説明

留め具

【課題】ボタンに留める留め具であって、ボタンの形状に左右されることが少なく、しかも十分な保持力が維持され、さらにはポケットに留める機能も併せ持つ留め具を提供する。
【解決手段】留め具10は、一枚の板を折り返したようなクリップ形状である。上板1は湾曲しており、湾曲部12を介して、下板2に接続され、収納空間11が形成される。上板1には留め穴13が穿設されている。下板2にはスリット22が形成されている。上板1の凸部14が嵌る下板2の凹部25と、下板2の凸部24が嵌る上板1の凹部15とがそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に布などのシート状のものに係止するための留め具であって、シート状物の端部を挟持する機能と、そのシート状物に取り付けられたボタンに保持される機能とを兼ね備えた留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携行物が落下する危険を軽減する方法としては、ストラップの一端をその携行物に接続して、他端が首下げ式となっている所謂「首提げストラップ」と、ストラップの一端をその携行物に接続して、もう一端に接続された留め具を衣類に取り付けて使用する所謂「クリップ式ストラップ」との2つに大別される。
【0003】
このうち、クリップタイプは、所謂「ワニ口タイプ」のクリップでポケットなどの衣類の端部を挟んで保持するものと、キーチェーンなどに代表される開閉する「Oリング状留め具」をベルト通しなどに取り付ける方法以外には実用化されたものは殆ど無い。そのような中、前記した2つとは全く異なる考え方で「携帯品の落下防止具」として特許文献1に示されたものが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−207号公報
【0005】
この提案では、基本的構造としてボタン形状に合わせた留め具を形成してボタンを保持し、その留め具にストラップの一端を接続して、他端に接続された携帯電話などの携行物の落下を防止しようとするものである。この文献の第1の実施例から第3の実施例までは、ボタンの周縁を保持するためにその形状が開口自在に形成されており、そのそれが開閉してボタンが嵌るように形成されている。第4の実施例ではクリップ状の板で形成された一方の面にボタンが通り抜けれる穴を形成して、そこからボタンを一端通り抜けさせてから、ボタンの直径に合わせて形成された係止部で保持するように形成されている。
【0006】
この提案の基本的考えが、ボタンの周縁を保持する構造であり、その形状がボタンの直径に依存する部分が大きく、殆どの実施形態で示されている留め具はボタンの直径に合わせて形成しなくてはならなく、個々の留め具としてみた場合、使用できるボタンの大きさの制限が大きくなる。第3の実施形態に示したクリップ状の開閉幅の大きなものは、ボタンの直径の変化に対する対応は広いものの、保持力はその分確保しにくくなるため、携行物の重量に対する対応は十分とは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明はこの課題を解決するために、ボタンに留める留め具であって、ボタンの形状に左右されることが少なく、しかも十分な保持力が維持され、さらにはポケットに留める機能も併せ持つ留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、ボタン状物をシート状物に取り付けた状態で、ボタン状物とシート状物との間にあるその取付手段を挟持する手段と、ボタン状物を収納する空間と、その空間からボタン状物が脱落しないようにする保持手段と、前記シート状物とは異なる別シート状物の端面を挟持する挟持手段とからなる。これにより、一つの留め具でポケットの入り口などには挟んで留め、一方、ボタンに留める場合はボタンを縫い付けている糸を挟み込むようにして留め具が保持されることができる。
【0009】
また、本発明では、開閉自在で一端が接続され状態の2枚の板状物で形成され、両方の前記板状物の開放端部が互いに近接または接触し、その両開放端部でシート状物の端部を挟持するクリップ状の留具であって、一方の板状物の開放端側にスリットが形成され、接続端と開放端との間に空間が形成さているようにした。これよって、クリップ形状の先端で簡単に布の端を挟む一方、ボタンに留めるためにはスリットをボタンと布地との間にすべり込ませて嵌めることにより、ボタンがこの留め具の中に収納されて、留め具がボタンに保持された状態とすることができる。
【0010】
さらに、本発明では、前記空間の中に収納された物が脱落しないように脱落防止手段が設けられているようにした。これにより、ボタンに取り付ける際に簡単には脱落しないため、大切な携帯電話などのストラップへの接続で有用である。
【0011】
さらに、本発明では、前記2枚の板状物が接続端で実質的に一体的になっているクリップ形状であるようにした。これにより、構造が簡単であるものの、二通りの留め具としての機能を有する留め具を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ボタンを布地などのシート状物に取り付けた状態で、ボタンとシート状物との間にある例えば糸などの取付手段を挟持する手段と、ボタンを収納する空間と、その空間からボタンが脱落しないようにする保持手段と、前記シート状物とは異なる別シート状物の端面を挟持する挟持手段とからなるようにしたことにより、ボタンの付け根である糸を挟持するとともに、ボタンを内部に収納した状態で留め具がシート状物に留められ、一方、ボタンに留めないときは、ポケットなどに挟んで留められるため、殆どの携行物のストラップや名札といった頻繁に着脱をする身の回り品用の留め具として有用である。
【0013】
また本発明は、開閉自在で一端が接続され状態の2枚の板状物で形成され、両方の前記板状物の開放端部が互いに近接または接触し、その両開放端部でシート状物の端部を挟持するクリップ状の留具であって、一方の板状物の開放端側にスリットが形成され、接続端と開放端との間に空間が形成さていることにより、従来のクリップ形状という操作性の良い留め具であると同時に、簡単にボタンに留めることもできるという2つの機能を併せ持つ留め具を構成できることから、操作性及び汎用性に長けた身の回り品用の留め具として有用である。
【0014】
本発明は、さらに前記空間の中に収納された物が脱落しないように脱落防止手段が設けられていることから、ボタンに取り付けた状態で簡単に外れることがない。
【0015】
また本発明は、さらに前記2枚の板状物が接続端で実質的に一体的になっているクリップ形状であるようにしたことにより、簡単な構造により本発明の目的を果たすことができるため、樹脂成型だけでなく、金属製など様々な素材での製造を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。ここで図1は本発明に係る一実施形態の留め具の斜視図、図2はその留め具を下から見た斜視図、図3は図2のA−A線から見てその留め具をボタンに取り付けた状態を説明する一部断面図、図4は他の実施形態の留め具を説明する斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施例の留め具10は、一枚の板を折り返したようなクリップ形状に形成されている。その上板1は湾曲しており、湾曲部12を介して、ほぼ平坦な下板2に接続されている。上板1、湾曲部12、下板2に囲まれた部分には収納空間11が形成される。上板1の端部には留め穴13が穿設され、ストラップの端部などを取り付ける。
【0018】
図2に示すように、下板2には端部から湾曲部12側へとスリット22が形成され、その幅はボタンの縫い付け糸が余裕を持って入るほどの幅である。
【0019】
図3に示すように、上板1と下板2の互いの先端部分は接しており、その接面では、上板1の凸部14が嵌る下板2の凹部25と、下板2の凸部24が嵌る上板1の凹部15とがそれぞれ形成されている。
【0020】
留め具10全体は可撓性を有する素材で形成され、たとえばABS樹脂やポリカーボネートなど、十分な可撓性と復元性を有するエンジニアプラスチックが望ましいが、これに限られるものではなく、ステンレススチールなどの金属や、紙複合素材樹脂などでも良い。
【0021】
この留め具の使用方法について説明する。
まず、シート30に縫い付けられたボタン3に取り付けるにあたっては、一旦、上板1と下板2の互いの先端部分を押し開き、スリット22がボタン3の縫い糸31を通るように入れて、図3に示すように、ボタン3が収納空間11された状態にする。上板1と下板2の互いの先端部分を閉じると、互いの凸部14、24と凹部15、25とが噛み合って、ボタン3から外れる方向の力が加わっても、ボタン3は収納空間11から抜け落ちることはない。
【0022】
次に、ポケット(図示せず)などの布の端面に取り付けるにあたっては、下板2の先端がポケットの内側で、上板1の先端がポケットの外側になるようにして、ポケットの縁へ押し当てて挟み込む。こうすると、互いの凸部14、24と凹部15、25とがポケットの布地を介して噛み合って、ポケットから簡単には抜け落ちない。
【0023】
下板1の留め穴13にはストラップ(図示せず)などの一端を取り付け、そのストラップの他端を携行物などに接続して使用するが、この状態で上板1に取り付けられたストラップはポケットの外側に位置するため、そのストラップに接続された携行物などが落下しそうになった場合は、その重量で留め具10がポケットにさらに食い込む方向の力が加わることから、簡単にポケットから抜け落ちることはない。
【0024】
次に、別の実施形態について説明する。
留め具3の上板31の先端にはホルダー34が取り付けられ、このホルダー34は軟質樹脂で作られ、折り返したループ状となっていて、名札4の取り付け穴41に通して、名札4を下げることができる。
【0025】
前述した留め具10とほぼ同形状であるため、この留め具3を使って、名札4をポケットで留めたいときは、上板31と下板32との間でポケットを挟んで留める。ボタンに留めるときは、下板32に形成されているスリット30にボタンの縫い糸を通して、収納空間33にボタンを収納して留める。
【0026】
さらに、この留め具3には、首下げ式などのストラップ51が取り付けられた連結具5を連結する連結孔35が形成されている。この連結具5は簡単に連結孔35に嵌め込め、ワンタッチで取り外すこともできる。
【0027】
したがって、この連結具5で留め具3を連結した場合、ストラップ51を首に下げただけでも名札4を身につけることも可能であり、その状態でポケットやボタンに留め具3を取り付けると位置が固定されて、身体を屈んだ際にブラブラせずに邪魔にならない。また、連結具5を取り外して、留め具3単体で留めることも可能であるため、首下げ、ボタン留め、ポケット留めという3つの選択肢を持つ名札となる。
【0028】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
【0029】
上記実施形態では、留め具形状が1枚の板を折り返したクリップ形状であったが、これに限られるものではなく、留め具の用途などによって任意の形状とすることができる。例えば、複数の部材とバネにより、所謂「洗濯バサミ構造」のクリップ形状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の留め具は、ボタンに留めることと、ポケットに留めるという2つの機能を併せ持ち、さらには首下げ式ストラップへと組み合わせて使用することも可能であるため、多彩な服装や職場環境などに応じた留め具として使用できる。特に名札や携帯ストラップなど、非常に需要の高い分野で有用な留め具である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る一実施形態の留め具の斜視図
【図2】その留め具を下から見た斜視図
【図3】図2のA−A線から見てその留め具をボタンに取り付けた状態を説明する一部断面図
【図4】他の実施形態の留め具を説明する斜視図
【符号の説明】
【0032】
1…上板、2…下板、10…留め具、11…収納空間、12…湾曲部、13…留め穴、14…凸部、15…凹部、22…スリット、24…凸部、25…凹部、3…ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン状物をシート状物に取り付けた状態で、ボタン状物とシート状物との間にあるその取付手段を挟持する手段と、ボタン状物を収納する空間と、その空間からボタン状物が脱落しないようにする保持手段と、前記シート状物とは異なる別シート状物の端面を挟持する挟持手段とからなることを特徴とする留め具。
【請求項2】
開閉自在で一端が接続され状態の2枚の板状物で形成され、両方の前記板状物の開放端部が互いに近接または接触し、その両開放端部でシート状物の端部を挟持するクリップ状の留具であって、一方の板状物の開放端側にスリットが形成され、接続端と開放端との間に空間が形成さていることを特徴とする留め具。
【請求項3】
前記空間の中に収納された物が脱落しないように脱落防止手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載の留め具。
【請求項4】
前記2枚の板状物が接続端で実質的に一体的になっているクリップ形状であることを特徴とする請求項2記載の留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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