異好性抗体免疫センサー干渉の改善
本発明は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減するための方法及びデバイスを対象とする。一実施形態では、本発明は、(a)全血試料などの生体試料を、非ヒトIgM又はその断片を用いて、少なくとも約20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように前記試料中に乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップと、(b)改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、前記試料中の前記分析物の濃度を求めるステップとを含む方法に対するものである。試料は、IgM又はその断片に加えて、IgG又はその断片を用いて改質されることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により組み込まれている、2009年3月25日に出願された、「異好性抗体免疫センサー干渉の改善(Amelioration of Heterophile Antibody Immunosensor Interference)」という表題の米国出願第12/411,325号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、液体試料中の分析物の存在又は濃度を判定するためのデバイス及び方法における、異好性抗体免疫センサー干渉の低減又は排除に関する。特に、本発明は、γグロブリンタンパク質、例えば、IgM及びその断片などを用いて生体試料を改質(amend)することによる、異好性抗体免疫センサー干渉の低減又は排除に関する。
【背景技術】
【0003】
対象とする分析物についての実験室イムノアッセイ試験の多数は、診断、スクリーニング、疾患の病期分類、法医学的分析、妊娠検査、薬物検査、及び他の理由のために生体試料に対して実施される。妊娠検査などのいくつかの定性的検査は、患者が家庭で使用するための単純なキットに変えられている一方で、定量的検査の大部分は、洗練された機器を使用して、実験室設定下で、訓練された技術者の専門知識を依然として必要とする。実験室検査は、分析の費用を増やし、結果を遅らせる。例えば、心筋梗塞及び心不全を示すマーカーの分析などの多くの状況において、遅延は、患者の状態又は予後に有害となり得る。これらの状況及び同様の極めて重要な状況において、そのような分析を、ポイントオブケアで、正確に、安価に、且つ遅延を最小にして実施することが有利である。
【0004】
サンドイッチ型イムノアッセイとも呼ばれる2サイトイムノアッセイは、生物学的検査試料中の分析物濃度を求めるのにしばしば使用され、例えば、Abbott Point−of−care Inc.によって、i−Stat(登録商標)システムとして開発されたポイントオブケア分析物検出システムにおいて使用される。一般的な2サイト酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)では、1つの抗体が、固体支持体に結合されることによって、「固定化抗体」を形成し、第2の抗体が、酵素などのシグナル生成試薬とコンジュゲート又は結合されることによって、「シグナル抗体」を形成する。測定される分析物を含有する試料と反応すると、分析物は、固定化抗体とシグナル抗体の間で「サンドイッチされた」状態になる。試料及び任意の非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル抗体の量が測定され、これは、試料中の分析物の量に比例するはずである。
【0005】
多くの型のイムノアッセイデバイス及びプロセスが説明されている。血液の試料中の分析物を首尾よく測定するための1つの使い捨て検出デバイスが、米国特許第5,096,669号においてLauksによって開示されている。凝固時間についての他のデバイスが、米国特許第5,628,961号及び同第5,447,440号においてDavisらによって開示されている。これらのデバイスは、時間の関数として血液の試料中の分析物濃度及び粘度変化を測定する目的のために、読取装置及びこの読取装置に適合するカートリッジを使用する。米国特許第5,096,669号、同第5,628,961号、及び同第5,447,440号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
分析物の結合が、電極に隣接する電気活性種の活性の変化を直接又は間接的に引き起こす電気化学的検出も、イムノアッセイに適用されている。電気化学的イムノアッセイの概説については、Laurellら、Methods in Enzymology、73巻、「電気イムノアッセイ(Electroimmunoassay)」、Academic Press、New York、339、340、346〜348(1981)を参照されたい。
【0007】
微細加工技法(例えば、フォトリソグラフィー及びプラズマ蒸着)は、限定された空間において多層センサー構造を構築するのに魅力的である。例えば、シリコン基板上に電気化学的免疫センサーを微細加工するための方法は、Cozzetteらの米国特許第5,200,051号に開示されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。これらには、調合方法、光形成された層及び微粒子ラテックスを含む表面に生物学的試薬、例えば抗体を結合させるための方法、並びに電気化学的アッセイを実施するための方法が含まれる。
【0008】
電気化学的免疫センサーでは、分析物がその同族抗体に結合することにより、電極における電気活性種の活性の変化が生じ、これは、適当な電気化学的な電位で釣り合うことによって、電気活性種の酸化又は還元を引き起こす。これらの条件を満たすための多くの機構が存在する。例えば、電気活性種は、分析物に直接結合することができ、又は抗体は、電気不活性な基質から電気活性種を生成し、若しくは電気活性な基質を破壊する酵素に共有結合することができる。電気化学的免疫センサーの概説については、M.J.Green(1987)Philos.Trans.R.Soc.Lond.B.Biol.Sci.316:135〜142を参照されたい。
【0009】
示差電流(differential amperometric)測定の概念は、電気化学の技術分野で周知であり、例えば、共同所有のCozzette、米国特許第5,112,455号を参照されたい。さらに、示差電流センサー組合せのバージョンは、共同所有のCozzette、米国特許第5,063,081号に開示されている。この特許はまた、電気化学的センサーのために選択透過性層を使用すること、及び生理活性分子を固定化するために膜形成ラテックスを使用することを開示しており、参照により本明細書に組み込まれている。センサーの製造においてポリ(ビニルアルコール)(PVA)を使用することは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,030,827号に記載されている。Vikholm(U.S.2003/0059954A1)は、生体分子忌避コーティング、例えば、PVAを含む表面、すなわち、抗体同士間のギャップ内の表面に直接結合した抗体を教示し、Johansson(米国特許第5,656,504号)は、抗体が上に固定された固相、例えば、PVAを教示している。米国特許第6,030,827号及び同第6,379,883号は、ポリ(ビニルアルコール)層をパターン形成するための方法を教示しており、その全体が参照により組み込まれている。
【0010】
US20060160164は、免疫参照電極(immuno−reference electrode)を有するイムノアッセイデバイスを記載し、US20050054078は、試料閉じ込めが改善されたイムノアッセイデバイスを記載し、US20040018577は、多重ハイブリッドイムノアッセイを記載し、US20030170881(US7,419,821として交付された)は、分析物測定及びイムノアッセイのための装置及び方法を記載しており、これらのすべては、共同所有されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0011】
電流測定に関しては、シグナルの非ファラデー成分のウェイトを低減し、したがって感度を増大させるための、当技術分野で公知のいくつかの手段が存在する。これらには、例えば、クロノアンペロメトリーの代わりに矩形波ボルタンメトリーを使用する、より新しい電気化学的方法、及び化学的手段、例えば、電極表面を不動態化するためのアルキルチオール試薬が含まれる。
【0012】
しかし、従来のアッセイ構成の1つの制限は、検査試料中に存在し得る異好性抗体によって引き起こされる干渉に対する感受性である。例えば、L.Kricka、「免疫アッセイにおけるヒト抗動物抗体干渉(Human Anti−Animal Antibody Interferences in Immunological Assays)」、Clinical Chemistry 45:7、942〜956(1999)を参照されたい。市販のイムノアッセイにおいて使用される抗体は、多くの場合、動物又は動物起源の培地において調製され、又は「産生される」。さらに、多くの個体は、動物タンパク質に対する、天然に存在する非特異的抗体、すなわち、「内因性抗体」を内部に持ち、これは、イムノアッセイにおいて使用される動物抗体試薬に結合し、誤った結果に至る場合がある。例えば、アッセイ試薬の1つ又は複数に結合することができる内因性抗体は、試薬を架橋して偽陽性の結果に導き、又は試薬を隔離して偽陰性の結果に導くことによって、誤った検査結果を生じさせる電位をもたらす。
【0013】
例えば、放射標識されたマウスモノクローナル抗体を用いた癌療法は、患者においてヒト抗マウス抗体(HAMA)を産生させる場合があることが判明している。こうした患者から採取される血清試料中にHAMAが存在することにより、癌マーカーについてのサンドイッチ型酵素イムノアッセイにおいて使用される試薬のマウスモノクローナル抗体が架橋される場合があることが引き続いて示された(Boscatoら、異好性抗体:すべてのイムノアッセイに関する問題(Heterophile antibodies:A problem for all immunoassays)、Clin Chem 34、27〜33、1988)。さらに、Nicholsonら(免疫グロブリン阻害試薬(IIR):HAMAによって引き起こされるCA125の偽上昇を排除するための新規方法の評価(Immunoglobulin inhibiting reagent(IIR):Evaluation of a new method for eliminating spurious elevation in CA125 caused by HAMA)、Intl J Biol Markers 11、46〜49、1996)は、CA125アッセイにおけるHAMA干渉を排除するためにIIR(Bioreclamation Inc、NY)を使用して、有益な結果を実証した。IIR物質は、いくつかの種に由来する免疫グロブリン(IgG、IgM)、主に、Balb/cマウスに由来するマウスIgG(サブタイプIgG2a、IgG2b、及びIgG3)のある程度精製された配合物を含むことが報告されている。
【0014】
US6,106,779は、ある特定のアッセイ試薬の互いの、及びデバイスコンポーネントへの非特異的結合は、診断アッセイにおいて問題である場合が多いことを教示している。これは、抗体が、その抗原ではない分子の領域を認識する場合、特に問題である。その時これは、高いバックグラウンド反応及び偽陽性(又は陰性)アッセイの結果に導く場合がある。この問題のために使用することができる非特異的結合阻害剤には、ウシIgGが含まれる。
【0015】
US20080261242では、内因性ヒト異好性抗体及びヒト抗動物抗体が論じられており、これらは、他の種の免疫グロブリンに結合する能力を有し、患者の10%超の血清又は血漿中に存在する。これらの循環異好性抗体は、イムノアッセイ測定に干渉する場合がある。サンドイッチイムノアッセイでは、これらの異好性抗体は、捕捉抗体及び検出(診断用)抗体を架橋し、それによって、偽陽性シグナルを生成する場合があり、又はこれらは、診断用抗体の結合を遮断し、それによって、偽陰性シグナルを生成する場合がある。さらに、競合的なイムノアッセイでは、異好性抗体は、分析用抗体に結合し、分析物への分析用抗体の結合を阻害する場合がある。これらはまた、特に、抗種抗体が分別システムにおいて使用される場合、遊離分析物から抗体−分析物複合体の分別を阻止又は増強する場合がある。結果として、これらの異好性抗体干渉のインパクトは、予測困難である場合が多い。
【0016】
試料から異好性抗体を除去するためのいくつかの追加の方法も公知であり、これらには、(i)pH5.0の酢酸ナトリウム緩衝液中での、摂氏90度で15分間の検体の加熱、その後の1200gで10分間の遠心分離、(ii)ポリエチレングリコール(PEG)を使用する沈降、及び(iii)プロテインA又はプロテインGを用いた免疫抽出が含まれる。異好性抗体問題に対処するための臨床的な指針は、臨床検査標準協会(CLSI)(Clinical and Laboratory Standards Institute)内因性抗体によるイムノアッセイ干渉;提案指針(Immunoassay Interference by Endogenous Antibodies;Proposed Guideline)によっても提供されている。CLSI文書I/LA30−P(ISBN 1−56238−633−6)。
【0017】
一般に、イムノアッセイ製造者は、(a)試料から干渉性の免疫グロブリンを除去又は不活性化し、(b)アッセイ抗体を改良することによって、これらが異好性抗体と反応する傾向を少なくさせ、(c)干渉を低減する遮断剤(blocking agent)(ほとんどIgG)を使用することによって、異好性干渉を低減するように努めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、少なくとも以下の分野において異好性抗体を改善するために、プロセスを改善する必要が残っている:(i)最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー干渉、(ii)電気化学的イムノアッセイ、(iii)免疫参照センサーと併せた免疫センサーの使用、(iv)全血イムノアッセイ、(v)使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ、(vi)1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ、及び(vii)乾燥試薬コーティング。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、電気化学的免疫センサー又は他の配位子/配位子受容体ベースバイオセンサーを使用する、血液などの生体試料中の分析物の判定に関する。具体的には、本発明は、例えば、心血管マーカーイムノアッセイを含めた様々なアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法の改善に関する。この手法では、試料、例えば、血液試料を収集し、次いで、例えば、選択された非ヒトIgM(免疫グロブリンM)若しくはその断片、又は非ヒトIgG及び非ヒトIgM、若しくはこれらの断片の規定された混合物のいずれかを含む乾燥試薬を溶解させることによって、試料を改質する。
【0020】
本発明では、試料中に存在する任意の異好性抗体を実質的に隔離するために、十分な量の免疫グロブリンが使用される。試薬の量は、これが、集団の大部分において異好性抗体が生じる濃度の異好性抗体に結合するのに十分であることを保証するように、一般に選択される。或いは、試薬の量は、所定の閾値濃度値を超える異好性抗体が、実質的に除去され、すなわち、添加される免疫グロブリンに結合され、したがって、アッセイに干渉するのを防止するのを保証するように選択することができる。この結合ステップを起こさせるための期間の後に、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することが可能である。本発明はさらに、免疫参照センサー及び免疫センサーの両方と併せたこれらの隔離試薬の使用に関する。本発明は、ベッドサイド検査及びニアペイシェント検査とも呼ばれる、ポイントオブケア血液検査に特に有用である。
【0021】
第1の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、全血試料を、非ヒトIgM又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように試料中に乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法に対するものである。好適な態様では、この方法は、IgG又はその断片を用いて全血試料を改質するステップも含む。非ヒトIgG及びIgMは、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものであることが好ましい。
【0022】
分析物は、多種多様となり得るが、好ましくは、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPの群から選択される。好適な実施形態では、試料は、約1分〜約30分の範囲の所定期間改質される。乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含むことが好ましい。乾燥試薬は、分析物に対する酵素標識抗体(シグナル抗体)をさらに含むことができる。別の態様では、この方法は、改質された試料を、分析物に対する酵素標識抗体(シグナル抗体)を用いて、改質された試料中に酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップであって、第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含有する乾燥試薬と別個のものであるステップをさらに含む。例えば、乾燥試薬は、非ヒトIgGをさらに含むことができる。
【0023】
電気化学的イムノアッセイは、好ましくは酵素結合サンドイッチイムノアッセイであり、好ましくは免疫センサーによって実施される。したがって、電気化学的アッセイは、電極上の分析物に対する固定化抗体を用いて実施されることが好ましい。改質された試料は、好ましくは、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含み、分析物に対する固定化抗体と接触させることによって、固定化抗体と標識抗体の間に分析物のサンドイッチを形成し、この方法は、試料を廃棄物チャンバーに流すステップと、酵素と反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝すステップとをさらに含む。一実施形態では、電気化学的イムノアッセイは、免疫センサー及び免疫参照センサーによって実施される。別の実施形態では、電気化学的イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイである。この方法は、ポイントオブペイシェントケア(point of patient care)で実施されるのに特によく適している。例えば、イムノアッセイは、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備えるカートリッジ内で実施することができる。この態様では、試料流入ポート、試料保持チャンバー、導管、及び免疫センサーのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を、乾燥試薬でコーティングすることができる。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、全血試料を、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、改質された試料中の非ヒトIgM濃度は、少なくとも約20μg/mL又は同等のIgM断片濃度であるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップとを含む方法を対象とする。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、脳性ナトリウム利尿ペプチドイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、試料を、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、改質された試料中の非ヒトIgM濃度は、少なくとも約20μg/mL又は同等のIgM断片濃度であるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップとを含む方法を対象とする。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイス、例えば、使い捨てカートリッジであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、導管は、血液試料が流入ポートから免疫センサーに進むのを可能にし、筐体、流入ポート、及び導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む乾燥試薬コーティングを含み、この乾燥試薬は、血液試料中に溶解することによって少なくとも約20μg/mLのIgM濃度又は同等の断片濃度を生じ、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離することができるデバイスに対するものである。この態様では、デバイスは、最初の血液試料を計量することによって、計量された血液試料を形成するための計量システムをさらに備えることが好ましい。デバイスは、免疫参照センサーも備えることができる。免疫センサーは、電極上に分析物に対する固定化抗体を含むことが好ましい。
【0027】
一態様では、乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む。任意選択により、乾燥試薬は、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む。代替の実施形態では、デバイスは、分析物に対する酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬をさらに含み、第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含む乾燥試薬と別個のものである。デバイスは、試料を廃棄物チャンバーに流すことができる洗浄流体をさらに含むことが好ましい。この洗浄流体は、免疫センサーにおいて反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質を含むことができる。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、生体試料を、IgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように改質するステップと、改質された試料に対してイムノアッセイを実施することによって、試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法を対象とする。例えば、生体試料は、IgM、IgM断片、IgG、又はIgG断片のうちの1つ又は複数を含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質することができる。この方法は、IgG又はその断片を用いて生体試料を改質するステップをさらに含むことが好ましい。生体試料は、例えば、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態からなる群から選択することができる。イムノアッセイ法は、電気化学、電流測定、電位差測定、吸光度、蛍光、及び発光からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイデバイスにおける分析物中の異好性抗体干渉を低減する方法であって、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な量で、生体試料にIgM又はその断片及びIgG又はその断片を添加し、改質された試料を形成するステップであって、IgM又はその断片及びIgG又はその断片は、0.004超、例えば、0.02超、0.05超、又は0.1超の重量比で添加されるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、改質された試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法に対するものである。添加ステップの後、IgMは、例えば、少なくとも20μg/mLの濃度で試料中に存在することができる。或いは、IgM断片は、少なくとも約20μg/mLのIgM濃度に同等の濃度で試料中に存在する。一態様では、添加するステップは、イムノアッセイデバイス内に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を試料中に溶解させるステップを含む。或いは、添加するステップは、試料収集デバイス上に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を試料中に溶解させるステップを含むことができる。さらに別の態様では、添加するステップは、試料をIgM又はその断片を含む液体と混合することによって、改質された混合物を形成することを含み、この方法は、イムノアッセイデバイス中に改質された混合物を導入するステップをさらに含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を、0.004超、例えば、0.02超、又は0.05超の重量比で含む乾燥試薬を含むデバイスに対するものである。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、又は試料流入ポートのうちの1つ又は複数において、液体試薬カクテルを堆積させることによって、上記デバイスのいずれかを形成するための方法であって、試薬カクテルは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む方法を対象とする。この方法は、試薬カクテルを乾燥させることによって乾燥試薬を形成し、デバイスをアセンブルするステップをさらに含む。
【0032】
本発明の方法及びデバイスのいくつかの好適な実施形態では、分析物は、TnI又はBNPであり、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20〜約200μg/mL、例えば、20〜約60μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)、及び約50〜約5000μg/mL、例えば、約500〜約1000μg/mLのIgG濃度(又は同等のIgG断片濃度)を与える。
【0033】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、具体的な実施形態の以下の詳細な説明に記載され、以下の図面に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】免疫センサーカートリッジカバーの等尺上面図である。
【図2】免疫センサーカートリッジカバーの等尺下面図である。
【図3】免疫センサーカートリッジ用テープガスケットの構成の上面図である。
【図4】免疫センサーカートリッジベースの等尺上面図である。
【図5】免疫センサーカートリッジの構成の概略図である。
【図6】乾燥試薬で流体を改質するための場所を含む、免疫センサーカートリッジ内の流体及び空気の経路の概略図である。
【図7】電気化学的免疫センサーの動作の原理を例示する図である。
【図8】電気化学的免疫センサーの構成の側面図であり、抗体標識粒子は縮尺通りに描かれていない。
【図9】免疫センサーカートリッジ用電気伝導度測定電極及び免疫センサー電極のためのマスク設計の上面図である。
【図10】異好性抗体改善試薬を含むTnI及びBNPカートリッジ並びに含まないTnI及びBNPカートリッジについてのデータを要約する表を示す図である。
【図11】時間に対するTnI免疫センサー及び免疫参照センサー応答を示す図である。
【図12】時間に対するBNP免疫センサー応答及び免疫参照センサーを示す図である。
【図13】電気活性種の酵素再生の略図である。
【図14】セグメント形成手段を例示する図である。
【図15】好適な実施形態の免疫センサーカートリッジの上面図である。
【図16】免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図である。
【図17A】免疫センサーでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図17B】付随した免疫参照センサーでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図17C】免疫参照センサーシグナルから減じられた免疫センサーシグナルでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図18】閉じた位置での、試料流入ポートを閉じるためのスライド可能な密封エレメントを有するカートリッジデバイスを例示する図である。
【図19】開いた位置での、試料流入ポートを閉じるためのスライド可能な密封エレメントを有するカートリッジデバイスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、以下の分野における、異好性抗体の存在によって引き起こされる干渉の低減又は排除に関する。(i)最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー、(ii)電気化学的イムノアッセイ、(iii)免疫参照センサーと併せた免疫センサーの使用、(iv)全血イムノアッセイ、(v)使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ、(vi)1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ、及び(vii)非特異的結合(NSB)阻害剤を含む乾燥試薬コーティング。しかし、当業者によって理解されるように、一般的な概念は、多くのイムノアッセイ法及びプラットフォームに適用可能である。
【0036】
本発明は、分析物センサーのアレイ、及び免疫センサー又は分析物アレイに改質された試料を順次提示するための手段を有するカートリッジを使用して、分析物の迅速なインサイツ判定を可能にする。カートリッジは、好ましくは読取デバイスとともに稼動するように設計され、例えば、ともにその全体が本明細書に参照により組み込まれている、1992年3月17日に交付された、Lauksらの米国特許第5,096,669号、又は2008年9月2日に交付された米国特許第7,419,821号に開示されたものなどである。本発明は、この脈絡において最良に理解される。その結果として、ポイントオブケアイムノアッセイシステムを稼動するのに適したデバイス及び方法が最初に記載され、異好性抗体干渉を低減又は排除するのに、システムを最良に適応させることができる方法が記載される。
【0037】
一実施形態では、本発明は、試料中の分析物の存在又は量を判定するのに液体試料を処理するためのカートリッジ及びその使用方法を提供する。カートリッジは、好ましくは計量手段を含み、これにより、未計量体積の試料を導入することが可能になり、この手段から、計量された量が、カートリッジ及びその付随した読取装置によって処理される。したがって、医師又はオペレーターは、測定前に試料の体積を正確に測定することから解放され、時間、努力を節約し、精度及び再現性を増大させる。計量手段は、一実施形態では、キャピラリーストップを境界とし、長さに沿って空気流入ポイントを有する長い試料チャンバーを備える。空気流入ポイントでかけられる空気圧により、計量された体積の試料が、キャピラリーストップを通過させられる。計量される体積は、空気流入ポイントとキャピラリーストップの間の試料チャンバーの体積によって予め設定される。
【0038】
カートリッジは、気密様式で試料ポートを密封するための閉鎖デバイスを有することができる。この閉鎖デバイスは、好ましくは、カートリッジの本体に対してスライド可能であり、ポートの領域内に位置したいずれの過剰の試料も追い出すせん断作用をもたらし、流入ポートとキャピラリーストップの間の保持チャンバー中の試料部分を確実に密封する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、公開された米国特許出願公開第2005/0054078A1号を参照されたい。カートリッジは、例えば、過剰の流体試料を試料流れ口から追い出し、内部流体試料保持チャンバー内の、ある体積の流体試料を密封し、流体試料が内部キャピラリーストップを尚早に突き破るのを抑制する様式で、カートリッジの表面上で密封エレメントをスライド可能なように動かすことによって密封することができる。このスライド可能な閉鎖デバイスによって得られる密封は、非可逆性であることが好ましく、過剰の血液がカートリッジ内に貯まることを防止し、その理由は、閉鎖デバイスは、血液がカートリッジに入る流れ口の面内を移動し、流入ポートの面より下の血液を密封するせん断作用をもたらし、それによって、過剰の血液、すなわち、流れ口の面より上の血液を流入ポートから離し、任意選択により廃棄物チャンバーに移すためである。
【0039】
1つの例示的な閉鎖デバイスは、図1に示されており、カバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える。この実施形態では、閉鎖デバイス2は、フック3がパチンと閉まって試料流入ポート4を遮断するまでヒンジの周りを回転する。図1のカバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える閉鎖デバイスの代替案が、図18及び19中に、別個のスライド可能なエレメント200として示されている。図18及び19は、別個のスライド可能な閉鎖エレメント200とともに、図3に示された介在する接着性層21を伴った、図4中の底部と同様の底部に取り付けられた図1のカバーの改良版を備えるカートリッジデバイスを示す。図19は、開いた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、試料流入ポート4は、試料、例えば、血液を受け入れることができる。図18は、閉じた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、これは、気密様式で試料流入ポートを密封する。稼動中、試料、例えば、血液が流入ポートに添加され、これが保持チャンバー34に入った後、エレメント200は、開いた位置から閉じた位置に手動で動かされる。示した実施形態では、流入ポートの領域内のいずれの過剰の血液も、オーバーフローチャンバー201、又は隣接する保持領域若しくは空洞に移動される。このチャンバー又は領域は、過剰の試料、例えば、血液を保持するための流体吸収パッド又は物質を含むことができる。
【0040】
試料流入ポート4は、図19に示したような円形、又は楕円形である流れ口とすることができ、流れ口の直径は一般に、0.2〜5mm、好ましくは1〜2mmの範囲内であり、又は楕円形の周囲長が1〜15mmである。流れ口の周囲の領域は、適用される試料の液滴形状を制御することによって、流入ポート中への流入を促進するために、疎水性又は親水性であるように選択することができる。図18及び19に示された閉鎖デバイスの1つの利点は、これは、試料が保持チャンバー34の端部のキャピラリーストップエレメント25を越えて押されるのを防止することである。キャピラリーストップを越えて少量の試料、例えば血液が存在することは、分析物のバルク濃度を測定する検査に有意でなく、したがって、試料体積に依存しない。しかし、試料の計量が一般に有利であるイムノアッセイ用途について、密封エレメントは、デバイスの計量精度を改善し、分析器により試料がカートリッジ導管内に動かされるとき、試料のアッセイされるセグメントが免疫センサーに対して適切に配置されるのを確実にする。
【0041】
稼動中、試料、例えば、血液がカートリッジに添加されるとき、これは、キャピラリーストップへと移動する。したがって、キャピラリーストップから試料流入ポートまでの領域、すなわち、保持チャンバー34が試料を含むとき、アッセイに十分な試料が存在する。保持チャンバーを満たすプロセスの間、一部の試料が、流入ポートの流れ口の面の上に残る場合がある。密封エレメントが、開いた位置から閉じた位置に移動されるとき、流入ポートの上にあるいずれの試料も、閉鎖の動作の際に追加の試料を取り込むことなくせん断されて除かれ、したがって、試料がキャピラリーストップ25を越えて移動しないことを確実にする。好適な実施形態では、密封エレメント200は、図3のテープガスケット21の表面の上の数千分の1インチ以内に配置される。流入ポートは、密封エレメントが、ロック機構212及び213に噛み合うとき、200の表面が接着性テープガスケットまで引き続いて低下することによって密封される。テープは、本質的に非圧縮性であり、流れ口の直径は小さいので、ユーザーによって密封エレメントにかけられるいずれの不意の圧力も、キャピラリーストップを越えて試料を移動させることにならない。
【0042】
数滴の試料を使用する、ある特定のカートリッジの実施形態では、気泡は、アッセイに影響し得るので、保持チャンバー内でまったく形成しないことが望ましい。したがって、1滴を超える試料、例えば、血液を、気泡を中に閉じ込めることなく保持チャンバー34内に導入するための信頼できる手段が開発された。試料流入ポートは、コロナ及び/又は試薬カクテルを用いて保持チャンバーを最初に処理することによって、次の液滴が、取り込まれた気泡を保持チャンバー34内に形成させることなく、複数の液滴の試料を受け入れるように設計することができる。
【0043】
使い捨て医療用デバイスにコロナ処理を使用することは、当技術分野で周知であり、実質的に任意の物質、例えば、金属化表面、ホイル、紙、板紙原料、又はプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニル、PVC、及びPETなどの表面活性を増大させる有効な方法である。この処理は、これらをインク、コーティング、及び接着剤に対してより受容性にする。実際には、処理されている物質は、放電、又は「コロナ」に曝される。放電範囲内の酸素分子が壊れて原子になり、処理されている物質中の分子に結合し、化学的に活性化された表面をもたらす。コロナ処理のための適当な装置は市販されている(例えば、Corotec Corp.、Farmington、Conn.)。プロセス変数には、物質を処理するのに必要とされるパワー量、物質速度、幅、処理される面の数、及びコロナ処理に対する特定の物質の応答性が含まれ、これらの変数は、熟練したオペレーターによって求めることができる。コロナ処理を組み込むための一般的な場所は、プリント、コーティング、又はラミネートプロセスとインラインである。別の一般的な設置は、インフレーションフィルム又はキャストフィルム押出機の直接上であり、その理由は、新鮮な物質は、コロナ処理に対してより受容性であるためである。
【0044】
上述したように、サンドイッチイムノアッセイ形式は、最も広く使用されるイムノアッセイ法であり、本明細書に論じられる分析デバイス、例えば、カートリッジにおいても好適な形式である。この実施形態では、1つの抗体(固定化抗体)は、固体支持体又は免疫センサーに結合され、第2の抗体(シグナル抗体)は、酵素、例えば、アルカリホスファターゼなどのシグナル生成試薬にコンジュゲート/結合される。シグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)は、以下に記載するように、分析デバイス中の乾燥試薬コーティングの一部とすることができ、好ましくは、試料が免疫センサーに到達する前に生体試料中に溶解する。試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は比例するはずである。しかし、アッセイ構成の1つの制限は、生体試料中に存在する場合のある異好性抗体によって引き起こされる干渉(単数又は複数)に対する感受性である。具体的には、アッセイ試薬の1つ又は複数に結合することができる内因性抗体は、試薬を架橋し(偽陽性)、又は試薬を隔離する(偽陰性)ことによって、誤った検査結果を生じさせる電位をもたらす。
【0045】
多くの異好性干渉は、マウスIgGを添加することによって軽減されるが、IgGは、ある特定の試料について、異好性干渉を軽減するのに効果的でないことが意外にも判明した。これらの試料において、システムは、IgGの存在下でさえ、試料の誤りを認識し、結果として、デバイス中のアルゴリズムは、デバイスが誤った結果を報告するのを抑制させる。これは、かなりの量のIgGの存在下でさえ、いくつかの試料について見出された。
【0046】
これらのシステムは、動物種から単離されたIgMクラスの免疫グロブリン又はその断片の追加の存在下でのみ正確な結果を生じることが今では発見されている。本明細書で使用する場合、用語「断片」は、指定された分子に由来する任意のエピトープ担持断片を指す。したがって、IgM断片は、例えば、F(ab’)2断片、Fab断片、又はFc断片を含むことができ、これらは、IgM分子のエピトープ担持断片である。さらに、「IgM又はその断片」とは、IgM単独、IgM断片単独(すなわち、IgMのF(ab’)2断片、Fab断片、及び/若しくはFc断片の1つ若しくは複数)、又はIgMとIgM断片の組合せを意味する。
【0047】
好適な実施形態では、IgM又はその断片は、乾燥試薬コーティング中に組み込まれ、このコーティングは、いくつかの実施形態では、シグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)を含有する同じ乾燥試薬コーティングとすることができる。したがって、一実施形態では、分析デバイスは、(a)異好性抗体の効果を改善するのに適した成分、例えば、IgM若しくはその断片、及び好ましくはIgG若しくはその断片、並びに/又は(b)シグナル抗体のいずれか、又は両方を含む乾燥試薬コーティングを含む。乾燥試薬コーティングは、試薬カクテルから形成することができ、これも、(a)異好性抗体の効果を改善するのに適した成分、例えば、IgM若しくはその断片、及び好ましくはIgG若しくはその断片、並びに/又は(b)シグナル抗体のいずれか、又は両方を含むことが好ましい。試薬カクテルが堆積されることになる表面は、最初にコロナ処理されることによって、プリントされるカクテルが行き渡るのを促進する帯電表面基を施すことが好ましい。
【0048】
一般に、乾燥試薬コーティングを形成するのに使用される試薬カクテルは、水溶性タンパク質、アミノ酸、ポリエーテル、ヒドロキシル基を含有するポリマー、糖又は炭水化物、塩、及び任意選択により色素分子をさらに含むことができる。各成分の1つ又は複数を使用することができる。一実施形態では、カクテルは、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリシン、塩、メトキシポリエチレングリコール、スクロース、及び任意選択によりプリントプロセスの視覚化を補助する色を提供するブロモフェノールブルーを含有する。一実施形態では、1〜20μLのカクテルが、分析デバイスの、例えば、保持チャンバー又は他の導管内の所望の表面上にプリントされ、デバイスのカバーとともに組み立てられる前に、空気乾燥させられる(又は加熱乾燥される)。
【0049】
別の実施形態では、検査カートリッジは、複数の乾燥試薬コーティングを含むことができる(この場合、コーティングは、これらを区別するためにそれぞれ、第1の試薬コーティング、第2の試薬コーティングなどと呼ばれる場合がある)。例えば、IgM又はその断片を、第1の試薬コーティング中に含めることができ、この第1の試薬コーティングは、例えば、シグナル生成成分、例えば、シグナル抗体を含有する第2の試薬コーティングに隣接することができる。この態様では、第2の試薬コーティングは、第1の試薬コーティングの上流又は下流に位置することができるが、シグナル抗体を含有する試薬コーティングは、異好性抗体干渉を阻害するための成分を含有する試薬コーティングの下流に位置することが好ましい。好適な実施形態では、保持チャンバーは、IgG又はその断片及びIgM又はその断片を含む第1の試薬コーティングでコーティングされる。この態様では、シグナル抗体を含む第2の試薬コーティングは、保持チャンバーの下流、例えば、免疫センサーのすぐ上流に位置されることが好ましい。
【0050】
さらに他の実施形態では、IgM又はその断片は、分析デバイス、例えば、カートリッジの一部でなくてもよい。例えば、IgM又はその断片及び好ましくはIgG又はその断片を含む第1の試薬コーティングは、試料収集デバイス、例えば、キャピラリー又はシリンジ内に組み込むことができる。例えば、第1の試薬コーティングは、キャピラリー又はシリンジの内壁上に形成することができる。
【0051】
別の実施形態では、異好性干渉を改善するための成分(単数又は複数)は、溶液中に含め、生体試料、例えば、血液と混合することができ、得られる改質された試料は、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。一実施形態では、例えば、血液試料は、IgM又はその断片(及び好ましくはIgG又はその断片)を含む液体と混合されることによって、IgMで改質された試料を形成することができ、次いでこれは、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。別の態様では、デバイスは、IgM又はその断片(及び好ましくはIgG又はその断片)を含む液体を含むポーチをその中に含み、これは、デバイス中で生体試料と混合され、次いで概ね本明細書に記載されるように、処理されることによって分析物検出のためのサンドイッチアッセイを形成する。
【0052】
別の実施形態では、IgM又はその断片及び好ましくはIgG又はその断片含む第1の液体を、血液などの液体生体試料と混合するのに、エレクトロウェッティングが使用される。この実施形態では、液滴を操作するための装置が提供される場合がある。この装置は、例えば、すべての導電性エレメントが、液滴が操作される1つの表面上に含まれる、片面の電極設計を有することができる。操作される液滴を入れる目的のために、第1の表面と平行に追加の表面を提供することができる。液滴は、エレクトロウェッティングに基づく技法を実施することによって操作され、この技法において、第1の表面上に含まれ、又はこの表面中に埋め込まれた電極が、制御された様式で順次電圧を印加され、電圧を切られる。装置は、2つの液滴を一緒に合わせ、混合すること、1つの液滴を2つ以上の液滴に分割すること、流れから個々に制御可能な液滴を形成することによって連続する液体の流れを試料採取すること、及び所望の混合比を得るために液滴を繰り返して二成分混合又はデジタル混合することを含めた、いくつかの液滴操作プロセスを可能にすることができる。このようにして、IgM又はその断片を含む第1の液体の液滴は、液体生体試料、例えば、血液を慎重に且つ制御可能に合わせ、混合することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,911,132号を参照されたい。
【0053】
本発明は、イムノアッセイシステムに広く適用可能であるが、上記に引用された共同所有の係属中及び発行済み特許に記載されているように、i−STAT(商標)イムノアッセイシステム(Abbott Point of Care Inc.、Princeton、N.J.)との関連で最良に理解される。いくつかの実施形態では、システムは、アッセイの間に起こるNSBの程度を評価する目的で、免疫参照センサー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、US2006/0160164A1を参照)を使用する。NSBは、不十分な洗浄、又は干渉の存在のために発生し得る。アッセイからの正味のシグナルは、免疫参照センサーから生じる非特異的シグナルを減じることによって補正された、分析物免疫センサーから生じる特異的シグナルを含む。免疫参照センサーにおけるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される限界に支配される。
【0054】
一実施形態では、本発明は、i−STATイムノアッセイ形式の、内因性抗体による干渉に対する耐性を改善するが、これは、標準的なELISA形式にも同様に適用可能である。具体的には、本発明は、IgMクラスの免疫グロブリンの使用を含み、これは、ある特定の検査試料中の異好性抗体によって引き起こされる干渉を実質的に低減することが見出されている。
【0055】
上記に示したように、動物種から単離された、IgMクラスの免疫グロブリン(又はその断片)を、好ましくはIgGクラスの免疫グロブリン(又はその断片)と組み合わせて用いて試料を改質することにより、異好性抗体干渉が低減又は排除されることが今では発見されている。実験では、マウス免疫グロブリンM(IgM、Sigma−Aldrich)が、i−STAT(商標)イムノアッセイ形式において使用される、試料コンディショニングプリントカクテル(sample conditioning print cocktail)に添加された。次いで、異好性抗体による干渉のために現場で以前は確実に分析することができなかった、既知の患者の血漿試料が検査された。上記に示したように、i−STAT(商標)システムは、免疫参照センサーで偽シグナルを検出し、エラーコードでユーザーに警告し、結果が表示されるのを抑制するフェールセーフアルゴリズムを含むので、これらの試料について以前に不正確な結果を報告しなかったことが注目されるべきである。これは、信頼できるポイントオブケア検査に必要とされる品質システムの一部の例である。
【0056】
意外にも、マウスIgMで改良された新規のカートリッジが試験され、結果が従来のカートリッジと比較されたとき、得られた結果は、IgMで改良されたカートリッジが使用される場合、以前に問題であった血漿試料が、現在では正確に分析することができることを実証する。
【0057】
図10中のデータは、検査結果を要約し、この中で、既知の異好性抗体干渉を示す2つのそれぞれの試料(試料1及び2)中の、2つの心臓マーカー、すなわち、心臓トロポニンI(cTnI)及び脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定におけるマウスIgMの効力が求められた。図10において、「平均の結果」は、正味のシグナルの差(分析物センサーにおけるシグナル−参照センサーにおけるシグナル)から計算された分析物濃度を指し、「カートリッジの数」は、実施されたアッセイの数を指し、「エラーの数」は、所与の形式について、試料に対して実施されたアッセイの中で、参照センサーにおける過剰なNSBによって抑制された結果の数を指す。
【0058】
図10に記載されたcTnI検査において、一連の9つの検査が、IgMで改良された新規のカートリッジ(MOD)を用いて血液試料(試料1)に対して実施された。平均の結果は0.23ng/mLであり、識別されたシステムエラーはまったくなかったが、標準的な(STD)デバイスについては、9つすべてのカートリッジは、システムによって報告されたエラーを与え、平均の結果は、無意味な「負の」濃度(−0.21ng/mL)であった(この脈絡における「負」の値の原因は、以下に説明される)。したがって、本発明のMODカートリッジを用いると、9つすべての試料は、内部システムクオリティーチェックを通過し、意味のある結果を生じたが、STDカートリッジはすべて、試料に関連するエラーを認識し、結果の報告を抑制した。
【0059】
BNP検査セットにおいて、一連の3つの検査が、新規IgM MODカートリッジ及びSTDカートリッジを用いて第2の試料(試料2)に対して実施された。本発明のMODカートリッジについて、平均の結果は−27pg/mLであり、識別されたシステムエラーはまったくなかったが、STDデバイスについては、3つすべての検査は、システムによって報告されたエラーを与え、平均の結果は−157pg/mLであった。やはり、この脈絡における「負の」値の原因は、以下に説明される。
【0060】
さらに洞察するために、図11及び12は、図10における、異好性干渉を含む2つの試料(試料1及び2)について要約された測定に関連する、実際の未処理の過渡的な電気化学的免疫センサー応答及び免疫参照センサー応答を例示する。
【0061】
試料1(図10及び11)は、臨床業務において生じ、cTnIについて陽性であると判定された。使用された検査カートリッジは、i−STAT(商標)心臓トロポニンIカートリッジであり、心臓トロポニンIについてのセンサー(実線、図11)、及び抗cTnIコンジュゲート試薬のNSBの程度を評価するのに使用された免疫参照センサーを含んでいた。US2006/0160164A1を参照されたい。
【0062】
図11は、マウスIgMを取り込んだ後の、異好性抗体活性を含む試料についての電気化学的免疫センサー応答の変化を示す。実線は、IgMで処理する前(薄い実線)及び後(濃い実線)の、抗cTnI抗体を担持するcTnIについての、免疫センサーにおける電流応答を示す。点線は、IgMで処理する前(薄い点線)及び後(濃い点線)の、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を担持するHSAについての、免疫参照センサーにおける電流応答を示す。矢印は、IgM添加後の応答の変化を示す。
【0063】
NSBは、洗浄ステップに伴う問題のため、又は干渉(単数又は複数)の存在のために発生する場合がある。使用された免疫参照センサーは、抗HSA抗体標識微粒子のコーティングを有する電極を含んでいた。これは、試料に曝されるとHSAでコーティングされた状態になる(HSAは、試料から自然に生じることに注意)。図11を検分すると、cTnI免疫センサー(実線)から生じるシグナルは、マウスIgMを添加すると増大する(濃い線)ことを示す。したがって、IgMの非存在下で、トロポニン濃度は、異好性干渉(単数又は複数)の存在のために過小評価された。これは、試料は、免疫センサー上に固定化された免疫試薬(抗−cTnI抗体)、又は酵素アルカリホスファターゼ(ALP)にコンジュゲートされた抗HSAの1つ又は複数に結合することができる干渉物質を含み、それによって、分析物との相互作用に関するその利用可能性を減少させたことを示す。マウスIgMを添加する前に(薄い線)、免疫参照センサー(点線)は、マウスIgMを添加すると著しく減少した、かなりのシグナルを示したことも図11から明白である。したがって、IgMは、抗cTnIコンジュゲート試薬(動物抗cTnI抗体を含有する)を、抗HSA試薬(免疫参照センサー上の)と架橋することができる干渉物質を軽減するように作用する。
【0064】
従来のサンドイッチアッセイは、これらの場合において誤った結果を生じる一方で、i−STATシステムアッセイは、臨界値より下である参照センサーからのシグナルを要求するエラー検出アルゴリズムによりエラーコードを生じることは注目すべきである。誤って結果を報告するのとは対照的に、結果を報告しないことが臨床的に高度に望ましいので、これははるかに優れている。このようにして、分析システムの品質及び完全性が維持される。
【0065】
一般に、市販のアッセイは、そのような参照測定、例えば、免疫参照センサーに基づく測定を含まず、代わりに、測定される試料中に干渉物質が存在しないこと、又はこの試料中の干渉物質の適切な中和に依拠する。この参照測定の非存在下で、試料1(図10)は、0.00ng/mLを報告したであろう。−0.21という実際の値は、より小さい分析物センサー電流から相対的に大きい免疫参照センサー電流を減じることから生じることに注意されたい。これは明らかに非物理的(無意味な値又は結果)であり、ゼロとして報告される。真の試料値は、IgMの存在下で得られるように、トロポニンについて実際には正である(0.23ng/mL)。試料1は、非常に低いcTnI濃度を有していたことも注意されたい。したがって、実際の免疫センサー(IS)シグナルは、低いことが予期される。さらに、免疫参照センサー(IRS)におけるシグナルは、ISシグナルよりわずかに高い場合があり、IRSシグナルは、ISシグナルから減じられるので、負の値をもたらすことは予期されないことではない。ここで、本発明者らは、本質的に低い分析物濃度を有する試料に対する異好性抗体の効果を評価することに特に興味があり、この場合、試料に対する異好性抗体の相対的な効果は、重要となり得る。実際の分析物濃度が範囲のより高い側である試料では、異好性抗体の相対的な効果は、一般にあまり顕著でない。トロポニンの追加の試験に対するさらなる詳細は、図17(A〜C)に示されており、これは、(a)免疫センサー、(b)付随した免疫参照センサー、及び(c)免疫参照センサーシグナルから減じられる免疫センサーシグナルにおける、異好性抗体を有する様々なトロポニン試料についての用量応答プロットを与える。図17の詳細な説明は、以下の例5に含まれている。
【0066】
図12は、マウスIgMを取り込んだ後の、異好性抗体活性を含む試料についての電気化学的BNP免疫センサー応答の変化を示す。実線は、IgMで処理する前(薄い実線)及び後(濃い実線)の、抗BNP抗体を担持するBNPについての免疫センサーにおける電流応答を示す。点線は、IgMで処理する前(薄い点線)及び後(濃い点線)の、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を担持するHSAについての、免疫センサーにおける電流応答を示す。矢印は、IgM添加後の応答の変化を示す。
【0067】
試料2(図10及び12)は、通常の名目上健康な個体の集団において生じた。これは、実際に、低いBNP濃度を有する。検査カートリッジ(i−STAT脳型ナトリウム利尿ペプチド、BNP)は、BNPについての免疫センサー(実線、図12)、及び抗BNPコンジュゲート試薬のNSBの程度を評価するのに使用された免疫参照センサーを含んでいた。上記に示したように、NSBは、洗浄ステップの不十分さのため、又は干渉(単数又は複数)の存在のために発生する場合がある。免疫参照センサーは、抗HSA(ヒト血清アルブミン)抗体標識微粒子のコーティングを有する電極を含んでおり、試料に曝されるとHSAでコーティングされた状態になる(HSAは、試料から自然に生じる)。図12を検分すると、BNP免疫センサー(実線)から生じるシグナルは、マウスIgMを添加すると減少する(濃い線)ことを示す。したがって、IgMの非存在下で、BNP濃度は、異好性干渉の存在のために、このセンサーにおいて過剰評価される。マウスIgMを添加する前に(薄い線)、免疫参照センサー(点線)は、マウスIgMを添加すると著しく減少する(濃い線)、かなりのシグナルを示すことも図12から明白である。したがって、IgMは、抗BNPコンジュゲート試薬(動物抗BNP抗体を含有する)、及び抗BNP又は抗HSA試薬(分析物及び免疫参照センサー表面上の)を架橋することができる干渉物質を軽減するように作用する。
【0068】
免疫参照センサー又はIgMの非存在下で、BNPセンサー(薄い実線、図12)から観察されるシグナルは、誤って上昇した結果に対応する。免疫参照センサー(薄い点線、図12)上の干渉で誘発されたシグナルは、i−STAT(商標)アッセイ形式において、(IgMで軽減する前)結果を抑制させた。したがって、IgMを含めることにより、正しい結果(0pg/mLのBNP)が報告されることが可能になる。見かけ上負の結果の発生は、上記のcTnIの例についてと同じタイプの説明に従う。
【0069】
上述したように、カートリッジ中に任意選択によりプリントされるIgMを含む新規の乾燥試薬に関して、試薬は、マウスIgG及びヤギIgG、並びにマウスIgMなどの干渉排除試薬を含有する水溶液として形成されることが好ましい。上記に論じたように、生体試料、例えば、血液を導入すると、試料は、アッセイの第1のステップで試薬と混合することが好ましい。試薬は、化学特性及び流体特性に関してアッセイ性能を最適化するために、無機塩及び界面活性剤も含むことができる。他の任意選択の添加剤には、十分な抗凝固を保証するためのヘパリン、及びプリント後の試薬の位置を視覚化するための色素が含まれる。微生物の増殖を阻害するためのアジ化ナトリウムなどの安定剤、及びタンパク質を安定化するためのラクチトールとジエチルアミノエチル−デキストランの混合物(Applied Enzyme Technologies Ltd.、Monmouth House、Mamhilad Park、Pontypool、NP4 0HZ UK)も任意選択により存在する。
【0070】
異好性抗体干渉を低減するために、マウスIgMは、例えば、試料が、好適な範囲が25〜40μm/mLである、約10μg/mL〜約100μg/mLのIgMの濃度にされる量で組み込むことができる。液体試薬は、1重量%の固体〜30重量%の固体の範囲の濃度で調製されることが好ましく、好適な濃度は5〜7重量%の固体の範囲である。デバイス中に堆積させたら、堆積した試薬は、例えば、温空気のストリームの中で30〜60分間乾燥させることができる。一実施形態では、試薬は、自動化プリント機器を使用してデバイスの試料入口内にプリントされ、乾燥されて、IgM含有試薬コーティング層を形成する。
【0071】
好適な実施形態では、心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて実施される場合、ベースプリントカクテルは、1リットル(L)のバッチについて以下のように調製される。タンパク質安定化溶液(PSS、AET Ltd.、50%の固体、100.0g)が、塩化ナトリウム(8.00g)及びアジ化ナトリウム(0.500g)の水溶液200〜250mLに添加され、得られた溶液は、1L容のフラスコに移される。マウスIgGの溶液は、マウスIgG(0.9g)を脱イオン水75mLに添加することによって調製され、溶解が完全になるまで15〜60分間撹拌される。ヤギIgGの同様に濃縮された溶液も同一の様式で調製され、両溶液は、1.2μMのフィルターを通して濾過される。マウスIgMは、供給者(例えば、Sigma−Aldrich)から液体として得られる。3つの免疫グロブリン(Ig)原液のそれぞれのタンパク質濃度は、280nmで、分光光度法で測定される。マウスIgG(0.75g)、ヤギIgG(0.75g)、及びマウスIgM(25mg)を提供するのに必要とされるこれらのIg溶液の質量が計算され、これらの量がプリント溶液(printing solution)に添加される。ジエチルアミノエチル−デキストラン(DEAE−デキストラン)の溶液は、DEAE−デキストラン(2.5g)を脱イオン水50〜100mLに添加することによって調製され、30分間撹拌される。このDEAE−デキストラン溶液は、プリント溶液に添加される。これに、ナトリウムヘパリン(10,000IU/mL、3.00mL)、Tween−20(3.00g)、及びローダミンの5%(重量/体積)の水溶液(200μL)が添加される。得られた溶液は、脱イオン水で1.000Lに希釈され、使用されるまでフリーザー又は冷蔵庫内で貯蔵される。
【0072】
カートリッジコンポーネント上に乾燥試薬コーティングを形成するために、これらの流体及び同様の流体をプリントするステップは、好ましくは、米国特許第5,554,339号に開示されているように、自動化され、コンポーネントを整列させるためのカメラ及びコンピューターシステムを含むマイクロディスペンシングシステムに基づく。この特許において、ウエハーチャックは、プラスチックカートリッジのベースをディスペンシングヘッドに送るためのトラックに取り替えられる。トラックは、所定の配向でベースをヘッドに差し出すことによって、一貫した位置での分注を保証する。
【0073】
免疫センサーの好適な実施形態のウエハーレベルの微細加工は、以下の通りである。ベース電極(図9の94)は、15μmの中心上に、7μmの金ディスクの正方形アレイを備える。アレイは、直径が約600μmの円形領域を覆い、Si/SiO2/TiW/Auを含む一連の層でできた基板上に、厚さ0.35μmのポリイミドの薄層を光パターン形成することによって実現される。7μmの微小電極のアレイは、電気活性種の高収集効率をもたらし、露出した金属の電気容量に関連する任意の電気化学的バックグラウンド電流からの寄与が低減される。金属上にPVA層を含めることにより、バックグラウンド電流の低減が著しく増強される。
【0074】
多孔質PVA層は、ウエハー上の微小電極の上に、PVAとスチルビゾニウム(stilbizonium)光活性架橋剤の水性混合物をスピンコーティングすることによって調製される。スピンコーティング混合物は、ウシ血清アルブミン(BSA)を任意選択により含む。次いでこれは、光パターン形成されることによって、アレイの上及び周囲の領域のみを覆い、好ましくは、約0.6μmの厚さを有する。
【0075】
示差測定法の一般的な概念は、電気化学分野及びセンシング分野において公知である。電気化学的免疫センシングシステムにおいて干渉シグナルを低減するための新規手段が、これから説明される。しかし、これは、電流測定電気化学的センサーの組について記載されるが、これは、電位差測定センサー、電界効果トランジスタセンサー、及び電気伝導度測定センサーを含めた、他の電気化学的センシングシステムにおいても等しく有用なものである。これは、光学センサー、例えば、エバネッセント波センサー、及び光導波路、並びに音波センシング及び温度測定センシングを含む他のタイプのセンシングなどにも適用可能である。理想的には、免疫センサー(IS)からのシグナルは、固定化抗体(Ab1)、分析物、及び標識されたシグナル抗体(Ab2)を含むサンドイッチの構造からもっぱら由来し、スキーム(1)で以下に示されるように、標識(例えば、酵素)は基質(S)と反応することによって、検出可能な生成物(P)を形成する。
表面−Ab1−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (1)
【0076】
スキーム(2)及び(3)で以下に示されるように、シグナル抗体(Ab2)の一部は、表面に非特異的に結合する場合があり、洗浄ステップの間に、免疫センサーの領域(最大約100ミクロン離れた)から完全に洗い流されない場合があり、表面−Abl−分析物−Ab2−酵素イムノアッセイサンドイッチ構造の機能ではない、検出される生成物全体の一部を生じ、それによって干渉シグナルを作り出すことが知られている。
表面−Ab2−酵素;酵素+S→P (2)
表面−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (3)
【0077】
上記に示したように、免疫参照センサー(IRS)として作用し、主免疫センサー上で起こるのと同じ(又は予想通りに関係した)程度のNSBを与える第2の免疫センサーを、カートリッジ内に任意選択により配置することができる。干渉は、この免疫参照センサーのシグナルを、主免疫センサーのシグナルから減じることによって低減することができ、すなわち、以下のスキーム(4)に示されるように、シグナルのNSB成分が除去され、アッセイの性能を改善する。この補正は、追加のオフセット値の減算又は加算を任意選択により含んでもよい。
補正されたシグナル=IS−IRS (4)
【0078】
免疫参照センサーは、分析物(例えば、cTnI)のための捕捉抗体が、高い濃度で試料(正常及び病理学的の両方)において自然に発生する血漿タンパク質に対する抗体によって差し替えられていることを除いて、主免疫センサーと、すべての重要な観点(例えば、寸法、多孔質スクリーニング層、ラテックス粒子コーティング、及び金属電極組成)において同じであることが好ましい。免疫センサー及び参照免疫センサーは、図9に示されるように、シリコンチップ上に、それぞれ隣接する構造94及び96として作製することができる。好適な実施形態が、トロポニンI及びBNPアッセイについて記載されているが、この構造は、例えば、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、プロカルシトニン、proBNP、ミオグロビンなどを含めた他の心臓マーカーアッセイ、並びに臨床診断において使用される他のサンドイッチアッセイ、例えば、PSA及びTSHにも有用である。
【0079】
血漿タンパク質に結合する適当な抗体の例には、ヒト血清アルブミン、フィブリノーゲン、及びIgG fc領域に対する抗体が含まれ、アルブミンが好適である。しかし、適切な抗体が入手可能である場合、約100ng/mL超の濃度で発生する任意の天然タンパク質又は血液成分を使用することができる。ただし、タンパク質は、分析物アッセイを実施するのに必要な時間と比較して急速にセンサーをコーティングするのに十分な量で存在するべきである。好適な実施形態では、タンパク質は、血液試料と接触して約100秒以内に、参照免疫センサー上の利用可能な抗体の50%超に結合するのに十分な濃度で血液試料中に存在する。一般に、第2の固定化抗体は、約1×10−7〜約1×10−15Mの親和定数を有する。例えば、血液試料中のアルブミンのモル濃度が約1×10−4Mと高いために、約1×10−10Mの親和定数を有するアルブミンに対する抗体が好適である。
【0080】
試料に由来する天然アルブミンによって覆われた表面を提供することにより、存在し得る他のタンパク質及び細胞物質の結合が著しく低減されることが見出された。この方法は、NSBを最小限にするために従来の遮断剤を使用する従来のイムノアッセイより一般に優れており、その理由は、これらの作用剤は、一般にドライダウンされ、使用するまで数カ月間又は数年間安定なままでなければならず、この時間の間にこれらは劣化する場合があり、望まれるより粘着性の表面を作り出し、古くなるとともに上昇するNSBをもたらすためである。対照的に、ここに記載される方法は、使用時に新鮮な表面を提供する。
【0081】
NSBの効果を低減するのに示差測定法を実施するための、参照−免疫センサーを伴った、心臓トロポニンI(cTnI)についての免疫センサーが次に説明されている。抗cTnI及び抗HSAでコーティングされた、カルボキシレートで修飾されたラテックス微粒子(Bangs Laboratories Inc.又はSeradyn Microparticles Inc.によって供給された)はともに、同じ方法によって調製される。粒子は、遠心分離によって最初に緩衝液交換され、その後抗体が添加され、これは、粒子上に受動的に吸着させられる。次いで粒子上のカルボキシル基は、pH6.2のMES緩衝液中で、EDACで活性化されることによって、抗体にアミド結合を形成する。いずれのビーズ凝集物も遠心分離によって除去され、完成したビーズは凍結して貯蔵される。
【0082】
抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体について、ラテックスビーズを飽和被覆すると、ビーズ質量が約7%増加することが判明した。コーティングされたビーズは、抗HSA 7mg及びビーズ100mgを含む混合物から、共有結合を使用して調製された。この配合物を使用して、脱イオン水中に約1%の固体を含む約0.4nLの液滴が、光パターン形成された多孔質ポリビニルアルコール選択透過性層カバーセンサー96上に微量分注され(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,554,339号の方法及び装置を使用して)、乾燥させられた。乾燥した粒子は多孔質層に接着し、血液試料又は洗浄流体中にこれらが溶解するのを実質的に防止した。
【0083】
トロポニン抗体について、ラテックスビーズ表面を飽和被覆すると、ビーズの質量が約10%増加した。したがって、抗TnI 10mgをカップリング試薬とともにビーズ100mgに添加することによって、飽和被覆が実現された。次いでこれらのビーズは、センサー94上に微量分注された。
【0084】
別の実施形態では、免疫センサー94は、血漿タンパク質抗体、例えば、抗HSA、及び分析物抗体、例えば、抗cTnIの両方を有するビーズでコーティングされる。ビーズ100mg当たり抗HSA約2mg以下で作製され、次いで抗cTnIで飽和コーティングされたラテックスビーズは、免疫センサーにおいて優れたNSB特性を示した。利用可能な分析物(抗原)を捕捉するのに、ビーズ上に十分な抗cTnIが存在するので、トロポニンアッセイの勾配(シグナル対分析物濃度)は、実質的に影響されないことが見出された。様々な抗体についてのビーズの飽和濃度、及び標的分析物に対する抗体のみを含むビーズを有する免疫センサーの勾配を求めることによって、抗体の組合せの適切な比を、所与の分析物及び血漿タンパク質の両方に対する抗体を有するビーズについて求めることができる。
【0085】
参照免疫センサーを有する免疫センサーの重要な態様は、血漿タンパク質、好ましくはHSA/抗HSAの組合せの層によって作り出される表面の「ヒト化」である。これは、ビーズの、抗体−酵素コンジュゲートのNSBへの傾向を少なくすると思われる。これはまた、ビーズばらつきを低減するように思われる。理論によって束縛されることなく、センサーが試料によって覆われるにつれて、抗HSA表面のために、これらは天然アルブミンで急速にコーティングされると思われる。これは、製造中にドライダウンされ、一般に長い期間貯蔵された後に再水和される従来の遮断物質と比較して優れた結果を与える。センサー表面を「ヒト化する」ことの別の利点は、これが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)及び他の異好性抗体の干渉に対する耐性の追加の機序をもたらすことである。HAMAのイムノアッセイに対する効果は周知である。
【0086】
本発明のデバイス及び方法において使用することができる免疫参照センサーの別の用途は、分析サイクルの間に得られる洗浄効率をモニターすることである。上述したように、バックグラウンドノイズの1つの源は、依然として溶液中にある、又はセンサー上に非特異的に吸収され、洗浄ステップによって除去されない少量の酵素コンジュゲートである。本発明のこの態様は、例2に述べられているように、空気セグメントを導入することによって、小体積の洗浄流体を使用して、効率的な洗浄ステップを実施することに関する。
【0087】
電流測定の電気化学的システムである好適な実施形態を稼動する際、ALPの活性から生じる、免疫センサー94及び免疫参照センサー96におけるp−アミノフェノールの酸化に関連する電流が、分析器によって記録される。免疫センサー及び免疫参照センサーにおける電位は、銀−塩化銀参照電極に対して同じ値に保たれる。干渉の効果を除去するために、分析器は、上記式(4)に従って、免疫センサーのシグナルから免疫参照センサーのシグナルを減じる。2つのセンサーの間に特徴的な一定のオフセットが存在する場合、これも減じられる。免疫参照センサーが、免疫センサーとすべて同じ非特異的特性を有することは必要でなく、これは、アッセイの洗浄部分及びNSB部分の両方において一貫して比例しているべきであるだけであることが認識されるであろう。分析器に組み込まれたアルゴリズムは、2つのセンサー間の任意の他の本質的に一定の差異を捕らえることができる。
【0088】
免疫センサー単独ではなく、免疫センサーと免疫参照センサーの示差的組合せの使用は、アッセイに以下の改善をもたらす。好適な実施形態では、カートリッジの設計により、約10μLの血液試料中に溶解した約40〜50億の酵素コンジュゲート分子を生じる乾燥試薬が提供される。結合ステップ及び洗浄ステップの最後で、センサーにおける酵素分子の数は、約70,000である。好適な実施形態を用いた実験では、非特異的に結合したバックグラウンドとして、免疫センサー及び参照免疫センサー上に、平均で約200,000(±約150,000)の酵素分子が存在した。免疫参照センサーを用いた示差測定法を使用して、不確定度の約65%が除去され、アッセイの性能を著しく改善した。他の実施形態は、他の程度の改善を有することができるが、アッセイ性能の全体的な改善のための根本的なことが残っている。
【0089】
任意選択の免疫参照センサーの追加の用途は、不適切に抗凝固性の試料などの異常な試料状態を検出することであり、これは、導管全体にわたって物質を堆積させ、免疫センサー及び免疫参照センサーの両方で、測定される電流を増大させる。この作用は、非特異的に吸着された酵素、及び測定ステップの間に、センサー上の洗浄流体の薄層中に残っている酵素の両方に関連する。
【0090】
任意選択の免疫参照センサーの別の用途は、洗浄効率についてシグナルを補正することである。ある特定の実施形態では、免疫センサーにおけるシグナルのレベルは、洗浄の程度に依存する。例えば、より多くの流体/空気セグメントの移行を用いたより長い洗浄は、特異的に結合したコンジュゲートの一部が洗い流されるために、より低いシグナルレベルを与える場合がある。これは、相対的に小さい作用、例えば、5%未満である場合があるが、補正は、アッセイの全体的な性能を改善することができる。補正は、センサーにおける相対的なシグナルに基づいて、又は空気セグメント/流体の移行を検出し、その数を計数するためのセンサーとして作用する、センサーに隣接する導管内に配置された伝導率センサーとともに実現することができる。これは、分析器に組み込まれたアルゴリズム補正手段のためのインプットを提供する。
【0091】
内因性タンパク質、例えば、HSAを用いた参照免疫センサーの別の実施形態では、外因性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する抗体でコーティングされた免疫参照センサーを有することによって同じ目的を実現することが可能である。この場合、センサーに接触させる前に、追加の試薬として提供される、試料中のBSAの一部を溶解させるステップが必要である。この溶解ステップは、カートリッジの試料保持チャンバー内、又は外部収集デバイス、例えば、BSAでコーティングされたシリンジ内で、乾燥試薬としてBSAを用いて行うことができる。この手法は、ある特定の利点を提供し、例えば、表面電荷、特異的な表面基、グリコシル化の程度などについてタンパク質を選択することができる。これらの特性は、内因性タンパク質の利用可能な選択肢中に必ずしも存在しなくてもよい。
【0092】
塩に加えて、他の試薬もイムノアッセイにおける全血精度(whole−blood precision)を改善することができる。これらの試薬は、迅速な溶解を促進するように血液試料に差し出されるべきである。血液保持チャンバー(又は別の導管)の壁上にコーティングされる、セルロース、ポリビニルアルコール、及びゼラチン(又はこれらの混合物)を含めた支持基質は、例えば、15秒未満以内に90%超完了する迅速な溶解を促進する。
【0093】
IgM又はその断片を含めることに加えて、他の任意選択の添加剤を、カートリッジ内に含め、又はアッセイとともに使用することができる。試料が、ヘパリン化された管内に収集されなかった、又はヘパリン化された管内で適切に混合されなかった場合に、性能を改善するために抗凝血性ヘパリンを添加することができる。新鮮なヘパリン化されていない血液が、カートリッジのアッセイサイクルの間、一般に2〜20分の範囲内で、凝血しないままであるように、十分なヘパリンが添加される。イムノアッセイの分野で周知の異好性抗体問題に対処するためにヤギIgG及びマウスIgGを添加することができる。Proclin、DEAEデキストラン、Tris緩衝液、及びラクチトールを、試薬安定剤として添加することができる。Tween 20を添加することによって、タンパク質が、カートリッジに好適な物質であるプラスチックに結合するのを低減することができる。これはまた、試薬がプラスチック表面をより均等にコーティングするのを可能にし、糖がガラスのままであるように、ラクチトールなどの糖の結晶化を最小限にする不純物として作用する。アジ化ナトリウムを添加することによって、細菌増殖を阻害することができる。
【0094】
本発明のカートリッジは、試料及び第2の流体が、アッセイシーケンスの間の異なる時間にセンサーアレイに接触することができるという利点を有する。試料及び第2の流体はまた、それぞれの導管内に乾燥コーティングとして最初に存在する他の試薬又は化合物を用いて独立して改質することができる。カートリッジ内の液体の制御された動きはさらに、試料又は流体が導管の新しい領域に移されるときはいつでも、1つを超える物質が各液体中に改質されるのを可能にする。このようにして、各流体への複数の改質のための対応がなされ、実施することができる自動化されたアッセイの複雑性を大いに拡張し、したがって、本発明の有用性を増強する。
【0095】
使い捨てカートリッジでは、含まれる液体の量は、費用及びサイズを最小限にするために、少なく維持されることが好ましい。したがって、本発明では、導管内のセグメントは、少なくとも1回すすがれるセンサーアレイ上のセグメント又は他の領域の空気−液体界面を通過させることによって、導管の掃除及びすすぎを補助するのに使用することもできる。より多い量の流体による連続的なすすぎと比較して、より少ない流体を使用するより効率的なすすぎが本方法によって実現されることが見出された。
【0096】
導管内の制約は、本発明におけるいくつかの目的を果たす。試料保持チャンバーと第1の導管の間に位置したキャピラリーストップは、十分な圧力がかけられることによって、キャピラリーストップの抵抗を克服するまで、保持チャンバー内の試料が移動するのを防止することによって、保持チャンバー内で試料計量を促進するのに使用される。第2の導管内の制約は、流体が狭窄部に到達するとき、廃棄物チャンバーに向かう代替経路に沿って洗浄流体をそらすのに使用される。ガスケット中の小さい穴が、疎水性コーティングと一緒に提供されることによって、十分な圧力がかけられるまで、第1の導管から第2の導管までの流れを防止する。本発明の導管内及び導管同士間の液体の流れを制御する機能は、本明細書で一括してバルブと呼ばれる。
【0097】
したがって、本発明の一実施形態は、分析物センサー又は分析物センサーのアレイを含む第1の導管に試料保持チャンバーが接続された使い捨てカートリッジを提供する。流体をある程度含む第2の導管は、第1の導管に接続され、第2の導管内の流体中に空気セグメントを導入することによって、これを区分することができる。ポンプ手段が第1の導管内の試料を移動させるのに提供され、これは、流体を第2の導管から第1の導管へと移動させる。したがって、1つ又は複数のセンサーは、試料に最初に接触し、次いで第2の流体に接触することができる。
【0098】
別の実施形態では、カートリッジは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に位置した閉鎖可能な(closeable)バルブを含む。この実施形態は、第1の導管に接続された唯一のポンプ手段を使用して、第2の導管から第1の導管への流体の移動を可能にする。この実施形態はさらに、本発明のカートリッジの導管を効率的に洗浄することを可能にし、これは、小さい使い捨てカートリッジの重要な機能である。稼動中、試料は移動されてセンサーに接触し、次いで閉鎖可能なバルブを通じて廃棄物チャンバーへと移動される。濡れると、閉鎖可能なバルブは、廃棄物チャンバーへの開口部を密封し、気密シールをもたらし、これは、第1の導管に接続されたポンプ手段のみを使用して、第2の導管内の流体が引き込まれてセンサーに接触するのを可能にする。この実施形態では、閉鎖可能なバルブは、流体がこのようにして移動するのを可能にし、廃棄物チャンバーから第1の導管に空気が入るのを防止する。
【0099】
別の実施形態では、閉鎖可能なバルブ、及び導管中にセグメントを導入するための手段の両方が提供される。この実施形態は、多くの利点、その中でも、センサー又はセンサーのアレイ上で区分された流体を往復運動させる能力を有する。したがって、第1のセグメント又は一連のセグメントがセンサーをすすぐのに使用され、次いで新鮮なセグメントが、測定を行うためにこれを差し替える。1つのポンプ手段(第1の導管に接続された)だけが必要とされる。
【0100】
別の実施形態では、分析物測定は、分析物センサーをコーティングする液体の薄膜中で実施される。そのような薄膜判定は、電流測定で実施されることが好ましい。このカートリッジは、試料がバルブを通じて追い出されるとき密封される閉鎖バルブ、及び導管内の換気口であって、少なくとも1つの空気セグメントが測定流体中に引き続いて導入されることを可能にし、それによって、試料がセンサーからすすがれる効率を増大させ、さらに、測定前にセンサーから実質的にすべての液体を除去することを可能にし、なおさらに、精度を改善し、再現性を内部チェックするために、センサー全体に新鮮な液体のセグメントが運ばれるのを可能にすることによって、連続した、繰り返しの測定を可能にする換気口の両方を有することにおいて、前述の実施形態と異なる。
【0101】
低濃度の免疫活性分析物を検出するための分析スキームは、上記に論じたように、酵素標識抗体/分析物/表面結合抗体「サンドイッチ」複合体の形成に依拠する。試料中の分析物の濃度は、酵素の比例した表面濃度に変換される。酵素は、基質を検出可能な生成物に変換することによって、分析物の化学的なシグナルを増幅することができる。例えば、アルカリホスファターゼが酵素である場合、1個の酵素分子は、1分当たり約9000の検出可能な分子を生成することができ、電気活性種がアルカリホスファターゼの代わりに抗体に結合されるスキームと比較して、分析物の検出性が数桁改善される。
【0102】
免疫センサーの実施形態では、センサーを最初に試料と、次いで、センサーからの応答を記録する前に洗浄流体と接触させるのが有利である。特定の実施形態では、試料は、試料内の対象とする分析物に結合する抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)で改質され、その後、改質された試料はセンサーに接触する。試料中の結合反応により、分析物/抗体−酵素複合体が生成される。センサーは、電極表面付近に付着される分析物に対する固定化抗体を含む。センサーに接触すると、分析物/抗体−酵素複合体は、電極表面付近で固体化抗体に結合する。この時点で、可能な限り多くの非結合抗体−酵素コンジュゲートを電極の近傍から除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルを最小にすることが有利である。抗体−酵素複合体の酵素は、有利には、流体中に供給される基質を変換することによって、電気化学的に活性な種を生成することができる。この活性種は電極付近で生成され、適当な電位が印加されるとき、電極での酸化還元反応から電流をもたらす(電流測定動作)。或いは、電気活性種がイオンである場合、これは、電位差測定で測定することができる。電流測定では、電位は、測定の間固定するか、又は所定の波形にしたがって変更することができる。例えば、サイクリックボルタンメトリーの周知技法において使用されるように、限度間で電位をスイープするのに三角波を使用することができる。或いは、矩形波などのデジタル技法を使用することによって、電極に隣接する電気活性種の検出の感度を改善することができる。電流又は電圧測定から、試料中の分析物の量又は存在が計算される。これら及び他の分析的電気化学的方法は、当技術分野で周知である。
【0103】
カートリッジが免疫センサーを含む実施形態では、免疫センサーは、有利には、非反応性金属、例えば、金、白金、又はイリジウムなどのベースセンサー、及び微粒子、例えば、ラテックス粒子に付着された生理活性層を重ね合わされた多孔質選択透過性層から微細加工される。微粒子は、電極表面を覆う多孔質層上に分配され、接着した、多孔質生理活性層を形成する。生理活性層は、対象とする分析物に特異的に結合する特性、又は分析物が存在するとき、検出可能な変化を現す特性を有し、分析物に対する固定化抗体であることが最も好ましい。
【0104】
図面を参照すると、本発明のカートリッジは、カバー(図1及び2)、ベース(図4)、及びベースとカバーの間に配置された薄膜接着性ガスケット(図3)を備える。次に図1を参照すると、カバー1は、剛性の物質、好ましくはプラスチックでできており、ひびが入ることなく、可動性のヒンジ領域5、9、10で繰り返し変形することができる。カバーは、可動性ヒンジ9によってカバーの本体に取り付けられた蓋2を備える。稼動中、試料を試料保持チャンバー34内に導入した後、蓋は、試料流入ポート4の入口上に固定され、試料の漏れを防止することができ、蓋は、フック3によって所定の位置に保持される。カバーは、2つのパドル6、7をさらに備え、これらは、カバーの本体に対して移動することができ、可動性のヒンジ領域5、10によって本体に取り付けられている。稼動中、ポンプ手段によって操作されるとき、パドル6は、薄膜ガスケット21によって覆われた、空洞43を備える空気ブラダー(air bladder)に力をかけることによって、カートリッジの導管内の流体を移動させる。第2のポンプ手段によって操作されるとき、パドル7は、ガスケット21に力をかけ、これは、その中に切られたスリット22のために変形することができる。カートリッジは、読取装置内に挿入するように適応されており、したがって、この目的のために複数の機械的及び電気的接続を有する。カートリッジを手動で操作することが可能であることも明らかであるはずである。したがって、読取装置内にカートリッジを挿入すると、ガスケットは、空洞42内に位置した、分析/洗浄液(「流体」)約130μLで満たされた流体の入ったホイルパック上に圧力を伝達し、スパイク38上でパッケージを破裂させ、短い、横断する導管を介してセンサーの導管に接続された導管39内に流体を排出する。分析流体は、最初に分析導管の前部を満たし、キャピラリーストップとして作用するテープガスケット中の小さい開口部上に流体を押しつける。カートリッジに施される分析器の機構の他の動作は、分析導管内の制御された位置で、1つ又は複数のセグメントを分析流体中に投入するのに使用される。これらのセグメントは、最少の流体を用いてセンサー表面及び周囲の導管の洗浄を補助するのに使用される。
【0105】
カバーは、薄い柔軟膜8によって覆われた穴をさらに備える。稼動中、膜にかけられる圧力は、ガスケット中の小さい穴28を通して、導管20内に1つ又は複数の空気セグメントを排出する。
【0106】
図2を参照すると、ベースの下方の表面は、第2の導管11、及び第1の導管15をさらに備える。第2の導管11は狭窄部12を含み、これは、流体の流れに抵抗をもたらすことによって流量を制御する。任意選択のコーティング13、14は、疎水性表面を与え、これらは、ガスケットの穴31、32と一緒に、第2及び第1の導管11、15の間の流量を制御する。ベース内の陥凹17は、導管34内の空気をガスケット中の穴27を通して導管34に送るための経路を提供する。
【0107】
図3を参照すると、薄膜ガスケット21は、ベース及びカバー内の導管同士間の流体の移動を促進し、必要な場合、圧力下でガスケットを変形させるための様々な穴及びスリットを備える。したがって、穴24は、流体が導管11から廃棄物チャンバー44内に流れるのを可能にし、穴25は、導管34と15の間にキャピラリーストップを備え、穴26は、陥凹18と導管40の間で空気が流れるのを可能にし、穴27は、陥凹17と導管34の間に空気の移動をもたらし、穴28は、流体が導管19から、任意選択の閉鎖可能バルブ41を介して廃棄物チャンバー44に流れるのを可能にする。穴30及び33は、それぞれカッタウェイ35及び37内に収容された複数の電極が、導管15内で流体に接触するのを可能にする。特定の実施形態では、カッタウェイ37は、接地電極、及び/又は対参照電極を収容し、カッタウェイ35は、少なくとも1つの分析物センサー、及び任意選択により電気伝導度測定センサーを収容する。図3において、テープ21は、機器が、バーブ38上のエレメント42内のカリブラントポーチ(calibrant pouch)を破裂させるために下向きの力をかけるとき、3つの切れ目22によって囲まれたテープが変形するのを可能にするための22におけるスリットである。このテープはまた、23において切れ目であり、これは、機器が下向きの力を与えるとき、テープがエレメント43内に下向きに曲がるのを可能にし、チャンバー43から空気を排出し、導管15を通してセンサーに試料流体を移動させる。図3中のエレメント29は、テープ内の開口部として作用し、カバー図2内の領域を、ベース図4と接続している。
【0108】
図4を参照すると、導管34は、組み立てられたカートリッジ内で、試料流入ポート4を第1の導管11に接続する試料保持チャンバーである。カッタウェイ35は、任意選択の1つ又は複数の電気伝導度測定センサーと一緒に、1つ若しくは複数のセンサー、又は分析物応答性表面を収容する。カッタウェイ37は、電気化学的センサーのための戻り電流経路として必要な場合、接地電極を収容し、任意選択の電気伝導度測定センサーを収容することもできる。カッタウェイ36は、ガスケットの穴31と32の間の流体経路を提供し、その結果流体は、第1と第2の導管の間を通過することができる。陥凹42は、読取装置内に挿入された後にパドル7上にかけられる圧力のために、スパイク38によって穴を開けられる組み立てられたカートリッジ内に、流体を含むパッケージ、例えば、破裂可能なポーチを収容する。穴を開けられたパッケージからの流体は、39で第2の導管内に流れる。空気ブラダーは陥凹43を備え、これは、ガスケット21によってその上面で密封される。空気ブラダーは、ポンプ手段の一実施形態であり、パドル6にかけられる圧力によって作動し、これは、導管40内の空気を移動させ、それによって、試料を試料チャンバー34から第1の導管15内に移動させる。
【0109】
空気が、ブラダーから試料保持チャンバー(ガスケットの穴27)に入る位置、及びキャピラリーストップ25は、試料保持チャンバーの所定の体積を一緒に画定する。パドル6が押し下げられるとき、この体積に対応する量の試料が第1の導管内に移動する。したがって、この配置は、計量された量の未計量試料をカートリッジの導管内に送るための計量手段の1つの可能な実施形態である。
【0110】
本カートリッジでは、試料セグメントを計量するための手段は、ベースのプラスチック部分に提供される。セグメントのサイズは、ベース内のコンパートメントのサイズ、並びにキャピラリーストップ及びテープガスケット中の空気パイプ穴の位置によって制御される。この体積は、2〜200μLに容易に変更することができる。試料サイズのこの範囲の拡大は、本発明の脈絡の範囲内で可能である。
【0111】
流体は、試料がセンサー導管19に差し出される前に、試薬(例えば、粒子、可溶性分子、又はIgM若しくはその断片)を改質するのに使用することができる分析前用導管11を通して、試料中に押し出される。或いは、改質試薬は、部分16を越えて部分15内に位置することができる。分析前用導管を通して試料を押し出すことはまた、ダイヤフラムポンプパドル7に張力を導入する機能を果たし、これは、流体移動の始動に対するその応答性を改善する。
【0112】
いくつかのアッセイでは、分析物の定量化が要求される場合、計量は有利である。カートリッジの外表面の汚染を防止するために、導管から排出される試料及び/又は流体のための廃棄物チャンバー44が提供される。廃棄物チャンバーを外部の大気に接続する排出口45も提供される。カートリッジの1つの望ましい特徴は、試料が装填されると、オペレーター又は試料に接触する他のものを伴わずに、分析を完了し、カートリッジを廃棄することができることである。
【0113】
次に図5を参照すると、カートリッジ及びコンポーネントの特徴の概略図が提供されており、51〜57は、試料又は流体を改質するための乾燥試薬で任意選択によりコーティングすることができる、導管及び試料チャンバーの一部である。試料又は流体は、乾燥試薬の上を少なくとも1回通過することによって、乾燥試薬を溶解させる。試料を改質するのに使用される試薬は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる。抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)、IgM及び/又はその断片、IgG及び/又はその断片、並びにアッセイ化合物の中で特異的又は非特異的結合反応を防止する他の遮断剤。可溶性でないが、カートリッジの内表面にアッセイ成分が非特異的に吸着するのを防止するのに役立つ表面コーティングも提供することができる。
【0114】
特定の実施形態では、閉鎖可能なバルブが、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に提供される。一実施形態では、このバルブ58は、不浸透性物質でコーティングされた、乾燥スポンジ物質を含む。稼動中、スポンジ物質が試料又は流体と接触すると、スポンジが膨潤することによって、空洞41(図4)を塞ぎ、それによって廃棄物チャンバー44への液体のさらなる流れが実質的に遮断される。さらに、濡れたバルブは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間の空気の流れも遮断し、これにより、試料チャンバーに接続された第1のポンプ手段が、第2の導管内の流体を移動させ、以下の様式で第2の導管から第1の導管へと流体を移動させることが可能になる。
【0115】
次に免疫センサーカートリッジの概略の構成を例示する図6を参照すると、3つのポンプ61〜63が提供されている。これらのポンプは、特定の実施形態の観点から記載されているが、ポンプ61〜63のそれぞれの機能を実施することができる任意のポンピングデバイスを、本発明の範囲内で使用することができることが容易に理解されるであろう。したがって、ポンプ1の61は、試料保持チャンバーから第1の導管内に試料を移動させることができるべきであり、ポンプ2の62は、第2の導管内の流体を移動させることができるべきであり、ポンプ3の63は、少なくとも1つのセグメントを第2の導管内に挿入することができるべきである。本願に想定される他のタイプのポンプとして、それだけに限らないが、圧力が空気袋にかけられる気圧力学手段と接触している空気袋、可動性ダイヤフラム、ピストンとシリンダー、電磁ポンプ、及び音波ポンプが挙げられる。ポンプ3の63を参照すると、用語「ポンプ」は、1つ又は複数のセグメントが第2の導管内に挿入されるすべてのデバイス及び方法、例えば、空気袋から空気を移動させるための気圧力学手段、溶解するとガスを生じる乾燥化学物質、又は電流源に作動可能に接続された複数の電気分解電極などを含む。特定の実施形態では、セグメントは、1つを超える空気ブラダー又はチャンバーを有することができる機械的なセグメント生成ダイヤフラムを使用して生成される。示したように、ウェル8は、1つの開口部を有し、これは、内側のダイヤフラムポンプとセグメントが注入される、流体が満たされた導管20を接続する。ダイヤフラムは、複数のセグメントを生成するために区分することができ、それぞれのセグメントは、流体で満たされた導管内の特定の位置に注入される。図6において、エレメント64は、免疫センサーが、捕捉反応を実施することによって、固定化抗体、分析物、及びシグナル抗体を含むサンドイッチを形成する領域を示す。
【0116】
代替の実施形態では、セグメントは、受動的な機能を使用して注入される。カートリッジのベース内のウェルは、テープガスケットによって密封される。ウェルを覆うテープガスケットは、いずれかの端部に2つの小さい穴を有する。一方の穴は開いているが、他方は、流体と接触すると湿るフィルター物質で覆われている。このウェルは、目の粗い親水性物質、例えば、セルロース繊維フィルター、紙フィルター、又はガラス繊維フィルターなどで満たされている。この親水性の物質は、キャピラリー作用を介してベースのウェル内に液体を引き込み、先にウェル内にあった空気を移動させる。空気は、テープガスケット中の開口部を通じて排出され、体積が、ウェルの体積及び目の粗い親水性物質の空隙体積によって決定されるセグメントを作り出す。ベース内のウェルへの入口の一方を覆うのに使用されるフィルターは、流体がウェルを満たす速度を計測し、それによってセグメントが、カバー内の導管中に注入される速度を制御するように選択することができる。この受動的な機能は、任意の数の制御されたセグメントが、流体経路内の特定の位置に注入されることを可能にし、最小の空間で済む。
【0117】
本開示に基づくと、本方法は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減又は排除する方法を提供し、この場合、試料、例えば、全血試料が最初に収集され、次いで、IgM又はその断片を含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質されることが明らかである。これは、少なくとも約20μg/mLの溶解した非ヒトIgM濃度を伴う試料を生じ、これは、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分である。このステップが完了すると、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することによって、分析物の濃度を求めることが可能である。
【0118】
乾燥試薬の溶解、及びサンドイッチ形成ステップは、同時に、又は段階的な様式で行うことができることに注意されたい。この方法は、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPである分析物を主に対象とするが、他のマーカー、例えば、β−HCG、TSH、D−二量体、及びPSAなどに使用することもできる。異好性抗体の大部分が検出ステップの前に隔離されることを保証するために、試料改質ステップは、約1分〜約30分の範囲内の選択された所定の期間のものであることが好ましい。
【0119】
この方法は、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備え、これらのエレメントの少なくとも1つの少なくとも一部が、乾燥試薬でコーティングされているカートリッジ内で実施されることが好ましい。乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及び様々な組合せを含むことができることに注意されたい。さらに、乾燥試薬は、分析物に対する酵素−標識抗体(シグナル抗体)も含むことができる。
【0120】
TnI及びBNPアッセイについて、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、少なくとも20μg/mL、例えば、少なくとも30μg/mL、少なくとも40μg/mL、又は少なくとも50μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)を与えることが好ましい。範囲の観点から、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20μg/mL〜約200μg/mL、好ましくは約20μg/mL〜約60μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)を与えることが好ましい。
【0121】
好適な実施形態では、例えば、TnI及びBNPアッセイでは、IgG又はその断片が、IgM又はIgM断片と組み合わせて使用される。したがって、例えば、乾燥試薬コーティングは、試料中に溶解することよって、約50μg/mL超、例えば、約100μg/mL超、約250μg/mL超、又は約500μg/mL超のIgG濃度又は同等のIgG断片濃度が得られるのに十分な量でIgG又はIgGの断片をさらに含むことができる。範囲の観点から、IgG又はその断片を用いた改質により、約50μg/mL〜約5000μg/mL、好ましくは約500μg/mL〜約1000μg/mLのIgG濃度又は同等のIgG断片濃度を生じることが好ましい。したがって、いくつかの好適な実施形態では、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20〜約200μg/mL、好ましくは約20μg/mL〜約60μg/mLのIgM濃度、及び約50〜約5000μg/mL、好ましくは約500μg/mL〜約1000μg/mLのIgG濃度が得られる。
【0122】
生体試料、例えば、全血が、IgG又はその断片及びIgM又はその断片の両方を用いて改質される実施形態では、IgM又はその断片及びIgG又はその断片は、0.004超、例えば、0.02超、0.05超、又は0.1超の重量比で添加されることが好ましい。範囲の観点から、IgM又はその断片とIgG又はその断片の重量比は、0.004〜4、例えば、0.02〜2、又は0.05〜0.15であることが好ましい。これらの重量比は、所望の改質化媒体、例えば、乾燥コーティング層に、並びに得られた改質された試料中に当てはまる。
【0123】
上記に示したように、個々のモノマーが、F(ab’)2領域に結合されたFc領域から形成され、その結果として2つのFab領域を含む五量体を含む全IgM分子の使用に加えて、又はその代わりに、IgMの断片を使用することも可能である。IgM断片化は、F(ab’)2断片、Fab断片、及び/又はFc断片のいくつかの組合せを作り出すために、ジスルフィド結合の還元(−S−S−から−SH HS−)、及び酵素のペプチン又はパパイン消化の組合せを使用して、様々に実現することができる。これらの断片は、別個に使用するためにクロマトグラフィーによって分離し、又は組合せで使用することができる。例えば、遮断部位がFc断片上にある場合、これは、全IgM分子の代わりに使用することができる。同じことが、Fab断片及びF(ab’)2断片にも当てはまる。この手法が使用される場合、本質的な断片モル濃度は、天然IgM五量体のモル濃度と同様、例えば、等価であることが望ましい。先に述べたように、本発明の好適な実施形態は、少なくとも約20μg/mLの濃度でIgMを使用する。IgM(五量体)の分子量は約900KDであるので、これは、約22.2nMのIgM濃度と等価である。IgM断片が使用される場合、実質的に同じレベルの遮断を得るために、Fc及びF(ab’)2において5倍のモル差、並びにFab断片において10倍のモル差となることが望ましい。
【0124】
実際のアッセイステップでは、固定化抗体とシグナル抗体の間でサンドイッチが形成されたら、試料媒質を引き続いて廃棄物チャンバーへと洗浄し、その後、酵素と反応して電気化学的検出可能な生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝すことが好適である。好適な形式は、電気化学的酵素結合免疫吸着アッセイである。
【0125】
好ましくは、デバイスは、異好性抗体による干渉が低減された、試料、例えば、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するものである。デバイスは、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを含む筐体であり、導管は、試料が、制御された様式で流入ポートから免疫センサーに進むのを可能にする。一態様では、筐体の少なくとも一部は、乾燥試薬でコーティングされており、この試薬は、非ヒトIgM及び/又はその断片、又は非ヒトIgG及び非ヒトIgM及び/若しくはこれらの断片の混合物を含むことができる。重要な特徴は、乾燥試薬が、少なくとも約20μg/mLのIgM濃度又は同等のIgM断片濃度を生じるように、試料中に溶解することができることである。これは一般に、試料中のいずれの異好性抗体も隔離するのに十分である。好適な実施形態では、デバイスは免疫参照センサーも備える。免疫センサーは、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPなどの分析物を検出するのを対象とすることが好ましい。このデバイスが稼動するシステムは、一般に、試料が、所定の期間、例えば、1〜30分間、試薬と接触したままになることを可能にする。デバイスは、例えば、1つの試料で満たされ、検査のために1回使用され、次いで廃棄される使い捨てカートリッジであることが好ましい。一般に、このデバイスは、試料を廃棄物チャンバーへと洗浄することができる洗浄流体、及び免疫センサーにおいて酵素サンドイッチと反応することによって、電気化学的検出に適した生成物を形成することができる基質を含む。
【0126】
より広くには、本発明は、任意の生体試料、例えば、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態を含む試料についての分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減することに関する。さらに、所与の非ヒトIgM濃度を得るのに試料を改質するための方法は、乾燥試薬の溶解に基づくもの、又はIgMを含有する溶液の添加によるものとすることができる。さらに、選択された分析物の濃度を求めるために、改質された試料に対してイムノアッセイを実施するステップは、電気化学的技法、例えば、電流測定及び電位差測定、並びにまた光学技法、例えば、吸光度、蛍光及び発光を含めた様々な技法に基づくことができる。
【0127】
本発明は、以下の非限定的な例を考慮して、より良好に理解されるであろう。
【0128】
(例1)
図7は、心臓機能のマーカーであるトロポニンI(TnI)の存在及び量を求めるための、本発明の特定の実施形態による電流測定イムノアッセイの原理を例示する。血液試料を、本発明のカートリッジの試料保持チャンバー内に導入し、試料保持チャンバー内にコーティングされた乾燥試薬の溶解によって改質した。乾燥試薬は、上述したようにIgM 77を含み、これは、試料中に溶解すると、試料中に含まれる場合のある相補性異好性抗体78に選択的に結合する。示していない他の実施形態では、IgMに由来する断片を使用することによって、試料中に含まれる異好性抗体を隔離することができる。示したように、乾燥試薬はIgG 79も含み、これも、試料中に溶解した後、相補性抗体78に選択的に結合する。他の実施形態では、IgGに由来する断片を使用することによって、試料中に含まれる異好性抗体を隔離することができる。
【0129】
さらに、ポリクローナル抗トロポニンI抗体(aTnI)71(シグナル抗体)に共有結合しているアルカリホスファターゼ酵素(AP)を含むコンジュゲート分子も、試料中に溶解させた。このコンジュゲートは、血液試料中でTnI、70に特異的に結合し、AP−aTnIコンジュゲートに結合したTnIから構成される複合体を生成する。捕捉ステップにおいて、この複合体は、免疫センサーに付着又は近接した捕捉aTnI抗体72(固定化抗体)に結合する。センサーチップは伝導率センサーを有し、これは、試料がセンサーチップに到達した時をモニターするのに使用される。流体の到達時間を使用することによって、カートリッジ内の漏れを検出することができる。すなわち、到達の遅延が漏れを知らせる。センサー導管内の試料セグメントの位置は、位置マーカーとして流体の縁部を使用して能動的に制御することができる。試料/空気界面が伝導率センサーを横切る際、正確なシグナルが生成され、これは、流体マーカーとして使用することができ、このマーカーから、制御された流体の往復運動を実施することができる。流体セグメントは、センサー上を、縁部から縁部まで優先的に往復されることによって、免疫センサー表面に試料全体を提示する。第2の試薬を、センサーチップを越えたところにあるセンサー導管内に導入することができ、これは、流体の往復の間に均一に分布された状態になる。
【0130】
センサーチップは、対象とする分析物のための、抗体でコーティングされた1つ又は複数の捕捉領域を含む。これらの捕捉領域は、ポリイミドの疎水性環、又は別のフォトリソグラフィーで作製された層によって画定される。何らかの形態での、例えば、ラテックス微小球に結合した抗体を含有する微小滴又はいくつかの微小滴(サイズが約5〜40ナノリットル)を、センサーの表面上、又はセンサー上の選択透過性層上に分注する。感光された(photodefined)環は、この水性液滴を含み、抗体がコーティングされた領域を数ミクロンの精度まで局在させる。捕捉領域は、0.03〜約2平方ミリメートルのサイズで作製することができる。このサイズの上限は、本実施形態における導管及びセンサーのサイズによって制限され、本発明の限界ではない。
【0131】
したがって、金電極74は、TnI/AP−aTnI複合体が結合する、共有結合した抗トロポニンI抗体を含むバイオ層73でコーティングされる。それによって、APは、試料中に最初に存在するTnIの量に比例して、電極付近に固定化される。特異的結合に加えて、酵素−抗体コンジュゲートは、センサーに非特異的に結合する場合がある。NSBは、センサーからのバックグラウンドシグナルをもたらし、これは、望ましくなく、最小限にされることが好ましい。上述したように、すすぎプロトコールにより、特に、センサーをすすぐために区分された流体を使用することにより、このバックグラウンドシグナルを最小限にするために効率的な手段が提供される。すすぎステップの後の第2のステップにおいて、例えば、アルカリホスファターゼにより加水分解されることによって、電気活性生成物76を生成する基質75がセンサーに提示される。特定の実施形態では、基質は、リン酸化フェロセン又はp−アミノフェノールを含む。電流測定電極は、直接基質ではなく、加水分解された基質の生成物を酸化又は還元するのに十分な、一定の電気化学的電位で保たれるか、又は電位が、適切な範囲で1回若しくは複数回掃引される。任意選択により、第2の電極を1つの層でコーティングすることができ、この層で、製造の間にTnI/AP−aTnIの複合体が作られることによって、測定のための参照センサー又は較正手段として作用する。
【0132】
本例では、センサーは、2つの電流測定電極を備え、これらは、4−アミノフェニルホスフェートと酵素標識アルカリホスファターゼの反応から酵素的に生成される4−アミノフェノールを検出するのに使用される。電極は、好ましくは、ポリイミドの感光された層でコーティングされた金表面から作製される。絶縁ポリイミド層中の規則正しく配置された開口部は、小さい金電極のグリッドを画定し、ここで4−アミノフェノールは、1分子当たり2電子の反応で酸化される。センサー電極は、バイオ層をさらに備える一方で、参照電極は、例えば、バイオ層を欠いた金電極から、又は銀電極、若しくは他の適当な物質から構築することができる。異なるバイオ層は、各電極に異なる分析物を検知する能力をもたらすことができる。
【0133】
p−アミノフェノール種などの基質は、基質と生成物のE(1/2)が実質的に異なるように選択することができる。好ましくは、基質のボルタンメトリー半波電位E(1/2)は、生成物のそれより実質的に高い(より正である)。条件が満たされれば、生成物は、基質の存在下で、選択的に電気化学的に測定することができる。
【0134】
電極のサイズ及び間隔は、感度及びバックグラウンドシグナルを決定することにおいて重要な役割を果たす。グリッドにおける重要なパラメータは、露出した金属の百分率及び活性電極同士間の間隔である。電極の位置は、抗体捕捉領域の真下であっても、制御された距離によって捕捉領域からずれていてもよい。電極の実際の電流測定シグナルは、抗体捕捉場所に対するセンサーの位置決め、及び分析の間の流体の動きに依存する。電極での電流が記録され、これは、センサー近傍における電気活性生成物の量に依存する。
【0135】
この実施例におけるアルカリホスファターゼ活性の検出は、4−アミノフェノール酸化電流の測定に依拠する。これは、Ag/AgCl接地チップに対して約+60mVの電位で実現される。使用される検出の正確な形態は、センサー構成に依存する。センサーの1つの型では、金微小電極のアレイが、抗体捕捉領域の真下に配置される。分析流体がこのセンサー上に引き寄せられるとき、捕捉場所上に位置した酵素が、酵素律速反応で、4−アミノフェニルホスフェートを4−アミノフェノールに変換する。4−アミノフェニルホスフェートの濃度は、過剰、例えば、Km値の10倍であるように選択される。分析溶液は、9.8のpHに緩衝された、ジエタノールアミン、1.0MのNaCl中0.1Mである。さらに、分析溶液は、0.5mMのMgCl2を含有し、これは、酵素のための補助因子である。或いは、炭酸塩緩衝液は、所望の特性を有する。
【0136】
別の電極の幾何学的配置の実施形態では、電極は、捕捉領域から数百ミクロン離して配置される。分析流体の新鮮なセグメントが、捕捉領域上に引き寄せられるとき、酵素生成物が、電極反応により無損失で形成する。しばらくして、溶液は、検出器電極上の捕捉領域から徐々に引き寄せられ、電流スパイクを生じ、これから酵素活性を求めることができる。
【0137】
アルカリホスファターゼ活性の高感度な検出における重要な考慮事項は、金センサーにおいて起こるバックグラウンドの酸化及び還元に関連する非4−アミノフェノール電流である。金センサーは、これらの電位で、塩基性緩衝液中でかなりの酸化電流を与える傾向がある。バックグラウンド電流は、緩衝液濃度、金電極の面積(露出面積)、表面前処理、及び使用される緩衝液の性質に大部分は依存する。ジエタノールアミンは、アルカリホスファターゼについての特に良好な活性化緩衝液である。モル濃度で、酵素速度は、炭酸塩などの非活性化緩衝液に対して約3倍増大する。
【0138】
代替の実施形態では、抗体又は他の分析物結合分子にコンジュゲートした酵素は、ウレアーゼであり、基質は尿素である。アンモニウム感受性電極を使用することによって、尿素の加水分解で生成されるアンモニウムイオンが、この実施形態では検出される。アンモニウム特異的電極は、当業者に周知である。適当な、微細加工されたアンモニウムイオン選択的電極は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,200,051号に開示されている。基質と反応してイオンを生じる他の酵素は、それとともに使用される他のイオンセンサーと同様に、当技術分野で公知である。例えば、アルカリホスファターゼ基質から生成されるリン酸は、リン酸イオン選択的な電極において検出することができる。
【0139】
次に図8を参照すると、微細加工された免疫センサーの実施形態の構成が例示されている。好ましくは、平面の非導電基板80が提供され、その上に、従来の手段又は当業者に公知の微細加工によって、導電層81が堆積される。導電物質は、金又は白金などの貴金属であることが好ましいが、イリジウムなどの他の非反応性金属も使用することができ、同様に、グラファイト、導電性ポリマー、又は他の物質の非金属電極も使用することができる。電気的な接続部82も提供される。バイオ層83は、電極の少なくとも一部に堆積される。本開示では、バイオ層は、対象とする分析物に結合することができ、又は測定可能な変化をもたらすことによって、そのような分析物の存在に応答することができる十分な量の分子84を表面上に含む多孔質層を意味する。任意選択により、米国特許第5,200,051号に記載されているように、電気化学的干渉物質をスクリーニングするために、電極とバイオ層の間に選択透過性スクリーニング層を介在させることができる。
【0140】
特定の実施形態では、バイオ層は、約0.001〜50ミクロンの範囲内の特定の直径のラテックスビーズから構築される。ビーズは、バイオ層の上記定義に一致する任意の適当な分子の共有結合によって修飾されている。タンパク質のリシン又はN末端アミン基の容易なカップリングのために、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を提供することを含めて、多くの結合方法が当技術分野で存在する。特定の実施形態では、生体分子は、イオノフォア、補助因子、ポリペプチド、タンパク質、糖ペプチド、酵素、免疫グロブリン、抗体、抗原、レクチン、神経化学受容体、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又は適当な混合物の中から選択される。最も特定の実施形態では、生体分子は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、トロポニンI、トロポニンT、トロポニンC、トロポニン複合体、クレアチンキナーゼ、クレアチンキナーゼサブユニットM、クレアチンキナーゼサブユニットB、ミオグロビン、ミオシン軽鎖、又はこれらの修飾断片の1つ又は複数に結合するように選択される抗体である。そのような修飾断片は、天然部分又は合成部分を用いた化学修飾を含めて、少なくとも1つのアミノ酸の酸化、還元、欠失、付加、又は修飾によって生成される。好ましくは、生体分子は、分析物に特異的に結合し、分析物リガンドに結合するための親和定数が約10−7〜10−15Mである。
【0141】
一実施形態では、適当な分子によって共有結合的に修飾された表面を有するビーズを含むバイオ層は、以下の方法によってセンサーに固定される。マイクロディスペンシング針が使用されることによって、修飾されたビーズの懸濁液の、好ましくは約20nLの小液滴がセンサー表面上に堆積される。液滴を乾燥させ、これにより表面上にビーズがコーティングされ、これは、使用中移動しにくい。
【0142】
バイオ層が電流測定センサーに対して固定された位置にある免疫センサーに加えて、本発明は、バイオ層が、可動性である粒子上にコーティングされる実施形態も想定する。カートリッジは、分析物と相互作用することができる可動性微粒子、例えば、捕捉ステップの後で電流測定電極に局在化し、それによって磁力が、測定用電極に粒子を集めるのに使用される磁性粒子を含むことができる。本発明における可動性微粒子の1つの利点は、試料又は流体中のその動きが結合反応を加速し、アッセイの捕捉ステップをより速くすることである。非磁性可動性微粒子を使用する実施形態については、電極でビーズを捕らえるのに多孔質フィルターが使用される。
【0143】
次に図9を参照すると、1つの基板上のいくつかの電極のためのマスク設計が例示されている。マスキング及びエッチング技法によって、独立した電極及びリードを堆積することができる。したがって、複数の免疫センサー、94及び96、並びに電気伝導度測定センサー、90及び92が、読取装置への電気的接続を行うための、そのそれぞれの接続パッド91、93、95、及び97と一緒に、低コストでコンパクトな範囲に提供される。原理上は、それぞれが異なる分析物に感受性であり、又は対照センサー若しくは参照免疫センサーとして作用するセンサーの非常に大きいアレイをこのようにしてアセンブルすることができる。
【0144】
具体的には、免疫センサーは以下のように作製される。シリコンウエハーを熱酸化することによって、約1ミクロンの絶縁酸化物層が形成される。チタン/タングステン層が、100〜1000オングストロームの間の好ましい厚さまで、酸化物層上にスパッタされ、その後、最も好ましくは800オングストロームの厚さである金の層がスパッタされる。次に、フォトレジストがウエハー上にスピニングされ、乾燥され、適切にベーキングされる。次いで、図9中に例示したものに対応するマスクなどのコンタクトマスクを使用して、表面が露光される。潜像が現像され、ウエハーが金エッチャントに曝される。パターン形成された金層が感光性ポリイミドでコーティングされ、適切にベーキングされ、コンタクトマスクを使用して露光され、現像され、O2プラズマ中で浄化され、好ましくは350℃で5時間イミド化される。抵抗性加熱素子として作用するために、ウエハーの裏面の任意選択のメタライゼーションを実施することができ、この場合、免疫センサーは、サーモスタットで調節された形式で使用されるべきである。次いで表面が、抗体でコーティングされた粒子でプリントされる。好ましくは体積が約20nLであり、脱イオン水中、1%の固体含量を含む液滴がセンサー領域上に堆積され、空気乾燥によって、定位置で乾燥される。任意選択により、抗体安定化試薬(SurModica Corp.又はAET Ltdによって供給された)が、センサー上にオーバーコートされる。
【0145】
粒子の乾燥は、基質を含有する試料又は流体中に溶解するのを防止する様式で、粒子を表面に接着させる。この方法は、センサーチップを大量に製造するのに適した、信頼でき、再現可能な固定化プロセスを提供する。
【0146】
(例2)
カートリッジの使用方法に関して、未計量の流体試料が、試料流入ポート4を通じて、カートリッジの試料保持チャンバー34中に導入される。キャピラリーストップ25は、この段階で試料が導管15へと通過するのを防止し、保持チャンバー34は、試料で満たされる。蓋2又はエレメント200は、カートリッジから試料が漏れるのを防止するために閉じられている。次いでカートリッジは、参照により本明細書に組み込まれている、Zelinの米国特許第5,821,399号に開示されているものなどの、読取装置内に挿入される。読取装置内にカートリッジを挿入することにより、42に位置した流体を含むパッケージに、このパッケージがスパイク38に対して押されたとき、穴を開ける機構が作動する。それによって流体は、第2の導管内に排出され、39、20、12及び11に順に到達する。12における狭窄部は、流体のさらなる移動を防止し、その理由は、流体が第2の導管部分11を介して廃棄物チャンバー44内に流れることによって、残留する静水圧が放散されるためである。第2のステップでは、ポンプ手段を稼動することにより、空気ブラダー43に圧力をかけ、導管40を通じ、カッタウェイ17及び18を通じて、導管34内に所定の位置27で空気を押し込む。キャピラリーストップ25及び位置27は、元の試料の計量された部分を区切る。試料が試料保持チャンバー34内にあるとき、試料は、チャンバーの内表面上の、IgM(及び/又はその断片)並びに他の物質を含む乾燥試薬コーティングで改質される。次いで試料の計量された部分は、空気ブラダー43内で生じる空気圧によって、キャピラリーストップを通じて排出される。試料は導管15内を通り、カッタウェイ35内に位置した1つ又は複数の分析物センサーに接触する。
【0147】
カットアウト35内に位置した免疫センサーを使用する実施形態では、試料は、センサーに到達する前に、例えば、酵素−抗体コンジュゲート(シグナル抗体)、及びIgM試薬又はその断片によって改質される。分析物がセンサーに効率的に結合するのを促進するために、分析物を含有する試料は、任意選択により、往復性の動きでセンサー上を繰り返して通される。好ましくは、約0.2と2Hzの間の往復振動数が使用され、最も好ましくは0.7Hzである。こうして、シグナル抗体に付随するシグナル酵素は、試料中に存在する分析物の量に比例して、電流測定電極表面のごく近くに運ばれる。
【0148】
分析物/酵素−抗体コンジュゲート複合体が免疫センサーに結合する機会が提供された後、試料は、空気ブラダー43にかけられるさらなる圧力によって排出され、試料は廃棄物チャンバー44に進む。次に洗浄ステップにより、非特異的に結合した酵素−コンジュゲートが、センサーチャンバーから除去される。第2の行為(conduct)における流体は、ポンプ手段43によって移動されてセンサーと接触する。分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーで検出されるまで、徐々に引き寄せられる。
【0149】
1つ又は複数の空気セグメントは、それだけに限らないが、(1)図14に示し、以下に記載されるような受動的な手段、(2)空気がフラップ又はバルブを通じて導管内に引き寄せられるポンプを使用する、導管内の圧力の一過性の低下を含めた能動的な手段、又は(3)導管内で流体と接触するとガスを遊離する、導管内に予め配置された化合物であって、カーボネート、ビカーボネートなどを挙げることができる化合物を溶解させることによるものを含めた、任意の適当な手段によって導管内に作製することができる。このセグメントは、試料が混入した流体を導管15から一掃することにおいて極めて有効である。センサー領域をすすぐ効率は、説明したように、1つ又は複数の空気セグメントを第2の導管中に導入することによって大いに増強される。空気セグメントの先頭縁部及び/又は後縁部は、センサー上を1回又は複数回通過することによって、試料から堆積する場合のある異質の物質をすすぎ、再懸濁する。異質の物質には、特異的に結合した分析物又は分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体以外の任意の物質が含まれる。しかし、すすぎが、それほど長引かず、又はセンサーからの、特異的に結合した分析物若しくは分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体の解離を促進するほど活発であることは、本発明の目的である。
【0150】
流体中に空気セグメントを導入することの第2の利点は、流体を区分することである。例えば、流体の第1のセグメントが、センサーをすすぐのに使用された後、次いで第2のセグメントは、2つのセグメントの混合を最小にして、センサー上に配置される。この機能は、非結合の抗体−酵素コンジュゲートをより効率的に除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルをさらに低減する。先端洗浄(front edge washing)の後、分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーにおいて検出されるまで徐々に引き寄せられる。このセグメントは、第1の分析流体試料と混合された、試料が混入した流体を一掃することにおいて極めて有効である。測定のために、流体の新しい部分がセンサー上に配置され、操作のモードに適切な場合、電流又は電位が時間の関数として記録される。
【0151】
(例3)
次に図15を参照すると、免疫センサーカートリッジの上面図が示されている。カートリッジ150は、好ましくはプラスチックで構築されたベース及び頂部部分を備える。2つの部分は、薄い接着性ガスケット又は薄い柔軟な膜によって接続されている。先の実施形態と同様に、組み立てられたカートリッジは、試料保持チャンバー151を備え、この中に、対象とする分析物を含有する試料が、試料入口167を介して導入される。試料の計量された部分は、カートリッジの2つの部分を接続するガスケット又は膜中に、0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって好ましくは形成されたキャピラリーストップ152と、試料ダイヤフラム156上を押しつけるパドルなどのポンプ手段の作用によって空気が導入される試料保持チャンバー内の所定箇所に位置した流入点155との合わせた作用によって、以前と同様に試料導管154(第1の導管)を介してセンサーチップ153に送達される。結合することが可能になるようにセンサーと接触した後、試料は、排出口157に移動され、この排出口はウィッキング材を含み、これは、試料を吸収し、それによって、液体又は空気のさらなる通過に対して排出口を閉じて密封する。ウィッキング材は、綿繊維物質、セルロース物質、又は孔を有する他の親水性物質であることが好ましい。この物質は、以下に記載される試料ダイヤフラム作動手段を引き続いて引っ込めることと釣り合った時間内でバルブが閉じ、その結果試料が、センサーチップの領域内に引き続いて引き戻されないほど十分に吸収性である(すなわち十分なウィッキング速度を有する)ことが、本願において重要である。
【0152】
示した特定の実施形態と同様に、一端で排出口159に、他端で、排出口157とセンサーチップ153の間に位置した試料導管のある箇所160の試料導管に接続された洗浄導管(第2の導管)158が提供される。読取装置内にカートリッジを挿入すると、流体は、導管158に導入される。好ましくは、流体は、ホイルポーチ(foil pouch)161内に最初に存在し、これは、作動手段によりポーチに圧力がかけられるとき、ピンによって穴を開けられる。ガスケット163中の小さい開口部を介して流体を導管154に接続する短い導管162も提供される。第2のキャピラリーストップは、流体がキャピラリーストップ160に到達するのを最初に防止し、その結果、流体は導管158内に保持される。
【0153】
排出口157が閉じられた後、ポンプが作動され、導管154内に圧力低下を作り出す。振動することによって断続的な空気のストリームをもたらす、ガスケット又は膜中にカットされた小さいフラップを好ましくは備える換気口164は、空気が第2の排出口165を介して導管158に入るための手段を提供する。第2の排出口165も、湿ったとき排出口を閉じることができるウィッキング材を好ましくは含み、これは、必要に応じて、試料ダイヤフラム156を引き続いてへこませることによって排出口165を閉じることを可能にする。試料ダイヤフラム156の作動と同時に、流体は、導管158からキャピラリーストップ160を通じて導管154に引き寄せられる。流体の流れが排出口164に入る空気によって妨害されるので、少なくとも1つの空気セグメント(セグメント又はセグメントのストリーム)が導入される。
【0154】
試料ダイヤフラム156がさらに引っ込むと、少なくとも1つの空気セグメントを含有する液体が引き戻され、センサーチップ153の感知表面を横切る。液体内に空気−液体の境界が存在することにより、残っている試料を除去するためのセンサーチップ表面のすすぎが増強される。好ましくは、試料ダイヤフラム156の運動は、分析物センサーに隣接するセンサーチップ内に収容された伝導率電極から受信されるシグナルと連動して制御される。このようにして、センサー上の液体の存在が検出され、別個のステップにおける流体の動きによって、複数の読み取りを実施することができる。
【0155】
流体の薄膜が、センサー、接地チップ165、及びセンサーと接地電極の間の導管154の壁の接触部分を覆うときのみ、分析物測定を実施することが、この実施形態では有利である。適当な膜は、センサーの隣に位置した電気伝導度測定センサーが、バルクの流体は、導管154のその領域内にもはや存在しないことを示すまで、試料ダイヤフラム156を操作することにより、流体を引き抜くことによって得られる。測定は、非常に低い(nA)電流で実施することができ、(バルクの流体と比較して)接地チップとセンサーチップの間の薄膜の抵抗を増大させることによって生じる電位降下は、重要でないことが判明した。
【0156】
接地チップ165は、銀/塩化銀であることが好ましい。二酸化ケイ素の表面などのより親水性の領域が点在した銀/塩化銀の小さい領域として接地チップをパターン形成するのに、相対的に疎水性の塩化銀表面上に容易に形成する空気セグメントを回避することが有利である。したがって、好適な接地電極構成は、高密度に配置され、二酸化ケイ素が点在した銀/塩化銀の正方形のアレイを含む。銀/塩化銀の領域がある程度くぼんでいる場合、意図していないセグメントを回避することにさらなる利点が存在する。
【0157】
次に図16を参照すると、免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図が示されている。領域R1〜R7は、特定の運転機能に関連する導管の特定の領域を表す。したがって、R1は試料保持チャンバーを表し、R2は試料導管を表し、それによって試料の計量された部分が捕捉領域に移され、試料が、導管の壁上にコーティングされた物質で任意選択により改質され、R3は、電気伝導度測定センサー及び分析物センサーを収容する捕捉領域を表し、R4及びR5は、第1の導管の部分を表し、これらは、導管壁上にコーティングされた物質で流体をさらに改質するのに任意選択により使用され、それによってより複雑なアッセイスキームが実現され、R6は、第2の導管の部分を表し、カートリッジが読取装置内に挿入されると、その中に流体が導入され、R7は、キャピラリーストップ160と166の間に配置された導管の部分を備え、その中でさらなる改質を行うことができ、R8は、箇所160と排出口157の間に配置された導管154の部分を表し、これは、その中に含まれる液体を改質するのにさらに使用することができる。
【0158】
(例4)
分析シーケンスの間の、流体工学と分析物測定の調整に関しては、ユーザーは、カートリッジ内に試料を入れ、分析器内にカートリッジを配置し、1〜20分で、1つ又は複数の分析物の定量的な測定が実施される。ここでは、分析の間に起こる事象のシーケンスの非限定例である。
(1)25〜50μL試料が試料入口167中に導入され、カバーとベースコンポーネントを一緒に保持している接着性テープ中の0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって形成されたキャピラリーストップ151まで満たされる。異好性干渉を改善するためのIgM及び/若しくはその断片、並びに好ましくはシグナル抗体を含む1つ又は複数の乾燥試薬コーティングが試料中に溶解される。ユーザーは、スナップフラップ上に取り付けられたラテックスゴムディスクを回して試料入口167を閉じ、カートリッジを分析器内に配置する。
(2)分析器はカートリッジと接触し、モーター駆動のプランジャーが、ホイルポーチ161の上を押し、洗浄/分析流体を中心の導管158へと強制的に外に出す。
(3)別個のモーター駆動のプランジャーは、試料ダイヤフラム156と接触し、試料の測定されたセグメントを試料導管に沿って(試薬領域R1からR2に)押す。試料は、伝導率センサーを介してセンサーチップ153で検出される。センサーチップは、捕捉領域R3内に配置される。
(4)試料は、試料ダイヤフラム156によって、所定の制御された様式で、制御された時間、R2とR5の間を往復されることによって、センサーへの結合を促進する。
(5)試料は、カートリッジの廃棄物領域(R8)に向けて押され、セルロース又は同様の吸収性芯の形態での受動的ポンプ157と接触する。この芯を湿らす作用は、空気の流れに対して芯を密封し、したがって試料ダイヤフラム156によって生じる過剰の圧力を逃すその能力を排除する。能動的な排出口は、図16の「制御された換気口」になる。
(6)試料導管の迅速な排気(試料ダイヤフラム156からモーター駆動のプランジャーを取り外すことによって行われる)は、空気(排出口からの)と第2の導管からの洗浄/分析流体の混合物を、図16中のR5とR4の間に位置した入口へと強制的に移動させる。試料導管の迅速な排気の繰り返しによって、一連の空気で分離された流体セグメントが生成され、これは、センサーチップを横切って試料入口に向けて引き寄せられる(R4から、R3、R2及びR1に)。これは、過剰の試薬を含まないセンサーを洗浄し、センサーを分析に適切な試薬で湿らせる。ホイルポーチに由来する洗浄/分析流体は、中心の洗浄/分析流体導管内のR7及びR6において試薬を添加することによってさらに改質することができる。
(7)洗浄/分析流体セグメントは、試料入口に向けてより遅い速度で引き寄せられることによって、分析流体の薄層のみを含むセンサーチップを生じる。この箇所で電気化学的な分析が実施される。分析の好適な方法は電流測定であるが、電位差測定又はインピーダンス検出も使用される。
(8)機構が後退し、カートリッジを分析器から取り出すことを可能にする。
【0159】
(例5)
いくつかの実施形態では、デバイスは、アッセイの間に起こるNSBの程度を評価する目的で免疫参照センサーを使用する。免疫参照センサーは、分析物免疫センサーとほぼ同じように作製され、例外は、免疫試薬が抗分析物抗体ではなく抗HSA(ヒト血清アルブミン)抗体であるということである。ヒト全血又は血漿試料に曝されると、参照センサーは、すべてのヒト血液試料中に存在する豊富な内因性タンパク質である、特異的に結合したHSAでコーティングされ、したがって、本イムノアッセイ形式を使用して行われるすべての個々の検査についての共通の参照をもたらす。不十分な洗浄により、又は干渉の存在により生じるNSBは、この第2のセンサーによってモニターすることができる。
【0160】
アッセイからの正味のシグナルは、参照センサーから生じる非特異的なシグナルを減じることによって、例えば、上記式4に示したような、正味のシグナル=分析物センサーシグナル−参照センサーシグナル−オフセットによって補正された分析物免疫センサーから生じる特異的なシグナルを含む。「オフセット」は、NSBに曝される2つのセンサーの傾向の差異を計上する係数である。実際には、これは、コンジュゲートを非特異的に結合するその能力に関して、各センサーの相対的な「粘性」を計上し、分析物が無く、干渉の無い試料の応答に基づいて確立される。これは、独立した実験によって行われる。
【0161】
参照センサーにおいて許容されるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される制限を受け、このアルゴリズムは、低分析物濃度での結果の完全性を保護することを追求し、低分析物濃度では、NSBの作用は、臨床的環境における意思決定を変更し得る様式でアッセイ結果に大きな影響を与える可能性がある。本質的な主要なことは、参照センサーにおける過剰なシグナルの存在が、不十分な洗浄ステップ又は干渉によるNSBの存在に関するフラグとして作用することである。
【0162】
図17は、2つが高レベルの異好性抗体活性を有し(ドナーA及びB)、1つが低異好性抗体活性(ドナーC)を有する3つの正常な健康なドナーについての、乾燥試薬をプリントされた試料入口(試料保持チャンバー)内のIgM濃度の関数としての免疫センサー応答を示す。具体的には、図17Aは、cTnI免疫センサーのシグナルの応答を示し、図17Bは、関連する免疫参照センサーを示し、図17Cは、正味のアッセイシグナル(分析物シグナル−参照シグナル)を示す。試料中に溶解した0〜100μg/mLのIgMの範囲にわたってすべてのデータが収集される。約20μg/mLを越えるIgM濃度は、これらの試料に対する異好性抗体の作用を実質的に改善することが、これらの図から明らかである。
【0163】
当業者は、分析物センサー及び参照センサーにおけるシグナルの減少は、IgMを添加した後、これらの試料において明白であり、動物種で産生される抗体から調製される免疫試薬に対する抗動物/異好性抗体の作用に関連する相対的な非特異性を実証することを認識するであろう。さらに、使用された試料は、臨床的環境外の正常な、名目上健康な個体において得られたので、これは、一般的な集団におけるこれらの干渉の比較的遍在する性質の証である。
【0164】
ドナーA及びBからの試料中で、相対的に極端な干渉が観察されたドナープールのサイズ(約200の個体)に基づくと、個体の約1%が、マウスIgMを用いて軽減することができる有意な異好性干渉を有することを推定することができる。
【0165】
異好性干渉は一般に、すなわち、軽減のためにIgMを必要とするもの以外に、集団の40%もの多くにおいて様々に起こることが推定される。臨床検査標準協会(CLSI)内因性抗体によるイムノアッセイ干渉;提案指針(Immunoassay Interference by Endogenous Antibodies;Proposed Guideline);CLSI文献I/LA30−P(ISBN 1−56238−633−6)を参照されたい。
【0166】
異好性干渉を示す試料を用いた本発明者らの試験では、これらの大部分は、IgG単独で中和することができるが、より小さいサブセット、おそらく10〜20%は、本明細書に記載されるように、軽減のためにIgMを必要とすることが示された。しかし、製造者は、すべての場合において、高い完全性の検査結果を提供しようと努力することを考慮すると、このサブセットは、干渉の中和/軽減の展望から対処されるべきであることが必要である。さらに、(i)内因性の抗体干渉の試験及び軽減は、適当な試料の入手可能性によって制限され、(ii)無干渉結果を生じさせるために、ますます高くなる濃度の干渉排除試薬を必要とするレベルで異好性干渉を抱える個体が存在する可能性が、見込みがあるとまでいかなくても、存在することが認識されるべきである。
【0167】
異好性軽減試薬のインパクトは、干渉を示す別個の試料において最も劇的である一方で、これらの干渉の遍在する性質は、軽減の改善は、個体の集団に適用されるとき、イムノアッセイにおけるばらつきの全般的な低下に関連し得ることを示す。個々の対象のアレイが、検査結果のばらつきを増大させるが、品質管理アルゴリズムによって検出されないような、十分に穏やかである、多様であるが別個のレベルの異好性干渉を有する場合、干渉の減少により、集団の測定に付随する全体的なばらつきが減少することが予期される。例えば、心臓トロポニンレベルについての、健康な個体の参照集団の測定は、異好性干渉が測定の過程の間に中和される程度に対する何らかの依存性を有することが予期される。それぞれ、検出不可能な心臓トロポニンが循環している、180の名目上健康な個体の集団を、干渉排除試薬の2つの製剤を使用して測定した。1つの製剤は、375μg/mLのIgGを含んでいた一方で、第2の製剤は、750μg/mLのIgG及び25μg/mLのIgMを含んでいた。この集団に由来する血漿試料の540測定の標準偏差は、それぞれ低Ig製剤及び高Ig製剤について、0.0103ng/mL及び0.0088ng/mLであった。
【0168】
上述したような本発明は一般に、全血試料を用いた分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減又は排除することを対象とするが、これは、他のタイプの生体試料、例えば、血漿、血清、及び尿、並びにまた、希釈された試料、例えば、緩衝液で希釈された血液、血漿、血清、及び尿中で実施されるイムノアッセイにも適用可能である。さらに、本発明は一般に、試料中に乾燥試薬を溶解させることによって試料を改質することを対象とするが、これは、分析の間、又は試料収集の間に試料に液体として試薬を添加することも、他の実施形態では実用的である。本発明は、電気化学的検出手法、例えば、電流測定及び電位差測定手法の観点から本明細書に記載されているが、これは、他の検出様式、特に、光学手法、例えば、発光、蛍光、及び吸光度に基づく手法などにも同様に適用可能であることも明らかである。
【0169】
本発明を様々な好適な実施形態の観点から説明してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略、及び変更を行うことができることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって、もっぱら限定されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により組み込まれている、2009年3月25日に出願された、「異好性抗体免疫センサー干渉の改善(Amelioration of Heterophile Antibody Immunosensor Interference)」という表題の米国出願第12/411,325号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、液体試料中の分析物の存在又は濃度を判定するためのデバイス及び方法における、異好性抗体免疫センサー干渉の低減又は排除に関する。特に、本発明は、γグロブリンタンパク質、例えば、IgM及びその断片などを用いて生体試料を改質(amend)することによる、異好性抗体免疫センサー干渉の低減又は排除に関する。
【背景技術】
【0003】
対象とする分析物についての実験室イムノアッセイ試験の多数は、診断、スクリーニング、疾患の病期分類、法医学的分析、妊娠検査、薬物検査、及び他の理由のために生体試料に対して実施される。妊娠検査などのいくつかの定性的検査は、患者が家庭で使用するための単純なキットに変えられている一方で、定量的検査の大部分は、洗練された機器を使用して、実験室設定下で、訓練された技術者の専門知識を依然として必要とする。実験室検査は、分析の費用を増やし、結果を遅らせる。例えば、心筋梗塞及び心不全を示すマーカーの分析などの多くの状況において、遅延は、患者の状態又は予後に有害となり得る。これらの状況及び同様の極めて重要な状況において、そのような分析を、ポイントオブケアで、正確に、安価に、且つ遅延を最小にして実施することが有利である。
【0004】
サンドイッチ型イムノアッセイとも呼ばれる2サイトイムノアッセイは、生物学的検査試料中の分析物濃度を求めるのにしばしば使用され、例えば、Abbott Point−of−care Inc.によって、i−Stat(登録商標)システムとして開発されたポイントオブケア分析物検出システムにおいて使用される。一般的な2サイト酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)では、1つの抗体が、固体支持体に結合されることによって、「固定化抗体」を形成し、第2の抗体が、酵素などのシグナル生成試薬とコンジュゲート又は結合されることによって、「シグナル抗体」を形成する。測定される分析物を含有する試料と反応すると、分析物は、固定化抗体とシグナル抗体の間で「サンドイッチされた」状態になる。試料及び任意の非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル抗体の量が測定され、これは、試料中の分析物の量に比例するはずである。
【0005】
多くの型のイムノアッセイデバイス及びプロセスが説明されている。血液の試料中の分析物を首尾よく測定するための1つの使い捨て検出デバイスが、米国特許第5,096,669号においてLauksによって開示されている。凝固時間についての他のデバイスが、米国特許第5,628,961号及び同第5,447,440号においてDavisらによって開示されている。これらのデバイスは、時間の関数として血液の試料中の分析物濃度及び粘度変化を測定する目的のために、読取装置及びこの読取装置に適合するカートリッジを使用する。米国特許第5,096,669号、同第5,628,961号、及び同第5,447,440号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
分析物の結合が、電極に隣接する電気活性種の活性の変化を直接又は間接的に引き起こす電気化学的検出も、イムノアッセイに適用されている。電気化学的イムノアッセイの概説については、Laurellら、Methods in Enzymology、73巻、「電気イムノアッセイ(Electroimmunoassay)」、Academic Press、New York、339、340、346〜348(1981)を参照されたい。
【0007】
微細加工技法(例えば、フォトリソグラフィー及びプラズマ蒸着)は、限定された空間において多層センサー構造を構築するのに魅力的である。例えば、シリコン基板上に電気化学的免疫センサーを微細加工するための方法は、Cozzetteらの米国特許第5,200,051号に開示されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。これらには、調合方法、光形成された層及び微粒子ラテックスを含む表面に生物学的試薬、例えば抗体を結合させるための方法、並びに電気化学的アッセイを実施するための方法が含まれる。
【0008】
電気化学的免疫センサーでは、分析物がその同族抗体に結合することにより、電極における電気活性種の活性の変化が生じ、これは、適当な電気化学的な電位で釣り合うことによって、電気活性種の酸化又は還元を引き起こす。これらの条件を満たすための多くの機構が存在する。例えば、電気活性種は、分析物に直接結合することができ、又は抗体は、電気不活性な基質から電気活性種を生成し、若しくは電気活性な基質を破壊する酵素に共有結合することができる。電気化学的免疫センサーの概説については、M.J.Green(1987)Philos.Trans.R.Soc.Lond.B.Biol.Sci.316:135〜142を参照されたい。
【0009】
示差電流(differential amperometric)測定の概念は、電気化学の技術分野で周知であり、例えば、共同所有のCozzette、米国特許第5,112,455号を参照されたい。さらに、示差電流センサー組合せのバージョンは、共同所有のCozzette、米国特許第5,063,081号に開示されている。この特許はまた、電気化学的センサーのために選択透過性層を使用すること、及び生理活性分子を固定化するために膜形成ラテックスを使用することを開示しており、参照により本明細書に組み込まれている。センサーの製造においてポリ(ビニルアルコール)(PVA)を使用することは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,030,827号に記載されている。Vikholm(U.S.2003/0059954A1)は、生体分子忌避コーティング、例えば、PVAを含む表面、すなわち、抗体同士間のギャップ内の表面に直接結合した抗体を教示し、Johansson(米国特許第5,656,504号)は、抗体が上に固定された固相、例えば、PVAを教示している。米国特許第6,030,827号及び同第6,379,883号は、ポリ(ビニルアルコール)層をパターン形成するための方法を教示しており、その全体が参照により組み込まれている。
【0010】
US20060160164は、免疫参照電極(immuno−reference electrode)を有するイムノアッセイデバイスを記載し、US20050054078は、試料閉じ込めが改善されたイムノアッセイデバイスを記載し、US20040018577は、多重ハイブリッドイムノアッセイを記載し、US20030170881(US7,419,821として交付された)は、分析物測定及びイムノアッセイのための装置及び方法を記載しており、これらのすべては、共同所有されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0011】
電流測定に関しては、シグナルの非ファラデー成分のウェイトを低減し、したがって感度を増大させるための、当技術分野で公知のいくつかの手段が存在する。これらには、例えば、クロノアンペロメトリーの代わりに矩形波ボルタンメトリーを使用する、より新しい電気化学的方法、及び化学的手段、例えば、電極表面を不動態化するためのアルキルチオール試薬が含まれる。
【0012】
しかし、従来のアッセイ構成の1つの制限は、検査試料中に存在し得る異好性抗体によって引き起こされる干渉に対する感受性である。例えば、L.Kricka、「免疫アッセイにおけるヒト抗動物抗体干渉(Human Anti−Animal Antibody Interferences in Immunological Assays)」、Clinical Chemistry 45:7、942〜956(1999)を参照されたい。市販のイムノアッセイにおいて使用される抗体は、多くの場合、動物又は動物起源の培地において調製され、又は「産生される」。さらに、多くの個体は、動物タンパク質に対する、天然に存在する非特異的抗体、すなわち、「内因性抗体」を内部に持ち、これは、イムノアッセイにおいて使用される動物抗体試薬に結合し、誤った結果に至る場合がある。例えば、アッセイ試薬の1つ又は複数に結合することができる内因性抗体は、試薬を架橋して偽陽性の結果に導き、又は試薬を隔離して偽陰性の結果に導くことによって、誤った検査結果を生じさせる電位をもたらす。
【0013】
例えば、放射標識されたマウスモノクローナル抗体を用いた癌療法は、患者においてヒト抗マウス抗体(HAMA)を産生させる場合があることが判明している。こうした患者から採取される血清試料中にHAMAが存在することにより、癌マーカーについてのサンドイッチ型酵素イムノアッセイにおいて使用される試薬のマウスモノクローナル抗体が架橋される場合があることが引き続いて示された(Boscatoら、異好性抗体:すべてのイムノアッセイに関する問題(Heterophile antibodies:A problem for all immunoassays)、Clin Chem 34、27〜33、1988)。さらに、Nicholsonら(免疫グロブリン阻害試薬(IIR):HAMAによって引き起こされるCA125の偽上昇を排除するための新規方法の評価(Immunoglobulin inhibiting reagent(IIR):Evaluation of a new method for eliminating spurious elevation in CA125 caused by HAMA)、Intl J Biol Markers 11、46〜49、1996)は、CA125アッセイにおけるHAMA干渉を排除するためにIIR(Bioreclamation Inc、NY)を使用して、有益な結果を実証した。IIR物質は、いくつかの種に由来する免疫グロブリン(IgG、IgM)、主に、Balb/cマウスに由来するマウスIgG(サブタイプIgG2a、IgG2b、及びIgG3)のある程度精製された配合物を含むことが報告されている。
【0014】
US6,106,779は、ある特定のアッセイ試薬の互いの、及びデバイスコンポーネントへの非特異的結合は、診断アッセイにおいて問題である場合が多いことを教示している。これは、抗体が、その抗原ではない分子の領域を認識する場合、特に問題である。その時これは、高いバックグラウンド反応及び偽陽性(又は陰性)アッセイの結果に導く場合がある。この問題のために使用することができる非特異的結合阻害剤には、ウシIgGが含まれる。
【0015】
US20080261242では、内因性ヒト異好性抗体及びヒト抗動物抗体が論じられており、これらは、他の種の免疫グロブリンに結合する能力を有し、患者の10%超の血清又は血漿中に存在する。これらの循環異好性抗体は、イムノアッセイ測定に干渉する場合がある。サンドイッチイムノアッセイでは、これらの異好性抗体は、捕捉抗体及び検出(診断用)抗体を架橋し、それによって、偽陽性シグナルを生成する場合があり、又はこれらは、診断用抗体の結合を遮断し、それによって、偽陰性シグナルを生成する場合がある。さらに、競合的なイムノアッセイでは、異好性抗体は、分析用抗体に結合し、分析物への分析用抗体の結合を阻害する場合がある。これらはまた、特に、抗種抗体が分別システムにおいて使用される場合、遊離分析物から抗体−分析物複合体の分別を阻止又は増強する場合がある。結果として、これらの異好性抗体干渉のインパクトは、予測困難である場合が多い。
【0016】
試料から異好性抗体を除去するためのいくつかの追加の方法も公知であり、これらには、(i)pH5.0の酢酸ナトリウム緩衝液中での、摂氏90度で15分間の検体の加熱、その後の1200gで10分間の遠心分離、(ii)ポリエチレングリコール(PEG)を使用する沈降、及び(iii)プロテインA又はプロテインGを用いた免疫抽出が含まれる。異好性抗体問題に対処するための臨床的な指針は、臨床検査標準協会(CLSI)(Clinical and Laboratory Standards Institute)内因性抗体によるイムノアッセイ干渉;提案指針(Immunoassay Interference by Endogenous Antibodies;Proposed Guideline)によっても提供されている。CLSI文書I/LA30−P(ISBN 1−56238−633−6)。
【0017】
一般に、イムノアッセイ製造者は、(a)試料から干渉性の免疫グロブリンを除去又は不活性化し、(b)アッセイ抗体を改良することによって、これらが異好性抗体と反応する傾向を少なくさせ、(c)干渉を低減する遮断剤(blocking agent)(ほとんどIgG)を使用することによって、異好性干渉を低減するように努めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、少なくとも以下の分野において異好性抗体を改善するために、プロセスを改善する必要が残っている:(i)最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー干渉、(ii)電気化学的イムノアッセイ、(iii)免疫参照センサーと併せた免疫センサーの使用、(iv)全血イムノアッセイ、(v)使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ、(vi)1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ、及び(vii)乾燥試薬コーティング。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、電気化学的免疫センサー又は他の配位子/配位子受容体ベースバイオセンサーを使用する、血液などの生体試料中の分析物の判定に関する。具体的には、本発明は、例えば、心血管マーカーイムノアッセイを含めた様々なアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法の改善に関する。この手法では、試料、例えば、血液試料を収集し、次いで、例えば、選択された非ヒトIgM(免疫グロブリンM)若しくはその断片、又は非ヒトIgG及び非ヒトIgM、若しくはこれらの断片の規定された混合物のいずれかを含む乾燥試薬を溶解させることによって、試料を改質する。
【0020】
本発明では、試料中に存在する任意の異好性抗体を実質的に隔離するために、十分な量の免疫グロブリンが使用される。試薬の量は、これが、集団の大部分において異好性抗体が生じる濃度の異好性抗体に結合するのに十分であることを保証するように、一般に選択される。或いは、試薬の量は、所定の閾値濃度値を超える異好性抗体が、実質的に除去され、すなわち、添加される免疫グロブリンに結合され、したがって、アッセイに干渉するのを防止するのを保証するように選択することができる。この結合ステップを起こさせるための期間の後に、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することが可能である。本発明はさらに、免疫参照センサー及び免疫センサーの両方と併せたこれらの隔離試薬の使用に関する。本発明は、ベッドサイド検査及びニアペイシェント検査とも呼ばれる、ポイントオブケア血液検査に特に有用である。
【0021】
第1の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、全血試料を、非ヒトIgM又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように試料中に乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法に対するものである。好適な態様では、この方法は、IgG又はその断片を用いて全血試料を改質するステップも含む。非ヒトIgG及びIgMは、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものであることが好ましい。
【0022】
分析物は、多種多様となり得るが、好ましくは、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPの群から選択される。好適な実施形態では、試料は、約1分〜約30分の範囲の所定期間改質される。乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含むことが好ましい。乾燥試薬は、分析物に対する酵素標識抗体(シグナル抗体)をさらに含むことができる。別の態様では、この方法は、改質された試料を、分析物に対する酵素標識抗体(シグナル抗体)を用いて、改質された試料中に酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップであって、第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含有する乾燥試薬と別個のものであるステップをさらに含む。例えば、乾燥試薬は、非ヒトIgGをさらに含むことができる。
【0023】
電気化学的イムノアッセイは、好ましくは酵素結合サンドイッチイムノアッセイであり、好ましくは免疫センサーによって実施される。したがって、電気化学的アッセイは、電極上の分析物に対する固定化抗体を用いて実施されることが好ましい。改質された試料は、好ましくは、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含み、分析物に対する固定化抗体と接触させることによって、固定化抗体と標識抗体の間に分析物のサンドイッチを形成し、この方法は、試料を廃棄物チャンバーに流すステップと、酵素と反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝すステップとをさらに含む。一実施形態では、電気化学的イムノアッセイは、免疫センサー及び免疫参照センサーによって実施される。別の実施形態では、電気化学的イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイである。この方法は、ポイントオブペイシェントケア(point of patient care)で実施されるのに特によく適している。例えば、イムノアッセイは、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備えるカートリッジ内で実施することができる。この態様では、試料流入ポート、試料保持チャンバー、導管、及び免疫センサーのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を、乾燥試薬でコーティングすることができる。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、全血試料を、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、改質された試料中の非ヒトIgM濃度は、少なくとも約20μg/mL又は同等のIgM断片濃度であるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップとを含む方法を対象とする。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、脳性ナトリウム利尿ペプチドイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、試料を、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、改質された試料中の非ヒトIgM濃度は、少なくとも約20μg/mL又は同等のIgM断片濃度であるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップとを含む方法を対象とする。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイス、例えば、使い捨てカートリッジであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、導管は、血液試料が流入ポートから免疫センサーに進むのを可能にし、筐体、流入ポート、及び導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む乾燥試薬コーティングを含み、この乾燥試薬は、血液試料中に溶解することによって少なくとも約20μg/mLのIgM濃度又は同等の断片濃度を生じ、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離することができるデバイスに対するものである。この態様では、デバイスは、最初の血液試料を計量することによって、計量された血液試料を形成するための計量システムをさらに備えることが好ましい。デバイスは、免疫参照センサーも備えることができる。免疫センサーは、電極上に分析物に対する固定化抗体を含むことが好ましい。
【0027】
一態様では、乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む。任意選択により、乾燥試薬は、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む。代替の実施形態では、デバイスは、分析物に対する酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬をさらに含み、第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含む乾燥試薬と別個のものである。デバイスは、試料を廃棄物チャンバーに流すことができる洗浄流体をさらに含むことが好ましい。この洗浄流体は、免疫センサーにおいて反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質を含むことができる。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、生体試料を、IgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように改質するステップと、改質された試料に対してイムノアッセイを実施することによって、試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法を対象とする。例えば、生体試料は、IgM、IgM断片、IgG、又はIgG断片のうちの1つ又は複数を含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質することができる。この方法は、IgG又はその断片を用いて生体試料を改質するステップをさらに含むことが好ましい。生体試料は、例えば、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態からなる群から選択することができる。イムノアッセイ法は、電気化学、電流測定、電位差測定、吸光度、蛍光、及び発光からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、分析物イムノアッセイデバイスにおける分析物中の異好性抗体干渉を低減する方法であって、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な量で、生体試料にIgM又はその断片及びIgG又はその断片を添加し、改質された試料を形成するステップであって、IgM又はその断片及びIgG又はその断片は、0.004超、例えば、0.02超、0.05超、又は0.1超の重量比で添加されるステップと、改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、改質された試料中の分析物の濃度を求めるステップとを含む方法に対するものである。添加ステップの後、IgMは、例えば、少なくとも20μg/mLの濃度で試料中に存在することができる。或いは、IgM断片は、少なくとも約20μg/mLのIgM濃度に同等の濃度で試料中に存在する。一態様では、添加するステップは、イムノアッセイデバイス内に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を試料中に溶解させるステップを含む。或いは、添加するステップは、試料収集デバイス上に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を試料中に溶解させるステップを含むことができる。さらに別の態様では、添加するステップは、試料をIgM又はその断片を含む液体と混合することによって、改質された混合物を形成することを含み、この方法は、イムノアッセイデバイス中に改質された混合物を導入するステップをさらに含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を、0.004超、例えば、0.02超、又は0.05超の重量比で含む乾燥試薬を含むデバイスに対するものである。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、又は試料流入ポートのうちの1つ又は複数において、液体試薬カクテルを堆積させることによって、上記デバイスのいずれかを形成するための方法であって、試薬カクテルは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む方法を対象とする。この方法は、試薬カクテルを乾燥させることによって乾燥試薬を形成し、デバイスをアセンブルするステップをさらに含む。
【0032】
本発明の方法及びデバイスのいくつかの好適な実施形態では、分析物は、TnI又はBNPであり、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20〜約200μg/mL、例えば、20〜約60μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)、及び約50〜約5000μg/mL、例えば、約500〜約1000μg/mLのIgG濃度(又は同等のIgG断片濃度)を与える。
【0033】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、具体的な実施形態の以下の詳細な説明に記載され、以下の図面に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】免疫センサーカートリッジカバーの等尺上面図である。
【図2】免疫センサーカートリッジカバーの等尺下面図である。
【図3】免疫センサーカートリッジ用テープガスケットの構成の上面図である。
【図4】免疫センサーカートリッジベースの等尺上面図である。
【図5】免疫センサーカートリッジの構成の概略図である。
【図6】乾燥試薬で流体を改質するための場所を含む、免疫センサーカートリッジ内の流体及び空気の経路の概略図である。
【図7】電気化学的免疫センサーの動作の原理を例示する図である。
【図8】電気化学的免疫センサーの構成の側面図であり、抗体標識粒子は縮尺通りに描かれていない。
【図9】免疫センサーカートリッジ用電気伝導度測定電極及び免疫センサー電極のためのマスク設計の上面図である。
【図10】異好性抗体改善試薬を含むTnI及びBNPカートリッジ並びに含まないTnI及びBNPカートリッジについてのデータを要約する表を示す図である。
【図11】時間に対するTnI免疫センサー及び免疫参照センサー応答を示す図である。
【図12】時間に対するBNP免疫センサー応答及び免疫参照センサーを示す図である。
【図13】電気活性種の酵素再生の略図である。
【図14】セグメント形成手段を例示する図である。
【図15】好適な実施形態の免疫センサーカートリッジの上面図である。
【図16】免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図である。
【図17A】免疫センサーでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図17B】付随した免疫参照センサーでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図17C】免疫参照センサーシグナルから減じられた免疫センサーシグナルでの、異好性抗体を含む様々なトロポニン試料についての用量応答を示す図である。
【図18】閉じた位置での、試料流入ポートを閉じるためのスライド可能な密封エレメントを有するカートリッジデバイスを例示する図である。
【図19】開いた位置での、試料流入ポートを閉じるためのスライド可能な密封エレメントを有するカートリッジデバイスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、以下の分野における、異好性抗体の存在によって引き起こされる干渉の低減又は排除に関する。(i)最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー、(ii)電気化学的イムノアッセイ、(iii)免疫参照センサーと併せた免疫センサーの使用、(iv)全血イムノアッセイ、(v)使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ、(vi)1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ、及び(vii)非特異的結合(NSB)阻害剤を含む乾燥試薬コーティング。しかし、当業者によって理解されるように、一般的な概念は、多くのイムノアッセイ法及びプラットフォームに適用可能である。
【0036】
本発明は、分析物センサーのアレイ、及び免疫センサー又は分析物アレイに改質された試料を順次提示するための手段を有するカートリッジを使用して、分析物の迅速なインサイツ判定を可能にする。カートリッジは、好ましくは読取デバイスとともに稼動するように設計され、例えば、ともにその全体が本明細書に参照により組み込まれている、1992年3月17日に交付された、Lauksらの米国特許第5,096,669号、又は2008年9月2日に交付された米国特許第7,419,821号に開示されたものなどである。本発明は、この脈絡において最良に理解される。その結果として、ポイントオブケアイムノアッセイシステムを稼動するのに適したデバイス及び方法が最初に記載され、異好性抗体干渉を低減又は排除するのに、システムを最良に適応させることができる方法が記載される。
【0037】
一実施形態では、本発明は、試料中の分析物の存在又は量を判定するのに液体試料を処理するためのカートリッジ及びその使用方法を提供する。カートリッジは、好ましくは計量手段を含み、これにより、未計量体積の試料を導入することが可能になり、この手段から、計量された量が、カートリッジ及びその付随した読取装置によって処理される。したがって、医師又はオペレーターは、測定前に試料の体積を正確に測定することから解放され、時間、努力を節約し、精度及び再現性を増大させる。計量手段は、一実施形態では、キャピラリーストップを境界とし、長さに沿って空気流入ポイントを有する長い試料チャンバーを備える。空気流入ポイントでかけられる空気圧により、計量された体積の試料が、キャピラリーストップを通過させられる。計量される体積は、空気流入ポイントとキャピラリーストップの間の試料チャンバーの体積によって予め設定される。
【0038】
カートリッジは、気密様式で試料ポートを密封するための閉鎖デバイスを有することができる。この閉鎖デバイスは、好ましくは、カートリッジの本体に対してスライド可能であり、ポートの領域内に位置したいずれの過剰の試料も追い出すせん断作用をもたらし、流入ポートとキャピラリーストップの間の保持チャンバー中の試料部分を確実に密封する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、公開された米国特許出願公開第2005/0054078A1号を参照されたい。カートリッジは、例えば、過剰の流体試料を試料流れ口から追い出し、内部流体試料保持チャンバー内の、ある体積の流体試料を密封し、流体試料が内部キャピラリーストップを尚早に突き破るのを抑制する様式で、カートリッジの表面上で密封エレメントをスライド可能なように動かすことによって密封することができる。このスライド可能な閉鎖デバイスによって得られる密封は、非可逆性であることが好ましく、過剰の血液がカートリッジ内に貯まることを防止し、その理由は、閉鎖デバイスは、血液がカートリッジに入る流れ口の面内を移動し、流入ポートの面より下の血液を密封するせん断作用をもたらし、それによって、過剰の血液、すなわち、流れ口の面より上の血液を流入ポートから離し、任意選択により廃棄物チャンバーに移すためである。
【0039】
1つの例示的な閉鎖デバイスは、図1に示されており、カバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える。この実施形態では、閉鎖デバイス2は、フック3がパチンと閉まって試料流入ポート4を遮断するまでヒンジの周りを回転する。図1のカバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える閉鎖デバイスの代替案が、図18及び19中に、別個のスライド可能なエレメント200として示されている。図18及び19は、別個のスライド可能な閉鎖エレメント200とともに、図3に示された介在する接着性層21を伴った、図4中の底部と同様の底部に取り付けられた図1のカバーの改良版を備えるカートリッジデバイスを示す。図19は、開いた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、試料流入ポート4は、試料、例えば、血液を受け入れることができる。図18は、閉じた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、これは、気密様式で試料流入ポートを密封する。稼動中、試料、例えば、血液が流入ポートに添加され、これが保持チャンバー34に入った後、エレメント200は、開いた位置から閉じた位置に手動で動かされる。示した実施形態では、流入ポートの領域内のいずれの過剰の血液も、オーバーフローチャンバー201、又は隣接する保持領域若しくは空洞に移動される。このチャンバー又は領域は、過剰の試料、例えば、血液を保持するための流体吸収パッド又は物質を含むことができる。
【0040】
試料流入ポート4は、図19に示したような円形、又は楕円形である流れ口とすることができ、流れ口の直径は一般に、0.2〜5mm、好ましくは1〜2mmの範囲内であり、又は楕円形の周囲長が1〜15mmである。流れ口の周囲の領域は、適用される試料の液滴形状を制御することによって、流入ポート中への流入を促進するために、疎水性又は親水性であるように選択することができる。図18及び19に示された閉鎖デバイスの1つの利点は、これは、試料が保持チャンバー34の端部のキャピラリーストップエレメント25を越えて押されるのを防止することである。キャピラリーストップを越えて少量の試料、例えば血液が存在することは、分析物のバルク濃度を測定する検査に有意でなく、したがって、試料体積に依存しない。しかし、試料の計量が一般に有利であるイムノアッセイ用途について、密封エレメントは、デバイスの計量精度を改善し、分析器により試料がカートリッジ導管内に動かされるとき、試料のアッセイされるセグメントが免疫センサーに対して適切に配置されるのを確実にする。
【0041】
稼動中、試料、例えば、血液がカートリッジに添加されるとき、これは、キャピラリーストップへと移動する。したがって、キャピラリーストップから試料流入ポートまでの領域、すなわち、保持チャンバー34が試料を含むとき、アッセイに十分な試料が存在する。保持チャンバーを満たすプロセスの間、一部の試料が、流入ポートの流れ口の面の上に残る場合がある。密封エレメントが、開いた位置から閉じた位置に移動されるとき、流入ポートの上にあるいずれの試料も、閉鎖の動作の際に追加の試料を取り込むことなくせん断されて除かれ、したがって、試料がキャピラリーストップ25を越えて移動しないことを確実にする。好適な実施形態では、密封エレメント200は、図3のテープガスケット21の表面の上の数千分の1インチ以内に配置される。流入ポートは、密封エレメントが、ロック機構212及び213に噛み合うとき、200の表面が接着性テープガスケットまで引き続いて低下することによって密封される。テープは、本質的に非圧縮性であり、流れ口の直径は小さいので、ユーザーによって密封エレメントにかけられるいずれの不意の圧力も、キャピラリーストップを越えて試料を移動させることにならない。
【0042】
数滴の試料を使用する、ある特定のカートリッジの実施形態では、気泡は、アッセイに影響し得るので、保持チャンバー内でまったく形成しないことが望ましい。したがって、1滴を超える試料、例えば、血液を、気泡を中に閉じ込めることなく保持チャンバー34内に導入するための信頼できる手段が開発された。試料流入ポートは、コロナ及び/又は試薬カクテルを用いて保持チャンバーを最初に処理することによって、次の液滴が、取り込まれた気泡を保持チャンバー34内に形成させることなく、複数の液滴の試料を受け入れるように設計することができる。
【0043】
使い捨て医療用デバイスにコロナ処理を使用することは、当技術分野で周知であり、実質的に任意の物質、例えば、金属化表面、ホイル、紙、板紙原料、又はプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニル、PVC、及びPETなどの表面活性を増大させる有効な方法である。この処理は、これらをインク、コーティング、及び接着剤に対してより受容性にする。実際には、処理されている物質は、放電、又は「コロナ」に曝される。放電範囲内の酸素分子が壊れて原子になり、処理されている物質中の分子に結合し、化学的に活性化された表面をもたらす。コロナ処理のための適当な装置は市販されている(例えば、Corotec Corp.、Farmington、Conn.)。プロセス変数には、物質を処理するのに必要とされるパワー量、物質速度、幅、処理される面の数、及びコロナ処理に対する特定の物質の応答性が含まれ、これらの変数は、熟練したオペレーターによって求めることができる。コロナ処理を組み込むための一般的な場所は、プリント、コーティング、又はラミネートプロセスとインラインである。別の一般的な設置は、インフレーションフィルム又はキャストフィルム押出機の直接上であり、その理由は、新鮮な物質は、コロナ処理に対してより受容性であるためである。
【0044】
上述したように、サンドイッチイムノアッセイ形式は、最も広く使用されるイムノアッセイ法であり、本明細書に論じられる分析デバイス、例えば、カートリッジにおいても好適な形式である。この実施形態では、1つの抗体(固定化抗体)は、固体支持体又は免疫センサーに結合され、第2の抗体(シグナル抗体)は、酵素、例えば、アルカリホスファターゼなどのシグナル生成試薬にコンジュゲート/結合される。シグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)は、以下に記載するように、分析デバイス中の乾燥試薬コーティングの一部とすることができ、好ましくは、試料が免疫センサーに到達する前に生体試料中に溶解する。試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は比例するはずである。しかし、アッセイ構成の1つの制限は、生体試料中に存在する場合のある異好性抗体によって引き起こされる干渉(単数又は複数)に対する感受性である。具体的には、アッセイ試薬の1つ又は複数に結合することができる内因性抗体は、試薬を架橋し(偽陽性)、又は試薬を隔離する(偽陰性)ことによって、誤った検査結果を生じさせる電位をもたらす。
【0045】
多くの異好性干渉は、マウスIgGを添加することによって軽減されるが、IgGは、ある特定の試料について、異好性干渉を軽減するのに効果的でないことが意外にも判明した。これらの試料において、システムは、IgGの存在下でさえ、試料の誤りを認識し、結果として、デバイス中のアルゴリズムは、デバイスが誤った結果を報告するのを抑制させる。これは、かなりの量のIgGの存在下でさえ、いくつかの試料について見出された。
【0046】
これらのシステムは、動物種から単離されたIgMクラスの免疫グロブリン又はその断片の追加の存在下でのみ正確な結果を生じることが今では発見されている。本明細書で使用する場合、用語「断片」は、指定された分子に由来する任意のエピトープ担持断片を指す。したがって、IgM断片は、例えば、F(ab’)2断片、Fab断片、又はFc断片を含むことができ、これらは、IgM分子のエピトープ担持断片である。さらに、「IgM又はその断片」とは、IgM単独、IgM断片単独(すなわち、IgMのF(ab’)2断片、Fab断片、及び/若しくはFc断片の1つ若しくは複数)、又はIgMとIgM断片の組合せを意味する。
【0047】
好適な実施形態では、IgM又はその断片は、乾燥試薬コーティング中に組み込まれ、このコーティングは、いくつかの実施形態では、シグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)を含有する同じ乾燥試薬コーティングとすることができる。したがって、一実施形態では、分析デバイスは、(a)異好性抗体の効果を改善するのに適した成分、例えば、IgM若しくはその断片、及び好ましくはIgG若しくはその断片、並びに/又は(b)シグナル抗体のいずれか、又は両方を含む乾燥試薬コーティングを含む。乾燥試薬コーティングは、試薬カクテルから形成することができ、これも、(a)異好性抗体の効果を改善するのに適した成分、例えば、IgM若しくはその断片、及び好ましくはIgG若しくはその断片、並びに/又は(b)シグナル抗体のいずれか、又は両方を含むことが好ましい。試薬カクテルが堆積されることになる表面は、最初にコロナ処理されることによって、プリントされるカクテルが行き渡るのを促進する帯電表面基を施すことが好ましい。
【0048】
一般に、乾燥試薬コーティングを形成するのに使用される試薬カクテルは、水溶性タンパク質、アミノ酸、ポリエーテル、ヒドロキシル基を含有するポリマー、糖又は炭水化物、塩、及び任意選択により色素分子をさらに含むことができる。各成分の1つ又は複数を使用することができる。一実施形態では、カクテルは、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリシン、塩、メトキシポリエチレングリコール、スクロース、及び任意選択によりプリントプロセスの視覚化を補助する色を提供するブロモフェノールブルーを含有する。一実施形態では、1〜20μLのカクテルが、分析デバイスの、例えば、保持チャンバー又は他の導管内の所望の表面上にプリントされ、デバイスのカバーとともに組み立てられる前に、空気乾燥させられる(又は加熱乾燥される)。
【0049】
別の実施形態では、検査カートリッジは、複数の乾燥試薬コーティングを含むことができる(この場合、コーティングは、これらを区別するためにそれぞれ、第1の試薬コーティング、第2の試薬コーティングなどと呼ばれる場合がある)。例えば、IgM又はその断片を、第1の試薬コーティング中に含めることができ、この第1の試薬コーティングは、例えば、シグナル生成成分、例えば、シグナル抗体を含有する第2の試薬コーティングに隣接することができる。この態様では、第2の試薬コーティングは、第1の試薬コーティングの上流又は下流に位置することができるが、シグナル抗体を含有する試薬コーティングは、異好性抗体干渉を阻害するための成分を含有する試薬コーティングの下流に位置することが好ましい。好適な実施形態では、保持チャンバーは、IgG又はその断片及びIgM又はその断片を含む第1の試薬コーティングでコーティングされる。この態様では、シグナル抗体を含む第2の試薬コーティングは、保持チャンバーの下流、例えば、免疫センサーのすぐ上流に位置されることが好ましい。
【0050】
さらに他の実施形態では、IgM又はその断片は、分析デバイス、例えば、カートリッジの一部でなくてもよい。例えば、IgM又はその断片及び好ましくはIgG又はその断片を含む第1の試薬コーティングは、試料収集デバイス、例えば、キャピラリー又はシリンジ内に組み込むことができる。例えば、第1の試薬コーティングは、キャピラリー又はシリンジの内壁上に形成することができる。
【0051】
別の実施形態では、異好性干渉を改善するための成分(単数又は複数)は、溶液中に含め、生体試料、例えば、血液と混合することができ、得られる改質された試料は、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。一実施形態では、例えば、血液試料は、IgM又はその断片(及び好ましくはIgG又はその断片)を含む液体と混合されることによって、IgMで改質された試料を形成することができ、次いでこれは、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。別の態様では、デバイスは、IgM又はその断片(及び好ましくはIgG又はその断片)を含む液体を含むポーチをその中に含み、これは、デバイス中で生体試料と混合され、次いで概ね本明細書に記載されるように、処理されることによって分析物検出のためのサンドイッチアッセイを形成する。
【0052】
別の実施形態では、IgM又はその断片及び好ましくはIgG又はその断片含む第1の液体を、血液などの液体生体試料と混合するのに、エレクトロウェッティングが使用される。この実施形態では、液滴を操作するための装置が提供される場合がある。この装置は、例えば、すべての導電性エレメントが、液滴が操作される1つの表面上に含まれる、片面の電極設計を有することができる。操作される液滴を入れる目的のために、第1の表面と平行に追加の表面を提供することができる。液滴は、エレクトロウェッティングに基づく技法を実施することによって操作され、この技法において、第1の表面上に含まれ、又はこの表面中に埋め込まれた電極が、制御された様式で順次電圧を印加され、電圧を切られる。装置は、2つの液滴を一緒に合わせ、混合すること、1つの液滴を2つ以上の液滴に分割すること、流れから個々に制御可能な液滴を形成することによって連続する液体の流れを試料採取すること、及び所望の混合比を得るために液滴を繰り返して二成分混合又はデジタル混合することを含めた、いくつかの液滴操作プロセスを可能にすることができる。このようにして、IgM又はその断片を含む第1の液体の液滴は、液体生体試料、例えば、血液を慎重に且つ制御可能に合わせ、混合することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,911,132号を参照されたい。
【0053】
本発明は、イムノアッセイシステムに広く適用可能であるが、上記に引用された共同所有の係属中及び発行済み特許に記載されているように、i−STAT(商標)イムノアッセイシステム(Abbott Point of Care Inc.、Princeton、N.J.)との関連で最良に理解される。いくつかの実施形態では、システムは、アッセイの間に起こるNSBの程度を評価する目的で、免疫参照センサー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、US2006/0160164A1を参照)を使用する。NSBは、不十分な洗浄、又は干渉の存在のために発生し得る。アッセイからの正味のシグナルは、免疫参照センサーから生じる非特異的シグナルを減じることによって補正された、分析物免疫センサーから生じる特異的シグナルを含む。免疫参照センサーにおけるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される限界に支配される。
【0054】
一実施形態では、本発明は、i−STATイムノアッセイ形式の、内因性抗体による干渉に対する耐性を改善するが、これは、標準的なELISA形式にも同様に適用可能である。具体的には、本発明は、IgMクラスの免疫グロブリンの使用を含み、これは、ある特定の検査試料中の異好性抗体によって引き起こされる干渉を実質的に低減することが見出されている。
【0055】
上記に示したように、動物種から単離された、IgMクラスの免疫グロブリン(又はその断片)を、好ましくはIgGクラスの免疫グロブリン(又はその断片)と組み合わせて用いて試料を改質することにより、異好性抗体干渉が低減又は排除されることが今では発見されている。実験では、マウス免疫グロブリンM(IgM、Sigma−Aldrich)が、i−STAT(商標)イムノアッセイ形式において使用される、試料コンディショニングプリントカクテル(sample conditioning print cocktail)に添加された。次いで、異好性抗体による干渉のために現場で以前は確実に分析することができなかった、既知の患者の血漿試料が検査された。上記に示したように、i−STAT(商標)システムは、免疫参照センサーで偽シグナルを検出し、エラーコードでユーザーに警告し、結果が表示されるのを抑制するフェールセーフアルゴリズムを含むので、これらの試料について以前に不正確な結果を報告しなかったことが注目されるべきである。これは、信頼できるポイントオブケア検査に必要とされる品質システムの一部の例である。
【0056】
意外にも、マウスIgMで改良された新規のカートリッジが試験され、結果が従来のカートリッジと比較されたとき、得られた結果は、IgMで改良されたカートリッジが使用される場合、以前に問題であった血漿試料が、現在では正確に分析することができることを実証する。
【0057】
図10中のデータは、検査結果を要約し、この中で、既知の異好性抗体干渉を示す2つのそれぞれの試料(試料1及び2)中の、2つの心臓マーカー、すなわち、心臓トロポニンI(cTnI)及び脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定におけるマウスIgMの効力が求められた。図10において、「平均の結果」は、正味のシグナルの差(分析物センサーにおけるシグナル−参照センサーにおけるシグナル)から計算された分析物濃度を指し、「カートリッジの数」は、実施されたアッセイの数を指し、「エラーの数」は、所与の形式について、試料に対して実施されたアッセイの中で、参照センサーにおける過剰なNSBによって抑制された結果の数を指す。
【0058】
図10に記載されたcTnI検査において、一連の9つの検査が、IgMで改良された新規のカートリッジ(MOD)を用いて血液試料(試料1)に対して実施された。平均の結果は0.23ng/mLであり、識別されたシステムエラーはまったくなかったが、標準的な(STD)デバイスについては、9つすべてのカートリッジは、システムによって報告されたエラーを与え、平均の結果は、無意味な「負の」濃度(−0.21ng/mL)であった(この脈絡における「負」の値の原因は、以下に説明される)。したがって、本発明のMODカートリッジを用いると、9つすべての試料は、内部システムクオリティーチェックを通過し、意味のある結果を生じたが、STDカートリッジはすべて、試料に関連するエラーを認識し、結果の報告を抑制した。
【0059】
BNP検査セットにおいて、一連の3つの検査が、新規IgM MODカートリッジ及びSTDカートリッジを用いて第2の試料(試料2)に対して実施された。本発明のMODカートリッジについて、平均の結果は−27pg/mLであり、識別されたシステムエラーはまったくなかったが、STDデバイスについては、3つすべての検査は、システムによって報告されたエラーを与え、平均の結果は−157pg/mLであった。やはり、この脈絡における「負の」値の原因は、以下に説明される。
【0060】
さらに洞察するために、図11及び12は、図10における、異好性干渉を含む2つの試料(試料1及び2)について要約された測定に関連する、実際の未処理の過渡的な電気化学的免疫センサー応答及び免疫参照センサー応答を例示する。
【0061】
試料1(図10及び11)は、臨床業務において生じ、cTnIについて陽性であると判定された。使用された検査カートリッジは、i−STAT(商標)心臓トロポニンIカートリッジであり、心臓トロポニンIについてのセンサー(実線、図11)、及び抗cTnIコンジュゲート試薬のNSBの程度を評価するのに使用された免疫参照センサーを含んでいた。US2006/0160164A1を参照されたい。
【0062】
図11は、マウスIgMを取り込んだ後の、異好性抗体活性を含む試料についての電気化学的免疫センサー応答の変化を示す。実線は、IgMで処理する前(薄い実線)及び後(濃い実線)の、抗cTnI抗体を担持するcTnIについての、免疫センサーにおける電流応答を示す。点線は、IgMで処理する前(薄い点線)及び後(濃い点線)の、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を担持するHSAについての、免疫参照センサーにおける電流応答を示す。矢印は、IgM添加後の応答の変化を示す。
【0063】
NSBは、洗浄ステップに伴う問題のため、又は干渉(単数又は複数)の存在のために発生する場合がある。使用された免疫参照センサーは、抗HSA抗体標識微粒子のコーティングを有する電極を含んでいた。これは、試料に曝されるとHSAでコーティングされた状態になる(HSAは、試料から自然に生じることに注意)。図11を検分すると、cTnI免疫センサー(実線)から生じるシグナルは、マウスIgMを添加すると増大する(濃い線)ことを示す。したがって、IgMの非存在下で、トロポニン濃度は、異好性干渉(単数又は複数)の存在のために過小評価された。これは、試料は、免疫センサー上に固定化された免疫試薬(抗−cTnI抗体)、又は酵素アルカリホスファターゼ(ALP)にコンジュゲートされた抗HSAの1つ又は複数に結合することができる干渉物質を含み、それによって、分析物との相互作用に関するその利用可能性を減少させたことを示す。マウスIgMを添加する前に(薄い線)、免疫参照センサー(点線)は、マウスIgMを添加すると著しく減少した、かなりのシグナルを示したことも図11から明白である。したがって、IgMは、抗cTnIコンジュゲート試薬(動物抗cTnI抗体を含有する)を、抗HSA試薬(免疫参照センサー上の)と架橋することができる干渉物質を軽減するように作用する。
【0064】
従来のサンドイッチアッセイは、これらの場合において誤った結果を生じる一方で、i−STATシステムアッセイは、臨界値より下である参照センサーからのシグナルを要求するエラー検出アルゴリズムによりエラーコードを生じることは注目すべきである。誤って結果を報告するのとは対照的に、結果を報告しないことが臨床的に高度に望ましいので、これははるかに優れている。このようにして、分析システムの品質及び完全性が維持される。
【0065】
一般に、市販のアッセイは、そのような参照測定、例えば、免疫参照センサーに基づく測定を含まず、代わりに、測定される試料中に干渉物質が存在しないこと、又はこの試料中の干渉物質の適切な中和に依拠する。この参照測定の非存在下で、試料1(図10)は、0.00ng/mLを報告したであろう。−0.21という実際の値は、より小さい分析物センサー電流から相対的に大きい免疫参照センサー電流を減じることから生じることに注意されたい。これは明らかに非物理的(無意味な値又は結果)であり、ゼロとして報告される。真の試料値は、IgMの存在下で得られるように、トロポニンについて実際には正である(0.23ng/mL)。試料1は、非常に低いcTnI濃度を有していたことも注意されたい。したがって、実際の免疫センサー(IS)シグナルは、低いことが予期される。さらに、免疫参照センサー(IRS)におけるシグナルは、ISシグナルよりわずかに高い場合があり、IRSシグナルは、ISシグナルから減じられるので、負の値をもたらすことは予期されないことではない。ここで、本発明者らは、本質的に低い分析物濃度を有する試料に対する異好性抗体の効果を評価することに特に興味があり、この場合、試料に対する異好性抗体の相対的な効果は、重要となり得る。実際の分析物濃度が範囲のより高い側である試料では、異好性抗体の相対的な効果は、一般にあまり顕著でない。トロポニンの追加の試験に対するさらなる詳細は、図17(A〜C)に示されており、これは、(a)免疫センサー、(b)付随した免疫参照センサー、及び(c)免疫参照センサーシグナルから減じられる免疫センサーシグナルにおける、異好性抗体を有する様々なトロポニン試料についての用量応答プロットを与える。図17の詳細な説明は、以下の例5に含まれている。
【0066】
図12は、マウスIgMを取り込んだ後の、異好性抗体活性を含む試料についての電気化学的BNP免疫センサー応答の変化を示す。実線は、IgMで処理する前(薄い実線)及び後(濃い実線)の、抗BNP抗体を担持するBNPについての免疫センサーにおける電流応答を示す。点線は、IgMで処理する前(薄い点線)及び後(濃い点線)の、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を担持するHSAについての、免疫センサーにおける電流応答を示す。矢印は、IgM添加後の応答の変化を示す。
【0067】
試料2(図10及び12)は、通常の名目上健康な個体の集団において生じた。これは、実際に、低いBNP濃度を有する。検査カートリッジ(i−STAT脳型ナトリウム利尿ペプチド、BNP)は、BNPについての免疫センサー(実線、図12)、及び抗BNPコンジュゲート試薬のNSBの程度を評価するのに使用された免疫参照センサーを含んでいた。上記に示したように、NSBは、洗浄ステップの不十分さのため、又は干渉(単数又は複数)の存在のために発生する場合がある。免疫参照センサーは、抗HSA(ヒト血清アルブミン)抗体標識微粒子のコーティングを有する電極を含んでおり、試料に曝されるとHSAでコーティングされた状態になる(HSAは、試料から自然に生じる)。図12を検分すると、BNP免疫センサー(実線)から生じるシグナルは、マウスIgMを添加すると減少する(濃い線)ことを示す。したがって、IgMの非存在下で、BNP濃度は、異好性干渉の存在のために、このセンサーにおいて過剰評価される。マウスIgMを添加する前に(薄い線)、免疫参照センサー(点線)は、マウスIgMを添加すると著しく減少する(濃い線)、かなりのシグナルを示すことも図12から明白である。したがって、IgMは、抗BNPコンジュゲート試薬(動物抗BNP抗体を含有する)、及び抗BNP又は抗HSA試薬(分析物及び免疫参照センサー表面上の)を架橋することができる干渉物質を軽減するように作用する。
【0068】
免疫参照センサー又はIgMの非存在下で、BNPセンサー(薄い実線、図12)から観察されるシグナルは、誤って上昇した結果に対応する。免疫参照センサー(薄い点線、図12)上の干渉で誘発されたシグナルは、i−STAT(商標)アッセイ形式において、(IgMで軽減する前)結果を抑制させた。したがって、IgMを含めることにより、正しい結果(0pg/mLのBNP)が報告されることが可能になる。見かけ上負の結果の発生は、上記のcTnIの例についてと同じタイプの説明に従う。
【0069】
上述したように、カートリッジ中に任意選択によりプリントされるIgMを含む新規の乾燥試薬に関して、試薬は、マウスIgG及びヤギIgG、並びにマウスIgMなどの干渉排除試薬を含有する水溶液として形成されることが好ましい。上記に論じたように、生体試料、例えば、血液を導入すると、試料は、アッセイの第1のステップで試薬と混合することが好ましい。試薬は、化学特性及び流体特性に関してアッセイ性能を最適化するために、無機塩及び界面活性剤も含むことができる。他の任意選択の添加剤には、十分な抗凝固を保証するためのヘパリン、及びプリント後の試薬の位置を視覚化するための色素が含まれる。微生物の増殖を阻害するためのアジ化ナトリウムなどの安定剤、及びタンパク質を安定化するためのラクチトールとジエチルアミノエチル−デキストランの混合物(Applied Enzyme Technologies Ltd.、Monmouth House、Mamhilad Park、Pontypool、NP4 0HZ UK)も任意選択により存在する。
【0070】
異好性抗体干渉を低減するために、マウスIgMは、例えば、試料が、好適な範囲が25〜40μm/mLである、約10μg/mL〜約100μg/mLのIgMの濃度にされる量で組み込むことができる。液体試薬は、1重量%の固体〜30重量%の固体の範囲の濃度で調製されることが好ましく、好適な濃度は5〜7重量%の固体の範囲である。デバイス中に堆積させたら、堆積した試薬は、例えば、温空気のストリームの中で30〜60分間乾燥させることができる。一実施形態では、試薬は、自動化プリント機器を使用してデバイスの試料入口内にプリントされ、乾燥されて、IgM含有試薬コーティング層を形成する。
【0071】
好適な実施形態では、心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて実施される場合、ベースプリントカクテルは、1リットル(L)のバッチについて以下のように調製される。タンパク質安定化溶液(PSS、AET Ltd.、50%の固体、100.0g)が、塩化ナトリウム(8.00g)及びアジ化ナトリウム(0.500g)の水溶液200〜250mLに添加され、得られた溶液は、1L容のフラスコに移される。マウスIgGの溶液は、マウスIgG(0.9g)を脱イオン水75mLに添加することによって調製され、溶解が完全になるまで15〜60分間撹拌される。ヤギIgGの同様に濃縮された溶液も同一の様式で調製され、両溶液は、1.2μMのフィルターを通して濾過される。マウスIgMは、供給者(例えば、Sigma−Aldrich)から液体として得られる。3つの免疫グロブリン(Ig)原液のそれぞれのタンパク質濃度は、280nmで、分光光度法で測定される。マウスIgG(0.75g)、ヤギIgG(0.75g)、及びマウスIgM(25mg)を提供するのに必要とされるこれらのIg溶液の質量が計算され、これらの量がプリント溶液(printing solution)に添加される。ジエチルアミノエチル−デキストラン(DEAE−デキストラン)の溶液は、DEAE−デキストラン(2.5g)を脱イオン水50〜100mLに添加することによって調製され、30分間撹拌される。このDEAE−デキストラン溶液は、プリント溶液に添加される。これに、ナトリウムヘパリン(10,000IU/mL、3.00mL)、Tween−20(3.00g)、及びローダミンの5%(重量/体積)の水溶液(200μL)が添加される。得られた溶液は、脱イオン水で1.000Lに希釈され、使用されるまでフリーザー又は冷蔵庫内で貯蔵される。
【0072】
カートリッジコンポーネント上に乾燥試薬コーティングを形成するために、これらの流体及び同様の流体をプリントするステップは、好ましくは、米国特許第5,554,339号に開示されているように、自動化され、コンポーネントを整列させるためのカメラ及びコンピューターシステムを含むマイクロディスペンシングシステムに基づく。この特許において、ウエハーチャックは、プラスチックカートリッジのベースをディスペンシングヘッドに送るためのトラックに取り替えられる。トラックは、所定の配向でベースをヘッドに差し出すことによって、一貫した位置での分注を保証する。
【0073】
免疫センサーの好適な実施形態のウエハーレベルの微細加工は、以下の通りである。ベース電極(図9の94)は、15μmの中心上に、7μmの金ディスクの正方形アレイを備える。アレイは、直径が約600μmの円形領域を覆い、Si/SiO2/TiW/Auを含む一連の層でできた基板上に、厚さ0.35μmのポリイミドの薄層を光パターン形成することによって実現される。7μmの微小電極のアレイは、電気活性種の高収集効率をもたらし、露出した金属の電気容量に関連する任意の電気化学的バックグラウンド電流からの寄与が低減される。金属上にPVA層を含めることにより、バックグラウンド電流の低減が著しく増強される。
【0074】
多孔質PVA層は、ウエハー上の微小電極の上に、PVAとスチルビゾニウム(stilbizonium)光活性架橋剤の水性混合物をスピンコーティングすることによって調製される。スピンコーティング混合物は、ウシ血清アルブミン(BSA)を任意選択により含む。次いでこれは、光パターン形成されることによって、アレイの上及び周囲の領域のみを覆い、好ましくは、約0.6μmの厚さを有する。
【0075】
示差測定法の一般的な概念は、電気化学分野及びセンシング分野において公知である。電気化学的免疫センシングシステムにおいて干渉シグナルを低減するための新規手段が、これから説明される。しかし、これは、電流測定電気化学的センサーの組について記載されるが、これは、電位差測定センサー、電界効果トランジスタセンサー、及び電気伝導度測定センサーを含めた、他の電気化学的センシングシステムにおいても等しく有用なものである。これは、光学センサー、例えば、エバネッセント波センサー、及び光導波路、並びに音波センシング及び温度測定センシングを含む他のタイプのセンシングなどにも適用可能である。理想的には、免疫センサー(IS)からのシグナルは、固定化抗体(Ab1)、分析物、及び標識されたシグナル抗体(Ab2)を含むサンドイッチの構造からもっぱら由来し、スキーム(1)で以下に示されるように、標識(例えば、酵素)は基質(S)と反応することによって、検出可能な生成物(P)を形成する。
表面−Ab1−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (1)
【0076】
スキーム(2)及び(3)で以下に示されるように、シグナル抗体(Ab2)の一部は、表面に非特異的に結合する場合があり、洗浄ステップの間に、免疫センサーの領域(最大約100ミクロン離れた)から完全に洗い流されない場合があり、表面−Abl−分析物−Ab2−酵素イムノアッセイサンドイッチ構造の機能ではない、検出される生成物全体の一部を生じ、それによって干渉シグナルを作り出すことが知られている。
表面−Ab2−酵素;酵素+S→P (2)
表面−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (3)
【0077】
上記に示したように、免疫参照センサー(IRS)として作用し、主免疫センサー上で起こるのと同じ(又は予想通りに関係した)程度のNSBを与える第2の免疫センサーを、カートリッジ内に任意選択により配置することができる。干渉は、この免疫参照センサーのシグナルを、主免疫センサーのシグナルから減じることによって低減することができ、すなわち、以下のスキーム(4)に示されるように、シグナルのNSB成分が除去され、アッセイの性能を改善する。この補正は、追加のオフセット値の減算又は加算を任意選択により含んでもよい。
補正されたシグナル=IS−IRS (4)
【0078】
免疫参照センサーは、分析物(例えば、cTnI)のための捕捉抗体が、高い濃度で試料(正常及び病理学的の両方)において自然に発生する血漿タンパク質に対する抗体によって差し替えられていることを除いて、主免疫センサーと、すべての重要な観点(例えば、寸法、多孔質スクリーニング層、ラテックス粒子コーティング、及び金属電極組成)において同じであることが好ましい。免疫センサー及び参照免疫センサーは、図9に示されるように、シリコンチップ上に、それぞれ隣接する構造94及び96として作製することができる。好適な実施形態が、トロポニンI及びBNPアッセイについて記載されているが、この構造は、例えば、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、プロカルシトニン、proBNP、ミオグロビンなどを含めた他の心臓マーカーアッセイ、並びに臨床診断において使用される他のサンドイッチアッセイ、例えば、PSA及びTSHにも有用である。
【0079】
血漿タンパク質に結合する適当な抗体の例には、ヒト血清アルブミン、フィブリノーゲン、及びIgG fc領域に対する抗体が含まれ、アルブミンが好適である。しかし、適切な抗体が入手可能である場合、約100ng/mL超の濃度で発生する任意の天然タンパク質又は血液成分を使用することができる。ただし、タンパク質は、分析物アッセイを実施するのに必要な時間と比較して急速にセンサーをコーティングするのに十分な量で存在するべきである。好適な実施形態では、タンパク質は、血液試料と接触して約100秒以内に、参照免疫センサー上の利用可能な抗体の50%超に結合するのに十分な濃度で血液試料中に存在する。一般に、第2の固定化抗体は、約1×10−7〜約1×10−15Mの親和定数を有する。例えば、血液試料中のアルブミンのモル濃度が約1×10−4Mと高いために、約1×10−10Mの親和定数を有するアルブミンに対する抗体が好適である。
【0080】
試料に由来する天然アルブミンによって覆われた表面を提供することにより、存在し得る他のタンパク質及び細胞物質の結合が著しく低減されることが見出された。この方法は、NSBを最小限にするために従来の遮断剤を使用する従来のイムノアッセイより一般に優れており、その理由は、これらの作用剤は、一般にドライダウンされ、使用するまで数カ月間又は数年間安定なままでなければならず、この時間の間にこれらは劣化する場合があり、望まれるより粘着性の表面を作り出し、古くなるとともに上昇するNSBをもたらすためである。対照的に、ここに記載される方法は、使用時に新鮮な表面を提供する。
【0081】
NSBの効果を低減するのに示差測定法を実施するための、参照−免疫センサーを伴った、心臓トロポニンI(cTnI)についての免疫センサーが次に説明されている。抗cTnI及び抗HSAでコーティングされた、カルボキシレートで修飾されたラテックス微粒子(Bangs Laboratories Inc.又はSeradyn Microparticles Inc.によって供給された)はともに、同じ方法によって調製される。粒子は、遠心分離によって最初に緩衝液交換され、その後抗体が添加され、これは、粒子上に受動的に吸着させられる。次いで粒子上のカルボキシル基は、pH6.2のMES緩衝液中で、EDACで活性化されることによって、抗体にアミド結合を形成する。いずれのビーズ凝集物も遠心分離によって除去され、完成したビーズは凍結して貯蔵される。
【0082】
抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体について、ラテックスビーズを飽和被覆すると、ビーズ質量が約7%増加することが判明した。コーティングされたビーズは、抗HSA 7mg及びビーズ100mgを含む混合物から、共有結合を使用して調製された。この配合物を使用して、脱イオン水中に約1%の固体を含む約0.4nLの液滴が、光パターン形成された多孔質ポリビニルアルコール選択透過性層カバーセンサー96上に微量分注され(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,554,339号の方法及び装置を使用して)、乾燥させられた。乾燥した粒子は多孔質層に接着し、血液試料又は洗浄流体中にこれらが溶解するのを実質的に防止した。
【0083】
トロポニン抗体について、ラテックスビーズ表面を飽和被覆すると、ビーズの質量が約10%増加した。したがって、抗TnI 10mgをカップリング試薬とともにビーズ100mgに添加することによって、飽和被覆が実現された。次いでこれらのビーズは、センサー94上に微量分注された。
【0084】
別の実施形態では、免疫センサー94は、血漿タンパク質抗体、例えば、抗HSA、及び分析物抗体、例えば、抗cTnIの両方を有するビーズでコーティングされる。ビーズ100mg当たり抗HSA約2mg以下で作製され、次いで抗cTnIで飽和コーティングされたラテックスビーズは、免疫センサーにおいて優れたNSB特性を示した。利用可能な分析物(抗原)を捕捉するのに、ビーズ上に十分な抗cTnIが存在するので、トロポニンアッセイの勾配(シグナル対分析物濃度)は、実質的に影響されないことが見出された。様々な抗体についてのビーズの飽和濃度、及び標的分析物に対する抗体のみを含むビーズを有する免疫センサーの勾配を求めることによって、抗体の組合せの適切な比を、所与の分析物及び血漿タンパク質の両方に対する抗体を有するビーズについて求めることができる。
【0085】
参照免疫センサーを有する免疫センサーの重要な態様は、血漿タンパク質、好ましくはHSA/抗HSAの組合せの層によって作り出される表面の「ヒト化」である。これは、ビーズの、抗体−酵素コンジュゲートのNSBへの傾向を少なくすると思われる。これはまた、ビーズばらつきを低減するように思われる。理論によって束縛されることなく、センサーが試料によって覆われるにつれて、抗HSA表面のために、これらは天然アルブミンで急速にコーティングされると思われる。これは、製造中にドライダウンされ、一般に長い期間貯蔵された後に再水和される従来の遮断物質と比較して優れた結果を与える。センサー表面を「ヒト化する」ことの別の利点は、これが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)及び他の異好性抗体の干渉に対する耐性の追加の機序をもたらすことである。HAMAのイムノアッセイに対する効果は周知である。
【0086】
本発明のデバイス及び方法において使用することができる免疫参照センサーの別の用途は、分析サイクルの間に得られる洗浄効率をモニターすることである。上述したように、バックグラウンドノイズの1つの源は、依然として溶液中にある、又はセンサー上に非特異的に吸収され、洗浄ステップによって除去されない少量の酵素コンジュゲートである。本発明のこの態様は、例2に述べられているように、空気セグメントを導入することによって、小体積の洗浄流体を使用して、効率的な洗浄ステップを実施することに関する。
【0087】
電流測定の電気化学的システムである好適な実施形態を稼動する際、ALPの活性から生じる、免疫センサー94及び免疫参照センサー96におけるp−アミノフェノールの酸化に関連する電流が、分析器によって記録される。免疫センサー及び免疫参照センサーにおける電位は、銀−塩化銀参照電極に対して同じ値に保たれる。干渉の効果を除去するために、分析器は、上記式(4)に従って、免疫センサーのシグナルから免疫参照センサーのシグナルを減じる。2つのセンサーの間に特徴的な一定のオフセットが存在する場合、これも減じられる。免疫参照センサーが、免疫センサーとすべて同じ非特異的特性を有することは必要でなく、これは、アッセイの洗浄部分及びNSB部分の両方において一貫して比例しているべきであるだけであることが認識されるであろう。分析器に組み込まれたアルゴリズムは、2つのセンサー間の任意の他の本質的に一定の差異を捕らえることができる。
【0088】
免疫センサー単独ではなく、免疫センサーと免疫参照センサーの示差的組合せの使用は、アッセイに以下の改善をもたらす。好適な実施形態では、カートリッジの設計により、約10μLの血液試料中に溶解した約40〜50億の酵素コンジュゲート分子を生じる乾燥試薬が提供される。結合ステップ及び洗浄ステップの最後で、センサーにおける酵素分子の数は、約70,000である。好適な実施形態を用いた実験では、非特異的に結合したバックグラウンドとして、免疫センサー及び参照免疫センサー上に、平均で約200,000(±約150,000)の酵素分子が存在した。免疫参照センサーを用いた示差測定法を使用して、不確定度の約65%が除去され、アッセイの性能を著しく改善した。他の実施形態は、他の程度の改善を有することができるが、アッセイ性能の全体的な改善のための根本的なことが残っている。
【0089】
任意選択の免疫参照センサーの追加の用途は、不適切に抗凝固性の試料などの異常な試料状態を検出することであり、これは、導管全体にわたって物質を堆積させ、免疫センサー及び免疫参照センサーの両方で、測定される電流を増大させる。この作用は、非特異的に吸着された酵素、及び測定ステップの間に、センサー上の洗浄流体の薄層中に残っている酵素の両方に関連する。
【0090】
任意選択の免疫参照センサーの別の用途は、洗浄効率についてシグナルを補正することである。ある特定の実施形態では、免疫センサーにおけるシグナルのレベルは、洗浄の程度に依存する。例えば、より多くの流体/空気セグメントの移行を用いたより長い洗浄は、特異的に結合したコンジュゲートの一部が洗い流されるために、より低いシグナルレベルを与える場合がある。これは、相対的に小さい作用、例えば、5%未満である場合があるが、補正は、アッセイの全体的な性能を改善することができる。補正は、センサーにおける相対的なシグナルに基づいて、又は空気セグメント/流体の移行を検出し、その数を計数するためのセンサーとして作用する、センサーに隣接する導管内に配置された伝導率センサーとともに実現することができる。これは、分析器に組み込まれたアルゴリズム補正手段のためのインプットを提供する。
【0091】
内因性タンパク質、例えば、HSAを用いた参照免疫センサーの別の実施形態では、外因性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する抗体でコーティングされた免疫参照センサーを有することによって同じ目的を実現することが可能である。この場合、センサーに接触させる前に、追加の試薬として提供される、試料中のBSAの一部を溶解させるステップが必要である。この溶解ステップは、カートリッジの試料保持チャンバー内、又は外部収集デバイス、例えば、BSAでコーティングされたシリンジ内で、乾燥試薬としてBSAを用いて行うことができる。この手法は、ある特定の利点を提供し、例えば、表面電荷、特異的な表面基、グリコシル化の程度などについてタンパク質を選択することができる。これらの特性は、内因性タンパク質の利用可能な選択肢中に必ずしも存在しなくてもよい。
【0092】
塩に加えて、他の試薬もイムノアッセイにおける全血精度(whole−blood precision)を改善することができる。これらの試薬は、迅速な溶解を促進するように血液試料に差し出されるべきである。血液保持チャンバー(又は別の導管)の壁上にコーティングされる、セルロース、ポリビニルアルコール、及びゼラチン(又はこれらの混合物)を含めた支持基質は、例えば、15秒未満以内に90%超完了する迅速な溶解を促進する。
【0093】
IgM又はその断片を含めることに加えて、他の任意選択の添加剤を、カートリッジ内に含め、又はアッセイとともに使用することができる。試料が、ヘパリン化された管内に収集されなかった、又はヘパリン化された管内で適切に混合されなかった場合に、性能を改善するために抗凝血性ヘパリンを添加することができる。新鮮なヘパリン化されていない血液が、カートリッジのアッセイサイクルの間、一般に2〜20分の範囲内で、凝血しないままであるように、十分なヘパリンが添加される。イムノアッセイの分野で周知の異好性抗体問題に対処するためにヤギIgG及びマウスIgGを添加することができる。Proclin、DEAEデキストラン、Tris緩衝液、及びラクチトールを、試薬安定剤として添加することができる。Tween 20を添加することによって、タンパク質が、カートリッジに好適な物質であるプラスチックに結合するのを低減することができる。これはまた、試薬がプラスチック表面をより均等にコーティングするのを可能にし、糖がガラスのままであるように、ラクチトールなどの糖の結晶化を最小限にする不純物として作用する。アジ化ナトリウムを添加することによって、細菌増殖を阻害することができる。
【0094】
本発明のカートリッジは、試料及び第2の流体が、アッセイシーケンスの間の異なる時間にセンサーアレイに接触することができるという利点を有する。試料及び第2の流体はまた、それぞれの導管内に乾燥コーティングとして最初に存在する他の試薬又は化合物を用いて独立して改質することができる。カートリッジ内の液体の制御された動きはさらに、試料又は流体が導管の新しい領域に移されるときはいつでも、1つを超える物質が各液体中に改質されるのを可能にする。このようにして、各流体への複数の改質のための対応がなされ、実施することができる自動化されたアッセイの複雑性を大いに拡張し、したがって、本発明の有用性を増強する。
【0095】
使い捨てカートリッジでは、含まれる液体の量は、費用及びサイズを最小限にするために、少なく維持されることが好ましい。したがって、本発明では、導管内のセグメントは、少なくとも1回すすがれるセンサーアレイ上のセグメント又は他の領域の空気−液体界面を通過させることによって、導管の掃除及びすすぎを補助するのに使用することもできる。より多い量の流体による連続的なすすぎと比較して、より少ない流体を使用するより効率的なすすぎが本方法によって実現されることが見出された。
【0096】
導管内の制約は、本発明におけるいくつかの目的を果たす。試料保持チャンバーと第1の導管の間に位置したキャピラリーストップは、十分な圧力がかけられることによって、キャピラリーストップの抵抗を克服するまで、保持チャンバー内の試料が移動するのを防止することによって、保持チャンバー内で試料計量を促進するのに使用される。第2の導管内の制約は、流体が狭窄部に到達するとき、廃棄物チャンバーに向かう代替経路に沿って洗浄流体をそらすのに使用される。ガスケット中の小さい穴が、疎水性コーティングと一緒に提供されることによって、十分な圧力がかけられるまで、第1の導管から第2の導管までの流れを防止する。本発明の導管内及び導管同士間の液体の流れを制御する機能は、本明細書で一括してバルブと呼ばれる。
【0097】
したがって、本発明の一実施形態は、分析物センサー又は分析物センサーのアレイを含む第1の導管に試料保持チャンバーが接続された使い捨てカートリッジを提供する。流体をある程度含む第2の導管は、第1の導管に接続され、第2の導管内の流体中に空気セグメントを導入することによって、これを区分することができる。ポンプ手段が第1の導管内の試料を移動させるのに提供され、これは、流体を第2の導管から第1の導管へと移動させる。したがって、1つ又は複数のセンサーは、試料に最初に接触し、次いで第2の流体に接触することができる。
【0098】
別の実施形態では、カートリッジは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に位置した閉鎖可能な(closeable)バルブを含む。この実施形態は、第1の導管に接続された唯一のポンプ手段を使用して、第2の導管から第1の導管への流体の移動を可能にする。この実施形態はさらに、本発明のカートリッジの導管を効率的に洗浄することを可能にし、これは、小さい使い捨てカートリッジの重要な機能である。稼動中、試料は移動されてセンサーに接触し、次いで閉鎖可能なバルブを通じて廃棄物チャンバーへと移動される。濡れると、閉鎖可能なバルブは、廃棄物チャンバーへの開口部を密封し、気密シールをもたらし、これは、第1の導管に接続されたポンプ手段のみを使用して、第2の導管内の流体が引き込まれてセンサーに接触するのを可能にする。この実施形態では、閉鎖可能なバルブは、流体がこのようにして移動するのを可能にし、廃棄物チャンバーから第1の導管に空気が入るのを防止する。
【0099】
別の実施形態では、閉鎖可能なバルブ、及び導管中にセグメントを導入するための手段の両方が提供される。この実施形態は、多くの利点、その中でも、センサー又はセンサーのアレイ上で区分された流体を往復運動させる能力を有する。したがって、第1のセグメント又は一連のセグメントがセンサーをすすぐのに使用され、次いで新鮮なセグメントが、測定を行うためにこれを差し替える。1つのポンプ手段(第1の導管に接続された)だけが必要とされる。
【0100】
別の実施形態では、分析物測定は、分析物センサーをコーティングする液体の薄膜中で実施される。そのような薄膜判定は、電流測定で実施されることが好ましい。このカートリッジは、試料がバルブを通じて追い出されるとき密封される閉鎖バルブ、及び導管内の換気口であって、少なくとも1つの空気セグメントが測定流体中に引き続いて導入されることを可能にし、それによって、試料がセンサーからすすがれる効率を増大させ、さらに、測定前にセンサーから実質的にすべての液体を除去することを可能にし、なおさらに、精度を改善し、再現性を内部チェックするために、センサー全体に新鮮な液体のセグメントが運ばれるのを可能にすることによって、連続した、繰り返しの測定を可能にする換気口の両方を有することにおいて、前述の実施形態と異なる。
【0101】
低濃度の免疫活性分析物を検出するための分析スキームは、上記に論じたように、酵素標識抗体/分析物/表面結合抗体「サンドイッチ」複合体の形成に依拠する。試料中の分析物の濃度は、酵素の比例した表面濃度に変換される。酵素は、基質を検出可能な生成物に変換することによって、分析物の化学的なシグナルを増幅することができる。例えば、アルカリホスファターゼが酵素である場合、1個の酵素分子は、1分当たり約9000の検出可能な分子を生成することができ、電気活性種がアルカリホスファターゼの代わりに抗体に結合されるスキームと比較して、分析物の検出性が数桁改善される。
【0102】
免疫センサーの実施形態では、センサーを最初に試料と、次いで、センサーからの応答を記録する前に洗浄流体と接触させるのが有利である。特定の実施形態では、試料は、試料内の対象とする分析物に結合する抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)で改質され、その後、改質された試料はセンサーに接触する。試料中の結合反応により、分析物/抗体−酵素複合体が生成される。センサーは、電極表面付近に付着される分析物に対する固定化抗体を含む。センサーに接触すると、分析物/抗体−酵素複合体は、電極表面付近で固体化抗体に結合する。この時点で、可能な限り多くの非結合抗体−酵素コンジュゲートを電極の近傍から除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルを最小にすることが有利である。抗体−酵素複合体の酵素は、有利には、流体中に供給される基質を変換することによって、電気化学的に活性な種を生成することができる。この活性種は電極付近で生成され、適当な電位が印加されるとき、電極での酸化還元反応から電流をもたらす(電流測定動作)。或いは、電気活性種がイオンである場合、これは、電位差測定で測定することができる。電流測定では、電位は、測定の間固定するか、又は所定の波形にしたがって変更することができる。例えば、サイクリックボルタンメトリーの周知技法において使用されるように、限度間で電位をスイープするのに三角波を使用することができる。或いは、矩形波などのデジタル技法を使用することによって、電極に隣接する電気活性種の検出の感度を改善することができる。電流又は電圧測定から、試料中の分析物の量又は存在が計算される。これら及び他の分析的電気化学的方法は、当技術分野で周知である。
【0103】
カートリッジが免疫センサーを含む実施形態では、免疫センサーは、有利には、非反応性金属、例えば、金、白金、又はイリジウムなどのベースセンサー、及び微粒子、例えば、ラテックス粒子に付着された生理活性層を重ね合わされた多孔質選択透過性層から微細加工される。微粒子は、電極表面を覆う多孔質層上に分配され、接着した、多孔質生理活性層を形成する。生理活性層は、対象とする分析物に特異的に結合する特性、又は分析物が存在するとき、検出可能な変化を現す特性を有し、分析物に対する固定化抗体であることが最も好ましい。
【0104】
図面を参照すると、本発明のカートリッジは、カバー(図1及び2)、ベース(図4)、及びベースとカバーの間に配置された薄膜接着性ガスケット(図3)を備える。次に図1を参照すると、カバー1は、剛性の物質、好ましくはプラスチックでできており、ひびが入ることなく、可動性のヒンジ領域5、9、10で繰り返し変形することができる。カバーは、可動性ヒンジ9によってカバーの本体に取り付けられた蓋2を備える。稼動中、試料を試料保持チャンバー34内に導入した後、蓋は、試料流入ポート4の入口上に固定され、試料の漏れを防止することができ、蓋は、フック3によって所定の位置に保持される。カバーは、2つのパドル6、7をさらに備え、これらは、カバーの本体に対して移動することができ、可動性のヒンジ領域5、10によって本体に取り付けられている。稼動中、ポンプ手段によって操作されるとき、パドル6は、薄膜ガスケット21によって覆われた、空洞43を備える空気ブラダー(air bladder)に力をかけることによって、カートリッジの導管内の流体を移動させる。第2のポンプ手段によって操作されるとき、パドル7は、ガスケット21に力をかけ、これは、その中に切られたスリット22のために変形することができる。カートリッジは、読取装置内に挿入するように適応されており、したがって、この目的のために複数の機械的及び電気的接続を有する。カートリッジを手動で操作することが可能であることも明らかであるはずである。したがって、読取装置内にカートリッジを挿入すると、ガスケットは、空洞42内に位置した、分析/洗浄液(「流体」)約130μLで満たされた流体の入ったホイルパック上に圧力を伝達し、スパイク38上でパッケージを破裂させ、短い、横断する導管を介してセンサーの導管に接続された導管39内に流体を排出する。分析流体は、最初に分析導管の前部を満たし、キャピラリーストップとして作用するテープガスケット中の小さい開口部上に流体を押しつける。カートリッジに施される分析器の機構の他の動作は、分析導管内の制御された位置で、1つ又は複数のセグメントを分析流体中に投入するのに使用される。これらのセグメントは、最少の流体を用いてセンサー表面及び周囲の導管の洗浄を補助するのに使用される。
【0105】
カバーは、薄い柔軟膜8によって覆われた穴をさらに備える。稼動中、膜にかけられる圧力は、ガスケット中の小さい穴28を通して、導管20内に1つ又は複数の空気セグメントを排出する。
【0106】
図2を参照すると、ベースの下方の表面は、第2の導管11、及び第1の導管15をさらに備える。第2の導管11は狭窄部12を含み、これは、流体の流れに抵抗をもたらすことによって流量を制御する。任意選択のコーティング13、14は、疎水性表面を与え、これらは、ガスケットの穴31、32と一緒に、第2及び第1の導管11、15の間の流量を制御する。ベース内の陥凹17は、導管34内の空気をガスケット中の穴27を通して導管34に送るための経路を提供する。
【0107】
図3を参照すると、薄膜ガスケット21は、ベース及びカバー内の導管同士間の流体の移動を促進し、必要な場合、圧力下でガスケットを変形させるための様々な穴及びスリットを備える。したがって、穴24は、流体が導管11から廃棄物チャンバー44内に流れるのを可能にし、穴25は、導管34と15の間にキャピラリーストップを備え、穴26は、陥凹18と導管40の間で空気が流れるのを可能にし、穴27は、陥凹17と導管34の間に空気の移動をもたらし、穴28は、流体が導管19から、任意選択の閉鎖可能バルブ41を介して廃棄物チャンバー44に流れるのを可能にする。穴30及び33は、それぞれカッタウェイ35及び37内に収容された複数の電極が、導管15内で流体に接触するのを可能にする。特定の実施形態では、カッタウェイ37は、接地電極、及び/又は対参照電極を収容し、カッタウェイ35は、少なくとも1つの分析物センサー、及び任意選択により電気伝導度測定センサーを収容する。図3において、テープ21は、機器が、バーブ38上のエレメント42内のカリブラントポーチ(calibrant pouch)を破裂させるために下向きの力をかけるとき、3つの切れ目22によって囲まれたテープが変形するのを可能にするための22におけるスリットである。このテープはまた、23において切れ目であり、これは、機器が下向きの力を与えるとき、テープがエレメント43内に下向きに曲がるのを可能にし、チャンバー43から空気を排出し、導管15を通してセンサーに試料流体を移動させる。図3中のエレメント29は、テープ内の開口部として作用し、カバー図2内の領域を、ベース図4と接続している。
【0108】
図4を参照すると、導管34は、組み立てられたカートリッジ内で、試料流入ポート4を第1の導管11に接続する試料保持チャンバーである。カッタウェイ35は、任意選択の1つ又は複数の電気伝導度測定センサーと一緒に、1つ若しくは複数のセンサー、又は分析物応答性表面を収容する。カッタウェイ37は、電気化学的センサーのための戻り電流経路として必要な場合、接地電極を収容し、任意選択の電気伝導度測定センサーを収容することもできる。カッタウェイ36は、ガスケットの穴31と32の間の流体経路を提供し、その結果流体は、第1と第2の導管の間を通過することができる。陥凹42は、読取装置内に挿入された後にパドル7上にかけられる圧力のために、スパイク38によって穴を開けられる組み立てられたカートリッジ内に、流体を含むパッケージ、例えば、破裂可能なポーチを収容する。穴を開けられたパッケージからの流体は、39で第2の導管内に流れる。空気ブラダーは陥凹43を備え、これは、ガスケット21によってその上面で密封される。空気ブラダーは、ポンプ手段の一実施形態であり、パドル6にかけられる圧力によって作動し、これは、導管40内の空気を移動させ、それによって、試料を試料チャンバー34から第1の導管15内に移動させる。
【0109】
空気が、ブラダーから試料保持チャンバー(ガスケットの穴27)に入る位置、及びキャピラリーストップ25は、試料保持チャンバーの所定の体積を一緒に画定する。パドル6が押し下げられるとき、この体積に対応する量の試料が第1の導管内に移動する。したがって、この配置は、計量された量の未計量試料をカートリッジの導管内に送るための計量手段の1つの可能な実施形態である。
【0110】
本カートリッジでは、試料セグメントを計量するための手段は、ベースのプラスチック部分に提供される。セグメントのサイズは、ベース内のコンパートメントのサイズ、並びにキャピラリーストップ及びテープガスケット中の空気パイプ穴の位置によって制御される。この体積は、2〜200μLに容易に変更することができる。試料サイズのこの範囲の拡大は、本発明の脈絡の範囲内で可能である。
【0111】
流体は、試料がセンサー導管19に差し出される前に、試薬(例えば、粒子、可溶性分子、又はIgM若しくはその断片)を改質するのに使用することができる分析前用導管11を通して、試料中に押し出される。或いは、改質試薬は、部分16を越えて部分15内に位置することができる。分析前用導管を通して試料を押し出すことはまた、ダイヤフラムポンプパドル7に張力を導入する機能を果たし、これは、流体移動の始動に対するその応答性を改善する。
【0112】
いくつかのアッセイでは、分析物の定量化が要求される場合、計量は有利である。カートリッジの外表面の汚染を防止するために、導管から排出される試料及び/又は流体のための廃棄物チャンバー44が提供される。廃棄物チャンバーを外部の大気に接続する排出口45も提供される。カートリッジの1つの望ましい特徴は、試料が装填されると、オペレーター又は試料に接触する他のものを伴わずに、分析を完了し、カートリッジを廃棄することができることである。
【0113】
次に図5を参照すると、カートリッジ及びコンポーネントの特徴の概略図が提供されており、51〜57は、試料又は流体を改質するための乾燥試薬で任意選択によりコーティングすることができる、導管及び試料チャンバーの一部である。試料又は流体は、乾燥試薬の上を少なくとも1回通過することによって、乾燥試薬を溶解させる。試料を改質するのに使用される試薬は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる。抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)、IgM及び/又はその断片、IgG及び/又はその断片、並びにアッセイ化合物の中で特異的又は非特異的結合反応を防止する他の遮断剤。可溶性でないが、カートリッジの内表面にアッセイ成分が非特異的に吸着するのを防止するのに役立つ表面コーティングも提供することができる。
【0114】
特定の実施形態では、閉鎖可能なバルブが、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に提供される。一実施形態では、このバルブ58は、不浸透性物質でコーティングされた、乾燥スポンジ物質を含む。稼動中、スポンジ物質が試料又は流体と接触すると、スポンジが膨潤することによって、空洞41(図4)を塞ぎ、それによって廃棄物チャンバー44への液体のさらなる流れが実質的に遮断される。さらに、濡れたバルブは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間の空気の流れも遮断し、これにより、試料チャンバーに接続された第1のポンプ手段が、第2の導管内の流体を移動させ、以下の様式で第2の導管から第1の導管へと流体を移動させることが可能になる。
【0115】
次に免疫センサーカートリッジの概略の構成を例示する図6を参照すると、3つのポンプ61〜63が提供されている。これらのポンプは、特定の実施形態の観点から記載されているが、ポンプ61〜63のそれぞれの機能を実施することができる任意のポンピングデバイスを、本発明の範囲内で使用することができることが容易に理解されるであろう。したがって、ポンプ1の61は、試料保持チャンバーから第1の導管内に試料を移動させることができるべきであり、ポンプ2の62は、第2の導管内の流体を移動させることができるべきであり、ポンプ3の63は、少なくとも1つのセグメントを第2の導管内に挿入することができるべきである。本願に想定される他のタイプのポンプとして、それだけに限らないが、圧力が空気袋にかけられる気圧力学手段と接触している空気袋、可動性ダイヤフラム、ピストンとシリンダー、電磁ポンプ、及び音波ポンプが挙げられる。ポンプ3の63を参照すると、用語「ポンプ」は、1つ又は複数のセグメントが第2の導管内に挿入されるすべてのデバイス及び方法、例えば、空気袋から空気を移動させるための気圧力学手段、溶解するとガスを生じる乾燥化学物質、又は電流源に作動可能に接続された複数の電気分解電極などを含む。特定の実施形態では、セグメントは、1つを超える空気ブラダー又はチャンバーを有することができる機械的なセグメント生成ダイヤフラムを使用して生成される。示したように、ウェル8は、1つの開口部を有し、これは、内側のダイヤフラムポンプとセグメントが注入される、流体が満たされた導管20を接続する。ダイヤフラムは、複数のセグメントを生成するために区分することができ、それぞれのセグメントは、流体で満たされた導管内の特定の位置に注入される。図6において、エレメント64は、免疫センサーが、捕捉反応を実施することによって、固定化抗体、分析物、及びシグナル抗体を含むサンドイッチを形成する領域を示す。
【0116】
代替の実施形態では、セグメントは、受動的な機能を使用して注入される。カートリッジのベース内のウェルは、テープガスケットによって密封される。ウェルを覆うテープガスケットは、いずれかの端部に2つの小さい穴を有する。一方の穴は開いているが、他方は、流体と接触すると湿るフィルター物質で覆われている。このウェルは、目の粗い親水性物質、例えば、セルロース繊維フィルター、紙フィルター、又はガラス繊維フィルターなどで満たされている。この親水性の物質は、キャピラリー作用を介してベースのウェル内に液体を引き込み、先にウェル内にあった空気を移動させる。空気は、テープガスケット中の開口部を通じて排出され、体積が、ウェルの体積及び目の粗い親水性物質の空隙体積によって決定されるセグメントを作り出す。ベース内のウェルへの入口の一方を覆うのに使用されるフィルターは、流体がウェルを満たす速度を計測し、それによってセグメントが、カバー内の導管中に注入される速度を制御するように選択することができる。この受動的な機能は、任意の数の制御されたセグメントが、流体経路内の特定の位置に注入されることを可能にし、最小の空間で済む。
【0117】
本開示に基づくと、本方法は、分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減又は排除する方法を提供し、この場合、試料、例えば、全血試料が最初に収集され、次いで、IgM又はその断片を含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質されることが明らかである。これは、少なくとも約20μg/mLの溶解した非ヒトIgM濃度を伴う試料を生じ、これは、試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分である。このステップが完了すると、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することによって、分析物の濃度を求めることが可能である。
【0118】
乾燥試薬の溶解、及びサンドイッチ形成ステップは、同時に、又は段階的な様式で行うことができることに注意されたい。この方法は、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPである分析物を主に対象とするが、他のマーカー、例えば、β−HCG、TSH、D−二量体、及びPSAなどに使用することもできる。異好性抗体の大部分が検出ステップの前に隔離されることを保証するために、試料改質ステップは、約1分〜約30分の範囲内の選択された所定の期間のものであることが好ましい。
【0119】
この方法は、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備え、これらのエレメントの少なくとも1つの少なくとも一部が、乾燥試薬でコーティングされているカートリッジ内で実施されることが好ましい。乾燥試薬は、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及び様々な組合せを含むことができることに注意されたい。さらに、乾燥試薬は、分析物に対する酵素−標識抗体(シグナル抗体)も含むことができる。
【0120】
TnI及びBNPアッセイについて、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、少なくとも20μg/mL、例えば、少なくとも30μg/mL、少なくとも40μg/mL、又は少なくとも50μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)を与えることが好ましい。範囲の観点から、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20μg/mL〜約200μg/mL、好ましくは約20μg/mL〜約60μg/mLのIgM濃度(又は同等のIgM断片濃度)を与えることが好ましい。
【0121】
好適な実施形態では、例えば、TnI及びBNPアッセイでは、IgG又はその断片が、IgM又はIgM断片と組み合わせて使用される。したがって、例えば、乾燥試薬コーティングは、試料中に溶解することよって、約50μg/mL超、例えば、約100μg/mL超、約250μg/mL超、又は約500μg/mL超のIgG濃度又は同等のIgG断片濃度が得られるのに十分な量でIgG又はIgGの断片をさらに含むことができる。範囲の観点から、IgG又はその断片を用いた改質により、約50μg/mL〜約5000μg/mL、好ましくは約500μg/mL〜約1000μg/mLのIgG濃度又は同等のIgG断片濃度を生じることが好ましい。したがって、いくつかの好適な実施形態では、乾燥試薬は、試料中に溶解することによって、約20〜約200μg/mL、好ましくは約20μg/mL〜約60μg/mLのIgM濃度、及び約50〜約5000μg/mL、好ましくは約500μg/mL〜約1000μg/mLのIgG濃度が得られる。
【0122】
生体試料、例えば、全血が、IgG又はその断片及びIgM又はその断片の両方を用いて改質される実施形態では、IgM又はその断片及びIgG又はその断片は、0.004超、例えば、0.02超、0.05超、又は0.1超の重量比で添加されることが好ましい。範囲の観点から、IgM又はその断片とIgG又はその断片の重量比は、0.004〜4、例えば、0.02〜2、又は0.05〜0.15であることが好ましい。これらの重量比は、所望の改質化媒体、例えば、乾燥コーティング層に、並びに得られた改質された試料中に当てはまる。
【0123】
上記に示したように、個々のモノマーが、F(ab’)2領域に結合されたFc領域から形成され、その結果として2つのFab領域を含む五量体を含む全IgM分子の使用に加えて、又はその代わりに、IgMの断片を使用することも可能である。IgM断片化は、F(ab’)2断片、Fab断片、及び/又はFc断片のいくつかの組合せを作り出すために、ジスルフィド結合の還元(−S−S−から−SH HS−)、及び酵素のペプチン又はパパイン消化の組合せを使用して、様々に実現することができる。これらの断片は、別個に使用するためにクロマトグラフィーによって分離し、又は組合せで使用することができる。例えば、遮断部位がFc断片上にある場合、これは、全IgM分子の代わりに使用することができる。同じことが、Fab断片及びF(ab’)2断片にも当てはまる。この手法が使用される場合、本質的な断片モル濃度は、天然IgM五量体のモル濃度と同様、例えば、等価であることが望ましい。先に述べたように、本発明の好適な実施形態は、少なくとも約20μg/mLの濃度でIgMを使用する。IgM(五量体)の分子量は約900KDであるので、これは、約22.2nMのIgM濃度と等価である。IgM断片が使用される場合、実質的に同じレベルの遮断を得るために、Fc及びF(ab’)2において5倍のモル差、並びにFab断片において10倍のモル差となることが望ましい。
【0124】
実際のアッセイステップでは、固定化抗体とシグナル抗体の間でサンドイッチが形成されたら、試料媒質を引き続いて廃棄物チャンバーへと洗浄し、その後、酵素と反応して電気化学的検出可能な生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝すことが好適である。好適な形式は、電気化学的酵素結合免疫吸着アッセイである。
【0125】
好ましくは、デバイスは、異好性抗体による干渉が低減された、試料、例えば、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するものである。デバイスは、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを含む筐体であり、導管は、試料が、制御された様式で流入ポートから免疫センサーに進むのを可能にする。一態様では、筐体の少なくとも一部は、乾燥試薬でコーティングされており、この試薬は、非ヒトIgM及び/又はその断片、又は非ヒトIgG及び非ヒトIgM及び/若しくはこれらの断片の混合物を含むことができる。重要な特徴は、乾燥試薬が、少なくとも約20μg/mLのIgM濃度又は同等のIgM断片濃度を生じるように、試料中に溶解することができることである。これは一般に、試料中のいずれの異好性抗体も隔離するのに十分である。好適な実施形態では、デバイスは免疫参照センサーも備える。免疫センサーは、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPなどの分析物を検出するのを対象とすることが好ましい。このデバイスが稼動するシステムは、一般に、試料が、所定の期間、例えば、1〜30分間、試薬と接触したままになることを可能にする。デバイスは、例えば、1つの試料で満たされ、検査のために1回使用され、次いで廃棄される使い捨てカートリッジであることが好ましい。一般に、このデバイスは、試料を廃棄物チャンバーへと洗浄することができる洗浄流体、及び免疫センサーにおいて酵素サンドイッチと反応することによって、電気化学的検出に適した生成物を形成することができる基質を含む。
【0126】
より広くには、本発明は、任意の生体試料、例えば、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態を含む試料についての分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減することに関する。さらに、所与の非ヒトIgM濃度を得るのに試料を改質するための方法は、乾燥試薬の溶解に基づくもの、又はIgMを含有する溶液の添加によるものとすることができる。さらに、選択された分析物の濃度を求めるために、改質された試料に対してイムノアッセイを実施するステップは、電気化学的技法、例えば、電流測定及び電位差測定、並びにまた光学技法、例えば、吸光度、蛍光及び発光を含めた様々な技法に基づくことができる。
【0127】
本発明は、以下の非限定的な例を考慮して、より良好に理解されるであろう。
【0128】
(例1)
図7は、心臓機能のマーカーであるトロポニンI(TnI)の存在及び量を求めるための、本発明の特定の実施形態による電流測定イムノアッセイの原理を例示する。血液試料を、本発明のカートリッジの試料保持チャンバー内に導入し、試料保持チャンバー内にコーティングされた乾燥試薬の溶解によって改質した。乾燥試薬は、上述したようにIgM 77を含み、これは、試料中に溶解すると、試料中に含まれる場合のある相補性異好性抗体78に選択的に結合する。示していない他の実施形態では、IgMに由来する断片を使用することによって、試料中に含まれる異好性抗体を隔離することができる。示したように、乾燥試薬はIgG 79も含み、これも、試料中に溶解した後、相補性抗体78に選択的に結合する。他の実施形態では、IgGに由来する断片を使用することによって、試料中に含まれる異好性抗体を隔離することができる。
【0129】
さらに、ポリクローナル抗トロポニンI抗体(aTnI)71(シグナル抗体)に共有結合しているアルカリホスファターゼ酵素(AP)を含むコンジュゲート分子も、試料中に溶解させた。このコンジュゲートは、血液試料中でTnI、70に特異的に結合し、AP−aTnIコンジュゲートに結合したTnIから構成される複合体を生成する。捕捉ステップにおいて、この複合体は、免疫センサーに付着又は近接した捕捉aTnI抗体72(固定化抗体)に結合する。センサーチップは伝導率センサーを有し、これは、試料がセンサーチップに到達した時をモニターするのに使用される。流体の到達時間を使用することによって、カートリッジ内の漏れを検出することができる。すなわち、到達の遅延が漏れを知らせる。センサー導管内の試料セグメントの位置は、位置マーカーとして流体の縁部を使用して能動的に制御することができる。試料/空気界面が伝導率センサーを横切る際、正確なシグナルが生成され、これは、流体マーカーとして使用することができ、このマーカーから、制御された流体の往復運動を実施することができる。流体セグメントは、センサー上を、縁部から縁部まで優先的に往復されることによって、免疫センサー表面に試料全体を提示する。第2の試薬を、センサーチップを越えたところにあるセンサー導管内に導入することができ、これは、流体の往復の間に均一に分布された状態になる。
【0130】
センサーチップは、対象とする分析物のための、抗体でコーティングされた1つ又は複数の捕捉領域を含む。これらの捕捉領域は、ポリイミドの疎水性環、又は別のフォトリソグラフィーで作製された層によって画定される。何らかの形態での、例えば、ラテックス微小球に結合した抗体を含有する微小滴又はいくつかの微小滴(サイズが約5〜40ナノリットル)を、センサーの表面上、又はセンサー上の選択透過性層上に分注する。感光された(photodefined)環は、この水性液滴を含み、抗体がコーティングされた領域を数ミクロンの精度まで局在させる。捕捉領域は、0.03〜約2平方ミリメートルのサイズで作製することができる。このサイズの上限は、本実施形態における導管及びセンサーのサイズによって制限され、本発明の限界ではない。
【0131】
したがって、金電極74は、TnI/AP−aTnI複合体が結合する、共有結合した抗トロポニンI抗体を含むバイオ層73でコーティングされる。それによって、APは、試料中に最初に存在するTnIの量に比例して、電極付近に固定化される。特異的結合に加えて、酵素−抗体コンジュゲートは、センサーに非特異的に結合する場合がある。NSBは、センサーからのバックグラウンドシグナルをもたらし、これは、望ましくなく、最小限にされることが好ましい。上述したように、すすぎプロトコールにより、特に、センサーをすすぐために区分された流体を使用することにより、このバックグラウンドシグナルを最小限にするために効率的な手段が提供される。すすぎステップの後の第2のステップにおいて、例えば、アルカリホスファターゼにより加水分解されることによって、電気活性生成物76を生成する基質75がセンサーに提示される。特定の実施形態では、基質は、リン酸化フェロセン又はp−アミノフェノールを含む。電流測定電極は、直接基質ではなく、加水分解された基質の生成物を酸化又は還元するのに十分な、一定の電気化学的電位で保たれるか、又は電位が、適切な範囲で1回若しくは複数回掃引される。任意選択により、第2の電極を1つの層でコーティングすることができ、この層で、製造の間にTnI/AP−aTnIの複合体が作られることによって、測定のための参照センサー又は較正手段として作用する。
【0132】
本例では、センサーは、2つの電流測定電極を備え、これらは、4−アミノフェニルホスフェートと酵素標識アルカリホスファターゼの反応から酵素的に生成される4−アミノフェノールを検出するのに使用される。電極は、好ましくは、ポリイミドの感光された層でコーティングされた金表面から作製される。絶縁ポリイミド層中の規則正しく配置された開口部は、小さい金電極のグリッドを画定し、ここで4−アミノフェノールは、1分子当たり2電子の反応で酸化される。センサー電極は、バイオ層をさらに備える一方で、参照電極は、例えば、バイオ層を欠いた金電極から、又は銀電極、若しくは他の適当な物質から構築することができる。異なるバイオ層は、各電極に異なる分析物を検知する能力をもたらすことができる。
【0133】
p−アミノフェノール種などの基質は、基質と生成物のE(1/2)が実質的に異なるように選択することができる。好ましくは、基質のボルタンメトリー半波電位E(1/2)は、生成物のそれより実質的に高い(より正である)。条件が満たされれば、生成物は、基質の存在下で、選択的に電気化学的に測定することができる。
【0134】
電極のサイズ及び間隔は、感度及びバックグラウンドシグナルを決定することにおいて重要な役割を果たす。グリッドにおける重要なパラメータは、露出した金属の百分率及び活性電極同士間の間隔である。電極の位置は、抗体捕捉領域の真下であっても、制御された距離によって捕捉領域からずれていてもよい。電極の実際の電流測定シグナルは、抗体捕捉場所に対するセンサーの位置決め、及び分析の間の流体の動きに依存する。電極での電流が記録され、これは、センサー近傍における電気活性生成物の量に依存する。
【0135】
この実施例におけるアルカリホスファターゼ活性の検出は、4−アミノフェノール酸化電流の測定に依拠する。これは、Ag/AgCl接地チップに対して約+60mVの電位で実現される。使用される検出の正確な形態は、センサー構成に依存する。センサーの1つの型では、金微小電極のアレイが、抗体捕捉領域の真下に配置される。分析流体がこのセンサー上に引き寄せられるとき、捕捉場所上に位置した酵素が、酵素律速反応で、4−アミノフェニルホスフェートを4−アミノフェノールに変換する。4−アミノフェニルホスフェートの濃度は、過剰、例えば、Km値の10倍であるように選択される。分析溶液は、9.8のpHに緩衝された、ジエタノールアミン、1.0MのNaCl中0.1Mである。さらに、分析溶液は、0.5mMのMgCl2を含有し、これは、酵素のための補助因子である。或いは、炭酸塩緩衝液は、所望の特性を有する。
【0136】
別の電極の幾何学的配置の実施形態では、電極は、捕捉領域から数百ミクロン離して配置される。分析流体の新鮮なセグメントが、捕捉領域上に引き寄せられるとき、酵素生成物が、電極反応により無損失で形成する。しばらくして、溶液は、検出器電極上の捕捉領域から徐々に引き寄せられ、電流スパイクを生じ、これから酵素活性を求めることができる。
【0137】
アルカリホスファターゼ活性の高感度な検出における重要な考慮事項は、金センサーにおいて起こるバックグラウンドの酸化及び還元に関連する非4−アミノフェノール電流である。金センサーは、これらの電位で、塩基性緩衝液中でかなりの酸化電流を与える傾向がある。バックグラウンド電流は、緩衝液濃度、金電極の面積(露出面積)、表面前処理、及び使用される緩衝液の性質に大部分は依存する。ジエタノールアミンは、アルカリホスファターゼについての特に良好な活性化緩衝液である。モル濃度で、酵素速度は、炭酸塩などの非活性化緩衝液に対して約3倍増大する。
【0138】
代替の実施形態では、抗体又は他の分析物結合分子にコンジュゲートした酵素は、ウレアーゼであり、基質は尿素である。アンモニウム感受性電極を使用することによって、尿素の加水分解で生成されるアンモニウムイオンが、この実施形態では検出される。アンモニウム特異的電極は、当業者に周知である。適当な、微細加工されたアンモニウムイオン選択的電極は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,200,051号に開示されている。基質と反応してイオンを生じる他の酵素は、それとともに使用される他のイオンセンサーと同様に、当技術分野で公知である。例えば、アルカリホスファターゼ基質から生成されるリン酸は、リン酸イオン選択的な電極において検出することができる。
【0139】
次に図8を参照すると、微細加工された免疫センサーの実施形態の構成が例示されている。好ましくは、平面の非導電基板80が提供され、その上に、従来の手段又は当業者に公知の微細加工によって、導電層81が堆積される。導電物質は、金又は白金などの貴金属であることが好ましいが、イリジウムなどの他の非反応性金属も使用することができ、同様に、グラファイト、導電性ポリマー、又は他の物質の非金属電極も使用することができる。電気的な接続部82も提供される。バイオ層83は、電極の少なくとも一部に堆積される。本開示では、バイオ層は、対象とする分析物に結合することができ、又は測定可能な変化をもたらすことによって、そのような分析物の存在に応答することができる十分な量の分子84を表面上に含む多孔質層を意味する。任意選択により、米国特許第5,200,051号に記載されているように、電気化学的干渉物質をスクリーニングするために、電極とバイオ層の間に選択透過性スクリーニング層を介在させることができる。
【0140】
特定の実施形態では、バイオ層は、約0.001〜50ミクロンの範囲内の特定の直径のラテックスビーズから構築される。ビーズは、バイオ層の上記定義に一致する任意の適当な分子の共有結合によって修飾されている。タンパク質のリシン又はN末端アミン基の容易なカップリングのために、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を提供することを含めて、多くの結合方法が当技術分野で存在する。特定の実施形態では、生体分子は、イオノフォア、補助因子、ポリペプチド、タンパク質、糖ペプチド、酵素、免疫グロブリン、抗体、抗原、レクチン、神経化学受容体、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又は適当な混合物の中から選択される。最も特定の実施形態では、生体分子は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、トロポニンI、トロポニンT、トロポニンC、トロポニン複合体、クレアチンキナーゼ、クレアチンキナーゼサブユニットM、クレアチンキナーゼサブユニットB、ミオグロビン、ミオシン軽鎖、又はこれらの修飾断片の1つ又は複数に結合するように選択される抗体である。そのような修飾断片は、天然部分又は合成部分を用いた化学修飾を含めて、少なくとも1つのアミノ酸の酸化、還元、欠失、付加、又は修飾によって生成される。好ましくは、生体分子は、分析物に特異的に結合し、分析物リガンドに結合するための親和定数が約10−7〜10−15Mである。
【0141】
一実施形態では、適当な分子によって共有結合的に修飾された表面を有するビーズを含むバイオ層は、以下の方法によってセンサーに固定される。マイクロディスペンシング針が使用されることによって、修飾されたビーズの懸濁液の、好ましくは約20nLの小液滴がセンサー表面上に堆積される。液滴を乾燥させ、これにより表面上にビーズがコーティングされ、これは、使用中移動しにくい。
【0142】
バイオ層が電流測定センサーに対して固定された位置にある免疫センサーに加えて、本発明は、バイオ層が、可動性である粒子上にコーティングされる実施形態も想定する。カートリッジは、分析物と相互作用することができる可動性微粒子、例えば、捕捉ステップの後で電流測定電極に局在化し、それによって磁力が、測定用電極に粒子を集めるのに使用される磁性粒子を含むことができる。本発明における可動性微粒子の1つの利点は、試料又は流体中のその動きが結合反応を加速し、アッセイの捕捉ステップをより速くすることである。非磁性可動性微粒子を使用する実施形態については、電極でビーズを捕らえるのに多孔質フィルターが使用される。
【0143】
次に図9を参照すると、1つの基板上のいくつかの電極のためのマスク設計が例示されている。マスキング及びエッチング技法によって、独立した電極及びリードを堆積することができる。したがって、複数の免疫センサー、94及び96、並びに電気伝導度測定センサー、90及び92が、読取装置への電気的接続を行うための、そのそれぞれの接続パッド91、93、95、及び97と一緒に、低コストでコンパクトな範囲に提供される。原理上は、それぞれが異なる分析物に感受性であり、又は対照センサー若しくは参照免疫センサーとして作用するセンサーの非常に大きいアレイをこのようにしてアセンブルすることができる。
【0144】
具体的には、免疫センサーは以下のように作製される。シリコンウエハーを熱酸化することによって、約1ミクロンの絶縁酸化物層が形成される。チタン/タングステン層が、100〜1000オングストロームの間の好ましい厚さまで、酸化物層上にスパッタされ、その後、最も好ましくは800オングストロームの厚さである金の層がスパッタされる。次に、フォトレジストがウエハー上にスピニングされ、乾燥され、適切にベーキングされる。次いで、図9中に例示したものに対応するマスクなどのコンタクトマスクを使用して、表面が露光される。潜像が現像され、ウエハーが金エッチャントに曝される。パターン形成された金層が感光性ポリイミドでコーティングされ、適切にベーキングされ、コンタクトマスクを使用して露光され、現像され、O2プラズマ中で浄化され、好ましくは350℃で5時間イミド化される。抵抗性加熱素子として作用するために、ウエハーの裏面の任意選択のメタライゼーションを実施することができ、この場合、免疫センサーは、サーモスタットで調節された形式で使用されるべきである。次いで表面が、抗体でコーティングされた粒子でプリントされる。好ましくは体積が約20nLであり、脱イオン水中、1%の固体含量を含む液滴がセンサー領域上に堆積され、空気乾燥によって、定位置で乾燥される。任意選択により、抗体安定化試薬(SurModica Corp.又はAET Ltdによって供給された)が、センサー上にオーバーコートされる。
【0145】
粒子の乾燥は、基質を含有する試料又は流体中に溶解するのを防止する様式で、粒子を表面に接着させる。この方法は、センサーチップを大量に製造するのに適した、信頼でき、再現可能な固定化プロセスを提供する。
【0146】
(例2)
カートリッジの使用方法に関して、未計量の流体試料が、試料流入ポート4を通じて、カートリッジの試料保持チャンバー34中に導入される。キャピラリーストップ25は、この段階で試料が導管15へと通過するのを防止し、保持チャンバー34は、試料で満たされる。蓋2又はエレメント200は、カートリッジから試料が漏れるのを防止するために閉じられている。次いでカートリッジは、参照により本明細書に組み込まれている、Zelinの米国特許第5,821,399号に開示されているものなどの、読取装置内に挿入される。読取装置内にカートリッジを挿入することにより、42に位置した流体を含むパッケージに、このパッケージがスパイク38に対して押されたとき、穴を開ける機構が作動する。それによって流体は、第2の導管内に排出され、39、20、12及び11に順に到達する。12における狭窄部は、流体のさらなる移動を防止し、その理由は、流体が第2の導管部分11を介して廃棄物チャンバー44内に流れることによって、残留する静水圧が放散されるためである。第2のステップでは、ポンプ手段を稼動することにより、空気ブラダー43に圧力をかけ、導管40を通じ、カッタウェイ17及び18を通じて、導管34内に所定の位置27で空気を押し込む。キャピラリーストップ25及び位置27は、元の試料の計量された部分を区切る。試料が試料保持チャンバー34内にあるとき、試料は、チャンバーの内表面上の、IgM(及び/又はその断片)並びに他の物質を含む乾燥試薬コーティングで改質される。次いで試料の計量された部分は、空気ブラダー43内で生じる空気圧によって、キャピラリーストップを通じて排出される。試料は導管15内を通り、カッタウェイ35内に位置した1つ又は複数の分析物センサーに接触する。
【0147】
カットアウト35内に位置した免疫センサーを使用する実施形態では、試料は、センサーに到達する前に、例えば、酵素−抗体コンジュゲート(シグナル抗体)、及びIgM試薬又はその断片によって改質される。分析物がセンサーに効率的に結合するのを促進するために、分析物を含有する試料は、任意選択により、往復性の動きでセンサー上を繰り返して通される。好ましくは、約0.2と2Hzの間の往復振動数が使用され、最も好ましくは0.7Hzである。こうして、シグナル抗体に付随するシグナル酵素は、試料中に存在する分析物の量に比例して、電流測定電極表面のごく近くに運ばれる。
【0148】
分析物/酵素−抗体コンジュゲート複合体が免疫センサーに結合する機会が提供された後、試料は、空気ブラダー43にかけられるさらなる圧力によって排出され、試料は廃棄物チャンバー44に進む。次に洗浄ステップにより、非特異的に結合した酵素−コンジュゲートが、センサーチャンバーから除去される。第2の行為(conduct)における流体は、ポンプ手段43によって移動されてセンサーと接触する。分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーで検出されるまで、徐々に引き寄せられる。
【0149】
1つ又は複数の空気セグメントは、それだけに限らないが、(1)図14に示し、以下に記載されるような受動的な手段、(2)空気がフラップ又はバルブを通じて導管内に引き寄せられるポンプを使用する、導管内の圧力の一過性の低下を含めた能動的な手段、又は(3)導管内で流体と接触するとガスを遊離する、導管内に予め配置された化合物であって、カーボネート、ビカーボネートなどを挙げることができる化合物を溶解させることによるものを含めた、任意の適当な手段によって導管内に作製することができる。このセグメントは、試料が混入した流体を導管15から一掃することにおいて極めて有効である。センサー領域をすすぐ効率は、説明したように、1つ又は複数の空気セグメントを第2の導管中に導入することによって大いに増強される。空気セグメントの先頭縁部及び/又は後縁部は、センサー上を1回又は複数回通過することによって、試料から堆積する場合のある異質の物質をすすぎ、再懸濁する。異質の物質には、特異的に結合した分析物又は分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体以外の任意の物質が含まれる。しかし、すすぎが、それほど長引かず、又はセンサーからの、特異的に結合した分析物若しくは分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体の解離を促進するほど活発であることは、本発明の目的である。
【0150】
流体中に空気セグメントを導入することの第2の利点は、流体を区分することである。例えば、流体の第1のセグメントが、センサーをすすぐのに使用された後、次いで第2のセグメントは、2つのセグメントの混合を最小にして、センサー上に配置される。この機能は、非結合の抗体−酵素コンジュゲートをより効率的に除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルをさらに低減する。先端洗浄(front edge washing)の後、分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーにおいて検出されるまで徐々に引き寄せられる。このセグメントは、第1の分析流体試料と混合された、試料が混入した流体を一掃することにおいて極めて有効である。測定のために、流体の新しい部分がセンサー上に配置され、操作のモードに適切な場合、電流又は電位が時間の関数として記録される。
【0151】
(例3)
次に図15を参照すると、免疫センサーカートリッジの上面図が示されている。カートリッジ150は、好ましくはプラスチックで構築されたベース及び頂部部分を備える。2つの部分は、薄い接着性ガスケット又は薄い柔軟な膜によって接続されている。先の実施形態と同様に、組み立てられたカートリッジは、試料保持チャンバー151を備え、この中に、対象とする分析物を含有する試料が、試料入口167を介して導入される。試料の計量された部分は、カートリッジの2つの部分を接続するガスケット又は膜中に、0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって好ましくは形成されたキャピラリーストップ152と、試料ダイヤフラム156上を押しつけるパドルなどのポンプ手段の作用によって空気が導入される試料保持チャンバー内の所定箇所に位置した流入点155との合わせた作用によって、以前と同様に試料導管154(第1の導管)を介してセンサーチップ153に送達される。結合することが可能になるようにセンサーと接触した後、試料は、排出口157に移動され、この排出口はウィッキング材を含み、これは、試料を吸収し、それによって、液体又は空気のさらなる通過に対して排出口を閉じて密封する。ウィッキング材は、綿繊維物質、セルロース物質、又は孔を有する他の親水性物質であることが好ましい。この物質は、以下に記載される試料ダイヤフラム作動手段を引き続いて引っ込めることと釣り合った時間内でバルブが閉じ、その結果試料が、センサーチップの領域内に引き続いて引き戻されないほど十分に吸収性である(すなわち十分なウィッキング速度を有する)ことが、本願において重要である。
【0152】
示した特定の実施形態と同様に、一端で排出口159に、他端で、排出口157とセンサーチップ153の間に位置した試料導管のある箇所160の試料導管に接続された洗浄導管(第2の導管)158が提供される。読取装置内にカートリッジを挿入すると、流体は、導管158に導入される。好ましくは、流体は、ホイルポーチ(foil pouch)161内に最初に存在し、これは、作動手段によりポーチに圧力がかけられるとき、ピンによって穴を開けられる。ガスケット163中の小さい開口部を介して流体を導管154に接続する短い導管162も提供される。第2のキャピラリーストップは、流体がキャピラリーストップ160に到達するのを最初に防止し、その結果、流体は導管158内に保持される。
【0153】
排出口157が閉じられた後、ポンプが作動され、導管154内に圧力低下を作り出す。振動することによって断続的な空気のストリームをもたらす、ガスケット又は膜中にカットされた小さいフラップを好ましくは備える換気口164は、空気が第2の排出口165を介して導管158に入るための手段を提供する。第2の排出口165も、湿ったとき排出口を閉じることができるウィッキング材を好ましくは含み、これは、必要に応じて、試料ダイヤフラム156を引き続いてへこませることによって排出口165を閉じることを可能にする。試料ダイヤフラム156の作動と同時に、流体は、導管158からキャピラリーストップ160を通じて導管154に引き寄せられる。流体の流れが排出口164に入る空気によって妨害されるので、少なくとも1つの空気セグメント(セグメント又はセグメントのストリーム)が導入される。
【0154】
試料ダイヤフラム156がさらに引っ込むと、少なくとも1つの空気セグメントを含有する液体が引き戻され、センサーチップ153の感知表面を横切る。液体内に空気−液体の境界が存在することにより、残っている試料を除去するためのセンサーチップ表面のすすぎが増強される。好ましくは、試料ダイヤフラム156の運動は、分析物センサーに隣接するセンサーチップ内に収容された伝導率電極から受信されるシグナルと連動して制御される。このようにして、センサー上の液体の存在が検出され、別個のステップにおける流体の動きによって、複数の読み取りを実施することができる。
【0155】
流体の薄膜が、センサー、接地チップ165、及びセンサーと接地電極の間の導管154の壁の接触部分を覆うときのみ、分析物測定を実施することが、この実施形態では有利である。適当な膜は、センサーの隣に位置した電気伝導度測定センサーが、バルクの流体は、導管154のその領域内にもはや存在しないことを示すまで、試料ダイヤフラム156を操作することにより、流体を引き抜くことによって得られる。測定は、非常に低い(nA)電流で実施することができ、(バルクの流体と比較して)接地チップとセンサーチップの間の薄膜の抵抗を増大させることによって生じる電位降下は、重要でないことが判明した。
【0156】
接地チップ165は、銀/塩化銀であることが好ましい。二酸化ケイ素の表面などのより親水性の領域が点在した銀/塩化銀の小さい領域として接地チップをパターン形成するのに、相対的に疎水性の塩化銀表面上に容易に形成する空気セグメントを回避することが有利である。したがって、好適な接地電極構成は、高密度に配置され、二酸化ケイ素が点在した銀/塩化銀の正方形のアレイを含む。銀/塩化銀の領域がある程度くぼんでいる場合、意図していないセグメントを回避することにさらなる利点が存在する。
【0157】
次に図16を参照すると、免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図が示されている。領域R1〜R7は、特定の運転機能に関連する導管の特定の領域を表す。したがって、R1は試料保持チャンバーを表し、R2は試料導管を表し、それによって試料の計量された部分が捕捉領域に移され、試料が、導管の壁上にコーティングされた物質で任意選択により改質され、R3は、電気伝導度測定センサー及び分析物センサーを収容する捕捉領域を表し、R4及びR5は、第1の導管の部分を表し、これらは、導管壁上にコーティングされた物質で流体をさらに改質するのに任意選択により使用され、それによってより複雑なアッセイスキームが実現され、R6は、第2の導管の部分を表し、カートリッジが読取装置内に挿入されると、その中に流体が導入され、R7は、キャピラリーストップ160と166の間に配置された導管の部分を備え、その中でさらなる改質を行うことができ、R8は、箇所160と排出口157の間に配置された導管154の部分を表し、これは、その中に含まれる液体を改質するのにさらに使用することができる。
【0158】
(例4)
分析シーケンスの間の、流体工学と分析物測定の調整に関しては、ユーザーは、カートリッジ内に試料を入れ、分析器内にカートリッジを配置し、1〜20分で、1つ又は複数の分析物の定量的な測定が実施される。ここでは、分析の間に起こる事象のシーケンスの非限定例である。
(1)25〜50μL試料が試料入口167中に導入され、カバーとベースコンポーネントを一緒に保持している接着性テープ中の0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって形成されたキャピラリーストップ151まで満たされる。異好性干渉を改善するためのIgM及び/若しくはその断片、並びに好ましくはシグナル抗体を含む1つ又は複数の乾燥試薬コーティングが試料中に溶解される。ユーザーは、スナップフラップ上に取り付けられたラテックスゴムディスクを回して試料入口167を閉じ、カートリッジを分析器内に配置する。
(2)分析器はカートリッジと接触し、モーター駆動のプランジャーが、ホイルポーチ161の上を押し、洗浄/分析流体を中心の導管158へと強制的に外に出す。
(3)別個のモーター駆動のプランジャーは、試料ダイヤフラム156と接触し、試料の測定されたセグメントを試料導管に沿って(試薬領域R1からR2に)押す。試料は、伝導率センサーを介してセンサーチップ153で検出される。センサーチップは、捕捉領域R3内に配置される。
(4)試料は、試料ダイヤフラム156によって、所定の制御された様式で、制御された時間、R2とR5の間を往復されることによって、センサーへの結合を促進する。
(5)試料は、カートリッジの廃棄物領域(R8)に向けて押され、セルロース又は同様の吸収性芯の形態での受動的ポンプ157と接触する。この芯を湿らす作用は、空気の流れに対して芯を密封し、したがって試料ダイヤフラム156によって生じる過剰の圧力を逃すその能力を排除する。能動的な排出口は、図16の「制御された換気口」になる。
(6)試料導管の迅速な排気(試料ダイヤフラム156からモーター駆動のプランジャーを取り外すことによって行われる)は、空気(排出口からの)と第2の導管からの洗浄/分析流体の混合物を、図16中のR5とR4の間に位置した入口へと強制的に移動させる。試料導管の迅速な排気の繰り返しによって、一連の空気で分離された流体セグメントが生成され、これは、センサーチップを横切って試料入口に向けて引き寄せられる(R4から、R3、R2及びR1に)。これは、過剰の試薬を含まないセンサーを洗浄し、センサーを分析に適切な試薬で湿らせる。ホイルポーチに由来する洗浄/分析流体は、中心の洗浄/分析流体導管内のR7及びR6において試薬を添加することによってさらに改質することができる。
(7)洗浄/分析流体セグメントは、試料入口に向けてより遅い速度で引き寄せられることによって、分析流体の薄層のみを含むセンサーチップを生じる。この箇所で電気化学的な分析が実施される。分析の好適な方法は電流測定であるが、電位差測定又はインピーダンス検出も使用される。
(8)機構が後退し、カートリッジを分析器から取り出すことを可能にする。
【0159】
(例5)
いくつかの実施形態では、デバイスは、アッセイの間に起こるNSBの程度を評価する目的で免疫参照センサーを使用する。免疫参照センサーは、分析物免疫センサーとほぼ同じように作製され、例外は、免疫試薬が抗分析物抗体ではなく抗HSA(ヒト血清アルブミン)抗体であるということである。ヒト全血又は血漿試料に曝されると、参照センサーは、すべてのヒト血液試料中に存在する豊富な内因性タンパク質である、特異的に結合したHSAでコーティングされ、したがって、本イムノアッセイ形式を使用して行われるすべての個々の検査についての共通の参照をもたらす。不十分な洗浄により、又は干渉の存在により生じるNSBは、この第2のセンサーによってモニターすることができる。
【0160】
アッセイからの正味のシグナルは、参照センサーから生じる非特異的なシグナルを減じることによって、例えば、上記式4に示したような、正味のシグナル=分析物センサーシグナル−参照センサーシグナル−オフセットによって補正された分析物免疫センサーから生じる特異的なシグナルを含む。「オフセット」は、NSBに曝される2つのセンサーの傾向の差異を計上する係数である。実際には、これは、コンジュゲートを非特異的に結合するその能力に関して、各センサーの相対的な「粘性」を計上し、分析物が無く、干渉の無い試料の応答に基づいて確立される。これは、独立した実験によって行われる。
【0161】
参照センサーにおいて許容されるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される制限を受け、このアルゴリズムは、低分析物濃度での結果の完全性を保護することを追求し、低分析物濃度では、NSBの作用は、臨床的環境における意思決定を変更し得る様式でアッセイ結果に大きな影響を与える可能性がある。本質的な主要なことは、参照センサーにおける過剰なシグナルの存在が、不十分な洗浄ステップ又は干渉によるNSBの存在に関するフラグとして作用することである。
【0162】
図17は、2つが高レベルの異好性抗体活性を有し(ドナーA及びB)、1つが低異好性抗体活性(ドナーC)を有する3つの正常な健康なドナーについての、乾燥試薬をプリントされた試料入口(試料保持チャンバー)内のIgM濃度の関数としての免疫センサー応答を示す。具体的には、図17Aは、cTnI免疫センサーのシグナルの応答を示し、図17Bは、関連する免疫参照センサーを示し、図17Cは、正味のアッセイシグナル(分析物シグナル−参照シグナル)を示す。試料中に溶解した0〜100μg/mLのIgMの範囲にわたってすべてのデータが収集される。約20μg/mLを越えるIgM濃度は、これらの試料に対する異好性抗体の作用を実質的に改善することが、これらの図から明らかである。
【0163】
当業者は、分析物センサー及び参照センサーにおけるシグナルの減少は、IgMを添加した後、これらの試料において明白であり、動物種で産生される抗体から調製される免疫試薬に対する抗動物/異好性抗体の作用に関連する相対的な非特異性を実証することを認識するであろう。さらに、使用された試料は、臨床的環境外の正常な、名目上健康な個体において得られたので、これは、一般的な集団におけるこれらの干渉の比較的遍在する性質の証である。
【0164】
ドナーA及びBからの試料中で、相対的に極端な干渉が観察されたドナープールのサイズ(約200の個体)に基づくと、個体の約1%が、マウスIgMを用いて軽減することができる有意な異好性干渉を有することを推定することができる。
【0165】
異好性干渉は一般に、すなわち、軽減のためにIgMを必要とするもの以外に、集団の40%もの多くにおいて様々に起こることが推定される。臨床検査標準協会(CLSI)内因性抗体によるイムノアッセイ干渉;提案指針(Immunoassay Interference by Endogenous Antibodies;Proposed Guideline);CLSI文献I/LA30−P(ISBN 1−56238−633−6)を参照されたい。
【0166】
異好性干渉を示す試料を用いた本発明者らの試験では、これらの大部分は、IgG単独で中和することができるが、より小さいサブセット、おそらく10〜20%は、本明細書に記載されるように、軽減のためにIgMを必要とすることが示された。しかし、製造者は、すべての場合において、高い完全性の検査結果を提供しようと努力することを考慮すると、このサブセットは、干渉の中和/軽減の展望から対処されるべきであることが必要である。さらに、(i)内因性の抗体干渉の試験及び軽減は、適当な試料の入手可能性によって制限され、(ii)無干渉結果を生じさせるために、ますます高くなる濃度の干渉排除試薬を必要とするレベルで異好性干渉を抱える個体が存在する可能性が、見込みがあるとまでいかなくても、存在することが認識されるべきである。
【0167】
異好性軽減試薬のインパクトは、干渉を示す別個の試料において最も劇的である一方で、これらの干渉の遍在する性質は、軽減の改善は、個体の集団に適用されるとき、イムノアッセイにおけるばらつきの全般的な低下に関連し得ることを示す。個々の対象のアレイが、検査結果のばらつきを増大させるが、品質管理アルゴリズムによって検出されないような、十分に穏やかである、多様であるが別個のレベルの異好性干渉を有する場合、干渉の減少により、集団の測定に付随する全体的なばらつきが減少することが予期される。例えば、心臓トロポニンレベルについての、健康な個体の参照集団の測定は、異好性干渉が測定の過程の間に中和される程度に対する何らかの依存性を有することが予期される。それぞれ、検出不可能な心臓トロポニンが循環している、180の名目上健康な個体の集団を、干渉排除試薬の2つの製剤を使用して測定した。1つの製剤は、375μg/mLのIgGを含んでいた一方で、第2の製剤は、750μg/mLのIgG及び25μg/mLのIgMを含んでいた。この集団に由来する血漿試料の540測定の標準偏差は、それぞれ低Ig製剤及び高Ig製剤について、0.0103ng/mL及び0.0088ng/mLであった。
【0168】
上述したような本発明は一般に、全血試料を用いた分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減又は排除することを対象とするが、これは、他のタイプの生体試料、例えば、血漿、血清、及び尿、並びにまた、希釈された試料、例えば、緩衝液で希釈された血液、血漿、血清、及び尿中で実施されるイムノアッセイにも適用可能である。さらに、本発明は一般に、試料中に乾燥試薬を溶解させることによって試料を改質することを対象とするが、これは、分析の間、又は試料収集の間に試料に液体として試薬を添加することも、他の実施形態では実用的である。本発明は、電気化学的検出手法、例えば、電流測定及び電位差測定手法の観点から本明細書に記載されているが、これは、他の検出様式、特に、光学手法、例えば、発光、蛍光、及び吸光度に基づく手法などにも同様に適用可能であることも明らかである。
【0169】
本発明を様々な好適な実施形態の観点から説明してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略、及び変更を行うことができることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって、もっぱら限定されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)全血試料を、非ヒトIgM又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように前記試料中に乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、前記試料中の前記分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項2】
(c)IgG又はその断片を用いて全血試料を改質するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全血試料が、IgMを用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
全血試料が、IgM F(ab’)2断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
全血試料が、IgM Fab断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
全血試料が、IgM Fc断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
分析物が心血管マーカーである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
イムノアッセイが、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPの群から選択される分析物についてのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
試料が、1分〜30分の範囲の所定期間改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
乾燥試薬が、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
非ヒトIgG及びIgMが、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
電気化学的イムノアッセイが酵素結合サンドイッチイムノアッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
電気化学的イムノアッセイが、免疫センサーによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
電気化学的イムノアッセイが、免疫センサー及び免疫参照センサーによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
乾燥試薬が、前記分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
(d)改質された試料を、前記分析物に対する酵素標識抗体を用いて、前記改質された試料中に前記酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップであって、前記第2の乾燥試薬は、前記IgM又はその断片を含有する乾燥試薬と別個のものである上記ステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
電気化学的アッセイが、電極上の分析物に対する固定化抗体を用いて実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
改質された試料が、前記分析物に対する酵素標識抗体をさらに含み、前記分析物に対する固定化抗体と接触することによって、前記固体化抗体と標識抗体の間に前記分析物のサンドイッチを形成し、前記方法が、前記試料を廃棄物チャンバーに流すステップと、前記酵素と反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質に前記サンドイッチを曝すステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ポイントオブペイシェントケアで実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
電気化学的イムノアッセイが酵素結合免疫吸着アッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
イムノアッセイが、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備えるカートリッジ内で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記試料流入ポート、前記試料保持チャンバー、前記導管、及び前記免疫センサーのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、前記乾燥試薬でコーティングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
乾燥試薬が前記非ヒトIgGをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)全血試料を、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、前記改質された試料中の前記非ヒトIgM濃度は、少なくとも20μg/mL又は同等のIgM断片濃度である上記ステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップと
を含む上記方法。
【請求項29】
脳性ナトリウム利尿ペプチドイムノアッセイにおいて異好性抗体を低減する方法であって、
(a)試料を、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、前記改質された試料中の前記非ヒトIgM濃度は、少なくとも20μg/mL又は同等のIgM断片濃度である上記ステップと
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップと
を含む上記方法。
【請求項30】
異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む乾燥試薬を含み、前記乾燥試薬は、前記血液試料中に溶解することによって少なくとも20μg/mLのIgM濃度又は同等の断片濃度を生じ、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離することができる上記デバイス。
【請求項31】
乾燥試薬が、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を含む、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
最初の血液試料を計量することによって、計量された血液試料を形成するための計量システムをさらに備える、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
免疫参照センサーをさらに備える、請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
分析物が心血管マーカーである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項35】
イムノアッセイが、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、proBNP、β−HCG、TSH、D−二量体、及びPSAの群から選択される分析物のためのものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項36】
試料が、1分〜30分の範囲内の所定期間改質される、請求項31に記載のデバイス。
【請求項37】
使い捨てカートリッジである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項38】
乾燥試薬が、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項39】
分析物に対する酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬をさらに含み、前記第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含む乾燥試薬と別個のものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項40】
乾燥試薬が、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項41】
非ヒトIgG又はその断片及びIgM又はその断片が、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項42】
免疫センサーが、電気化学的酵素結合サンドイッチイムノアッセイを実施する、請求項31に記載のデバイス。
【請求項43】
免疫センサーが、電極上に分析物に対する固定化抗体を含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項44】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項45】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項46】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項47】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項48】
前記試料を廃棄物チャンバーに流すことができる洗浄流体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項49】
前記免疫センサーにおいて反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質を含む洗浄流体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項50】
分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)生体試料を、IgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように改質するステップと、
(b)前記改質された試料に対してイムノアッセイを実施することによって、前記試料中の前記分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項51】
(c)IgG又はその断片を用いて生体試料を改質するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
生体試料が、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
生体試料が、IgMを含む乾燥試薬を前記試料中に溶解させることによって改質される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
生体試料が、IgM断片を含む乾燥試薬を前記試料中に溶解させることによって改質される、請求項51に記載の方法
【請求項55】
生体試料が、IgM又はその断片を含む溶液を添加することによって改質される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
イムノアッセイ法が、電気化学、電流測定、電位差測定、吸光度、蛍光、及び発光からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
分析物イムノアッセイデバイスにおいて異好性抗体干渉を低減する方法であって、
(a)IgM又はその断片、及びIgG又はその断片を生体試料に、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な量で添加し、改質された試料を形成するステップであって、前記IgM又はその断片、及び前記IgG又はその断片は、0.004超の重量比で添加されるステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、前記改質された試料中の分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項58】
前記重量比が0.02超である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記重量比が0.05超である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(a)が、前記生体試料にIgMを添加することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
添加するステップの後に、IgMが少なくとも20μg/mLの濃度で前記試料中に存在する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ステップ(a)が、IgM断片を前記生体試料に添加することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
添加するステップの後に、IgM断片が少なくとも20μg/mLのIgM濃度と同等の濃度で前記試料中に存在する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
添加するステップが、イムノアッセイデバイス内に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を前記試料中に溶解させるステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
添加するステップが、試料収集デバイス上に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を前記試料中に溶解させるステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
添加するステップが、前記試料を、前記IgM又は前記その断片を含む液体と混合することによって、改質された混合物を形成することを含み、前記方法は、イムノアッセイデバイス内に前記改質された混合物を導入するステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を、0.004超の重量比で含む乾燥試薬を含む、上記デバイス。
【請求項68】
重量比が0.02超である、請求項67に記載のデバイス。
【請求項69】
重量比が0.05超である、請求項67に記載のデバイス。
【請求項1】
分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)全血試料を、非ヒトIgM又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように前記試料中に乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、前記試料中の前記分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項2】
(c)IgG又はその断片を用いて全血試料を改質するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全血試料が、IgMを用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
全血試料が、IgM F(ab’)2断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
全血試料が、IgM Fab断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
全血試料が、IgM Fc断片を用いて改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
分析物が心血管マーカーである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
イムノアッセイが、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPの群から選択される分析物についてのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
試料が、1分〜30分の範囲の所定期間改質される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
乾燥試薬が、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
非ヒトIgG及びIgMが、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
電気化学的イムノアッセイが酵素結合サンドイッチイムノアッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
電気化学的イムノアッセイが、免疫センサーによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
電気化学的イムノアッセイが、免疫センサー及び免疫参照センサーによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
乾燥試薬が、前記分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
(d)改質された試料を、前記分析物に対する酵素標識抗体を用いて、前記改質された試料中に前記酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬を溶解させることによって改質するステップであって、前記第2の乾燥試薬は、前記IgM又はその断片を含有する乾燥試薬と別個のものである上記ステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
電気化学的アッセイが、電極上の分析物に対する固定化抗体を用いて実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
改質された試料が、前記分析物に対する酵素標識抗体をさらに含み、前記分析物に対する固定化抗体と接触することによって、前記固体化抗体と標識抗体の間に前記分析物のサンドイッチを形成し、前記方法が、前記試料を廃棄物チャンバーに流すステップと、前記酵素と反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質に前記サンドイッチを曝すステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ポイントオブペイシェントケアで実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
電気化学的イムノアッセイが酵素結合免疫吸着アッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
イムノアッセイが、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備えるカートリッジ内で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記試料流入ポート、前記試料保持チャンバー、前記導管、及び前記免疫センサーのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、前記乾燥試薬でコーティングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
乾燥試薬が前記非ヒトIgGをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
心臓トロポニンIイムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)全血試料を、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、前記改質された試料中の前記非ヒトIgM濃度は、少なくとも20μg/mL又は同等のIgM断片濃度である上記ステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップと
を含む上記方法。
【請求項29】
脳性ナトリウム利尿ペプチドイムノアッセイにおいて異好性抗体を低減する方法であって、
(a)試料を、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な、(i)非ヒトIgG又はIgG断片、及び(ii)非ヒトIgM又はIgM断片を含む混合物を用いて改質するステップであって、前記改質された試料中の前記非ヒトIgM濃度は、少なくとも20μg/mL又は同等のIgM断片濃度である上記ステップと
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施するステップと
を含む上記方法。
【請求項30】
異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を含む乾燥試薬を含み、前記乾燥試薬は、前記血液試料中に溶解することによって少なくとも20μg/mLのIgM濃度又は同等の断片濃度を生じ、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離することができる上記デバイス。
【請求項31】
乾燥試薬が、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を含む、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
最初の血液試料を計量することによって、計量された血液試料を形成するための計量システムをさらに備える、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
免疫参照センサーをさらに備える、請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
分析物が心血管マーカーである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項35】
イムノアッセイが、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、proBNP、β−HCG、TSH、D−二量体、及びPSAの群から選択される分析物のためのものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項36】
試料が、1分〜30分の範囲内の所定期間改質される、請求項31に記載のデバイス。
【請求項37】
使い捨てカートリッジである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項38】
乾燥試薬が、分析物に対する酵素標識抗体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項39】
分析物に対する酵素標識抗体を含む第2の乾燥試薬をさらに含み、前記第2の乾燥試薬は、IgM又はその断片を含む乾燥試薬と別個のものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項40】
乾燥試薬が、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項41】
非ヒトIgG又はその断片及びIgM又はその断片が、マウス、ヤギ、又はこれらの組合せのものである、請求項31に記載のデバイス。
【請求項42】
免疫センサーが、電気化学的酵素結合サンドイッチイムノアッセイを実施する、請求項31に記載のデバイス。
【請求項43】
免疫センサーが、電極上に分析物に対する固定化抗体を含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項44】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項45】
分析物がTnIであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項46】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜200μg/mLのIgM濃度、及び50〜5000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項47】
分析物がBNPであり、前記乾燥試薬が試料中に溶解することによって、20〜60μg/mLのIgM濃度、及び500〜1000μg/mLのIgG濃度が得られる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項48】
前記試料を廃棄物チャンバーに流すことができる洗浄流体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項49】
前記免疫センサーにおいて反応することによって、電気化学的に検出することができる生成物を形成することができる基質を含む洗浄流体をさらに含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項50】
分析物イムノアッセイにおいて異好性抗体による干渉を低減する方法であって、
(a)生体試料を、IgM又はその断片、及び任意選択によりIgG又はその断片を用いて、少なくとも20μg/mLの非ヒトIgM濃度又は同等の断片濃度を生じるように改質するステップと、
(b)前記改質された試料に対してイムノアッセイを実施することによって、前記試料中の前記分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項51】
(c)IgG又はその断片を用いて生体試料を改質するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
生体試料が、全血、血清、血漿、尿、及びこれらの希釈形態からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
生体試料が、IgMを含む乾燥試薬を前記試料中に溶解させることによって改質される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
生体試料が、IgM断片を含む乾燥試薬を前記試料中に溶解させることによって改質される、請求項51に記載の方法
【請求項55】
生体試料が、IgM又はその断片を含む溶液を添加することによって改質される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
イムノアッセイ法が、電気化学、電流測定、電位差測定、吸光度、蛍光、及び発光からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
分析物イムノアッセイデバイスにおいて異好性抗体干渉を低減する方法であって、
(a)IgM又はその断片、及びIgG又はその断片を生体試料に、前記試料中のいずれの異好性抗体も実質的に隔離するのに十分な量で添加し、改質された試料を形成するステップであって、前記IgM又はその断片、及び前記IgG又はその断片は、0.004超の重量比で添加されるステップと、
(b)前記改質された試料に対して電気化学的イムノアッセイを実施することによって、前記改質された試料中の分析物の濃度を求めるステップと
を含む上記方法。
【請求項58】
前記重量比が0.02超である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記重量比が0.05超である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(a)が、前記生体試料にIgMを添加することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
添加するステップの後に、IgMが少なくとも20μg/mLの濃度で前記試料中に存在する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ステップ(a)が、IgM断片を前記生体試料に添加することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
添加するステップの後に、IgM断片が少なくとも20μg/mLのIgM濃度と同等の濃度で前記試料中に存在する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
添加するステップが、イムノアッセイデバイス内に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を前記試料中に溶解させるステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
添加するステップが、試料収集デバイス上に含まれる乾燥試薬コーティングから、IgM又はその断片を前記試料中に溶解させるステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
添加するステップが、前記試料を、前記IgM又は前記その断片を含む液体と混合することによって、改質された混合物を形成することを含み、前記方法は、イムノアッセイデバイス内に前記改質された混合物を導入するステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
異好性抗体による干渉が低減された、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するためのデバイスであって、筐体、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを備え、前記導管は、血液試料が流入ポートから前記免疫センサーに進むのを可能にし、前記筐体、前記流入ポート、及び前記導管のうちの少なくとも1つは、非ヒトIgM又はその断片及びIgG又はその断片を、0.004超の重量比で含む乾燥試薬を含む、上記デバイス。
【請求項68】
重量比が0.02超である、請求項67に記載のデバイス。
【請求項69】
重量比が0.05超である、請求項67に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−522216(P2012−522216A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502205(P2012−502205)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028491
【国際公開番号】WO2010/111382
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(508012840)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (16)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028491
【国際公開番号】WO2010/111382
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(508012840)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (16)
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