の信号を備えている。
【0185】
そして、第1色空間変換回路361は、各画素について、RGBの画素信号から輝度信号(Y信号)を生成する。一方、第2色空間変換回路362は、各画素について、RGBの画素信号から色差信号(Cb、Cr信号)を生成する。このようにして、撮像素子1から出力されたベイヤ配列のRGB信号は、輝度信号(Y信号)および色差信号(Cb、Cr信号)に変換されるのである。
【0186】
このように、第1色空間変換回路361から出力された輝度信号は、第1補間回路351において補間されたRGB信号から生成される信号である。第1補間回路351において補間されたRGB信号は、相関関係を高く評価することで画素補間された信号であり、解像度を高く保った信号である。これにより、生成されるYUV信号の解像感を高く維持することが可能である。
【0187】
一方、第2色空間変換回路362から出力された色差信号は、第2補間回路352において補間されたRGB信号から生成される信号である。第2補間回路352において補間されたRGB信号は、相関関係を比較的低く評価することで画素補間された信号であり、ノイズが抑圧された信号である。言い換えると、LPF(Law Pass Filter)が適用された状態の信号である。これにより、撮像素子1からノイズの多いRAW画像が出力された場合であっても、生成されるYUV信号のノイズを抑圧することができる。
【0188】
第1色空間変換回路361から出力された輝度信号(Y信号)と、第2色空間変換回路362から出力された色差信号(Cb,Cr信号)は、メモリ5に格納される。
【0189】
{第2の実施の形態}
図22は、第2の実施の形態における相関判定方法と画素補間方法の判定基準を示す図である。第1の実施の形態においては、図17に示したように、選択回路33は、2つの閾値TH1,TH2を用いて相関判定方法と画素補間方法とを選択した。第2の実施の形態においては、図22に示すように、選択回路33は、3つの閾値TH1,THM,TH2(TH1≧THM≧TH2)を用いて次のように、相関判定方法と画素補間方法とを選択する。
【0190】
(a’)K>TH1の場合
相関判定方法・・・カラー画像用の相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・カラー画像用の画素補間方法を用いる。
【0191】
(b’)TH1≧K>THMの場合
相関判定方法・・・カラー画像用の相関値とグレー画像用の相関値とを総合判断して選択された相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・カラー画像用の画素補間方法を用いる。
【0192】
(b”)THM≧K>TH2の場合
相関判定方法・・・グレー画像用の相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・カラー画像用の画素補間方法を用いる。
【0193】
(c’)TH2≧Kの場合
相関判定方法・・・グレー画像用の相関値を用いて相関方向を判定する。
画素補間方法・・・グレー画像用の画素補間方法を用いる。
【0194】
このように、選択回路33は、3つの閾値を利用し、4つのパターンで、相関判定方法および画素補間方法を選択するのである。第1の実施の形態におけるパターン(b)が、さらに、2つのパターン(b’),(b”)に分けられている。パターン(b’)は、第1の実施の形態におけるパターン(b)と同様である。パターン(b”)を利用することで、よりグレー領域に近い領域については、RGBを区別することなく相関判定を行うことで、相関方向を高い精度で判定することを可能としている。この閾値THMを、閾値TH1と閾値TH2内で自由に設定すればよい。閾値THMを閾値TH2と一致させた状態が第1の実施の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明にかかるデジタルカメラを示すブロック図である。
【図2】RGBベイヤ配列の画素の配列パターンを示す図である。
【図3】彩度値と彩度係数との関係を示す図である。
【図4】4つの相関方向を示す図である。
【図5】注目画素がG画素であるカラー領域における垂直方向の相関値算出方法を示す図である。
【図6】注目画素がG画素であるカラー領域における水平方向の相関値算出方法を示す図である。
【図7】注目画素がG画素であるカラー領域における斜めA方向の相関値算出方法を示す図である。
【図8】注目画素がG画素であるカラー領域における斜めB方向の相関値算出方法を示す図である。
【図9】注目画素がRまたはB画素であるカラー領域における垂直方向の相関値算出方法を示す図である。
【図10】注目画素がRまたはB画素であるカラー領域における水平方向の相関値算出方法を示す図である。
【図11】注目画素がRまたはB画素であるカラー領域における斜めA方向の相関値算出方法を示す図である。
【図12】注目画素がRまたはB画素であるカラー領域における斜めB方向の相関値算出方法を示す図である。
【図13】グレー領域における垂直方向の相関値算出方法を示す図である。
【図14】グレー領域における水平方向の相関値算出方法を示す図である。
【図15】グレー領域における斜めA方向の相関値算出方法を示す図である。
【図16】グレー領域における斜めB方向の相関値算出方法を示す図である。
【図17】相関判定方法および画素補間方法の判定基準を示す図である。
【図18】垂直方向・水平方向に関して相関関係を高く評価する対応関係を示す図である。
【図19】斜めA方向・斜めB方向に関して相関関係を高く評価する対応関係を示す図である。
【図20】垂直方向・水平方向に関して相関関係を低く評価する対応関係を示す図である。
【図21】斜めA方向・斜めB方向に関して相関関係を低く評価する対応関係を示す図である。
【図22】第2の実施の形態における相関判定方法および画素補間方法の判定基準を示す図である。
【符号の説明】
【0196】
31 彩度値算出回路
32 相関値算出回路
33 選択回路
341 第1相関判定回路
342 第2相関判定回路
351 第1補間回路
352 第2補間回路
361 第1色空間回路
362 第2色空間回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)所定の色空間の画素信号を入力する工程と、
b)注目画素及びその周辺画素で構成される領域の彩度評価値を算出する工程と、
c)前記彩度評価値に基づいて前記注目画素における相関判定方法と画素補間方法とを選択する工程と、
d)選択された画素補間方法を用いて、選択された相関判定方法により決定された相関方向に関して前記注目画素の画素補間処理を実行する工程と、
を備え、
前記工程c)は、所定の2つの閾値TH1,TH2(ただし、TH1≧TH2とする。)を用いて、前記彩度評価値が閾値TH2以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とグレー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値から選択された相関値を用いた相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH1より大きい場合には、カラー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択することを特徴とする画素補間方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画素補間方法において、
前記工程c)は、
c−1)前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値のうち、前記注目画素における相関をより高く反映していると判定される相関値を用いた相関判定方法を選択する工程、
を含むことを特徴とする画素補間方法。
【請求項3】
a)所定の色空間の画素信号を入力する工程と、
b)注目画素及びその周辺画素で構成される領域の彩度評価値を算出する工程と、
c)前記彩度評価値に基づいて前記注目画素における相関判定方法と画素補間方法とを選択する工程と、
d)選択された画素補間方法を用いて、選択された相関判定方法により決定された相関方向に関して前記注目画素の画素補間処理を実行する工程と、
を備え、
前記工程c)は、所定の3つの閾値TH1,THM,TH2(ただし、TH1≧THM≧TH2とする。)を用いて、前記彩度評価値が閾値TH2以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とグレー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH2より大きく閾値THM以下の場合には、グレー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値THMより大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値から選択された相関値を用いた相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択し、前記彩度評価値が閾値TH1より大きい場合には、カラー画像用の相関判定方法とカラー画像用の画素補間方法とを選択することを特徴とする画素補間方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画素補間方法において、
前記工程c)は、
c−1)前記彩度評価値が閾値THMより大きく閾値TH1以下の場合には、グレー画像用およびカラー画像用の相関値のうち、前記注目画素における相関をより高く反映していると判定される相関値を用いた相関判定方法を選択する工程、
を含むことを特徴とする画素補間方法。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載の画素補間方法において、
前記工程c−1)は、互いに直交する第1の方向と第2の方向について、グレー画像用の第1の方向に関する相関値とグレー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A1と、カラー画像用の第1の方向に関する相関値とカラー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A2とを算出し、差分絶対値A1と差分絶対値A2との差分絶対値A3が所定の閾値THA以下であるとき、第1の方向および第2の方向については、グレー画像用とカラー画像用の相関値のうち、それぞれ相関の高い方の相関値を用いることを特徴とする画素補間方法。
【請求項6】
請求項2または請求項4に記載の画素補間方法において、
前記工程c−1)は、互いに直交する第1の方向と第2の方向について、グレー画像用の第1の方向に関する相関値とグレー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A1と、カラー画像用の第1の方向に関する相関値とカラー画像用の第2の方向に関する相関値との差分絶対値A2とを算出し、差分絶対値A1と差分絶対値A2との差分絶対値A3が所定の閾値THAより大きいとき、差分絶対値A1の方が大きい場合には、第1の方向および第2の方向について、グレー画像用の相関値を用い、差分絶対値A2の方が大きい場合には、第1の方向および第2の方向について、カラー画像用の相関値を用いることを特徴とする画素補間方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の画素補間方法において、
前記第1の方向は垂直方向であり、前記第2の方向は水平方向であることを特徴とする画素補間方法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の画素補間方法において、
前記第1の方向は水平方向に対して45度の傾きのある方向であることを特徴とする画素補間方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の画素補間方法において、
前記工程b)は、
b−1)前記注目画素及び前記周辺画素を用いて、色成分ごとの画素平均値に基づく色差成分値から第1色差成分評価値を算出する工程と、
b−2)前記注目画素及び前記周辺画素を用いて、所定の方向に関する色差成分値を累積し、第2色差成分評価値を算出する工程と、
b−3)前記第1色差成分評価値と前記第2色差成分評価値とを比較して、色差成分のレベルが小さい方を前記彩度評価値として選択する工程と、
を備えることを特徴とする画素補間方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画素補間方法において、
前記工程b−2)は、
b−2−1)前記注目画素の周辺画素を用いて、垂直方向に関して色差成分値を累積し、垂直色差成分評価値を算出する工程と、
b−2−2)前記注目画素の周辺画素を用いて、水平方向に関して色差成分値を累積し、水平色差成分評価値を算出する工程と、
を含み、
前記工程b−3)は、
b−3−1)前記第1色差成分評価値と前記垂直色差成分評価値と前記水平色差成分評価値とを比較して、最も色差成分のレベルが小さい評価値を彩度評価値として選択する工程、
を含むことを特徴とする画素補間方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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