説明

留め具布地構造

【課題】極細繊維ループ布地および繊維パイル布地を有する留め具布地構造を提供すること。
【解決手段】極細繊維ループ布地は、織り交差または編み交差結節の間に極細繊維ループまたはパイル・ループを形成させるために、分割プロセスを通じて処理され、繊維パイル布地は、極細繊維ループ布地の極細繊維ループを留めるための、直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を形成させるために、剪毛プロセスを通じて処理される。その結果、直立し分散した繊維パイル非フック繊維群は、互いに絡まり合わず、留め具布地の留める能力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地、より詳細には、従来のベルクロ(VELCRO)に似た留め具効果を有する留め具布地構造(fastening fabric structure)に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルクロ(フックおよびループによる留め具布地の主要な商標である)は、一般的に用いられる留め具および締め具布地として、我々の生活環境に見出され、衣類、皮革製品、靴、おむつ、ヘルメットなどに広く使用され得る。主な理由は、ベルクロが留めるのに便利であるためである。
【0003】
しかし、ベルクロを用いることにはいくつかの不満足な欠点があり、例えば、ベルクロは、生地が堅く、一定の厚さを有し、製造し布地に直接連結するのが難しい。通常、ベルクロを用いる物品に該ベルクロを取り付ける、または連結するには、縫い付けること、または他の方法によってでなければならない。したがって、ベルクロを用いる物品が、柔らかいテクスチャであること、またはベルクロの厚さより薄いことを必要とする場合、ベルクロの材料のテクスチャのために、ベルクロはそのような要件を満たすことが困難である。
【0004】
台湾実用新案公報第479477号は、モノフィラメントによって編まれた、表面にループを有する薄い基布地に関する。それは、各緯糸フィラメントが結節(node)になるように編まれ、次いで、各隣接する結節が一対のインレー(inlay)を形作るようにインターロックされ、次いで、ベースの薄い経糸織物(warp tissue)に結び付けるストリップを形成するように、一連の結節をインターロックすることによって形成される、基布地を有するパイル・ループ布地構造を開示する。これは、前記パイル・ループ布地の基布地が、湾曲する浮動環状構造(floating circle)のための特殊な編み方で、モノフィラメントから製造され、そうすることによってより薄いパイル・ループ布地が得られることを意味する。この事実により、ベルクロの厚さによって引き起こされる問題が防がれる。
【0005】
前記厚さの問題以外に、意図されない付着の問題がまだ存在する。理由は、従来の留め具布地のループの寸法が余りに大きいためであり、これは、小さな物がループを通して挿入される、またはループの中に落下する機会を与える。
【0006】
さらに、本出願者に発行された台湾実用新案公報第M263013号(米国特許第7231789号B2に相当)は、「Snapping Fabrics」という名称の留め具布地構造を開示する。この発明によれば、繊維フック(fibriform hook)を形成させるために、ブラシかけおよび剪毛による毛状化処理が加えられる。しかし、繊維フックを形成させるためにブラシかけの技法を用いると、繊維フックを揃えることができないので、留める能力を低下させる。さらに、前記繊維フックは、互いに絡まり合う傾向があり、毛玉(pilling)を作り、留める能力を失う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾実用新案公報第479477号
【特許文献2】台湾実用新案公報第M263013号(米国特許第7321789号B2に相当)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みて達成された。したがって、本発明の主な目的は、極細繊維ループ(micro−fibriform loop)布地および繊維パイル布地を有する留め具布地構造を提供することであり、極細繊維ループ布地は、織り交差または編み交差結節の間に極細繊維ループまたはパイル・ループを形成させるために、分割(splitting)プロセスを通じて処理され、繊維パイル布地は、極細繊維ループ布地の極細繊維ループを留めるための、直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を形成させるために、剪毛(shearing)プロセスを通じて処理され、その結果、直立し分散した繊維パイル非フック繊維群は、互いに絡まり合わず、留め具布地の留める能力を向上させるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のこの目的および他の目的を達成するために、留め具布地構造は、極細繊維ループ布地および繊維パイル布地を含む。極細繊維ループ布地は、テクスチャード加工された複合極細繊維糸(Complex, textured micro-fiber yarn)から製造され、その後、より多くのより細い繊維を覆い直すように分割され、実質的に全ての繊維が、織り交差または編み交差結節の間で極細繊維ループまたはパイル・ループを形成する。繊維パイル布地は、紡績糸または合成フィラメント糸によって製造され、繊維パイル・ループを有し、次いで、前記極細繊維ループ布地の極細繊維ループを留めるための、直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を形成させるために、パイル・ループの先端を剪毛される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一部は分割され、一部は分割されていない、極細繊維ループ繊維の、テクスチャを有する複合極細繊維糸を示す、本発明の概略的拡大図である。
【図2】繊維パイル布地の構造を示す、本発明の一部の概略的拡大図である。
【図3】極細繊維ループおよび繊維パイルが、布地の相対する表面に別々に作製されていることを示す、本発明の概略図である。
【図4】極細繊維ループおよび繊維パイルが、本発明により、布地の同じ1つの面の異なる位置に作製されていることを示す図である。
【図5】極細繊維ループおよび繊維パイルが、本発明により、接合の前に、別の2枚の布地に別々に作製されていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は以下の説明および添付の図面を参照することにより、より完全に理解することができる。図1および2に示されるように、基本的に、本発明による留め具布地構造は、極細繊維ループ布地1および繊維パイル布地2を含む。
【0012】
図1を参照すると、極細繊維ループ布地1は、編み交差結節の間で、集まり解きほぐされた、糸の単一極細繊維である、多数の極細繊維ループまたはパイル・ループを含む。実際に、これらの極細繊維ループは、従来のベルクロ・テープのテープに似た機能を果たす。
【0013】
実際の実施において、極細繊維ループ布地1は極細繊維によって製造でき、極細繊維は1デニール未満の直径を有する。極細繊維の製造は成熟した技術である。図1に示されるように、通常のプロセスは、複合紡糸によって複合繊維となる2つの異なる高分子材料を採用し、次いで、個々の複合繊維を極細繊維の束に分離することができる(通常、分割と呼ばれる)。したがって、本発明の極細繊維ループ布地1は、極細繊維糸を編み、次いで、糸の編み交差結節の間で、解きほぐされているが集まっている、微小繊維ループまたはパイル・ループを形成させるために、極細繊維糸を分割することによっている。分割の方法は、化学的方法、ならびに機械的方法によって実施できる。化学的方法は、2つの材料の一方を溶かすが他方をそのまま残す化学物質(すなわち、アルカリ性腐食物質)による。機械的方法による場合、2つの別の複合した繊維を、機械的に擦ることによって分離できる。
【0014】
繊維パイル布地2は、複数の繊維パイルを含み、これらのパイルは、紡績糸(天然繊維および合成ステープル繊維が含まれる)またはテクスチャを有するフィラメント糸によって編まれる。繊維パイル布地2の繊維パイルは、フィラメントまたはステープル繊維によって編まれるかどうかは重要でなく、1)直立し分散した非フック繊維群を形成させるために、編まれたかまたは織られたパイル・ループ布地を剪毛すること;2)均一で直立し分散した非フック繊維群を形成させるために、編まれたまたは織られたコーデュロイ布地を緯糸または経糸方向に剪毛すること;3)直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を得るために、編まれたまたは織られた2層布地を2枚に裁断し、次いで、編まれたまたは織られ、裁断した2層布地の2枚の片側を剪毛することによって作ることができ、ここで、各繊維パイルの繊維は、極細繊維ループ布地の極細繊維ループを一層しっかりと留めるための、アルカリ性腐食物質による仕上げの後、ざらざらした表面を有する。その結果、前記3つの繊維パイル作製方法の1つに従い、繊維パイル布地2は、従来のベルクロ・テープのフック要素に似た機能を有する。
【0015】
実際の実施において、繊維パイル布地2および極細繊維ループ布地1は、面と面で接合され、繊維パイル布地2の直立した繊維は、極細繊維ループ布地1によって留められる、または拘束されるので、抗引き剥がし効果または付着(これらを、従来の表面留め具ベルクロ・テープは有する)を実現する。
【0016】
用途に従い、極細繊維ループ布地1および繊維パイル布地2は、図3に示されるように、テリーまたはベロア編み機によって相対する面に作製できる;または、図4に示されるように、極細繊維ループ布地1および繊維パイル布地2は、同じ面の異なる位置に作製できる;または、図5に示されるように、極細繊維ループ布地1および繊維パイル布地2は、接合の前に、それぞれ、別の2枚の布地の上に作製できる。
【0017】
結果として、本発明を採用することによって、達成できる利点および効果は以下の通りである。
1)極細繊維の使用、および布地の一部としてそれらを直接編むことにより(ここで、極細繊維ループおよび繊維パイルは全て、留め具布地によって形成され、また留め具布地と一体化されている)、その厚さは効果的に薄くできる。
2)本発明の留め具布地は、ループおよびパイルを、基布地または基材なしに、布地の表面に直接形成するので、柔らかいテクスチャに基づいて、バンド・ストリップとして用いられる時、それは、身体に直接、しっかりと、ぴったりと、巻く、または巻きつけることができる。
3)繊維パイルの直径は、天然の綿繊維に似ており、特に、極細繊維ループは、天然の綿繊維よりずっと細く、それは、使用者の皮膚刺激を防ぐことができる以外に、他の物が布地の中に挿入されるまたは落下することもまた防ぎ、このことによってより長い付着寿命を保つことができる。
4)繊維パイル布地の繊維パイルは、極細繊維ループ布地の極細繊維ループの極細繊維を損傷しない直立した非フック繊維である;極細繊維ループ布地の極細繊維ループと、繊維パイル布地の繊維パイルの直立した非フック繊維との間の表面全体での噛合いは、接触表面全域の中での力の分布地さえ許容するので、表面の特定の部分に加えられる力を小さくし、留める力および留め具布地の耐久性を向上させ、繰返し使用という環境に優しい材料にとって必須の要件を満たす。
5)留め具布地は、柔らかい衣類の通常の編布地または織布地のように製造され、他のどのような固定手段もなしに、表面全体で留めるために、任意の所望の形状に従って、包帯またはサポーターとして直接使用するために、自由に裁断でき、バンド・ストリップとして用いられるとき、たった1枚のバンド・ストリップが、身体の様々な部分を包むために使用され得る。留める用途が広範であるため、本発明は、留め具布地業界における飛躍的な前進である。
【0018】
本発明の特定の実施形態が例示の目的で詳細に説明されたが、様々な修正および向上が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外には限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャード加工された複合極細繊維糸から製造され、その後、より多くのより細い繊維を覆い直すように分割された極細繊維ループ布地であって、実質的に全ての繊維が織り交差または編み交差結節の間で極細繊維ループを形成する極細繊維ループ布地と、
紡績糸または合成フィラメント糸によって製造され、次いで、前記極細繊維ループ布地の極細繊維ループを留めるための、直立し分散した繊維パイル群を形成させるために剪毛される繊維パイル布地と
からなることを特徴とする留め具布地構造。
【請求項2】
前記分割が、繊維の1つを溶かす化学的方法によることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項3】
前記分割が、異なる材料の繊維を分離する機械的方法によることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項4】
前記繊維パイル布地の繊維パイルが、合成フィラメント糸または、天然および合成繊維が含まれる紡績糸によって編まれ、または織られ、前記直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を生成させるために、パイル・ループがパイル・ループの先端で剪毛されていることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項5】
前記繊維パイル布地の繊維パイルが、前記直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を形成させるために、緯糸または経糸方向に剪毛された、編まれたまたは織られたコーデュロイ布地であることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項6】
前記繊維パイル布地の繊維パイルが、2枚に裁断され、前記直立し分散した繊維パイル非フック繊維群を得るために、その2枚の1つの面が剪毛された、編まれたまたは織られた2層布地であることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項7】
繊維パイルおよび極細繊維ループが、布地の相対する表面に別々に作製されることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項8】
繊維パイルおよび極細繊維ループが、布地の同じ面の異なる部分に作製されることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項9】
繊維パイルおよび極細繊維ループが、別の2枚の布地に作製されることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項10】
繊維パイルおよび極細繊維ループが、自己付着性の両面留め具布地を形成するように互いに接合される、別の2枚の布地に作製されることを特徴とする請求項9に記載の留め具布地構造。
【請求項11】
前記繊維パイル布地の各繊維パイルの繊維がざらざらした表面を有することを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。
【請求項12】
極細繊維ループ布地が、織り交差または編み交差結節の間でパイル・ループを有する極細繊維糸によって編まれる、または織られることを特徴とする請求項1に記載の留め具布地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−156097(P2010−156097A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297619(P2009−297619)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(504197824)
【出願人】(510003597)
【Fターム(参考)】