説明

畦塗り機

【課題】畦塗り機の前処理部におけるカバー体について、耕耘爪によって掘削された土や土上げ爪によって撥ね上げられた土がカバー体の内側に付着することを防止するとともに、撥ね上げられた土を効率的にカバー体の内側面を沿わせて移動させることができるカバー体を提供する。
【解決手段】前カバー部41と外カバー部43とが装着される前側内角部44の角度を鈍角とすることで、外カバー部43の内側面と複数の耕耘爪20の爪先との距離間を狭くすることができ、かつ、爪軸70の先端側から基端側に向けて、ほぼ一定間隔の狭い空間として構成することとなる。このため、耕耘爪20の回転動作に伴って発生する前側内角部44近辺の気流がスムーズに流れることとなり、前側内角部44近辺の土の付着を抑制することができ、その結果、土上げ爪によって効率的に土を撥ね上げ、土盛りを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機の整畦体の前側に配設され、旧畦を切り崩すとともに切り崩した土を撥ね上げ、土盛りを行なう前処理部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整畦体の前側に配設された前処理部において、耕耘爪が旧畦の側部等を切り崩すとともに切り崩した土を撥ね上げ、その後、整畦体において、撥ね上げられた土を旧畦上に塗り付けて新畦を形成する畦塗り機が知れられている(特許文献1)。
【0003】
そして、このような畦塗り機の前処理部は、従来例としての図9(a)に示す通り、爪軸170の先端側から基端側に向けて配列した複数の耕耘爪120及び土上げ爪130を設けており、複数の耕耘爪120及び土上げ爪130の周囲を取り囲むようにカバー体140を設ける構成となっている。
【0004】
また、図9(a)における矢印Aの方向から見た概観図の一例としての図9(b)に示す通り、土上げ爪130の回転(図中矢印Z参照)によって土を撥ね上げ、撥ね上げられた土をカバー体140の内側面を沿わせて移動させて、土を畦側に向けて吐き出して(図中矢印Y参照)、土盛りを行なうこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−42747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多量の土がカバー体140の内側面を沿って移動することで、カバー体140の内側に土が付着してしまい、その結果、カバー体140の内側における土の流れが不均一となり、良好な土盛りができなくなってしまうという問題があった。
また、圃場の土質により、土付着の影響がその都度変化し、対応策が求められていた。
【0007】
さらに、図9(a)に示す通り、耕耘爪120は、作業負荷の軽減を目的として、爪軸170の先端側から基端側に向けて回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用しており、その一方で、図に示すカバー体140は、耕耘爪120の回転径の長さの違いに関わらず、爪軸170の基端側から先端側に向けて、爪軸170から一定の間隔を隔てた間隙を維持する形状となっていた。
【0008】
このため、回転径の長さが小さい耕耘爪120とカバー体140との間には、多量の土が付着するとともに堆積することとなってしまう。
そして、多量の土が堆積することで、その堆積した土と耕耘爪120との接触に起因する耕耘爪120の早期摩耗や、前処理部の重みが増すこととなり、畦塗り機や走行機体を含めた全体としての重量バランスに悪影響を及ぼすといった問題があった。
具体的には、圃場への出入り時における走行機体の転倒の恐れや、小型トラクタの油圧揚力不足により畦塗り機の持ち上げが困難となることなどの問題があった。
【0009】
そこで本発明は、畦塗り機の前処理部におけるカバー体について、耕耘爪によって掘削された土や土上げ爪によって撥ね上げられた土がカバー体の内側に付着することを防止するとともに、撥ね上げられた土を効率的にカバー体の内側面を沿わせて移動させることができるカバー体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、走行機体に装着される畦塗り機であって、前記走行機体からの動力を受けつつ、前記走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置において作業させる作業部が設けられ、前記作業部には、前記動力により回転する爪軸と、該爪軸の基端側から先端側に向けて前記爪軸の周囲に配列されて前記爪軸の回転に伴って回転するとともに互いに長さの異なる複数の回転爪と、該回転爪の周囲を覆うカバー体とを有する前処理部が設けられており、前記カバー体は、前記爪軸の先端側の方向を覆う前カバー部と、前記爪軸の基端側の方向を覆う後カバー部と、前記前カバー部及び前記後カバー部の間に架け渡される外カバー部と、を備え、前記外カバー部は、前記回転爪の回転軌跡における上方を覆うとともに畦側とは反対の側方を覆っており、前記爪軸の基端側から先端側にかけて、前記爪軸と垂直な方向において前記回転爪の回転軌跡に略沿った形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の畦塗り機であって、前記外カバー部が前記爪軸の先端側から基端側に向けて略末広がりの形状であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の畦塗り機であって、前記前カバー部と前記外カバー部とのなす角度が鈍角の関係であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の畦塗り機であって、前記外カバー部と前記後カバー部とのなす角度が鈍角の関係であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の畦塗り機であって、前記回転爪は、前記爪軸の回転に伴って土を耕耘する耕耘爪と、前記爪軸の基端側に配設されるとともに前記爪軸の回転に伴って土を撥ね上げる土上げ爪とから構成され、該土上げ爪の配設された位置に対応する前記外カバー部が前記土上げ爪の回転軌跡の形状に略沿った形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、畦塗り機の整畦体の前側に配設される前処理部について、前処理部のカバー体の内側に土が付着することを抑制するとともに、土を畦側に向けて効率的に吐き出して土盛りを行なうことが可能となる。
そして、前処理部における土の付着が抑制されることにより、カバー体の内側に多量の土が堆積してしまうことを防止でき、カバー体の内側に堆積した土との接触による耕耘爪の早期摩耗を防止することができる。
【0016】
また、土の付着に伴うカバー体の重量変化がなくなることから、トラクタと重量面でのバランス性を維持することができ、例えば、圃場への出入り時において、バランスを崩してしまうといった問題を解消することができる。
さらに、外カバー部を耕耘爪の回転軌跡に略沿った形状とするため、カバー体のコンパクト化が可能となり、よって作業部自身のコンパクト化も可能となるものである。
この結果、カバー体を含む畦塗り機の作業部全体のコンパクト化を可能とし、トラクタに対する揺動移動において、トラクタへのより一層の接近移動が可能となり、トラクタとの間における重量面でのマッチングバランスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機に搭載された作業部の部分断面図を示す。
【図6】本発明の第1実施形態に係る畦塗り機に搭載された前処理部の断面図を示す。
【図7】本発明の第2実施形態に係る畦塗り機に搭載された前処理部の断面図を示す。
【図8】本発明の第3実施形態に係る畦塗り機に搭載された前処理部の断面図を示す。
【図9】従来の実施形態に係る畦塗り機に搭載された前処理部の断面図及び側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る畦塗り機の好ましい実施の形態について、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明する。なお、説明の参考として、本発明に係る畦塗り機の斜視図(図3)も参照する。
【0019】
畦塗り機1は、図1(部分平面図)、図2(側面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に旋回自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によって作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0020】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0021】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0022】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム11内には図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0023】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15b(図3(a)参照)とを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部10は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0024】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0025】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0026】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
【0027】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦部66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0028】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62a(図3(b)参照)を備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0029】
前処理部64は、回転自在な耕耘爪20(図2参照)を備える。耕耘爪20は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0030】
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして旋回可能である。
【0031】
次に、図5を参照しながら、天場処理部62、前処理部64及び整畦部66を備える作業部60の構成を説明する。
作業部60は、図5(部分断面図)に示すように、進行方向前側から天場処理部62、前処理部64及び整畦部66を配置して構成されている。天場処理部62は水田の周辺に沿って形成された旧畦の上部(天場部)を切り崩し、前処理部64は旧畦を切り崩すとともに切り崩した土の土盛りを行ない、整畦部66は盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける機能を有する。
【0032】
また、伝動支持ケース61内には、従動軸12からの動力を受けて回転駆動する前処理側駆動軸67を有した前処理側動力伝達機構68が内蔵されており、前処理側駆動軸67の先端部に耕耘爪20及び土上げ爪30を備えた爪軸70が前処理側駆動軸67と同軸上に挿着されている。
【0033】
さらに、耕耘爪20及び土上げ爪30の回転中心である爪軸70は、走行機体90の進行方向及び旧畦Kの延びる方向と略同じ方向に向けて延伸して配置されている。
【0034】
次に、図6(a)及び(b)を参照しながら、前処理部64の構成を詳細に説明する。
前処理部64は、図6(a)に示すように、回転軸72に連結された爪軸70と、爪軸70の先端側から基端側に向けて爪軸70に放射状に取り付けられるとともに、回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用する複数の回転爪25とを有してなる。
そして、爪軸70の先端側から基端側に向けて配列した複数の回転爪25の周囲を取り囲むようにカバー体40を設ける構成となっている。
【0035】
なお、本実施形態においては、複数の回転爪25について、耕耘爪20及び土上げ爪30から構成している(図6(a)参照)ものの、本発明の適用については耕耘爪20及び土上げ爪30の組み合わせの形態を問うことなく、適用可能なものである。例えば、回転爪25を耕耘爪20のみから構成しても良いものである。
【0036】
そして、爪軸70には、図に示すように、その外周面に耕耘爪20及び土上げ爪30を着脱可能に取り付けるための取付ボックス51が複数設けられている。取付ボックス51は爪軸70に対して放射状に突出して設けられ、これらの取付ボックス51に切削用の耕耘爪20と撥ね上げ用の土上げ爪30とが取り付けられている。
【0037】
次に、耕耘爪20及び土上げ爪30の周囲を取り囲むカバー体40について詳細に説明する。
本実施形態におけるカバー体40は、図に示す通り、爪軸70の先端側に装着される前カバー部41と、爪軸70の基端側に装着される後カバー部42と、前カバー部41及び後カバー部42の間に架け渡される外カバー部43と、を備えている。
そして、外カバー部43は、爪軸70の先端側から基端側にかけて、複数の耕耘爪20の回転軌跡に略沿った形状となっており、その複数の耕耘爪20の各々の回転軌跡と外カバー部43との間の空間を最小限に抑えることとなっている。
【0038】
また、外カバー部43は、図6(a)における矢印Aの方向から見た概観図としての図6(b)に示す通り、複数の耕耘爪20及び土上げ爪30の回転軌跡における上方と、畦側とは反対の側方と、を覆う形状となっている。そして、耕耘爪20の回転軌跡の径方向であって爪軸70と垂直な方向においても、複数の耕耘爪20の回転軌跡に略沿った形状となっている。
【0039】
そして、爪軸70は、畦側とは反対の側方から前記上方に向けて回転することで、耕耘爪20の回転(図中矢印Z参照)によって土を耕耘し、耕耘された土を外カバー部43の内側面を沿わせて移動させて、土を畦側に向けて吐き出して(図中矢印Y参照)、土盛りを行なうこととしている。
【0040】
つまり、本発明における爪軸70は、畦の頂部を耕耘爪20によって上から下に向けて叩いて耕耘(ダウンカット方式)するように回転し、さらに、その砕かれた土を、複数の耕耘爪20の回転軌跡における前記側方から前記上方にかけて移動させるように回転しているため、砕土性を維持しつつ、効率良く土の移動を行えるものである。
さらに、本実施形態においては、爪軸70に土上げ爪30も装着されていることから、土上げ爪30の回転によっても同様の略効果を得ることとなっている。
【0041】
そして、本発明においては、爪軸70の先端側から基端側にかけて、爪軸70と垂直な方向において、耕耘爪20の回転軌跡と外カバー部43との間の空間を最小限に抑えることとなり、このため、耕耘爪20及び土上げ爪30の各々の回転径方向への土こぼれ量を抑えて土の持ち回り効率が良くなることで、土の移動を効率良く行うことができ、さらなる効果として、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することができる。
【0042】
さらに、耕耘爪20の回転軌跡と外カバー部43との間の空間が狭くなることから、その空間内を土塊が通過することで、土塊が耕耘爪20の爪先及び外カバー部43の内側面と接触することが多くなり、砕土性を向上させることにもなる。
【0043】
また、粘着性のある土質である場合に、その粘着性の土がカバー体40の内側に一旦付着したとしても、狭い空間内においては、後に流れてきた土によって付着済みの土が押し流されることとなり、土が堆積してしまうことを防ぐことができる。
よって、圃場の土質に関係なく、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態において、図6(a)に示す通り、複数の耕耘爪20は爪先が爪軸70の基端側に向けて湾曲するとともに、作業負荷の軽減を目的として、爪軸70の先端側から基端側に向けて回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用しており、外カバー部43を末広がりの形状とすることで、外カバー部43の内側面と複数の耕耘爪20の回転軌跡との距離間を最小限に抑えることができ、爪軸70の先端側から基端側に向けて、狭い空間として構成することとなる。
【0045】
このため、カバー体40における土流れを効果的に行うことができ、カバー体40の内側の土の付着を抑制するとともに、前処理部64における畦への土盛りが効率良く行える。
【0046】
さらに、図に示す通り、爪軸70の先端側から基端側に向けて複数の耕耘爪20の回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用する場合には、カバー体40の外面を末広がりの形状、逆に言えば先細り形状とすることになるため、前処理部64近辺の構成、例えば、ヒッチフレーム6やオフセットフレーム11など、近隣部材との接触を防ぐことができ、省スペースとしての効果も奏することができる。
【0047】
次に、第2実施形態について、図7を参照しながら、耕耘爪20及び土上げ爪30の周囲を取り囲むカバー体40について詳細に説明する。
第2実施形態におけるカバー体40は、図に示す通り、爪軸70の先端側に装着される前カバー部41と、爪軸70の基端側に装着される後カバー部42と、前カバー部41及び後カバー部42の間に架け渡される外カバー部43とを備えている。
そして、外カバー部43は、爪軸70の先端側から基端側にかけて、複数の耕耘爪20の回転軌跡に略沿った形状となっており、その複数の耕耘爪20の各々の回転軌跡と外カバー部43との間の空間を最小限に抑えることとなっている。
【0048】
そして、第2実施形態における特徴は、外カバー部43について、図に示す通り、末広がりの形状である部分(図中Tの範囲)と、爪軸70と平行である部分(図中Uの範囲)と、を同時に備える点にある。
【0049】
より具体的には、回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用する切削用の耕耘爪20については、その耕耘爪20の回転方向外側の外カバー部43(図中Tの範囲)を末広がりの形状とし、撥ね上げ用の土上げ爪30については、その土上げ爪30の回転方向外側の外カバー部43(図中Uの範囲)を水平形状としたものである。
特に、図中Uの範囲における外カバー部43について、土上げ爪30の爪先の形状(図に示す構成では爪軸70と平行に延びる形状)と合わせて形成させている。
【0050】
つまり、外カバー部43について、撥ね上げ用の土上げ爪30の爪先の形状に沿った構成とすることで、土上げ爪30の回転軌跡と外カバー部43の内側面との距離間を最小限に抑えることとなり、加えて、耕耘爪20における回転方向外側の外カバー部43が、第1実施形態における構成と同様に、耕耘爪20の回転軌跡との距離間を最小限に抑えるとともに末広がりの形状となっている。
【0051】
このため、爪軸70の先端側から基端側にかけて、耕耘爪20及び土上げ爪30の回転軌跡と外カバー部43の内側面とで形成される空間を狭くでき、土上げ爪30による土上げの効果をより一層活かすことができるため、カバー体40における土流れを効果的に行うことができ、カバー体40の内部における土の付着を抑制するとともに、前処理部64における畦への土盛りが効率良く行える。
【0052】
なお、本実施形態においては、土上げ爪30の爪先の形状が爪軸70と平行に延びる形状となっており、そのため、土上げ爪30の回転方向外側の外カバー部43(図中Uの範囲)を水平形状としているものの、本発明の適用については土上げ爪30の爪先の形状を問うことなく、適用可能なものである。つまり、例えば、土上げ爪30の爪先を爪軸70の基端側又は先端側に向けて湾曲させる構成とし、図中Uの範囲における外カバー部43の形状をその湾曲させた形状の合わせた構成としても良いものである。
【0053】
次に、第3実施形態について、図8を参照しながら、耕耘爪20及び土上げ爪30の周囲を取り囲むカバー体40について詳細に説明する。
第3実施形態におけるカバー体40は、図に示す通り、前カバー部41と外カバー部43とのなす角部(図中の前側内角部44)の角度が鈍角であり、外カバー部43と後カバー部42とのなす角部(図中の後側内角部45)の角度が鈍角であることを特徴としている。
【0054】
このように、前側内角部44及び後側内角部45の角度を鈍角とすることで、耕耘爪20及び土上げ爪30と土との距離が常に近い状態となるため、耕耘され又は撥ね上げられた土の移動経路における土こぼれの量を少なくすることができる。
そして、耕耘爪20及び土上げ爪30の回転軌跡とカバー体40の内側面とによって形成される空間が、更に最小限に抑えられることとなり、土の持ち回り効率が良くなることで土の移動を効率良く行うことができ、さらなる効果として、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、前側内角部44及び後側内角部45の両方の箇所を鈍角とした構成としているものの、いずれか一方の箇所のみを鈍角としても良いものである。
【0055】
以上、本発明に係る前処理部64のカバー体40においては、爪軸70の先端側から基端側にかけて、爪軸70と垂直な方向において、耕耘爪20の回転軌跡と外カバー部43との間の空間を最小限に抑えることとなり、このため、耕耘爪20及び土上げ爪30の各々の回転径方向への土こぼれ量を抑えて土の持ち回り効率が良くなることで、土の移動を効率良く行うことができ、さらなる効果として、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することができる。
【0056】
また、作業負荷の軽減を目的として、複数の耕耘爪20の爪先を爪軸70の基端側に向けて湾曲するとともに爪軸70の先端側から基端側に向けて回転径の長さが順に長くなる配列構成を採用した場合には、外カバー部43を末広がりの形状とすることで、外カバー部43の内側面と複数の耕耘爪20の回転軌跡との距離間を最小限に抑えることができ、爪軸70の先端側から基端側に向けて、狭い空間として構成することができる。
このため、カバー体40における土流れを効果的に行うことができ、カバー体40の内側の土の付着を抑制するとともに、前処理部64における畦への土盛りが効率良く行える。
【0057】
さらに、本発明においては、土の移動経路を狭くすることができるため、仮に、土がカバー体40の内側に一旦付着したとしても、狭い空間内においては、後に流れてきた土によって付着済みの土が押し流されることとなり、土が堆積してしまうことを防ぐことができる。
よって、圃場の土質に関係なく、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することが可能となる。
【0058】
また、外カバー部43について、土撥ね上げ用の土上げ爪30の爪先の形状に沿った構成とすることで、土上げ爪30の回転軌跡との距離間についても最小限に抑えることとなり、耕耘爪20及び土上げ爪30の回転軌跡と外カバー部43の内側面とで形成される空間が狭いことに加え、土上げ爪30による土上げの効果をより一層活かすことができるため、土流れを効果的に行うことができ、土の付着を抑制するとともに、畦への土盛りが効率良く行える。
【0059】
加えて、前側内角部44及び後側内角部45の角度を鈍角とすることで、耕耘爪20及び土上げ爪30と土との距離が常に近い状態となるため、耕耘され又は撥ね上げられた土の移動経路における土こぼれの量を少なくすることができる。
そして、耕耘爪20及び土上げ爪30の回転軌跡とカバー体40の内側面とによって形成される空間が、より最小限に抑えられることとなり、土の持ち回り効率が良くなることで土の移動を効率良く行うことができ、さらなる効果として、カバー体40の内側面における土の付着を抑制することができる。
【0060】
そして、前処理部64における土の付着が抑制され、トラクタとの間における重量面でのバランス性を維持することができ、圃場への出入り時において、バランスを崩してしまうといった問題が解消される。
また、前処理部64における土砂洗浄についても、洗浄時間をかけることなく、スムーズに行うことができる。
【0061】
なお、本件発明に係る前処理部64のカバー体40については、先述してきた実施形態により土の付着が抑制されるものであり、さらに、カバー体40の内側面について、例えば、樹脂やステンレス等をコーティングすることで、より一層の土付着の抑制を図ることができるものである。
【0062】
また、本実施形態において、複数の耕耘爪20は全ての爪先が爪軸70の基端側に向けて湾曲させた構成を述べてきたが、本発明の適用について、爪先の湾曲方向を爪軸70の先端側に向けて湾曲させた構成としても良く、爪先の湾曲方向を問わないものである。
そして、爪先の湾曲方向が各々異なっている複数の耕耘爪20であっても、外カバー部43について、爪軸70の基端側から先端部にかけて、各々の耕耘爪20の回転軌跡に沿った形状とすることで、土の移動経路であり誘導路の空間を狭くすることができ、本発明の適用が可能なものである。
【0063】
さらに、本実施形態において、爪軸70の先端側から基端側に向けて回転径の長さが順に長くなる配列構成を述べてきたが、本発明の適用について、回転径の長さが順に短くなる配列構成を採用しても良く、つまり、回転径の長さの規則性の有無を問わないものである。
【符号の説明】
【0064】
1 畦塗り機1
6 ヒッチフレーム
10 オフセット機構部
11 オフセットフレーム
13 リンク部材
15 回動支持アーム
20 耕耘爪
25 回転爪
30 土上げ爪
40 カバー体
41 前カバー部
42 後カバー部
43 外カバー部
44 前側内角部
50 軸部
51 取付ボックス
70 爪軸
72 回転軸
90 走行機体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着される畦塗り機であって、
前記走行機体からの動力を受けつつ、前記走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置において作業させる作業部が設けられ、
前記作業部には、前記動力により回転する爪軸と、該爪軸の基端側から先端側に向けて前記爪軸の周囲に配列されて前記爪軸の回転に伴って回転するとともに互いに長さの異なる複数の回転爪と、該回転爪の周囲を覆うカバー体とを有する前処理部が設けられており、
前記カバー体は、前記爪軸の先端側の方向を覆う前カバー部と、前記爪軸の基端側の方向を覆う後カバー部と、前記前カバー部及び前記後カバー部の間に架け渡される外カバー部と、を備え、
前記外カバー部は、前記回転爪の回転軌跡における上方を覆うとともに畦側とは反対の側方を覆っており、前記爪軸の基端側から先端側にかけて、前記爪軸と垂直な方向において前記回転爪の回転軌跡に略沿った形状であることを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
前記外カバー部が前記爪軸の先端側から基端側に向けて略末広がりの形状であることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記前カバー部と前記外カバー部とのなす角度が鈍角の関係であることを特徴とする、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記外カバー部と前記後カバー部とのなす角度が鈍角の関係であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の畦塗り機。
【請求項5】
前記回転爪は、前記爪軸の回転に伴って土を耕耘する耕耘爪と、前記爪軸の基端側に配設されるとともに前記爪軸の回転に伴って土を撥ね上げる土上げ爪とから構成され、該土上げ爪の配設された位置に対応する前記外カバー部が前記土上げ爪の回転軌跡の形状に略沿った形状であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の畦塗り機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate