留置針組立体
【課題】内針の先端部を覆うためのプロテクタ及び止血のための弁体を有しつつも構造が簡単な留置針組立体を提供する。
【解決手段】留置針組立体10は、中空形状を有する外針11と、中空形状を有し外針の一端部に連通する外針ハブ13と、外針ハブを通り外針の一端部から外針に挿入された内針12と、外針ハブを閉塞するように外針ハブに配置され且つ内針が挿通し得る挿通部150が形成された弁体15と、弁体及び外針ハブによって囲まれ外針に連通する内部空間18又は挿通部に配置された、内針が挿通されたプロテクタ150と、を有し、プロテクタは、内針の抜去に伴って、円滑に摺動し、内針に対し内針の軸方向先端側へ相対移動して内針の先端部を覆い且つ内針とともに挿通部から抜ける。
【解決手段】留置針組立体10は、中空形状を有する外針11と、中空形状を有し外針の一端部に連通する外針ハブ13と、外針ハブを通り外針の一端部から外針に挿入された内針12と、外針ハブを閉塞するように外針ハブに配置され且つ内針が挿通し得る挿通部150が形成された弁体15と、弁体及び外針ハブによって囲まれ外針に連通する内部空間18又は挿通部に配置された、内針が挿通されたプロテクタ150と、を有し、プロテクタは、内針の抜去に伴って、円滑に摺動し、内針に対し内針の軸方向先端側へ相対移動して内針の先端部を覆い且つ内針とともに挿通部から抜ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液等の際に血管に穿刺するとともに留置して用いられる留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液等に使用される留置針組立体は、通常、中空形状の外針と、外針に挿通し得る内針とを有しており、術者は、外針に内針が挿通され内針の先端部を外針から突出させた状態でこれらを血管に穿刺して用いる。外針が血管に刺入され、内針の抜去後、術者は、外針ハブに輸液チューブのコネクタを接続し、血管に留置された外針を通じて輸液等を行う。
【0003】
従来から留置針組立体については様々な観点より研究・開発がなされており、例えば特許文献1又は特許文献2に記載の留置針組立体は、安全性の観点より、抜去される内針の先端部を覆うプロテクタを外針ハブに備え、プロテクタによって、血液によって汚染された内針による医療従事者及び廃棄物処理業者の感染防止を図っている。
【0004】
また、例えば特許文献3に記載の留置針組立体は、内針が挿通可能な弁体を外針ハブに備え、弁体によって外針ハブからの血液流出を抑制している。このような弁体がない場合、術者は、内針を抜去する際に患者の静脈を圧迫して外針ハブから血液が溢れるのを抑制するが、外針ハブに弁体が設けられる場合、弁体によって止血されるため術者は静脈を圧迫する必要がなく、作業性に優れる。
【0005】
特許文献4には、内針の先端部を覆うプロテクタと外針との間に設けられた弁体を有する留置針組立体が記載されているが、外針ハブ内に輸液チューブ等と接続したときにバルブを開くバルブ駆動部材を有するため、外針ハブが長く、大きくなり、外針が患者の腕などに留置された場合に、動作の妨げとなり煩わしい。
【0006】
また、プロテクタを外針ハブ内に安定して固定するために、外針ハブの内壁面に内側へ突出した係合用肩部が設けられており、成形上複雑な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−180833号公報
【特許文献2】国際公開第WO2004/000408号パンフレット
【特許文献3】特開2002−263197号公報
【特許文献4】特表2005−531377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような技術を組み合わせることによって、安全性及び作業性に優れる留置針組立体の実現を図れるものの、内針の抜去までプロテクタを保持しておく機構を外針ハブに設け、さらに弁体を外針ハブに設けると、構造の複雑化を招き、その結果、生産性の低下、コストの増加、動作不良、および操作性の低下等、様々な問題の要因となる虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内針の先端部を覆うためのプロテクタ及び止血のための弁体を有しつつも構造が簡単な留置針組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の留置針組立体は、中空形状を有する外針と、中空形状を有し前記外針の一端部に連通する外針ハブと、当該外針ハブを通り前記外針の一端部から前記外針に挿入された内針と、前記外針ハブを閉塞するように前記外針ハブに配置され且つ前記内針が挿通し得る挿通部が形成された弁体と、当該弁体及び前記外針ハブによって囲まれ前記外針に連通する内部空間又は前記挿通部に配置された、前記内針が挿通されたプロテクタと、を有し、前記プロテクタは、前記内針の抜去に伴って、内針外表面と円滑に摺動し、前記内針に対し前記内針の軸方向先端側へ相対移動して前記内針の先端部を覆い且つ前記内針とともに前記挿通部から抜ける。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明の留置針組立体では、弁体が、止血に加え、内針の抜去までプロテクタを外針ハブに留める機能も果たすため、プロテクタを外針ハブに保持しておくための機構が別途必要なく、構造を簡単にできる。
【0012】
さらに、輸液チューブ等を接続する際、弁体が開口して輸液チューブのコネクタを接続できるので、留置針組立体の構造が簡単で、かつ安全に操作することができる。
【0013】
また、前記内針の先端部を覆った前記プロテクタが前記内針の軸方向先端側へさらに相対移動するのを阻止する、前記内針及び前記プロテクタのうちの少なくとも一方に設けられた係止部を有するようにすれば、プロテクタが内針の先端部から外れ難いため、安全性に優れる。
【0014】
また、前記プロテクタが、前記内針の軸方向に交差して設けられ、前記内針の軸中心方向へ付勢された状態で内針が挿入されており、前記内針の通過により前記軸中心方向へ移動することにより前記内針の先端部を遮蔽する先端遮蔽部を、有するようにすれば、抜去後の内針の先端部が人体に触れ難いため、安全性に優れる。
【0015】
また、前記プロテクタが前記挿通部に配置され且つ前記挿通部に隙間が形成されるようにすれば、前記内部空間から空気が抜けて内部空間に血液が満たされ易く、そのため外針ハブ及び外針を通じた輸液が容易である。
【0016】
また、前記内部空間の空気を透過させる一方、血液の透過を遮断する、前記外針ハブに設けられた通気フィルタを有するようにすれば、前記内部空間から空気が抜けて内部空間に血液が満たされ易く、そのため外針ハブ及び外針を通じた輸液が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図2】内針の先端部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】図2の3−3線に沿う内針の断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿う内針の断面図である。
【図5】第1実施形態のプロテクタの斜視図である。
【図6】内針の先端部を覆う第1実施形態のプロテクタの断面図である。
【図7】図6に示す配置から内針のまわりに90°回転したプロテクタの断面図である。
【図8】内針が抜去されている際の第1実施形態の留置針組立体の図である。
【図9】内針抜去後の第1実施形態の留置針組立体の図である。
【図10】第2実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図11】第3実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図12】内針の先端部を覆う第4実施形態のプロテクタの断面図である。
【図13】内針が挿通した第4実施形態のプロテクタの断面図である。
【図14】第4実施形態のプロテクタに含まれる第1の構成部材の斜視図である。
【図15】第4実施形態のプロテクタに含まれる第2の構成部材の斜視図である。
【図16】内針の先端部を覆う第5実施形態のプロテクタの断面図である。
【図17】第5実施形態のプロテクタに含まれる第1の構成部材の斜視図である。
【図18】第5実施形態のプロテクタに含まれる第2の構成部材の斜視図である。
【図19】第6実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態の留置針組立体10は、中空形状を有する外針11と、中空形状を有し外針11の基端部に連通する外針ハブ13と、を有する。また、留置針組立体10は、外針ハブ13を閉塞するように外針ハブ13に配置された弁体15と、弁体15に形成されたスリット150(挿通部)と、スリット150に配置されたプロテクタ14と、を有する。また、留置針組立体10は、プロテクタ14及び外針ハブ13を通って外針11に挿入された内針12と、内針12の基端部に接続した内針ハブ17と、を有する。
【0020】
留置針組立体10は、輸液の際に患者の血管に穿刺するとともに留置して用いられる。術者は、外針11から内針12が突出した状態でこれらを血管に穿刺し、その後、内針12を抜去して外針11を血管に留置する。
【0021】
外針11は、例えばプラスチック素材によって形成される。外針11を形成する材料は、好ましくは、ポリウレタン、ナイロン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)である。また、X線造影性確保のため、好ましくは、造影剤を含む素材がストライプ状に外針11に配置される。また、外針11は、好ましくは透明で、術者は外針11を通じて内針12を視認可能である。外針11の先端部は、軸方向先端側に向かって縮径したテーパ形状を有する。
【0022】
外針ハブ13は、例えばカシメ、接着等によって液密に外針11に固着する。外針ハブ13は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂によって形成される。
【0023】
弁体15は、扁平な円形形状を有し、外針ハブ13の基端部に螺合するリング状の弁体押さえ16及び外針ハブ13の基端部によって、外周部を挟圧保持される。また、弁体15は、例えば、弁体15の外周部に塗布された接着剤によって外針ハブ13の基端部に固着されてもよい。弁体15を形成する材料は、シール性を要し、好ましくは、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム、又は熱可塑性エラストマーである。
【0024】
スリット150は、弁体15を貫通する一文字状であるが、これに限定されず、例えば、弁体15の両面からそれぞれ90度ずれた方向で厚み方向に一文字状に切り込まれ、弁体15の内部で十文字状に交差した形状等、公知の他の形状を有してもよい。
【0025】
内針12は、先端部から軸方向に沿った一部が中空でそれよりも基端側が中実な構成を有する。また、図2に示すように、内針12は、先端部から軸方向に伸びる溝120を、中空な部分の外面に備える。溝120の長さは、例えば数mmである。内針12は、例えば金属材料によって形成され、好ましくはステンレスによって形成される。
【0026】
図3、及び図4に示すように、内針12の断面形状は、軸方向に沿って変化し、溝120が形成されている部分とそれよりも基端側の部分とで異なる。図3に示すように、溝120が形成されている部分よりも基端側の部分では、内針12の断面は円形形状を有する。一方、図4に示すように、溝120が形成されている部分の断面は、円の外周の一部を径方向内側に押圧し全体を楕円のようにした形状を有する。
【0027】
溝120が形成されている部分の断面において外側の長径R2は、溝120が形成されている部分より基端側の部分の外径R1より大きい(R2>R1)。内針12は、このような断面形状の変化によって生じた段差部121(係止部)を有する(図2参照)。
【0028】
内針ハブ17は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックによって形成される。内針ハブ17は不透明でもよい。また、内針ハブ17は、例えば高周波誘導加熱によって内針12の基端部に固着される。
【0029】
図5に示すように、プロテクタ14は、内針12が挿通し得る筒状の第1の構成部材140と、第1の構成部材140に取り付けられ内針12の先端部を覆う第2の構成部材141と、を有する。
【0030】
プロテクタ14は、第1の構成部材140と第2の構成部材141とが一体となったような1部品によって構成可能であるが、この場合、成形が困難であるためコストの増加につながる。一方、本実施形態のプロテクタ14は複数の部材から構成されるため、コスト低減を図り得る。また、第1の構成部材140及び第2の構成部材141は、例えばステンレススチールなどの金属材料によって形成されるが、これに限定されず、両者をプラスチック材料によって形成可能である。この場合、プラスチックのなかでは変形が生じ難いエンジニアプラスチックが望ましい。
【0031】
第1の構成部材140の内径R3は、段差部121より先端側の内針断面の長径R2よりも小さく、且つ、段差部121より基端側の内針断面の外径R1より大きい(R2>R3>R1)。従って、術者が内針12を抜去する際、段差部121が第1の構成部材140に達するまでは、内針12とプロテクタ14とは互いに進退自在に相対移動できる状態にあり、そのため、内針12が軸方向基端側へ移動してもプロテクタ14は弁体15に保持されてスリット150に留まる。一方、段差部121が第1の構成部材140に達すると、第1の構成部材140が段差部121に引っ掛かり、その結果、プロテクタ14の内針12に対する軸方向先端側への相対移動が阻止されるため、プロテクタ14は内針12とともに移動しスリット150から抜ける。
【0032】
第2の構成部材141は、第1の構成部材140が挿通されて嵌め合わされる嵌合部142と、内針12の外周面に対向するように設けられる側壁部143と、内針12の軸方向に交差して設けられる先端遮蔽部144と、を有する。側壁部143は、側壁部143aと側壁部143bから形成される。側壁部143aは、直角に折り曲げ、内針12の保護カバーであり、弾性アームとしての機能も有する。側壁部143bは内針12の外周を押さえ、内針12の外表面との摺動性を安定させている。
【0033】
嵌合部142、側壁部143、及び先端遮蔽部144は、弾性を有する板状の部材を折り曲げることによって、一体的に形成される。内針12が血管から抜去され、その先端が先端遮蔽部144を通過するまでの間は、先端遮蔽部144が内針12の軸中心方向へ付勢された状態で、内針12は、その壁面が先端遮蔽部144に狭持されている。そして、内針12が外針ハブ13の基端方向にさらに引き抜かれ、内針12の先端部が先端遮蔽部144を通過すると、先端遮蔽部144は内針12の軸中心方向へ移動することによって内針12の先端部を遮蔽する(図6及び図7参照)。
【0034】
次に、上記構成を有する留置針組立体10の製造方法の例を以下に述べる。
【0035】
外針11は、ポリウレタンチューブを切断して形成される。ここで、ポリウレタンチューブは、X線造影性のために硫酸バリウムを含むポリウレタンがチューブの外周にストライプ状に6つ配置された構成を有する。外針11は、ポリプロピレン製の外針ハブ13に、金属製(ステンレススチールなど)、あるいはポリフェニレンサルファイド製(PPS)などのカシメピンによって打ち込み結合される。また、ポリウレタンチューブの先端に型加工によってテーパ加工が施され、外針11の先端が先細り形状とされる。その結果、内針12が外針11に挿通されたとき外針11と内針12との間に段差が生じ難く、血管への穿刺が容易となる。
【0036】
外針ハブ13の開口部に、一文字状のスリット150が形成されたイソプレンゴム製の弁体15が置かれる。弁体15は、ポリプロピレン製の弁体押さえ16、及び外針ハブ13の基端部によって挟まれ、弁体押さえ16と外針ハブ13とを超音波融着し、固定される。弁体15のスリット150に、内針12が円滑に動くためのポリジメチルシリコーン潤滑剤が塗られる。
【0037】
内針12はステンレス製であり、内針12の外周の一部が径方向内側にプレスされることによって、溝120及び段差部121が形成される。第1の構成部材140はステンレスのプレス加工によって形成される。第2の構成部材141は、ステンレスの折り曲げプレス加工によって形成される。第1の構成部材140は、第2の構成部材141の形成過程において、嵌合部142に設けられた孔に挿入される。プロテクタ14は、広げられた先端遮蔽部144に内針12の基端部を通すことによって内針12に取り付けられる。プロテクタ14の挿通後、内針12の基端部にポリカーボネート製の内針ハブ17が固定される。内針ハブ17は、高周波誘導加熱によるポリカーボネートの発熱によって内針12に固定される。
【0038】
治具によってスリット150が広げられた後、スリット150を通してプロテクタ14とともに内針12が外針ハブ13に挿通されることによって、全体が組み立てられる。最後に、留置針組立体10は、適切に包装され、EOG滅菌又は放射線滅菌によって滅菌される。外針11の外表面及び内針12の外表面への潤滑性付与の目的で、留置針組立体10は、反応性シリコーンを溶媒によって希釈した液に浸けられていてもよい。
【0039】
次に、輸液方法とともに、留置針組立体10の操作及び作用について述べる。
【0040】
概説すると、輸液方法は、患者の血管に留置針組立体10を穿刺する穿刺工程と、内針12を抜去する内針抜去工程と、外針11を通じて体内に薬液を注入する薬液注入工程と、を含む。
【0041】
穿刺工程において、術者は、外針11から内針12が突出した状態で、これらを患者の血管に穿刺する。内針12の先端部が血管内に達すると血液が溝120を伝わるため、術者は、溝120を伝わる血液を視認することによって、内針12の先端部が患者の血管に穿刺されたか否かを判断できる。
【0042】
図8に示すように、穿刺工程後、内針抜去工程において、術者は、外針11を血管内に留置したまま内針ハブ17を引き、内針12を、外針11、外針ハブ13、及びスリット150から抜去する。内針抜去工程において段差部121が第1の構成部材140に達するまでの間、弁体15がプロテクタ14を保持する。
【0043】
プロテクタ14は、複数の側壁部143を有しており、また、側壁部143と側壁部143との間に隙間を有する。この隙間は第1の構成部材140に連通しているため、弁体15及び外針ハブ13によって囲まれ外針11に連通する内部空間18の空気は、側壁部143と側壁部143との間の隙間、及び第1の構成部材140(より正確には第1の構成部材140と内針12との隙間)を通って内部空間18の外へ抜ける。つまり、プロテクタ14は、空気が通過する経路を有し、スリット150に配置されることによって、内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たしている。そのため、内部空間18の空気と外針11を通じて流入する血液とが交換され、血液が内部空間18に円滑に流入する。また、プロテクタ14がスリット150に配置されることによってスリット150にも隙間が形成されており、この隙間も、内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たす。
【0044】
段差部121が第1の構成部材140に達すると、段差部121が第1の構成部材140に引っ掛かることによってプロテクタ14が内針12に係止され、そして図9に示すように、プロテクタ14が内針12とともにスリット150から抜ける。また、これと同時にスリット150が閉じ、弁体15は血液の流出を防ぐ。
【0045】
段差部121が第1の構成部材140に引っ掛かる前に、内針12の先端部は先端遮蔽部144を通過するため、プロテクタ14がスリット150から抜けるとき、先端遮蔽部144は内針12の先端部を遮蔽し、プロテクタ14は内針12の先端部全体を覆っている。
【0046】
内針抜去工程後、薬液注入工程では、術者は、薬液が圧送される輸液チューブ(不図示)をスリット150に挿入し、外針ハブ13及び外針11を通じて薬液を血管内に注入する。輸液チューブがスリット150から抜けるのを防ぐため、術者は、好ましくは輸液チューブを外針ハブ13の奥まで挿入する。
【0047】
留置針組立体10の効果について述べる。
【0048】
本実施形態の留置針組立体10では、弁体15が、止血だけでなく、内針12のスリット150からの抜去までプロテクタ14を外針ハブ13に留める機能も果たすため、プロテクタ14を外針ハブ13に保持しておくための機構が別途必要なく、構造を簡単にできる。
【0049】
また、プロテクタ14がスリット150に配置されるため、プロテクタ14が内部空間18に配置される場合に比べ、術者はスリット150からプロテクタ14を抜き易い。
【0050】
また、輸液チューブを接続する際、弁体15が開口して輸液チューブのコネクタを接続できるので、留置針組立体10の構造が簡単で、かつ安全に操作することができる。
【0051】
また、内針12が段差部121を有し、プロテクタ14が内針12の先端部から外れ難いため、安全性に優れる。
【0052】
また、プロテクタ14が先端遮蔽部144を有し、抜去後の内針12の先端部に人体が触れ難いため、安全性に優れる。
【0053】
また、プロテクタ14がスリット150に配置されることによってスリット150に隙間が形成されており、その結果、内部空間18の空気が抜けて内部空間18に血液が満たされ易いため、外針ハブ13及び外針11を通じた輸液が容易である。
【0054】
また、プロテクタ14が、側壁部143と側壁部143との間の隙間及び内針12と第1の構成部材140との間の隙間等、空気が通過する経路を有しており、スリット150に配置されることによって内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たす。その結果、内部空間18から空気が抜けて内部空間18に血液が満たされ易いため、外針ハブ13及び外針11を通じた輸液が容易である。
【0055】
また、第2の構成部材141がスリット150に嵌め込まれることによってプロテクタ14は弁体15に保持されているため、第1の構成部材140がスリット150に嵌め込まれている場合に比べ、術者はスリット150からプロテクタ14を抜き易い。第2の構成部材141は第1の構成部材140の外径より大きい幅を有するため、第1の構成部材140がスリット150に嵌め込まれている場合、抜去の際、第2の構成部材141がスリット150に引っ掛かり、その結果、プロテクタ14が抜け難くなる可能性がある。しかし、本実施形態では、スリット150の通過を阻害するような段差又は突出部が、スリット150に対しプロテクタ14の抜け方向に配置されているため、スリット150からのプロテクタ14の抜去が容易となるのである。
【0056】
<第2実施形態>
図10において概説すると、第2実施形態の留置針組立体20と第1実施形態の留置針組立体10とでは、外針ハブ23、内針22、及び内針ハブ27が、第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第2実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0057】
外針ハブ23は、空気を透過させるが血液の透過を遮断する通気フィルタ230を有する点で、第1実施形態と異なる。他の構成については、外針ハブ23は第1実施形態と略同様である。通気フィルタ230として従来公知の技術を適用でき、例えば、通気フィルタ230は、焼結多孔体、又は疎水性不織布である。外針ハブ23は、内部空間18を囲む外周壁の一部に通気フィルタ230を有する。
【0058】
内針22は、先端部から基端部までの全体が中空である点で第1実施形態と異なる。そして、内針ハブ27は、通気フィルタ230と同様の通気フィルタ271を有する点、及び内針ハブ27の内部空間270が内針22と連通している点で、第1実施形態と異なる。他の構成については、内針22及び内針ハブ27は第1実施形態と略同様である。
【0059】
通気フィルタ271は、内針ハブ27の基端部で内針ハブ27を閉塞するように設けられる。通気フィルタ271は、内針ハブ27の基端部に螺合するフィルタ押さえ272、及び内針ハブ27の基端部によって挟持される。
【0060】
穿刺工程において、術者が、外針11から内針22が突出した状態でこれらを患者の血管に穿刺すると、内部空間270の空気が通気フィルタ271を通じて抜けつつ、血液が内針22を通って内部空間270に流入する。内部空間270への血液の流入は、通気フィルタ271を通じ術者の手元で視認可能である。従って、第2実施形態の留置針組立体20によれば、第1実施形態の効果に加え、血管への穿刺をより確認し易いという効果を奏する。
【0061】
また、本実施形態では、外針ハブ23が通気フィルタ230を有するため、内部空間18の空気がより抜け易い。従って内部空間18に血液がより満たされ易く、輸液がさらに容易となる。
【0062】
<第3実施形態>
図11において概説すると、第3実施形態の留置針組立体30は、外針ハブ13に取り付けられ内部空間18と連通する管部39を有する点で、第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第3実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0063】
管部39は、可撓性を有する長尺状の本体部390と、本体部390の一端に設けられたコネクタ部391と、を有する。本体部390は、コネクタ部391が設けられた一端と反対の他端で内部空間18に連通する。コネクタ部391は、薬液を入れた薬液バッグ及び薬液を圧送するためのポンプ等を含む輸液セットに接続し得る。
【0064】
術者は、施術前に予め管部39を輸液セットに接続しておくことによって、第1実施形態のように内針12の抜去後に輸液チューブをスリット150に挿入しなくてよい。このため、本実施形態の留置針組立体30は、第1実施形態の効果に加え、作業性に優れるという効果を奏する。
【0065】
<第4実施形態>
図12〜図15において概説すると、第4実施形態では、プロテクタ44が第1実施形態のプロテクタ14と異なる。より具体的には、第1実施形態のプロテクタ14では第1の構成部材140と第2の構成部材141とが同種の材料によって形成されるが、第4実施形態のプロテクタ44では、第1の構成部材440と第2の構成部材443とが異なる材料によって形成される。例えば、第1の構成部材440がプラスチック製で第2の構成部材443が金属製、又は第1の構成部材440が金属製で第2の構成部材443がプラスチック製である。金属はステンレススチールが好ましい。プロテクタ44以外の他の構成及び輸液の際の操作については、第4実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0066】
第1の構成部材440は、第1実施形態と同様、内針12が挿通し得る筒状であるが、第1実施形態より長く、内針12の先端部を覆う。内針12の段差部121に係止する部位の内径R4は、第1実施形態の内径R3と同様である。
【0067】
第2の構成部材443は、第1の構成部材440に引っ掛かる爪状の引掛部444と、内針12の外周面に対向するように設けられる側壁部445と、内針12の外周面を摺動するとともに先端部を覆うように内側に折り曲げられた先端遮蔽部446と、を有する。先端遮蔽部446は、内針12の外周面を摺動しやすいように、その先端がややプロテクタ44の基端側に向いているのが望ましい。また、内針12の先端部を覆ったときに先端を確実にカバーできるよう、先端突き当て部間に隙間が出来ないような形状となっている。引掛部444、側壁部445、及び先端遮蔽部446は、弾性を有する材料によって一体的に形成される。両側壁部445は少なくとも1つのブリッジ部447により一体化されている。
【0068】
第1の構成部材440は、外周壁の対向する位置に設けられた1対の孔441を有しており、引掛部444が孔441に引っ掛かることによって、第2の構成部材443が第1の構成部材440に取り付けられる。また、第1の構成部材440は、外周壁の孔441の下方に設けられた1対の長孔442を有しており、内針12が先端遮蔽部446に挿入されるのに伴って広がる側壁部445が、第1の構成部材440に当るのを防いでいる。このため、先端遮蔽部446の動作が阻害されることなく、内針12を先端遮蔽部446の間に挿入できる。第2の構成部材443の径方向の寸法は第1の構成部材440の内径寸法より、やや大きな寸法となっており、第2の構成部材は、そのバネ弾性力によって、第1の構成部材440から外れることなく、先端遮蔽部446が内針12の先端部を覆っているときも内針12に確実に取り付けられる。先端遮蔽部446の動作及び機能等については先端遮蔽部144と同様である。
【0069】
本実施形態では、第1の構成部材440及び第2の構成部材443のうちの一方がプラスチック製のため、第1実施形態の効果に加え、コスト低減を図り得る。
【0070】
また、長孔442によって側壁部445が第1の構成部材440に当るのを防いでいるため、側壁部445と第1の構成部材440との間の隙間を拡大することによって側壁部445が第1の構成部材440に当るのを防ぐ場合に比べ、プロテクタ44を細くでき、その結果、スリット150からのプロテクタ44の抜けが容易である。
【0071】
<第5実施形態>
図16〜18において、概説すると、第5実施形態では、プロテクタ45が第4実施形態のプロテクタ44と異なる。より具体的には、第1の構成部材450は前記構成部材440の1対の孔441を有さず、内側内壁面に第2の構成部材460突き当て用の段差を設けている。第2の構成部材460は、前記第2の構成部材443の引掛部444を有さず、先端遮蔽部462の先端部が交差している。
【0072】
第1の構成部材450は、内周壁に段差452を有しており、第2の構成部材460を突き当てることによって取り付けられる。また、第1の構成部材450は、外周壁に設けられた1対の長孔451を有しており、内針12が先端遮蔽部462に挿入されるのに伴って広がる側壁部461が、第1の構成部材450に当るのを防いでいる。このため、先端遮蔽部462の動作が阻害されることなく、内針12を先端遮蔽部462の間に挿入できる。また、第2の構成部材460の径方向の寸法は、先端遮蔽部462に向かって広がっており、先端遮蔽部462が内針12の先端部を覆った後、先端遮蔽部462の折り曲げ角部と、長孔451の下壁面とが、突き当たるため、内針12の先端側へ過度の力が加わった場合でも、外れることはない。
【0073】
その他の機能については、プロテクタ44と同様である。
【0074】
<第6実施形態>
図19において概説すると、第6実施形態の留置針組立体50と第1実施形態の留置針組立体10とでは、外針ハブ53が第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第6実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0075】
外針ハブ53は、中空形状を有し外針11の基端部に連通する本体部530と、内針12の抜去後、輸液チューブと嵌合して輸液チューブを本体部530に接続させるコネクタ部531と、を有する。外針ハブ53を形成する材料は、外針ハブ13と同様である。
【0076】
コネクタ部531は、本体部530の基端部に螺合する。弁体15は本体部530とコネクタ部531との間に配置され、そしてコネクタ部531及び本体部530は螺合することによって弁体15を挟持する。
【0077】
コネクタ部531は、環状であり、テーパ状の内周面532を有する。内周面532は、本体部530と接続するコネクタ部531の先端の方向に向かって縮径した形状を有する。術者は、内針ハブ17、内針12、及びプロテクタ14を抜いた後、先細り形状となった輸液チューブの先端をスリット150に挿入するともに輸液チューブをコネクタ部531と嵌合させることによって、外針ハブ53に輸液チューブを接続する。コネクタ部531は、内周面532によって、嵌合した輸液チューブを保持する。
【0078】
このように、留置針組立体50は、コネクタ部531を有し、スリット150への輸液チューブの挿入とともに輸液チューブと嵌合して接続するため、第1実施形態の効果に加え、輸液チューブがより抜け難いという効果を奏する。
【0079】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0080】
例えば、プロテクタは、スリットでなく、弁体及び外針ハブによって囲まれた内部空間に配置されてもよい。この場合、内針の抜去に伴って、プロテクタは内針の先端部を覆い、また、プロテクタは内針とともにスリットを通り抜ける。
【0081】
また、上記実施形態では、プロテクタは、第2の構成部材がスリットに嵌め込まれることによって弁体に保持されているが、第1の構成部材がスリットに嵌め込まれることによって弁体に保持されてもよい。
【0082】
また、係止部としての段差部は、上記実施形態のように内針の断面形状を変えることによって形成したものに限定されず、円形形状の内針断面の直径が、軸方向に沿って、先端部が大きくなるように変化することによって形成されたものでもよい。また、係止部は、段差部に限定されず、プロテクタ及び内針のうちの一方に設けられた突部と、それらのうちの他方に設けられ突部が嵌る穴部との組み合わせであってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、留置針組立体は輸液に用いられたが、これに限定されず、採血や注射等、他の用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10、20、30、50 留置針組立体、
11 外針、
12、22 内針、
13、23、53 外針ハブ、
14、44、45 プロテクタ、
15 弁体、
16 弁体押さえ、
17、27 内針ハブ、
18 内部空間、
39 管部、
120 溝、
121 段差部(係止部)、
144、446、462 先端遮蔽部、
150 スリット(挿通部)、
230 通気フィルタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液等の際に血管に穿刺するとともに留置して用いられる留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液等に使用される留置針組立体は、通常、中空形状の外針と、外針に挿通し得る内針とを有しており、術者は、外針に内針が挿通され内針の先端部を外針から突出させた状態でこれらを血管に穿刺して用いる。外針が血管に刺入され、内針の抜去後、術者は、外針ハブに輸液チューブのコネクタを接続し、血管に留置された外針を通じて輸液等を行う。
【0003】
従来から留置針組立体については様々な観点より研究・開発がなされており、例えば特許文献1又は特許文献2に記載の留置針組立体は、安全性の観点より、抜去される内針の先端部を覆うプロテクタを外針ハブに備え、プロテクタによって、血液によって汚染された内針による医療従事者及び廃棄物処理業者の感染防止を図っている。
【0004】
また、例えば特許文献3に記載の留置針組立体は、内針が挿通可能な弁体を外針ハブに備え、弁体によって外針ハブからの血液流出を抑制している。このような弁体がない場合、術者は、内針を抜去する際に患者の静脈を圧迫して外針ハブから血液が溢れるのを抑制するが、外針ハブに弁体が設けられる場合、弁体によって止血されるため術者は静脈を圧迫する必要がなく、作業性に優れる。
【0005】
特許文献4には、内針の先端部を覆うプロテクタと外針との間に設けられた弁体を有する留置針組立体が記載されているが、外針ハブ内に輸液チューブ等と接続したときにバルブを開くバルブ駆動部材を有するため、外針ハブが長く、大きくなり、外針が患者の腕などに留置された場合に、動作の妨げとなり煩わしい。
【0006】
また、プロテクタを外針ハブ内に安定して固定するために、外針ハブの内壁面に内側へ突出した係合用肩部が設けられており、成形上複雑な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−180833号公報
【特許文献2】国際公開第WO2004/000408号パンフレット
【特許文献3】特開2002−263197号公報
【特許文献4】特表2005−531377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような技術を組み合わせることによって、安全性及び作業性に優れる留置針組立体の実現を図れるものの、内針の抜去までプロテクタを保持しておく機構を外針ハブに設け、さらに弁体を外針ハブに設けると、構造の複雑化を招き、その結果、生産性の低下、コストの増加、動作不良、および操作性の低下等、様々な問題の要因となる虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内針の先端部を覆うためのプロテクタ及び止血のための弁体を有しつつも構造が簡単な留置針組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の留置針組立体は、中空形状を有する外針と、中空形状を有し前記外針の一端部に連通する外針ハブと、当該外針ハブを通り前記外針の一端部から前記外針に挿入された内針と、前記外針ハブを閉塞するように前記外針ハブに配置され且つ前記内針が挿通し得る挿通部が形成された弁体と、当該弁体及び前記外針ハブによって囲まれ前記外針に連通する内部空間又は前記挿通部に配置された、前記内針が挿通されたプロテクタと、を有し、前記プロテクタは、前記内針の抜去に伴って、内針外表面と円滑に摺動し、前記内針に対し前記内針の軸方向先端側へ相対移動して前記内針の先端部を覆い且つ前記内針とともに前記挿通部から抜ける。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明の留置針組立体では、弁体が、止血に加え、内針の抜去までプロテクタを外針ハブに留める機能も果たすため、プロテクタを外針ハブに保持しておくための機構が別途必要なく、構造を簡単にできる。
【0012】
さらに、輸液チューブ等を接続する際、弁体が開口して輸液チューブのコネクタを接続できるので、留置針組立体の構造が簡単で、かつ安全に操作することができる。
【0013】
また、前記内針の先端部を覆った前記プロテクタが前記内針の軸方向先端側へさらに相対移動するのを阻止する、前記内針及び前記プロテクタのうちの少なくとも一方に設けられた係止部を有するようにすれば、プロテクタが内針の先端部から外れ難いため、安全性に優れる。
【0014】
また、前記プロテクタが、前記内針の軸方向に交差して設けられ、前記内針の軸中心方向へ付勢された状態で内針が挿入されており、前記内針の通過により前記軸中心方向へ移動することにより前記内針の先端部を遮蔽する先端遮蔽部を、有するようにすれば、抜去後の内針の先端部が人体に触れ難いため、安全性に優れる。
【0015】
また、前記プロテクタが前記挿通部に配置され且つ前記挿通部に隙間が形成されるようにすれば、前記内部空間から空気が抜けて内部空間に血液が満たされ易く、そのため外針ハブ及び外針を通じた輸液が容易である。
【0016】
また、前記内部空間の空気を透過させる一方、血液の透過を遮断する、前記外針ハブに設けられた通気フィルタを有するようにすれば、前記内部空間から空気が抜けて内部空間に血液が満たされ易く、そのため外針ハブ及び外針を通じた輸液が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図2】内針の先端部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】図2の3−3線に沿う内針の断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿う内針の断面図である。
【図5】第1実施形態のプロテクタの斜視図である。
【図6】内針の先端部を覆う第1実施形態のプロテクタの断面図である。
【図7】図6に示す配置から内針のまわりに90°回転したプロテクタの断面図である。
【図8】内針が抜去されている際の第1実施形態の留置針組立体の図である。
【図9】内針抜去後の第1実施形態の留置針組立体の図である。
【図10】第2実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図11】第3実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【図12】内針の先端部を覆う第4実施形態のプロテクタの断面図である。
【図13】内針が挿通した第4実施形態のプロテクタの断面図である。
【図14】第4実施形態のプロテクタに含まれる第1の構成部材の斜視図である。
【図15】第4実施形態のプロテクタに含まれる第2の構成部材の斜視図である。
【図16】内針の先端部を覆う第5実施形態のプロテクタの断面図である。
【図17】第5実施形態のプロテクタに含まれる第1の構成部材の斜視図である。
【図18】第5実施形態のプロテクタに含まれる第2の構成部材の斜視図である。
【図19】第6実施形態の留置針組立体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態の留置針組立体10は、中空形状を有する外針11と、中空形状を有し外針11の基端部に連通する外針ハブ13と、を有する。また、留置針組立体10は、外針ハブ13を閉塞するように外針ハブ13に配置された弁体15と、弁体15に形成されたスリット150(挿通部)と、スリット150に配置されたプロテクタ14と、を有する。また、留置針組立体10は、プロテクタ14及び外針ハブ13を通って外針11に挿入された内針12と、内針12の基端部に接続した内針ハブ17と、を有する。
【0020】
留置針組立体10は、輸液の際に患者の血管に穿刺するとともに留置して用いられる。術者は、外針11から内針12が突出した状態でこれらを血管に穿刺し、その後、内針12を抜去して外針11を血管に留置する。
【0021】
外針11は、例えばプラスチック素材によって形成される。外針11を形成する材料は、好ましくは、ポリウレタン、ナイロン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)である。また、X線造影性確保のため、好ましくは、造影剤を含む素材がストライプ状に外針11に配置される。また、外針11は、好ましくは透明で、術者は外針11を通じて内針12を視認可能である。外針11の先端部は、軸方向先端側に向かって縮径したテーパ形状を有する。
【0022】
外針ハブ13は、例えばカシメ、接着等によって液密に外針11に固着する。外針ハブ13は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂によって形成される。
【0023】
弁体15は、扁平な円形形状を有し、外針ハブ13の基端部に螺合するリング状の弁体押さえ16及び外針ハブ13の基端部によって、外周部を挟圧保持される。また、弁体15は、例えば、弁体15の外周部に塗布された接着剤によって外針ハブ13の基端部に固着されてもよい。弁体15を形成する材料は、シール性を要し、好ましくは、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム、又は熱可塑性エラストマーである。
【0024】
スリット150は、弁体15を貫通する一文字状であるが、これに限定されず、例えば、弁体15の両面からそれぞれ90度ずれた方向で厚み方向に一文字状に切り込まれ、弁体15の内部で十文字状に交差した形状等、公知の他の形状を有してもよい。
【0025】
内針12は、先端部から軸方向に沿った一部が中空でそれよりも基端側が中実な構成を有する。また、図2に示すように、内針12は、先端部から軸方向に伸びる溝120を、中空な部分の外面に備える。溝120の長さは、例えば数mmである。内針12は、例えば金属材料によって形成され、好ましくはステンレスによって形成される。
【0026】
図3、及び図4に示すように、内針12の断面形状は、軸方向に沿って変化し、溝120が形成されている部分とそれよりも基端側の部分とで異なる。図3に示すように、溝120が形成されている部分よりも基端側の部分では、内針12の断面は円形形状を有する。一方、図4に示すように、溝120が形成されている部分の断面は、円の外周の一部を径方向内側に押圧し全体を楕円のようにした形状を有する。
【0027】
溝120が形成されている部分の断面において外側の長径R2は、溝120が形成されている部分より基端側の部分の外径R1より大きい(R2>R1)。内針12は、このような断面形状の変化によって生じた段差部121(係止部)を有する(図2参照)。
【0028】
内針ハブ17は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックによって形成される。内針ハブ17は不透明でもよい。また、内針ハブ17は、例えば高周波誘導加熱によって内針12の基端部に固着される。
【0029】
図5に示すように、プロテクタ14は、内針12が挿通し得る筒状の第1の構成部材140と、第1の構成部材140に取り付けられ内針12の先端部を覆う第2の構成部材141と、を有する。
【0030】
プロテクタ14は、第1の構成部材140と第2の構成部材141とが一体となったような1部品によって構成可能であるが、この場合、成形が困難であるためコストの増加につながる。一方、本実施形態のプロテクタ14は複数の部材から構成されるため、コスト低減を図り得る。また、第1の構成部材140及び第2の構成部材141は、例えばステンレススチールなどの金属材料によって形成されるが、これに限定されず、両者をプラスチック材料によって形成可能である。この場合、プラスチックのなかでは変形が生じ難いエンジニアプラスチックが望ましい。
【0031】
第1の構成部材140の内径R3は、段差部121より先端側の内針断面の長径R2よりも小さく、且つ、段差部121より基端側の内針断面の外径R1より大きい(R2>R3>R1)。従って、術者が内針12を抜去する際、段差部121が第1の構成部材140に達するまでは、内針12とプロテクタ14とは互いに進退自在に相対移動できる状態にあり、そのため、内針12が軸方向基端側へ移動してもプロテクタ14は弁体15に保持されてスリット150に留まる。一方、段差部121が第1の構成部材140に達すると、第1の構成部材140が段差部121に引っ掛かり、その結果、プロテクタ14の内針12に対する軸方向先端側への相対移動が阻止されるため、プロテクタ14は内針12とともに移動しスリット150から抜ける。
【0032】
第2の構成部材141は、第1の構成部材140が挿通されて嵌め合わされる嵌合部142と、内針12の外周面に対向するように設けられる側壁部143と、内針12の軸方向に交差して設けられる先端遮蔽部144と、を有する。側壁部143は、側壁部143aと側壁部143bから形成される。側壁部143aは、直角に折り曲げ、内針12の保護カバーであり、弾性アームとしての機能も有する。側壁部143bは内針12の外周を押さえ、内針12の外表面との摺動性を安定させている。
【0033】
嵌合部142、側壁部143、及び先端遮蔽部144は、弾性を有する板状の部材を折り曲げることによって、一体的に形成される。内針12が血管から抜去され、その先端が先端遮蔽部144を通過するまでの間は、先端遮蔽部144が内針12の軸中心方向へ付勢された状態で、内針12は、その壁面が先端遮蔽部144に狭持されている。そして、内針12が外針ハブ13の基端方向にさらに引き抜かれ、内針12の先端部が先端遮蔽部144を通過すると、先端遮蔽部144は内針12の軸中心方向へ移動することによって内針12の先端部を遮蔽する(図6及び図7参照)。
【0034】
次に、上記構成を有する留置針組立体10の製造方法の例を以下に述べる。
【0035】
外針11は、ポリウレタンチューブを切断して形成される。ここで、ポリウレタンチューブは、X線造影性のために硫酸バリウムを含むポリウレタンがチューブの外周にストライプ状に6つ配置された構成を有する。外針11は、ポリプロピレン製の外針ハブ13に、金属製(ステンレススチールなど)、あるいはポリフェニレンサルファイド製(PPS)などのカシメピンによって打ち込み結合される。また、ポリウレタンチューブの先端に型加工によってテーパ加工が施され、外針11の先端が先細り形状とされる。その結果、内針12が外針11に挿通されたとき外針11と内針12との間に段差が生じ難く、血管への穿刺が容易となる。
【0036】
外針ハブ13の開口部に、一文字状のスリット150が形成されたイソプレンゴム製の弁体15が置かれる。弁体15は、ポリプロピレン製の弁体押さえ16、及び外針ハブ13の基端部によって挟まれ、弁体押さえ16と外針ハブ13とを超音波融着し、固定される。弁体15のスリット150に、内針12が円滑に動くためのポリジメチルシリコーン潤滑剤が塗られる。
【0037】
内針12はステンレス製であり、内針12の外周の一部が径方向内側にプレスされることによって、溝120及び段差部121が形成される。第1の構成部材140はステンレスのプレス加工によって形成される。第2の構成部材141は、ステンレスの折り曲げプレス加工によって形成される。第1の構成部材140は、第2の構成部材141の形成過程において、嵌合部142に設けられた孔に挿入される。プロテクタ14は、広げられた先端遮蔽部144に内針12の基端部を通すことによって内針12に取り付けられる。プロテクタ14の挿通後、内針12の基端部にポリカーボネート製の内針ハブ17が固定される。内針ハブ17は、高周波誘導加熱によるポリカーボネートの発熱によって内針12に固定される。
【0038】
治具によってスリット150が広げられた後、スリット150を通してプロテクタ14とともに内針12が外針ハブ13に挿通されることによって、全体が組み立てられる。最後に、留置針組立体10は、適切に包装され、EOG滅菌又は放射線滅菌によって滅菌される。外針11の外表面及び内針12の外表面への潤滑性付与の目的で、留置針組立体10は、反応性シリコーンを溶媒によって希釈した液に浸けられていてもよい。
【0039】
次に、輸液方法とともに、留置針組立体10の操作及び作用について述べる。
【0040】
概説すると、輸液方法は、患者の血管に留置針組立体10を穿刺する穿刺工程と、内針12を抜去する内針抜去工程と、外針11を通じて体内に薬液を注入する薬液注入工程と、を含む。
【0041】
穿刺工程において、術者は、外針11から内針12が突出した状態で、これらを患者の血管に穿刺する。内針12の先端部が血管内に達すると血液が溝120を伝わるため、術者は、溝120を伝わる血液を視認することによって、内針12の先端部が患者の血管に穿刺されたか否かを判断できる。
【0042】
図8に示すように、穿刺工程後、内針抜去工程において、術者は、外針11を血管内に留置したまま内針ハブ17を引き、内針12を、外針11、外針ハブ13、及びスリット150から抜去する。内針抜去工程において段差部121が第1の構成部材140に達するまでの間、弁体15がプロテクタ14を保持する。
【0043】
プロテクタ14は、複数の側壁部143を有しており、また、側壁部143と側壁部143との間に隙間を有する。この隙間は第1の構成部材140に連通しているため、弁体15及び外針ハブ13によって囲まれ外針11に連通する内部空間18の空気は、側壁部143と側壁部143との間の隙間、及び第1の構成部材140(より正確には第1の構成部材140と内針12との隙間)を通って内部空間18の外へ抜ける。つまり、プロテクタ14は、空気が通過する経路を有し、スリット150に配置されることによって、内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たしている。そのため、内部空間18の空気と外針11を通じて流入する血液とが交換され、血液が内部空間18に円滑に流入する。また、プロテクタ14がスリット150に配置されることによってスリット150にも隙間が形成されており、この隙間も、内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たす。
【0044】
段差部121が第1の構成部材140に達すると、段差部121が第1の構成部材140に引っ掛かることによってプロテクタ14が内針12に係止され、そして図9に示すように、プロテクタ14が内針12とともにスリット150から抜ける。また、これと同時にスリット150が閉じ、弁体15は血液の流出を防ぐ。
【0045】
段差部121が第1の構成部材140に引っ掛かる前に、内針12の先端部は先端遮蔽部144を通過するため、プロテクタ14がスリット150から抜けるとき、先端遮蔽部144は内針12の先端部を遮蔽し、プロテクタ14は内針12の先端部全体を覆っている。
【0046】
内針抜去工程後、薬液注入工程では、術者は、薬液が圧送される輸液チューブ(不図示)をスリット150に挿入し、外針ハブ13及び外針11を通じて薬液を血管内に注入する。輸液チューブがスリット150から抜けるのを防ぐため、術者は、好ましくは輸液チューブを外針ハブ13の奥まで挿入する。
【0047】
留置針組立体10の効果について述べる。
【0048】
本実施形態の留置針組立体10では、弁体15が、止血だけでなく、内針12のスリット150からの抜去までプロテクタ14を外針ハブ13に留める機能も果たすため、プロテクタ14を外針ハブ13に保持しておくための機構が別途必要なく、構造を簡単にできる。
【0049】
また、プロテクタ14がスリット150に配置されるため、プロテクタ14が内部空間18に配置される場合に比べ、術者はスリット150からプロテクタ14を抜き易い。
【0050】
また、輸液チューブを接続する際、弁体15が開口して輸液チューブのコネクタを接続できるので、留置針組立体10の構造が簡単で、かつ安全に操作することができる。
【0051】
また、内針12が段差部121を有し、プロテクタ14が内針12の先端部から外れ難いため、安全性に優れる。
【0052】
また、プロテクタ14が先端遮蔽部144を有し、抜去後の内針12の先端部に人体が触れ難いため、安全性に優れる。
【0053】
また、プロテクタ14がスリット150に配置されることによってスリット150に隙間が形成されており、その結果、内部空間18の空気が抜けて内部空間18に血液が満たされ易いため、外針ハブ13及び外針11を通じた輸液が容易である。
【0054】
また、プロテクタ14が、側壁部143と側壁部143との間の隙間及び内針12と第1の構成部材140との間の隙間等、空気が通過する経路を有しており、スリット150に配置されることによって内部空間18の空気を抜く空気抜きの役割を果たす。その結果、内部空間18から空気が抜けて内部空間18に血液が満たされ易いため、外針ハブ13及び外針11を通じた輸液が容易である。
【0055】
また、第2の構成部材141がスリット150に嵌め込まれることによってプロテクタ14は弁体15に保持されているため、第1の構成部材140がスリット150に嵌め込まれている場合に比べ、術者はスリット150からプロテクタ14を抜き易い。第2の構成部材141は第1の構成部材140の外径より大きい幅を有するため、第1の構成部材140がスリット150に嵌め込まれている場合、抜去の際、第2の構成部材141がスリット150に引っ掛かり、その結果、プロテクタ14が抜け難くなる可能性がある。しかし、本実施形態では、スリット150の通過を阻害するような段差又は突出部が、スリット150に対しプロテクタ14の抜け方向に配置されているため、スリット150からのプロテクタ14の抜去が容易となるのである。
【0056】
<第2実施形態>
図10において概説すると、第2実施形態の留置針組立体20と第1実施形態の留置針組立体10とでは、外針ハブ23、内針22、及び内針ハブ27が、第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第2実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0057】
外針ハブ23は、空気を透過させるが血液の透過を遮断する通気フィルタ230を有する点で、第1実施形態と異なる。他の構成については、外針ハブ23は第1実施形態と略同様である。通気フィルタ230として従来公知の技術を適用でき、例えば、通気フィルタ230は、焼結多孔体、又は疎水性不織布である。外針ハブ23は、内部空間18を囲む外周壁の一部に通気フィルタ230を有する。
【0058】
内針22は、先端部から基端部までの全体が中空である点で第1実施形態と異なる。そして、内針ハブ27は、通気フィルタ230と同様の通気フィルタ271を有する点、及び内針ハブ27の内部空間270が内針22と連通している点で、第1実施形態と異なる。他の構成については、内針22及び内針ハブ27は第1実施形態と略同様である。
【0059】
通気フィルタ271は、内針ハブ27の基端部で内針ハブ27を閉塞するように設けられる。通気フィルタ271は、内針ハブ27の基端部に螺合するフィルタ押さえ272、及び内針ハブ27の基端部によって挟持される。
【0060】
穿刺工程において、術者が、外針11から内針22が突出した状態でこれらを患者の血管に穿刺すると、内部空間270の空気が通気フィルタ271を通じて抜けつつ、血液が内針22を通って内部空間270に流入する。内部空間270への血液の流入は、通気フィルタ271を通じ術者の手元で視認可能である。従って、第2実施形態の留置針組立体20によれば、第1実施形態の効果に加え、血管への穿刺をより確認し易いという効果を奏する。
【0061】
また、本実施形態では、外針ハブ23が通気フィルタ230を有するため、内部空間18の空気がより抜け易い。従って内部空間18に血液がより満たされ易く、輸液がさらに容易となる。
【0062】
<第3実施形態>
図11において概説すると、第3実施形態の留置針組立体30は、外針ハブ13に取り付けられ内部空間18と連通する管部39を有する点で、第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第3実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0063】
管部39は、可撓性を有する長尺状の本体部390と、本体部390の一端に設けられたコネクタ部391と、を有する。本体部390は、コネクタ部391が設けられた一端と反対の他端で内部空間18に連通する。コネクタ部391は、薬液を入れた薬液バッグ及び薬液を圧送するためのポンプ等を含む輸液セットに接続し得る。
【0064】
術者は、施術前に予め管部39を輸液セットに接続しておくことによって、第1実施形態のように内針12の抜去後に輸液チューブをスリット150に挿入しなくてよい。このため、本実施形態の留置針組立体30は、第1実施形態の効果に加え、作業性に優れるという効果を奏する。
【0065】
<第4実施形態>
図12〜図15において概説すると、第4実施形態では、プロテクタ44が第1実施形態のプロテクタ14と異なる。より具体的には、第1実施形態のプロテクタ14では第1の構成部材140と第2の構成部材141とが同種の材料によって形成されるが、第4実施形態のプロテクタ44では、第1の構成部材440と第2の構成部材443とが異なる材料によって形成される。例えば、第1の構成部材440がプラスチック製で第2の構成部材443が金属製、又は第1の構成部材440が金属製で第2の構成部材443がプラスチック製である。金属はステンレススチールが好ましい。プロテクタ44以外の他の構成及び輸液の際の操作については、第4実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0066】
第1の構成部材440は、第1実施形態と同様、内針12が挿通し得る筒状であるが、第1実施形態より長く、内針12の先端部を覆う。内針12の段差部121に係止する部位の内径R4は、第1実施形態の内径R3と同様である。
【0067】
第2の構成部材443は、第1の構成部材440に引っ掛かる爪状の引掛部444と、内針12の外周面に対向するように設けられる側壁部445と、内針12の外周面を摺動するとともに先端部を覆うように内側に折り曲げられた先端遮蔽部446と、を有する。先端遮蔽部446は、内針12の外周面を摺動しやすいように、その先端がややプロテクタ44の基端側に向いているのが望ましい。また、内針12の先端部を覆ったときに先端を確実にカバーできるよう、先端突き当て部間に隙間が出来ないような形状となっている。引掛部444、側壁部445、及び先端遮蔽部446は、弾性を有する材料によって一体的に形成される。両側壁部445は少なくとも1つのブリッジ部447により一体化されている。
【0068】
第1の構成部材440は、外周壁の対向する位置に設けられた1対の孔441を有しており、引掛部444が孔441に引っ掛かることによって、第2の構成部材443が第1の構成部材440に取り付けられる。また、第1の構成部材440は、外周壁の孔441の下方に設けられた1対の長孔442を有しており、内針12が先端遮蔽部446に挿入されるのに伴って広がる側壁部445が、第1の構成部材440に当るのを防いでいる。このため、先端遮蔽部446の動作が阻害されることなく、内針12を先端遮蔽部446の間に挿入できる。第2の構成部材443の径方向の寸法は第1の構成部材440の内径寸法より、やや大きな寸法となっており、第2の構成部材は、そのバネ弾性力によって、第1の構成部材440から外れることなく、先端遮蔽部446が内針12の先端部を覆っているときも内針12に確実に取り付けられる。先端遮蔽部446の動作及び機能等については先端遮蔽部144と同様である。
【0069】
本実施形態では、第1の構成部材440及び第2の構成部材443のうちの一方がプラスチック製のため、第1実施形態の効果に加え、コスト低減を図り得る。
【0070】
また、長孔442によって側壁部445が第1の構成部材440に当るのを防いでいるため、側壁部445と第1の構成部材440との間の隙間を拡大することによって側壁部445が第1の構成部材440に当るのを防ぐ場合に比べ、プロテクタ44を細くでき、その結果、スリット150からのプロテクタ44の抜けが容易である。
【0071】
<第5実施形態>
図16〜18において、概説すると、第5実施形態では、プロテクタ45が第4実施形態のプロテクタ44と異なる。より具体的には、第1の構成部材450は前記構成部材440の1対の孔441を有さず、内側内壁面に第2の構成部材460突き当て用の段差を設けている。第2の構成部材460は、前記第2の構成部材443の引掛部444を有さず、先端遮蔽部462の先端部が交差している。
【0072】
第1の構成部材450は、内周壁に段差452を有しており、第2の構成部材460を突き当てることによって取り付けられる。また、第1の構成部材450は、外周壁に設けられた1対の長孔451を有しており、内針12が先端遮蔽部462に挿入されるのに伴って広がる側壁部461が、第1の構成部材450に当るのを防いでいる。このため、先端遮蔽部462の動作が阻害されることなく、内針12を先端遮蔽部462の間に挿入できる。また、第2の構成部材460の径方向の寸法は、先端遮蔽部462に向かって広がっており、先端遮蔽部462が内針12の先端部を覆った後、先端遮蔽部462の折り曲げ角部と、長孔451の下壁面とが、突き当たるため、内針12の先端側へ過度の力が加わった場合でも、外れることはない。
【0073】
その他の機能については、プロテクタ44と同様である。
【0074】
<第6実施形態>
図19において概説すると、第6実施形態の留置針組立体50と第1実施形態の留置針組立体10とでは、外針ハブ53が第1実施形態と異なる。他の構成及び輸液の際の操作については、第6実施形態は第1実施形態と略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0075】
外針ハブ53は、中空形状を有し外針11の基端部に連通する本体部530と、内針12の抜去後、輸液チューブと嵌合して輸液チューブを本体部530に接続させるコネクタ部531と、を有する。外針ハブ53を形成する材料は、外針ハブ13と同様である。
【0076】
コネクタ部531は、本体部530の基端部に螺合する。弁体15は本体部530とコネクタ部531との間に配置され、そしてコネクタ部531及び本体部530は螺合することによって弁体15を挟持する。
【0077】
コネクタ部531は、環状であり、テーパ状の内周面532を有する。内周面532は、本体部530と接続するコネクタ部531の先端の方向に向かって縮径した形状を有する。術者は、内針ハブ17、内針12、及びプロテクタ14を抜いた後、先細り形状となった輸液チューブの先端をスリット150に挿入するともに輸液チューブをコネクタ部531と嵌合させることによって、外針ハブ53に輸液チューブを接続する。コネクタ部531は、内周面532によって、嵌合した輸液チューブを保持する。
【0078】
このように、留置針組立体50は、コネクタ部531を有し、スリット150への輸液チューブの挿入とともに輸液チューブと嵌合して接続するため、第1実施形態の効果に加え、輸液チューブがより抜け難いという効果を奏する。
【0079】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0080】
例えば、プロテクタは、スリットでなく、弁体及び外針ハブによって囲まれた内部空間に配置されてもよい。この場合、内針の抜去に伴って、プロテクタは内針の先端部を覆い、また、プロテクタは内針とともにスリットを通り抜ける。
【0081】
また、上記実施形態では、プロテクタは、第2の構成部材がスリットに嵌め込まれることによって弁体に保持されているが、第1の構成部材がスリットに嵌め込まれることによって弁体に保持されてもよい。
【0082】
また、係止部としての段差部は、上記実施形態のように内針の断面形状を変えることによって形成したものに限定されず、円形形状の内針断面の直径が、軸方向に沿って、先端部が大きくなるように変化することによって形成されたものでもよい。また、係止部は、段差部に限定されず、プロテクタ及び内針のうちの一方に設けられた突部と、それらのうちの他方に設けられ突部が嵌る穴部との組み合わせであってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、留置針組立体は輸液に用いられたが、これに限定されず、採血や注射等、他の用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10、20、30、50 留置針組立体、
11 外針、
12、22 内針、
13、23、53 外針ハブ、
14、44、45 プロテクタ、
15 弁体、
16 弁体押さえ、
17、27 内針ハブ、
18 内部空間、
39 管部、
120 溝、
121 段差部(係止部)、
144、446、462 先端遮蔽部、
150 スリット(挿通部)、
230 通気フィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状を有する外針と、
中空形状を有し前記外針の一端部に連通する外針ハブと、
当該外針ハブを通り前記外針の一端部から前記外針に挿入された内針と、
前記外針ハブを閉塞するように前記外針ハブに配置され且つ前記内針が挿通し得る挿通部が形成された弁体と、
当該弁体及び前記外針ハブによって囲まれ前記外針に連通する内部空間又は前記挿通部に配置された、前記内針が挿通されたプロテクタと、を有し、
前記プロテクタは、前記内針の抜去に伴って、内針の外表面を円滑に摺動し、前記内針に対し前記内針の軸方向先端側へ相対移動して前記内針の先端部を覆い且つ前記内針とともに前記挿通部から抜ける、留置針組立体。
【請求項2】
前記内針の先端部を覆った前記プロテクタが前記内針の軸方向先端側へさらに相対移動するのを阻止する、前記内針及び前記プロテクタのうちの少なくとも一方に設けられた係止部を有する、請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記内針の軸方向に交差して設けられ、前記内針の軸中心方向へ付勢された状態で内針が挿入されており、前記内針の通過により前記軸中心方向へ移動することにより前記内針の先端部を遮蔽する先端遮蔽部を、前記プロテクタは有する、請求項1又は請求項2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記プロテクタが前記挿通部に配置され且つ前記挿通部に隙間が形成された、請求項1〜請求項3のうちのいずれか1つに記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記内部空間の空気を透過させる一方、血液の透過を遮断する、前記外針ハブに設けられた通気フィルタを有する、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1つに記載の留置針組立体。
【請求項1】
中空形状を有する外針と、
中空形状を有し前記外針の一端部に連通する外針ハブと、
当該外針ハブを通り前記外針の一端部から前記外針に挿入された内針と、
前記外針ハブを閉塞するように前記外針ハブに配置され且つ前記内針が挿通し得る挿通部が形成された弁体と、
当該弁体及び前記外針ハブによって囲まれ前記外針に連通する内部空間又は前記挿通部に配置された、前記内針が挿通されたプロテクタと、を有し、
前記プロテクタは、前記内針の抜去に伴って、内針の外表面を円滑に摺動し、前記内針に対し前記内針の軸方向先端側へ相対移動して前記内針の先端部を覆い且つ前記内針とともに前記挿通部から抜ける、留置針組立体。
【請求項2】
前記内針の先端部を覆った前記プロテクタが前記内針の軸方向先端側へさらに相対移動するのを阻止する、前記内針及び前記プロテクタのうちの少なくとも一方に設けられた係止部を有する、請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記内針の軸方向に交差して設けられ、前記内針の軸中心方向へ付勢された状態で内針が挿入されており、前記内針の通過により前記軸中心方向へ移動することにより前記内針の先端部を遮蔽する先端遮蔽部を、前記プロテクタは有する、請求項1又は請求項2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記プロテクタが前記挿通部に配置され且つ前記挿通部に隙間が形成された、請求項1〜請求項3のうちのいずれか1つに記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記内部空間の空気を透過させる一方、血液の透過を遮断する、前記外針ハブに設けられた通気フィルタを有する、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1つに記載の留置針組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−205829(P2012−205829A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75197(P2011−75197)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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