説明

畦塗り機における前処理体用爪カバー

【課題】土砂を切削する畦切り爪を有する前処理体と整畦体を備える畦塗り機において、前処理体の畦切り爪による切削土砂の飛散範囲を制限し、整畦体の前方に集中させる。
【解決手段】畦塗り機10の前処理体7は、トラクタの後方に接続される支持フレーム13に連結される伝動フレーム14を通じ、トラクタから伝達される動力を受けて軸回りに回転し、整畦体8による畦の整形前に、整畦体8の前方に存在する土砂を切削する畦切り爪2と、畦切り爪2を包囲し、一部に開口を有する爪カバー本体4を備える。爪カバー本体4の開口に面する位置に、畦切り爪2が切削する土砂の飛散の方向を制御する方向制御部材6を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は整畦体による畦の整形前に土砂を切削する前処理体に、前処理体を構成する畦切り爪の回転による土砂の飛散の方向を制御する機能を持たせた畦塗り機における前処理体用爪カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畦塗り機の走行時に畦を整形する整畦体の前方に位置する前処理体は畦切り爪が旧畦の土砂を切り崩して緩めることで、前処理体の通過後に通過する整畦体による畦整形の準備をする。
【0003】
前処理体の畦切り爪は畦塗り機の走行方向に近い方向を向いた軸の回りに回転することにより整畦体の前方に存在する元畦の土砂を切削し、後から通過する整畦体の位置へ送り込む働きをするため、畦切り爪の周囲には切削土砂の飛散範囲を制限するための爪カバーが装着される(特許文献1、2参照)。
【0004】
爪カバーは畦切り爪が切削する土砂がトラクタに連結される畦塗り機側とトラクタ側に飛散しないよう、例えば上方とトラクタ側、及び作業機側を被覆する形状をし、新畦の整形側には切削土砂を集中的に送り込むための開口が形成される。爪カバーは具体的には畦切り爪の軸方向両側に位置し、対向する2枚の平板状の端板と畦切り爪の側面と上方を覆う曲面板状の側板から構成され、開口は側板の一部を不在にすることで形成される。
【0005】
爪カバーの開口の先(側面側)である整畦体の前方位置には飛散した土砂を受け止めて整畦体の通過位置に落下させる土受け材が配置され、畦切り爪が切削し、爪カバーの開口から外部に排出される土砂は整畦体による畦の整形のために土受け材によって整畦体の前方位置に集められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−58079号公報(段落0017、図1〜図4)
【特許文献2】特開2008−43211号公報(段落0028、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、切削土砂を爪カバー内部に詰まらせないよう、畦切り爪の先端が開口から突出することと(図3参照)、畦切り爪は畦塗り機の走行を伴いながら、1秒間に数回転の速度で回転することから、土砂の飛散範囲が拡散し易い。
【0008】
土受け材はその範囲に飛散してくる土砂を受け止めることができるに留まり、開口から突出する畦切り爪の先端によって開口の範囲から幅方向に拡散して飛散する土砂を漏れなく受けられる訳ではないため、整畦体の前方に集中させることが難しくなることもある。
【0009】
本発明は上記背景より、前処理体の畦切り爪による切削土砂の飛散範囲を制限し、整畦体の前方に集中させることを可能にする前処理体用爪カバーを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の畦塗り機における前処理体用爪カバーは、トラクタの後方に接続される支持フレームに連結される伝動フレームを通じ、前記トラクタから伝達される動力を受けて軸回りに回転し、整畦体による畦の整形前に、前記整畦体の前方に存在する土砂を切削する畦切り爪と、この畦切り爪を包囲し、一部に開口を有する爪カバー本体を備える畦塗り機の前処理体において、
前記爪カバー本体の前記開口に面する位置に、前記畦切り爪が切削する土砂の飛散の方向を制御する方向制御部材が接続されていることを構成要件とする。
【0011】
前処理体の畦切り爪には伝動フレームから動力が伝達され、畦切り爪は軸回りの回転によって元畦の土を切削し、切削された土砂を爪カバーの開口からその外部に排出する。開口から排出された土砂は土受け材に受け止められ、整畦体の軸回りの回転による新畦の整形に利用される。
【0012】
伝動フレームは支持フレームにトラクタの幅方向に揺動自在に連結された場合に、支持フレームに対するオフセット量の調節が可能になる。その上で、前処理体と整畦体が伝動フレームに対し、例えば鉛直軸回りに回動自在に連結された場合に、畦塗り機は前進作業と後進作業のいずれにも対応可能になる。
【0013】
爪カバー本体の開口は畦切り爪が切削する土砂を整畦体の前方位置にまで誘導する役目を持つから、開口はこの機能を阻害しない大きさと形状を持つ必要がある。すなわち、土砂の飛散範囲を制限する目的で開口の大きさを小さくしようとすれば、土砂は爪カバー本体の内部に留まり易くなり、土砂を整畦体の前方に集めることが困難になるため、開口にはある程度の大きさを与えておく必要がある。
【0014】
畦切り爪はその回転軸に対する装着の向きにより、元畦の側面(法面)に対して上向きに回転する(アップカット回転する)場合と下向きに回転する(ダウンカット回転する)場合があるが、いずれの向きの場合にも開口の位置は開口から飛散した切削土砂を受ける土受け材との関係で決まり、開口は畦切り爪が切削した土砂が土受け材側へ排出される位置に形成される。図面(図2、図3、図6、図7)では畦切り爪がダウンカット回転する場合の例を示している。
【0015】
爪カバー本体は前記のように回転軸の軸方向の両側に位置する端板と側板から構成されるが、爪カバー本体の下部は整畦体が形成しようとする新畦の法面(側面)に対応した位置にあり(図2)、開口が形成される側の側板は新畦の法面側を向く。この爪カバー本体の下部から新畦法面側の側面までの区間は元畦の土中側を向くため、この範囲では畦切り爪が元畦の土を切削する必要から、爪カバー本体の立面上、爪カバー本体から突出する。
【0016】
このため、畦切り爪が切削した土砂が爪カバー本体の内側に沿って開口まで誘導されてきたとき、開口の高さ方向に加え、開口の範囲から幅方向に拡散して飛散する傾向が強まる。
【0017】
そこで、本発明のように開口に面する位置に方向制御部材が接続されることで、土砂が飛散を開始する位置で飛散の範囲を制限することができるため、方向制御部材の向きによって飛散方向、あるいは飛散範囲を自由に制御することが可能になり、結果として土砂を土受け材側に集中的に飛散させることが可能になる。
【0018】
特に方向制御部材が開口に対して向きの調整が可能な状態に爪カバー本体に接続されている場合には(請求項2)、畦切り爪の回転速度、トラクタの走行速度、土質等の条件に応じて方向制御部材の向きを自由に変えることができるため、条件に応じて最も合理的(最適)な土砂の飛散範囲を設定することが可能である。
【0019】
方向制御部材は原則的に畦切り爪との干渉(衝突)を回避するために、開口の外側に配置されるが、畦切り爪との干渉が生じなければ一部が開口の外側に突出した状態で開口の内側に固定されることもある。従って「開口に面する位置」とは、開口(爪カバー本体)の内側と外側を問わず、開口側を向いたいずれかの位置を指す。開口の外側に配置される場合には、開口からの突出長さを自由に設定することが可能であり、開口から飛散する土砂に対する接触時間が長くなるため、飛散する土砂に対する制御効果が高まる。
【0020】
方向制御部材は具体的には開口から飛散する土砂を反射させる方向制御板を持つ(請求項3)。この場合、方向制御板が開口から飛散した土砂を反射させ、その方向へ土砂が拡散するような飛散を阻止するため、土砂の飛散範囲を制限し易くなる。開口から飛散し、方向制御板側に向かう土砂は方向制御板に衝突して反射することで、飛散方向が修正される。前記のように方向制御部材が開口の外側に配置される場合には、方向制御板に反射する土砂の量が多くなるため、土砂の飛散制御効果が向上する。
【発明の効果】
【0021】
開口に面する位置に方向制御部材を接続するため、土砂の飛散の範囲を制限することができ、土砂を土受け材側に集中的に飛散させることが可能になる。特に土砂が飛散を開始する位置で飛散の範囲を制限することができるため、飛散方向、あるいは飛散範囲を自由に制御することができ、土砂を土受け材側に集中的に飛散させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の前処理体用爪カバーが装着された前処理体を有する畦塗り機の構成例を示した平面図である。
【図2】図1のx−x線の矢視図である。
【図3】(a)は図2のy−y線の断面図、(b)は図2のz−z線の断面図である。
【図4】(a)は図1に示す畦塗り機をスタンドに支持させた状態を進行方向右側後方から見た様子を示した斜視図、(b)は進行方向左側後方から見た様子を示した斜視図である。
【図5】図1に示す畦塗り機とトラクタとの関係を示した側面図である。
【図6】図2における方向制御部材部分の拡大図である。
【図7】(a)は図3−(a)における方向制御部材部分の拡大図、(b)は図3−(b)における方向制御部材部分の拡大図である。
【図8】図6、図7に示す方向制御部材と開口との関係を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
図1はトラクタ19から伝達される動力を受けて軸回りに回転し、整畦体8による畦の整形前に、整畦体8の前方に存在する土砂を切削する畦切り爪2と、この畦切り爪2を包囲し、一部に開口5を有する爪カバー本体4を有する前処理体7を備えた畦塗り機10の構成例を示す。
【0025】
図2は爪カバー本体4の開口5に面する位置に、畦切り爪2が切削する土砂の飛散の方向を制御する方向制御部材6が接続された前処理体用爪カバー1の構成例を示す。図2は図1のx−x線の矢視図である。
【0026】
畦塗り機10は図4、図5に示すようにトラクタ19後部のトップリンクとロアリンクからなる3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11とロアリンク連結部12がそれぞれ上部と下部に突設された支持フレーム13と、この支持フレーム13に例えばトラクタ19の幅方向に揺動自在に連結される伝動フレーム14と、伝動フレーム14の後方に接続され、トラクタ19からの動力を受けて駆動し、畦塗り機10の作業機を構成する整畦体8と前処理体7を基本的な構成要素として備える。
【0027】
伝動フレーム14は主に鉛直方向を向いた回転軸回りに回動自在に支持フレーム13に支持されるが、回転軸は鉛直に対して傾斜する場合もある。図4−(a)、(b)は畦塗り機10をスタンド18に支持させているときの様子を示している。
【0028】
伝動フレーム14にはトラクタ19から受けた動力を前処理体7と整畦体8に伝達する伝動シャフト、チェーン等の動力伝達装置が内蔵され、動力伝達装置の後方側の端部に、動力伝達装置に連動する従動軸が配置される。従動軸には伝動フレーム14の動力伝達装置に連動し、伝動シャフト等の動力伝達装置を介して前処理体7と整畦体8にそれぞれ動力を伝達する歯車、スプロケット等の伝動装置が接続される。
【0029】
従動軸と伝動装置は伝動フレーム14の後方側端部の下方に位置する、図4−(b)、図5に示す伝動ボックス15に内蔵され、前処理体7と整畦体8にそれぞれ動力を伝達するための動力伝達装置は伝動フレーム14に支持される支持アーム16等に内蔵される。図面では伝動装置から整畦体8への動力を、支持アーム16等を介在させることなく伝動ボックス15から直接、伝達している。
【0030】
伝動フレーム14はその後方側の端部と支持フレーム13との間に架設されるシリンダ17等によって支持フレーム13に対し、トラクタ19の幅方向にオフセット自在で、オフセット量の調節も自在になっている。また伝動ボックス15はそれと伝動フレーム14との間に架設されるシリンダその他の回動手段によって伝動フレームに対して回動自在になっている。図1は伝動フレーム14が支持フレーム13に対して進行方向右側に最もオフセットしたときの状況を示している。
【0031】
図面では畦塗り機10の構成を単純化させるために、伝動フレーム14と支持フレーム13との間に架設されたシリンダ17による伝動フレーム14の揺動に連動させて伝動ボックス15を伝動フレーム14に対して回動可能にしている。すなわち、シリンダ17を、伝動ボックス15を回動させるための回動手段として兼用することで、伝動ボックス15回動用の回動手段を不在にしているが、伝動ボックス15の回動動作を伝動フレーム14の揺動動作と独立させることもある。
【0032】
伝動ボックス15が伝動フレーム14に対して回動可能である場合には、伝動ボックス15に連結されている前処理体7と整畦体8を含む作業機が伝動フレーム14に対して回動自在であり、作業機はトラクタ19の前進作業時と後進作業時のいずれのときにも、前処理体7が整畦体8の進行方向前方に位置することになる。
【0033】
整畦体8は図1、図4に示すように軸回りの回転により図2に示す畦20の法面20aを整形する円錐台形状の法面整畦部81と、法面整畦部81の軸方向先端部に連結されて法面整畦部81と共に回転し、畦20の上面20aを整形する上面整畦部82とを備え、法面整畦部81において伝動フレーム14に連結される。
【0034】
前処理体7は伝動装置(伝動ボックス15)に関して支持フレーム13側である整畦体8の前方側に配置される。前処理体7は伝動フレーム14の動力伝達装置に連動する動力伝達装置からの動力を受けて軸回りに回転し、整畦体8の前方に存在する土砂を切り崩し、後から通過する整畦体8の前方に送り出す畦切り爪2と、この畦切り爪2を包囲し、一部に開口5を有する爪カバー本体4を備える。
【0035】
畦切り爪2の回転軸2aには畦切り爪2が切削した土砂を爪カバー本体4の開口5から確実に排出するために、図2、図3に示すように掃き出し爪3が接続され、切削された土砂は主にこの掃き出し爪3によって排出される。前処理体7の新畦20側、すなわち爪カバー本体4の開口5の先(側面側)である整畦体8の前方位置には図1、図4に示すように飛散した土砂を受け止めて整畦体8の通過位置に落下させる土受け材9が配置される。
【0036】
前処理体7の爪カバー本体4は畦切り爪2の軸方向両側に位置し、互いに対向する2枚の端板41、42と畦切り爪2の側面と上方を覆う側板43から構成され、畦切り爪2の軸方向両側と上方、及び側面を覆う形状に形成され、側板43の土受け材9側の一部に開口5が形成される。開口5は図3、図8に示すように側板43の、整畦体8側の一部を不在にするか、切り欠くことにより形成される。
【0037】
図2、図3は前記のように畦切り爪2がダウンカット回転する場合の例を示しているから、この回転の向きに従い、図面では開口5と方向制御部材6を爪カバー本体4の上方位置に配置している。畦切り爪2がアップカット回転する場合には、開口5と方向制御部材6は後述の法面部45から側面部46にかけての範囲に配置される。
【0038】
爪カバー本体4の端板41、42は図2に示すように最下部44が圃場面に接する程度のレベルに位置し、その最下部44の土受け材9側の法面部45には新規に整形しようとする新畦20の法面20aにほぼ沿った傾斜が付けられる。この法面部45の傾斜角度の変更は図2、図5、図6に示すように端板42に別部材のガイドプレート42aを端板42に対して角度調整自在に固定状態で接続することによっても可能になる。図2において新畦20の上面20bに平行な二点鎖線が圃場面を示す。
【0039】
畦切り爪2の先端は爪カバー本体4の立面上、法面部45から上方へ立ち上がる側面部46から法面部45側へ移行した範囲で端板41、42から突出(露出)し、元畦の土を切削する。爪カバー本体4の最上部47から側面部46までの範囲では畦切り爪2が空中に露出するため、畦切り爪2が切削した土砂が飛散する傾向が強まることになる。
【0040】
土受け材9は図1、図2に示すように爪カバー本体4の開口5位置、あるいは開口5付近を覆う位置に配置され、開口5から排出される土砂を受け止めて落下させる上部受け材91と、それより下方で、新畦20の上面20b付近のレベルに位置し、上部受け材91からの土砂を元畦上に堰き止める下部受け材92から構成される。
【0041】
土受け材9は図1、図4−(a)に示すように爪カバー本体4の全幅を覆いながら、爪カバー本体4の外周位置から、爪カバー本体4の中心(回転軸2a)からの距離が拡大するに従い、幅が増大する形状をしているため、爪カバー本体4から飛散する土砂が平面上、前処理体7側から整畦体8側へ拡散することがあっても土受け材9がほとんどの土砂を受け止めることは可能である。
【0042】
そこで、畦切り爪2の回転(ダウンカット)の向きもあって、爪カバー本体4の内、整畦体8寄りに位置する端板42の下方寄りの位置に、畦切り爪2が切削した土砂を土受け材9側へ排出し易くするための切欠き48が形成されており、図面ではこの切欠き48の上方位置に方向制御部材6を配置している。
【0043】
方向制御部材6は爪カバー本体4を構成するいずれか一方の端板41、42、もしくは側板43の、開口5に面するいずれかの位置に配置され、接続(固定)される。開口5に面する位置であるから、開口5の両側に位置する端板41、42の場合と上下に位置する側板43の場合がある。
【0044】
但し、前処理体7は常に整畦体8より進行方向前方に位置した状態を維持したまま、速度を持って移動しながら元畦の土を切削するから、切削された土砂が進行方向前方側より進行方向後方側へ向かう傾向があるため、図面では両側の端板41、42の内、整畦体8側(後方側)の端板42に方向制御部材6を固定している。
【0045】
方向制御部材6は爪カバー本体4の開口5から飛散する土砂を反射させる方向制御板61を持ち、方向制御板61の向き(方向)の調整が可能な状態に爪カバー本体4に接続(固定)される。方向制御部材6は爪カバー本体4を構成する端板41、42、もしくは側板43に固定状態で、または交換可能に、着脱自在に接続される。
【0046】
方向制御部材6は方向制御板61を有していれば構成を問わないが、図面では方向制御板61の向きの調整を容易にするために、図2、図3、図6に示すように方向制御板61とそれに一体化した軸部材62と、軸部材62の両端部を軸回りに回転自在に保持する上部保持材63及び下部保持材64から方向制御部材6を構成している。また上部保持材63と下部保持材64の端板42への固定を補助するために、端板42の表面に上部保持材63を受ける受け材65を固定している。軸部材62は端板41、42が形成する開口5の面に平行な状態で端板42(41)等に固定され、方向制御板61は開口5に対し、開口5を開閉する扉のように挙動する。
【0047】
方向制御板61は軸部材62の両端部が上部保持材63と下部保持材64に軸支されることにより開口5の端面(出口)に対する角度が調整自在になる。上部保持材63は後述の拘束部材66による方向制御板61の拘束のために、下部保持材64より大きい面積を持ち、図7−(a)、(b)に示すように軸部材62の軸方向に見たとき、下部保持材64より土受け材9側へ張り出した形状をしている。
【0048】
受け材65は上部受け材63の下面側に重なる受け部65aと端板42の表面に重なる接合部65bを持ち、接合部65bにおいて端板42の表面に溶接等によって固定される。図面では特に、受け材65に上部保持材63と下部保持材64間の間隔を保持する機能を与えるために、接合部65bの下端部に下部保持材64を一体化させ、対向する受け部65aと下部保持材64、及び両者をつなぐ接合部65bから溝形の形状に受け材65を形成している。互いに重なる上部受け材63と受け部65aはボルト等により接合される。
【0049】
方向制御板61は軸部材62が上部保持材63と下部保持材64に対して回転することにより開口5に対する角度が調整され、角度が調整された状態は例えば方向制御板61を上部保持材63に拘束する拘束部材66によって保持される。図面では図6〜図8に示すように方向制御板61の片側の面である、開口5の反対側の面に固定される固定材661と、上部保持材63と固定材661を軸部材62の軸方向に貫通するピン662と、ピン662の上部に回転自在に連結される操作材663から拘束部材66を構成している。
【0050】
固定材661は上下に対向し、ピン662が貫通する上部板661a及び下部板661bを有し、操作材663は下端部において固定材661の下部板661bの下面に係合可能な係合部(フック)663aを有する形状をする。操作材663は係合部663aの下部板661bへの係合時にピン662を固定材661に拘束した状態を維持するためのばねとして機能する。
【0051】
操作材663は係合部663aが固定材661の下部板661bの下面に係合したときに下部板661bから下向きの力を受けることで、ピン662を下方(係合部663a側)に引き寄せ、ピン662を固定材661に貫入した状態に保持する。操作材663は係合部663aが下部板661bから解除されたときにピン662への力の作用を解放させ、ピン662を固定材661から離脱可能にする。
【0052】
係合部663aが固定材661の下部板661bに係合したときには、操作材663がピン662の軸方向に伸長しようとするため、原形に復元しようとする力がピン662に対し、固定材661側へ向かって作用する。この結果、ピン662が固定材661の上部板661a及び下部板661bに貫入した状態を維持し、方向制御板61が拘束(ロック)された状態を維持する。
【0053】
係合部663aが下部板661bから離脱したときには、ピン662を固定材661側に押す力が解放されるため、そのままピン662が固定材661から引き抜かれることで、方向制御板61の拘束が解除される。
【0054】
方向制御部材6が図示する構成(形態)の場合、方向制御板61の向き(方向)の調整はピン662の上部保持材63への貫通位置によって決まるから、上部保持材63にピン662が貫通する複数の位置決め孔63aを穿設しておくことにより方向制御板61の方向が多段階に調整可能になる。位置決め孔63aは図7−(b)に示すように軸部材62の中心を中心とする円弧上に形成される。この複数の位置決め孔63aを周方向に連続させれば、方向制御板61の方向は無段階に調整可能になる。
【0055】
その場合、ピン662が位置決め孔63aに沿って容易に周方向に移動しないための係止手段を必要とする。この場合の係止手段としては、例えば平常時に復元力により周方向に連続している位置決め孔63a側へ突出した状態を維持し、ピン662の通過時に復元力に抗して半径方向のいずれかの側へ入り込む形式のばねが使用される。
【0056】
操作材663は上部保持材63に対しては、ピン662と共に軸部材62の中心を中心として回転するから、操作材663が沿って移動する上部保持材63の縁も図7−(b)に示すように軸部材62の中心を中心とする円弧の形状をしている。
【0057】
方向制御板61は爪カバー本体4を構成する端板41、42に平行な状態、または端板41、42より整畦体8側を向いた状態にあるときに開口5の面積を拡大し、畦切り爪2の回転軸2aに平行に近い方向を向いたときが開口5の面積を縮小し、この向きの調整が可能な範囲で開口5の開口幅を調整し、土砂の飛散範囲を制御する。
【符号の説明】
【0058】
1……前処理体用爪カバー、
2……畦切り爪、2a……回転軸、3……掃き出し爪、
4……爪カバー本体、41、42……端板、42a……ガイドプレート、
43……側板、
44……最下部、45……法面部、46……側面部、47……最上部、48……切欠き、
5……開口、
6……方向制御部材、61……方向制御板、62……軸部材、
63……上部保持材、63a……位置決め孔、
64……下部保持材、65……受け材、66……拘束部材、
661……固定材、661a……上部板、661b……下部板、
662……ピン、
663……操作材、663a……係合部、
7……前処理体、8……整畦体、81……法面整畦部、82……上面整畦部、
9……土受け材、91……上部受け材、92……下部受け材、
10……畦塗り機、
11……トップマスト、12……ロアリンク連結部、13……支持フレーム、
14……伝動フレーム、15……伝動ボックス、16……支持アーム、17……シリンダ、18……スタンド、
19……トラクタ、
20……新畦、20a……法面、20b……上面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後方に接続される支持フレームに連結される伝動フレームを通じ、前記トラクタから伝達される動力を受けて軸回りに回転し、整畦体による畦の整形前に、前記整畦体の前方に存在する土砂を切削する畦切り爪と、この畦切り爪を包囲し、一部に開口を有する爪カバー本体を備える畦塗り機の前処理体において、
前記爪カバー本体の前記開口に面する位置に、前記畦切り爪が切削する土砂の飛散の方向を制御する方向制御部材が接続されていることを特徴とする畦塗り機における前処理体用爪カバー。
【請求項2】
前記方向制御部材は向きの調整が可能な状態に前記爪カバー本体に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機における前処理体用爪カバー。
【請求項3】
前記方向制御部材は前記開口から飛散する土砂を反射させる方向制御板を持ち、この方向制御板が前記開口から前記爪カバー本体の外側に張り出した状態で、前記爪カバー本体に接続されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の畦塗り機における前処理体用爪カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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